○関谷勝嗣君 国際問題に関する
調査会における
中間報告につきまして御報告を申し上げます。
参議院に
調査会
制度が創設されて第六期目となる本
調査会は、国際問題に関し
長期的かつ総合的な
調査を行うため、一昨年八月七日に設置され、三年間のテーマを「新しい共存の時代における日本の役割」と決定をいたしました。
第二年目は、第一年目に引き続き、「東アジア
経済の現状と展望」及び「イスラム世界と日本の
対応」について鋭意
調査を進めてまいりました。
なお、昨年八月から九月にかけて、中東諸国等におけるイスラムの政治、
経済、社会及び文化に関する実情
調査のため、本院から、
調査会長である私、理事及び委員の六名から成る
議員団が中東諸国等に派遣されましたので、十一月に派遣
議員からその報告を聴取し、委員間の意見交換を行いました。
このたび、第二年目の
調査を
中間報告として取りまとめ、六月十一日、これを
議長に
提出をいたしました。
以下、
調査の概要を御報告いたします。
まず、「東アジア
経済の現状と展望」につきましては、東アジアの
経済統合、中国のWTO加盟等市場
経済化と国内外への
影響、東アジアにおける通貨・金融
危機の教訓と再発の防止、
情報化の進展と東アジアのITについて、八名の有識者から意見を聴取し、質疑を行ったほか、
政府からの報告と質疑、また、委員間の意見交換を行うなど、多角的
観点から重点的かつ精力的な
調査を行ってまいりました。
以下、その主な論議について申し上げます。
第一は、東アジアの
経済統合についてであります。
統合には、FTA、関税同盟、共同市場、
経済同盟、完全な
経済統合の五類型があり、東アジア地域の統合にはまずFTAを目標とすべきであるとの意見、日本はFTAで後れを取ったが、
国民のコンセンサスを得るためには
政府の
努力が必要であるとの意見、FTA交渉では
関係省間で
方針に乖離があり、FTA戦略の司令塔がないとの意見、交渉の
責任を外務省が担い
関係省間を調整する必要があるが、FTA締結には農産物問題等があり、政治的リーダーシップが不可欠であるとの意見などが述べられました。
第二は、中国のWTO加盟等市場
経済化と国内外への
影響についてであります。
かつて日本の急激な
経済成長が
欧米諸国等に日本
経済脅威論を起こしたように、中国が急激な高度成長を実現した場合には同様に脅威となるのではないかとの意見、日中間には
経済発展レベルで四十年ほどの格差があり、日中
関係を競合
関係としてではなく補完
関係と見るべきであるとの意見、中国を脅威ととらえるのではなく、日本としては特定の分野に安住せず常に新たな分野を求めて
努力することが必要であるとの意見などが述べられました。
第三は、東アジアにおける通貨・金融
危機の教訓と再発防止についてであります。
アジア通貨
危機の経験から、実体
経済に基づく
資本取引と投機
資金の移動とを判別することが重要であるとの意見、中央
銀行スワップ網の構築においては、
巨額の外貨準備を持つ日本のイニシアチブが問われるとの意見、欧州
経済圏、北米
経済圏と並ぶアジア
経済圏を構想する場合、共通通貨の問題が重要であるとの意見、軍事、外交、
情報などの対外政策の裏付けがあって初めて円の基軸通貨化は現実的な政策となるとの意見、貿易決済の円建て化やODAによる円
資金の供与が円の国際化に役立つとの意見などが述べられました。
第四は、
情報化の進展と東アジアのITについてであります。
日本の
情報戦略には強烈なインセンティブがなく、現在の世界潮流から取り残される危険性があるとの意見、IT関連産業が日本の産業の旗振り役となることを期待するとの意見、インターネットは、水、食料、医療と同様に途上国における基本的なニーズであるとの意見、日本のODAは基本的に要請主義に基づいており、ITの優先順位が低い中で、要請主義を抜本的に見直すべきであるとの意見、アジアにおけるITインフラ
整備促進が予防外交の面でも
経済戦略の面でも重要であるとの意見、アジアにおけるIT面での貢献は日本の重要な役割であり、大きな国益につながるとの意見などが述べられました。
次に、イスラム世界と日本の
対応につきましては、派遣
議員からの報告及び委員間の意見交換を行いました。
以下、その主な論議について申し上げます。
イスラム世界に対する認識につきましては、イスラム世界では政教分離を目指していても、
国民の大多数は宗政一致の感覚が強く、このバランスをいかに保つかというところにイスラム国家の指導者の苦悩があるのではないかとの意見などが述べられました。
テロとジハードにつきましては、イスラムとテロと結び付けて
考えることがどれほど危険であり、それが誤解であるかということが十分
理解できたとの意見などが述べられました。
中東支援につきましては、人道的支援、特に女性、子供に対する支援こそが文化の違いを乗り越え、融和の道を開くことができるとの意見などが述べられました。
第二年目におきましては、多様な東アジア
経済の中にあって、日本はどのような役割を果たすべきか、そして、今後、避けて通れないイスラム世界との対話と交流をいかに実現するかについて、多角的
観点から充実した議論が展開されました。
今、我々のなすべきことは、猛烈な勢いで進んでおりますグローバリゼーションの中で起こる様々な摩擦をいかに有益なものに変えていくかであります。これが人類の英知であり、そのかぎを握るのは日本であると言えます。
本
調査会の三年間のテーマである「新しい共存の時代における日本の役割」とは正にこれを指すのではないでしょうか。最終年に向けてこの点を一層掘り下げ、
調査を進めていく所存であります。
以上、御報告を申し上げます。(
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