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内閣総理大臣(
小泉純一郎君) 私は、基本線は変わっていないと。今、仲道
議員が指摘されたように、なぜ行財政改革が必要か、改革なくして成長なしという路線を堅持しなきゃならないかということについては一貫して変わっていないし、これからも変える気はありません。
というのは、今まで日本は、
経済停滞から脱却するために目一杯の財政対策を打ってまいりました。御承知のように、借金はし過ぎるぐらいしてきている。今まで積み上げた借金の利払いまで更に借金して返さなきゃならないような状況だと。じゃ、この
経済、
景気回復するために財政で足りない、金融政策だと、金利を下げてきた。今、短期金利はゼロ金利です。長期金利だって一%以下、超低金利です。これだけ、よその国から考えれば目一杯の財政政策、金融政策打ってきている。
経済の専門家からいっても、
景気が悪いときは財政出動しなさい、それでも足りないんだったら金融緩和しなさい。全部やり過ぎるぐらいやっているんですよ。ところが、なお回復しない。
だからこそ、今まで発展してきた日本の構造に問題があるんじゃないか。果たして、今までこれだけ税金を使ってきたけれども、税金の無駄遣いがないんだろうかということで、私は、公的部門の郵政事業、財政投融資、道路公団、各特殊法人、これ今国でやっていますけれども、これ本当に国がやらなきゃならない仕事なのか、役人がやらなきゃならない仕事なのかということで最初にぶち上げたんです。
ところが、残念ながら、当時は
自由民主党も郵政三事業は国営じゃなきゃいかぬと公社にも反対していました。国営の
議論であって、民営化の
議論さえも封殺してきました。私はそうじゃないということで、郵政公社化、民営化の実質的な第一歩を踏み出すような改革を行った。民間参入、郵便の民間参入まで皆さん自民党の多くは反対していたんじゃないですか。しかし、それも押し切って今着々と今年の四月から郵政公社、出発する。そして道路公団、当初、民営化と言っただけでわあっと大反対でした。今ようやく民営化までは認めようということになってきた。これも一挙にできるものじゃありません。
どのように民営化するかというのは、あの民営化の
議論の、
国会の
議論を経て、そして今年一杯、どうやって民営化出すかという有識者の
意見が出た、去年一杯。今年一年間掛けて来年に
提出する法案の準備を進めているわけです。一歩一歩進んでいるんです。一挙に、言ったことがすぐ実現すると、民主主義だったらこんな楽はありませんよ。
国会議員の多数の賛成を得て一歩一歩実現していくんです。そのように、道路だって皆さん全部税金でやっていくんだったらこれ大歓迎です。しかし、税金というのは
国民の負担です。将来返さなきゃいかぬ。
そして、なぜ私が郵政改革するかというと、この郵便貯金の資金を借りていろんな事業、特殊法人が事業をしているわけですよ。当面は負担がない、しかし民間よりも安い金利で貸してくれる。財政投融資制度というのは本来郵便貯金の金だから、確実で有利なところにしか使えないはずが、各特殊法人、道路公団を始めいろんな特殊法人、見てごらんなさい、本当に確実で有利な投資先か、そうじゃない。民間がやらないから国が必要なんだと言いながら、将来は郵便貯金負担している人に転嫁するんじゃない、郵便貯金している人は預けなきゃならないから、結局、税金で負担するからということで安易に借りていって返済の見通しも付かない。今の人は税金の負担は知らないけれども、将来、税金の負担をしなきゃならないことを分からないで、負担感感じないからどんどんそんな借金なんか後で返せばいい後で返せばいいと言って作っていった、それがもう何十兆円たまっている。だから、こういう本来、官、役人がやらなくてもいいところを役人がやっているから、この構図を直そうと。
ところが、最近はようやくこれも理解していただいて、
自由民主党も反対から、快くではありませんが、喜んでではありませんが、まあ仕方ないから賛成しようかということでちゃんと、抵抗勢力とは言いませんが、協力勢力に変わってきている。(「妥協した」と呼ぶ者あり)妥協したという声がありますけれども、
政治です。できるだけ敵も味方と思わなきゃいかぬ、抵抗勢力も味方と思わなきゃいかぬ、それがやっぱり
政治で大事じゃないですか。すべて味方と思って、協力してくれるという期待を込めて私は話合いを重ねて、実現に向けていっているんです。
同時に、金融改革、
不良債権処理。今でも倒産が起こるというけれども、
不良債権処理を解決しなかったらば、金融機関だって健全なところに貸すことできません。今、全部
企業が倒産しちゃいかぬと。倒産しそうな
企業は、もう頼むから金貸してくれと言うけれども、全部保護なんかできないんです。保護してくれ、保証をくれ、民間金融機関がやらないから
政府がやってくれと、これ税金でしょう。税金が全部この保証したところは返してくれればいいですけれども、実際、たくさん倒産していることも多い。倒産した焦げ付きのその金はどうなるのか。結局、税金で負担しなきゃならない。ああ助かった助かったといいけれども、結局、目に見えない形で税金で負担するしかないんですよ。しかし、この構造を直さないととんでもないことになる。だから、
不良債権処理も、確かに倒産するところも出るでしょう、しかし、それは新しい成長分野で税金の使い道を有効に使っていこうという改革だ。
同時に、歳出の改革。これだけ借金をしているのにもっと事業をやれ、もっといろんな対策をやれといって対策をやる場合に、税金でしか対策できないんです。しかし、増税が嫌だからまた借金しろという。
税収が五十兆円を切っているのに三十兆円の私は国債発行を認めているんです。これをして緊縮財政と言う専門家もいるけれども、あきれているんですけれども、私は。これだけ目一杯財政対策を打っている国はありませんよ。それでも三十兆円じゃまだ足りないというわけで、もっと十兆円でも二十兆円でも出せと言う人いますけれども、
税収よりも借金が多くなって、後の人のこれ返すのどれだけ苦労するのかということで、財政規律もなきゃいかぬ。
規制。民間参入すると、今の民間参入すると民間の
企業が、あるいは中小も含めて大
企業も含めて、これは新しい競争になったら、今でも厳しいのにおれたちつぶれちゃうと。参入を止める、規制を守ってくれという声がたくさんある。しかし、そうじゃないだろうと。
企業が生き残るいろいろ知恵、創意工夫を発揮して、競争に打ちかつような民間参入は受け入れてもいいじゃないかと、規制を取っ払おうじゃないかと。
これも、今特区構想とかいろいろ手を打っています。さらに、歳出もどんどんどんどん増やせというのを、私は今年度以下よりも抑制すると。行政コスト、建設コスト、いろんな費用を見直して少しでも無駄遣いのないような対策をしなきゃいかぬというので、歳出もこれだけの中でも切り詰めて前年度以下にした。
税制だって、本来だったら、これだけ借金しているんだから減税だけでは無責任だという声が出てもいいのに、野党の皆さんは主に、減税やって増税やったらしようがない、減税だけやってどうなんですか。後の穴埋めはだれがするんですか。こんな無責任な態度ないですよ。
しかし、一年で減税して増税してはこの
不況対策駄目だから、多年度でやろうと。来年度は二兆円減税ですよ。しかし、発泡酒の千億円とたばこの一千億円の二千億円の増税ばかり取り上げる。二兆円の減税やっているんですよ。差引き一兆八千億円の減税やっているんです。増税はけしからぬ、減税だけやったら後無責任、また借金するんですか。そういう点から見て、着実にやるべき改革進めているんです。そういうことについてはある
程度時間が掛かります。
私は、そういう意味において、私は、改革は着実に進んで、行財政改革なくして今の構造改革も進まないし、そして全体の改革なくして成長もできないんだという基本路線は全く変わりませんし、これを推進していくことによって民間の活力が出てくるだろうと。その民間の活力こそが、
国民のやる気こそが日本の
経済を発展させるんだという信念は全く変わっておりません。この改革路線を進めて、一歩一歩目に見えるような成果を上げていきたいと思います。