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2003-05-27 第156回国会 参議院 武力攻撃事態への対処に関する特別委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十五年五月二十七日(火曜日)    午前十時三分開会     ─────────────    委員異動  五月二十六日     辞任         補欠選任      広野ただし君     田村 秀昭君  五月二十七日     辞任         補欠選任      岩佐 恵美君     畑野 君枝君      又市 征治君     田  英夫君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         山崎 正昭君     理 事                 阿部 正俊君                 国井 正幸君                 中川 義雄君                 山本 一太君                 齋藤  勁君                 榛葉賀津也君                 山口那津男君                 小泉 親司君                 平野 達男君     委 員                 愛知 治郎君                 泉  信也君                 加治屋義人君                 木村  仁君                 北岡 秀二君                 近藤  剛君                 椎名 一保君                 田村耕太郎君                 武見 敬三君                 谷川 秀善君                 月原 茂皓君                 福島啓史郎君                 舛添 要一君                 松山 政司君                 山下 善彦君                 吉田 博美君                 池口 修次君                 岩本  司君                 岡崎トミ子君                 川橋 幸子君                 佐藤 雄平君                 谷林 正昭君                 広中和歌子君                 松井 孝治君                 若林 秀樹君                 福本 潤一君                 山本 香苗君                 山本  保君                 池田 幹幸君                 畑野 君枝君                 吉岡 吉典君                 田名部匡省君                 田村 秀昭君                 田  英夫君    衆議院議員        修正案提出者   前原 誠司君        修正案提出者   渡辺  周君    国務大臣        外務大臣     川口 順子君        国務大臣        (内閣官房長官) 福田 康夫君        国務大臣        (防衛庁長官)  石破  茂君    副大臣        防衛庁長官   赤城 徳彦君    大臣政務官        防衛庁長官政務        官        佐藤 昭郎君        外務大臣政務官  日出 英輔君    政府特別補佐人        内閣法制局長官  秋山  收君    事務局側        常任委員会専門        員        田中 信明君    政府参考人        内閣官房内閣審        議官       増田 好平君        内閣官房内閣審        議官       貞岡 義幸君        内閣法制局第一        部長       宮崎 礼壹君        内閣大臣官房        審議官      山口 勝己君        警察庁警備局長  奥村萬壽雄君        防衛庁長官官房        長        山中 昭栄君        防衛庁防衛局長  守屋 武昌君        防衛庁運用局長  西川 徹矢君        消防庁長官    石井 隆一君        外務省総合外交        政策局長     西田 恒夫君        外務省総合外交        政策局軍備管理        ・科学審議官   天野 之弥君        外務省総合外交        政策局国際社会        協力部長     石川  薫君        外務省アジア大        洋州局長     薮中三十二君        外務省北米局長  海老原 紳君        外務省中東アフ        リカ局長     安藤 裕康君        外務省経済協力        局長       古田  肇君        財務大臣官房審        議官       小寺  清君        経済産業省貿易        経済協力局貿易        管理部長     細川 昌彦君        国土交通省政策        統括官      鷲頭  誠君        海上保安庁警備        救難監      横山 鐵男君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○安全保障会議設置法の一部を改正する法律案(  第百五十四回国会内閣提出、第百五十六回国会  衆議院送付) ○武力攻撃事態における我が国の平和と独立並び  に国及び国民の安全の確保に関する法律案(第  百五十四回国会内閣提出、第百五十六回国会衆  議院送付) ○自衛隊法及び防衛庁職員給与等に関する法  律の一部を改正する法律案(第百五十四回国会  内閣提出、第百五十六回国会衆議院送付)     ─────────────
  2. 山崎正昭

    委員長山崎正昭君) ただいまから武力攻撃事態への対処に関する特別委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨二十六日、広野ただし君が委員辞任され、その補欠として田村秀昭君が選任されました。  また、本日、又市征治君及び岩佐恵美君が委員辞任され、その補欠として田英夫君及び畑野君枝君が選任されました。     ─────────────
  3. 山崎正昭

    委員長山崎正昭君) 安全保障会議設置法の一部を改正する法律案武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律案及び自衛隊法及び防衛庁職員給与等に関する法律の一部を改正する法律案の三案を一括して議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  4. 近藤剛

    近藤剛君 おはようございます。自由民主党近藤剛でございます。事態関連三法につき質問をさせていただきます。  将来直面する可能性のある外部からの武力攻撃などの緊急事態に対しまして、平時こそ十分な検討議論を重ねて、法治国家にふさわしい体制を整えておくことは当然なことでございます。しかしながら、さきの大戦後、半世紀以上にわたりまして、我が国は、緊急事態に対する法的枠組みはおろか、なすべき国家安全保障にかかわる当然の議論さえもないままに過ごしてきた事実を、今般の三法案審議に当たりまして改めて思い起こすのであります。  国家の果たすべき使命のうち、国民生命財産の安全を確保すること以上に重要なものはありません。いざという場合には政府による超法規的措置に期待したのではありましょうが、少なくとも我々立法府においては、その法的枠組みを整えておくという国家としての必要最低限義務を実に半世紀以上にわたり果たすことができなかったわけであります。もとより、その第一義的責任は我々国会議員の不作為に求められねばならないと思います。  しかし、ようやく今月の十五日になりまして、衆議院におきまして、三法案修正の上、与党三党に加えて民主党自由党の賛成を得て可決されました。ここに改めて衆議院におきます関係五党の皆様方の御尽力と、特に、野党にありながらも全国民の代表としての責任をしっかりと果たされた民主党自由党皆様の勇気と責任感に心からの敬意を表するものでございます。  今般の三法案は、我が国のこれからの安全保障政策の法的な枠組み国民の安全の確保にとりまして、最低限有すべき防衛能力確保維持するための基盤としての役目を果たすものであると考えます。また同時に、これら三法を発動する事態を回避するための予防外交在り方、あるいは新しい二十一世紀世界の平和と繁栄に向けた自主的な積極平和外交世界への貢献の在り方などにつきまして、改めて国民とともに考える新たな出発点であろうかと思う次第であります。  そこでまず、武力攻撃事態等の場合に国が必要な行動を取ることを法的に裏付ける枠組み整備に関しまして質問をいたしたいと思います。  武力攻撃事態法案の第二十二条の第一項から二項にかけまして事態対処法制整備規定が置かれております。これら二項の文面だけでは必ずしも明確ではありませんが、武力攻撃事態等有事に当たりまして、措置が当然に必要となる蓋然性の高い幾つかの事項がございます。例えば、国外送金制限輸出入制限国内資産凍結船舶航空機入港、乗り入れの制限周辺海域並びにシーレーン安全確保、あるいは重要施設警備などでございます。  これらの措置を国が実施する必要がある場合、法的基盤は既に整っていると考えていいのか、それとも新立法が必要なのかどうか。その場合、本法案で必要な立法が速やかに整合性のある形で立法されることが担保されると考えていいのかどうか。これらの点につきまして、念のため御確認お願いをしたいと思います。  項目ごと主務官庁が異なると思いますが、まず総括的に内閣官房からお答えをいただきまして、その後、必要に応じそれぞれの御担当の官庁からお答えをいただきたいと思います。
  5. 増田好平

    政府参考人増田好平君) お答えいたします。  武力攻撃事態等におきましては、これらの事態を終結させるために、また国民生命身体及び財産保護するために様々な対処措置を実施することとなるわけでございますが、そして、御指摘のそれぞれの措置につきましてはそれぞれお答えいただくことが適当と存じますけれども、総じて言えば、現行法を根拠に実施できる場合もあると考えておりますが、武力攻撃事態等におきまして、いかなる条件でいかなる措置を実施すべきか、更なる法的措置が必要となるのかということにつきましては、今後具体的に検討してまいりたいと考えております。
  6. 小寺清

    政府参考人小寺清君) 失礼しました。  じゃ、外為法観点からお答えさせていただきます。  現行外為法上、海外送金制限につきましては、外為法第十六条第一項におきまして、我が国が締結した条約その他の国際約束を誠実に履行するため必要があると認めるときには、本邦から海外に向けた送金等について許可制とすることができるとされておりまして、例えば、国連決議安保理決議等に基づけば、送金停止等措置を講ずることができることになっております。  また、同条におきましては、国際平和のための国際的な努力我が国として寄与するために、特に必要と認められるときには送金等停止を行えることとなっておりまして、例えば、国際社会によって、あるいは少なくとも我が国を含む二か国間以上の政府等協調により国際平和のための具体性特定性を持った外交的努力が行われている場合に、我が国としてそうした外交努力実効性確保するために特に必要と認められる場合には送金停止等措置を講ずることとなっております。  一方、資産凍結、例えば預金の引出し等資本取引許可制の発動につきましては、法二十一条に規定されておりますけれども、法十六条と同様に、我が国が締結した条約その他の国際約束を誠実に履行するため必要があると認めるとき、又は国際平和のための国際的な努力我が国として寄与するために特に必要とあるときといった二つの要件の下で資産凍結等措置を講ずることが可能となっております。
  7. 細川昌彦

    政府参考人細川昌彦君) 輸出入制限につきましてお答えいたします。  輸出につきましては、外為法の四十八条の三項、輸入につきましては外為法の五十二条がございます。これらによりまして、外国貿易及び国民経済の健全な発展を図るために、国際協調体制確保要件にいたしまして承認を受ける義務を課すことができると、かようになっております。
  8. 鷲頭誠

    政府参考人鷲頭誠君) 船舶航空機入港、乗入れ制限について御説明申し上げます。  現行法では船舶航空機航行に関しまして当該船舶航空機航行の安全を確保するという観点から、例えば港長、これは海上保安部長などでございますが、は、特定港内におきまして船舶交通制限するといった措置を講ずることができますし、また、国土交通大臣航空機飛行禁止空域というものを定めることができることがございますし、港則法航空法などに基づきまして船舶航空機航行禁止制限を行うことが可能でございます。
  9. 横山鐵男

    政府参考人横山鐵男君) 海上保安庁任務についてお答えを申し上げたいと思います。  海上保安庁法第二十五条におきまして、この法律のいかなる規定海上保安庁又はその職員軍隊として組織され、訓練され、又は軍隊の機能を営むことを認めるものと解釈してはならない、このように規定をされております。海上保安庁といたしましては、この規定に抵触しない範囲内におきまして海難の救助、海上犯罪取締り等、当庁の任務を適切に遂行することとなるというふうに考えております。
  10. 西川徹矢

    政府参考人西川徹矢君) 周辺海域並びにシーレーン安全確保という点からお答え申し上げます。  武力攻撃事態におきまして、自衛隊防衛出動を命ぜられました場合に、我が国周辺海域等における我が国船舶安全確保に当たることが想定されますが、その際に必要な事項につきましては、自衛隊法の七十六条及び第八十八条等に規定されているところでございます。  それから、武力攻撃事態以外の緊急事態に際しましての我が国周辺海域等におきます我が国船舶安全確保につきましては、海上における人命、財産保護又は治安の維持第一義的責任を有します海上保安庁によって対応が不可能な若しくは著しく困難な場合に、自衛隊法の八十二条に規定します海上警備行動によりまして自衛隊がこれに当たると、こういうことになっております。
  11. 奥村萬壽雄

    政府参考人奥村萬壽雄君) 重要施設警備につきましては、警察法二条一項に警察責務という規定がございます。これは犯罪予防、鎮圧及び捜査、被疑者逮捕、その他公共の安全と秩序の維持に当たること、これが警察責務でありますけれども、この責務にのっとりまして、時々の警備情勢あるいは施設重要度等を勘案いたしまして、重要施設に対する警察部隊あるいは警察官配置等を行っております。  それから、具体的な警察官権限法規といたしましては、職務質問あるいは警告、制止それから武器の使用等につきましては警職法に規定がございますし、それから刑訴法の現行犯逮捕、あるいは銃刀法に基づく危険物件の一時預かり、こういった個々の権限法規規定によりまして、これらをフルに駆使をいたしまして重要施設警備を行っているということでございます。
  12. 近藤剛

    近藤剛君 それぞれ御説明いただきましてありがとうございました。大体理解できました。  今お伺いいたしましたように、我が国国内法自衛隊関連法あるいは災害対策関連法などを除きまして、ほとんどが平時法でございます。有事を想定して整備されていないのが実態であろうかと思います。是非、これを機会に経済金融関係法なども含めまして、広く法律を点検をしていただいて、安全保障条項を必要に応じ追加されることを是非期待をしておきたいと思います。  続いて、同じく事態法案二十二条の三項につき、お尋ねをいたします。  ここでは、米軍との共同行動あるいは米軍への支援についての規定が置かれております。武力攻撃事態等にありましては、第三条第六項では想定されていると思いますが、国連憲章第四十二条などに基づきまして、我が国に来援する多国籍軍などにも適用可能な措置にしておく必要があると考えますが、いかがでありましょうか。御確認お願いをいたします。
  13. 増田好平

    政府参考人増田好平君) お答えいたします。  武力攻撃事態対処法案の第二十二条第三号が事態対処法制の内容として予定している米軍行動円滑化に関する措置は、米軍日米安保条約に従って我が国に対する武力攻撃を排除するために必要な行動が円滑かつ効果的に行われるように我が国が実施するというものでございまして、したがって、御指摘国連決議に基づく多国籍軍に対する措置については、事態対処法制整備として想定しているものではございません。
  14. 近藤剛

    近藤剛君 それでは、これからどう考えるんですか。
  15. 増田好平

    政府参考人増田好平君) 事態対処法制で想定しておりますのは、正に我が国に対する武力攻撃があった場合に、アメリカ合衆国が日米安保条約の五条に従って我が国を防衛するために必要な行動を取るということになっておりますので、そのための米軍行動を円滑にするためにどのような措置が必要かということについて検討した上で措置しようとしているものであるわけでございます。
  16. 近藤剛

    近藤剛君 したがいまして、国連から救援として派遣されてくる軍隊に対して我が国はどう対応しようとするんですか。
  17. 増田好平

    政府参考人増田好平君) 仮にそのようなことがあった場合にはどうするかということは、今後の検討課題ではないかと考えますが。
  18. 近藤剛

    近藤剛君 御検討を賜りたいと思います。  次に、事態法案第五条に関連し、お尋ねいたします。  ここでは、地方公共団体責務につき定められております。ただ、その責務を果たすために必要な公的権限既存法体系で十分なものなのかどうか考える必要があろうかと思います。また、第二十二条は、政府法整備法制整備義務につき述べられております。この政府法制整備義務の中には条例も含まれると理解してよろしいのでありましょうか。  この二点につき、御確認お願いをいたします。
  19. 増田好平

    政府参考人増田好平君) お答えいたします。  まず、第一点目の点でございますけれども、地方公共団体は、地域並びに住民生命身体及び財産保護する使命を有しておりまして、武力攻撃事態等への対処に関しましても必要な措置を実施する責務を有するわけでございます。  他方武力攻撃に伴う国民の被害への対処は、自然災害等への対処とは異なる側面も多く、災害対策基本法等既存法体系をそのまま武力攻撃事態等に適用させることはできないと考えております。このため、政府としては、国民保護法制整備が極めて重要な課題であると考えておりまして、当該法制を早期に整備し、地方公共団体がその責務を十分に果たせる仕組みを設けることとしております。  なお、仮に国民保護法制が未整備の間に武力攻撃事態が発生した場合は、地方公共団体は、警察消防関係法など現行法規定に基づきまして、住民生命身体及び財産保護のため必要な措置を可能な限り講ずることとなるわけでございます。  それから、二点目の点でございますけれども、事態対処法案の第二十二条は、政府に対しまして事態対処法制、すなわち法律整備義務付けたものであると考えておりまして、地方公共団体による条例の制定は含まれていないところでございます。  他方、今後の事態対処法制整備に関連いたしまして、地方公共団体が必要な条例整備することは想定されるところでございます。例えば、国民保護法制では都道府県や市町村の国民保護対策本部の運営に関する事項など、一定の事項につきましては地方公共団体条例で定めるよう規定することを想定しているところでございます。
  20. 近藤剛

    近藤剛君 よく分かりました。  しかし、いかに責任権限が明確になったとしても、有事にあってはそれだけで実効性が十分に確保できるわけではありません。地方公共団体など関連先との日ごろの緊密な連絡必要事項に関する研修、定期的な演習の実施などが特に必要であると思います。  これらにつきまして、どのような準備を現在具体的にされておられるのか、あるいはなされる御予定か、御説明をお願いをいたしたいと思います。
  21. 増田好平

    政府参考人増田好平君) お答えいたします。  武力攻撃事態等対処に当たりましては、平素から行政機関相互の緊密な連絡を取ることが重要であるということは当然のことでございます。国民保護のための法制では、国が策定する基本方針に基づきまして、指定行政機関地方公共団体指定公共機関等国民保護に関する計画を策定し、全体として国の方針に基づく対処が実施される態勢を構築することとしておりまして、その態勢に基づいて行政機関相互連絡平素から緊密にするようにしていきたいと考えておるところでございます。  また、御指摘のあった関係者研修や訓練についても重要と考えておりまして、これらの措置につきましては法律上の規定必要性を勘案しつつ検討してまいりたいと考えております。
  22. 近藤剛

    近藤剛君 この点につきまして、石破長官、何か御所見ございますか。
  23. 石破茂

    国務大臣石破茂君) 今、増田審議官からお答えになったとおりだと思います。  ただ、それを本当に一つ一つきちんと検証して答えを出すという姿勢が私どもには必要なのだというふうに思っておるところでございます。
  24. 近藤剛

    近藤剛君 ありがとうございました。  次に、事態法案第三条第四号、日本国民の自由と権利につき念のため確認させていただきたいと思います。  ここでは、国民、「国民の」と表現されておりますが、憲法の一部では御承知のとおり「何人も」との表現がなされております。当然のことではございますが、これは日本在留の善良なる外国人についても適用されるべきものと考えておりますが、それでよろしいでしょうか。御確認お願いをいたします。
  25. 増田好平

    政府参考人増田好平君) お答えいたします。  一般に、法律におきまして「国民」と書かれております場合、国民とは日本国籍を有する者をいいまして、外国人は含まれないということであろうと思います。  武力攻撃事態対処法案第三条第四項に規定いたします武力攻撃事態への対処国民の自由と権利との関係に関する基本理念は、憲法における基本的人権についての考え方にのっとったものでございます。また、憲法第三章の国民権利及び義務に関する規定は、その性質上日本国民を対象としていると解されているものを除き、外国人に対してもひとしく及ぶものと解されておるところでございます。  したがって、法律的意味におきましては、国民外国人は含まれないわけでございますが、この規定に掲げられた基本理念は、日本に居住し又は滞在している外国人についてもひとしく及ぶべきものであると、そういうふうに考えているところでございます。
  26. 近藤剛

    近藤剛君 御確認ありがとうございました。  なお、この点に関連いたしまして、法案とは直接関係ございませんが、帰化により日本国籍を取得された方々の人権につきまして、有事にあっては特に留意が必要だろうと思います。  御記憶にありますように、第二次大戦中のアメリカにおきまして日系アメリカ人人権が長期間にわたり侵害された悲しむべき歴史がございます。最近でも、九・一一の後、イスラム系アメリカ人人権侵害の事例が多く見られました。米国政府もその是正に苦労したとのことであります。これらに類似した事件が我が国で起こることがないように十分に注意をしておくべきであります。この点につき、何か御所見がございましたらお聞かせいただきたいと思います。
  27. 増田好平

    政府参考人増田好平君) お答えいたします。  帰化によって日本国籍を取得された方に対する差別はそもそもあってはならないことでございまして、日本国籍を取得した者は日本人でありまして、日本憲法が保障する基本的人権を享有することは当然だろうと考えております。
  28. 近藤剛

    近藤剛君 ただいまの点につきまして、川口大臣、何か御所見ございますか。
  29. 川口順子

    国務大臣(川口順子君) 今まで政府参考人から答弁があったように、人権の問題というのは非常に重要な問題でして、我々は何をするに当たってもこの問題をきちんと心に留めて行動しなければいけないと思います。  過去、委員が挙げられた例あるいはその他の例、様々なその例について思いをいたしますときに、委員の御指摘のように、この問題については十分に注意を政府としてしていかなければいけないと思っております。
  30. 近藤剛

    近藤剛君 ありがとうございました。  次に、事態法案第九条及び第十条に関する手続につきお伺いをいたします。  武力攻撃事態等に至った場合、基本方針を定め、対処措置を実施するには安全保障会議の議を経て閣議の決定の後国会の承認を求めることになっています。有事は多くの場合、突然起こる可能性があります。時間的な余裕は余り期待できないと考えておくべきであろうかと思います。  例えば、日本周辺のある場所で我が国に対するミサイル攻撃が明白に意図され、燃料注入も開始されたとの確実な情報に接した場合、我が国は直ちに第九条及び十条に規定する手続を行った上で米軍の支援を仰ぐ必要があるのではないかなと、そのように想像をするわけであります。これらを極めて限られた時間で、例えば二、三十分の間に行う必要があります。その場合、本当に間に合うのかどうか、あるいは間に合わせるための何らかの工夫の余地があると考えておられるのかどうか、間に合わないで結局は超法規的に処理するというのでは何のための今回の法制かということになります。御確認を賜りたいと思います。
  31. 増田好平

    政府参考人増田好平君) お答えいたします。  武力攻撃事態への対処に際しましては、政府は、事態の認定等の重大な判断を極めて限られた時間的制約の中で的確に行うとともに、当該判断に基づく各種の措置の実施を迅速に行うことが必要となるのは当然でございます。  かかる政府の意思決定につきましては、法案の仕組みとしては、安全保障会議の果たす役割が重要であることから、法案におきまして同会議の機能の強化を図っているところでございます。  例えば、安全保障会議内閣官房長官を長とする事態対処専門委員会を設置することとしておりますが、この委員会は、事態が現実に起こったときに迅速かつ的確に対応できるよう、平素から専門的な調査分析を行い、安全保障会議への進言を行うものでございまして、対処基本方針の迅速な策定がこれにより図られることになるものと考えております。また、対策本部長たる内閣総理大臣に総合調整権を付与するということなどによりまして、対処措置の的確かつ迅速な実施を図ることとしております。それに加えまして、当然のことながら、日ごろからの情報収集機能の強化というふうなことを通じて、対応に遺漏なきを期したいと思っております。  超法規というような措置が取ることは全く考えておりません。
  32. 近藤剛

    近藤剛君 この点につきまして、石破長官、何か御懸念ございますか。
  33. 石破茂

    国務大臣石破茂君) 間に合わなかったら、これは大変なことになります。しかし、先生御指摘のように、超法規ということをやってはいけない。そうすると、言葉の上では今のような御説明になるわけですが、本当にそんなことできるのかねということだと思います。  言葉の上では整理はできますが、実際に今我が国が敵地攻撃能力を持つという選択をしていないわけでございます。そうすると、どういう形で米軍がそこにおいて打撃力を行使するのか、そこにおいてどのような形で調整を行い、先生のお言葉をかりれば要請とか依頼とかいうものをどのように行うのかということになるのだろうと思っております。  それとまた、先生から後ほど御質問があるのかもしれませんが、例えば迎撃ミサイルというものを持つ場合に、本当にごく限られた時間でどのように意思決定を行うのかということは、本当に私はある意味秒単位の世界なんだろうと思っています。分単位の世界というよりももう秒単位の世界で行われる意思決定であって、きちんきちんとそのことを詰めてみませんと、理屈の上ではできましたが、実際にやったらできませんでしたというようなことがあってはならないというふうに思っております。
  34. 近藤剛

    近藤剛君 ありがとうございました。正にそのとおりなんだろうと思います。是非、総理に対する事前の権限の移譲なども含めまして、実態に即した検討是非早期にやっていただくことをお願いをしておきます。  次に、事態法案第四条に関しましてお尋ねをいたします。  ここでは、国は、組織及び機能のすべてを挙げて、国全体として万全の措置を講ずるものとされているわけであります。武力攻撃事態にありましては、その措置の中核は自衛隊によります防衛出動であろうかと思います。  そこで、石破長官にお伺いをいたします。自衛隊にありまして組織及び機能のすべてを最も効果的に活用して運用するためには、陸海空の緊密な連携と統合運用に向けた態勢整備が必要であろうかと思います。この点につきまして、通信、指揮系統上、現状で問題がないのか、あるとすれば今後どのようにその完成度を高めていくのか、このような点に関しまして、その基本的な御方針及び御所見をお示しいただきたいと思います。
  35. 石破茂

    国務大臣石破茂君) このことにつきましては部会でも随分先生からも御教示をいただきました。もう一度確認のために答弁をさせていただきたいと思います。  先生おっしゃいますように、まさしく統合ということが大事なのであって、陸は陸、空は空、海は海というようなことをやっておっても仕方がないわけでございます。したがいまして、統合運用に関する検討というものが昨年の四月、中谷防衛庁長官、当時の長官から指示が出されまして、将来にわたって迅速かつ効果的に自衛隊任務を遂行し得る統合運用の態勢について抜本的な検討を行うということになりました。昨年の十二月、私に対しまして報告書がなされたわけでございます。  これまで、先ほど申し述べましたように、今までは運用は各自衛隊ごとにやることを基本とするのだということでございましたが、今度は、統合運用を基本とする、そういう態勢に移行することといたしました。これは意外と大変なことでございまして、これはアメリカも含めまして、どの国もどうやって統合運用するのかということについては悩みに悩んできたことですし、現在も悩んでおります。  現在、決まっておりますといいますか、提言がなされておりますのは、一つは、長官の補佐といいうのを軍事専門的に行うわけでございますが、これを一元化するために、まだ仮称でございますが、統合幕僚長というものを作ろうと。長官の軍事的な補佐というのは、統合幕僚長なるものを作りまして、そこにおいて一元化されるということが一点。そしてまた、それを統合運用いたしますための組織として統合幕僚組織というものを作らなければいけないのだということ。そして、その運用の実効性確保するために必要な基盤整備しましょうということです。  この必要な基盤と申しますのが、まさしく先生が御指摘になられましたような、じゃ、その通信、情報交換というのはどうなっているんですかと。陸は陸、空は空、海は海で、ばらばらの通信系統を持っておってそういうことができるのかというようなこともございます。したがいまして、この統合というものを実際に可能にするために、特に私はその通信系統というものが一番大事なんだと思っています。  ただ、一元化をしてしまいますと、それによって、攻撃を受けたとしたならば、今までは陸はやられたが海と空の通信系統は生きていたということがあったわけですが、そこを一元化を本当にしちゃいますと、一つやられたら全部ダウンするということが起こりかねない。だとするならば、それのバックアップ体制というものをどのようにしていくべきかという議論もしていかなければいけないことだと思っております。  この統合の運用というものを可能にいたしますためには、まさしくそういうことを詰めていかなければいけないということでございますし、これは党でも随分御議論をいただいておることでございますが、統合というのは運用だけやったって仕方がないお話でございまして、それを装備でありますとか人事でありますとか、そういうものまで広げていかなければいけないことだと思っておりますが、まず運用というものを統合してやることに可能な基盤整備ということにつきまして今議論を詰めさせていただいておるところでございます。
  36. 近藤剛

    近藤剛君 分かりました。是非その方向で御検討を深めていただきたいと思います。  次に、事態法案附則第二並びに安保会議設置法改正案に関連してお伺いをいたします。  アメリカにおきましては、二〇〇一年九月十一日の同時多発テロの後、本土防衛法を制定をいたしまして、本土安全省を設立をいたしました。これは我が国のいわゆる専守防衛と同じ思想に立った措置であります。  我が国にとりまして、この本土防衛法に基づくいわゆる専守防衛をねらいとした全体のシステムの考え方は、これからの緊急事態へ対応する組織作りにある程度参考になるのではないかなと考えます。少なくとも研究の価値はあると思うのであります。  また、安全保障会議につきましては、この改正案によりますと、構成メンバーも一部変わります。機能の強化が図られるわけでありますが、平時から内閣総理大臣を補佐する国家安全保障政策の立案調整の任に当たるスタッフを擁する組織体として、アメリカのホワイトハウスにあります国家安全保障会議、NSC類似の役割を担うことも今後検討してもよろしいのではないかなと思うわけであります。  この点に関連いたしまして、基本的なお考えが何かございましたらお聞かせいただきたいと思います。
  37. 石破茂

    国務大臣石破茂君) 後ほど、各論に関しましては内閣官房からお答えをいたします。  先生の御質問聞いてそうだなと思うのですけれども、要するにアメリカは、今まで国土安全保障ということを実は考えてこなかったと。九・一一、ハワイという例外はあるにしても、九・一一ということで、本当に国土がやられるんだと、ということで国土安全保障省というものを作った。でも、それは日本においては常態的なものじゃないのと、まさしく国土が戦場になるかもしれないということが専守防衛と表裏になっておる部分がございます、すべてがそうだとは申しませんが。  だとするならば、国土安全保障省の在り方というものをきちんと私どもにおいても検討してみる価値は十分にあるのだと思っております。ただ、国土安全保障省というのはまだ発展途上にあるというような理解もいたしておりまして、その考え方というものは我が国において学ぶべきものが多いというふうに思っております。  また、衆議院においてだったかと思いますが、どなたかの御質問で、いわゆる危機管理というものを二十四時間、三百六十五日、そのことを考えるポリティカルアポイントメントの人間が必要なのではないのかという御指摘をいただきました。メンバーも更に充実をいたすことでございますが、そのときの質問はたしか、そういうような責任者は官房長官がなっておられる、でも官房長官というのは本当に内閣のスポークスマンからいろんなことを抱えておられて、そのことに専念なさるだけのそういうような余裕は当然ないわけでございます。そのことを朝から晩まで三百六十五日考えるような政治的な責任を取る人間というものが必要ではないかという御指摘をたしかどこかでいただきました。  そういうことも含めまして今後また検討し、御教示を賜りたいと思っております。
  38. 近藤剛

    近藤剛君 この点につきまして、何か内閣官房の方から御意見はございますか。
  39. 増田好平

    政府参考人増田好平君) お答えさせていただきます。  国家緊急事態への対処に当たりましては、現在のところでは内閣官房を中心に関係省庁との有機的な連携の下で情報を集約し、政府としての意思決定を行うことということになっておるわけでございまして、また、政府としては、事態に応じて適切な対応が取れるよう不断に検討を行うことも重要と考えているところでございます。  そういった中で、この三法案の審議に関連いたしまして、衆議院段階におきまして、附則の二項という形で修正されておりまして、それは、「政府は、国及び国民の安全に重大な影響を及ぼす緊急事態へのより迅速かつ的確な対処に資する組織の在り方について検討を行うものとする。」と、こういう修正案が出ているわけでございます。  現時点において、私どもとして特定の組織の形態を念頭に置いているわけではございませんが、諸外国の制度についても様々な観点から参考としつつ、緊急事態対処の中核を成す組織の在り方についても検討してまいりたいと、そのように考えております。
  40. 近藤剛

    近藤剛君 この点につきまして、NSCの実態を熟知されておられます川口大臣、何か御意見ございましたらお聞かせいただきたいと思います。
  41. 川口順子

    国務大臣(川口順子君) 私は、NSCについて、これは近藤委員に申し上げるのは本当に釈迦に説法以上のものでございまして、大変に申し上げにくいんですけれども、近藤委員も御案内のように、アメリカのNSCは大変によく機能していると私は思っております。  それで、これは片方で国防省、片方で国務省、そして大変に強い大統領という存在があって非常に機能しているという面もございます。また、他方で、我が国は違う政府の成り立ちを持っておりますので、直ちに持ってきてうまくいくかどうかということはございますけれども、おっしゃっている、こういった問題については、ばらばらではなくて集中的にコントロールをし、そこで意思決定をしていくという形にしていくことが重要であるという意味でおっしゃっていらっしゃると思いますが、それについては全くそのとおりであると、非常に必要なことだと思っております。
  42. 近藤剛

    近藤剛君 ありがとうございました。  是非安全保障会議の機能強化につきまして真剣に御検討を賜りたいと思います。  それでは次に、事態法が想定をいたします有事が実際に発生することを回避するための予防外交につきまして考えてみたいと思います。  国民の安全、生命財産保護は、外交、安全保障の基本であります。この基本を守るためにまず求められるのが、日本と周辺地域の安全と平和を確保することであります。日本は、各国間の対話、交流に、対話あるいは交流に一段と積極的な役割を果たし、相互理解と信頼関係作りを図っていかなければいけないわけであります。それが紛争を予防し、地域の安定と平和を確保するための基本であろうかと思います。アジア太平洋地域を中心と据えた地道な外交と信頼醸成の努力が極めて重要なゆえんであります。  また、日本とアジア諸国の間には第二次大戦中の不幸な歴史が横たわっております。そのため、誤解や外交上の障害がいまだに残っているわけであります。アジア諸国との経済的、文化的、あるいは人的交流を更に深めまして、また、歴史認識の共有に向けた努力を行うことなどによりましてアジアでの信頼をかち得ることがおのずと重要であります。  加えて、アジア太平洋地域におきましては、APECあるいはASEANリージョナルフォーラム、ARFなどに加えまして、北朝鮮に利害関係を持ちます日、米、韓、中、ロ五か国などの外交上の枠組みが既に存在をしている、そして引き続き進化を遂げつつあると思います。これらの外交上の枠組み我が国にとりまして極めて重要でありまして、我が国にとって安全保障上の環境を整える枠組みとしてこれからも積極的かつ戦略的に活用できると認識をしております。  そこで、川口大臣にお尋ねいたします。  紛争を予防し、地域の安定と平和を確保するという観点から、アジア太平洋地域を中心に据えた外交の枠組みにつきまして、我が国の基本的な考え方をお伺いをしたいと思います。
  43. 川口順子

    国務大臣(川口順子君) 平和と安全、平和と安定ということは我が国の外交の目標ですけれども、特にこのアジアの地域にあってこれを確保していくことは我が国にとって重要でございます。その意味でこの地域を見ますと、世界の他の地域とは異なってまだまだ不透明なところがあり、そして不確実な要素が残っているということであるかと思います。  その地域における我が国の外交の考え方といいますのは、まず米国の存在そして関与、これを前提とした上で、二国間、そして委員がおっしゃったようなAPECですとかあるいはARFといった多国間の対話、この枠組みを重層的に重ねていくということが我が国の基本的な考え方でございます。そういった中で安全保障対話あるいは防衛交流、そういったことを進めていって、我が国を取り巻く安全保障環境の整備を行っていくということが基本的な考え方でございます。  特に、ARFにつきましては、これはまず信頼の醸成そして紛争予防といったことに取り組んでいるわけでございまして、この六月にもARFの会合がございますので、私としても、もし国会のお許しがいただければこれに参加をしたいというふうに考えております。  それから、政府として行っていますのは、更にこの地域における平和の定着の努力でございまして、スリランカについて今積極的に取り組んでおりますし、そのほか、例えばアチェですとかそれから東ティモールですとか、そういったことについての平和の定着の取組を我が国として積極的に行っております。  また、信頼醸成の枠組みについて、六か国、これは日本、米国、中国、ロシア、韓国、北朝鮮といった六者が参画をして信頼醸成のための枠組みを設定をしていくということが有益であるということを我が国としてはかねがね主張いたしまして、働き掛けを関係者に行ってまいりました。ただ、現在は、この問題については、今まず、核兵器の開発やその他の問題を含みます北朝鮮の問題、この平和的な解決が重要でございますので、中ロといった関係国、米国、韓国とともに今現在外交努力を行っているところでございます。
  44. 近藤剛

    近藤剛君 ありがとうございました。  もちろん、アジア諸国との信頼醸成を向上させる、信頼関係を向上させるということは、外交面だけではない、我が国の国内にありましても、例えば歴史認識の共有に向けた更なる努力が必要だというようなこともありまして、国内でやることも多くあるということを申し添えておきたいと思います。  次に、テロの問題に移らせていただきます。  国際テロの撲滅は、目下、世界にとりまして最大の関心事であり、また最大の課題であります。九・一一、同時多発テロの直後にアメリカ国務省が作成をいたしました海外テロ組織団体のリストの中には、日本のオウム真理教もその一つとしてリストに載っているわけであります。  アメリカ政府は、国際テロ対策の原則として次の四項目を打ち出しております。一つがテロリストに譲歩しない、取引しない、第二がテロリストの犯罪は法で裁く、三番目がテロ支援国家行動を変えるためにその国を孤立させ、圧力を掛ける、四番目がアメリカ協調する国あるいは支援を要請してくる国のカウンターテロ能力を向上させることに協力をするということでございます。  事態法案二十五条の対テロ国内対策の在り方に加えまして、国際テロ撲滅のための我が国の基本姿勢、それとこれからの取組方針につきまして、当面のテロ特措法延長の必要性なども含めまして、福田官房長官並びに川口大臣に御所見をお尋ねをいたします。
  45. 福田康夫

    国務大臣(福田康夫君) 昨今の国際的な、また大規模なテロ、こういうようなテロの撲滅のために国際社会が一致して緊密なる関係維持し、協調しながらあらゆる手段を講じて対応していくと、これはもう極めて大事なことでございます。そういうような趣旨でもって、アルカイダの問題につきましては、アフガニスタンにおける、こういうことに対しては、テロ対策特措法に基づく自衛隊の派遣というようなことも、これも実施をしておるところでございます。  テロ対策の特措法に基づく支援のほかにも我が国は、テロ資金対策、またテロ関連情報の収集、分析、航空保安、出入国管理行政等の分野における途上国のテロ対処能力向上支援などなど、諸外国との協力関係の強化に引き続き取り組んでいく考え方でございます。  また、ただいま御質問のテロ対策特措法の延長の問題につきましては、今、このアルカイダの活動状況、どういうような問題があるのかということについては情報収集、分析をし、そしてこの活動が、これは何も米国だけでなく、限られた国だけではなくて、多くの国際社会が協力して、一致協力してこの対応をしている、そういう状況でありますから、各国とも相談をしながら最終的には我が国として決定しなければいけないことでありますけれども、しかしながら、この時期については、そういうようないろいろな判断を伴うことでございますので慎重に検討してまいりたいと、こう思っております。
  46. 川口順子

    国務大臣(川口順子君) 今、官房長官がおっしゃったことに尽きていると思いますけれども、先般の外務大臣のG8の会合におきましても、テロの問題というのはたくさんあった議題のうちの第一番目の議題として取り上げられ、各国、熱心に議論をいたしまして、テロ、国際テロの問題というのはまだしばらく続く長い戦いである、これに対して国際社会が一致団結をして対応していかなければいけないし、発展途上国に対してこの点についての技術移転等も必要であるということでございました。  我が国としては、これは二〇〇一年の九月の十九日に小泉総理が発表なさった基本方針というのがございますので、それに基づきましてきちんと対応をしていきたいと考えております。
  47. 近藤剛

    近藤剛君 ありがとうございました。  それでは、最後に、イラク復興支援につきまして、福田長官、川口大臣石破長官にお伺いをいたします。  イラクにおけます人道支援、復旧、復興、治安、経済制裁の解除、統治形態等の規定を内容といたします安保理決議一四八三が去る五月二十二日に採択されております。茂木副大臣の報告や各種報道によりますと、イラクにおきましては、当面、治安の回復、ライフラインの維持・復旧、医療等の人道支援が急がれるということであります。  これからの我が国国際社会に対する責任と国益もしっかりと踏まえますと、自衛隊の派遣を含めまして我が国は積極的、主体的かつ迅速に国連の支援要請にこたえるべきであると考えます。  我が国のイラク復興支援に関する政府の基本的な方針をお示しいただきたいと思います。
  48. 福田康夫

    国務大臣(福田康夫君) イラクの復興につきましては、これは先般、安保理決議一四八三でもって加盟国に対しましてイラクの安定及び安全への貢献や人道・復旧、復興支援を要請をしておることは委員御案内のとおりでございます。我が国も、国連の関与を得ながら国際社会が団結してイラクの復興に取り組むということについて、これは歓迎をする、そういう立場でございます。ですから、イラクが国際協調の下で一日も早く再建され、そしてまた、イラクの人々の生活が正常化するようにできる限りの支援をしていきたいと、こういうように思います。  イラクにおける人道・復興支援等に対する自衛隊による協力につきまして、幅広い見地から所要の検討を進めております。現在は、現行法の下で何ができるかということについていろいろ対策を考えて外務省からも各種のメニューを出しておるところでございます。  また、自衛隊の派遣につきましても、周辺国において現行法の下で輸送支援というものがどういうニーズがあるかといったようなことも検討するということでもって、これも前向きに考えておるところでございます。  いずれにしましても、今後イラクの復興を支援するために我が国として何ができるかということ、我が国の、我が国のできることですね、我が国のできるふさわしい貢献を行うと、そういう観点から自衛隊等による協力の在り方を含めまして今後検討してまいりたいと思っております。
  49. 川口順子

    国務大臣(川口順子君) 我が国が、茂木副大臣をまだ、まだ戦争が、主たる戦争が終わって間もないころに現地に派遣をして現地のニーズをこの目で見てきたということについては、非常に良かったと思っております。今、官房長官おっしゃいましたように、イラク人のために我が国として何ができるかということを念頭に置いて、日本の貢献をきちんとしていきたいと思っています。
  50. 石破茂

    国務大臣石破茂君) 今、官房長官外務大臣からお答えがあったとおりですが、三つあるんだろうと思います。ニーズがあって能力があるというのが一番いいわけで、ニーズはあるが能力はないというのもあります。能力はあるがニーズがない、こういうこともございましょう。やはり、現場がどういうことなのか、そして国際情勢がどういうことであるのか、そして我が国が国際的な責務というのを果たすと仮に自衛隊がした場合に、それが安全確実に遂行されるものであるかというふうなことをきちんと考えながら、我が国責任の果たし方というのを政府全体で議論すべきものと考えております。
  51. 近藤剛

    近藤剛君 ありがとうございました。  私がいただいておりました時間となりました。これから、同僚の椎名委員が引き続き質問をいたします。  当法案の一日も早い成立と施行を期待をいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  52. 椎名一保

    ○椎名一保君 御指名いただきました自由民主党の椎名一保でございます。  本日は、質問の貴重な機会を与えていただきまして、委員長始め委員皆様方に感謝を申し上げる次第でございます。  この有事関連三法案は、国家としてなすべき最低限の法制整備がようやく緒に就いたものと考えます。その内容は、国家として当然のものであり、早期に成立させるべきものと考えます。  本日の私の質問は、法案の内容そのものではなく、国家緊急事態に関連して今後より突っ込んだ議論をすべき基本政策について問題提起を申し上げたいと思います。  私は、三十年間ほど保育事業に従事しておりまして、家内と二人で保育園をやっているわけでございますけれども、子供の危機管理、まあ安全保障ではないんですけれども、朝、保護者が子供さんを送ってまいりまして、また、帰りに無事な姿でお渡しすると。そのことに関しまして、それにかかわる、子育てにかかわる経営者、また保育士さんたち、幼稚園の先生たち、学校の先生たち、これはあらゆる危険を想定して、マニュアルがあるからこれでいいということではなくて、もしもこういう危険が、こういうことがあったらということを常に念頭に置いて積極的に危機管理をしているわけでございまして、ですから事故がないんです。零歳児の子供さんを預かっても、無事にほとんどきちっとした形で子供さんをお返しするんです。  危機管理ということに関しましては、子育ての現場でも、本当に責任を負う立場の人たちはそういう考えに基づいて、心構えでやっておるわけでございまして、私自身は、有事また防衛等のことを専門的に学んだわけではないんですけれども、やはり責任ある仕事をする者の危機管理に対する認識ということから、やはり長年やってきたという観点から、そういう気持ちを持って御質問をさせていただきたいと思います。  まず、一昨年の米国同時多発テロを受けまして、自衛隊の、自衛隊法の改正によりまして、自衛隊による警護出動の仕組みが導入されました。テロに対する我が国安全確保という観点では一歩前進であったと思います。  しかしながら、現行法では、警護対象が自衛隊米軍基地のみに限定されておりまして、これでは不測の事態対処できないんではないかと。また、イラク攻撃の際には警察が六百五十か所に及ぶ施設の警護に動員されまして、治安対策に支障が出かねない状況であったと聞いております。  国民の安全を確保するためには国家の保有する資産を最大限活用すべきであると多くの国民は考えていると思うんですけれども、現状の警察警備体制で国の重要施設公共に資する重要施設警備は万全かどうか、まず、このことについてお尋ねしたいと思います。
  53. 奥村萬壽雄

    政府参考人奥村萬壽雄君) テロ等の不測の事態対処いたしまして、原発あるいは官邸等の重要施設を守ることにつきましては、これは、治安維持に全般的な責任を有しております私ども警察が第一義的に対処すべきものと考えております。そして、テロに対しましてこういう重要施設を守るためにはまず何が大事かといいますと、テロ情報の収集、そして分析でございますし、それから、テロを行うときには下見とかあるいは偵察といったものが通常先行するわけでありますので、そうした兆しをとらえる、具体的には職務質問等によって不審者を発見する、そうした措置の上で警備部隊によってきっちりとした警戒警備をすることが大事であるというふうに考えております。  そこで、具体的にどういう警戒警備をしているかということでありますけれども、例えば原発につきましては、銃器対策部隊というものを二十四時間体制で各原発に常駐をさせております。この部隊は、ライフル、サブマシンガンあるいは耐弾仕様の装甲警備車を配備しておりますし、それから、総理官邸には総理官邸警備隊という専門の警備部隊を配置いたしまして、銃器、爆発物による攻撃に対処し得る装備資機材を備えて対処しております。  さらに、万一テロが発生をいたしました場合には、特殊部隊のSATというものを投入いたしましてこれに対処することといたしておりますけれども、このSATは、自動小銃あるいはライフル、そして作戦用のヘリといったものを保有しております。そしてまた、各国の特殊部隊とも合同訓練を頻繁に行っておりまして、その能力は国際的に見ても遜色がないというふうに考えております。  こういうことでありますので、重要施設警備につきましては、私ども治安維持に第一義的な責任を有する警察で十分に対処できると考えておりまして、今後とも、体制、装備等の充実に努めながら重要施設安全確保に万全を期してまいりたいと考えております。  なお、先般のイラクへの武力攻撃に伴いまして、重要施設の警戒箇所六百五十か所につきまして警戒をしたわけでありますけれども、これに伴いまして国内の治安対策、一般の治安の方に支障が生じたということはございません。     ─────────────
  54. 山崎正昭

    委員長山崎正昭君) この際、御紹介いたします。  今般、本院議長の招待により来日されましたリトヴィン・ウクライナ最高会議議長の御一行が、本委員会の傍聴のため、ただいまお見えになりました。  御起立の上、拍手をもって歓迎の意を表したいと思います。    〔総員起立、拍手〕
  55. 山崎正昭

    委員長山崎正昭君) どうぞ御着席ください。     ─────────────
  56. 椎名一保

    ○椎名一保君 答弁ありがとうございました。  本当に大変な状況で御苦労なさってくださっていることは重々理解できるところでございます。  ただ、一九八九年から約二〇〇〇年の約十年間で、日本犯罪発生件率が百六十七万件から二百七十三万件にまで増えている状況、これも現実でございます。当然、それに合った警察警察官の増員ということが図られればこれは万全であると思うんですけれども、なかなかそうはいかない。ですから、検挙率も残念ながら下がってきているというようなことをやはり国民は大変心配しておりますので、そういうことに関しまして、幸い、警護出動以来、自衛隊と、警察自衛隊は非常に円滑にいろいろな交換をなさっているというお話も聞いておりますので、こういったことが後手にならないように、どうかひとつお願いを申し上げたいと思います。  続きまして、北朝鮮情勢や弾道ミサイル、大量破壊兵器の拡散といった諸情勢を踏まえますと、早急に取り組むべき問題である弾道ミサイルの対処についてお伺いいたします。  現行法に基づき防衛出動で弾道ミサイル対処を行う場合には、弾道ミサイル、瞬時に、弾道ミサイルに瞬時に対応することができず、先ほどもございましたけれども、なすすべもないまま第一撃を甘受せざるを得ないおそれがこれはあります。第一撃が一発のミサイルであるとは限りません。二百基のノドンが配備されておるということでございますので、極端なことを言ったら二百か所に一度にということも考えられるわけでございまして、そして、あるいは大量破壊兵器が搭載されていた場合には第一撃で壊滅的な打撃を受ける可能性もあります。  この弾道ミサイル対処につきましては、航空機に対するスクランブル対応と同様に、迎撃のための権限をあらかじめ現場の指揮官に付与することができるよう法制整備すべきと考えますが、防衛庁長官のお考えをお聞かせください。
  57. 石破茂

    国務大臣石破茂君) お答え申し上げます。  先ほど近藤委員の御質問にもお答えをいたしましたが、間に合いませんでしたではこれ話にならないことでございます。かといって超法規をやっていいわけでもない。そうすると、弾道ミサイル防衛をどういうような法的構成をするかということはかねてから議論になっておることでございます。これは党でも随分議論をいたしましたし、政府の中でも議論をいたしております。  今、委員が御指摘のスクランブル的なというのは、恐らく八十四条、領空侵犯措置的な構成を取るべきだというような御議論かと思います。それを防衛出動という構成を取るのか、あるいは領空侵犯的な構成を取るのか、それともほかの法的構成があり得るのか、どういう形が望ましいかということを、当然のことでございますが、シビリアンコントロールとの観点から議論をする必要があるだろうと思っております。  それは他方、弾道ミサイルを撃ってくるという行為をどのように評価すべきなのか、我が国に対する組織的、計画的な武力の行使であり、それに対して私どもが武力を、いやごめんなさい、迎撃ミサイルを撃つということが、それは自衛権の行使として構成をするのか、そこはいろんな議論があるんだろうと思っております。  これ、先生の御指摘ももちろん踏まえました上で、政府で、繰り返しの答弁になりますが、法的にきちんとした裏付けというものがなければ超法規でやっていいという話にもなりませんし、間に合わなかったからごめんなさいという話にはならないわけでございまして、きちんと対応すべく今鋭意検討中でございます。
  58. 椎名一保

    ○椎名一保君 冒頭の私の話にございましたとおり、とにかく子供の命を守る、国民の命を守るということに関しては、とにかくあらゆることについてあらゆる想定をしてやらなきゃいかぬことであって、その超法規という言葉が出てくるそのものが準備不足だということではないかと思うんです。  肝心なことは、今、長官がおっしゃられたように、防衛に関して議論をすると、もう瞬時、五分か六分で日本に届く、射程、日本を射程に入れた兵器があることは、これは現実です。それを消しゴムで消すことはできないんですから。ですから、ありとあらゆることを想定してそのことに備える、これは、防衛が軍拡につながるという発想は私は違うと思います。絶対にやる、きちんとしたことをすべきだと思います。  肝心なことは、先ほど、今、長官申し上げたとおり、いかにシビリアンコントロールをどうするかと。もう絶対に有事がないという方々は絶対に有事がないという保証ができるわけはないんですから。議論はシビリアンコントロールで議論をしていただきたいと、僣越ですけれども思う次第でございます。  続きまして、ただいまのことでございますけれども、また法制整備しても現在の自衛隊の装備では弾道ミサイルに対応することはできません。政府はミサイル防衛の研究を進めておりますが、その現実までには、実現までにはかなりの年数を要すると思います。緊急の事態対処することは今現在はできません。したがって、早急に弾道ミサイル対応が可能なPAC3の導入を図り、地上配備やイージス艦への搭載を図るべきであると考えます。  新聞報道で、毎日新聞ですけれども、防衛庁はミサイルシステム導入について六月中にも結論を出すとのことでありますけれども、長官のお考えをお示しください。
  59. 石破茂

    国務大臣石破茂君) これは何度かお答えをしておることの繰り返しになって恐縮でございますが、防衛庁がミサイル防衛システムの導入を決めるという立場にはございません。これは国防に関する重要な事項でございますから、安全保障会議の御議論を経て決せられることでございまして、新聞報道、私も拝見をしましたが、防衛庁が六月にも結論というような、そのような僣越な立場には当然私どもはおらないわけでございます。  これをどういう形で持っていくかということは、それも政府全体で議論をすべきことでございますが、ただ、合衆国におきまして昨年の十二月にこれを、実戦配備を〇四年度から行うということを決めたということ、技術的な基礎みたいなものができておるということの要素はございますが、安全保障会議としてどのような御判断になるか、それは私が申し上げることではないと思っております。
  60. 椎名一保

    ○椎名一保君 弾道ミサイルへの対処につきましては、防護システムを導入いたしましても一〇〇%の防護は困難であろうと思います。この点に関し、従来の政府答弁により弾道ミサイルによる我が国に対する攻撃意図が、先ほどもございましたけれども、明らかになった場合には敵基地をたたくことが可能だとされております。ミサイルに大量破壊兵器が搭載されている場合は、第一撃の甘受は致命的なものになることからすれば当然であります。我が国は、かかる攻撃を未然に防ぐ手段を持つことは専守防衛の考え方に反するものではないと思います。  法制上可能とされる敵基地攻撃について、これを実際上も可能とするため精密誘導兵器等の保有について、これを認めるべきであると考えますが、防衛庁長官のお考えをお示しください。
  61. 石破茂

    国務大臣石破茂君) これも私がこうあるべきだ、あああるべきだということを申し上げる立場におりません。私どもの政府といたしましては、これ日米防衛協力の指針に基づきまして、そういうような北朝鮮の弾道ミサイルの脅威に対しましては合衆国が持てる打撃力の行使を行うと、こういうようなことになっておるわけでございます。  私どもの選択として、一つ先生が御指摘のように、迎撃ミサイルといいますか、ミサイルディフェンスというものを備えたとしても一〇〇%それでは駄目なんだろうと、こういうことがあります。そして、じゃ、それが持てるまでじゃどうするのという御議論、これいろんな議論があるんだろうと思っております。場合場合においてどう考えるかということでございますが、仮に今、世の中にそういうような御議論もございます。  しかし、これ何度かお答えをしておりますが、じゃ持つべきだと、それじゃすぐそんなことができるかといえば、それはそんなことは全然ないわけでございます。注文したらすぐ三か月後に届きますというようなお話でもございません。それを保有するということを、政府としてはそういうつもりもございませんし、考えておりませんが、じゃ仮に持つべきだという御議論があったときに、一体どれぐらいの期間が掛かり、そしてまたどれぐらいのお金が掛かり、いろんなことがあると思います。私ども、現在、そういうものを保有するという考えはございませんが、そういうときには大きな大きな防衛政策の変更を伴うものであり、大変な時間を要するものであり、大変な経費を要するものだというふうに考えておる次第でございます。  いずれにいたしましても、専守防衛という観点から、自衛権の三要件を満たします場合には委員指摘のようなことは決して憲法の許さないことではない、憲法の許容することである、しかし今私どもはその能力というものを合衆国にゆだねておると、そういうことでございます。
  62. 椎名一保

    ○椎名一保君 続きまして、テロ対策についてお伺いいたします。  米国同時多発テロ発生以降、時限立法でありますテロ特措法は制定されたものの、包括的な国内テロ対策のための恒久法はいまだ制定されておりません。今回の武力攻撃事態対処法案において、有事については政府としての統一的な対処の仕組みは整備されたものと考えますが、より発生する可能性の高いテロについて、政府としてより適切かつ統一的に対応するための法整備も急務であると考えます。  アメリカやイギリス等の事例を参考にしつつ、テロ対策に関しましては警察に特別の捜査権を持たせることなどを可能とする法制の研究と立法準備に取り掛かるべきであり、また米国の国家安全保障省を参考に、テロなどの新たな脅威に省庁横断で統一的に対応できる責任ある機関を政府に設けるべきであると考えますが、官房長官の御意見を伺いたいと思います。
  63. 福田康夫

    国務大臣(福田康夫君) 我が国のテロ対策につきまして、これまで警察海上保安関係法、それから自衛隊法、災害対策関係法などによりまして基本的な対処体制は整えてまいっております。特に米国同時多発テロ以降、出入国管理、テロ関連情報の収集、分析、ハイジャック対策、NBC、これは核・生物・化学ですけれども、NBCテロ対策、重要施設の警戒警備の強化、そういうようなことを含めまして様々なテロ防止対策の強化に努めてまいっております。  法制面におきましても、テロ関連条約締結のための関係国内法整備を行うなど、テロへの対処体制の充実を図ってまいっているところでございます。  この安全保障の面から、今私申し上げましたようなことは政府として取り組んできておるところでございますけれども、これは先ほど委員も御指摘になっておられます、もう絶対安全という万全の処置があるのかどうかというようなこともございますので、政府としては、そういうような現行のやり方だけでは済まないかもしれぬということを念頭に置きつつ、なお万全の態勢を取るべくいろいろ研究をしていると、こういうふうなことでございます。  その上で、諸外国の制度とかその運用状況も参考にしながら、情勢の変化に対応して法制面、運用面の両面にわたりまして不断の見直しを行い、国民が安心して暮らせる国づくりに努めてまいりたい、こういう中でもって、事態対処の中核となる組織の在り方についても検討をしてまいりたいと、このように考えておるところでございます。
  64. 椎名一保

    ○椎名一保君 テロや弾道ミサイルに的確に対処するためには、平素からの情報収集が重要であると考えます。情報収集衛星の打ち上げには成功したものの、我が国の情報収集並びにその分析評価のための体制は、人的にも質的にもいまだ不十分ではないかと思うところでございます。  本格的な情報収集機関の創設や、政府内のすべての機関が収集した情報を統合管理するためのインテリジェントコミュニティー、情報統合会議の構築を早急に図るべきであると考えますが、いかがでしょうか。官房長官お願いいたします。
  65. 福田康夫

    国務大臣(福田康夫君) この安全保障とか、また危機管理ですね、テロを含む、そういうことに関する対応として一番最も大事なことは、やはり情報を的確につかむと、把握するということだと思います。  そういうことで、我が国も外交、防衛、治安などの情報を担当する機関から成ります情報コミュニティー、これは我が国のやり方としてそのコミュニティーは構成、構築をいたしております。これらの機関の、今申しました外交、防衛、治安などの機関の上級幹部を構成員として、内閣に置かれている内閣情報会議、また合同情報会議などにおきまして、各機関が収集、分析した情報の総合的評価分析を行っております。なお、こうして評価分析された情報のうち、重要なものについては直ちに官邸に報告すると、こういう仕組みになっております。  今後とも、内閣情報調査室等の情報を担当する機関の機能体制を強化しまして、また内閣の下で情報を担当する機関の連携強化を図るなどによりまして、内閣全体の情報収集、分析機能の充実強化に努めてまいりたい。もう、先ほど申しましたように、これでよいというものはないという、そういう前提でもって対応を考えてまいりたいと思います。
  66. 椎名一保

    ○椎名一保君 続きまして、PKO法の関係についてお尋ねいたします。  イラクに対する経済制裁が解除され、いよいよ我が国としてもイラク復興に本格的に取り組むべき段階に来たものと考えます。イラク復興に積極的に貢献していくことは、我が国の国際的地位を確固たるものとし、国際社会における我が国の発言力向上に資するものと考えます。  他方、現在のPKO法では、戦争終結後のイラクに自衛隊を派遣することは困難ではないかと考えられます。国際社会協調してイラクの復興支援に参画することができるよう、早急に新法の整備をすべきであると考えます。その際には、自衛隊任務遂行のための武器使用権限を認めるべきであると考えますが、政府の見解をお聞かせください。
  67. 福田康夫

    国務大臣(福田康夫君) イラクの復興に対しまして、これは自衛隊を通じた協力と、こういうことは、これは大事な支援の方策であると考えます。  イラクにおいて人道支援、復旧・復興などの様々な支援に対するニーズ、それから国際社会の動向などを十分考慮しながら、今検討を進めているところでございます。今現在は、現行法の下でどのような支援ができるのか、その際、自衛隊の活躍、ニーズ、自衛隊に対するニーズというものがどういうものがあるかというようなことも一遍、検討しているところでございます。  そういう観点の中で、PKOのことについて御指摘ございましたけれども、PKOにつきましては、この国連平和維持隊に参加するに当たりまして、憲法で禁じられている武力行使との問題がございます。そういうような武力の行使をするという評価を受けることがないことを担保するこのPKO法の重要な骨格があるということは、これは無視することはできないんであります。  現時点においては、政府としては、武器使用基準の緩和を含めた国際平和協力法の改正については予定はいたしておりませんが、今後、国連PKOの実態や国会での御議論を踏まえながら、必要に応じ検討してまいりたいと思っております。
  68. 椎名一保

    ○椎名一保君 是非、国際基準に合った形でPKOに完全に参加できるようなことにしていただきたいと思う次第でございます。  続きまして、外為法の改正と特定国船舶の寄港拒否を可能とする新法の制定についてお伺いいたします。  北朝鮮問題でございますけれども、最近の核兵器保有発言などを取り上げるまでもなく、我が国安全保障にとって現実的な脅威であります。小泉総理も、北朝鮮との関係はせんだってのブッシュ大統領との会談で対話と圧力が必要と述べておりますが、北朝鮮の脅威がエスカレートした場合、国連決議のない状態では我が国独自に経済制裁や当該国船舶の寄港制限をするなどの措置を実行することができません。  ここに、五月の二十日、アメリカの上院政府問題小委員会、問題委員会の財政・予算・国際安全保障委員会の公聴会で、元北朝鮮政府高官の証言がございます。  一つは、北朝鮮は国家レベルで薬物の製造、取引を行う恐らく唯一の国家、国。最近の豪州当局による北朝鮮船舶、ポン・ス号の五十キロのヘロイン押収は、北朝鮮が他国に非合法的に薬物を製造、販売している実態を表わすもの。  もう一点が、同じ委員会で、公聴会で、元北朝鮮のミサイル技術者の証言でございますけれども、フィッツジェラルド小委員長質問に対しまして、自分は九年間にわたり北朝鮮のミサイル産業の誘導システム専門家として勤務したが、これらの部品の九〇%以上は日本からのものであると断言できる。これらは朝鮮総連を通じて三か月ごとに船により運ばれ、急を要するときに港まで出向くこともした。部品輸送に利用された船は万景峰号と呼ばれているが、これは旅客船であり貨物船でないため、これは密輸であるという公聴会での発言がございました。  北朝鮮に対する圧力の手段として、我が国独自の経済制裁や、当該国船舶の寄港制限をするなどの措置を可能にするための外為法の改正や、特定国船舶寄港制限法などの新法制定を行うべきであるという、現実、このような疑惑を持った船が六月の九日に寄港をするということになっておるわけでございまして、恐らく多くの日本国民が大変な関心を持ち、予測できない事態が起こり得るということもこれ想定されるわけでございますけれども、そういう危機感を持っておりますけれども、官房長官の御意見をお伺いしたいと思います。
  69. 福田康夫

    国務大臣(福田康夫君) 新規に法制定を行うべきであると。例えば外為法の改正、特定国船舶寄港制限法とか御指摘ございましたけれども、我が国の北朝鮮に対する対応の仕方、それをまず御説明申し上げますけれども、北朝鮮に対する経済制裁につきましては、現在、問題の平和的解決に向けた外交努力が行われている中でございますので、現時点では、北朝鮮の最近の一連の動きを受けて経済制裁処置を行うことを表明した国はないということも承知しておりますし、我が国としても、北朝鮮に対する経済制裁を行うことは現段階では考えておりません。他方、今後、事態の推移いかんで何らかの処置を取らなければいけないという、そういうように判断された場合には、政府部内でしかるべき検討の上で現行法令の下で可能な措置を適切に実施していくということであります。  いずれにしましても、政府としては今後とも、米韓両国とも緊密に連絡しながら、そしてまた中国とかロシアとか、そういったような関係国、また関係国際機関とも連携をし協力しつつ、引き続き外交努力を傾注する、そういう考え方でございまして、北朝鮮が国際社会の一員として責任ある行動を取るよう引き続き求めていきたい、このように考えております。  ただいまの米国の議会の証言の問題とかいうようなことがございました。その議会証言にあるような事実が一体いつごろあったのかといったようなことも分かりません。そういう意味で証言が、私はうそだとは言っておりませんけれども、私どもとしてそれをそのとおりだというふうに言う、言える立場でもないということであります。  しかし、昨今、政府としては極めて厳格なる対応をしているということは言えると思いますので、今後も問題が生じないように、特に違法行為が行われないように厳格な対応を続けてまいりたいというように考えております。
  70. 椎名一保

    ○椎名一保君 今朝の自民党の外交部会でも大変議論になって激論が交わされたわけでございますけれども、平和的解決と対話ということがなかなか、どういう形で行われているのかということが見えてこない。我々が見えないんだから、まして国民はもっと見えないだろうと。六月九日に現実、万景峰号が来るということに対してのやはり国民の、何というんですか、憤り、疑惑というのはかなり高まってきているのではないかというふうに考えるわけでございまして、平和的外交と、平和的解決とそれと対話ということに対しまして、もう少し国民に分かるような形でお示しいただきたいと、この際お願いを申し上げておきたいと思います。
  71. 福田康夫

    国務大臣(福田康夫君) 平和的解決でなければ何をするんですか。何ですか、戦争なんですか。そういうことがいいのか悪いのかということは当然判断はできることであり、そういう事態にならないように外交でもって解決するということが平和的解決の意味なんですよ。それに全力を挙げているというのが今の状況であります。  このことについては、何も日本だけが言っているわけじゃない。アメリカも韓国も、そして中国もみんな、ロシアもみんなそういうことを言っているわけですから、その方針について私は一点の疑いもない、国際社会の共通の認識だというように考えていますよ。  ただ、問題は、これから北朝鮮がどういうように対応してくるかということが問題なんでありまして、そのことについては、もう再三にわたりまして話合いで解決しようという提案をしておりますし、また、国際社会の信義にもとるようなことはしてくれるなということも要求をしておるということであります。  見えないということでおっしゃれば、それは今よく見えるじゃないですか。例えば、つい先日は日米首脳会談あり、その前には米韓首脳会談あり、そして国際会議、G8の外相会議もございましたね。川口外務大臣も出席いたしましてこの問題については十分討議をしてきたと。そして、G8の共同声明だったと思いますが、その中にも記載をすると、こういうふうなこともあったわけで、よく見えるじゃないですか。  そういうようなことで、一生懸命話合いをして、何も今日行って明日解決するという問題じゃない、もっと時間を掛けて、掛けない方がいいですよ、もちろん、しかし掛かるのもやむを得ないと。こういうようなことで、息の長い交渉をしているといえばそうかもしれませんけれども、やはり近隣諸国のこととかいろいろな関係考えたらば、外交的に解決するのが一番いいんじゃないでしょうか、そのように努力すべきだと私は思いますので、ひとつ御理解賜りたいと思っております。
  72. 椎名一保

    ○椎名一保君 官房長官のおっしゃる意味、よく理解できます。ただ、現実、六月九日に万景峰号が入港する、そのことに対してやはり国民が、どのように政府が毅然とした姿勢で、例えば財務大臣が、必要であれば人員を増員する用意がありますというようなお話をなさったわけですけれども、必要であればというようなそういう、何というんですか、御表現は、今の国民からすれば、それは当たり前だ、もっとやってくださいというふうに思っているわけですから、現実、六月九日にどのような姿勢で万景峰号に臨むかということを、この辺りをしかとお願い申し上げたいと思います。
  73. 福田康夫

    国務大臣(福田康夫君) 万景峰号が日本に来るということについて、我が国政府としてまだ確認してないんです。来るということを言えば来るんでしょう。しかし、そういうことを全然言ってきてないんですよ。通常、言うんです、それは、これから入りますよという、そういう通報をするわけなんです。それでもってそれを受け入れるという、そういうことになっております。しかし、まだ確認してない。  そういう段階のことでありますが、それじゃ、それに対して何もしてないのかということでない。これは過去の万景峰号の入港に際して相当厳しい対応をしてきているということで、じゃ、何をしているか、税関が何をしているかといったようなことを一々申し上げるというのはこれはなかなか難しいんですよ。それを申し上げないから何もしてないと、こういうことは当たらないということで、それはしっかり対応しているということだけ申し上げておきます。
  74. 椎名一保

    ○椎名一保君 ありがとうございました。  続きまして、先日の中川委員からも御意見を申し上げたところでございますけれども、憲法改正と自衛隊についてということについてお伺いしたいと思います。  今回の与党三党と民主党との修正協議において、緊急事態に係る基本的な法制については四党間で真摯に検討し、その結果に基づき速やかに必要な措置を取ることが合意されました。これに対し、小泉首相も、緊急事態に係る基本的な法制が必要であるとの考え方は共有できる旨の考え方を示されました。今後、検討が行われることは多いに評価すべきことと考えます。  ただし、この基本法をめぐる議論で注意すべきは、基本法制定の目的あるいは理由として、憲法緊急事態に関する規定がないことから、これを補おうとしていることであります。  憲法は、平時はもちろん、有事においてもその真価が発揮されるべきものであります。現行憲法には、有事の際に国家の主権と領域を確保し、何より大切な国民権利や自由を守るために国家として取るべき基本事項に関する明確な規定が一切存在しないことは異論のないところでございます。したがって、我が国緊急事態法制を考える場合には、まず、国家の基本法である憲法の見直しが必須の課題と考えられます。また、民主党が懸念されるように、有事における国家権力の濫用といったこと、事態が万が一にも生じることを防ぐためにも、憲法国家緊急事態に関する規定を置くことが必要と考えます。  このような考え方について、民主党の提案者の御意見を伺えればと思います。
  75. 渡辺周

    衆議院議員(渡辺周君) 民主党の渡辺でございます。  今日は提出者の前原安全保障担当大臣が公用により、ちょっと所用により出席できませんので私が答弁させていただきますが、この議論をするときに私自身も昨年の衆議院特別委員会の場で、これはもう一つの憲法を作るぐらいの本当に腹を持って作らなければ駄目だと。つまり、国家緊急規定がないというこの憲法の中において、国民がなぜ必要かということについては、何かあった場合に有事に対応できる憲法がない、だからこそこれは必要であるという私も質問をしたんですが、であるからこそ、あえて今回我が党が出しました基本法には、ある意味では憲法に準ずる基本法として、だからこそあえてそこに、憲法規定に書かれている人権の保障については入念に、屋上屋を重ねたんではないかという否定的な御意見もございましたけれども、あえてそこに書いたわけでございます。ですから、問題点の正に認識は共有をしておりますので、今後もし憲法ということの改正を考える上であれば、正に緊急事態における国家権力の濫用に歯止めを掛けるというような方向でこれは検討していく、また幅広い国民的な議論は今回の議論を通じてまた発展的につながっていくのだろうと私どもとしては考えております。
  76. 椎名一保

    ○椎名一保君 ありがとうございます。  続きまして、それに関連いたしまして、今回の有事法制の前提となっておりますのは我が国の有する自衛権であります。政府の解釈では、我が国独立国である以上、憲法は主権国家として当然に保有する自衛権を否定するものではなく、自衛のための必要最小限の実力を保持することは許されるとしております。もとより、我が国が主権国家である以上、国家存立のために必要な自衛権を有することは当たり前のことでありますが、他方憲法や国際法の専門知識を持たない一般国民憲法第九条を読んだだけでは我が国が自衛権を持っていることは全く分からず、政府の考え方は難解な解釈と言わざるを得ません。  今回、民主党有事法制案に賛成したということは、我が国が自衛権を有しているということについて与野党を通じほとんど異論がないことだという考えだと思います。憲法改正につきましてはいろいろと議論があろうかとは思いますが、少なくとも我が国が自衛権を保有すること、また自衛権行使の裏付けとなる自衛のための組織を持つことは憲法規定すべきと考えますが、民主党の提案者の御意見をお伺いしたいと思います。
  77. 渡辺周

    衆議院議員(渡辺周君) 非常に難しい質問でございます。  ちょっと前置きでお話しさせていただきたいんですが、田英夫先生が先般この委員会でも触れられました。私も特攻隊の本やあるいは当時の映像等を見るに当たりまして、天皇陛下万歳を叫びながらも、きっと心の中ではふるさとにいる幼い弟や妹の正に顔を思い浮かべて、自分が敵艦に突入することによって半日でも一日でも頭の上に落ちる爆弾を遅らせることができるんだと、恐らくそんな思いで彼らは飛び立っていったんだろうなと。先生も正に保育行政を進められる上で、正に先ほど来のお話にありますように、子供が逃げ惑って泣き叫んで、そのような阿鼻叫喚の地獄を見ることがないように、戦争を絶対に引き起こしてはいけないということは同じ思いでございます。  ただ、しかし、残念ながら、我々は憲法を守って、国是として守ってまいりましたけれども、四半世紀にわたって我が国の罪なき国民を誘拐して、拉致という言葉ですが、これは人さらいをしてきた国家が隣に存在をしているわけでありますから、正にその国際情勢の変化の中で我々はやはりあえてこの論議をしなければいけないと思います。  また、我が党としては、自衛権というものはこれは認めております。個別的自衛権は、これは国連憲章第五十一条にもありますように、我が国として固有の、独立国家固有の権利でございますから、この点については我々は党の基本政策の中でももちろんうたっております。  ただ、しかし、今お話ありましたように、集団的自衛権、個別的自衛権、例えば言われたときに、果たして自衛権とは何の概念なんだと、まだまだ分からない部分がございます。我々は個別的自衛権は認めておりますけれども、これは憲法議論の中で、やはり我が国には固有の、どの国にも自衛権という概念は存在する、自然権として付与されているんだということは今後議論を進める中で、もしかしてこの憲法の改正議論の中で、自衛権の存在あえてもう明記するということは私個人としては大変考え方として一致をしているところでございますが、党としては、これから党の憲法調査会の中でこの点について当然議論を進めていく課題でございます。認識は共有しております。
  78. 椎名一保

    ○椎名一保君 個人的なお考えとしての御意見でございますけれども、大変積極的な、日本国民生命と安全を守るためには積極的にこれは展開をしていかなきゃいけないんだというその基本理念をお伺いいたしました。敬服いたしました。ありがとうございました。  続きまして、参議院の憲法調査会も五月七日より自由討議に入ったわけでございますけれども、私も七日と十四日、七日には前文と九条、そして十四日には集団的自衛権について発言をさせていただいたわけでございますけれども、昨日も中川先輩からもお話ございましたけれども、重複いたしますけれども、このことについては自分の考え方でございますので、申し上げさせていただきたいと思います。  まず、集団的自衛権につきまして、自衛権につきましては、更に議論すべきは集団的自衛権の問題であります。集団的自衛権についても我が国は主権国家として当然に保有する権利であり、保有する以上、行使ができるのは当たり前。しかしながら、内閣法制局の解釈によれば、集団的自衛権については、我が国が国際法上、集団的自衛権を有していることは主権国家である以上当然であるが、憲法第九条の下で許容されている自衛権の行使は我が国を防衛するため必要最小限度の範囲にとどまるべきものであり、集団的自衛権を行使することはその範囲を超えるものであって、憲法上許されないとしております。すなわち、我が国は集団的自衛権を保有しているが、憲法上その行使はできないという。しかしながら、集団的自衛権の行使は一律にすべて認められないとする解釈は甚だ疑問でございます。その理由を四点申し上げます。  第一に、集団的自衛権とは、言うまでもなく自国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃を実力をもって阻止する権利。自国と密接な関係にある他国を守ることは我が国に加えられる攻撃防止の意味も持ち、我が国の安全を確保することにつながるもの、その意味で集団的自衛権も自国を守るために行使する権利我が国が主権国家としてこのような権利を有し、かつ行使できることは当然であります。  第二に、今述べたような意味で集団的自衛権は個別的自衛権を全うするために出てきた概念であり、いずれも自衛権の一部として同根一体、国連憲章にも日米安全保障条約にも、そして憲法にも両者を区別する規定は存在しません。  第三に、今日、集団的自衛権の行使を一律に排除していては国家の存立あるいは国際社会における名誉ある地位を占めることはできないと考えられます。その意味で、集団的自衛権の行使が我が国防衛のための必要最小限度を超えるとする考えは疑問であります。また、何が必要最小限度かという問題は、内閣法制局といった法律家が決めることではなく、政治の場で議論すべき問題であると思います。  第四に、根本的な問題として、保有するが行使できない権利など無意味。我が国が主権国家である以上、憲法が主権国家固有の権利である集団的自衛権の行使を禁じ、事実上保有していないのと同じ状況に置くこと、すなわち集団的自衛権の保有を無意味なものとしているとは到底考えられません。したがって、現在の政府解釈は早急に改められる必要があると思います。  この点に関し、小泉総理は就任直後、憲法に関する問題について、世の中の変化も踏まえつつ幅広い議論が行われることは重要であり、集団的自衛権の問題について様々な角度から研究してもいいのではないかと考えている旨述べられました。これは現在政府の見解にもなっているものと承知しております。しかし、残念ながら、小泉内閣成立後今日に至るまで具体的な研究が進んでいるとは聞いておりません。これに関して官房長官は、去る二十二日の本院本委員会で、集団的自衛権と憲法関係について、九条を含め憲法在り方には議論がある、国会での議論を進めないといけない、状況を見ながら内閣として判断する時期が来るのではないかと述べられました。前向きな姿勢をお示しになられました。  集団的自衛権の問題は、内閣法制局の官僚に任せる問題ではなく、国民を代表する政治家が判断すべき問題であると思います。現在、全く動いていない集団的自衛権の研究を前に進める意味でも内閣に集団的自衛権に関する研究機関を設けるべきと考えますが、官房長官の御意見をお聞かせください。
  79. 福田康夫

    国務大臣(福田康夫君) 集団的自衛権の議論については様々な議論があります。そういう議論ございますけれども、結局この憲法九条とのかかわりでこのことを議論しなければいけないというのが我が国の現状であるということでございます。ですから、この憲法につきましては、この九条を含めまして、今、国会でも議論されているんですね。やはりこういうような大事なことについては国権の最高機関である国会でもって政治家が大いに議論を闘わせるべき問題だというように思います。そういう中で、この集団的自衛権というものも当然議論されることだろうと思います。ですから、私は、委員内閣においてそういうことをやるべきでないかという、そういうお話もございましたけれども、私は、やはり国会でもってもっと議論を進めるべきだと、一内閣でどうこうできる話ではないんだと、こういうように思っております。  そういうことでございますので、委員におかれましても、十分このことについて集中御討議をお願いしたいと思っております。
  80. 椎名一保

    ○椎名一保君 前向きな御答弁、ありがとうございました。私も、官僚に任せるべきではないといって内閣でという話は、ちょっとつじつまが合わないことであると思います。これは国会で、憲法調査会等できちっとやるべきものであると考える次第でございます。  ありがとうございました。  ちょっと時間がなくなってまいりましたので、外務大臣にお伺いいたします。  旧敵国条項の削除とか、いろいろお伺いしたかったんですけれども、それは先日質疑にございまして答弁をお伺いいたしましたので削除させていただきまして、国連の分担金のことでございます。  国連憲章に旧敵国条項が依然として残る一方、国連分担金については、我が国は米国に次いで世界第二の支出国であります。二〇〇三年においては国連予算全体の一九・五%を負担しております。これに対して、国連の常任理事国たるフランスは六・五%、イギリスは五・五%、中国は一・五%、ロシアは一・二%にすぎません。米国を除く全常任理事国を合計しても我が国をはるかに下回る一四・七%にすぎないのが現状でございます。我が国の、これはGDP比率で分担金を決めるそうでございますけれども、我が国のGDPが世界経済に占める比率は現在一四・四%であります。我が国経済力に比しても国連分担金の比率は極めて過大だと考えます。  昨今の我が国経済・財政状況を踏まえても、まず削減すべきはODAよりも国連分担金ではないかと考えますが、外務大臣の御意見をお聞かせください。
  81. 川口順子

    国務大臣(川口順子君) 分担金についてのお話ですけれども、委員がおっしゃられますように、分担率の決め方というのはルールで決まっておりまして、加盟国の支払能力といいますから、これは国民総生産、これの実は過去少し長く取ったものと短く取ったものの平均という形でございますので、我が国において過去少し長く取った分の、最近は余りそのGNPが伸びていないといいますか、むしろ名目では下がっているわけですが、そういったことの影響があるというふうに思っております。同時に、シーリングがありまして、一国が非常に大きく負担をしてしまうということに問題がありますのでシーリングがあり、それから発展途上国、これは力が余りないだろうということで割引があるという中で、フォーミュラがありまして、それに基づいて計算をされるということでございまして、我が国が恣意的に多くされていると、そういうことでは全くないということでございます。  それで、これをどう考えていくかということですけれども、国連についての我が国のやはり考え方として、我が国国連が大事だと考え、国連の活動に様々な寄与をしてきております。  例えば、国連経済社会理事会というところがございますけれども、各種委員会では相当な大きな発言権、発言力を持っておりますし、それから常任理事国ではありませんが、安保理で非常任理事国を今まで八回務めてきておりまして、これはブラジルと並んで世界で一番多いということでございます。こういった中で、更に新しいルール作りという意味でも、人間の安全保障ということで、我が国国連の場を使ってそういった概念を打ち出してきているということでもございます。  ただ、同時に、国連の改革が重要であるということももちろんでございまして、これは先般、日米首脳会談でブッシュ大統領と総理がお話しいただいたことでして、このために、この中で、例えば敵国条項の問題というのも、条項の問題もありますねということで、国連を強化するための改革に取り組んでいくということを総理がおっしゃられて、ブッシュ大統領もこれを理解をし、改革をフォローアップしていこうということもおっしゃられたということでございます。  したがいまして、我が国として、国連我が国にとってどのような形でなっていくのが望ましいかという観点から国連の改革を推し進め、その中で分担金の在り方というのはどうあるべきかということも考えていくべき課題ではないかと思っています。
  82. 椎名一保

    ○椎名一保君 どうもありがとうございました。
  83. 山崎正昭

    委員長山崎正昭君) 午後一時に再開することとし、休憩いたします。    午前十一時五十六分休憩      ─────・─────    午後一時開会
  84. 山崎正昭

    委員長山崎正昭君) ただいまから武力攻撃事態への対処に関する特別委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、安全保障会議設置法の一部を改正する法律案武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律案及び自衛隊法及び防衛庁職員給与等に関する法律の一部を改正する法律案の三案を一括して議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  85. 川橋幸子

    川橋幸子君 民主党・新緑風会の川橋幸子でございます。よろしくお願いいたします。  今、事態特の委員会における質疑を伺っておりますと、やはり憲法との関係が非常に大きな関心事になっていると。国民も、この法案そのものよりも、あるいは憲法との関係日本がどういう国になりたいと思っているかと、その辺りにつきまして両大臣の御自身の言葉で分かりやすく心に響くお答えをいただくことを期待しているのではないかと思いまして、その観点から御質問させていただきます。  まず一問目は、もしも日本憲法がなかったとしたら日本はどんな国になっていたのだろうかと、こういう質問をさせていただきます。  きっかけは、こういうことを伺ってみたいなと私が思いましたきっかけは、一九九五年、少々前になりますが、日弁連がアメリカ憲法学者ローレンス・ビーアさんとおっしゃる方だそうです、大変知日派で日本のこともよく御存じの方でございます、だそうです。この方が、日弁連の招きでもって日本憲法の五十年という題で日本に来られて講演をなさった。そのときにこういうタイトルで、もし日本憲法がなかったとしたら日本はどんな国になっていたのだろうかということに対してお答えを、御自身のお答えを述べられたということでございます。  さて、両大臣にお伺いいたします。どちらの大臣が先でよろしいでしょうか。それじゃ、まず石破長官の方から。どうぞ譲り合わずに、防衛庁長官、よろしくお願いします。
  86. 石破茂

    国務大臣石破茂君) 現行憲法は、その前文に記載をされておりますとおり、さきの大戦の経験を踏まえて、平和主義、民主主義及び基本的人権の尊重を基本理念として制定されたものであり、これらの基本理念は今日まで一貫して国民に広く支持され、自由主義国家としての我が国の今日までの発展の礎となってきたということだと思っております。  私は、ワイマール憲法というものがありました、これはこれですばらしい憲法であったのだけれども、ワイマール憲法があったにもかかわらず、なぜナチス・ドイツの台頭、ヒトラーの台頭というものを許したのだろうかということがあるのだろうと思います。それは、ワイマール憲法の精神自体は非常に崇高なものであったけれども、そこに実務的な規定として瑕疵のようなものがあったのだというふうに聞いております。  これはワイマール憲法議論をするために今、委員も御質問になったのではないと思いますが、じゃ日本憲法がもしなかったらということですが、仮定の質問にはお答えできませんなんということを申し上げるつもりは全然ありません。やはり日本憲法は、先ほど申し述べましたように、基本的人権を尊重するんだ、平和主義なんだ、民主主義というのを大事にするんだということにおいて、私はそれはもう非常に価値のあるものだと思っています。大日本帝国憲法の中にないそういうような理念が盛り込まれておるということは画期的なことであり、尊重しなきゃいかぬと思っています。ただ、大日本帝国憲法そのものに由来して、非常にやってはならない戦争というものがあったのか、それともそれ以外のものに起因するものがあったのだろうかということはそれぞれ検証してみる必要は私はあるんだと思っています。つまり、統帥権独立というものはどういうものだったのかということ、つまり統帥権が独立していたからすべて駄目なのだということからもう一歩議論は進めてみなきゃいかぬところがあるのだろう。  そして、憲法直接書いてあったかどうか私は記憶はありませんが、例えば戦前はといいますか、新憲法になります以前は、軍人には投票権がなかったのであります。もちろん立候補する権利もありませんでした。参政権も被参政権もなかった。軍人は政治に関与してはならないのだということを、軍人には投票権もない、被投票権もない、参政権も被参政権もない、そういう形で考えてはおったのです。しかし、何であんなことになってしまったのかということを考えてみましたときに、それは五・一五でも二・二六でもそうですが、結局軍人たちが我々がやらないでだれがやるんだというような思いを持ってしまった、結果としてシビリアンコントロールというものは利かなくてああいうような、クーデターというふうに分類できるかどうかは分かりませんが、そういうことになってしまった。  私たちは、憲法の理念と同時に、それを支えるいろんな仕組みがきちんと担保されているだろうかということをいつも検証していかなければいけないのだというふうに思っています。そういう意味で、大日本帝国憲法、そしてまた戦前の体制というものにどこに誤りがあったのかということをきちんと検証して、そしていつも田委員始め御指摘をいただくことですが、私ども戦争を経験したことのない世代というのは、先輩のおっしゃることをよく承り、そしてまた大日本帝国憲法すべて悪という思想、考え方をより一歩進めて、どこに瑕疵があり、どうしてあんなことになり、なぜあの大戦を避けることができなかったのか、そして何であんなに大勢の犠牲が出てしまったのかというところまで検証しませんと、二度と戦争を起こさないんだというような日本憲法の理念というものを実現することは難しいのだと、私はそのように思っておるところでございます。
  87. 福田康夫

    国務大臣(福田康夫君) 憲法がなかったらということでございます。  憲法がなかったら今一体どうなっているか、フィクションの世界のことにもなってしまうかもしれぬので、その辺、なかったという前提の下での現状の想像というのは、これは余りしても意味がないような感じがするんです。しかし、日本憲法のような国の体制を決める基本的な法制というのは、これはイギリスのような国もございますけれども、大体どの国も持っているわけですね。そういう意味で、我が国に現行憲法があるということでその上での議論をいろいろさせていただいておると、こういうふうなことでございます。  しかし、憲法がなかったらというんであれば、現行憲法の上で日本憲法日本憲法がなかったらという前提のお話でございますけれども、その日本憲法の前提とした上でも、例えば日米安全保障条約がなかったらどうなのかとか、いろいろな議論があるんだろうと思います。ですから、それは憲法が、今のような憲法がなかったらばそれを補完するいろいろな考え方というのは当然出てくるんだろうと、それが日本国民の知恵だろうというふうに思います。  そういうことで、私はこの現行憲法がなかったらというのは余り、何ですか、そういう考えることが意味がないのかなというような感じがしておりまして、それよりも現行憲法をいかにして活用して、そして国際社会の中において国際社会からでき得れば名誉と尊敬をかち得るような、そういう国家になるべく努力すべきものであると、すべきものだと、こういうふうに思っております。
  88. 川橋幸子

    川橋幸子君 八分を費やして両大臣からうんちくのあるところを伺いましたが、私がこのような問い掛けをさせていただきましたのは、実はそのときのローレンス・ビーアさんの言葉、日本は再びアジア有数の軍事国家になったでしょうという、そういう講演の結論だったわけですけれども、それを収録されました比較憲法学者の樋口陽一先生、現代法学第三号に引用された方が、更にその辺りを敷衍されて、もちろん今の自衛隊が装備から、兵器からいいましてイージス艦を持つに至っているまで、こういう現状である自衛隊というものを考えれば、もちろん軍隊といいますか、戦う戦力は持っているわけでございます。しかし、軍事国家という名前になっていないのは日本憲法、現行憲法がある、その意味が大きいのではないかと。つまり、アジア地域における平和構築のための役割を非常に大きく持っていたということをこのビーアさんがおっしゃったのだと樋口先生が解説されているわけでございます。  先ほど統帥権というお話もございましたけれども、日本の社会そのものが、社会の価値体系の頂点に軍事というものを持たない、そういう平和国家として戦後歩んできた、その効果はとても大きい、法律といいますか、特に法律の中の法律憲法の持つ意味というものは一国の運命を左右する非常に大きなものだということも私が思ったからでございます。  もちろん憲法九条以外にも、特に女性の場合は、それ以前は参政権もございませんでしたし、教育の機会均等がなかった、旧帝国大学には入れなかった。自慢話では全然ないのですが、私の出身の、卒業いたしました東北大学というのは、珍しい、女性の入学を認めた旧帝国大学であって、草分けの法曹の女性たちがこの大学を出ている方が多いわけでございますけれども、女性にとっては多分、明治憲法が、福沢諭吉が、天の上に人をつくらず、人の下に人をつくらず、これは非常に革命的なことだったんだろうと思いますね。それまでは士農工商という身分で左右されていた社会の中で、人、個人というものを意識した革命的なものであると同時に、女性にとってはこの日本憲法というのは、初めて女性という身分から解放された、チャンスがもらえた、国民としての機会を得た、そういう法律として特に、私の場合は日本憲法の役割というんでしょうか、その法律の恩恵を被ることができた一人だったと思っております。それ以前でしたらこのチャンスはなかったと思うわけです。  さてそこで、二問目に移らせていただきますが、今度、法律と常識、これについて、この関係について伺いたいといいますのと、続けて、法律そのものと法律解釈というものの関係について伺いたいと思います。  なぜこういうことをお伺いするかというと、このごろ小泉総理は常識常識とよくおっしゃられるんですね。あの靖国参拝のときは、ついに過去の内閣法制局政府解釈、それはもう一言も触れずに、尊い命を祖国のためにささげた方々を悼むために参拝するのは常識であると。どうも常識が出てくると法律論が後ろに下がってしまうような感じがいたします。  今回の法制も、有事三法も、何だか、備えあれば憂いなし、治にあって乱を忘れずという、こういう常識論だけで、それ以上のコメントは余りなさらないような感じがいたします。そして、何十年も前に制定されるべきことだったけれども今まではアレルギーがあったからできなかったというお話になりますと、私のように野党にずっと身を置いている人間にとりましては、ああ、それならもっと、政権与党の自民党はもっと早く着手なさればよかったではないかと、アレルギーのせいというよりも政権党としての御努力が足りなかったんじゃないかと思ってしまうわけでございます。  それから、法律と法解釈の方も、このところもやもやした気持ちがする、もやもやとした気持ちを共有できるという話が盛んに民主党の提案者と質問なさる自民党の方々との間で交わされておりまして、今回はもやもや解消の有事三法というようなお話があるわけですね。  ですけれども、私は、法律の解釈というのはやっぱり規範性があると。特に、内閣の中にある法制局、もしその法制局見解が内閣としては満足できなければ内閣法制局長官を更迭なさればよいわけでございまして、それは当然のことにおいて、議員でない、役人の解釈がこのように大きな力を持つことはおかしいというような話が絶えず絶えずあるわけですけれども、私はそうではないと。法治国家である以上、これは日本法律法律体系、法解釈の枠組みとして当然のことであると思っているわけでございます。  という、前置きが長くなりましたが、法と常識について、法と法解釈について、まず常識の方からは大臣に伺って、法と法解釈については法制局の方から伺いたいと思いますが、こういう順番でお答えお願いいたします。
  89. 福田康夫

    国務大臣(福田康夫君) 常識論からお答えいたしますけれども。  総理がおっしゃることはともかくとして、今御審議をいただきますこの有事関連三法案、これは我が国が危機に面したときにどういうような枠組みでもって対応していくかという、そういうルール作りをするということでございますので、これはやっぱり国家としてそういうルールを持っていなければいけないという意味からいえば当然持つべきもので、それは常識であると、こういうふうに言えばそういうふうに言えるんですけれどもね。ですから、当然そういうものを備えているという、べきものであるという、そういう観点からこの法制を今回提案をさせていただいた。  なぜ遅れたのかといえば、それは諸般の事情があったと思います。政治体制がそういう状況になかったということもございましたし、今回はその状況が非常に好転したと言っては言葉が良くないんでありますけれども、御理解を賜りまして、九割の支持を得て、賛成を得て衆議院でもって可決をしたと、こういうようなこともございます。それはその時々のいろいろな状況というものがあるんだろうと思いますんで、今その多くの方の御理解を得られるような環境になっている、環境もあるということだと思います。  しかし、政治家として何をなすべきかということは、これはもう常に考えていなければいけないことでありまして、そういう意味において、この法制が準備されていなかったということについては、これは政治家として我々も責任はあるというふうに考えておるところでございます。
  90. 川橋幸子

    川橋幸子君 短目にお願いします。
  91. 石破茂

    国務大臣石破茂君) 短目でいいですか。そうですか。  我が国は軍事大国にならないというのは憲法に定められておる精神からも明らかでございます。例えば、北朝鮮などというのは先軍政治というのを憲法にうたっておるわけでございます。私どもは委員指摘のように平和主義を取っておりますから、そういうことになりません。
  92. 川橋幸子

    川橋幸子君 済みません、常識の話、法解釈の話。
  93. 石破茂

    国務大臣石破茂君) 法は常識の集大成であるという考え方だってできるのだろうと思います。ただ、常識、格言というものにはそれなりの意味があって、それが、例えば火のないところには煙が立たないと、こういう話があります。しかしながら、一犬虚にほゆれば万犬それに集うという全く反対の話もあるわけです。  ですから、そういう話じゃなくて……
  94. 川橋幸子

    川橋幸子君 法律と常識の関係です。火のないところの話じゃない。
  95. 石破茂

    国務大臣石破茂君) そういう話ではなくて、総理がおっしゃっておられる備えあれば憂いなしということは、それはきちんとした常識であり、それを担保するためにどういう法律を作るのかということだと思います。その備えあれば憂いなしというのは、これは間違いない事実であって、それを担保するための法律をきちんと作っていく。ですから、世の中の常識を具現化するために法律は必要なのであって、常識を具現化するような法律がないということ自体が私は問題だろうというふうに思っているわけでございます。
  96. 宮崎礼壹

    政府参考人(宮崎礼壹君) 法令解釈の在り方についてお尋ねですので、ごく一般論として申し上げさせていただきます。  憲法を始めといたしまして、法令の解釈は、その法令の規定の文言や趣旨等に則しまして、立案者の意図なども考慮いたしまして、また議論の積み重ねのあるものについては全体の整合性を保つことにも留意いたしまして、論理的に確定されるべきものであるというふうに考えております。
  97. 川橋幸子

    川橋幸子君 せっかく法制局の役割を私は重視するという、そういうことをお尋ねしているのに、それではちょっと余りにも、何か私の意図を、質問する意味が通じないことに私は遺憾であると申し上げたいと思います。  さて、やはり自衛権と集団自衛権の関係についての質問が多うございました。今は国際法に照らせば自衛権もあるし、集団的自衛権も独立国としては当然持つのだけれども、憲法では集団的自衛権を禁じているわけでございます。それで、自衛権あって集団的自衛権なしというのはおかしいではないか、個別自衛権があるのに何で集団的自衛権がないのかと、こういうお尋ねの質問がたくさんございましたけれども、まず官房長官にその点だけ伺います。
  98. 福田康夫

    国務大臣(福田康夫君) 国際法上、国家というものは、この集団的自衛権、すなわち自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止することが正当化されるという地位を有しているものと、こういうふうにされているんですね、国際法上ですよ。我が国が国際法上、集団的自衛権を有していることは、これは主権国家である以上当然のことである。これはもう従来もう何十遍となく繰り返している言葉でございます。  その上で、我が国は現行憲法九条の下でどこまでできるのかということを言っているわけでございまして、そういう、そのことについてのいろいろな判断、解釈判断というものは、これは今は必要最小限度の範囲にとどめると、こういうようなことでしておりますけれども、これについてはこれまたいろいろな議論がございますので、十分国会でも議論していただきたいと思っております。
  99. 川橋幸子

    川橋幸子君 自衛権あって集団的自衛権なし。これは日本憲法が禁じているから、そういう政府解釈なわけでございます。もやもやはその辺りがあったのですよね。もやもや感を解消するためには、むしろ集団的自衛権があるんだと、独立国家としての誇りを取り戻すためにそれを日本も持つべきだという、そういう改憲論と、もう一つは、民主党の中などには多いのでございますが、やはり個別的自衛権はあるけれども、それは専守防衛に徹すると、それから国際貢献は必要なので、PKO等があるならそこをはっきりさせればいいではないかという、二つの、もやもや解消といっても集団的自衛権を持つか持たないかの大きな流れがあるわけです。(発言する者あり)違うとおっしゃっていますけれども、私の、大ざっぱと言われるかも分かりませんが、分け方はこうでございます。  そこで、しかしここでも、かつての自民党の中には、ひとつ、護憲と改憲というと語弊があるかも分かりませんが、分かりやすくそのように単純に言わせていただきたいと思います。集団的自衛権を持つべきだというところはむしろ中曽根さんとか、それから今の東京都知事の石原さんとかのお話であり、それからもう一つの護憲論の方は宮澤さん、それから後藤田さんという方がおいでになられたと思います。  ちょっと長くなりますが、引用させていただきますと、これは元朝日新聞の編集委員をしていた国正武重さんという政治評論家の方がある会合で話したことでございます。  宮澤さんの部分については御本人がインタビューされたわけでございますが、先ほど石破長官が同じようなことを述べておられましたけれども、なぜ我が国があのような悲劇への道を歩んだのか、決定的な誤りはいつどのようにして起こされたのか、私は何十年もの間、このことを知ろうと努めてきた、殊に自分が国政をお預かりするようになってからは、人ごとではない思いであらゆる努力をして調べてみましたが、つい今日まで答えを見いだせないままに来ています。というのは、なぜあの太平洋戦争というところにずるずるずるずると入り込んでしまったかということなのですね。そのときに宮澤元総理は、このインタビューの中では米内光政さんを引かれて、日本は、魔性、魔です、魔の性ですね、魔性の歴史に引きずられたと米内光政が振り返っていると。一切の自由と批判を抑圧されて活力を失った日本の社会、軍部の強権という病魔に対する抵抗力を失って屈服した過程、それはずるずるずるずると徐々にむしばまれて、気が付いたときにはすべてが失われているような過程をたどってしまったと。このことを宮澤さんはおっしゃっているわけでございます。  それから後藤田さんの方は、そこのところをアリの一穴という表現、よく覚えていらっしゃると思います。自民党の先生方もよく覚えておられると思います。アリの穴からも堤防は崩れるということで、日本というのはどうも、そこ一点穴が空くといつの間にかどうしてこんなことになってしまったんだろうと。明治憲法も、臣民の権利ではありましたけれども、人間の権利ではなかった、人権ではなかったんですが、近代立憲国家としての骨格は備えていた。大正デモクラシーという時代も経験したけれども、何かずるずるずるといってしまう。これを米内光政さんは日本の魔性の歴史というふうに言っていたと、宮澤元総理が話されたというインタビューを載せたものがあるわけでございます。  こうした反省というのはもう今は必要ないのでしょうか。もう忘れてもいいことなのでしょうか。集団自衛権がないと国際貢献ができないというようなそんな感じもございまして、かつてのテロ特措法のときに、小泉総理の発言も常識を踏まえて発言されているわけでございますが、日本憲法九条と前文の国際社会において名誉ある地位を占める、この間には何かすき間があるようだと、こんな発言をなさったことも官房長官ですからよく覚えておいでのことと存じますが、こうした危険、過去の日本を振り返ったときのこうした危惧というものはもうないのでしょうか。官房長官にお伺いします。
  100. 福田康夫

    国務大臣(福田康夫君) 過去の歴史をひもといて、その経験に照らして将来を考えていくというのはどこかの国の言葉でございましたけれども、それは私は、歴史というのはこれは大変大事なことであり、また過去の歴史において問題があったとするならば、その轍を踏まないように努力するというのが現代人の役割であるというふうに思います。  確かに我が国は戦前、日露戦争にも勝ったなんというようなことで少し思い上がってしまったようなところもあったかもしれぬ。しかし、その後ひどい仕打ちを受けたわけですね。仕打ちというのは言葉がこれまた適切でないかもしれぬけれども、そういう目に遭った。それは罪なき国民から見ればそういうことですよね、実際問題言って。ですから、そういうような体制にしないために、我々政治家一人一人が心して正しい道を歩むと、こういうことを常日ごろ考えていかなければいけないことだと、こう思います。  先ほど、それが一つの結論ですけれども、先ほど自衛隊の活動について何か戦争に参加するとかいったような感じのことを言われたような気がいたしたんですけれども、決してそういうことじゃないですね。そういうことは一切しておりません。ですから、アリの一穴とかそういうようなことも、今この時点において何かそういうことを示唆するようなものがあるのかどうか、もしあれば御指摘願いたいと思っております。
  101. 川橋幸子

    川橋幸子君 そこのところを官房長官御自身がどのように考察されて、どのように、東大法学部として法律について磨きを掛けられてきたのか聞きたいところだったのでございますけれども、次の質問に、時間がありませんので参ります。  さて、今度は防衛庁長官にお伺いさせていただきます。  五月二十日、この審議が始まりましたときに、国連、要するに自由党田村秀昭議員に対する総理答弁がございました。私はあれと思って、そこのところを非常に注目して伺っていたわけです。小泉総理にもそういうお考えがあったんだなと、全然異質な方ではなかったんだなと、私も共感できるところがあるのかしらという感じで見守らせていただいたわけでございます。  あのときは、防衛庁がどうして防衛省に昇格できないかという、そういうお尋ねの関連の小泉総理の答弁でございます。ちょっと読ませていただきますと、言わば、これは私自身の考えでございますが、戦争中、いわゆる第二次世界大戦において、日本軍隊に対して多くの国民が、日本国民を守ってくれたという感情以上に日本国民を抑圧したという気持ちを強く持っているんだと思います。議事録そのまま読んでいるんです。こういうことを言っておられます。よその国の軍隊は、自国の国民を守るためだと、自国の国民を解放するためにあるんだと、自国の国民を侵略から防ぐためにあるんだという、そういう意識を強く持っているんだと思います。ところが日本は、第二次世界大戦、これにおいて指導部は過酷な要求を一般国民に押し付けたんじゃないかと、ということですね。特攻隊というものは、若き青年たちに非情な要求をしてあのような貴重な命を散らしたと。これはやっぱり軍隊を持ったからだという、軍隊に対する反感がよその国よりも非常に強いんだと思いますと、こういう御答弁をなさっていらっしゃるんです。  防衛庁長官、いかがでございましょうか。総理がこのようにお答えになっていらっしゃることに対して、防衛庁長官、もしそうでなければそうじゃないというお答えでも結構でございますので。
  102. 石破茂

    国務大臣石破茂君) 総理の御答弁、私も拝聴いたしておりました。  要は、旧軍と何が一番違うのかということを問われれば、シビリアンコントロールがあるかないかというこの一点だと私は思っています。この一点において旧軍と私どもは違うのでございます。  それは、戦前におきましては、先ほど軍人に参政権がなかったというお話をいたしました。しかし、それで担保しているように見えて、しかし陸海大臣は現役武官でなければいけない、だから大臣出さなきゃ倒れてしまうという内閣が一杯あったわけで、それが戦前の悲劇を招いた一因だと私は思っています。  しかし、今は、内閣総理大臣、そしてまた防衛庁長官、文民統制というものが徹底をしておるわけでございます。大事なことは、その文民統制において、いわゆる内閣総理大臣であるとか防衛庁長官が制服の言っていることを黙れと、一切聞く耳持たないということは私は文民統制だとは思っておりません。常に答弁申し上げておりますように、軍事の専門家たる制服と、そして法律や予算の専門家たる内局があって、そこの、車の両輪としてどのような判断を、国民に対して選挙で責任を負う政治家が果たすかということだと思っています。  したがって、先ほど、例えばイージス艦というお話がありました。どの国の海軍があれを見てもあれが攻撃的な船だとは思いません。なぜならば、特に日本の場合です、トマホークを積んでいるわけでも何でもありません。自分を守る能力については世界一ですが、よそを攻撃する能力というのはほとんど持っておりません。そうしますと、そういうような、イージス艦というのはこういうものですよ、F15とはこういうものですよということについてきちんとした知識を政治が持っている、そしてそのことの判断は政治が行うわけです。しかし、軍事的な知識についての専門家たる制服組の言うこともきちんと聞かなければ、私は文民統制というものは徹底されない。  戦前と戦後の違いを一言で述べれば文民統制ということであり、私どもがその民主主義というものにどれだけの自信と誇りを持つかということに懸かっておると私は思います。
  103. 川橋幸子

    川橋幸子君 石破大臣のおっしゃったとおりですよね。日本憲法が改正されて軍部が独走するというような、そういう仕組みではなくなったと、そこが非常に大きな、それは法律、制度上の違い。  でも、なお小泉総理のようにおっしゃる方がいらっしゃる。小泉総理のようにというとちょっと言い方が悪いかも分かりませんが、私自身もそのように感じる。多くの国民が、法律、制度は変わっても事実が変わったんだろうか、実態が変わったんだろうか、日本人のありようというのが変わったんだろうか、そこに絶えず絶えず疑問を投げ掛けながら、私たちは大丈夫なんだろうかと。戦後五十年たってこういう日本の国を、理想の国をつくろうと多くの人たちが努力したわけでございますが、それが今も大丈夫なんだろうかというものを考えている、私もその一人でございます。  法律、制度が変わっても実態、事実が変わらなければ、そこの中で何がしかの危惧を、もう心配ないんだ、ないんだというふうに確かめながら日本人自身が反省し、自分自身を磨き上げていく努力がないと、そこはなかなか。ドイツがヒトラーの誕生を反省したように、日本人も反省している人が多いわけですね。  ここに、加藤典洋さんとおっしゃる、明治学院大学の先生でございますが、むしろそれよりも文芸評論家として著名な方でございます。私の主宰する小さな会合でお見えになられたんですが、くしくも小泉総理と同じようなことをおっしゃっておられるわけです。自衛隊は今本当に災害救助ですとかPKOですとか非常に大変なお仕事をしていらっしゃることはよく理解するとおっしゃって、その上での話なのですね。自衛隊はなぜ今もなお国民から信用されていないのでしょうか、自衛隊の人にそこを考えてほしいのです、そこを自己批判してほしいのですと、この方はおっしゃっているわけでございます。戦前とは違うんだ、戦前の軍隊とは違うんだ、そこを批判して出発するんだということを示してほしいということをこの方は言っておられます。私の知る限り、そうしたことを自衛隊自身が明らかにしている、自己批判しておられるという話を聞いたことがないというふうに述べられているんですね。  それで、例えばの話ですが、太平洋戦争について碑が建てられ戦史が編さんされていますけれども、都合の悪いところは全部隠されたままだったので大岡昇平さんが「レイテ戦記」を書いたときに怒ったというようなことをエピソードとして言われているのと、もう一つは、湾岸戦争直後に日本の掃海艇がマニラ港に入ったときに旭日旗を掲げる、日の丸ではなくて旭日旗を掲げると。だから、制度、法律は変わったとしても、実際の長年日本人の体質の中に染み込んでいるそこの自己改革がしっかりできていなかった。  オーティス・ケーリさんという、今学者をされていらっしゃる方だそうでございますけれども、日本のGHQ時代に活躍なさった方だとお聞きしますが、この方自身は、人ごとながらはらはらして見ていられなかったと、なぜ日本人は黙っているんだということを加藤先生という方が書いていらっしゃるんです。  自衛隊はもう旭日旗は掲げませんね。
  104. 石破茂

    国務大臣石破茂君) 旭日旗というのは、海上自衛艦旗という形で現在も使用いたしております。それは軍艦であることを示す。国旗を掲揚する場合もございます。つまり、艦尾にどの旗を掲げるかということで、日本国籍の船であるということで旭日旗あるいは日章旗、これを両方使っております。
  105. 川橋幸子

    川橋幸子君 そこのところがやっぱり一般国民に非常に分かりにくいことだと思います。私は、やはりそういうところではっきり変わったということを見せてほしいということを要求、要望させていただきますけれども、官房長官の方にお伺いします、検討してくださいますか。
  106. 福田康夫

    国務大臣(福田康夫君) 旭日旗を海上自衛隊が使用してはいけない。そうすると、日の丸を陸上自衛隊で扱ってはいけない、そういうことになるんですか。日の丸がよくて海上自衛隊が使う旭日旗はいけないと、こういうことですか。ちょっと何か形式論的な感じがしますね。  しかし、実態は明らかに変わっているということは、これはもう世界じゅうの人が知っているんじゃないですか、今。やっぱり日本自衛隊というのは他国に軍隊を持っていって戦争すると、そういうことでないということはもうはっきりと決まっていることで、もう世界で認めていることだと思っております。
  107. 山崎正昭

    委員長山崎正昭君) いいですか、石破さん、いい。
  108. 川橋幸子

    川橋幸子君 いえ、もう結構でございます。  大変残念な答弁でございました。そこのところが変わったのか変わらないのか、それを擁護される、形式的なことですねというふうに言われることに懐疑の目を向けるというのが国民感情だということを私は申し上げたいと思います。  さて、日本は平和憲法を持ち、それで、もう軍事国家といいますか武力によって紛争解決をしようとは思わない国だと。これは知られているでしょうか。歴代総理がこういうことを外交の場ではっきりと主張なさったことはございますでしょうか。
  109. 福田康夫

    国務大臣(福田康夫君) 世界じゅうに我が国憲法のことについて知られているかどうかと、世界というのはどこを、何を指して世界というのか分からないのではっきり申し上げるわけにいきませんけれども、多くの国の要路にある方々は、すべてとは言わないけれども、御存じなのではないかなというように思います。我が国が非常に自制的に、自制的というのは言葉は悪いんだけれども、憲法によって制限された活動の範囲で海外においても活動している、特に平和構築とか平和のために活躍しているということは、これはかなり広まっていることだと思っております。
  110. 川橋幸子

    川橋幸子君 時間がありませんので、今の官房長官お答えに私は満足させて、満足して、六割ぐらい満足させていただきます。  ちょっとここで別の質問を入れさせていただきたいと思いますが、報道されておりますのは、新法によって自衛隊海外派遣、イラク新法によって海外派遣を考えているというようなことが報道されておりまして、今国会、延長できるのかできないのか、民主党がこれに賛成するのかしないのかというような記事が大きく載っているわけでございます。  私は、こういう大きな話を拙速でやるべきではないと思いますし、本当に今イラクの現状というのは非常に戦時と変わらないぐらい危険が一杯な状況ではないかとも思いますし、それから何よりも日本が国際貢献する、平和構築のために、ピースキーピングのために貢献するというそういう態度は、別にこのイラクに乗り遅れる、バスに乗り遅れることではなくて、もっと別の、本当にPKOに予算をこれだけ確保するとかあるいはODAにこれだけ確保するとかそうした国際貢献の道はたくさんあって、しかも感謝はされている。人間の安全保障という話がこの日、五月二十日の討論の中では武見議員の方からも言われまして、そうした点に努力するという旨の御答弁も総理からなされているわけでございます。  新法によって今国会の中で自衛隊海外派遣を考えているという、このような取り組み方について官房長官はどのようにお考えなのか、お伺いしたいと思います。
  111. 福田康夫

    国務大臣(福田康夫君) イラクの復興支援につきましては様々な議論があることは承知をいたしております。したがいまして、我が国も先般、国連決議において平和と安定のために各国に協力するように呼び掛けておると、こういうふうなこともございまして、これからできるだけの協力をしようという考え方は基本的に持っているところでございます。  したがいまして、現行憲法の範囲で今何ができるかということでいろいろ考えております。外務省もいろいろ努力しまして、そのメニューを先般示しているところでございますけれども、いろいろな様々な形で復興のために、そしてまたイラクの国民の安定を取り戻すために、でき得る協力をしていこうという考え方です。  そこで、これから新法をどうするのかと、こういうお話でございますけれども、これはイラクの情勢もございます、いろいろ複雑な情勢もあるようでございます。そういうことをよく見極めた上で考えるべきことであるということで、今、新法云々ということについて何も決めたものはございません。
  112. 川橋幸子

    川橋幸子君 よく見極めてというその御答弁に御努力お願いしたいと思います。  さて、最後、短い時間ですが、指定公共機関に日本赤十字社、日赤を含むことについてお伺いさせていただきます。これは五月二十日の初日の議論の中では、齋藤勁議員の方からもお伺いしたことでございます。実際上、そういう条文を発動することないんだから心配ないよと、そういう大ざっぱに言うと官房長官の御答弁ですが、私は今日はちょっと別の観点から伺わせていただきたいと思います。  ペルーの日本大使館占拠事件といいますか、襲撃事件というものがございました。御記憶でしたでしょうか。その大使館の中に、何といいましたか、要するにそういうテロ組織が入り込んでいて、そしてそこに国際赤十字の何人かの人が、お一人は何か神父さんのような格好、お一人は何か非常にカジュアルな格好でその犯人たちに話に行く。あれを見て、私は、あの場面はかなり印象に残っておりまして、忘れられません。第三者機関というのはこういうことを言うんだなと。国家主権と犯人といいますか、そういう同士ではない、インディペンデントでお互い信用があって話に行ける。そういうことを考えると、私は、赤十字というのは国際組織でございますし、何も要請しなくても自発的にこうしたことを使命として負傷者の救出等に当たっている。そういうNGOをどうして指定公共機関に指定する必要があるんだろうか。  あと、プラスして言わせていただきますと、民放を含む問題については民放連の方からも様々なことが、見解が出され、この場でも議論になっておりますが、今回、イラクの問題を見ていますと、アル・ジャジーラという民放があります。あれは国家主権とは切れているからこそそういう報道ができたということがあるわけです。  もう今回の法律国家総動員法のような法律じゃないんですよ、安心ですよと言われるんですけれども、どこかに国家が何か、こういう有事になったらあらゆるリソースを動員できるんだというようなことが意識されているようなことがどうも、今の古典的な戦争ではなくて、新しい地球市民と言われるグローバリゼーションの中の紛争解決には必要なんじゃないかと、こういう観点から、特に日赤の問題については、指定、法律から削除するのが適当ではないかということを質問して、終わらせていただきます。
  113. 福田康夫

    国務大臣(福田康夫君) どういう事態に日赤を指定公共機関としてその役割を果たしてもらうかという、その状況を考えていただきたいと思うんです。それは正に武力攻撃を受ける、そして日本国民の命までどうなるか分からぬというような状況下において、そして中立であるべきだとか、そういったような議論ってないでしょう。特に日赤というのは医療を専門にするところでしょう、医療。そういうところに医療をしないで中立でおれと、困った人を助けることもしないと、そういうことを考えること自身が私はちょっと適当でないのかなというふうに思っていますので、日赤は外国人の安否情報の提供というようなことも含めていろいろな役割を、これを期待をいたしておるところでございます。
  114. 川橋幸子

    川橋幸子君 終わります。
  115. 谷林正昭

    谷林正昭君 民主党谷林でございます。関連して質問させていただきます。  四十五分間切りましたが、まず質問に入る前に、昨日、テレビを見ておりましたら、小泉総理が映りまして、ちょうど地震が来た、地震が来たけれども自信は失うなと、こういうような講演をされている。私は、今、この事態対処法案を、正に危機管理、そして国民が注目している、そういう中で議論している最中に、どこでどれくらいの地震が起きたかも分からないのにそういう発言をする。そして、気が付いてみたら大きな被害が出ている。非常に不謹慎だというふうに私はまず指摘をさせていただきたいと思います。  それからもう一点、防衛庁長官が三十日から一日に掛けてシンガポールに海外出張をされる、こういう話を聞きました。シンガポールというのはまだSARSの終息宣言はしておりません。WHOは正に終息方向に向かっているというふうなコメントは出しておりますけれども、カナダの例もございます。そういう意味では、今これだけの厳しい法案審議をしている最中に、民間研究機関が主催するそういうところへ出向いていって、ましてや非常に危険なところ、そういうところへ出ていって、月曜日から果たしてこの委員会が開かれるのかどうか、私は疑問に思います。そういうことを考えたときに、まず、備えあれば憂いなしという総理がおっしゃいました。どういう備えをもってシンガポールに行かれるのか、お聞かせいただきたいと思います。
  116. 石破茂

    国務大臣石破茂君) シンガポールの会議、IISSと称するものであることは委員御案内のことかと思います。これはフランスであり、イギリスであり、そしてまたドイツであり、アメリカは副長官ウォルフォウィッツ氏だというふうに聞いておりますが、世界各国の防衛大臣が集まりまして、このアジアの、太平洋地域の安全保障をどのようにするかということで議論をする場でございます。  これは、シンガポールの状況というのは、それはどの国にとっても一緒でございます。イギリスもフランスもインドもアメリカもそういうことについて万全の注意を払った上でそこにおいて会議を開く、そこに日本だけがSARSの危険がありますから私どもは行きませんというような判断をすることがどうなのかということが私はあるだろうと思っております。  しかしながら、委員指摘のように、極めて重要なこの有事法制の御審議をいただいておるわけで、それはもちろん有事特に限らずどの委員会も重要な審議をいただいているわけでございますが、そこにおいて私どもは厚生労働省が定めたいろいろな注意事項、そういうものを遵守をしながら、それに触れないようにということでございます。そこに書かれておることを遵守しながら、日本国の政府の一員としてアジアの安全保障というものはどうあるべきなのかということの議論をしたいと思っております。それは、SARSが怖いというか、怖いというようには申しませんね、国会議論をしておりますから私は行きませんというような選択もそれはあっただろうと思っております。もちろん国会のお許しがなければ行けないことでございます。これも国会に御迷惑が掛かりませんように、土曜、金曜日の夜遅く出発をいたしまして、日曜日中に戻ってくるようにいたしております。  私はそこにおいて本当に各国の国防大臣と、この九・一一の後の、そしてまたアフガニスタン、イラクという情勢がありました、印パの情勢もあります、北朝鮮の情勢もあります、そこにおいて、日本国が何を考え、そして世界とどう協調し連帯していくかというお話をすることは極めて有意義なことだというふうに考えております。国会のお許しがいただければ、私はSARSというものにも万全の注意を払いながら出張させていただきたい。これは危機管理がおろそかであると、私はそのような意識は持っておりません。
  117. 谷林正昭

    谷林正昭君 万全の備えをもって出席をする、出席をするべきだと、こういうふうな御答弁でございましたが、月曜日はマスクをしてこの会場へ来られるんですか、それともそのままの姿で来られるんですか。なぜこういうことをここで言いましたとしたら、与党の幹事長三名が国会へマスクをして登院をされました。そういうのを見ておりますと、やはり小学生が国会見学に来てその姿を見て、あ、これはひょっとしたらといってPTAと相談をして国会見学を取りやめた、それが新聞のニュースになっております。  そういうような状況を踏まえたときに、私は、万全の体制を取っていくということはおっしゃいますけれども、万が一のことを考えたときは、私は、いろんな各国の高官と意見交換をする場だと言って有意義な場だというふうにおっしゃいますけれども、万が一これが月曜日から止まった場合はどうなるのかということになりますので、もっと緊張感を持ってそういうことを少しやっていただきたいというふうに要望をさせていただきます。  次に、質問に入らせていただきます。  今ほども指定公共機関について質問が出されました。私、議員になる前は全部現場に、ずっと現場で肉体労働をしてきました。そういう中にあって、この指定公共機関についてということになってきますと、特に私は運送会社におりましたから、輸送部門に対して指名をされた、指定をされたというときになったときには一体職場がどうなるのか、こういうことをまず考えてみました。  そこでお尋ねをいたしますが、この定義の中で書かれております、第二条六項で定義をされております指定公共機関の役割というものを正確にお聞かせをいただきたいと思います。
  118. 福田康夫

    国務大臣(福田康夫君) 指定公共機関が実施すべき対処措置、これは要するに役割ですね。これにつきましては、武力攻撃事態対処法案が成立した後に国民保護法制検討の中で具体化していく、こういうことにいたしておりますけれども、さきに国民保護のための法制についてというものを公表いたしております。  そこでは、放送事業者による警報、武力攻撃事態等の状況及び避難の指示の内容の放送、それから日本赤十字社による医療その他の救援の協力、並びに外国人にかかわる安否に関する情報の収集及び提供、また、電気事業者、ガス事業者等によります適切な供給の実施、日本銀行による通貨、金融の調節及び信用秩序の維持、運送事業者による避難住民又は救援のための緊急物資の運送、電気通信業者によります通信の優先的取扱い、そういったようなことを想定をしているわけでございます。  武力攻撃事態等におきましては、指定公共機関は自ら作成する業務計画に基づいてこれらの対処措置を自主的に実施すること、こういうことを考えているわけでございます。
  119. 谷林正昭

    谷林正昭君 それでは、その指定公共機関はだれが指定するんですか。だれが指定するんですか。
  120. 福田康夫

    国務大臣(福田康夫君) それはただいま申しましたように、今後国民保護法制についていろいろその対応に、中身について決めていかなければいけないわけであります。そのこと、その具体的な対処の内容については政令で指定すると、こういうことになっています。
  121. 谷林正昭

    谷林正昭君 だれが指定するかということは決まっていないということですか。
  122. 福田康夫

    国務大臣(福田康夫君) ですから、政令で決めていくんです。
  123. 谷林正昭

    谷林正昭君 それは、指定公共機関というものを指定しますよということは言いますけれども、まだそれは法律ではだれが指定するかということは決めていないということですね。そんなばかなことないでしょう。
  124. 福田康夫

    国務大臣(福田康夫君) 今御審議をいただいておりますこの対処法の中で決められている規定に基づいて政令で定めると、こういうことでございます。
  125. 谷林正昭

    谷林正昭君 政令で定めるということは、政令に指名者を書く、指定者を書くということですか。政令でその担当指定会社だとか電力会社を書いていく、書き込んでいくということですか。
  126. 福田康夫

    国務大臣(福田康夫君) 政令というのは最終的に内閣で決めるわけで、ですから、内閣で具体的に決めていくと、こういうことになります。
  127. 谷林正昭

    谷林正昭君 内閣で決めるということなんですね。そうでしょう。だから、そういうことを考えたときに、じゃ内閣でどういうところを指定するかということは、これはまだ、それも政令で定めていくということになるんですが、お聞きしたいのは、官房長官責任者だというふうに思いますので、指定するときに団体名で指定するのか、あるいは協会名で指定するのか、あるいはその法人名を挙げて指定するのか、どちらでしょうか。
  128. 福田康夫

    国務大臣(福田康夫君) これは、指定公共機関の業務につきまして法律規定される対処措置を自主的に実施するということでございます。したがいまして、指定公共機関は具体的に事業を実施する主体である必要があるということから、これは事業者の団体や協会ではございません。公共的機関又は公益的事業を営む法人を指定すると、こういうふうなことになっております。
  129. 谷林正昭

    谷林正昭君 それでは、株式会社ということに、あるいは有限会社、そういう公共事業を営む法人、会社というふうな認識だというふうに私は思います。  そういった場合に、今現行の自衛隊法の中に、防衛出動した場合に、百三条で医療だとか土木建築工事だとか輸送業務、こういうところに対して業務従事命令ということでいろんなそういうことを要請をする、こういう法律になっております。  じゃ、今度その指定された指定公共機関は、有事の際あるいはそういう事態が起きたときにどこの、仮に同じ会社が指定されていたといったときに、どこの指示で動くのか。自衛隊の指示で動くのか、あるいはこの法律に基づいてだれの指示で動くのか。その辺が、例えばですよ、例えば日本通運という会社が指定された。自衛隊では今指定されているかどうか私分かりません。そういったときに、万が一の場合は、自衛隊法律に基づいて輸送業者が指定されている、そういうところは外してこの事態法では指定するということになるのか。その辺をちょっとお聞かせください。
  130. 石破茂

    国務大臣石破茂君) 御質問の趣旨が完全に理解できていなければお許しをいただきたいと思いますが、百三条に基づきます業務従事命令というものと指定公共機関の間には別に論理的に関係があるわけではございません。百三条は百三条としてございまして、指定公共機関であるかないかにかかわらず、百三条というものの構成によりまして、都道府県知事は防衛庁長官の要請に基づきというような構成になっておるわけでございます。
  131. 谷林正昭

    谷林正昭君 質問の意味が分からないということですから、もう一遍言います。  自衛隊法防衛出動になったときに百三条で従事命令をやると、できるということになっていますね。医療機関だとか土木建築工事だとか輸送業務を携わる、そういうところ、業務命令ができる、従事命令をすると、そういうことになっています。そうしたら、その従事命令に従って動かなきゃならない医療機関だとか土木建築会社だとか、そういうところが出てくると思うんですよ。  ところが、それは今指定されているのかどうか私分かりませんが、今度事態法の中で、まだ決まっていないということですから、政令で法人名が出てくる。例えば日本通運というところが出てくると。そうしたら、その日本通運に自衛隊法防衛出動するときの百三条の従事命令は出ないのか出るのか、それを聞いているんですよ。同じ会社には指定しないのかということです。
  132. 石破茂

    国務大臣石破茂君) それは必ずしも排他的に、こちらは指定あったらこちらはないというような関係には立ちません。それが非常に難しいということになれば、それは調整ということが行われることになるというふうに考えております。
  133. 谷林正昭

    谷林正昭君 なぜこういう質問をするかといいましたら、例えば自衛隊法に基づきまして、百三条に基づきまして、日本通運にしましょう、日本通運の車で、トラックで武器弾薬をこの倉庫からこの倉庫まで移動してくれと、こういう従事命令が出たとします。これはあり得るでしょう。どうですか。
  134. 石破茂

    国務大臣石破茂君) それは、何ができるかということにつきましてはこれから検討することになりますが、通常考えますと、それは武器及び弾薬の輸送ということになるのだろうと思います。  委員御案内のとおり、当然業務従事命令は二項地域において課すものだということも御案内のとおりでございます。したがいまして、自衛隊が活動する地域ではない二項地域ということになりまして、活動する範囲というもの、地域というものにはおのずから二項地域という制約はございますが、そういうことは想定されることを排除されないというふうに考えております。
  135. 谷林正昭

    谷林正昭君 仕事はさせるけれども、危ないところへは行かせないという意味なんですね。そういうことですね。
  136. 石破茂

    国務大臣石破茂君) これは繰り返しになりますけれども、この業務従事命令というのは、自衛隊任務遂行上特に必要があると認める場合に、自衛隊行動に係る地域以外の地域で内閣総理大臣が定めた地域に限り、つまり自衛隊行動に係る地域以外の地域というのがありまして、その中で内閣総理大臣が定めた地域に限りましてそういうような業務の従事命令を課すということになっておるわけでございます。  そういうことで、当然そういう場合に民間の方々の安全というものを確保するということ、これは法律にも書いてございますし、そういう趣旨を体して行われることは当然のことでございます。
  137. 谷林正昭

    谷林正昭君 自衛隊には、聞くところによりますと、一項地域、二項地域と、こういうところがあって、二項地域でそういうことをやると、大体そういうことというふうに伺っております。  そこで、お尋ねしたいのは、同じ指定公共機関に指定された運送業者が、運送業者がそういう一項地域みたいなようなところにこの事態法に基づいて行かなければならないと、こういうことがあり得るのかどうか、聞かせていただきたいと思います。
  138. 石破茂

    国務大臣石破茂君) そういうことがあるとすれば、もうこれは法の趣旨から全然外れるわけでございますね。委員指摘のように、じゃ、指定公共機関になったとして、どうもそれは非常に考えにくいことだと私は思っているのですけれども、指定公共機関になったとして、自衛隊法では駄目だが今度の新しい制度によっては可能なのかというようなことをやってしまいますと、これは法の趣旨に全く反することになりますから、そのようなことはあり得ないのでございます。
  139. 谷林正昭

    谷林正昭君 そういう確認をしたかったわけでございます。  そこで、十七条、本法の十七条、この十七条に「安全の確保」というのがございます。この指定公共機関、指定行政機関、こういうところの安全の確保をしっかりということを書いてあるんですが、具体的な考え方聞かせていただきたいと思います。
  140. 福田康夫

    国務大臣(福田康夫君) 指定公共機関は十七条でもって「安全の確保に配慮しなければならない。」ということが規定されております。それはただいまの答弁のとおりでございます。  そして、国民保護のための法制におきまして、警報において武力攻撃事態が予測される地域を明らかにすることを考えておりますが、国が指定公共機関に対し当該地域において対処措置の実施を要請したり指示することはできないものと考えております。さらに、対処措置を行う指定公共機関の安全の確保を積極的に図るため、例えば指示を受けて避難住民や救援物資の運送を行う指定公共機関に対して安全の確保のために必要な情報を提供することなどを検討すると、こういうことになっております。
  141. 谷林正昭

    谷林正昭君 そうしたら、そういう、今ほど、素案があるというふうに先ほどおっしゃいましたので、その素案をこれから検討していくということになろうかというふうに思いますが、くれぐれも、そういう指定公共機関、指定行政機関、そういうところに携わっている、これは機関は指定しますけれども、そこの機関で動くのは国民ですから、ということを考えたときには国民の安全ということになるわけでございまして。  そこで、お尋ねをするわけでございますが、第八条、「国民の協力」というところがございます。昨日質問の通告をしたときに、名刺いただきませんでしたけれども、担当者の方だと思いますが、その方の見解と私の見解が真っ向からこの八条が食い違いました。  私は、この八条の「国民の協力」というのは、指定公共機関に働いていようと、単なる避難するお年寄りや子供であろうと、国民というのは同じだという認識を持ってこれまでこの法案の勉強をさせていただきました。しかし、昨日のおいでになった方は、これはあくまでも避難をする方の国民の協力だと、こういうようなことをおっしゃいましたが、まずその辺の、この八条の意義を聞かせていただきたいと思います。
  142. 福田康夫

    国務大臣(福田康夫君) 八条は国民の協力についてでありますけれども、これは国民保護法制では、住民の避難や被災者の救助の援助、救助そのものではなくて救助を援助すると、こういう、救助活動を援助するということですね。そういうことなど国民の自然な協力を得られるものに限定して協力を要請できる旨の規定を設けると、こういうことを想定しております。  今、ちょっと御質問というか御発言の中にありました国民に対する協力の要請というのは、こうした協力につきましては現場又はその付近にいる住民に対して行うということを想定しておりまして、指定公共機関等の法人やその従業員に対し、その規定に基づいて指定公共機関の対処措置の実施について要請を行うと、こういうことは考えていないということでございます。
  143. 谷林正昭

    谷林正昭君 ちょっとはっきりしませんね。この「国民の協力」の、私の単純に聞いているのは、八条の意義、私は全国民にこれが掛かってくるんではないかというふうに思っているんですけれども、今の官房長官の答弁でしたら、全国民じゃなくて避難するときのというような意味合いの発言、答弁だというふうに理解してもいいんですか。
  144. 山崎正昭

    委員長山崎正昭君) 福田内閣官房長官。──ちょっとお待ちください。
  145. 谷林正昭

    谷林正昭君 速記止めてくださいよ。
  146. 山崎正昭

    委員長山崎正昭君) 速記を止めてください。    〔速記中止〕
  147. 山崎正昭

    委員長山崎正昭君) 速記を起こしてください。
  148. 福田康夫

    国務大臣(福田康夫君) この法制全体では国民、すべての国民という意味で、指定公共機関のその従業員とかそういったようなものも規定しているわけでございます、この安全ということについて。しかし、国民の協力ということについては、今申しましたように、これは住民の避難、被災者の救助の援助、こういうことに限定をしていると。要するに、国民の自然な協力を得られるその対象に限定していると、そういうことでございます。
  149. 谷林正昭

    谷林正昭君 そうしたら、私の認識が全く違っているということなんでね、今の答弁だと。この国民というのは、「国民の協力」の国民というのは、避難する人、あるいは指定公共機関に勤めているとか、そういうことの人は含まないということになるんですか、本当に。それでいいんですか。
  150. 福田康夫

    国務大臣(福田康夫君) ちょっと私の先ほどの発言で誤解があったかもしれません。「国民の協力」という国民というのは国民全部と、こういう意味でございます。
  151. 谷林正昭

    谷林正昭君 そうですよ。そうでないと、この法律成り立ちませんよ。国民全部ですね。指定公共機関に指名されている国民も、指定行政機関に指名されている国民も、そういう協力が大事ですよということをここで言っているんですよ。  そこでお尋ねするんです。その国民の協力、そしてその指定公共機関が、そういう機関が指定された。そこに働いている人たちは当然おります。機関には人はおりません。機関に働いてこそ、その機関が動きます。そういったときに、そこに対する協力義務国民の協力義務は発生するけれども、官房長官の答弁では、これまででは、それは任意であったり、あるいは強制はないと言ってみたり、そういう答弁が揺れ動いております。  そこでお尋ねするんですけれども、この国民の協力義務というのは何に発生するのか。国民というのは、今ほど言いましたように、どこかで仕事をして生活を、なりわいと、生活をしております。会社へ勤めておる人もいましょう、公務員の人もいましょう。そういったときに、義務はあるけれども強制はしない、義務はあるけれども任意だ、こういうことになってきますと、その指定公共機関で働いている人は、国から直接言われない。言われるとしたら雇用主からそれを言われるんですよ、この仕事をしてくれと。そういうことになりますね。  その雇用主から言われるということはどういうことになるかといったら、就業規則で縛られるということになります。就業規則で縛られるということになります。そうしたら、そこで、こういう危険な仕事はおれは嫌だと、こういう事態に。あるいは、こういう事態になったらおれは家族を守りたいと。それが就業規則に違反すると、反するというような状況が出てまいります。  そういったときに、私が言いたいのは、その勤めているところで、いいという人と嫌だという人が出てくる、そこに国民の協力義務として不公平感が非常に出てくる、そういったときに、この公平感を、公平性というものをしっかり何らかの形で担保するべきだというのが私の考えであります。その辺の担保というのはできるのかどうか、そこがポイントだと思うんですよ。どうですか。
  152. 福田康夫

    国務大臣(福田康夫君) 今、指定公共機関に指定された場合に、その企業、団体等の従業員まで命令とかそういうものが及ぶのか、もし反するときにはどうするのかと、こういうことのようでございますが、それは、あくまでも指定公共機関というのは団体を指しているわけでございまして、その団体、団体と申しますか機関とか……
  153. 谷林正昭

    谷林正昭君 法人。
  154. 福田康夫

    国務大臣(福田康夫君) 法人、法人の場合ね。法人の場合には法人ということでございまして、その法人の中のことでございまして、そこまで立ち入らないという考え方です。ですから、そこで、例えば社長が命令をしたとかしないとか、そういったようなことには関与しないという考え方でございます。
  155. 谷林正昭

    谷林正昭君 関与できないんですよ、国としてね。法律で縛るわけにもいかないんですよ。だけれども、私の言いたいのは、有事のときにそういう不公平や公正感が欠ける、こういうものがあったら本当にいいのかな、でもそれも仕方がないな。  なぜこういう話をするかといいましたら、私の父親は消防職員、消防の団員でした。私が小学校四年のときに、台風の日に火事になりまして、父親は、夜の八時でしたから私と一緒に食事をしておりました。父親は消防ポンプの運転手ですから、すぐ出ていきました。そうしたら、台風ですから風が強い、飛び火がして私のうちがあっという間に丸焼けです。おやじにしてみれば、火元で火を消していても、自分の家の方向が燃え盛っている、しかしこっちへは、うちへは帰ってこれない。そういったときに、家財道具は一切何も出せません。私、小学校四年ですから、妹と弟と手をつないで母親と逃げ惑うだけ。父親の顔は、次の日の朝、丸焼けになった後で私たちが逃げ場から戻っていく、父親はその焼け跡で待っている。こういうことを実はこの法案を考えているときに思ったんです。  というのは、有事というのはそういうことだと思うんですよ。正義感に燃えて一生懸命国のために、あるいは地域のために、家族のために、その優先順位を家族にするか、地域にするか、国にするか。それによって、横から見れば非常に、あの人はいいな、あそこはお父さんがいた、うちはお父さんいたのに出ていってしまった、こういうようなことになったときにどういうふうにこの法律を、地域でこれから議論するときに、備えあれば憂いなしという言葉がありますけれども、法律だけでは備えになりません。全国民がその気になってこの法律に理解を示す、そういう環境、あるいはそういう意思の疎通、国民全体の意思の疎通、そういうものをしっかり取って初めて私は備えになる、こういうふうに思います。  そういう意味では、是非、この国民義務に対する公平性というものを少し今後議論するときに気を付けていただきたい、関心を持っていただきたい、こういうことを申し上げますが、いかがでしょうか。
  156. 福田康夫

    国務大臣(福田康夫君) 御尊父の話も伺いましたけれども、大変使命感にあふれた方だと思い、また立派な行為であったと思います。  そういうことで、義務と申します。これは義務といっても、義務感ということもございますけれども、それは人それぞれその感じ方というのは違うんだろうというふうに思います。ですから、そういうことで不公平が生ずるとか、結果、なんということもあるのかもしれません。  しかし、それはそれで私はある程度のことは、やむを得ないギャップというのはあるんだろうというふうに思いますけれども、そういうことがないように努めて、法制の中では公平になるように努力をしていかなければいけない問題だと考えております。
  157. 谷林正昭

    谷林正昭君 もう少し、これだけの重要法案審議させていただいておりますし、私は、その責任者として国民に向かってこの法案の重要性というものを説得するときは、もう少し心に響くような答弁があってもいいんじゃないかなというふうに思いますが、これは人それぞれでございますから、これ以上のことは申しません。  それでは、もう一つお聞きしますけれども、指定地方公共機関というものを、やがて出てくるというふうに思います。そこで、指定地方公共機関、そして指定公共機関、指定特定行政機関、そういうことを合わせてどれくらいの規模で物を考えておいでになるのか、その規模ぐらいはお示しいただきたいというふうに思います。
  158. 福田康夫

    国務大臣(福田康夫君) 指定公共機関又は指定地方公共機関が対処すべき処置や、いかなる法人をそれらの機関に指定するか、これは今後、その対象については武力攻撃事態対処法案の成立後検討するものでございます。現段階では、その指定の対象とか規模についての想定は行っておりません。  なお、どういうような業種を対象とするかということにつきましては、先日公表した国民保護のための法制についてお示ししたとおりでございまして、先ほども申し上げましたけれども、指定公共機関としては、放送事業者、日本赤十字社、電気事業者、ガス事業者、日本銀行、運送事業者、電気通信事業者などを、また指定地方公共機関としては、放送事業者、ガス事業者、運送事業者等をそれぞれ想定をいたしております。
  159. 谷林正昭

    谷林正昭君 それに地方が加わるわけなんですね。四十七都道府県あるいは市町村、そういうところでまたそういう指定地方公共機関というものを指定していくということなので私の試算、私の試算では、働いている人たちが全産業で六千三百万弱、六千三百万弱おいでになります。そこで、この指定公共機関、あるいは地方にそれを散らばす、そして行政に働いておいでになるそういう地方指定行政機関、そういうものを入れますと、私の試算では約一千七百万人ぐらいがその対象になる、そういうふうに思うんですね。一千七百万人といいますと、大体成人の五分の一ということになり、五人に一人がそういう機関に指定されたところで働いている、こういうことになるわけです。  そうなってくると、先ほど言いましたように、日ごろから私は、町内会だとか地域では、私は、万が一の場合はこういう役割になりますよと、こういうコミュニティーというのが非常に大事になってくると思うんですよ。そういう意味では、今どれぐらいの規模、まだ分からないとおっしゃいました。しかし、こういう産業は考えているということをおっしゃいました。私は、その産業を全部足してみますとこれぐらいになるんじゃないか。五人に一人がそういうところで働いている。  もし、この後いろいろ出てくるかと思いますが、そういう意味では、国家総動員じゃないですけれども、だれでもそれの指定しておけばいいじゃないかということではなくて、しっかりした、何のために指定をするかということ、そして、指定された機関で働いている人たちはその気持ちをしっかり持てるような、そういうものが私は大事だと思いますし、もう一つ、避難ということを考えたときに、配慮すべき事項ということで官房長官も答弁をされておりますけれども、お年寄りや障害者の方々、こういう方々をスムーズに避難をさせるということなども優先的に考えなきゃならないというようなことも言っておられます。  今見ているところによりますと、そういうところが、本当に地方指定公共機関にどういうところが想像できるのかなというふうに思ったときには、私はやっぱりホームヘルパーの協会だとか、あるいはそういうヘルパーさんの力をかりるということも大事じゃないかなというふうなことなども併せて私の考えを述べさせていただきますが、いかがでしょうか。
  160. 福田康夫

    国務大臣(福田康夫君) この法制が成立いたしまして、国民保護法制検討をさせていただくわけでございますけれども、その段階において、やはり国民の理解を、広く国民の理解を得なければいけないということは、これはもう大変多いんではないかというように思っております。また、その国民の協力というものがなければ、理解と協力がなければこの法制全体がうまく機能しないということであります。  ということは、武力攻撃事態に対して適切なる対応ができないと、こういうことにもなりますから、そのことについてこれからいろいろ説明をし、理解を求め、また啓発をするべきことはしていかなければいけない、そのように思っております。
  161. 谷林正昭

    谷林正昭君 是非国民の理解をどう求めるかというのはこれからの大きな仕事だというふうに思いますし、国民の皆さんにもしっかり説明を果たしていかにゃならぬというふうに私は思います。  そこで、最後になりますが、今後、国民保護法制制定、あるいは作り上げていく、こういうことに当たりまして、今、それとよく似ていると言っても、余り似ていないかも分かりませんが、災害対策基本法というのがあります。ここでも指定公共機関みたい、ようなものを作って、万が一の場合は協力してくださいという、そういうものもございます。あるいは防災業務計画、こういうものもございます。あるいは地域防災計画、こういうものもございます。そこへ、今度はまた国民保護法制、いわゆるこの事態対処法案国民保護法制の、どういう法律の名称になるのか分かりませんが、そういうものが地域、国に入ってくる。そういったときに、事務上の重複、あるいは例えば食糧の備蓄だとか医薬品の備蓄だとか、あるいは先ほど言いましたように、万が一の場合に指定をする事業者だとか法人だとか、そういうところの兼ね合いが私は出てくるというふうに思います。  二重、三重にダブって、国民に、一体これはどれが優先するのとか、こういうような誤解やあるいは混乱を招くというのは非常に、これまではこの事態、いわゆるだれかが攻めてくるというようなことは全く国民は考えておりませんでした。大きな災害だとかあるいは防災だとか、いろんなそういうことに対してはみんな関心を持ってこれまで対応をしてきました。  ところが、今度はそうじゃなくて、正に戦争に近いような状況が日本国土で起きるという想定の上での法律を作っていくということになるわけでございますから、国民は非常にその辺は混乱すると思います。じゃ、これから訓練はどうなるのとか、いろんなそういうものが出てくると思いますので、是非そこら辺りを、事務上の重複、あるいは二重投資、あるいは国民が混乱、誤解を招く、そういうことのないようにしていかなければならないというふうに思いますので、最後に考えをお聞かせいただきたいと思います。
  162. 福田康夫

    国務大臣(福田康夫君) 確かに、災害対策基本法に基づきます地域防災計画、こういうものは地方公共団体が自ら対処することを原則として、これは自然災害などのときに策定するわけでございますけれども、この武力攻撃事態は、これは国の方針に基づいて対処措置を行う、こういう必要がございます。ですから、国が策定する基本指針に従って地域防災計画とは別の計画として策定するということで、これは体系は違うということでございます。  しかし、一方で、武力攻撃事態において必要とするような物資などの備蓄ですね、例えば食料品とかそれから医薬品などの場合に、これが自然災害のときにも使えるものであるということであれば、これは共有してもいいわけですね。したがいまして、災害対策基本法に基づき行われる備蓄と、これは両方兼ね合わせた備蓄を行うということも考えられるということであります。それはそういう方向で検討してまいりたいと思います。
  163. 谷林正昭

    谷林正昭君 もう時間ございませんのでこれで終わらせていただきますが、最後に、石破長官にもう一度言わせていただきますが、今からでも、シンガポールへは行くべきでない、そういうふうに思います。なぜならば、先ほどのことわざじゃありませんが、君子危うきに近寄らずということわざもございます。日本国民のことを考えて、日本、これからの法案審議のことを考えたら、是非、月曜日からマスクをしないで審議できるようなそういう環境を整えるためには今からでもやめるべきだということを申し上げて、終わりたいと思います。  何かありましたら。
  164. 石破茂

    国務大臣石破茂君) 有り難い御注意、感謝を申し上げます。  ただ、委員御案内のとおり、シンガポールという地域はそういうマスク着用の地域に指定をされておりません。それは香港ですとかあるいは台北ですとか、そういう国と違うものでございます。  私は、先ほど申し上げましたように、各国の大臣がそれぞれ集まる。シンガポールがどのような地域で、とにかくシンガポールというものはみんな怖いんだ怖いんだというような形、風評被害だとは私は申し上げませんけれども、やはりきちんと国際的にこの地域はどういう地域であり、どういうような義務を履行し、帰ってきてどういう検査を受け……
  165. 山崎正昭

    委員長山崎正昭君) 時間が来ておりますので簡潔に。
  166. 石破茂

    国務大臣石破茂君) ということはきちんとやろうというふうに思っております。  そういうことで、委員が御指摘のようなことがございませんように、十分留意をいたしたいと思いますが、出張につきましては国会のお許しを得た上で行かせていただくということでございます。
  167. 谷林正昭

    谷林正昭君 終わります。
  168. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 日本共産党の吉岡です。  石破長官にお伺いします。  石破長官は、二十二日の本委員会でも二十三日の本委員会でも、新ガイドラインと武力攻撃事態対処法案との関連について、直接の連関があるものではございませんと答えられました。長官が言っておられるように、戦後、自衛隊が一九五〇年代から有事法制研究を続けてきたことは私もよく承知しております。  しかし、今審議中の有事法案の中身、また経過等を見ますと、これが新ガイドラインと全く関係がなかった、何ら関係のないものだというようにはどう見ても考えられません。長官が直接の連関があるものではございませんと言っておられることの意味は、どういうことをおっしゃりたいのかお伺いします。
  169. 石破茂

    国務大臣石破茂君) それの過去の経緯は委員の方が御存じかと思いますが、この有事法制というのは本来自衛隊法ができたときから議論がされておらなければならなかったもの。そしてまた、防衛協力のための指針というのはごくごく最近定められたものであり、かつまた防衛協力の指針というものは政治的な意図を表明した文書にしかすぎない。それをどうやって具体化をしていくか。例えば、それがガイドライン法というものによって、周辺事態法というものによって、その政治的な意図を表明した文書が具体化になっている。  そういう意味合いからいきますと、今回の武力攻撃事態法というものが、そのガイドラインに書かれておる政治的意図を実現するために、その対となってといいますか、セットとなってきちんと重なり合うものではないということでございます。  なお、政治的文書という意味と公的な文書あるいは法律というものが性質的に違うということも申し上げたかったのでございます。
  170. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 周辺事態法は、これはこれまでも新ガイドラインの効果的実行のための措置だということが言われております。この有事法案事態対処法、これは実効性確保するための措置ではないというようにおっしゃってきているというふうに思います。そのとおり取っていいのか。つまり、周辺事態法と違って、新ガイドラインの実効性確保という点から見ても何の関係もないというふうにおっしゃるのかどうなのか。
  171. 石破茂

    国務大臣石破茂君) それは、この武力事態対処法というものがプログラム法的な意味も持っております。これから先整備をされなければいけない例えば米軍との法制もそうでございましょう。そういうものは持っております。その中身というのはこれから先詰めるということに相なるのだろうと思っております。  ただ、周辺事態というものが想定しておりますことと、この武力事態法におきまして想定されておることというのはかなり違ったものでございます。もちろん、事態が重なる場合もございますけれども、それが元々法として想定をしております事態としては異なったものを想定しておりますので、これが論理的にきちんと対になってということだとは思っておりません。
  172. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 それでは別の面からお伺いしておきたいと思いますけれども、私がなぜこれこだわるかというのは、どうしても筋が通らない気がするからなんです。周辺事態法とそれから事態対処法というのは、連動して周辺の事態日本への迫ってくることを回避しようと、そして武力攻撃事態になったら共同して対処しようと、こういうものですね。その連動しているものの片方はガイドラインと関係があり、それで事態対処法は関係がないということが私にはどうしても分からないこと。  それで、今の答弁に関連してお伺いしますと、新ガイドライン、これは、平素の協力、それから日本有事の際の協力、そして周辺事態における対応、こういう言わば三つの段階についての合意だと思います。  そのうちの平素についても効果的実行の措置が取られている。そして周辺事態についても周辺事態法によって効果的実行のための措置が取られている。ある意味では、一番本命になるんではないかと思う日本有事についての新ガイドラインの取決めは、そうすると一体これは実効性を、効果的な実行のための措置は取らないということなのか、それはこれから取るということになるのか、それ全体としてのどういうことになるのかがよく分からないわけなんです。  もし、長官がおっしゃるように、この有事法制というのは元々必要なものとして起点が違うんだというようなことでおっしゃるのなら分かりますけれども、新ガイドラインとは全く関係のないものだというふうにおっしゃるとすれば、私はこれは理解し難い説明だというようにしか取れませんので、その点が私がしつこくお伺いしているところなんです。
  173. 石破茂

    国務大臣石破茂君) 全く関係がないとは申し上げておりません。それは何と言ったらいいんでしょう。平素の状態があって、周辺事態というものがあって、それがそのまま地域的にも時系列的にも発展をして武力攻撃予測事態なり武力攻撃事態になるということもございましょう。あるいは、それが全く別個の地域、また別々の事象として生起することもあるでしょう。いろんな場合があり得ると思っています。したがいまして、周辺事態、そしてまた周辺事態法が考えておりますものとこの武力攻撃法とは重なる場合もあるし重ならない場合もある、事象においても時系列的においても、ということだと思っております。  そして、先ほども御答弁申し上げましたが、この事態法というのはプログラム法的なものも持っております。それでは、そういうような武力攻撃予測事態あるいは武力攻撃事態という事態において日本米軍に対してどのような協力を行うのか、あるいはその場合に米軍はどのように行動をするのかというようなことがこれから先、プログラム法としてワークをすることになる。そして、議論をされ、国会の御審議をいただくことがあるということだろうと思っております。
  174. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 それでは、この点だけもう一点お伺いします。  法律的には、いろいろな今おっしゃるようなあれで直接の関連性が認め難いという。政治的に見れば、新ガイドラインの大きな流れの中の意味はお認めになるかどうか。
  175. 石破茂

    国務大臣石破茂君) 政治的にはそれとはまた別個のものだと思っております。政治的にそれは重なるのかとおっしゃられれば、それは別個のものだという判断をいたしております。
  176. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 なぜこういうふうな論議になるか、後からまた私、意見述べますけれども、民主党は、このガイドライン、新ガイドラインとの関係をどのようにお考えになっているか。
  177. 前原誠司

    衆議院議員(前原誠司君) 先ほど委員がおっしゃったように、日米防衛協力の指針というのは三つの柱があったと思います。平素からの協力、そして周辺事態での協力、そして日本有事の際の協力と。そして、一番初めに防衛協力の指針、ガイドラインが進んだのが周辺事態であって、そのことについては周辺事態法もできましたし、そして日米間で具体的な取決めはある程度進めて、調整メカニズムなども今、正に議論が進んでいることだと思います。  今回、有事法制議論をするに当たって、今後の課題として、いわゆる日本有事の際の日米防衛協力を具体的にどう進めていくのかといった議論が当然ながらなされるものと私は考えておりますし、その延長線上の中で米軍に対する支援の法律というものも議論されるし、あるいはACSAの有事版といったものも当然ながら必要になってくるんじゃないかと、そういう理解を私はしております。
  178. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 じゃ、もう一回、今度は防衛庁長官にお伺いしたい。  今、民主党さんがおっしゃったように、この米軍への協力法案というようなものが具体化されるということは、その実効性確保措置の一つと考えていいかどうかということ。
  179. 石破茂

    国務大臣石破茂君) これ、委員十分御案内のことと思いますが、日本有事、すなわちすべて米軍との協力だというお話には相ならない。つまり、よく御党に限らず展開される議論でございますが、アメリカが周辺事態のようなことを起こしてそれに日本が協力することになる、そういうメカニズムの中の一環ではないかというような御議論がございます。委員からそんな御議論は余り聞いたことがございませんが、そういう御議論がございます。  しかしながら、日本有事というのは、常にそういう場合ではなくて、それも主体的に我が国が判断することでございますが、日本において日本で独力で対応するという場合も当然あるわけでございます。したがいまして、今、前原提出者からお答えになりましたこと、それはそれで当然私どもも考えておることでございます。しかし、それがそのまま一つの事態のみに限局し、この法案の性質を決定付けるものなのかといえば、私はそうだとは考えておりません。
  180. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 それはまた改めて、これだけで時間つぶすわけにいきませんから、論議することにします。  その次にお伺いしたいのは、我が国への武力攻撃が発生した場合に自衛権を発動して対処するということに当然なるわけですが、我が国への武力攻撃事態というのを具体的にどのように想定するかという問題に関してですが、これまでの論議を聞いていますと、周辺事態法によって米軍への後方地域支援を行っている自衛隊への武力攻撃というのはその可能性というのは全く認められないと、想定しないという、こういう答弁が続いていると思います。  そこで、私はお伺いしたいんですが、それは現実的に想定されないということなのか、法的にできないことであって、禁止されていることであってできないということなのか、そのどちらなのか、お伺いします。
  181. 石破茂

    国務大臣石破茂君) これももう何度も同じことを答弁して申し訳ありませんが、実際に周辺事態において我が国がどういうことをやるかというと、我が国の領域外においては現に戦闘が行われておらず、かつそこで実施される期間、活動期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる地域においてやるわけで、万が一近傍、近くにおいて戦闘行為が行われれば活動の一時休止ということになるわけで、法的にそういうことが起こらない、そういうところでは活動をしないし、そういうことが万一近くで起こった場合には活動を一時休止するということになっております。  だから、委員が御質問の、法的に起こり得ないのか、現実的に起こり得ないのかと、そういう御質問に対してお答えをするとするならば、法的にそういう地域ではやらないということでございますし、法的にそういう地域で行わない、近くにおいてそういうことがあれば一時休止するということを取ることによって現実にも起こり得ないということだと私は思います。
  182. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 そういう地域では後方地域支援をやらないとおっしゃるわけですけれども、この周辺事態法で想定している相手国というのは、そのまま放置しておけば日本への武力攻撃に至るおそれのある、そういう相手国に対応する措置として周辺事態法が取られているわけですね。ですから、後方支援、後方地域支援をやっている自衛隊であるか否かにかかわらず、相手国というのは日本に対する武力攻撃の意図を持っているものだというように考えざるを得ないし、そういう想定もこの周辺事態法では行われているでしょう。  昨日の論戦では、そういう場合と、直接日本に向かって攻撃を加えてくる場合も考えられると、こういうことでしたね。そういう相手に日米が、自衛隊は後方地域支援という形であれ、そういう形で共同で対処している。その後方支援地域での、後方地域支援が場所がどこだから相手が攻撃してくる可能性がないと、日本のうちから、日本全体のうちから後方地域支援に参加している自衛隊だけは除外すると、こういうふうになるんですか。
  183. 石破茂

    国務大臣石破茂君) 委員が御指摘のようなことは私も随分考えてみました。そしてまた、委員が先般、御主張はともかくとして、あるいは我々と違うのかもしれませんが、そんな同盟というのがあるのかと、そうしたら逃げちゃうというような同盟があり得るのかという御指摘もいただきました。  それで、随分考えてみましたが、例えば私どもの周辺で、地域の周辺で委員がおっしゃるような周辺事態が起こったときに我が国が今周辺事態法においてできますのは、基本的に輸送と捜索救難ということでございます。輸送と捜索救難をそういうような近傍で起こったらば救出するような、そして現に戦闘が行われておらず、起こることが予想されない地域でやっている我々の部隊に対して攻撃を仕掛けるというインセンティブというのは何なんだろうと、動機というのは何なんだろうというものを考えてみましたときに、それは極めて考えにくいことなのだというふうに私は思っております。  それは確かに、そういうワークをそのまま放置すれば我が国の平和と安全に影響を及ぼすような事態をやっておる国ではないかという御指摘ですが、それが本当に我が国がそういう地域において行っておる捜索救難や輸送、それに対する攻撃をすることがあるのだろうか、それは恐らくないのだろう。仮にそういう地域があるとするならば、そもそもそういうところではやらないのだ。そのためにきちんとした情報収集を行い、間違ってもそういうことにならないようにするというのが私はガイドライン法の趣旨だというふうに考えております。
  184. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 そういうところへの攻撃を相手がするのだろうかということですけれども、その展開している自衛隊を攻撃するかしないかということは、これは日本の意思で決まることではなくて、日米で、形は違うけれども、共同対処しているその相手国の判断によるものであって、その相手国の判断を推定はできても、ないんだと言うからには、いかなる保証が、相手国の意図にそれが起こる余地がないという保証があるのかどうかということになると思います。  その場合、私は、たとえ後方地域支援という形であろうとも、相手国から見れば、それは向こうが対峙している米軍と一体のものであって、一体というのは戦闘行動を一緒にやっているという意味ではないわけですけれども、言わば向こうから見れば敵性を持つ国の一部分だというふうに当然見られるわけだし、そしてまた、そのような後方地域支援が国際法上から見て参戦行為というふうに見られることもこれは間違いない事実であって、後方地域支援ならそれは攻撃してはならないというような国際的な法律というものもないと思いますし、相手の意図を制約するものがない限り、それは攻撃の可能性は残る。全くないというふうに日本の側から決めて、国民の皆さん安心しなさいということでは、やっぱり責任ある答弁にはならないと思いますが、どうですか。
  185. 石破茂

    国務大臣石破茂君) それは、相手の意図を楽観的に若しくは希望的に推測するなとおっしゃる委員のお話は、まさしくそのとおりだと思っております。  他方、そのまま放置すれば云々という事態を引き起こしている国がいかなる能力を持っているかということを我々としてもよく考えなければいけないのだろう。それが非常に、そういう後方支援あるいは捜索救難、これを行っているような地域を攻撃し得る能力、そして我々の情報把握能力を更に超えてそれを攻撃し得るような能力を持った国なのか、そうではないのか、そういうこともすべて考えてみなきゃいかぬことだと思っています。いろんな国を今想起してみて、どこの国というのを特定することはございませんが、A、B、C、D、E、F、G、いろんなのを想起してみて、ではどういう国であればそういうことを起こし得るのか、そして私どもはどうやってそうではない地域において活動するのかということはきちんと判断されなければいけないことだ。  だから、相手の意図がないから大丈夫だよなどという無責任なことを申し上げているわけではなくて、そういうことが起こらない地域というのを希望的な推測を交えずにきちんとした判断ができる、そういうような情報収集に基づいて地域というものは決められる、そういうことだと思っています。
  186. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 意図と能力、そのとおりであって、私、時間ないから、その意図と能力ということまでは言いませんでしたけれども、意図だけではやれないわけです。能力、意図があればその可能性は理論的にはあると思うんです。法的にもそれを閉ざす国際取決めはない。それに対して武力攻撃をやったからといって、相手国が国際的に不法行為として非難される、そういうことでは私はないと思います。したがって、この法律国民に審議求める場合には、意図と能力によっては国際法上それが閉ざされたものではないということは、少なくともこの防衛の責任ある立場にある長官としてははっきりさせておく必要があると思います。    〔委員長退席、理事阿部正俊君着席〕  実際に起こり得ないというのを、今の答弁を念頭に置けば、相手の能力という面と、それから危なくなったら中断するとか、いろいろな措置を取るから大丈夫だということだと思います。しかし、攻撃の意図と能力があれば日本国自体も攻撃する意図を持っているという想定の相手国ですね、この周辺事態法は。その国が、例えば逃げるところへ向かって攻撃してくる可能性だって能力いかんではあるわけであって、逃げるから大丈夫だという理屈は成り立たないと思います。  この前も言いましたように、私は逃げなきゃいかぬようなことはやるべきじゃないと今でも思っております。そして、同時に、逃げるから大丈夫だという理屈もこれは成り立たない。したがって、私は、実際には相手が、どこを念頭に置いておられるか分かりませんけれども、そういう危険というのは全くないんだというふうに国民に言うこと、あるいは印象付けることは、これは無責任な説明だというふうに言いたいと思いますが、長官、どうですか。
  187. 石破茂

    国務大臣石破茂君) 無責任なことは取ってはならないと思っております。私は、結論は違うのですが、多分委員と同じような問題意識を私は持っているのだろうと思います。そういうようなことが本当にあるのか、ないようにするにはどうしたらいいのか。私ども政府の立場といたしましては、現在の法的な構成でそういうことにはならないようにという形を取っておるわけでございます。  そのときに逃げたらば同盟というものは成り立たぬじゃないか、そういうような御議論もあることもよく承知をいたしております。そういうことが起こらないように法の趣旨をどうやって体現するかということについて常に検証を図っていく、そういうことが起きたときに慌ててどう対処するのだというようなことだけは絶対に起こしてはならない、そういう意識を強く持っておるところでございます。
  188. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 私は、そういう武力攻撃事態というのは起こしてはならない、同時に、ある国が日本武力攻撃してくる、こんな事態対処法が発動するような事態というのはほとんど想定されないと思っておりますし、それを全く想定されない事態にしていくことが我々の仕事だと思うんですね。  しかし、そういう法律を作るときに、何とかこれを通そうとしてやはり十分正確な説明が行われない状況というのを私は常に感じます。例えば、有事法制でも、この論議の中でも、日本には自衛隊はあるけれども有事法制は全くない、こういう大変な事態だということが言われる。しかし、防衛庁は、ある時期には、今の自衛隊法百三十条により、それからまた日本は大体において有事に対応できる骨格はでき上がっているということを一生懸命で宣伝した時期があるわけですよ。こっちを言った方が都合がいいときには安心せよと言う、また別の場合には大変だという宣伝をやる。この有事法制でも逃げるから大丈夫だという宣伝をあるときにはやる。しかし、それが私は無責任な言い方だと思います。  私は、ほとんど想定されない日本への武力攻撃というものの中で一番あり得るもの、可能性があるものは、周辺事態で後方地域支援に自衛隊が参加する、それが一番攻撃の標的になりやすいし、またしやすい、そういうふうに思っております。  そういうことを言って、また続く議論は改めてやることにしまして、私の持ち時間内での質問を終わります。
  189. 小泉親司

    ○小泉親司君 日本共産党の小泉でございます。  私は、周辺事態と先制攻撃の問題について質問をいたします。  小泉総理は、我が党の市田書記局長質問に答えまして、アメリカの先制攻撃に協力するのは問題だという点を質問しまして、それに対して、先制攻撃には加わらないという答弁をされました。私、この問題というのは、武力攻撃予測事態に発展する可能性のある周辺事態という問題について、これが適用するということになれば、当然、政府として、周辺事態アメリカの先制攻撃で起きたのかどうなのか、この点について私は判断が迫られる問題だというふうに思います。その際、当然、国連憲章に反する先制攻撃というのは絶対に認められない、よって、周辺事態においては日本の協力はできないというふうになるというふうに思いますが、まずこの点を福田官房長官にお尋ねしたいと思います。
  190. 福田康夫

    国務大臣(福田康夫君) 小泉総理が言われたというその答弁ですね。これは、米国の先制について、米国の国家安全保障戦略には、米国が脅威に対して先制的に対処するために必ず武力を行使するとしているというわけではなくて、先制を侵略のための口実にしてはならないと、こういうこと、この国家安全保障戦略にあるということを答弁をしているわけでございます。  その上で、武力攻撃事態との認定、これは我が国がそういう武力攻撃事態の発生したときに主体的に、我が国として主体的に判断すると、こういうことでございまして、米国による先制攻撃がいかなる状態か分からない、状況か分からない、そういう状況の中で、先制攻撃を国際法上認められない活動ととらえているのだとすれば、我が国がそのような活動に加わることはないということを述べたものでございます。  我が国は、他国の国際法の解釈について有権的な解釈、評価をするというそういう立場にはございません。いずれにしても、米国は国際法上の権利及び義務を、合致した行動を取っていくと、こういうふうに考えております。  また、ある事態が周辺事態に該当するか否かについては、あくまでその事態の規模、態様を総合的に勘案して対処するということになりますけれども、周辺事態に該当すると判断される場合には、我が国としては周辺事態法に基づいて対処するということになります。
  191. 小泉親司

    ○小泉親司君 私がお聞きしているのはそういうことではなくて、つまりアメリカが先制攻撃をやると。これ、例えば、私たちはイラクに対してはあれは先制攻撃だと言っております。政府は若干違う見解を取っておりますけれども、アメリカのイラクへの先制攻撃の問題というのは、それは当然のこととして、周辺事態法では、政府の見解ではカバーできない。しかし、周辺事態アメリカが先制攻撃をすると。これは、小泉総理大臣も繰り返し言っているのは、アメリカは先制攻撃を選択肢の一つとして持っているんだと、この点は総理は繰り返し国会で答弁されております。  これは、周辺事態になると、当然のこととして、これはいわゆる日本政府の判断が迫られる問題になる。その際に、私は、当然ノーと言うんですねと。これは、周辺事態においてはアメリカの先制攻撃には協力することはできない、周辺事態として、当然、政府としてはどうするのか、この判断求められるわけですから、私は、国連憲章上はノーと、この点はそうなんだなと、これ、官房長官にお尋ねしているんです。
  192. 福田康夫

    国務大臣(福田康夫君) それはいろいろな状況というのはあると思います、国際状況とかね。ですから、それはあくまでも我が国が自主的に判断をすることだということを先ほども述べたわけです。
  193. 小泉親司

    ○小泉親司君 ということは、周辺事態において、アメリカの先制攻撃であっても自主的に判断する、主体的に判断するということなんですね。
  194. 川口順子

    国務大臣(川口順子君) 米国の先制攻撃ということについて、今、官房長官がおっしゃったとおりでございまして、米国が国際法に違反をするようなことがあるというふうには考えられないということであるわけです。  それから、周辺事態との関係についていえば、米国は我が国の同盟国であります。同盟国である米国が、周辺事態ということは、すなわち我が国の周辺の地域における我が国の平和及び安全に重要な影響を与えるような事態ということですけれども、そういう事態を同盟国たる米国が自ら引き起こすということは考えられないということでございます。
  195. 小泉親司

    ○小泉親司君 周辺事態というのは、元々アメリカが起こす周辺事態なんですよ。日本の起こす周辺事態じゃない。だから私はそのときに、いわゆる周辺事態のときに、例えば総理大臣は、アメリカはいろいろな選択肢を残しております、これは十月三十日の国家基本政策委員会でも言っておりますし、同じ、十一月六日の、昨年の十一月六日の審議の中でも、アメリカは先制攻撃などいろいろな選択肢があるということを言っていると。だから、私はもしアメリカが周辺事態で先制攻撃をした場合についてはこれはノーなんだなと、外務大臣、なぜこんなことがはっきり言えないんですか。
  196. 川口順子

    国務大臣(川口順子君) 総理がおっしゃったコンテクスト、文意、あるいは含意を私が敷衍をして申し上げるということは適切ではないと思いますけれども、それから官房長官おっしゃったように、我が国として米国の国際法の解釈について有権的に申し上げる立場ではありませんけれども、アメリカ国家安全保障戦略は、国際法上、急迫する攻撃の危険から自国を守るためには、その攻撃の被害を被るよりも前に合法的な行動を取り得るということを述べているわけで、我が国としては、委員が前提としていらっしゃる国際法上違反をするようなことを米国がやるとは考えていない、米国は国際法上の権利及び義務に合致をして行動をするというふうに考えております。  それから、先ほど委員が周辺事態を起こすのはアメリカですよとおっしゃられましたけれども、我が国としては、先ほど申しましたように、同盟国であるアメリカが周辺事態を自ら引き起こすというようなことを考えられない。すなわち、周辺事態というのは同盟国である日本の周辺の地域における日本の平和と安全に重要な影響を及ぼすと、そういう事態ですから、そういうことを起こすというふうには考えられないということでございます。
  197. 小泉親司

    ○小泉親司君 私は周辺事態アメリカが引き起こすと言いましたけれども、それを否定されるというのはおかしな話だと思います。周辺事態というのは、これは元々日本に対する武力攻撃がない事態なんですから、じゃ、だれが周辺事態というのを起こすんですか。これはアメリカが介入するから起きるんですよ。そんなことは私は当たり前だと思います。  そこで、私、アメリカの先制攻撃は、いわゆるアメリカは国際法上やらないと言っているから大丈夫なんだとおっしゃるけれども、それじゃ、例えばお聞きしますが、これ、国家安全保障会議の、失礼、国家安全保障戦略の中で、米国は国家安全保障に対する十分な脅威に対抗するため、先制行動の選択肢を長く保持してきた、脅威が多いほど行動しない危険は大きく、たとえ敵が攻撃してくる時間と場所に不確かな部分が残っていても、我々自身を守るために先制行動を取らざるを得なくなる、敵対勢力によるこのような敵意ある行動の機先を制したりあるいは防ぐために、米国は必要であれば先制行動を起こす、これは国際法上合致しているんですか、どうなんですか。
  198. 川口順子

    国務大臣(川口順子君) 今、委員がおっしゃられたことのみをもって判断をするということは難しいかと思いますけれども、いずれにしても、米国が国際法に違反をするようなことはないというふうに我が国としては考えておりますし、また、委員が先ほど言われた点に関して、同時にこの米国国家安全保障戦略において米国は、生起する脅威に対して先制的に対処するために必ず武力を行使するとしているわけではなく、国家は先制を侵略のための口実としてはならないということも言っているわけでございます。
  199. 小泉親司

    ○小泉親司君 外務大臣の続きを読みますと、しかしながら、手をこまねいているわけにはいかないと、これがアメリカの書いてある、最後まで読めばそういうことですよ。防衛庁長官がうなずいているから、これは明確にそう言っているんですよ。だから、そのときに先制攻撃が選択肢の一つだというのはこれは小泉総理大臣も認めている。当委員会では自民党の委員の方まで何と言っているかと、これ、言いますと、こういった攻撃が実際に先制攻撃というような形で行われる可能性をきちんと想定して、そのためのやはり政策的な検討をきちんと私はしておくべきだろうと思いますと。これ、自民党の方まで言っている。これ、立場は百八十度違うけれども、そう言っている。  つまり、先制攻撃があるなんていうのは常識じゃないですか。そのときに、周辺事態で、これは支持できないということは言えないんですか。福田長官、いかがですか。
  200. 福田康夫

    国務大臣(福田康夫君) 我が国の同盟国たる米国が、周辺事態、すなわち我が国周辺の地域において我が国の平和及び安全に重要な影響を与えるような事態を自ら引き起こすと、そういうようなことは考えられないと、こういうことであります。
  201. 小泉親司

    ○小泉親司君 これまでの周辺事態の審議の中で、周辺事態アメリカの武力行使はだれが決めるのかという質問があったんです。そのときに、当時の高村外務大臣米軍がやることは米軍が主体的に決めるのでありますと。つまり、米軍が武力行使を判断するということを述べておりますが、この見解に、長官、変わりございませんね。
  202. 福田康夫

    国務大臣(福田康夫君) 米国が武力行使をするとかいったような判断というのは、これは米国政府が決めることであります。当然であります。
  203. 小泉親司

    ○小泉親司君 ですから、私は、アメリカが先制攻撃を、武力行使ということをやった場合に、これはアメリカが先制攻撃という形で始めた場合についても周辺事態として認定するのかどうか、このことが問われることになるんですよ。どうですか、その点については、イエス、ノーという点については。私は、国連憲章上認められないとすれば、当然、ノーであると言えないんですか。何で言えないんですか。
  204. 川口順子

    国務大臣(川口順子君) 先ほど来申し上げていますように、我が国としては、米国が国際法の権利義務に合致をして行動すると考えているわけでございますし、また、いずれにしても我が国が国際法上認められていない活動、これに加わることはないということでございます。
  205. 小泉親司

    ○小泉親司君 私は、政府は周辺事態のこれまでの審議の中でも六類型ということを言ってきた。それは、例えば武力攻撃が発生した場合、武力紛争が差し迫った場合、こういうことを言ってきた。ところが、この前提については六類型の中では述べられておりません。  それじゃ、お聞きしますが、アメリカの先制攻撃でこの六類型の武力攻撃が発生した場合という場合も、この周辺事態の六類型の中の武力攻撃が発生した場合、こういうときには周辺事態について認定する、そういうことなんですか。
  206. 阿部正俊

    ○理事(阿部正俊君) どなたか──ちょっとお待ちください。
  207. 小泉親司

    ○小泉親司君 ちょっと速記止めてください。
  208. 阿部正俊

    ○理事(阿部正俊君) ちょっとお待ちください。
  209. 小泉親司

    ○小泉親司君 ちょっと速記止めてくださいよ、時間がたっちゃうから。
  210. 阿部正俊

    ○理事(阿部正俊君) 石破防衛庁長官
  211. 石破茂

    国務大臣石破茂君) 六類型のどれに該当すれば、つまりアメリカ委員がおっしゃる先制攻撃というものが仮にあるとして、それが六類型のどれと連動すればどうなるかと、こういう御質問でございますか。御質問の趣旨はそういうことですか。つまり、六類型というのがありますね。政府が提示しました六類型というのがあります。それと、委員が御指摘の先制攻撃、アメリカの、それが同様に結び付くかということですか。  答えといたしましては、いずれにいたしましても、六類型のいずれであるといたしましても、米軍がやりますことが、米軍が自ら我が国の、日本国の平和と安全にそのまま放置すれば影響を及ぼすというようなことを始めるとは考えられないということでございます。  そしてまた、アメリカが、委員がおっしゃっておられることが国際法的に許されないことということであれば、それはそうなのでございましょう。しかし、それがどういうことなのかということを今から予断を持って申し上げることはできないということでございます。  いずれにいたしましても、私どもが主体性を持って判断をするということは、六類型いずれにおいても同じでございます。
  212. 小泉親司

    ○小泉親司君 主体性を持って判断しているというのは私も認めていることですが、私がお聞きしているのは、例えば防衛庁長官はこの特別委員会でも、アメリカが先制攻撃をするのかという質問に対して、先制攻撃をするかどうか論評する立場にないとおっしゃった。ということは、六類型というのは、原因についてはどうだと、こういう原因によって武力行使が発生したんですよということは書いていないんですよ。それはお認めになりますね。    〔理事阿部正俊君退席、委員長着席〕  ですから、アメリカが、武力攻撃が始まったと、それによって武力攻撃が発生したという場合については、これは周辺事態として認定するのかどうなのか、この点を私は聞いているんです。どうですか。
  213. 石破茂

    国務大臣石破茂君) それは、この六類型それぞれ書いてございますが、それはどういう事態なのかというのを書いてあるわけであって、何によってこの六類型が生起したかということについては別に差を設けておりません。  したがいまして、その場合にどのように行動するか、我が国がそれを周辺事態と認定するかしないかということは、我が国が主体性を持って判断をするということでございます。これが生起した原因が何であるかということを問うことはございません。
  214. 小泉親司

    ○小泉親司君 ということは、アメリカが先制攻撃で始まったかどうかというのは問わないと。これ、周辺事態の判断としては問わないと、こういうことでよろしいんですね、今おっしゃっていることは。
  215. 石破茂

    国務大臣石破茂君) それはですね、先生、先制攻撃とは何なのだと、そしてまた、先ほど来お話がありますように、先制攻撃というものと先制行動というもの、これまた違うわけでございます。先生そのこと、よく御案内でお聞きになっていらっしゃると思います。  アメリカ合衆国、いずれにいたしましても、国際法上の権利及び義務に合致した行動を取るというふうに私どもは解しておりますし、先般のイラク攻撃も国連決議によるものだというふうに解しておる次第でございます。  したがいまして、アメリカの先制攻撃に起因するものであるならば、それは周辺事態と認定しないというふうに断言せよというふうにおっしゃられましても、それは我が国が主体的に判断をすることでございますという答弁に私どもは変わりはございません。
  216. 小泉親司

    ○小泉親司君 長官はさっき、ちょっと今ごまかされておられる。どういうふうにごまかされておられるかというと、アメリカの先制攻撃、つまり周辺事態の起因する原因、起因する原因っておかしいな、原因、これについては問わないと、あなたはおっしゃったでしょう。それが先制攻撃であるかどうかは問わないと、こういうことなんですよ。そうじゃないんですか。
  217. 石破茂

    国務大臣石破茂君) いや、別にごまかしたつもりは全然ございませんで、この六つのものに書いてありますことは、何によってこれが生起したかということに分類はされていないということでございます。それはよろしゅうございますね。この六つ書いてあることは、何によってそれが引き起こされたかということにおいて書いてあるのではなくて、六つの事態が考えられるだろうということで書かせていただいたわけでございます。  それで、アメリカの先制攻撃というものによってこういうことが起こったらどうするのだということでございますが、アメリカはその先制攻撃というものは国際法に違反をする形ということでは行わないというふうに私どもは承知をいたしておるわけでございます。  いずれにいたしましても、その事態を周辺事態と認定するかしないかということは、我が国が主体的に判断をすることだということを申し上げておるわけでございます。
  218. 小泉親司

    ○小泉親司君 ということは、原因は問わないということだと思います。それは、私はその周辺事態の六類型は、これは武力攻撃予測事態に認定されることがあるというのはこれまでの政府の見解ですから、私、そうなると、周辺事態の認定に当たっても武力攻撃予測事態の認定に当たっても、アメリカの先制攻撃がどうかという判断の基準にならないということを私は防衛庁長官がお認めになったことだと思います。  そこで、私、もう一つ周辺事態の先制攻撃の問題では日本として問われることがある。例えば、これまでの周辺事態法の審議の中では、周辺事態のときの後方支援の中心は何かと、こう言いますと、中心は日本国土であると、これはもうお認めになると思います。  そうすると、問題は、アメリカが先制攻撃の作戦として日本米軍基地から飛び立つ、これが当然のこととして戦闘作戦行動としてあるということは、これはあり得るわけで、例えばアメリカのイラクの攻撃などについても、当然イラクの周辺の国々から、国々の基地を使ってアメリカが出撃したこともある。そうなると、日本の場合は、戦闘作戦行動で、これはイエス、ノーと、これの判断が問われる。  私は、これは当然のこととして、先制攻撃が例えば三沢の米軍基地から行われる、それから沖縄の米軍基地から行われる、佐世保や横須賀から空母が、ないしは揚陸艦が出撃する、こういう点については政府としてはどういう判断を、つまりイエスなんですか、ノーなんですか。これは当然ノーだというふうに、であると思いますが、いかがでございますか。
  219. 川口順子

    国務大臣(川口順子君) 先ほどから何回も申し上げておりますけれども、そもそも米国が国際法上の権利義務に違反をする行動を取ることはないと考えているということでございます。
  220. 小泉親司

    ○小泉親司君 総理は選択肢の一つだと言っています。ちょっとはっきり答えてくださいよ、その点、もう一度。
  221. 川口順子

    国務大臣(川口順子君) 先ほど来申し上げていますように、我が国としては、米国が国際法上の権利義務に違反をするようなことをするとは考えていないということでございますし、我が国として、国際法上認められないような活動に我が国が加わるということはあり得ないと、そういうことでございます。
  222. 小泉親司

    ○小泉親司君 ですから、私が聞いているのは、周辺事態のときにアメリカの先制攻撃が在日米軍基地から出撃するような場合については、これは当然ノーなんだなと。この点、なぜ言えないんですか、外務大臣防衛庁長官でもいいですよ。
  223. 石破茂

    国務大臣石破茂君) それは、もう何度も同じことをお答えして恐縮ですが、その先制攻撃というようなことを、委員がおっしゃるような国際法に明らかに反するような先制攻撃というようなことは、アメリカは行うと私どもは思っていないということでございます。
  224. 小泉親司

    ○小泉親司君 言っているじゃないですか。
  225. 石破茂

    国務大臣石破茂君) 何がですか。いや、そういうことを思ってはいない。それは、アメリカがあらゆる選択肢を放棄しないということを言ったということと、合衆国がそういうことを現実に行うというふうに我が国が思っているかということはまた別の問題でございます。  例えばイラクの攻撃でも、ある方はあれは先制攻撃だと、あれこそ先制攻撃以外の何物でもないとおっしゃいますが、私どもは、あれは国連決議六八七、六七八、一四四一に基づくものだというふうに申し上げておるわけで、一つのことでも見解が全く違うということなのでございます。
  226. 小泉親司

    ○小泉親司君 私は、そんなアメリカのイラクの攻撃は先制攻撃じゃないなんということ自体が世界の少数派で、これは全く政府の立場と我々違うけれども、私が聞いているのとは全然違う。これはごまかしたら駄目ですよ。  私は、この日本有事というのは絶えずアメリカの戦略と大変密接な関係で行われてきたと。これが日本有事の場合の特徴で、それにもかかわらず、政府アメリカの先制攻撃について、これ明確にノーと言えないと。この点が政府の態度が重大な問題だと思います。総理はこの先制攻撃に加わらないといって発言しておりますけれども、この総理の自体の発言も私は大変いい加減な見解だというふうに思います。  その点で、私は周辺事態への協力を排除する、特に先制攻撃には協力しない、これが日本有事を起こさせない最大の保障だということを強調して、質問を終わらせていただきます。
  227. 山本保

    山本保君 公明党の山本保です。  今日は、先般、私質問させていただきまして、川口外務大臣はおいでにならなかったので、矢野副大臣を中心にお話をさせていただきました。私の立場といいますか、自分の信条としまして、やっぱり日本という国は、世界に軍備をなくする、戦争をなくする、核兵器もなくする、そういうために積極的に一歩を踏み出すべきだと。今まで何十年それは実際はできなかったし、理念としてはあっても何もできなかったんだけれども、もうそろそろできる客観情勢できたんじゃないかと。片方で有事というようなものを想定してということについて、私はそのこと否定しませんし、本来こういうことはやっておいた方がいいと思っておりますけれども、それを国際環境の中でいえば、こういうことをやれば、もう一つ、今度は具体的に積極的な平和外交を進めるべきではないかということを申し上げました。  また、そのときも、できれば工程表のような形で、将来の目標というのはもう定まっているんですから、それから逆算するような形で目標を、これはどんどん変わっていくかもしれないけれども、そういう発想が大事じゃないかと。できればそういうことを専門にするような部局、これは内閣府なのか外務省なのか、いろいろあると思いますが、そんなものを作ったらどうだろうかということもお話ししまして、官房長官また矢野副大臣からも、思ってもいない割と積極的な御返答をいただいたと思っております。  そのとき、ASEANのことなどを申し上げまして、私もまだこの分野は本当に勉強したところなものだったですから、この前はASEANということで、ASEAN又はその地域フォーラムですか、そういうことについて、少しもっと活用といいますか、積極的な立場を日本としては取るべきではないかということを申し上げたんですが。  今日は、今日既にこの委員会でもお話が出ておりますけれども、ミサイル防衛について少し最初にお伺いしてから法案の中身について入りたいと思っております。  最初に外務大臣に、この前も答弁の中で弾道ミサイルというのが、私など本当に知らなかったんですけれども、核を持っているような国だけなのかなと思ったら大変多くの国がもう持っているんだというようなこともお聞きしたわけでございますが、今どのような現状にあるのかということについて、教えていただければと思います。
  228. 天野之弥

    政府参考人(天野之弥君) お答えいたします。  弾道ミサイルの各国の保有、弾道ミサイルの保有国数、国名につきましては、防衛庁のホームページによりますと四十六か国及び地域となっております。  また、二〇〇二年、昨年の国連総会に提出、採択された報告書によりますと、射程百五十キロメーター以上のミサイルを保有する国は約三十五か国と推定されると記述されております。
  229. 山本保

    山本保君 核爆弾頭というんですか、また核ということだけをちょっと、まあそれは私だけかもしれませんが、一般国民の常識的に言いますと、そういうことにのみ割と話が行っていたのかなと反省しておりまして、正にこういうものを運ぶものが実際の今の脅威になっていると。以前は大変少なかったそうでありますけれども、既にそういう国を、国の中での技術が開発されているということだそうです。  それで、今日はそのことについてですが、ちょっと順番を変えまして、先に防衛庁長官にお話、同じことですが、先ほどお答えになったことではありますが、こういうことについて、防衛しなければ、ミサイル防衛というんですか、このミサイルディフェンスということについて、今、日本としてどのような体制を取られているのかということを。  また、一緒にお聞きしましょうか。これは今、先日行われた日米の首脳会談で、このミサイル防衛については何かお話があったというような報道も一部あるようでございますけれども、こんなようなものがあったのでしょうかということを、ちょっとまとめてお聞きしたいと思います。  最初にミサイル防衛について、最近どんなような検討をされているのか、お願いいたします。
  230. 石破茂

    国務大臣石破茂君) ミサイル防衛の検討状況についてでございます。これは、日米共同研究の部分と日本においてやっております部分、これの二つございます。  いずれにいたしましても、これが当たるのか当たらないのか、そしてまたそのためにどれぐらいの費用が掛かるのか、それが我が国に関して申しますと我が国の陸海空システムにどのような影響を与えてくるのか、そして法的な整備はどうなのかということと併せまして、日米共同技術研究におきまして四つの部品について共同技術研究をしております。しかし、この日米で共同技術研究をしております分野がミサイル防衛のすべてなのではございませんで、これはごく小さな一つのパーツでございます。  ミサイル防衛全体は、これは例えばABLから始まりまして、そしてイージス艦搭載型PAC3、そういうふうに非常に広いものを含んでおりますので、ここのところは分けて考える必要があるというふうに考えております。──ちょっとごめんなさい、委員長。  あと、日米首脳会談におきまして検討を加速するというような報道がございました。それは、今私どもやっておりますことを更に検討をしていくということでございます。すなわち、アメリカにおきまして二〇〇四年度からPAC3そしてまたイージスBMDシステム、これを初期配備することを決定をいたしました。これを踏まえまして、重要な課題であるBMDにつきましてアメリカと意見交換、情報交換を行いつつ、先ほど申し上げました点につきまして検討を加速をさせたいということでございます。
  231. 山本保

    山本保君 技術的な問題についてちょっと長官お聞きしたいんですが、答弁の中で、ミサイル防衛というのは正に専守防衛を絵にかいたようなものだというような、まあそんな表現じゃなかったかもしれませんが、そういうことを言われた。しかし、防衛できるとなれば、当然その防衛を上回るようなものを開発するんじゃないかと思いますし、切りがないんじゃないかというような問題とか、また、今おっしゃったお金だとか、もちろんただでできるわけじゃないですから、その国力に応じて何ができるのか。  そしてもう一つ言えば、いや、結局、だから先に先制、今先制攻撃という話ありましたが、相手の基地を撃たなければ効果がないんだ、どうも話がちょっとあちこちしているような気がしてしようがないんですけれども、この辺はいかがでございましょうか。
  232. 石破茂

    国務大臣石破茂君) これは、私も随分考えてみたんですが、例えばアメリカが核を持ちましたと、そうであればソ連も核を持ちましょう。じゃソ連が衛星を打ち上げて大陸間弾道弾の技術を持ちました、じゃアメリカも持ちましょう。向こうがこうなら、こっちはこうという、ある意味で対称的な軍拡というものがあったのだと思うのです。  しかし、じゃミサイル防衛と弾道ミサイルというのは当然対称の関係に立ちません。向こうは撃ってくる、こっちは迎撃する。迎撃するシステム自体は、もう最近の新しいものは前に爆薬も付けなくて直接当ててその物理の力によって破壊しようというようなものでございますから、この迎撃ミサイルだけ取りましても、これは正直言って攻撃の何の役にも立ちません。全く役に立ちません。  そうしますと、対称的な、つまりこっちが持てばこっちも持つんだというものと違いまして、こちらの方は迎撃能力しか持たないという場合に、それじゃそれを超えるだけの攻撃能力を持ってやろうという考え方は、従来のものと私は考え方が異なるのだというふうに思っています。  そうしますと、迎撃ミサイルシステムというものが軍拡、みんなが軍縮をしようしようということであれば、軍拡につながるよりはむしろ軍縮につながる、それはマインドの問題だと私は思っています。
  233. 山本保

    山本保君 技術論として、そういうことが可能であればまたそれを進めていくということは、なるほど私もお聞きしていて理解できるというような気がします。できれば、基地をたたくというような議論の方に走るよりはこちらをしっかりやっていただきたいなという気がしますが。  外務大臣、お忙しいと思いますので、一問、ここでちょっとお時間をいただきたいんですが。  やはり、こういう、今、防衛庁長官からはエスカレートしていくというようなものではないんだというお話ありましたけれども、しかしながら日本の国力とか今の経済状況、コストの問題、万が一しか起こらないことについてそれだけのお金を掛けてどんなことがあるのかというようなことを考えますと、こちらに当然国民を守るということで準備といいますか、そのための研究開発を進めるということ等は並行して、世界からミサイルというようなものをなくするということについて、もっと我々は積極的に進めるべきではないかなと思いますし、外務省は当然そのことをやっておいでだと思いますが、これについてどのような今状況にあるのか、お話しいただきたいと思います。
  234. 川口順子

    国務大臣(川口順子君) おっしゃるとおりの考え方だと思います。  それで、まず一つは、ミサイルの拡散を抑えるためにミサイル技術管理レジーム、MTCRと言われておりますけれども、それがございまして、それは国際的に協調して輸出管理体制をきちんとする、それによって関係のある技術物資、そういうものが海外に広がっていかないということをやるわけですが、それが一つございます。  それからもう一つの枠組みとして、これは昨年の十一月にできたものでございますけれども、弾道ミサイルの拡散に立ち向かうための国際行動規範、ICOCというのがございます。これが採択をされまして、我が国はこれを草案を作る段階から積極的に参画をしております。そして、この現参加国ということになっております。  我が国としては、このほかにも、国際的にはそういう枠組みでございますけれども、最近、アジアの国々が工業化が進みまして、いろいろなものを生産する力が出てきている、また中継基地にもなるというような危惧もございますので、アジアの国々に弾道ミサイルの不拡散への関心を高めるためのセミナー等を開いております。豪州や韓国と共同で、ASEANその他のアジアの諸国に対しましてこのICOCへ参加を求めるということもやってきておりますし、今後、こういったICOCの実効性、あるいは参加国を増やすということにも力を注いでいきたいと思います。  国際的には今申し上げたようなことで動いております。
  235. 山本保

    山本保君 今お話しありましたように、当初、もう二十何年ですか前、十五年ぐらい前からミサイル技術管理レジームというんですか、読みましたら、何ということはない、つまりその技術を輸出したり輸入したりしちゃいけないと言っているだけであって、こんなのがほとんど効果がなかったんじゃないかなと、私はそういう厳しく、もうそういうふうに総括してしまって、もっと直接的になくすると、今おっしゃったですね、まだこれは始まったばかりですか、その拡散に立ち向かうというICOCですか、こちらの方を本当にもっと積極的に進めていく、それに日本は重要な立場といいますか役割を果たしていただきたいと思います。  以前、アメリカと当時のソ連とか、ロシアということで、二国間ではそんなことがあったんじゃないかなと思いますけれども、もうどうかしておりますし、もっと、正にその二国だけの問題ではないわけですから、是非これをこれから、会議を開くというようなこと、もちろんそれは大事だと思いますが、そのときに積極的な目的を日本も、先ほどちょっと申し上げたような形で提示されるべきではないかと思いますけれども、大臣、もう一言、決意をお願いいたします。
  236. 川口順子

    国務大臣(川口順子君) おっしゃったとおりだと思います。  我が国として、ミサイルというのは、これは大量破壊兵器を運搬をする手段ですから、これが拡散をするようなことがあってはいけないわけで、大量破壊兵器の取組とともに、ミサイルについても拡散を防ぐための最大限の努力を続けたいと思っております。
  237. 山本保

    山本保君 ありがとうございます。  外務大臣は以上で結構でございます。退席してください。  じゃ次に、国民保護法制と言われていますことについてお聞きしますが、内閣府の官房ですね、内閣官房ですか、担当の方にまた少し専門的なことになるかもしれません、お教えいただければと思いますけれども。  まず、今回、二十二条ですか、基本法の方に国民保護に関するそういう整備をすると。それが、当初二年というのが速やかにというような表現になって、そしてまた附帯決議で一年となったんでしょうか。この辺、速やかにというのは何か非常に緩いような気もしますし、附帯決議といいますと拘束力がないような気もしますけれども、この辺はどういう関係でございましょう。どなたでしょうかね。増田さん。
  238. 増田好平

    政府参考人増田好平君) お答えいたします。  当初の政府案では二年以内となっておりました。それが衆議院段階で速やかにというふうに修正されたわけでございますが、私どもとしては、その衆議院の附帯決議でも国民保護法制については一年以内という附帯決議も付いておりますので、速やかにという意味はそういう意味かなというふうに理解しておるところでございます。
  239. 山本保

    山本保君 最近の法律制定のところを見ておりますと、附帯決議というのは以前全くやっても意味のないものだなんということを言われたことがありますが、最近は大変そういう点で院の意思というのを政府、重視しているんじゃないかなという気がしますので、是非ここは今お話しあったような形で進めていただきたいと思っております。  次に、ちょっとその中身、まだもちろんこれからだということですが、先ほども議論にも出ておりました骨格というんですか、骨組みというのが衆議院の方でも出されておるようでありますし、各委員も御承知のことだと思いますので、その中についてちょっと気になったことがあるので、私の意見といいますか議論をしてみたいんですけれども。たくさんあるんですが、その中の一つだけにちょっと絞ります。  つまりこの中に四、番号はいいんですが、国民、一般国民の協力を得て避難訓練を行うというようなのが、「国民の協力」という大きな項目の中に、次の協力を要請されたとき国民は必要な協力をするよう努めるものとすると、こうありまして、その中の一つに避難とか消火活動、保健衛生等ある中に、もう一つ、四番目に「避難に関する訓練への参加」というのがございます。  私はこれを読みまして、全体の中でちょっと異質な気がしてしようがないんです。といいますのは、そのほかに一杯こう書いてあるわけですけれども、それはすべてここで言う武力攻撃事態若しくは等ですね、その前段階ですか。こういうときになったものということを想定して行われているものだと思います。若しくはそのための準備として役所などが、関係する専門家若しくはその担当者があらかじめそのために準備をしておくものだということがずっと書いてある中に、一つ、国民は避難を、避難訓練に参加せよというのが出てくるんですね。  私は、もちろん、この委員会でもこういう状況の中で話がありましたけれども、今やるべきことは、私ども冷静にまずこの状況を見ていく必要があると思っておるんですけれども、これは一体どういうものなのか。一体武力攻撃されたときの避難というのはどういうイメージを持っておられるのか。若い方に来ていただいていろいろ話合ったんですが、どうも分からないんです。何をイメージしておるのか。  もっとはっきり言えば、言うなら平時の訓練ですね。平時にこういうことをやることに一体どんな意味があるのか。効果よりは、正に国民の世論とかそういう意識を変な方へ持っていくような効果の方があるんじゃないかと私、心配するというのが本心なんですが、この辺はどういうふうにお考えなのか。
  240. 増田好平

    政府参考人増田好平君) 私どもが公表いたしました国民保護法制についてという資料の中で、確かに先生御指摘のように、「国民の役割」の「国民の協力」のところに、四番目に「避難に関する訓練への参加」ということを挙げております。このことは、私どもといたしましては、武力攻撃事態等が起こりました場合に、国民保護のための措置を的確に実施するためには平素からの訓練が非常に重要なものであるとまず考えているわけでございます。そこで、国民保護法制では、国民の避難の訓練への参加について協力を要請できるものとすることを現在検討しているわけでございまして、したがって、このような記述を出しておるわけでございますが、これは国民の皆さんに参加を強制するものではなく、多くの国民の自発的な参加を期待しているものでございます。  今後は、御指摘の点も踏まえまして、国民保護法制検討の中で、訓練の啓発、広報、それから実施等の方法について、具体的に国民の皆さん、また地方の意見も聞きながら検討してまいりたいと思っております。
  241. 山本保

    山本保君 まず、分かりやすく言えば、もし訓練というものが、有効な訓練というものがあるとすれば、正にちょっときな臭くなってきたときにこそ行うべきものであって、一体平時においてどういう訓練をするんですかということなんですが、一つその前に、もう少しこれを理論的に、一体災害に対して地震、昨日は地震が起きた、地震が起こったときの避難、それから私どもの例えば二年、三年前の大水害が起こった、この避難、こういう避難というものと有事における避難というものはどこが違ってどこが一緒なのか、整理をされておりますか。それで、このための避難であるというふうにしなければならない必然性がありますか、お聞きしたい。
  242. 増田好平

    政府参考人増田好平君) お答えいたします。  理論的な形でどこがどう違うかというような形での整理はまだ現在ないわけでございますけれども、一番大きく違いますのは、やはり戦闘、武力攻撃事態等でございますので、戦闘というものが行われるとしたときに、その戦闘する地域が災害に比べれば一般には非常に広い範囲ではなかろうかと。そういった意味で、例えば都道府県の範囲を越えて避難をしていただくというようなことが想定されておりまして、その点は、災害でそういうことがないとは申しませんが、重点の置き方が違うのではないかなと、そういうふうに感じております。
  243. 山本保

    山本保君 まだこれから検討だということらしいので、そのためにも少し申し上げます。  広いというのもどうですかね。私、反対に思いますね、昨日の地震なんかの方がよほど広いでしょうと。まさかあの地震規模以上の機動部隊が攻めてくるなんということを考えておるわけじゃないでしょうね、まさか。そんな話はなかったですね。  必要なのは、やはり例えば情報を的確にとらえなくてはならないとか、又は軽薄な行動を出るんではなくてとか、又はもちろん行方、家族で連絡を取り合うとかいうふうなことが大事なんであって、俗に、例えば地震であるとか火事のように、この近くであれば皇居のようなところへ逃げなさいなんというのが、こんなのがこういう事態に役立つとはとても思えない。恐れ多いからそれ以上言いませんが、そうでしょう、長官ね。  ですから、こういうことを考えますと、そんな一般的に有事のための訓練なんというものを言うこと自体、私は平時においてはちょっとやり過ぎじゃないかという気がしておりますよ。ですから、これは、このことについては担当の部局などはきっちり準備をしておくべきだと思いますが、しかし、こういうことを行うのは、正にさっきちょっときな臭いとか若しくは予測の段階ですか、こういうときにはやるということについて、ということで、少し私はここは余り先走らない方がいいのではないかなということを、これは大臣おられませんので、私の意見として申し上げます。  もう一つ、ついでにといいますか、そのすぐ後にこういう項目もあるんですね。それは、国及び地方公共団体は、武力攻撃事態における住民の自主的な防災組織やボランティアの自発的活動に対し支援するというようなことと。これもちょっと読んでどうもイメージが分からないんですね。これは、例えば私はNPOなどが、国を守るとか地域を守ろうというNPOが私はもっと出てきていいと思っております、はっきり言いまして。それが民主主義だと思っておりますから。しかし、それに対して国や地方公共団体が支援をする、言うならお金出すということでしょう。これは、そういうことはどうなんですかね。ちょっと私はこのイメージがどうも分からないんですね。  じゃ、お願いします。
  244. 増田好平

    政府参考人増田好平君) 御指摘の点でございますけれども、住民の自主的な防災組織やボランティアは国民保護に関し何らかの義務を負うというものではございませんけれども、自発的に国民保護のための活動を行う場合は、国及び地方公共団体がこれを支援することを考えているわけでございます。  具体的な活動内容としては、住民の避難や被災者の救援の援助、消火活動、負傷者の搬送又は被災者の救助の援助などを期待しております。また、国、地方公共団体による支援の内容としては、活動場所の提供や必要な情報の提供などを想定しておりまして、ボランティア活動の趣旨等にかんがみまして、財政的な支援につきましては抑制的に考えるべきものというふうに考えております。
  245. 山本保

    山本保君 ありがとうございます。私もその答えが欲しかったです。このことを軽視するわけじゃない、大事な仕事だと思いますけれども、しかし、それを平時からお金を出すようなことがあったのでは僕は逆効果のような気がしております。  じゃ次に、表現の自由についてお伺いしたいと思います。  この委員会でも何度も話がありまして、それで、内閣府からも来ていただいているようですから、災害対策基本法では既に指定公共機関ということがあって、その中のNHKなどは入っているということだそうでございますが、阪神・淡路大震災のときにこの指定公共機関ですか、NHKで結構だし、またほかの放送局でもいいんですが、入っておれば。これはどういう役割を果たしたというふうに総括しておられますでしょう。
  246. 山口勝己

    政府参考人山口勝己君) お答えをいたします。  NHKにつきましては、災害対策基本法に基づきまして指定公共機関に指定をしているところでございます。指定公共機関としてのNHKは、防災業務計画を作成し、その実施に努めていただいております。例えば、各種災害マニュアルを整備し、初動態勢確保するとともに、ヘリコプターやロボットカメラ、通信衛星による映像伝送装置等の資機材を整備するなど、常日ごろから態勢、機材の整備、点検に力を注いでおられると承知をいたしております。  お尋ねの阪神・淡路大震災におきましては、テレビ放送及びラジオ放送によりまして、発災直後から関連情報の発信に努められたと認識をいたしております。とりわけ、スキップバックレコーダーと申しまして、地震の際に自動的に映像を録画する装置でございますが、これによりまして、NHK神戸支局において宿直をしていた担当者が地震の大きな揺れでベッドから飛び起きるといった映像が流れたわけでございます。その映像によって地震の揺れの大きさが初めて具体的に報道されたということは記憶に鮮明に残っているところでございます。また、このほか、外国語放送や手話放送といったいわゆる情報弱者のための報道も実施をされたと承知をいたしております。  以上でございます。
  247. 山本保

    山本保君 NHKにとどまらず、特に地域地域のFM放送などがその後についてもいろんな被災者間の連携などで大変重要な効果的な働きをされたというふうに私も聞いておりますので、是非ここはそういうことがうまくできるように応援していっていただきたいと思っておりますけれども。  その上に立って、ちょっと気になることを少しお話をお聞きしたいと思っておりまして、一つは、一つ飛ばしますが、従業員、NHKに例えば入っている方がその仕事について、これは良心の自由というようなこともあるかもしれません、いろんなことで拒絶したというようなことが、今日もそんな話出ておりましたけれども、こんな場合にはどういう扱いになるんでしょう。
  248. 増田好平

    政府参考人増田好平君) 指定公共機関に指定されますのはあくまでも法人をでございます、法人を対象とするものでございまして、その従業員を対象とするものではございません。また、指定公共機関の対処措置は当該機関の業務の一環として行われるものであり、業務以外の特別の職務の実施を要するものではございません。  したがいまして、指定公共機関の個々の職員に対して具体的な行為を求めるものではなく、仮に職員対処措置の実施に関し職務を拒否された場合には、当該法人の内部規定等に基づき対応することになるものと考えております。また、そのことについて政府が関与するということは考えておりません。
  249. 山本保

    山本保君 いろいろ個別の状況によってこれは変わってくるのかなと思いますが、これについても、これからちょっと具体的にほかのことについてもお話ししますが、一応そういうことを聞いておきまして、そこで、ちょっと戻すような感じになりますが、この場合例えば、今日もお話出ました、警報関係とそれにかかわるその後の情報などについて放送していただくようにお願いをすると。例えば、どの放送局見ましても同じ放送をしているなんということがたまにありますが、これは非常につまらないわけでございまして、天気予報、天気予報は中身はみんな同じだけれども、いろいろ各局工夫を凝らしてやっておりますね。例えばこんなことはいいのだろうか。それから、もっと言えばニュースショー的に、いや政府がこう言っているけれどもこんなことないよということを言ってもいいのか。状況は大分甘いんじゃないかと言うことがあるかもしれない、逆のことがあるかもしれない。そういうようなことは当然許されるというふうに解してよろしいですか。
  250. 増田好平

    政府参考人増田好平君) 武力攻撃事態におきまして、国民生命身体の安全の確保に関する緊急情報を正確かつ迅速に国民に伝達することは極めて重要であるという意味におきまして、政府としては、放送の速報性という機能に着目いたしまして、警報それから武力攻撃事態等の状況及び避難の指示の内容の放送について、指定公共機関である放送事業者の対処措置と位置付けることを考えておるわけでございますが、放送の方法等については指定公共機関に任されているというふうに考えております。
  251. 山本保

    山本保君 この辺は議員各位にもちょっと冷静に考えていただきたいと思うんですね。この前、この辺についてもやじなども飛んでおりました。  政府が今やっていることはおかしいんじゃないか、この対応はおかしいんじゃないか、挑発しているんじゃないか、若しくはそれほどのことはないんじゃないか、ここはいったん白旗掲げても、しかし国民を守って、そして外交交渉に任せた方がいいんではないか。いろんな例えば意見といいますか、政府のやっていることに対して反対をするということをテレビ、ラジオ、新聞等で報道をする。これは表現の自由だと私は思いますが、これは許されると考えてよろしいですか。
  252. 増田好平

    政府参考人増田好平君) そのことを政府として規制するという考えはございません。
  253. 山本保

    山本保君 これは今日はお呼びしていない、この前の審議で、衆議院の提案者の方から、国益に反するといいますか、敵国を利するようなこと、そんなことはどうだろうか、否定されたわけではないんですが、そういうことを言われました。また、当然じゃないか、私も当然じゃないかと思います。  ただ、ここで問題は、自衛隊などが特にそうですが、戦闘場面で自分が死ぬか相手が殺されるか、それを守るか、国民が死にそうになっているのを、殺されそうになっているのを助けるかと、こういう問題と国全体の立場をどうするかということとは私は別だと思わなくちゃいけないと思っています。ですから、この法案自体も国会の承認があるわけでして、最初からもう客観的に国が危ないときには何もかも、まず国を守るんだということであるならば国会承認なんか要らないわけでして、専門家が決めてやればよろしい。承認があるということは一票差になるかもしれない。これは、私はしかしこのことが大事なんじゃないかと思うわけです。  国益に反することをおまえは助けるのか、その側に立つのかと、こう言われるかもしれないけれども、一体何が国益なのか。昭和十五年、十六年、十七年で東条内閣を辞めろと言ったことは、もし言ったとすれば、それは当時からすれば九九%の人から国益に反するといって非難されるでしょうが、しかし長い目で見たらその方が良かったのかもしれない。いろいろあるわけでございますから、私は、強い国というのは常に言論、表現の自由というものが守られる、そしていろんな意見がある、それを冷静に考える。是非それを各閣僚なども、政府もその上に立って判断をされるということが大事だと思いますので、余分なことかもしれませんけれども申し上げます。  それで、今の問題ですが、たくさんございますけれども、次に、これとも関連するんですが、今度は保管命令について、先ほどもお話がちょっと出たようでございます。保管命令についても同じようなことがあるかと思います。先般、この委員会で、特にこれは防衛庁長官委員の中で、何か保管命令が出る、それを守るか守らないか、どちらかしかないようなどうも議論があって、ちょっと私聞いておりまして心配だったんですね。心の中で考えているのは自由だけれども表に出したら駄目ですよというような、ちょっと飛んだような話があったような気がする。  今、私が申し上げたようなことからいいまして、しかも本当にそれが、その保管命令が適正で効果的なものかどうかなどということはなかなか難しいわけですから、現場のその人が一番知っているかもしれない。で、その命令に拒否をする。拒否をするということはあり得るんじゃないかと思うんですよ。大臣、どうですか、その辺。
  254. 石破茂

    国務大臣石破茂君) それはすべからくこの構成要件に該当するかしないかの問題だと思います。表に出しちゃったら駄目よというのは、私は反対のことが申し上げたかったのでありまして、表に出した理由は問わないということであります。ですから、私は絶対この有事には協力したくない、絶対自衛隊に協力するのは嫌だ、邪魔をしてやりたい、したがってこの物資を隠匿するのだとおっしゃろうが、あるいは、私は実はこれを売ってやがて値上がりするだろうから大もうけしたいということであろうが、それは内心は一切問いませんということを申し上げているわけでございます。  結果としてそういうような構成要件に該当をする、つまり毀棄、隠匿、搬出、そういうような行為が構成要件に該当するかどうかの問題でありまして、内心のいかんを問いません。したがいまして、内心に対する自由の制限ということにはならないということが申し上げたかったのでございます。
  255. 山本保

    山本保君 それをお聞きしまして安心しました。そういう意味だろうと思ったんですが、どうしても議論が、何か思っていることはいいが、やっていると、またそのことによってそれで強制的にやらされるのではないかというようなたしか議論になっておられたので、少しその途中が省略された形で、思っているのは自由だが、しかしそんなこと表に出したら駄目ですよと、こういうことがあるのかなと。  この前、政府の統一見解というのを見せていただきまして、国民の自由、権利、これを見ましたら、丁寧に読んでみますと、決してそんなことは書いていないわけですね。良心の自由とか又は信教の自由というようなものでいえば、自分だけで信じているのは自由だよということはないわけでして、その自分の信じているところを人に説く、話すということ、ここまで含めてこれは自由であると、こういうふうに考えられているわけですから、もちろんそのことを、そこでやったことがある法律に従ったときに違法であるということはあり得ると思います。  それで、命令違反だけれども、罰則が付いておりますね。つまり、命じられたけれどもやらなかった、保管しろと言われたけれども保管せずに行っちゃった、こういうのは罰則の対象になりますか。この前、遺棄ですか、遺棄、破損、それからもう一つ隠匿ですか、隠匿、破損、もう一つですね、こういうふうに言われた。これに当たらないような拒否の方法というのは私はあり得るんじゃないかなと。これがなければ、そういうことが許されなければ正に良心の自由とか内面の自由なんというのは担保されないという気がするんですが、その辺はいかがですか。
  256. 石破茂

    国務大臣石破茂君) これは故意犯でございます。例えば保管命令が命ぜられた、冷蔵庫にある物資を保管しておったと、そのままさようならといっていなくなっちゃって、実際にその保管がなされなかったという形があったとしても、それはこの罪名には当たらないということだと思います。しかしながら、これわざと電源抜いて中のものを駄目にしちゃったということがあるとするならば、これは毀棄なのだろうということになります。  要は、毀棄、隠匿、搬出の故意がどのように評価されるか、それが構成要件に該当するかどうかということになるのだろうと思っております。
  257. 山本保

    山本保君 なぜこんなことを言いますか、くどいようですけれども、私はこのことについて、本当に急迫なその事態で云々という場合じゃないこともこれ想定されているわけですから、そのこと、またその指揮、そこで出た命令が本当に効果的なものであるかどうかということもなかなか難しいですから、今のようなことも当然考えなくちゃいけないと思ってお聞きしました。  もう一点、そういう中身が正しいかどうかということと、適正な方法を取っているかということが一つ民主主義は大事だと思います。現場の指揮官などが、この荷物を全部これから使うんだから置いて出ていけというようなことになったんではこれは困るわけです。どういう、この辺はその適正な手段、法的な方法、どういうふうに担保されているか、お聞きします。
  258. 守屋武昌

    政府参考人(守屋武昌君) 先生御指摘の点でございますけれども、これは自衛隊法の百三条の第一項において自衛隊任務遂行上必要と認められる場合と、それから二項におきまして自衛隊任務遂行上特に必要があると認めるとき実施できることとされていることでございます。これを出しますときは、その都道府県知事に対する要請に際しまして、防衛庁長官又は政令で定める者が自衛隊任務遂行上必要であるか否かを適切に判断するということを考えております。  この政令で定める者の範囲でございますけれども、この趣旨から適切な判断が可能となるような者ということで、先生御指摘のような末端の部隊の指揮官は考えておりませんで、適切な、部隊任務遂行上必要かどうかという的確な判断ができる者という観点から、方面総監とか師団長、旅団長クラスの者を指定することを考えているところでございます。現場の個々の自衛官の判断により、こういう要請が行われているものではないということをまず御理解いただきたいと思います。  それからもう一つ、受けた都道府県知事が必ずこれに従わなければならないかということでございますけれども、これは地域の実情に通暁した知事がこれを判断するということでございまして、防衛庁長官の要請が自衛隊任務遂行上必要であるか否かと、それから地元や地域の実情に照らしまして、要請どおりの措置を実施することが実際に可能か否かについて判断を行った上で適切に措置を実施すると、こういう二重の措置を講じておりまして、私どもは、この措置によりまして、現場での保管命令というものの内容が適正なものか否かの判断がなされることになると考えておるところでございます。
  259. 山本保

    山本保君 つまり、鉄砲を持った人がこれを置いていけと、こういうことを言うんではない。知事ですからというならば、役所の普通の公務員、民生関係の方とかそういう方が来て、そしてその状況に応じてお願いをすると、こういうことだというふうに理解します。  そのような形できちんと行われるということで結構かと思いますが、次に、もしその場合、損失が出たと、この補てんについてはどういう制度を今度はこの法案ではできているんでしょうか。
  260. 守屋武昌

    政府参考人(守屋武昌君) お答えいたします。  これも自衛隊法の改正案の第百三条第十項の規定によりまして、当該保管命令によりまして通常生ずべき損失を補償しなければならないというものを今回規定しておるところでございます。ここの通常生ずべき損失とは、これは社会通念上一般的な事情の下において生ずる損失のことでございまして、この取扱物資の保管命令においては、例えば保管等のために新たにお金を出したと、費用が掛かったとか、あるいは保管を命ぜられなければ当然得られたであろう逸失利益、こういうものも含まれると考えております。  このような損失の性格でございますが、これは国が政策的に特定の下に負担を求めることにより生じた損失を補てんするものでありまして、財政状況等により損失補償の有無やその額が左右されるといった性格のものではないということを御理解いただきたいと思います。
  261. 山本保

    山本保君 つまり、今のお話は、事が終わってから予算を組んだら予算が全然足らないので払わないとか、若しくは、防衛庁予算これだけだからその中で、いわゆる予算の範囲内でということをよくやります。そういうものではないというふうに理解してよろしいでしょうか。
  262. 守屋武昌

    政府参考人(守屋武昌君) そのとおりでございます。
  263. 山本保

    山本保君 それで、防衛庁長官もこういう、たしかそこまではお話、ちょっとここから先は聞きづらいことではありますが。ということはつまり、これではない、戦闘行為等によっていろいろあらかじめ用意していたこと以外で起こった被害についての損害補償というんですか、その概念はあれで、それについてはちょっと難しい場合もありますよと、こういうことなんでしょうかね。ちょっとこれは、大臣ですか。
  264. 石破茂

    国務大臣石破茂君) そういう御理解でよろしいかと思います。  いわゆる保管命令によって生じたところの損失と、今、先生が御指摘のような損失はおのずから性格が異なるものだというふうに思っておりまして、これやらないとかそういうことを申し上げているわけではございません。しかしそのときに国力がどうなっているか、その損害がどれぐらいか、先ほどまさしく、ないものは払えないだろうというふうにおっしゃいましたが、そういうようなこともないとは言えない、そのときにおいて考えるものだと思っております。
  265. 山本保

    山本保君 何か、そういうことではその人たちの権利はどうなるんだという気がしないでもないですが、私などに言わせれば、だからこそこんな状態にしないようにしなくちゃいかぬのだという気がしておりますので、今日のところはそれで私も納得していこうと思っております。  それから、これとも関連しますが、そうですね、今日お話が出ました、業務従事命令が出た場合の医療、建設、輸送関係ですか、この人たちに対して、生命身体に対して何か万が一があったとき、この補償についてはどうも規定がないようにも思うんでございますが、この辺はどうなっておりますでしょう。
  266. 守屋武昌

    政府参考人(守屋武昌君) 業務従事命令に対する補償いかんということでございますが、この自衛隊法百三条に基づく業務従事命令により業務に従事した者に対する補償につきましては、自衛隊法改正案第百三条第十一項において、政令で定める基準に従いその実費を弁償しなければならない旨規定いたしております。さらに、同条第十二項においては、業務に従事した者がそのために死亡した場合等には政令で定めるところにより損害を補てんしなければならない旨が規定されているところでございます。  具体的な当該実費弁償及び損害補償に係る基準及び手続につきましては、現在政令で定めるべく作業を進めているところでございますが、災害関連法規に基づく実費弁償及び損害補償にかかわる基準及び手続を参考に適正な実費弁償及び損害補償額を確保することとしたいと考えておるところでございます。
  267. 山本保

    山本保君 昨日もこれに関して、消防団についてということで大変丁寧な質問がありましたが、私もちょっとお聞きしたいんですが、消防団の方とかボランティアの方とか、こういう方についてはどうなんでしょう。  つまり、今のお話ですと、公務員でありますと、そういうもう状況あります、今までの規定がありますので、それに応じた政令で定めるというふうにお聞きしたんですけれども、それ以外の方についてはどんな、もちろんこれから定めるわけですけれども、どういうことを考えられておりますか。
  268. 増田好平

    政府参考人増田好平君) お答えいたします。  まず、消防団員でございますけれども、消防団員は特別職の地方公務員でございますので、例えば武力攻撃事態において消火活動や救助活動また避難住民の誘導等の活動を実施したことによりまして消防団員が死亡、負傷等をした場合には、いわゆる公務災害補償により対処することになります。一方、国民が被災者の救助の援助など対処措置の実施に協力したことにより死亡、負傷等した場合についても、国民保護法制について損害の賠償について定めることを検討しておるところでございます。
  269. 山本保

    山本保君 まだ幾つかあったんですけれども、今日はこのぐらいにしたいと思います。  ありがとうございました。
  270. 平野達男

    ○平野達男君 国会改革連絡会の平野達男でございます。  冒頭ちょっと、昨日、地震がございまして、地震の震源が宮城県沖ということで、実は私の出身は岩手県でございます。地震がありまして、電話が通じなくて随分困ったんですが、今朝、会館に来てみましたら、ファクスが入っておりました。防衛庁からです。地震があったのは十八時二十四分ごろということが出ていまして、十八時三十分防衛庁災害対策室設置、十八時三十一分以降海自航空機三機離陸、四十五分陸自LO派遣、十八時四十六分以降陸自航空機八機離陸ということで、一連のこういうことがありましたというファクスが入っておりました。  こういったときの自衛隊のある意味での頼もしさというか、ということをちょっと感じましたということを冒頭ちょっと申し上げさせておいていただきたいと思います。  それで、質問に入りますけれども、先般、いわゆる防衛出動の発動、これは下令と言うらしいんです、言うようですが、防衛出動と武力行使というのはこれは別であって、防衛出動をやった後にいわゆる三要件、急迫不正、急迫不正って何でしょうかと聞いたら、急迫不正というふうに言われましたけれども、急迫不正というのは、四文字熟語というのはなかなか使いませんよね。そういうことで、ちょっともう少し説明をしていただきたかったんですが、急迫不正。  それから、あとほかに手段がない、それから必要最小限という、この三要件が満たした場合に武力行使を踏み切るということで、しからば、その武力行使の踏み切るかどうかの決定はだれがするんでしょうかという質問をして、それが今の自衛隊法上の中でどこで位置付けられているんでしょうかという質問をさせていただきました。  実は、私はダムの現場とかそういったことに携わった経験がございまして、ダムの例に例えるまでもないんですが、例えばダムでありましたら、河川法にせよ土地改良法にせよ主務大臣がダムの建設を決定する、あるいは都道府県知事が決定するとはっきり書いてあります。ほかの法律でもそうだろうと思います。決定したら、じゃ、しからばダムはどこで造るか、どういう構造で造るかということは、これは下に下ろされる。ましてや、ダムの構造なんかのタイプとか、どういうタイプにするかというのは設計基準があって、これはプロの世界に入ってくるわけですね。ここはここでもうそちらの方に任せるということで、ある程度流れがしっかりしているわけです。  私がお聞きしたかったのは、ダムを造るならダムを造るというときに、ほかの例えば河川法とか土地改良法の中では主務大臣あるいは都道府県知事というふうにはっきり規定があるんですが、自衛隊法を読みますと、防衛出動の下令というのは内閣総理大臣とはっきり書いてあるんですが、その武力行使というところがどこで読むんだろうかということをお聞きしたかったわけです。  ただ、私も後日、昨日です、私の議事録を読んでみたら、法令のことを聞きたいのか、実態のことを聞きたいのか、ごちゃごちゃでちょっと質問したところがございまして、私の質問がちょっとはっきりしなかったというところがあったと思います。改めて、今の自衛隊法の中でこの武力行使というのはどこで読んでいるのかという、だれが発動するのか、命令するのかということの解釈を御説明をちょっと改めてお伺いしたいと思います。
  271. 石破茂

    国務大臣石破茂君) 委員の御指摘も踏まえていろいろその整理をしてみました。大変いい御指摘をいただいて感謝を申し上げる次第でございます。  これは結局、理屈からいうと、七条、七十六条、八十八条ということになるんだろうと思っています。それは八十八条から申しますと、エッセンスだけ申し上げますが、八十八条に何て書いてあるかというと、七十六条一項により、防衛出動ですね、出動を命じられた自衛隊は必要な武力を行使することができると。これが八十八条です。その、じゃ七十六条一項というのは何かといいますと、七十六条は、内閣総理大臣我が国を防衛するため必要があると認める場合には自衛隊の出動を命ずることができると、こういうことになります。  じゃ、内閣総理大臣権限というのは一体どこに書いてあるんだということを見ますと、今度は第七条ということになりまして、内閣総理大臣内閣を代表して自衛隊の、失礼、内閣を代表して自衛隊の最高の指揮監督権を有すると、こういう形になっておるわけでございます。直接は八十八条でございまして、それは七十六条の、よって出動を命じられると、こういう構成になっております。  七十六条に書いてある内閣総理大臣権限というのは第七条と、こういう構成になろうかと存じます。
  272. 平野達男

    ○平野達男君 今のお話を整理させていただくと、七十六条第一項で防衛出動、下令がされる、それを受けて、その八十八条で防衛出動を命じられた自衛隊は必要な武力行使を行うことができるということで規定している。じゃ、しからば、先ほど、その指揮監督者はだれかというと内閣総理大臣だということで、内閣総理大臣になりますよという、そういう御答弁ですね。  そうしますと、こういう質問というのは前にも多分私はあったはずだと思っていまして、多分あったのかどうかと私も調べましたら、一九八五年にやっぱり政府答弁書ということで、これは中曽根内閣総理大臣だと思うんですが、政府が行うことになるという答弁書がありまして、今回の御答弁はそれを更にクリアにして、内閣総理大臣というふうに言ったのかなというふうに感じたんですが、これはちょっと御通告申し上げていませんでしたけれども、そういう解釈でよろしいでしょうか。
  273. 石破茂

    国務大臣石破茂君) これは恐らくこういうことなのだと思います。  私どもが答弁を申し上げておりますのは、自衛権の発動として武力の行使を行うか否かの判断は、最高指揮監督権を有する内閣総理大臣が行うものと考えている、こういうふうに答弁を申し上げております。そして七条は、先ほど申し上げましたように、内閣総理大臣内閣を代表して自衛隊の最高の指揮監督権を有する、こういう形になっております。内閣総理大臣に二つのタイプがあるのは御存じのとおりでございます。  そうしますと、これは政府としてと言おうとも、内閣を代表する内閣総理大臣がと言おうとも、その意味は同じだというふうに考えております。
  274. 平野達男

    ○平野達男君 今の御答弁を、これは御通告もしていなくて恐縮なんですけれども、政府統一見解という承りでよろしいでしょうか。これはちょっと通告、今突然なんであれなんですが、もしそうでなければ、また後日ということで委員長お願いしたいと思うんですが。
  275. 石破茂

    国務大臣石破茂君) これは、この件について政府統一見解かどうかということは、あるいは委員長、あるいは理事会の御判断として政府統一見解を出せということであれば、そういうことに相なろうかと存じますが、この点につきまして政府内におきまして不一致はございません。
  276. 平野達男

    ○平野達男君 じゃ、委員長お願いしますけれども、これは非常に大事な点だと思いますので、統一見解という形で出していただけるんであれば出していただくということをちょっとお願いしたいと思います。
  277. 山崎正昭

    委員長山崎正昭君) お諮りいたします。  ただいまの件につきましては、後刻答弁するよう求めます。整理してください。
  278. 平野達男

    ○平野達男君 理事会。
  279. 山崎正昭

    委員長山崎正昭君) 理事会、済みません、理事会で。
  280. 平野達男

    ○平野達男君 それでは、次の質問に移ります。  集団的自衛権というのは持っているけれども、行使しないということでこれは解釈がなっていますが、しかし、やはり自衛隊としても何かをしなくちゃならないということで、武力行使と一体にならない範囲であれば、例えば後方支援ができるということで周辺事態法が仕組まれているというふうに理解していますけれども、この武力行使と一体とならないということについての定義につきましても、これはもう過去において何回も国会議論があったと思いますし、今日、それを鋭く追及された委員も、当日ここにおられますが、改めて内閣法制局にお伺いしますけれども、武力行使と一体とならないというその定義をちょっと御説明願いたいんですが。
  281. 宮崎礼壹

    政府参考人(宮崎礼壹君) お答えいたします。  お尋ねのいわゆる一体化の理論と申しますのは、仮に自らは直接武力の行使をしていないといたしましても、他の者が行う武力の行使への関与の密接性などから、我が国も武力の行使をしているとの評価を受ける可能性があって、そのような行為については憲法上やはり許されないとするものでありまして、言わば法的評価に伴う当然の事理だというふうに説明しております。  それで、実際それは何かということでありますけれども、従来の御説明を改めて紹介いたしますと、他国による武力の行使と一体となすかどうかという判断基準につきましては、次のような要素を総合勘案すべきものというふうに説明しております。すなわち、一つには、戦闘行為が行われておる地点と支援行動がなされる場所との地理的関係という要素、それから二つ目には、当該行動等の具体的内容という要素、三番目には、他国の武力の行使の任に当たる者との関係の密接性といった要素、それから四つ目に、協力しようとする相手の活動の現況という要素などの諸般の事情を総合的に勘案して個々的に判断されるべきであるというふうに説明をしてきておるところでございます。
  282. 平野達男

    ○平野達男君 それが従来の答弁で、私がちょっと非常に首をかしげるのは、その解釈がなぜ周辺事態法、実はこれ成立してしまっていますから、成立していますから今更こんな議論をしてもしようがないんですが、後方地域の中で、「我が国領域並びに現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる我が国周辺の公海及びその上空の範囲をいう。」ということで、ここが、ここでやる輸送活動がなぜ武力の行使と一体にならないのかというのが、ちょっと解釈上はちょっとギャップがあるような感じがします。これは、これに対する答弁は要りません。  これからの質問は、いわゆる武力攻撃事態、特に「等」の中の予測される事態と周辺事態との関係でございまして、これも衆議院等の議論の中でいろいろ議論があったと思います。  A国とB国が紛争状態になって、それが周辺事態になった、そのときにC国が日本に対して武力攻撃を仕掛けてくるような、要するに予測される事態になった、こういうときは周辺事態法と武力攻撃事態法が併存する、これは分かりがいいと思います。しからば、A国とB国が紛争になっていて、周辺事態法を適用されて、これは先ほどの吉岡議員のところで指摘もあったと思いますが、そのうちA国が、どうやら日本がやはり後方支援をしているのはけしからぬ、補給活動をしているのはけしからぬということで攻撃をするぞというようなしぐさを見せる、これは予測事態になりますね。そうすると、周辺事態から予測される事態に、武力攻撃事態法に移行する、つまりスイッチするということはあり得るかなと思うんですが、これはこういう理解でよろしいでしょうか。
  283. 石破茂

    国務大臣石破茂君) 理屈の上からはそういうことはあり得ることだと思っております。全くそういう可能性が全然ない、今、委員が御指摘になったようなAとB、そのAが我が国に対して武力攻撃を仕掛けるというような意図を持ちということになれば、それは可能性としてゼロだとは私は思いません。少なくとも、そういう事態が全くあり得ず、武力攻撃予測事態というものがそういう場合に認定されないということだとは思いません。
  284. 平野達男

    ○平野達男君 そのときに、今の後方支援というのは、先ほど言いましたように、あえてここは安全な地域というふうに、私は、戦闘行為が行われているとかということで言いますとややこしくなりますから、安全な地域だというふうに言ってしまいますが、そこまで、公海上まで出ていっている事態があるわけですね。  そうすると、A国とB国の紛争が周辺事態で、これは本当は収めるために米軍がそこに行っていて、それを収める活動に日本自衛隊が後方支援という形で活動するわけですが、ところが収まらないでどんどんどんどん戦火が拡大してきた、それがどうも日本に波及しそうだということになりますと、自衛隊は恐らくどんどんどんどん下がってこなくちゃならない、そういうことが想定されると思います。  しかし、ここでおかしいのは、そのA国とB国がそこで収まればいいんですが、収まらなくてどんどんどんどん戦火が拡大して、アメリカが、米軍がそれをもう一生懸命抑えようとしていろんな行動をしている。しかし、それが収まらないでどんどんどんどん火の手が上がれば上がるほど自衛隊が下がってこなくちゃならない。そういう大きな矛盾が今のここの制度にはちょっとあるんじゃないかと思いますが、ここ防衛庁長官はどのように考えておられますか。
  285. 石破茂

    国務大臣石破茂君) 武力攻撃予測事態にいたしましても周辺事態にいたしましても、どちらにしても我が国に対する武力攻撃は発生していないという点において共通をしております。我が国に対する武力攻撃は発生をしていませんから、我が国は自衛権の行使としての武力行使ということは当然できないし、そしてまたそれと一体化するようなこともできないということになります。  そして、一体化とは何かといえば、今、法制局から答弁申し上げたとおりということになりますが、そこのところ、まさしく委員がおっしゃいますように、そういうようなことがきちんと峻別できるのかいというようなこと、そこは私どもきちんとしませんと、これは法律ではそう書いたけれども実際はそんなことできないよということになってしまうわけでございます。  そこのところをどのように考えるか。スイッチするとおっしゃいました。スイッチする事態がないとは私は言いません。どちらにしても、我が国に対する武力攻撃がなく、私どもとしては武力の行使ができない、一体化するようなこともできない、そしてそういうような危険なところではやらない、ありていに言えばですね。その辺をどのように整理するのかということは重要なことだと思っております。  ですから、脱法行為とは言いませんが、迂回してそんなことが実はできないようなことができるというようなそしりを受けることがないように、きちんとその辺はしなければいけないと思っています。
  286. 平野達男

    ○平野達男君 詳しくは武力攻撃事態下の米軍支援のところということで別途法律を作るということですから、そこで議論することになると思いますが、いずれにせよ、今の集団的自衛権は行使しないよ、行使できませんと、しかしやっぱり何らかの支援をしなくちゃならないということでぎりぎりの解釈をして輸送活動をやっていると、輸送活動ですね、公海上の。しかし、これは私が言いましたように、火事に例えますと、向こうで火事が起こって、こちらに火の粉が来ないと。小さいときには自衛隊は行って輸送活動して支援しましょうと。どんどんどんどん大きくなってきたら下がるという事態になるんですね。  本当ならば、そういうときだからこそ本当は自衛隊は行って輸送活動を、補給、輸送でもあるいは補給でもいいです、やってやらにゃいかぬはずなんです。ところが、そういう仕組みになっていない。この仕組みになっていない最大の理由は何かというと、集団的自衛権を行使できないからです。  私どもは、集団的自衛権というと、すぐ武力攻撃、敵地攻撃みたいなことを言いますけれども、日本は専守防衛と言っているわけですから、敵地攻撃能力というのは持たないと言っているわけです。そういう前提で集団的自衛権を行使するのであれば、どういうときに行使するか。米軍が外へ出たときは、少なくとも周辺事態のときまではやはり後方支援、これは私らの解釈では兵たんも立派な武力行使だと、一端だと思っています。これは日本はこれは安全なところでやっていますから武力行使にはなりませんと言いますけれども、相手側から見たら、遠くでやろうが近くでやろうが、自分の国を攻撃している国に対して支援している国というのは、これは敵対国だと見るんだと思うんです。これは先ほどの議論の中にもあったとおりです。  ただ、ここから私らがちょっと解釈が分かれるのは、だから引けというんじゃなくて、やはりここはしっかりと位置付けて、集団的自衛権というのを位置付けて、しかしやっぱりその周辺事態法の中においては、周辺事態が起きた場合には後方支援に徹するというような枠組みを設定するということもあってもいいんじゃないかと。ただ、今の発言は、私が言っているのは、今までの解釈を変更するという重さ、それからつらさ、そういったことを多分私は分かっていませんから、そういったことを前提で今しゃべっていることだけはちょっと申し上げておきたいと思いますが。  ただ、そうした方が今の日本自衛隊の活動、自衛隊の活動の在り方、それから防衛の在り方については非常にすきっとするということを改めて申し上げておきたいと思いますし、さらについでに言えば、じゃ周辺事態法の地域の周辺地域以外はどうするかということについては、これは国連の平和維持活動に限って、武力行使を伴うものであっても自衛隊を派遣するという、そういった考え方があってもいいんじゃないかと。そうすると、それがさらにまた集団的自衛権と抵触するじゃないかという議論が出てくるんですが、私どもはこれは必ずしもそういった議論をしなくても、国連憲章日本憲法との整合性で説明できるという一応考え方を持っていますので、ちょっと併せてちょっと紹介をさせておきたいと思います、させていただきたいと思います。  そこで、次の質問に移りますが、これはちょうど官房長官、見えましたので、いきなりで質問よろしいでしょうか。  武力攻撃事態等というのが、の中に予測される事態というのがあります。この予測される事態に、例えば、これ、いきなりの質問なんですけれども、我が国に必要な物資を運ぶタンカー、これは船籍、国籍が日本じゃありません。どこかの外国の船です。予測される事態にそのタンカーが攻撃を受けたとき、これは日本のタンカーじゃありませんよ。それからもう一つは、予測される事態のときに、米海軍が日本海か何かを警備に当たっているかもしれません、米軍が攻撃を受けたとき、これを我が国に対する攻撃とみなすかどうか、これはどのように整理されますか。
  287. 福田康夫

    国務大臣(福田康夫君) なかなか難しい質問でございますので、詳細はまた防衛庁長官に聞いてください。  その上で申し上げますけれども、この対処法案に言っております我が国に対する武力攻撃というのは、これは基本的に我が国の領土、領海、領空に対する組織的、計画的な武力の行使、こういうことを言っております。  特定の事例が我が国に対する組織的、計画的な武力の行使に当たるかどうかということにつきましては、個別の状況に応じて判断すべき問題であると、こういうふうにかねてより答弁をいたしております。あらかじめ定型的に、類型的にお答えすることは困難であるということでございます。
  288. 平野達男

    ○平野達男君 今の答弁を私なりに解釈すれば、予測される事態においても従来の解釈は変わりませんということなんでしょうか。そういうことですね。よろしいですね。はい、分かりました。  それじゃ次の、分かりましたと言って、私は実はそれで不安なんですが、そこはそういうことで取っておきます。  それから、次の質問に入りますが、今回の自衛隊法の改正の中身です。  自衛隊法の改正の中に、展開予定地域という概念が今回新しく出てきます。これは予測される事態の下での概念でありますが、これは内閣総理大臣の承認で長官が決めるということなんですが、この条文を読みますと、公示をするという規定がありません。一方で、防衛出動が下令されますと、自衛隊行動に係る地域以外の地域の範囲については、これは公示で定める規定があるんですが、この差というのは一体何なんでしょうか。これは政府、事務的な話かもしれませんので。
  289. 守屋武昌

    政府参考人(守屋武昌君) お答えいたします。  先生御指摘の案件は、自衛隊法第七十七条の二でございますが、これは、防衛庁長官が展開予定地域において防御施設構築措置を命ずることができる旨を規定しているものでございます。展開予定地域として、同条は、出動を命ぜられた場合に自衛隊の部隊を展開させることが見込まれ、かつ防備をあらかじめ強化しておく必要がある地域であると規定しております。  また、防衛、防備をあらかじめ強化しておく必要があると認める地域とは、自衛隊がその持っている能力を最大限に発揮し、かつ相手国軍部隊の攻撃から防御するため、事態緊迫時から防御施設を構築しておく必要があると認められる地域を指すことから、後方支援を行う部隊の集結地であることのみをもって展開予定地域に該当するということは基本的に想定していないところでございます。  また、防衛庁長官自衛隊法第七十七条の二に基づきまして防御施設を構築する措置を命じる際は、同条に規定されているように、その範囲を定めて命ずることとされているところでございますが、これは本措置国民権利義務にかかわることからその範囲を明確にするとの趣旨でございまして、かかる趣旨を踏まえまして、当該範囲については告示することを考えているところでございます。  なお、展開予定地域内においては将来戦闘が行われる可能性があることから、住民の避難措置が必要と考えられる。かかる措置の具体内容については、今後国民保護のための法制整備していく中で対処していくことになると思いますけれども、このような事態住民を安全に避難させるべきことは当然であって、遺漏なきよう処置してまいりたいと考えているところでございます。
  290. 平野達男

    ○平野達男君 今の答弁、ちょっと分かりにくかったんですが、公示をするかしないかということでその違いを聞いたんですが、結局答えは何ですか。今のは全体のずっと説明だったと思うんですけれども、私の質問は一点ですから。
  291. 守屋武昌

    政府参考人(守屋武昌君) 今、答弁の中でもお答えしたところでございますが、防衛庁長官自衛隊法第七十七条の二に基づきまして防御施設を構築する措置を命じる際は、同条に規定されているように、その範囲を定めて命ずることとされておりますので、これは国民権利義務にかかわることと、そしてその範囲を明確にするということでございますので、この当該範囲については告示することを考えていると、こういうことでございます。
  292. 平野達男

    ○平野達男君 それは、法律規定しないということになりますと、これは細かい話ですけれども、施行規則か何かに書くということですか。法律に明示しない、本文には明示していませんけれども、施行規則か何かに書くということですか。
  293. 守屋武昌

    政府参考人(守屋武昌君) 政令におきまして具体的に措置することを考えております。
  294. 平野達男

    ○平野達男君 分かりました。政令で定めるというふうには書いていないけれども、政令で書くと、こういうことですね。分かりました。  そうしたら、先ほどの、次の質問に移りますけれども、展開予定地域というものを今の中では、お話では政令によって公示をするということになりましたので、公示されると思います。そうすると、公示された地域の住民というのは、これは予測される事態なんですが、どういう行動を取るだろうという前提に立って今回の法律を仕組んでおるのか。  これは官房長官にお伺いしなくちゃならないと思うんですが、要するに、予測される事態のときにこの地域は展開予定地域ですよというふうに公示をするわけです。その公示をされたときに、その地域に該当する住民というのはどういう行動を、どういうことを考えるだろうかということを想定して今作業されておるのかということをちょっとお尋ねしたいと思いますが。
  295. 福田康夫

    国務大臣(福田康夫君) 予測がされるような事態において、展開予定地域内におきましては将来戦闘が行われる可能性があるということであります。ですから、住民の避難措置がまず必要だというように考えられまして、このような措置の具体的内容につきましては、今後、国民保護のための法制整備している中で検討してまいりたいと思っております。
  296. 平野達男

    ○平野達男君 そうですね。そうすると、展開予定地域はもう既にそこからはもう避難させるということですね。そういうことでよろしいんですね。分かりました。その措置は私も絶対必要だと思います。  展開予定地域と言われたときに、武力攻撃事態であろうが予測事態であろうが、その地域の住民にしてみたらこれは大変なことだと思います。最悪の場合は、パニックとは言いませんけれども、大混乱に陥る。ですから、展開予定地域が公示されると同時にやはり地域が動き出して、その地域の方々は一斉にやっぱり避難していただかなければならないというふうに思いますので、そこをちょっと確認したかったということです。そこはそのとおりでよろしいかと思います。  そうしたら、このときに、例えば一つの想定の問題なんですが、物資の保管を命ずるということができるというふうにされています。これは武力事態になったとき、防衛出動が下令されたときですね。そうすると、展開予定地域というのは、将来物資の保管の命令が発動される可能性があるところなんです。そうすると、住民は何と考えるんだろうかと。私なら、まず買占めに走ります。物価が上がります。そうしますと、石油だとかなんとかというのをそこに置いておかないで、全部外に持っていくということを私ならやるかもしれません。ただし、しかし、物資の保管命令というのは防衛出動が出されないと出せませんですね。展開予定地域のときはここは危ないですよと出していて、もう場所も特定してしまいます。そこにいろんなガソリンスタンドがあったり食べ物があったり医薬品があったときに、これは自衛隊が来るから、じゃ、私はこれ来るかもしれないといって取っておく人もいるかもしれない。いるかもしれませんけれども、大体こういうことがありますと、さて大変だ、食い物がなくなる、トイレットペーパーがなくなる、あれがなくなるといって買占めに走る。それから、倉庫にあるものはじゃ値上がりを待ってということで、その倉庫からあるやつを移動してしまう。そういう行動があると思うんですが、そのときに、武力攻撃事態が起こったときに、実はもう極端な話しますと、物資の要するに保管を命じようと思って行ったときにもう何もなかったということも想定されるかもしれませんが、これはもうこういうことでやむを得ないというよりも、これはどのように考えておるんでしょうか。これは想定の問題ですけれども。
  297. 守屋武昌

    政府参考人(守屋武昌君) 先生の御指摘の点、もっともでございますけれども、私どもが自衛隊の部隊が展開したときに必要とする物資やサービスは、まず民間企業との契約による調達を基本としておりまして、これは平時武力攻撃事態においても変わらないということをまず申し上げておきたいと思います。  それで、じゃ、自衛隊法の百三条がどうしてこういう規定が置くのかということでございますが、防衛出動を命ぜられた場合において、先ほど申し上げました契約による調達が困難な場合であって、これだけでは不十分でございまして、自衛隊任務遂行に必要な場合にこの同条の要件に従い行われるということでございます。  これは、自衛隊防衛出動を命ぜられた場合には、任務遂行上、大量の物資等を緊急に調達しなければならないことがあり得るわけでございますが、武力攻撃事態という事態の特殊性をかんがみれば、契約による調達が困難となる場合も予想、想定されるということから、特に設けられた制度でございます。御理解いただきたいと思います。
  298. 平野達男

    ○平野達男君 ここは本当に難しいと思いますけれども、予測事態という事態と、武力攻撃の本当におそれ、じゃない、失礼しました、緊迫した事態というものは、多分私は、住民にとってはほとんど区別付かないんじゃないかというふうに私は思います。  そして、今の中で契約でやるというふうに言っていますけれども、いわゆる予測される事態の中では契約行為でその物資の保管をする、契約を結ぶんだというふうに言っていますけれども、そもそもそんな契約自体が結べるような状況にあるかどうかということも、私は、その展開予定地域が、ですから冒頭で展開予定地域というのはどういう、指定されたときにどういう状況を想定していますかということをお聞きしたんですが、そういうことになっていない可能性があるんじゃないかというふうに思いますので、私はむしろ、展開予定地域を発令したと同時に、ここが難しいんですけれども、武力攻撃事態等が発令されたというのと同じような措置が、似たような措置が必要なんじゃないかなというのは、ちょっとこれは個人的な考え方ですけれども、若干かなり厳しい措置になりますけれども、というふうな考え方をちょっと今持っていますので、これはこれから国民保護法制検討するに当たって、ここの予測される事態というのはやっぱり非常に重要なところでありますので、しっかり検討をしていただきたいというふうに思います。  そこで、以下、細かい話を何点か聞いていきたいと思います。  先ほどの取扱物資の保管を命じという話になりますが、これは非常に細かい話で申し訳ないんですけれども、物資の保管といいますと、物を置いてそこに人がいなくちゃならないという感じがするんです。そうしますと、この中でもう一つ概念があるのは、何だっけ、失礼しました。業務、従事することを命ずる、要するに仕事を従事することを命令することができるということで、土木建築工事、輸送の業務と、この二つに対してはその規定があります。  ただし、物資を保管すること、保管を命ずるといって、人の規定がないと思うんですが、これは保管といった場合には、例えば先ほどの議論にもありましたけれども、冷蔵庫を置いてありますと。冷蔵庫を置いておいて、ここに保管しているよと、栓は抜きませんと、あとはさようならという言葉、言い方が適当かどうか分かりませんが、置いていっていいのは、そこを離れるというのは許されるという解釈でよろしいんでしょうか。
  299. 守屋武昌

    政府参考人(守屋武昌君) 百三条に基づく保管命令によりまして課される義務でございますが、これは累次御答弁申し上げているように、基本的には保管物資を転売等をしないという不作為義務を課すものでございまして、作為義務につきましては、保管行為を開始するに当たって保管に必要な措置を講じるなどの一過性のものに限られるというふうに理解しておりまして、継続的な労務従事義務は含まれないと解しているところでございます。  よろしゅうございますか。
  300. 平野達男

    ○平野達男君 分かりました。  先ほどみたいに私は知りませんというふうに言う人は多分余りいないと思いますけれども、念のためにちょっとお聞きしました。  それと、じゃ、しからば次の質問なんですが、土木建築工事、輸送の業務、これは業務命令を出します。避難したくても避難できない。これを拒否してもいいかという議論もありますけれども、私はむしろそっちの議論じゃなくて、実費を支払うということを政令でもって規定するといいますけれども、この実費というその考え方はどういう考え方ですか。
  301. 守屋武昌

    政府参考人(守屋武昌君) これも百三条の第十一項において、政令で定める基準に従いその実費を弁償しなければならないということは先生の御指摘のとおりでございますが、この同条第十二項において、業務に従事した者がそのために死亡した場合には政令で定めるところにより損害を補償しなければならない旨が規定されているところでございまして、この当該実費弁償及び損害補償に係る基準及び手続につきましては、現在、政令で定めるべく作業を進めているところでございますが、災害関連法規に基づく実費弁償及び損害補償に係る基準及び手続を参考に、この適正な実費弁償及び損害補償を確保することとしたいと考えているところでございます。
  302. 平野達男

    ○平野達男君 分かりました。  ただ、私は、その災害関連法でいいのかどうか。これはもっともっと危険が伴う、もちろんこれ戦闘地域の中に入らないですから、その後方地域でしか活動しないわけですけれども、もっともっと危険が伴うということなので、そこは十分に配慮してもいいんじゃないかということを、ちょっと細かい話ですけれども、申し上げさせていただきます。  それからもう一つ、これ細かい話なんですが、更に細かい話ですけれども、百三条に、いわゆるいろんな物資の保管命令とか何かを掛ける対象として、長官又は政令で定める者の要請に基き、都道府県知事が行うと書いているんですが、この長官又は政令の、政令というのは、これは今どういう規定になっていますか。
  303. 赤城徳彦

    ○副長官(赤城徳彦君) これは私からお答えさせていただきますが、この現行の自衛隊法第百三条において、その土地の使用、物資の収用等について知事への要請権者のうち長官以外の者と、そのほかその対象者の範囲とか必要な手続、これは政令で定めることになっております。  この政令については、国民権利義務に関する事項を含むものでありますので、慎重な取扱いを行うべきという判断から、これまでその制定はされていなかったところで、これについては防衛庁として制定が必要であると考えて、これは五十六年にこの「有事法制の研究について」というのを公表いたしまして、その中に「自衛隊法第百三条の政令に盛り込むべき内容について」というのをるる公表して、その中に記述してございます。  こういうことで、この有事法制の一環として検討を続けてきたところでございまして、今回のこの改正案の中にも政令規定事項がございます。これらについては、この法案自衛隊法改正案が国会での御承認をいただいて後、この制定の手続に入りたいと考えております。
  304. 平野達男

    ○平野達男君 ですから、これ政令でなりますと、国会の審議の対象に、直接的な審議の対象にならないということで、でき得ればこの政令というのはこれ、本当はここの部分は非常に肝心な部分で、ここの部分も、昨日の、失礼、この間のROEの議論に通じるかもしれませんけれども、本来であれば、だれがその権限を持って都道府県知事にそういった要請なんかのお願いをできるかという非常に重要な規定で、これ長官だけだったというのは、私もこれは非常にこれ後で、今聞いて、後で知ってびっくりしたんですが、これ今本当にどういうことで考えているか、これも今の段階でこれ御紹介できませんか。
  305. 守屋武昌

    政府参考人(守屋武昌君) 百三条の政令に盛り込む内容につきましては、これは防衛庁におきまして有事法制の研究というものを行ってきたわけでございますが、昭和五十六年の四月二十二日にこの百三条の政令に盛り込むべき内容につきまして国会に御報告しているところでございます。  今、先生の御指摘の要請者ということにつきましては、物資の収用とか土地の使用等について都道府県知事に要請する者は、防衛出動を命ぜられた自衛隊の方面総監、師団長、自衛艦隊司令官、地方総監、航空総隊司令官、航空方面隊司令官ということでございまして、第一線の指揮官という末端の部隊長ではなくて、戦況全般を把握できる責任のある立場の者が、地元の事情によく通じておりました都道府県知事に依頼するということで考えておるところでございます。
  306. 平野達男

    ○平野達男君 それが政令に記載する事項だということですね。分かりました。  あと、まだ細かい点が何点かございますけれども、ちょっと中途半端になるかもしれませんので、ちょうど時間が一分となりましたので、今日はここで打ち切りたいと思います。  どうもありがとうございました。
  307. 田英夫

    田英夫君 今朝の幾つかの新聞に出ておりましたけれども、さきの小泉総理の訪米、日米首脳会談をめぐりまして、対話と圧力という最終的な北朝鮮に対する姿勢という点で合意したと、こういうことが出ております。それをめぐって、同行された政府の幹部の方の間で激論があったという、新聞によって書き方が若干違いますけれども、安倍官房副長官と田中審議官の間で、この対話と圧力という表現をめぐって、圧力は入れない方がいいという田中審議官の意見をめぐって激論があったという、大体共通点を言えばそういう記事であります。  これは、日本の対北朝鮮外交を考えたときに極めて重要な部分だと私は思いますが、これは通告してありません、今朝の話ですから、受取方で結構ですが、川口外務大臣はこの問題についてはどういうふうにお考えですか。
  308. 川口順子

    国務大臣(川口順子君) 対話と圧力ということは、これは外交をやるときの基本的な考え方であるわけでございまして、ずっと我が国政府としては外交をやるときにこういう考え方に基づいてやってきているわけで、何ら新しいことを言っているわけではないということでございます。基本的に、そういった考え方について今までよりも明確な言葉で使ったと、そういうことであるということだと思います。
  309. 田英夫

    田英夫君 今日は短い時間ですから、当面の外交の問題について、特に北朝鮮に対する外交ということを取り上げていきたいと思っているんですが、田中審議官が主張されたこと、つまり今、外務大臣は対話と圧力というのは外交の常識的なことじゃないかということですが、北朝鮮という相手に対して、圧力ということに対して非常に田中さんは気を遣っておられる。これは私もよく理解できるんです。  韓国の金大中前大統領、そして今度の盧武鉉新大統領も、ともにいわゆる太陽政策、北に対する融和政策というものを取っていて、圧力ということを排しているわけですね。金大中さんは私も三十年以上の長い付き合いですが、彼がそういう姿勢を取ったことをよく理解できます。それは、もちろん朝鮮民族同士、同じ民族ですから、自分たちの特性というものをよく知っている、そういう中から出てきた外交方針だと思いますけれども、この太陽政策というものを日本政府はどういうふうに考えておられるか、韓国のですね。これは官房長官でも外務大臣でも、どうぞお答えください。
  310. 川口順子

    国務大臣(川口順子君) 我が国といたしましては、今までずっと韓国、それと米国と連携をしまして、北朝鮮に対する政策については一緒に考え、様々な会議を開き、やってきているわけでございます。それで、韓国の金大中大統領の時代から太陽政策、今は平和繁栄政策というふうに名前を変えていますけれども、については、我が国としては今まで評価をしてきている。  先日、G8の外務大臣会合がございました。私も出席をいたしましたけれども、そこで議長が最後に取りまとめた議長のサマリーというのがございますが、その中でも北朝鮮については、我が国の小泉総理の平壌宣言、署名なさった平壌宣言とともに韓国の平和繁栄政策についての評価、プラスの評価がそこにも書かれているわけでございます。
  311. 田英夫

    田英夫君 今、日本の外交で最も重要な相手というのはどうやらアメリカだということが常識になっているようでありますけれども、私は、やはりアジアの中の日本が生きていく外交の中で非常に重要なのはやはりアジア外交ではないかと。余りにも、戦後、日本アメリカを向いて生きてきたと。大変失礼ながら、若い議員の皆さんの議論を聞いていると、ああ、アメリカを向いて育った人たちなんだなという気が私などはいたします。  もちろん、それも重要であり必要なことですけれども、今余りにも日本は、過去何千年と築いてきた古い歴史と伝統を薄めてしまって、まだ建国二百年ちょっとのアメリカの文化、そういうものを至上のように取り入れているんじゃないか、そういうことが基本にあります、私の気持ちの中に。  そう思って見ていると、アメリカのブッシュ政権の今の姿勢というものはこんなことでいいのかという問題が非常に多い。いわゆる一国主義、その具体的なことは一つ一つ申し上げませんけれども、CTBTをめぐる、あるいは京都議定書も認めない、そうしたわがまま勝手というような、そういう世界の中に君臨をしているという姿勢、そして、ついに国連の安保理の調整がない中でイラクに軍事攻撃を仕掛け、イラク戦争をやってしまうと。こういうアメリカの姿勢に対して小泉内閣は最も積極的に支持していたと、そういうことでいいんだろうかという思いがあります。  しかも、いわゆるネオコンと言われる新保守主義の人たちがそのブッシュ政権の重要な推進力になっていると。そうしたいわゆる一国主義というような、あるいは武力という圧力で世界に君臨をするという、そういうやり方を実は推進しているのはネオコンであると、こういうふうに言われているし、私もそう思います。  そういうアメリカに積極的に支持をしていくという、この姿勢でいいんでしょうか。そして、そのアメリカが北朝鮮に対しても圧力を加えると。軍事的にも、あるいは経済制裁というような問題も含めて、強い姿勢でいくことがいいことだと思っている。それでいいでしょうかね、外務大臣、どうですか。
  312. 川口順子

    国務大臣(川口順子君) 委員がおっしゃった基本的な幾つかのことについて、私は事実と異なることが随分あると思います。  米国についての考え方、これは人様々、いろいろあると思いますけれども、例えば幾つか例を挙げれば、経済制裁を米国が推している、決してそんなことはございませんで、現在国連の安保理の場で経済制裁を云々している国は一つもないわけでございます。  それから、じゃ、日本がすべてアメリカの言うとおりやっているか。日本は主体的に我が国の外交を考えているということであります。例えば、京都議定書を例に挙げられましたけれども、これは私は当時環境大臣として自分で交渉をいたしましたので、この経緯については多分どなたよりもよく知っていると思いますけれども、我が国我が国の国益を選んだということであります。  ですから、それから、そのネオコン、これはアメリカは非常に透明な国ですから、政策の形成過程、これもよく見えてくるということでございますけれども、決してネオコンがコントロールをしているということではないわけでして、これはいろいろな意見を政府全体としてまとめて意見が出てくるということだろうと思います。  我が国にとって米国は同盟国であります。唯一の同盟国であるわけです。そして、我が国が外交の目的とするところというのは我が国の平和、そして安全、国民の安全、生命財産の安全ということですけれども、それをどのようなやり方でやって、それを確保していくかという際に米国との日米安保体制、これは考え方の基軸の一つ、重要な基軸であるわけです。  したがいまして、我が国としてはこれをやりながら、そしてこれを大事にしながらいろいろな問題について関係国、もちろん米国も含み、その他の関係国も含み、それを話をしながら我が国の国益を考えて主体的に選択をしていく、これが我が国の外交の考え方であります。日米か国際協調かという二者択一の選択肢、この二つを対峙して考える物の考え方、そういうことは我が国としては取っていないということです。
  313. 田英夫

    田英夫君 どうも何度かアメリカへ行って朝鮮問題を議論したこともありますし、北朝鮮にも一九七二年に初めて行きまして以来、何度か行っておりますし、そういう体験の中から考えると、もっと朝鮮のことを知るべきだ、理解するべきだということをアメリカの人にも、国務省の人にも言ったことがあります。今は、しかしアメリカは相当、一時よりも、以前よりも朝鮮問題については理解を深めていると、ある意味では日本よりも進んでいるかもしれないと思うことすらあるんですけれども、例えば金日成時代と金正日時代の違いというのもかなり感じますね。  金日成という人は、やはり豪放らいらくという言葉がぴったりするようなそういう人でしたし、国民の支持というのを得るのは当たり前だなと、この人に対してはやっぱり朝鮮の人たちが尊敬をするのは分かるという気がいたしました。しかし一方で、この金日成という人が作ったあの国はやはり幾つかの間違いをしていると私も思っています。  例えばそれは、社会主義国家というものをあの時代の中で作ったことは分からないではないんですが、純粋の社会主義だったかどうか。中国に比べると箱庭のような感じでやっておりましたけれども、同時にあれは明らかにやはり専制君主制に近い体制であったと。それはやはり間違いだったんじゃないかと。  もう一つは、世襲をやりました。これもやはり取るべき道ではなかったのではないか。その結果として現在のキム・ジョンイル、金正日体制というものは非常にやっぱり間違った道に入っていってしまった。彼が政治の中に入ってきたのは一九七〇年代からですから、その後いわゆるテロ、更に拉致というようなことが起こってきていることは事実であります。  そういうことを見ていると、この日本としてあの国とどう付き合うのかということは、今後非常に重要な課題になっているわけですから、相手をよく知るということがもっとあっていいんじゃないか、そのことを申し上げておきたいと思います。  で、二〇〇二年、去年の九月十七日に小泉総理が北朝鮮に行かれて、その金正日氏と会われた。日朝首脳会談というのは歴史上初めてのことであります。これは私は大変なことだと思いますよ。それにこぎ着けたという努力は大変なことだと思います。それがせっかくそこまで行ったものが、逆に緊張状態を激化させることにつながってしまった、それは一体どういうことなのか。あそこまで行ったということは大変な成果だと思いますよ。これについてどうお考えになるか、官房長官でも外務大臣でも結構です、どうぞ。
  314. 福田康夫

    国務大臣(福田康夫君) 北朝鮮との関係ですね。今後どういうふうにしていくのか。  先ほどちょっと圧力の話ございましたね。あれは我が国としてはいろんな場を通じまして、外務大臣も苦労されましてこの間のG8でも、G8の共同声明みたいな形でもってこの拉致の問題も含めて、核開発の問題とかそういったような北朝鮮の現状に対して是正を求める、そういうような主張をしてきたわけです。そういう状況の中で今北朝鮮は現実の問題として核開発を進めようというそういう懸念があるわけでございまして、このことについて我が国もそうです、ほかの国もそうです、毅然として対応していくと。そして、そういう脅迫には屈しないと、こういう姿勢というのは極めて大事なんだろうというふうに思います。  そういうことを総称して圧力というようなことであれば、これはもう従来から我が国は取っていることでございますので、何も改めて圧力と言わなくたって実態はそういうことであるわけでございますので、これは今後も引き続き北朝鮮がそういう懸念を持たせないようにするための我々の努力、働き掛け、これを続けていかなければいけないというように思います。  北朝鮮と日本との関係ということでいえば、これはこれから国交正常化をするということの、そのための交渉をするということで、この九月十七日の平壌宣言においては明記しておるわけであります。その中で拉致の問題、核開発の問題もあります。そういう問題、解決していかなければいけないんでありますけれども、しかし今現実に拉致家族の子供たちがいるんですね、向こうに。これはどうしてもまず返していただきたいというのが、これは政府の一貫した考え方でありまして、そういう人道的なことについて北朝鮮側が誠実に対応していただきたい、そのことについては強く今後も要求をしていかなければいけない。しかし北朝鮮に対して我々はあくまでも外交的に解決していきたいんだという、こういう意思表明はずっとしているわけでございますから、これに是非こたえていただきたいというのが我々の考え方であり、今後は、ほかの関係諸国、韓国、米国、中国、ロシア等々と相談をしながら、その方向で是非この問題を解決していきたいというふうに考えているところでございます。
  315. 田英夫

    田英夫君 やや時間がなくなってしまいましたが、私が今日こういうことを申し上げたのは、今どう考えても北朝鮮に対する姿勢というのが、今度出てきているこの法案をめぐっても緊張を激化させないということが一番大事だと。どこの国とも緊張状態作らない、融和でいける、話合いでいけるという状態にするということが日本の外交の基本姿勢でなければならないと思います。そういう中でこの問題を考えていただきたいと。  私も、北朝鮮とは十年間、私の言動がもとで、私が意見を言った、そのことが気に入らないということで音信不通にされたこともあります。彼らといかに融和的に付き合い、そして激発させないかということ、これを本当に日本のために考えていただきたいということを申し上げて、終わります。  ありがとうございました。
  316. 山崎正昭

    委員長山崎正昭君) 本日の質疑はこの程度とし、これにて散会いたします。    午後五時十一分散会