○川橋幸子君 私は、
民主党・
新緑風会、
日本共産党、
国会改革連絡会、社会
民主党・
護憲連合の
野党四会派を代表して、ただいま
議題となりました
国務大臣福田康夫君
問責決議案について、
提案の
趣旨を
説明いたします。
まず、
決議案を朗読いたします。
本院は、
国務大臣福田康夫君を
問責する。
右
決議する。
以上であります。
福田内閣官房長官のそもそもの
役割は、小泉内閣の大番頭として安定した閣内運営を行うことにあります。ところが、どうでありましょう。今に至っては、もはやそれを
期待するのは全く困難であり、裏切られたとしか言いようがありません。これ以上、福田康夫君に内閣のかなめたる官房長官の重責を任せるのは許し難いことであります。
以下、福田内閣官房長官を
問責するに十分な
理由をるる述べます。
第一に、
イラク特別措置法案への
対応であります。
福田官房長官はこの法律案の所管
大臣でありますが、昨今の報道に見るように、
イラク現地の情勢は、日々治安が悪化するどころか、もはや戦場の様相を呈しているのであります。一体、
政府は
現地の何をどう把握していたのでしょうか。まず
自衛隊派遣ありきという思惑が先行する
余り、本来、
日本外交はどうあるべきかという根本問題を看過してしまったことを今まさにここに露呈しています。
冷静に
判断すれば、
憲法上の疑義はないか、また
現地イラク国民のニーズはどこにあるのか、このいずれもが明らかでない限り、そもそも
自衛隊の派遣は想定されなかったはずのことであります。福田官房長官は、
国連の関与の下での
イラク復興支援を求めることなく、ブッシュ政権との
関係重視を優先されたのであります。この際、改めて
自衛隊の
イラク派遣を疑問視する
国民世論の
判断を厳粛に受け止めるべきであります。
この間、
米英両国政府が
イラク攻撃を正当化した
根拠や
イラクをめぐる様々な情勢分析について疑問が出てきており、
イラクの
大量破壊兵器保有に関し
情報操作があったのではないかという疑いさえ世界に席巻しております。
また、
イラク特措法案について、審議をすればするほど、
議論を深めれば深めるほど、
戦闘地域と非
戦闘地域の区別や
戦闘員と非
戦闘員の峻別などの基本認識について
政府の
答弁はあやふやになってきています。さらには、戦場における武器使用基準、解釈のあいまいさなど、初めに真剣に検討しておくべき諸
課題が
法案成立後に先送りされるという始末であります。これでは、正に戦場ともいうような
イラクへ丸腰のままの
自衛隊派遣を実行するに等しい
事態になり、内閣のかなめたる官房長官として、またこの法律を所管する国務
大臣として、何ら真剣に考えようとせず、自らその職責を放棄しているとしか受け止められません。
また、
イラクへの
我が国からの人員派遣をめぐる福田官房長官の
発言が二転三転していることも全くお粗末としか言いようがありません。
イラクで
復興支援を行う
米国国防省の下にあるORHA、
復興人道
支援庁への派遣について、福田官房長官は、当初、文民であれば可能と
答弁していましたが、後になってこの
発言を修正撤回されたのであります。こうした経過には、
自衛隊や
政府職員の派遣を合法化するための
政府方針のねじ曲げがあったことが明らかです。戦闘
状況が続く
イラクに対し
我が国政府がどのようにかかわっていくのかという重大な局面に当たり、福田官房長官の
発言がころころ変わるというのは、
日本国
政府の方針が定まっていないこと自体を露呈するものであります。と同時に、小泉政権においては極めて危うく、ずさんな意思
決定がなされているという情けない
政府の実態を暴露するものであり、これは
国民に対する背信行為であるとともに、
国際社会における
我が国への
信頼を根底から揺るがすものであります。
さらに、小泉内閣が
米英の
イラク攻撃支持を決するに至った経緯についても疑念を持たざるを得ません。
政府が得ていた
情報とそれに対する分析結果は実際にはどのようなものだったのでしょうか。意図的な
情報操作があったのでしょうか、あるいは怠慢だったのでしょうか、それとも、そもそも
情報収集・分析能力が欠如したままでの
米国依存だったのでしょうか。いずれにせよ、
日本政府が
米国の
イラク攻撃を
支持したよりどころであった
大量破壊兵器はいまだに発見されていないばかりか、
米英両国においても
情報操作疑惑が浮上しており、
開戦支持の論拠が根底から覆る
可能性もあります。
一体、福田官房長官は
国民を説得できる
情報を得ていたのでしょうか。
国民への
説明責任を全く果たしておらず、職務怠慢のそしりを免れないのであります。
テロ特措法に基づく海上
自衛隊の給油活動が
イラク攻撃用に転用されているのではないかという
疑惑についても、御自身が否定された直後に防衛庁側が給油の
可能性に言及するなど、福田官房長官の
情報集約能力には、疑問を通り越し、あきれるばかりのことがあります。
次に、第二の
理由を申し述べます。
言うまでもありませんが、福田官房長官は男女共同参画担当
大臣であります。にもかかわらず、女性蔑視、さらにレイプ擁護とも受け取れるような問題
発言を行っていたことであります。
この問題は、
日本政府を代表する内閣の一員としての
資質を欠くことは無論のこと、いや、それ以前に人の道にも反する行為であり、福田官房長官はモラルと品性に欠けた人格的に問題のある人物であると断ぜざるを得ません。
言葉にするのもはばかられる非常に恥ずかしい
発言ですが、報道によれば、福田官房長官は、去る六月二十七日、
官邸内の記者との懇談において、自民党の太田誠一衆議院議員による、集団レイプする人はまだ元気があるからいい、正常に近いとの
発言、この
発言自体にもあきれてしまいますが、この
発言を受けて、これを批判するどころか、更に輪を掛けるような悪質な
発言をしておられます。すなわち、女性にも、いかにもしてくれっていうの、いるじゃない、挑発的な格好をしているのが一杯いるでしょう、そういう格好をしている方が悪いんだ、男は黒ヒョウなんだからなどと、信じられないような暴言を福田官房長官は次から次へと吐いているのであります。女性を蔑視し、レイプ
被害者の感情を逆なでし、まるで凶悪
犯罪を擁護するかのごとく極めて無神経な
発言ではありませんか。
福田官房長官は、その後の
国会審議などにおいて、そうした
発言はしていないし、真意と全く違うと否定しています。しかしながら、記者との懇談は完全なオフレコだったことを口実に、福田官房長官が新聞やテレビの報道に封印をしたと取りざたされております。福田官房長官は、先ほどの
発言が漏れたことに激怒して、執拗に犯人探しをし、番記者
たちには、今後はオフレコの懇談はなしだと通達を出したそうであります。加えて、
国会の委員会
答弁後の記者からの
質問に対しても逆切れをされて、何か問題あるなどとすごんでおられたそうです。
このような行為は、言論の府に対する恫喝であり、内閣官房長官という権力をかさに着たマスコミ統制以外の何物でもありません。民主主義を圧殺する人物が内閣のかなめである官房長官であり続けることは、
我が国の
政治史に大きな汚点を残すであろうことは目に見えています。
さらに、自民党の太田誠一衆議院議員の問題
発言が飛び出したその同じ
討論会で、元総理
大臣である自民党の森喜朗衆議院議員は、子供をつくらない女性を税金で面倒見るというのはおかしいと
発言しています。
政府・自民党の大幹部には、男女共同参画社会を実現していこうという思いや、それぞれの女性個人の人生を尊重しようとする
姿勢などみじんもないことが白日の下にさらされたということでしょう。良識ある多くの女性、男性
国民がこうした
発言をどんなに情けない気持ちで聞いたことでしょう。
国権の最高機関である
国会に議席を持ち、自分
たちの考えや意見を代弁してくれるはずの
国会議員に人権無視、女性蔑視の人物が多くいる。
日本政府の代表者たる福田官房長官にしてそうした問題
発言を擁護する。全く残念無念に思います。
そして、第三の
理由を申し述べます。
外交問題であります。
まず、
北朝鮮問題の
解決に向けての福田官房長官の
姿勢が極めて消極的であることを指摘せざるを得ないのであります。しばしば
官邸と
外務省の
二元外交が言われておりますが、いわゆる
拉致事件に関しては、
官邸の中の
二元外交とおぼしき
動きがあります。福田官房長官は拉致
被害者とその
家族の切実な訴えを聞く耳を持たないのでしょうか。ここまで
拉致事件を見て見ぬふりをしてきた
外務省官僚をかばうなど、およそ常識では考えられない言動を取られています。また、不審船の引揚げが検討された際も、
中国への気兼ねや
北朝鮮への刺激を恐れることから、極度に慎重な
姿勢を取られました。
こうした問題の本質は、自
国民の
生命、財産、安全の
確保にあるのではありませんか。それとも、福田官房長官は
拉致事件や不審船
事件の
解決は
国家の
外交政策の行方を左右するような重大事ではないとお考えなのでしょうか。
このほかにも、
余りにもずさんな管理や使い方が強く批判された官房機密費の問題、不用意な核兵器保有についての
発言、田中眞紀子前
外務大臣との見苦しいほどの感情的な確執など、福田官房長官を
問責する
理由については枚挙にいとまがありません。特に機密費問題では、
関係する
資料が存在するかどうかも分からないとうそぶき、機密費を直接扱う当事者とはとても思えない
発言を繰り返し、その無
責任さには
怒りを通り越してあきれるばかりでした。
以上述べてきた問題はいずれも
国会や
国民への
説明責任、
説明義務を放棄したものであり、小泉内閣の官房長官としての福田康夫君の
資質、能力、
責任は厳しく問われなければなりません。
今後も、
北朝鮮情勢や
イラク問題など、
外交問題では厳しい
判断、選択が迫られています。そうした
日本政府の
かじ取り役をこれ以上福田官房長官に任せるわけにはまいりません。また、レイプ擁護
発言に見られるように、福田官房長官は、だれの目にもモラルを欠き、言動に常識を欠いた人物であることがはっきりしています。
以上、るる申し述べたことが本院が小泉内閣の官房長官である福田康夫君を
問責する
理由であり、ここにその
決議案を提出するものであります。
良識の府である本院
議員諸氏におかれましては、それぞれの
立場の違いを乗り越え、どうか本
決議案に御賛同あらんことを訴えまして、
野党四会派を代表しての
趣旨説明を終わります。(
拍手)
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