○岩佐恵美君 私は、日本共産党を代表して、
食品安全基本法案について
質問いたします。
まず、食の安全に関する
政府の基本
姿勢について伺います。
近年、
食品の安全を脅かす事件が相次いで起こっています。一万四千人の集団食中毒事件を引き起こした雪印乳業事件、アメリカの未承認遺伝子組換えトウモロコシ・スターリンクの
食品への混入、ダイオキシン汚染豚肉や鶏肉、赤痢菌が付いた生ガキの
輸入、中国産の
農薬汚染野菜など、枚挙にいとまがありません。白豚を黒豚と言いくるめる、あるいは産地を偽るなど、
消費者を欺く偽表示も後を絶ちません。加えて、日本じゅうがパニック状態になった
BSE問題では、EUの警告を無視した
農水省の
姿勢に
消費者の怒りが頂点に達しました。
このような深刻な
食品事件の根底には、日本の
食品・
流通業界のモラルハザードがあります。そして、企業やアメリカの
利益を
優先する
行政の
姿勢こそが大問題です。この大本を改めない限り、どんな制度をつくっても
消費者の不安をなくすことはできません。
行政と企業との癒着の構造、アメリカ追随の
姿勢を改め、
国民の命と健康最
優先に
転換すべきです。
食品安全委員会担当大臣の明確な
答弁を求めます。
日本は食べ物の六割を
外国からの
輸入に頼っています。このような特殊な
状況の下で、日本の食の安全の
確保は二つの大きな問題を抱えています。
一つは、アメリカなど輸出国からの
規制緩和の圧力と、外圧に弱い日本
政府の対応です。
例えば、アレルギーのおそれがあるスターリンクが市民団体の
検査で家畜飼料から検出された際、
農水省は、アメリカが日本に輸出しないと言っているのだから日本に入っているはずがないと言って取り合わず、
検査もしませんでした。その後、食用からもスターリンクが検出されて大問題となり、結局、
農水省や
厚生省が最終的にスターリンクの
輸入トウモロコシへの混入を認めたのは、アメリカ
政府の回収発令より一か月以上もたった後のことでした。
行政が市民団体の
指摘よりアメリカの意向を
優先させた結果、安全への対応が後れた典型例です。
また、収穫後
農薬の
残留基準設定の際にも、
消費者の大反対を押し切ってジャガイモの発芽抑止剤の
基準を従来の
国内基準の一千倍に緩めたことに象徴されるように、輸出国に合わせて大幅に
規制を緩和しました。
今回、
政府は、
残留農薬、動物用医薬品、
食品添加物等の
基準値を急ピッチでつくることとしています。本
法律案では
国際的動向への配慮をうたっていますが、今までのように輸出国の都合に合わせた
規制緩和は絶対に許されません。日本人の
食生活の
実態を踏まえた、
国民の安全最
優先とすべきです。
食品安全
担当大臣、
厚生労働
大臣の明確な
答弁を求めます。
もう一つは、大量な
食品の
輸入に
検査体制が対応できていない問題です。
政府は、九五年に、
水際検査からモニタリング
検査に切り替えてしまいました。その結果、汚染が分かったときにはすべて胃袋を通過しているという恐るべき
事態になっています。
しかも、国の
検査官はわずか二百八十三人で、
行政検査率はたったの二・八%にしかすぎません。
国内で
食品を監視する地方自治体の
食品衛生監視員も、専任の
職員は千六百二十五人しかいません。新たに
食品安全委員会を設置しても、肝心な現場の安全チェックの
体制がこのような状態では、食の安全の
確保は困難です。
食品安全
検査の
体制を国、地方ともに抜本的に
強化することが急務ではありませんか。
厚生労働
大臣の
答弁を求めます。
次に、本
法案に基づく具体的な
措置について
質問いたします。
本
法案は、
食品安全委員会を設置し、
食品安全
基準や
農薬の
使用基準などの
食品健康影響評価を行うこととしています。
法案では、その時点の
科学的知見に基づいて
リスク評価を行うとしていますが、
国民の健康にかかわる問題は、疑わしきは
規制するという予防
原則に沿った対応をすべきです。ところが、
政府はこれまで予防
原則の考え方を取ってきませんでした。
例えば、九五年の
食品衛生法改正で、天然添加物四百八十九品目を安全
検査もせずに一挙に認可してしまいました。そして、そのうち問題がありそうな百三十九品目の毒性
評価を後追い的に五年間で
実施するとしました。ところが、その後七年間でたったの十四品目しか
評価していません。恐るべき怠慢です。
しかも、最近、コウジ菌がつくるコウジ酸の有害性が明らかになり、添加物リストから外すとのことです。天然だから安全とは限らないのです。問題がありそうな添加物は、予防
原則に沿って
安全性が確認されるまで
使用を
中止し、
安全性が確かめられたものから認可すべきではありませんか。今後の対応を
厚生労働
大臣に伺います。
食品の
安全性に関する
リスク評価に予防
原則の立場を取ることを求めます。また、子供に配慮した
リスク評価が必要と考えますが、
食品安全
担当大臣の
答弁を求めます。
食品の安全を
確保するためには監視や
規制を行う
リスク管理が肝心です。ところが、本
法案では、これまでどおり産業の育成を図る
各省がそれぞれ
リスク管理を行うことになります。しかも、
食品安全委員会は、
関係行政機関に資料の提供を求めたり
調査を委託できるだけで、
食品関連企業に対する
調査権もありません。
スターリンクの混入や野菜の
残留農薬汚染を摘発し、
行政に是正
措置を取らせたのは、
消費者、市民団体でした。その経験からも、
食品安全委員会任せではなく、
消費者が直接参加して、
食品安全行政を
国民の立場から監視できるようにすべきです。そのために
国民の提言が尊重される
仕組みをつくる必要があります。
食品安全
担当大臣の
答弁を求めます。
食品の安全の
確保のためには
情報の公開が不可欠です。スターリンク事件では、遺伝子組換え作物に関する知的所有権が
検査の大きな障害となりました。また、
リスク評価を密室で行い、その結果を公表するだけでは、
消費者が
意見を表明しようがありません。
食品安全委員会の
リスク評価にかかわる
情報はすべて公開し、
消費者の
意見を反映できる
仕組みにすべきです。
食品安全
担当大臣の
答弁を求めます。
今、
消費者の安全な
食品の選択を保障する表示制度の確立が強く求められています。
国民生活センターの
消費者アンケートでは、賞味期限などの日付表示、原産国・原産地表示、
農薬や抗
生物質、添加物表示が分かりにくい等、九割の人が現在の表示制度に不満を表明しています。
食品表示の統一が必要と国会で
答弁しながら、いまだに
農水省、厚労省のばらばらな表示が統一されていません。この問題も含めて、
消費者の権利としての表示制度の確立を求めます。
厚生労働
大臣の
答弁を求めます。
また、
BSE問題では、汚染原因を特定するための
トレーサビリティーの
確保が大きな
課題となりました。
消費者の権利としての表示、
トレーサビリティーの
確保についてどう具体化していくのか、
農林水産大臣の
答弁を求めます。
安全な食べ物は日本の大地からです。食物自給率がわずか四割というのは先進国の中で日本だけ、正に異常
事態です。イギリスは四二%にまで下がった自給率を現在の七四%にまで引き上げました。日本は同じ時期に七八%だった自給率が四〇%にまで下がっています。国は自給率
向上のために全力を挙げるべきです。
農林水産大臣の
責任ある
答弁を求めて、
質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣谷垣禎一君
登壇、
拍手〕