○木島
委員 この問題はこのぐらいで、では切り上げましょう。憲法解釈の違いは、政治家によってそれは違うでしょう。しかし、大きな、通説的な憲法をどう見るかについては一致できるところが基本だと思うんです。だからこそ憲法改正のいろいろな論議もあるんでしょう。しかし、閣僚になった以上は、大方の、憲法はこういうことを言っているということが一致できる分は、
自分の考えと違ってもその実現に向かって努力する義務があるんだということをひとつ自覚をして、これからの
法務行政に当たっていただきたいということを重ねて要望しまして、
質問にかえたいと思います。
大臣が先日のあいさつの中で、殊のほか強調されたのが行刑改革の問題です。もう既に前
国会、また前森山
法務大臣のもとでも進んでまいりました。行刑改革
会議が立ち上がって、今鋭意調査検討が進められてまいります。
大臣は、行刑改革
会議からの御提言を最大限尊重するとともに、
国会からの御支援や御指導も賜りながら行刑の改革に邁進したいと考えておりますと。大変結構だと思うんです。ただ、私は、
大臣、率直に言って、今の行刑改革
会議の持っている限界といいますか、三つほど感じておりますので、聞いてほしいんです。
一つは、行刑改革
会議の調査検討には、同僚
委員からも再三
指摘されております、きょうも
質問されましたが、いわゆる
名古屋刑務所の三
事案の
真相解明は基本的にはさわらないと。それは
裁判もあるでしょう。行刑改革
会議の基本
目的でもないんでしょう。しかし、それは、基本的にそこはさわらないで、論議を、調査を進めるんだという立場にあるようであります。それはそれで行刑改革
会議としては仕方のないことなのかもしれませんが、私は、
大臣、
名古屋三
事案のいい面、悪い面、真相を
法務省として徹底的に明らかにしないと、刑務行政の本当の改革ができないということを私自身痛切に感じているんです。
端的に言いますと、具体的にそれは何、どのことを言っているかというと、各
刑務所と本省
矯正局との
関係なんですよ。率直に言いまして、明治以来百年を超える
刑務所の歴史の中で、
刑務所内で起こった問題は
刑務所長が最高の責任と権限を持っている、そこで何が行われようと、それは
刑務所以外の者には関与させない、それは場合によっては
法務省本省
矯正局長であろうとさわらせない、立ち入らせない、
刑務所の中のことは
刑務所長が全権を握っているんだ、そういう牢固とした
状況がつくられてきているということを感じているんです、私。いいか悪いかは別ですね。しかし、現実、それはある。それだけに命がけの刑務行政をやっているという自負もあるんでしょう。
だから、今回の
名古屋三
事案に関する
真相解明についての
法務省の調査によっても、いいですか、
事件が起きたときの
刑務所長
本人からの事情聴取、できていないんですよ。真っ先に事情聴取するとすれば、関連した時期の
刑務所長から事情聴取するというのは当たり前でしょう。もうおやめになりましたがね。できていないんですよ。病気ということもあるでしょう。事故もあったでしょう。しかし、そういう
状況なんですよ。その背景にはそういうことがある。
それから、正しい事実
報告が
刑務所から
名古屋管区
矯正局、あるいは本省
矯正局に、あるいは
法務大臣に上がらなかったという問題が大問題としてずっとあるわけです。うその
報告がずっと上がり続けていたということがこの三
事案にはあったわけですね。そういう問題がある。
もう
一つは、検察と矯正の
関係も非常に不透明です。同僚
委員からもそこが
指摘されているわけです。
そういうことをいろいろ考えますと、やはり本当に今ある刑務行政、矯正行政のうみを洗いざらい出していく、そして本当に問題点を浮き彫りにして、それを正していくには、やはり一般論でいろいろ問題を是正するだけじゃなくて、
名古屋三
事案で何があったのか、なぜそういう
状況が生まれたのか、なぜ真実の
報告が上に上がらなかったのか、突き詰めていかないと、私は、矯正行政は是正できないと思うんです。
残念ながら、それは行政改革
会議には手が出せない、手を出そうとしない分野ですから、これはひとつ、
国会でもやりますが、
法務省、
法務大臣として、
法務省矯正局として、そこまで切り込んで、大変なことだと思うんですが、この
事案の改革には当たっていただきたいというのが
一つなんです。
それから、二つ目は、監獄法を改正しなくちゃいかぬと思うんです、これは。何しろ明治時代の
法律がいまだに、
法律としては生き残っているわけですからね。
法務省の
報告によりますと、
法律が改正できないので、いろいろ通達とか、いろいろな行政で実質上中身を変えているんだと言っているわけですが、これは変えざるを得ないんですね。
なぜ監獄法の抜本改正ができないのか。警察との
関係だと思うんです。刑事
施設法案と留置
施設法案というのを、二つの法案を抱き合わせにして政府はずっと出し続けてきたからなんです。刑事
施設法、監獄法を廃止して新しい刑事
施設法をつくる、それだけならできるはずなんです。何で抱き合わせでしか政府は物を処せないかという根本問題が代用監獄にあるんですよ。代用監獄を死守ですよね、警察は。命がけで守り抜く、そういう前提に立っているからこれはだめなんですね。その呪縛を乗り越えないと、私は、本当の意味の監獄法改正、新しい、いろいろな諸問題を打開できる刑事
施設法というのはつくれない。その弱点が、弱点といいますか、そういう限界が行政改革
会議は持っているだろう。これは政治が乗り越えなきゃいかぬと思うんです。
もう
一つは、これは理屈の問題でありますが、
刑務所の中で仕事をしている
刑務官あるいは
法務省矯正局、
刑務所の側と、実際そこで受刑している
受刑者との
関係ですね。これは、行政改革
会議で
受刑者の法的地位についての論議が始まっていますが、私、率直に言いまして、牢固たる観点に立っていると思うんです。
それは、特別権力
関係だと思うんですよ。これはドイツ法をもとにして、
刑務所の方と
受刑者との
関係は特別権力
関係にあると。ちょうど学校も同じなんです。学校と子供たちとの
関係は特別権力
関係にある。要するに、何をやっても構わぬという発想ですよ。そういうドイツ法を継受して、そういう行政法の根本原理で戦前戦後の
日本の行政法はつくられてきた、その一番悪い面が
刑務所の中にあらわれている。そこの根本的観点を、原則を見直さないと、本当の意味の
受刑者の人権を尊重した上でのいい行政はできないんじゃないかと思うんです。
三点
指摘しましたが、率直に
大臣の所見を聞かせてください。