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参考人(
村井敏邦君)
村井でございます。
本日、
参考人として
意見を陳述させていただく機会を与えられまして、大変うれしく思っております。私は、現在、龍谷
大学という京都にある小さな私立
大学ですが、私立
大学の
法科大学院設置委員長ということで、
法科大学院の
設置の
準備に日夜追われている身であります。そういった
立場から、今回の
派遣法案について御
意見を申し上げたいと思っております。
若干の紹介を兼ねまして、
資料として、
法科大学院について書きました二つの論文を
資料として添付させていただきました。
自己紹介をさせていただきますと、私は一九六四年に一橋
大学の商学部を、ドイツ経営学をやりまして、出て、その年に司法
試験に合格しまして、一九六六年から二十期生として
司法研修所に行っております。ここにおられる江田議員とは同期生で、マージャンで大変にいじめられたのですが、楽しい
思い出がありますけれども、いろいろ
司法研修所についても多少の御
意見を申し上げさせていただきたいと
思いますけれども。
基本的に、先ほども申しましたように、私立
大学の、地方の私立
大学の
法科大学院を
設置を目指している者としての
立場から、もちろんこれは
個人的見解ではありますけれども、特に
教育内容等との関係から今回の
派遣法案をどのように考える、若干の
意義と
問題点、そして要望という形でお話しさせていただきたいと
思います。
その本題に入る前に、今回の
法科大学院の在り方、理念、
教育の在り方について、まず前提として御指摘、指摘させていただきますが、二つの
要請があるわけですね、今回の
法科大学院については。一つは、
多様性、レジュメの方では開放、公開性と書きましたが、
開放性、そして
公平性。第二点は、点による
評価から
プロセスによる
評価を達成すると。この二つの
要請があって、この二つの
要請を満足させる
制度と
教育が必要とされております。
そのために、様々な
法律を作っていただき、さらに現場においては現在努力しているところであるわけですが、さてこの二つの
要請を満足させるという観点から、
法科大学院における
理論教育と
実務教育というのはどのような形であるべきかということについて私の
意見を申し述べさせていただきますけれども。
まず、
法科大学院というのは明確な目標を持った
教育が必要になります。従来のそういう意味では
大学とは若干異なるというか、大きく異なると言っていいですね。専門職
大学院における
教育であるということで、研究職を中心とする
研究者を養成する
大学院とも異なってくると。その意味で、
理論と
実務との統合的
教育が是非とも必要である。これはもう否定しようがないわけです。
他方で、法学以外の
教育を受けた人々にも開かれたものであるということ、それが
開放性であり
多様性ということに係るわけですが、その意味で、
多様性を持った
大学院における
教育であるという点において、司法
試験合格者を対象とした
司法研修所における
教育とも異なるわけです。この点は、
司法研修所の
教育と同じようにお考えですと、大変な大きな間違いを起こすということになります。
司法研修所の
教育について多少
意見を申し述べさせていただきますというふうに言いましたが、これは配付しました
資料の二つ目のものですが、「新司法
試験、司法修習のあり方」と題した論文の六十五ページに若干書いておきました。
司法研修所の
教育を受けた人間としては、それはそれなりに私は良かったとは思っているんですが、やはり一か所に集められて
教育をするということでの大変な、バラエティーがないといいますか、画一性が生まれてくるという問題があります。
現実に画一的な
教育をやっているつもりはないというように教官の方々はおっしゃるだろうとは思うんですが、司法修習生の中には、最近の傾向、この十年、二十年の傾向と言ってよろしいでしょうか、では教官がどのように考えているか、それに沿った、例えば私は刑事関係の専門にやっておりますので、例えば無罪判決を書きたくてもやはりタフな
結論を出さないとまずいというように少なくとも修習生は考えている。そのために、少なくともタフな判決を出さないと、判決
意見を出さないといじめられるというんでしょうか、徹底的にやられるというようなことで、できるだけ大勢に沿ったタフな
結論に出していくんだという、その方が得なんだという
思いがあるということですね。それが言わば萎縮効果というんでしょうかね、そういうものになっているということで、画一的な
教育になってしまう要素がある。その辺りは、今回の
法科大学院においては、一つは専門家、一応の司法
試験の合格者を対象とするものではないということと併せて、
司法研修所の
教育とは異なるということを自覚しなければならないところだと
思います。
いずれにしましても、今回の
法科大学院における
理論教育、
実務教育ともに新しい
方法と
内容を持ったものであり、それのための新しい創造力を持って創意
工夫をして確立していかなければならない。この点は
設置申請の
段階でも要求されますけれども、いわゆるFD研究会といいますが、ファカルティーディベロプメント、要するにどういった形で
教育するかというのをお互い討議しながら
教育方法について模索していくためのファカルティー
メンバーでの研究会を持つこととなっていますが、従来から持っているんですが、これは一層やっていかなきゃならない。もう現に
準備段階で我々はやっておるわけですけれども、そこに
準備段階からかかわってもらう人たちを必要としております。この点がまず前提として踏まえなければならない点だと
思います。
そして、具体的に
派遣法案の
意義と
問題点について述べさせていただきますが、
意義は大きくあります。
理論と
実務の統合的
教育の場としての
法科大学院にとっては、
現職であれ
現職でなくても、
現職実務家の
協力というのがあるということは必要なことではあります。これを容易にする
法案の
意義は大きいと思われます。
しかし、他方で、
問題点幾つか、現場にいる人間から言わせていただく
問題点があります。第一に、
大学の
教員というのは
教育と研究さえしていりゃいいんだというような、そんな簡単なものではないんですね。雑多な雑務があります。事務との関係、事務職員をどのようにするか、自分
自身が事務をしなければなりません。簡単な話、コピー一枚取るのも自分でやらなきゃならないんです。大変なことです。それで、十二時ぐらいまで、夜の十二時ぐらいまでも
学生とも付き合わなきゃならない。朝早くから、九時半から、九時ぐらいから
会議をやって、一日
会議をやって、一体いつ研究するんだ。企業の研究所から来た人は、これじゃ
大学の研究できないじゃないかというように苦情が出ています。それほど雑多な職務をこなさなければならない
大学の
教員の、現場というのはなかなか御理解いただけないとは思うんですが、そういった
立場にいるということと
現職裁判官、
検察官の
立場との競合というのは果たしてできるかという問題、これは是非やっていただかなきゃならないんですが、大変なことです。そのまず大変であるということを御認識いただきたい。
付け加えて言いますと、薄給です。薄給で大変だという
教員の
立場を、そこに飛び込んで理解していただく
教員が必要なんです。そういったことがまず第一点として指摘しておきたいと
思います。
それから、関連しますけれども、やはり
法科大学院での新しい
教育と研究を構築するということになりますとチームワークというのが必要です。このチームワークとしての
教育構築の
必要性と、今回の
法案における
派遣形態との大きなギャップがどうもあるんですね。先ほどから言いましたけれども、
準備段階からかかわっていただいて
教育内容等を構築するということが果たしてできるんでしょうか。この辺、お客さんではないということですね。お客さんでないような
派遣法案にしていただきたいということになります。
この点との関係で先ほど来出ておりますけれども、
大学側に
人選の自由がないということ、これは大きな問題です。この人に来ていただきたいというようなのを我々、現在もう申請間近ですから、既にほぼ
人選を固めているわけですね、どの
大学も。その中で
人選をするのは、この人は我々チームワークの中に、チームの中に加わってもらうのに適切であるということで三顧の礼をもって来ていただく人たちであるわけですけれども、そして、
準備段階からいろいろと御相談申し上げて構築していくという形ですが、果たしてそれは今回の
派遣法案の中では、残念ながら
人選は
大学側にはないという形ですので、この点は是非とも修正をお願いしたいという点であります。
それから、先ほど来申しておりますように、
多様性が必要です。
多様性が求められている
教育内容と
裁判官、
検察官の
現職保持のままの
教育とのギャップというのも大きな問題です。先ほども言いましたけれども、いろいろなことをやると言いましたけれども、
法学部における、あるいは
法科大学院における
教育もそうですけれども、全く今回は法学を履修していない人たちも受け入れます。法学の基礎から教えなければなりません。これは大変な努力を要します。この辺りにもかかわっていただきたい。
現職の
裁判官であれ
検察官であれ、
教員である限りはかかわっていただきたいということになりますと、果たしてばっと来てさっとできるものであろうか、
現職という
立場でそれが可能なんだろうか、そういう人たちをどうやって求めればいいのか、その辺りをある意味では苦慮しているということになります。
それから、先ほど来大きなポイントとして出ておりますけれども、待遇が違うということですね。
法案で補てん、
法案ですと
大学の安月給を補てんされる、大変に結構なことだとは思うんですが、先ほどから出ておりますけれども、既に
現職を辞めて、若い人でも
現職を辞めて、私のような
大学にも若い、
裁判官を辞め、若くして
裁判官を辞めて来ていただいている優秀な人材がおります。この人は安月給で甘んじております。大変に力を尽くしていただいておりますけれども、その人と同期の人が仮に来たとして、月給が全く違う。これはちょっと大変、いや面白くないという気持ちができるのは当然だろうという気がします。そういった多様な待遇の違いのある人を抱え込むというのは、これは管理者的発想からしますと
人事管理は大変に難しいということになりまして、これは容易に御想像いただけると
思います。
それから最後に、
法曹を目指す人々、
学生ですね、受験生等のニーズとの関係で言いますと、確かに
現職実務家の専門家の
教育を受けるということは大変面白いことだし、喜びになるだろうと思われますけれども、他方で
教育の専門家でないということで、よほど
教育の専門家であるための御努力をいただかないとニーズに合わないということになります。この点は不安の残る点であります。
もう一つは、現在
法科大学院を目指している人たちにとって一番の頭の痛い問題は授業料です。これは
大学側、
設置者としても一番頭の痛いところです。この授業料に対しての何らかの補てんですね、補てんという言葉を使うならば、そちらの方の補てんいただくんだったらいいけれども、
裁判官に対して補てんというのはどうも、
自分たちは関心はないし、むしろその金をこちらへ回してもらえないかという要望は、私
自身、
学生からも聞いております。そういった点での
派遣裁判官、
検察官への
給与補てんへの疑問というのが生じております。
最後に、若干の要望を申し述べておきますけれども、先ほども言いましたように、
派遣裁判官等についての
大学側の要望が入れられるということ。それから第二番目に、
実務家教員間での待遇格差を生じさせる
給与の補てんというのは是非とも考え直していただきたいということ。第三に、
大学からの特定の
裁判官、
検察官等に対する非常勤、
パートタイム教員就任
要請に対して最大限の便宜を図っていただきたいと。この点が
派遣法案で実現すべき点ではないかというように思っております。第四番目は、
法科大学院認可、
評価に当たって、
派遣を受ける受けないという
大学側の判断が
不利益な取扱いを受けないことを明記していただきたいといいますか、この点は是非
配慮事項として入れていただきたいと
思います。
こんなばかな話はないだろうと、毅然たる態度でいいんだというように思われるでしょうけれども、先ほど
宮澤参考人からもありましたように、
大学側はこの点
懸念しております。
懸念が萎縮効果になっているというのが事実です。その点を是非御
配慮いただきたいと
思います。
最後に、付け加えて、先ほど来言っておりますニーズとの関係からいいますと、奨学金とかローン
制度の充実によって
学生の授業料負担の軽減を図ることを強く要望して、私の
意見陳述とさせていただきました。
ありがとうございました。