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参考人(
生源寺眞一君) 着席のままで失礼いたします。
生源寺でございます。
こういう形で
意見を述べさせていただく
機会をいただきまして、大変ありがとうございます。
私は、
食糧法の
改正案と、これと併せて提起されております
米政策改革の全体像につきまして、
生産調整に関する
研究会の
座長を務めた者として、現時点で基本的に妥当な
方向であるという、こういう見地から所見を述べさせていただきたいと、こう思います。
改革の
中身に入る前に、一年
余りの
研究会での
検討を通じまして、私
ども研究会として心掛けてまいりました
幾つかの点に触れさせていただきたいと思います。
一つは、
米政策をめぐる様々な課題について、問題の
根本に立ち返って
検討を行うとともに、視野を
生産調整に狭く限定することなく、
米政策全体の、あるいは
水田農業政策全体のオーバーホールを心掛けたことがございます。その結果、従来の
施策の
問題点についてもかなり率直な指摘を行い、
転換すべきその
方向を指し示すことができたのではないかと考えております。
もう
一つは、
研究会をすべて公開とし、
ガラス張りの
運営を心掛けた点でございます。
研究会は、
政策の
改革の
方向性を提案する言わば地ならしの
役割を負っていたと、こう考えているわけでございますが、この段階についても
透明度の高い
議論の場を確保することが非常に大切であると、こう考えていたわけでございます。
最近、食の安全をめぐって
トレーサビリティーシステムの
導入が注目されておりますけれ
ども、私は、
政策形成の
プロセスに関しても事後的な検証が可能であるという
意味で
トレーサビリティーシステムを確保することが非常に大事だと、こう考えております。この点で、
ガラス張りの
運営とその正確な記録という点が決定的に重要だろうと、こう考えているわけでございます。
また、これは九回と記憶しておりますけれ
ども、
現地検討会などの
機会を通じまして、
水田農業の現場の声はもちろんでございますけれ
ども、
流通、
加工、
消費あるいは
地方の
行政の各方面から幅広く
意見をお聴きするように努めたつもりでございます。
もとより、
研究会の
メンバー自体、
農業界あるいは
地方公共団体、
流通、
経済界、
消費者、こういった多様な
委員から構成されているわけでございまして、私
どもは、
水田農業の実態を踏まえながらも国民的な視点に立った
検討を心掛けてまいったつもりでございます。
改革の
中身でございますけれ
ども、
ポイントを
幾つか絞ってお話しさせていただきたいと思います。
最初に、
需給調整の
仕組みについてでございますけれ
ども、
平成二十年度までに
農業者・
農業者団体が
主役となるシステムを構築する、こういう
方向が打ち出されているわけでございます。
主役の
交代の時期が明示されたわけであります。ここは
研究会の中でも大きな争点になったわけでございます。
最後の
最後まで言わば決着が延びたといいますか、わけでございますが。
ただ、私の見るところ、この
主役の
交代もさることながら、
生産調整の
方式そのものの
転換、この方がより本質的な問題ではないかと、こう思っているわけでございます。その
意味では、
主役の
交代は二十年度を想定しているわけでございますけれ
ども、むしろ
平成十六年度、来年度に行われる
制度の
転換、これが今始まろうとしております
米政策改革の成否のかぎを握るのではないかと、こう考えております。
制度の
転換ということでございますけれ
ども、少なくとも次の二つの点が変わるわけでございます。そういう
方向が提起されているわけであります。
一つは、
強制感の伴う
方式から
メリット措置の全面的な組替えと、それから
地域ごとの
需給の
状況を正確にお伝えするということを前提として、納得の下で
生産調整に参加していただく
仕組みを提起しているわけでございます。また、提起されているわけでございます。加えまして、後に触れますけれ
ども、いわゆる
産地づくり対策にも関連いたしますけれ
ども、
メリット措置そのものの組立て、これも
地域で考えていただくと、こういう形を提起しているわけでございます。
もう
一つ、二番目の
制度の
転換の
ポイントでございますけれ
ども、これは私なりの表現を使わせていただきますと、米の
生産目標数量について事後決定的な
配分原理を
導入しようとしているわけでございます。
つまり、売れた実績に応じてその次の
生産目標数量、その
地域地域の
生産目標数量が
配分される、こうなりますと
配分という
言葉自体が適切かどうかということも多少
議論があろうかと思いますが、いずれにせよ、この下で、
品質、
価格条件あるいは
取引先との結び付き、こういった
米作りの
総合力の違いが
地域の
目標数量となって反映されていくわけでございます。この
プロセスが毎年繰り返されることで、
稲作の立地につきましてもいわゆる
適地適作の
方向に少しずつ変化が生じるということを考えているわけでございます。
上意下達の、これまでの
方式は
上意下達と言っていいかと思います、そういった
減反の
配分ではなく、言わば売れる
米づくりとマーケティング、この成果が
目標数量の設定につながっていくというわけでございますので、ここは
農業者あるいは
農業者団体が
主役となり、
行政は言わば脇役に回ることがむしろ自然であろうと考えているわけであります。
減反・
生産調整につきましては、
生産者、
農業者の
皆さんの中にも、もう即座に廃止すべきである、こういう
意見もございます。
減反三十数年がもたらしたいろいろな深刻な弊害を考えますと、こういった気持ちはよく分かるわけでございます。
ただ、今回、
研究会として提起をし、今回の
法改正を
中心とする
制度改革の枠組みとして提起されている、これはハードランディングを避けながら、しかし
生産調整の副作用を思い切って除去する、こういう
方向であろうと考えているわけであります。新しい
方式の下では、
農業者間の
不公平感、あるいは、私は不幸と表現していいと思っておりますけれ
ども、不幸なあつれきの
根本を取り除く、また、これも
言葉はちょっと悪いかもしれませんけれ
ども、
減反という後ろ向きの
仕事に言わば翻弄されてきた市町村あるいは
農協の職員の方の負担を軽減し、これまでの
エネルギー、そこに注がれてきた
エネルギーをむしろ前向きの
地域農業づくりの
仕事に注いでいただく、こういう
基盤づくりを目指しているわけでございます。
また、
地域の
水田農業の振興をバックアップするという
観点から
産地づくり対策という名称で新しい
助成の
仕組みが提起されております。これは、
地域の
創意工夫を重視し、
支給の
対象あるいは
支給の方法、これを基本的には
地域の
判断にゆだねようということでございます。これまでの
転作の
助成金が言わば
全国一律、南北に長いこの国でありながら
全国一律であったことに対する反省が新しい
仕組みの提案につながっているわけであります。
これまでの
転作助成の反省すべき点には、事実上
面積で単価が固定されてきたといったような点もあろうかと思います。現在、
品質の差が的確に
価格に反映されるような、こういう
仕組みが
政策転換の流れとして進んでいるわけでございますけれ
ども、言わばそれに逆行するような、
品質にもあるいは収量にも無関係に
面積当たり幾らで払うという、こういう
仕組みがあったわけでございますけれ
ども、これもやはり
転換していく必要があるだろうということでございます。こういったことも含めて
地域の
創意を引き出すようなことを考えているわけでございます。
もう
一つの
改革の大きな柱は
流通制度の
改革でございますけれ
ども、ここはごく簡単に触れるにとどめたいと思います。基本的には
計画流通米といわゆる
計画外流通米の区別を廃止し、同じ
制度的な
条件の下で特色のある
流通が切磋琢磨する、こういう
環境が整えられるわけでございますし、また緊急時への備え、これまでのところこれは
計画流通米のみが
対象になっていたところ、これが非常に非現実的な
状況になっているわけでございますけれ
ども、これを米全体をカバーする形に再編するといった点、いずれにつきましても無理のない
改革の
方向だろうと考えております。
改革には大変な
エネルギーが必要だと思います。これ、
座長として務めさせていただいた
研究会の一年
余りの経過を振り返っての実感でございます。ただ、今のところ、過去三十年の負の
遺産を清算するための
改革という色彩もやはり強いと言わざるを得ない面がございます。
水田農業を
本当の
意味で活性化し、ということは、若い人を引き付けることのできるような
水田農業に生まれ変わっていくとすれば、過去の負の
遺産の清算という、こういう場所にとどまっていることは私はできないだろうと、こう思うわけでございます。
更に進むとして何が考えられるかということについて、
最後に申し上げまして、私の冒頭の
意見陳述に代えたいと思います。
一つは、
水田農業を、
水田をマクロ的に考えた場合に、米の
消費、需要の減少というのは、残念ながらなかなか押しとどめることができない
状況にあるわけでございますが、そうなりますと、ほかの品目ということになるわけです。そのときに、やはり
面積として大きな
地域をカバーできるとすれば、これはえさをやはり重要視する必要があるだろうと、こう思うわけでございます。
ただ、これは、
畜産そのもの、日本の
畜産そのものの在り方ともかかわって、残念ながら、今のところ十分に
議論は尽くされていないように思うわけでございます。
自給飼料生産の定着ということは、
環境保全型の
農業という
観点からも極めて重要でございますけれ
ども、今回の
研究会では、言わば取っ掛かりのところまでは行き着いたような気がいたしますけれ
ども、本格的な
検討にはまだ至っていないと言わざるを得ないわけでございます。
それからもう一点、これは、
米政策の抜本的な
改革に今正に着手せんとしているわけでございますけれ
ども、ここに至って私は、
経営単位の
所得安定対策の
導入を真剣に考えるべきときが到来したと、こう
判断をしております。
今回の
改革のプログラムの中には、米の収入に限定された
経営安定対策は盛り込まれているわけでございます。この点、曲がりなりにも、曲がりなりにも、
経営安定対策、特に
農業への
所得の
依存度の高い方に言わば集中する形で支援する、こういうメッセージが発せられた点、ここは私、高く評価してよいと思うわけでございますけれ
ども、しかし、これはまだワンステップでございまして、今後は
経営全体をカバーするような
経営所得安定対策の
検討に入るべきだろうと、こう思っております。もちろん、現行の
施策からその次の
施策に移るとすれば、いろいろ
検討すべきことがあるわけでございます。したがいまして、そう簡単に移行できるわけではないとは思いますが、であれば、なおさらのこと、早期に
検討を開始すべきだろうと、こう思っているわけでございます。
時間でございますので、以上で私の
発言を終わらせていただきます。