○藤原正司君
民主党・新緑風会の藤原でございます。
私は、
民主党・新緑風会を代表して、ただいま議題となりました
法案につきまして、
関係大臣に
質問いたします。
まず初めに、エネルギー政策の
見直しについて伺います。
アラブ産油国による
石油減産
措置の発動、すなわち
石油ショックによって
我が国のエネルギー供給構造の脆弱性を思い知らされてから三十年、依然イラク情勢の動向には不透明感があるものの、少なくともこれまでの間、かつてのトイレットペーパーを買い求める長蛇の列のごとき動揺を見掛けたことはありません。仮に
石油ショック当時のエネルギー供給構造の下で今回のイラク戦争が起こっていたとすれば、その社会的混乱はいかほどであったでしょうか。
このことは、正に、この三十年間、一貫してエネルギー需要が増加基調であった中、過去の
石油ショックを教訓に、エネルギー源の多様化を図り、
石油代替エネルギーへの転換を進めてきたこれまでのベストミックス政策の成果であり、その中核的役割を担ってきたのが原子力発電であることは紛れもない事実であります。
石油ショック当時は八割近くにも達していた一次エネルギー供給に占める
石油の
割合は昨年度ついに五割を切り、一方、原子力の比率は一%から一三%に大きく伸長いたしました。発電電力量におきましては、当時、七割以上を占めていた
石油のシェアは一割に低減し、わずか三%であった原子力は基幹電源として三五%を占めるに至っています。
しかし、今、この原子力政策の足下が大きく揺らぎ、ベストミックス政策が危機を迎えつつあるにもかかわらず、
政府の対応は余りにも緩慢であると言わざるを得ません。三十年間の時を経て、過去の教訓が風化しつつあるように思えてならないのであります。
折しも、今、中東情勢の不透明感に加え、昨年の原子力をめぐる諸問題に端を発する需給の逼迫化などにより、エネルギーに対する社会的関心は高まっており、エネルギー安全保障とは何か、その答えが求められています。
人間は有事にこそ物事に優先順位を付けることができ、本当に大切なものが見えてきます。
言うまでもなく、
我が国のエネルギー政策の基本は、昨年の
通常国会で成立したエネルギー政策基本法にうたわれているとおり、安定供給の確保、環境への適合と、これらを十分に考慮した市場原理の活用を図っていくことであります。
しかし、現下の情勢を踏まえたとき、国益にかなった中長期的なエネルギー資源の安定供給の確保こそが最重要
課題であるという紛れもない真実を再度思い知らされているのではないでしょうか。三十年間のベストミックス政策の成果はあったとしても、
我が国のエネルギー供給構造の脆弱性という本質は何も変わっていないのです。
ここで、今回のエネルギー特別会計の
見直しは昨年の経済財政諮問
会議で示されたエネルギー政策の
見直しに基づくものと
理解しますが、この中で、エネルギーを取り巻く情勢の変化として、温暖化防止のための取組強化の
必要性、セキュリティー戦略再構築の
必要性、電力分野における自由化の推進と原子力発電の推進との両立の
必要性と、それぞれ大変立派なお題目が掲げられています。
しかし、エネルギー政策の
見直しとぶち上げた結果がエネルギー特別会計の歳入歳出構造の
見直しだけでは、正直申し上げて拍子抜けであり、これら山積する
課題に対してエネルギー税制の
見直しだけで対応できるとは到底思えません。特に、安定供給の確保、環境の保全、市場原理の活用、これら政策目標はすべて原子力の問題に突き当たるのであり、この本質論議を避け続け枝葉末節の施策に終始することは、
我が国のエネルギー政策の根幹であるエネルギー安全保障、ひいてはこの国の行く末を危うくするものと懸念します。
一方、地球環境問題への対応は新世紀を迎えた人類すべての責務であり、エネルギー政策の
見直しにおいても、当面、地球
環境対策に集中的に取り組むこととされています。しかし、現在、
我が国の温暖化対策が直面する
課題は、
国民の意識やライフスタイルとも大きくかかわる民生、運輸部門におけるエネルギー消費の増大、そして何よりも原子力の新増設の停滞です。今回のエネルギー特別会計の
見直しは、こうした肝心かなめとも言える
課題に対応できるものなのでしょうか。それとも、
政府は、原子力を基軸としたベストミックス政策を見直そうとするのでしょうか。
エネルギー安全保障は、
一つの国家が存在するための時代を超えた普遍的価値であり、正に国家の基本政策であります。エネルギー安全保障など
我が国のエネルギー政策を取り巻く現状認識や今後の中長期的な国家戦略、その中での今回のエネルギー政策の
見直しの政策
効果について、経済産業大臣の御
所見をお伺いします。
次に、今後の地球温暖化対策について何点かお尋ねします。
京都議定書における国際
公約履行のための具体的対策を取りまとめた地球温暖化対策推進大綱は、二〇〇五年度からの第二ステップを控え、各対策の進捗
状況について評価、
見直しがなされることとなっております。一方、
現行の地球温暖化対策推進大綱は、経済産業省の審議会で取りまとめられた長期エネルギー需給
見通しに基づき策定されているものと
理解しています。
そこで、地球温暖化対策推進本部の副本部長である経済産業大臣、環境大臣にお尋ねします。
エネルギー特別会計における歳入歳出構造を見直そうとする今回のエネルギー政策の
見直しの位置付けについて、
現行の長期エネルギー需給
見通しあるいは地球温暖化対策推進大綱の
見直しにつながるものなのでしょうか。両大臣の見解を求めます。
また、今回の石炭課税など
石油税の
見直しの一方で、現在、環境省の審議会の下では、二〇〇五年度からの第二ステップに向け温暖化対策税、いわゆる
環境税について具体的な検討が進められていますが、その審議会の中では大綱における原子力の位置付けは崩れたとの論議もあったやに聞いております。今後の大綱改定に向けて、
我が国の温暖化対策における原子力の位置付けを変えるおつもりなのでしょうか。環境大臣の答弁を求めます。
次に、今回のエネルギー特別会計の
見直しについてお尋ねします。
政府は、今回の
石油石炭税について、受益者
負担を原則とする特会制度の歳出構造を見直すことに伴う必然的なものとし、二酸化炭素排出抑制を主たる目的とした温暖化対策税とは全く性格や内容が異なるとしています。しかし、歳入、歳出両面において
グリーン化を図ろうとする今回の
石油石炭税と現在の環境省の審議会で検討中の温暖化対策税と一体どこが違うのか、釈然としません。仮に、第二ステップ以降直ちに温暖化対策税が
導入される場合、
石油石炭税と二重課税になるのではないでしょうか。それとも、温暖化対策税が
導入される場合、
石油石炭税は廃止されると考えてよいのでしょうか。
さらに、四月一日からスタートしたRPS制度について、
政府審議会の報告書に、新たに包括的な環境・エネルギー政策が
導入される場合には制度との整合につき必要な検討を行うことが求められると明記されていますが、ここで言う包括的な環境・エネルギー政策とは何を意味するのでしょうか。
そもそも、税の特性が違えば二重課税にならないというのは、正に課税側、
行政側の論理であります。
負担する側にとっては、デフレ経済下で新たな
負担の製品価格への転嫁もままならず、単なるコストアップ以外の何物でもなく、過酷な経済情勢の中で懸命に努力する民間
事業者をむち打つようなことは到底容認できるものではありません。現在、環境省において進められている温暖化対策税
導入論議の見解も含め、経済産業大臣、環境大臣の見解を求めます。
また、ガスシフトの加速化を掲げておきながら、なぜ天然ガスの増税を行うのでしょうか。さらに、
現行大綱におけるエネルギー起源の二酸化炭素排出削減のための追加的
措置として鳴り物入りで昨年より
導入された燃料転換に対する支援
措置についてその実績が全く上がっていないことに対し、
政府はどのように言い訳をするのでしょうか。経済産業大臣の見解を伺います。
次に、エネルギー政策の推進に当たっての
政府の
責任についてお尋ねします。
そもそも、
我が国のエネルギー政策の推進主体はどこであり、
責任を有するのはだれでしょうか。例えば、先般の「もんじゅ」
行政訴訟控訴審判決においては、我が党としても今後のエネルギー政策の在り方に一石を投ずるものと重く受け止め、精力的に協議を重ねてきましたが、その過程で痛感させられたのは、
行政側の対応のお粗末さとその無
責任体質であります。
原子力の安全規制について、
政府は、経済産業省と原子力安全委員会によるダブルチェック体制が有効と常々主張してきましたが、今般の判決を通じ、残念ながら原子力安全委員会のメッセージは
国民の耳には全く届いておりません。訴訟当事者は経済産業省と、他人事を決め込んでいた節はなかったのでしょうか。
一方、文部科学省に高速増殖炉サイクル技術の確立に向けた気概は感じられません。原子力長計に描かれた
方針は絵にかいたもちでしかないのでしょうか。スペースシャトル・コロンビア事故のその直後の国家の最高
責任者自らの肉声で、それでも宇宙開発
計画の推進は必要と
国民にメッセージを送った気迫を
我が国のエネルギー政策の推進を担う方々は果たしてお持ちでしょうか。
過日、今般の判決に関し、私が所属する経済産業委員会において
質問通告を行おうとした際も、一体どの省庁に
質問通告すればよいのか分かりませんでした。
我が国のエネルギー政策の実情をかいま見た瞬間であります。
担当省庁が違う、答弁できる立場にない、そのような理屈が通るのは永田町、霞が関の世界だけであり、民間企業ではそのような理屈を押し通せば、そんな企業は時待たずして市場から排除されます。
局益あって省益なし、省益あって国益なし、
責任の所在が不明確、このようなことはすなわち
政府全体が無
責任ということであり、正に縦割り省庁の悪弊の極みであります。そして、そのしわ寄せを被るのは
国民であります。とりわけ、エネルギー政策は国家
国民の将来の行方を左右するものであり、
責任の所在が不明確な政策に果たして実現性があるのでしょうか。
我が党は、これまでから、原子力の安全規制をつかさどる機関の設置とともに、各省庁に分断された
現行のエネルギー
行政体制を一元化する機関の設置を提唱してまいりました。その視点は、総合的かつ戦略的なエネルギー政策を立案、推進し、
国民の将来の安心を担保すること、そのことに対する
政府の
責任の明確化であります。
政策は机上の空論で終わってはなりません。その実現に向けた
責任ある行動が伴わなければならず、それこそが
行政の真髄ではないでしょうか。
今後のエネルギー政策の推進に係る
政府としての
責任及びそれに向けた決意につきまして、科学技術担当大臣、文部科学大臣、経済産業大臣、それぞれの御
所見をお伺いします。
最後に、
我が国のエネルギー政策は今まさに正念場を迎えていると言えます。繰り返しになりますが、エネルギー政策は国家の基本政策であります。国家
国民の将来に向けた
責任ある答弁を
関係大臣にお願いし、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣平沼赳夫君
登壇、
拍手〕