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2003-07-24 第156回国会 参議院 財政金融委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十五年七月二十四日(木曜日)    午後一時開会     ─────────────    委員異動  七月二十二日     辞任         補欠選任      桜井  新君     尾辻 秀久君  七月二十四日     辞任         補欠選任      西田 吉宏君     加治屋義人君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         柳田  稔君     理 事                 入澤  肇君                 清水 達雄君                 林  芳正君                 円 より子君                 浜田卓二郎君     委 員                 上杉 光弘君                 尾辻 秀久君                 加治屋義人君                 佐藤 泰三君                 田村耕太郎君                 中島 啓雄君                 溝手 顕正君                 森山  裕君                 若林 正俊君                 大塚 耕平君                 勝木 健司君                 櫻井  充君                 峰崎 直樹君                 高野 博師君                 池田 幹幸君                 大門実紀史君                 平野 達男君                 大渕 絹子君                 椎名 素夫君    衆議院議員        財務金融委員長  小坂 憲次君        発議者      熊代 昭彦君        発議者      上田  勇君        発議者      江崎洋一郎君    国務大臣        財務大臣     塩川正十郎君        国務大臣        (金融担当大臣) 竹中 平蔵君    副大臣        内閣府副大臣   伊藤 達也君    事務局側        常任委員会専門        員        石田 祐幸君    参考人        日本銀行総裁   福井 俊彦君        日本銀行総裁  岩田 一政君        日本銀行理事   三谷 隆博君        日本銀行理事   小林 英三君        日本銀行理事   白川 方明君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○銀行等株式等保有制限等に関する法律の  一部を改正する法律案衆議院提出) ○貸金業規制等に関する法律及び出資受入れ  、預り金及び金利等取締りに関する法律の一  部を改正する法律案衆議院提出) ○参考人出席要求に関する件 ○財政及び金融等に関する調査  (日本銀行法第五十四条第一項の規定に基づく  通貨及び金融の調節に関する報告書に関する件  ) ○銀行被害者救済に関する請願(第二三四号) ○地価低落のため延納相続税支払に困窮している  相続人に対し、延納から物納への切替特例を認  める相続税法緊急改正実現に関する請願(第二  四八号外一件) ○消費税の大増税反対税率の三%への引下げに  関する請願(第二七〇号外一〇件) ○国民本位減税による景気回復国民に大増税  をもたらす小泉税制改革中止に関する請願(  第三三四号外九一件) ○国民に大増税をもたらす小泉税制改革中止に  関する請願(第四一三号) ○国民に大増税をもたらす小泉税制改革中止に関  する請願(第四一四号) ○無認可保育所保育料に対する消費税非課税  化に関する請願(第四八二号外四件) ○計理士に対する公認会計士資格の付与に関する  請願(第四九九号) ○消費税免税点制度等維持に関する請願(第  五三一号外二件) ○個人消費を減退させ、景気回復を遅らせる大衆  増税反対に関する請願(第五七八号外三四件) ○国民に大増税をもたらす小泉税制改革反対に関  する請願(第六三九号外七件) ○金融アセスメント法法制化に関する請願(第  六五三号外九件) ○金融アセスメント法制定に関する請願(第七  二三号) ○消費税免税点制度等維持に関する請願(第七  二四号外二件) ○消費税の大増税反対食料品非課税に関する  請願(第七八四号外一件) ○消費税減税に関する請願(第七九七号) ○緊急景気対策に関する請願(第八二〇号) ○基礎控除引上げによる課税最低限度額の抜本  的な改正消費税増税反対に関する請願(第  九四五号外二三件) ○課税最低限切下げ反対に関する請願(第九四  九号外三件) ○出資法の上限金利引下げヤミ金融対策法の  制定に関する請願(第九八五号外六件) ○消費税増税反対税率を三%に戻すことに関す  る請願(第一〇五八号外一件) ○大増税路線反対国民本位税制確立に関する  請願(第一〇六〇号) ○消費税総額表示(内税化)の義務付け反対に  関する請願(第一一二四号外二二件) ○大衆増税反対に関する請願(第一一七八号外二  六件) ○課税最低限切下げ反対に関する請願(第一三一  二号外一九件) ○日本経済を一層冷え込ませる庶民増税中止  、景気回復に関する請願(第一四二四号) ○日本経済を一層冷え込ませる庶民増税中止、  景気回復に関する請願(第一五六二号外二〇件  ) ○相続税に関する請願(第二四九八号) ○中小建設業者に対する金融機関の貸渋り等の禁  止に関する請願(第二五九六号外九一件) ○国民本位減税による景気回復国民に大増税  をもたらす小泉税制改革中止に関する請願(第  二六五一号外三件) ○消費税率引上げ反対と早期の景気対策に関する  請願(第二九五四号外三件) ○退職共済年金受給者に対する併給等に関する請  願(第三〇九七号) ○年金への課税強化反対等に関する請願(第三五  四三号外一九件) ○継続調査要求に関する件     ─────────────
  2. 柳田稔

    委員長柳田稔君) ただいまから財政金融委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る二十二日、桜井新君が委員辞任され、その補欠として尾辻秀久君が選任されました。     ─────────────
  3. 柳田稔

    委員長柳田稔君) 前回に引き続き、銀行等株式等保有制限等に関する法律の一部を改正する法律案及び貸金業規制等に関する法律及び出資受入れ預り金及び金利等取締りに関する法律の一部を改正する法律案の両案を一括して議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 櫻井充

    櫻井充君 民主党・新緑風会の櫻井でございます。  四年間、財政金融委員会に所属いたしまして、恐らく次の国会はほかの委員会に所属することになると思いますので、最後というわけではありませんが、ひとつ自分なりに、ここ四年間ぐらいの政策を振り返りながら、本当に今までの金融行政在り方で良かったのかどうか、その点について検討したいと思います。  お手元に資料を配付させていただきましたが、金融庁の皆さんに随分御迷惑をお掛けいたしまして、かなり夜遅くまで掛かって資料を作ってくださったそうです。ありがとうございました。  そこで、まず竹中大臣にお伺いしたいのは、今回のこの三枚目のところなんですけれども、要するに、金融再生法開示債権の残高の推移というのがございまして、これを見てみますと、結果的には、不良債権自体が減ってきていない、むしろ増えてきているのかなと、そういう感じがいたします。そこの中で特に問題になるのが、私はいつも指摘させていただいていますが、要管理債権でして、その要管理債権を見てみますと、平成十年度と十三年度で比較すると二倍から三倍ぐらいに各々の、例えば地域銀行にしても全国の銀行にしても二倍から三倍ぐらいに膨れ上がってきているわけです。  この要管理債権の位置付けというのが本当に適切なのかどうか、まず大臣としてどうお考えなのか、まずその点についてお伺いしたいと思います。
  5. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) 不良債権をどのようなベースでとらえるかということに関しては、いろんな、少なくとも複数の開示の基準があるわけでありますが、ここの表は十四年の中間期まで出ております。  まず、不良債権の全体額に関して申し上げますと、十五年三月期まで含めますと、これは不良債権は着実に減ってきているという認識を私自身は持っております。直接お尋ねの要管理債権、これは資産査定そのものは厳格にやっているわけでありますが、いわゆる破綻懸念先以下につきましては、御承知のようにオフバランス化ルールを決めております。要管理債権についてはそういったものは特に決めていないわけでありますが、この要管理債権が増えたというのは、いわゆるその他要注意先から下りてきたものもあれば、破綻懸念先以下から、何といいますか、上方遷移したものもございますので、その中身そのものについては評価はなかなか難しいと思います。  ただ、今回、産業再生機構を作りまして、この産業再生機構というのは要管理債権を対象としてその再生を目指すわけでありますので、我々としては、破綻懸念先以下について従来どおりオフバランス化ルールをしっかりと適用して運用していく、要管理先、要管理債権についてはそれを更に上方遷移させるように、そして産業再生機構を活用しながら、全体としての不良債権合計を当初目標どおり二年後には四%台を目指して減らしていきたい、そのように考えております。
  6. 櫻井充

    櫻井充君 そこの方針は分かるんですが、しかし、銀行にとって要管理先が増えるということ自体、もちろん破綻懸念先から改善したものもあるかもしれませんけれども、私が聞いている分では、要注意先のものが随分要管理先に格下げされているところが多くて、その部分が実は銀行にとっても大変な状況にあるんだと、そう私はお伺いしております。  つまり、要注意先ですと、引当金の今レベルが五%まで行くのか、前後ぐらいであろうかと思いますが、要管理先になりますと、銀行によって違うんでしょうが、多分二〇%から三〇%ぐらいの間の引当金が必要になってくるんだろうと思います、ちょっとその認識が、数字が違っていれば教えていただきたいんですけれども。  そうなると、これだけ要管理先が増えてくると、その分引当金を積み増ししなければいけなくなるということで、銀行側からしてみても、融資をする行動が減ってくるような、貸出しが減るような、そういうことになってしまうんじゃないのかなと、そう思っているんですが、大臣としてはどうお考えでしょうか。
  7. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) 御指摘のように、要管理先に関しては、ちょっと正確な数字は持っておりませんが、二けたの、確かに厚い、その他要注意先に比べれば当然のことながら厚い引き当てをすることになるというふうに思います。これは、要管理先、いろんな内容がありますので、これをなかなか一概に言うのは難しいのだと思います。  先般、この十五年三月末に、三月期に行った特別検査の結果を報告しておりますけれども、この特別検査では、その破綻懸念先以下からやはり要管理先に格上げされたものもかなりあるというふうな認識、そういった動きが見られたという認識を我々は持っております。委員指摘のように、もちろん、その他注意先から落ちてくるものもある。これについての実態把握と、今後それをどのように不良債権全体の縮小に結び付けていけるかというのは、これは銀行にとっても我々にとっても、委員指摘のように、更に今後の課題であるというふうに思っております。  ただ、いずれにしましても、今正に産業再生機構が稼働しようとしている中で、この要管理先については、これを再生に向けて動かせるように、その仕組みづくり是非ともきっちりとやっていかなければいけないというふうに思っております。
  8. 櫻井充

    櫻井充君 産業再生機構万能のように、今のお話ですと、万能ではないとおっしゃるんでしょうが、要するに、実際、じゃ、どのぐらい予算が付いていてどの程度の人員がそこに配置されるのかといいますと、私、この間調べてみると、常勤でおられる方々が平均すると二、三人なんですよね。ですから、その方々がどこまできちんとした形で再生することが可能なのかというと、私は極めて難しいんじゃないかなと、そう思っているわけです。  ですから、そのものがあるから、今の御答弁ですと、まずこれがあるから大丈夫、大丈夫というか、進みましたよという話になっていますが、実態として本当にどれだけの企業再生することができるのかというと、私は難しいんじゃないかと、そう考えているんですが、大臣としていかがお考えですか。
  9. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) 産業再生機構万能であるとはもちろん考えておりません。この産業再生機構を設立した趣旨を踏まえてどのようにこれを活用できるかというのは、これは我々に課された非常に大きな課題であると。その意味では、委員の御指摘、これを一体どのように使っていくのかということに関しては、谷垣大臣とも御相談しながら、本当にしっかりとやっていかなければいけないということに尽きているんだと思います。  ただ、ちょっと今、二、三人と委員おっしゃられましたが、これはどこの数字なのかちょっとよく分かりませんが、再生機構そのものは、私が承知しております限り、民間から産業企業再生専門家、これはかなり有能な方をたくさんお集めになっているというふうに聞いておりますし、各銀行もこの産業再生機構をこれから積極活用しようという姿勢、どこの銀行も持っておられるというふうに聞いております。  それと、これは産業再生機構だけではなくて、御承知のように、メガバンクの幾つかは、自社の中でといいますか、自社グループの中でこの企業再生のための子会社を作ったり、そこに外資のノウハウを絡めるような仕組みを取り入れたり、様々な工夫をしているところでございます。  繰り返しになりますが、この要管理先をどのような形で実際に産業企業再生をしていくか、結果的にこの要管理債権を減らしていけるかということについては、これは今後の課題であるということは私たちも強く認識をしております。今利用可能になっている産業再生機構を始めとする仕組み、そういうものを是非活用して、我々としては、その目標実現に向けてこれは努力をしたいというふうに思っております。  ちなみに、産業再生機構そのものの全体の人数は百人弱であると。しかも、先ほど申し上げましたように、企業の、それぞれの金融機関等々の最前線で企業再生をしておられた大変優秀な方々が集まっていらっしゃるというふうに認識をしております。
  10. 櫻井充

    櫻井充君 本体としては多分そのぐらいの人数だと思いますが、地域に分散すると多分二、三人ぐらいになるんだろうと思っています。そうすると、とにかく本当にその人数でやれるのかというと、決してそうではないということでして、私がいつも申し上げているとおり、果たして要管理債権分類の仕方が適切なのかどうかということになるんだろうと思います。  ここは改めてお願いしておきたいんですが、これをまず見てみると、元金又は利息の支払が三か月以上延滞しているものとございますが、確かに金利を払えなくなってきているところに関していうと、このような分類にされても仕方がないかなと思ったりするんですけれども、ただ、元本の場合は、これだけ景気の悪い時期ですと、以前でも支払えない企業というのは随分あったわけです。中小企業、済みません、ここは中小企業の話をしているんですけれども。そうすると、景気が良くなってきて一つ仕事が入ればまた元金を払うことというのは可能ですから、その辺を是非勘案していただきたいのと、それから、何回もこれは言っておりますが、要するに条件緩和債権のことをここに書いてあって、条件緩和債権だけではそうならないとおっしゃっていまして、調べましたが、結局は担保がきちんとあるとかそういうものでして、大事な点は、条件緩和してやれば再生可能な企業も随分あるわけです。  そうすると、治療前こそ要管理先であったものが、治療された後では条件緩和ということは、ある種治療されていることですから、これは要管理先に置かれることは私はおかしいと思っているんですよ。なぜならば、例えば長期間でしかも低利で借りられるような企業であったとすれば、本来は正常先企業になるはずなんですね、ほかの銀行に行けばですよ。ほかの銀行に行って元々の条件が最初から低利で長期間で借りられるということは、正常先なはずなんです。それが、元々が悪い状況であったから条件緩和しました、条件緩和してしまうとその企業が要管理先分類されるというのは、私は筋が違っているんじゃないかなと。  ですから、そこのところを変えていただければ、産業再生機構を利用するまでもなく銀行のところで、銀行のところで産業再生というものが可能になってくるんだろうと思うんですね。ですから、その部分のところを改めていただかないと、厳格な査定、厳格な査定を行い続ければ、要管理債権というのはどんどん増えていくんだろうと思っているんですね。ここのところは是非早急に検討していただきたいと思いますが、大臣、いかがでございましょう。
  11. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) 産業再生機構については、これはメーンバンクと協力しながらやるということで、これはこれで一つ仕組みであるということであると思います。  それはそれとして、さらに、委員指摘のような中小企業に関しては、中小企業固有の、リレーションシップバンキング固有の問題を考慮して、我々としてもしっかりとした手当てをしていこうという、そういう心積もりを持っております。  先ほど、元本を返す返さないというような話に関して申し上げれば、これはいわゆる資本性のものを貸付けという形で行っているわけでありますから、そのデット・エクイティー・スワップのようなものを中小企業についてできないかとか、この仕組みづくりについては、我々もアクションプログラムにのっとって今いろいろと検討しているところでございます。  それと、これはもう何度かこの場でも御審議をいただいた条件変更の件でありますが、これは繰り返しになりますけれども、正にこれはケース・バイ・ケースで、実態に応じて判断するんだということがマニュアルにも書かれております。ただ、現場は違うじゃないかという委員の御指摘、これはこれでやはりしっかりと受け止めなければいけないと思っております。既に申し上げておりますとおり、この検査マニュアルの別冊の中小企業融資編については、これは改訂をするという方向で我々も考えておりますので、委員指摘のような点がしっかりと現場に行き届くように、この改訂に当たっては細心の注意を払いたいと思います。
  12. 櫻井充

    櫻井充君 よろしくお願いします。  原則がこのように書かれているから、あとはそれに合わせて勘案しろといっても、原則はこう書かれています。そこが違っていると思うんですよね。原則を変えていただかなければ、まずここのところが根本で皆さん入ってきて、その上で、じゃ条件緩和債権でも要管理に当たらないものはどれなんだろうという形で検討し始めるということですから、やはりここを変えていただかないと変わってこないんじゃないだろうかと思うんですね。  私は、要するに、今自己資本規制なりそういうものがあって、そしてその自己資本規制の中でもこういう債権分類実態に合っていないからもう一つ融資が増えていかないんだということをずっと主張してまいりました。大臣は、不良債権を抱えていることがリスクを持っていて、なおかつそのこと自体が問題であってなかなか融資が進んでいかないんじゃないかというお話を随分されますが、この場で以前にも指摘をさせていただきましたが、国債を買っている量というのは増えているわけですから、決して、融資できるお金がないのかというと、そういう状況ではないんだと思うんですよ。  ですから、なぜ国債に行くのかということは、国債が安全だから、不良債権には、今企業に貸し出せば不良債権化しやすいからということもあるかもしれませんが、一方で、リスクウエートゼロのものと、プロパーで貸し出した場合リスクウエート一〇〇になってしまうものとすれば、なかなか貸し出していけないという実態がどうしたって出てくるんだろうと思うんです。その意味において、この自己資本規制のところを地域金融実態に合わせて変えていただかないと、変えていただかないと融資が増えてこないんじゃないだろうかと、そういう気がしています。  ですから、国債に向かっていることに対して、大臣としてはどのような分析をされているんでしょうか。
  13. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) これは今、櫻井委員がおっしゃったことと私が申し上げたいことはそんなに違っていないのだと思います。  委員言われたように、国債リスクウエートがゼロであると、貸出しはリスクウエートが高いと、そのリスクを回避しようというような行動をどうしても取ってしまうと。もう一つは、自己資本比率自己資本規制が課されていますので、その自己資本比率をある程度維持しなければいけない。それに関しては、ここの委員提出資料の中にもありますが、やはりバブルの時期を通じて銀行融資というのが非常に自己資本に対して拡大してしまった。いつも私、GDPの比率で申し上げますけれども、国の相対的な規模、企業の相対的な力に対して銀行貸出しというのが非常に膨らんでしまって、残念だけれども、それは自己資本比率との関係もあり、これをある程度調整していかざるを得ない局面にある。そういう自己資本、これはしかし、そうすると自己資本比率をやめればいいではないかという御指摘も当然それはそれとしてあるわけですが、現実問題として、このBISで、バーゼル委員会で決められた世界的な流れに抗して日本だけがそういう行動を取るというのは、現実にはやっぱりこれはできないことであるというふうに私は思います。  そうしますと、今申し上げたように、リスクを抱えている、リスクが取れないという、そのリスク管理視点、それと関連はいたしますけれども、やはり自己資本との関連で、今まで膨脹した融資をある程度調整していかざるを得ないという視点、そうした中で、銀行としてはその資産の構成をある程度変えざるを得ないというような状況になっている。  銀行が、私はやはりリスクゼロの国債にこれだけ重きを置いてきたというのは、ポートフォリオの在り方としても、是非リスクを取る企業家精神銀行に発揮していただきたいという思いは非常に強く持っておりますが、現実には今申し上げたような要因の中で資産の組替えが起こってきたものというふうに思っております。
  14. 櫻井充

    櫻井充君 大臣、これはリレーションシップバンキングのところでダブルスタンダードを認めていただいたわけですから、国際業務をやってくる金融機関国内業務だけの金融機関というのをまず分けて考えるべきなんだろうと思うんですね。そこの中で国際業務をやり続けるんであれば、大臣のおっしゃるとおりでして、BIS規制を遵守していかなければいけないと思います。しかし、そうでない金融機関が山のようにあるわけでして、その企業、その金融機関に対してBIS規制を課さなければいけないという約束事はないはずなんですね。ですから、健全性ルールというのを国内で作っても構わないわけですから、そこを国内ルールに合わせるような、実態に合わせるような形に変えていけないんだろうか。  今現実、例えば地域金融機関がどの程度ちょっと国債を抱えているか分かりませんが、その国債を、プロパーで貸し出したところに置き換えてみたときに、果たして本当に自己資本比率が八%なり四%なり、これは都市銀行でも含めてですけれども、じゃここを、済みません、元に戻すと、今の国債で運用している部分を、国債で運用している部分を、もしプロパーで貸し出したとすると、貸し出す企業がもしあったとして貸し出した場合に、自己資本比率を本当に八%なり四%なり維持できるかというと、今の日本金融機関では難しいんだろうと思うんですよ。  だから、そういう点でいえば、資本増強をしなければいけないんですねという話になるわけですが、果たしてそこが資本増強でいくべきことなのか、こういう金融検査マニュアル債権分類されていますけれども、これが適切なのかどうかということを改めて検討していかないといけないんじゃないだろうかと思うんです。  銀行の役割というのは、これは分かりません。私は素人ですが、自分なりに勉強してみると、国際業務をやる金融機関もあれば、それから地域に根差した金融機関もあれば、それから新しい金融商品を開発していくようなところもあれば、様々な機能を持ち合わせているんだと思うんです。それを一つ金融機関に全部やらせるのかというと、決してそうではなくて、機能分化というものがこれからの社会において必要だと思うんですね。その点において機能分化を進めていくとすると、各々の金融機関に対してのルールというのを少し変えていかないと難しいんじゃないかなと、私はそう思っているんですが、大臣としてはいかがお考えでしょう。
  15. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) 委員承知だとは思いますが、あえてはっきりと申し上げたいと思いますが、我々は国内業務を行っている銀行に対してはBIS基準を課していないんです。BIS基準というのは、御承知のように、国際業務を行う銀行に対して八%の自己資本比率を守ってもらう、これがBISの基準です。それに対して、例えばアメリカ、ヨーロッパの幾つかの国、アメリカ等々ではどうしているかというと、国内の業務を行っているだけの銀行に関しては、BISの規制はないんだけれども八%を準用しているわけです。  それはそれで私は意味があるんだと思います。なぜならば、例えば海外を行う東京三菱銀行、例えばですね、そこは海外とやって、それのネットワークの中で八%を守ってください。しかし、この銀行国内にもいろんな融資関係を持つ。銀行の間で、国内銀行との間でもいろんなやり取りを持つ。つまり、ネットワークは一つなんです。本当は、海外と国内というのはネットワークは分かれているわけではなくて、本当は一つであります。だから、国外に対して海外的な国際業務を行う八%については国内についても準用するというのが、例えばこれはアメリカやヨーロッパの主要な国で取られている考え方です。  しかし、日本は、我々はそこはあえて違うというふうに課して四%という別の基準を設けているわけです。これは、四%という基準はBISの中にはどこにも出てまいりません。我々としては、もうこれは当然のことながら、海外の専門家からは、どうして八%じゃないんだということを言う人もいらっしゃる。しかし、我々はそこは、国内については、正におっしゃったように、地域に根差したいろんな社会的な機能もあるでしょうということで四%ということを我々の基準としてこれは設けているわけでありまして、そこら辺についてはむしろ、一部に海外からの批判がある中で、我々としては国内の問題は特に、さっきあえてダブルスタンダードと言うかどうかはともかくとして、そういう基準を設けていると。  そういう点は是非とも御理解を賜りたいと思っております。
  16. 櫻井充

    櫻井充君 その点については存じ上げております。  ただ、平成五年以降の金融関連の主な出来事というか、政策についてこれはまとめていただいたんですが、この政策を見てくると、確かに金融機関健全性を強化していくものは随分あるわけですよ。じゃ、本当にそれで融資が増えていくような政策があるのかというと、残念ながら私には、これ、融資が増えていくような政策に私は思えないんですね。もう一つ、なぜならば、中小企業に対しての貸出しというのはほとんど増えていない、むしろずっと減少し続けてきているからです。  ですから、それは大臣がおっしゃるとおり、バブルのときに貸し込んでいるから、だからこれは正常に戻ってきているのでいいんですよというお話にされるのか、それとも、本来であれば融資が受けられる、融資を受ければ存続できる企業も実は融資を受けられなくなっているのか、この点は問題なんだと思うんですよね。  ですから、私が申し上げたいのは、融資が受けられれば存続できる企業に対して融資ができる制度なのかどうかということです。  今、例えばリコーなどは自分のところで融資を行い始めていますよね。なぜかというと、取引先企業が随分つぶれていっていると。そのために、リースをしようにもリースができなくなってきている。ですから、キャッシュフローのところを見て、この部分であれば融資が可能ではないだろうかという形でリコーなども随分融資を始めています。  そういう実態を見てくると、私は、融資可能なところというのは随分あるはずなんだけれども、そこに融資されていかないという問題点があるわけですよ。そのことをどうやって解決していくのかということが本来は大事なことでして、これを民間の金融機関に任せるのか、若しくは民間の金融機関にこれ以上任せることが無理であったとすれば、例えば信用保証の、この間も提案さしていただきましたが、信用保証のところの保証料を少しでも、少し高めに設定してこれをもっと利用できるようにするとか、公的金融機関からの貸出しを増やすんなら増やすんでも結構です。ただ、今後の方針からいうと逆になるんでしょうが、とにかく、そういった融資を受けられるような制度設計にしていただきたいと。  つまり、今過渡期ですから、大臣がおっしゃることも分かるんですよ。大臣がおっしゃることも分かるけれども、その過渡期にきちんとした担保を取らないと破綻する企業が随分増えてしまうんじゃないだろうかと。ですから、そこに小泉政権としても方向、僕は方向転換だと思いますが、産業再生機構なりそういうものを作って、再生しながら何とか構造改革を進めていこうという方針にされているんだろうと思います。ですから、そのことがもう少し可能になるような制度設計はできないんだろうかということを申し上げたいわけです。  済みません。あと、ちょっと時間がないので、せっかく資料をいただいて、銀行の株の保有のところを調べていただいたんですが、これは二ページのところになります。  見てみますと、総資産自体平成五年から見ると十五年で随分減っていて、株式の保有も随分減ってはきています。ここの中で、株式の損益のところがありますが、売却損益を見てみると、ずっと売却で平成十何年までは、まあ十三年ぐらいまではずっと黒字なわけですから、本来であればこういった時期に、もっと早い時期に株の売却を進めるような制度設計をされれば、今になって、例えば十五年の三月期のところで見てみると償却損というのが出てきているわけですよね。  ですから、もうちょっと前に、株、株価などを、銀行保有しているとそれなりのリスクがあるということがお分かりであったとすれば、もう少し前の時期に処理をさせるような、そういう政策が取れなかったのかなと思うんですが、これは、大臣はその当時大臣をやっておられるわけではありませんので、御感想で結構でございますが、いかが思われるでしょうか。
  17. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) 委員が前半におっしゃった、融資が受けられる企業があるはずだ、それに対して融資が行われていないことが問題なのではないか、それに対応するためにやはりしっかりとした制度を作らなければいけないのではないか、これは全く同感であります。  実は、金融再生プログラムは、その前半に、正にそういう思いで幾つかの新しい措置を取ろうということを書かせていただいております。資産査定の厳格化とか、そういった点だけが強調されがちでありますけれども、例えば信託の制度を使って、例えばそれに対して新たに資金が中小企業に移るような制度を作れないだろうかと、これは実際に検討しております。さらには、これ不良債権を持っていない新しい銀行が出てくればいいじゃないか、正に新規参入を促進しようと、そうすることによって新しい融資の機会が増えるはずである。さらには、これはセーフティーネットとしての様々な保証、これ、セーフティーネット保証等々、実際この一年ぐらいの間に非常に充実されているわけでありまして、そういうことは実はやっております。  それともう一つ融資が増えていないという点、これは融資の残高から見るともちろん減っているわけでありますが、最近の内閣府の調査で、例えばこういうことが分かりました。例えば、見掛け上、五兆円なら五兆円、融資残高が減っていると。しかし、その五兆円減っている裏で、大体半分ぐらい、二兆円とか二・五兆円とか実は証券化が行われているんですね。証券化が行われているから残高が減る。この証券化が行われるということはどういうことかというと、証券を持っている人、私が証券を買ったとしますと、私がその企業融資しているというのと同じことになりますから、見掛けほど実は、その受ける金融の量、ストックとしての量は減っていないわけですね。  これも実は、証券化を進めることによって、実は実際的には金融が、ファイナンスの機能が起こるというようなこと、これも実は制度としては整備しつつ、かなり実績も上がりつつあるというふうに私は思っております。  だから、そこは是非とも、引き続き、どんなアイデアがあるか、これは委員にもいろいろアイデアがあれば是非お聞かせいただきたいし、我々としても全力を尽くしたいと思っております。  二番目の株保有の話、これは御指摘のような点は確かにあったのかもしれません。それぞれ、当時は株、相当の含み益があったということで、その含み益を実現させることによって、それを不良債権の処理に充てていたということがあります。そうした点では、確かにアメリカはかなり以前から株式の保有の制限をしていたわけでありますから、そういった点についてもっと早く着目すべきであったのではないかという御指摘に関しては、それはそのとおりであったのかもしれないというふうに私も思います。  そういった点も踏まえて、今この御審議いただいている法案等も踏まえて、含めて、いろんな対応を我々としてもしっかりとサポートしていきたいというふうに思っております。
  18. 櫻井充

    櫻井充君 前段については、じゃ、済みません、こちらも誤解しているところがあったのかもしれないので、それはもう一度調べさせていただきたいと思います。  前回の委員会でも申し上げましたが、やはり早め早めに対処していくということが極めて大事なことでして、そういう点でいうと、今回こういう形で一覧表にしていただいて大分流れが自分なりにつかめたところがございます。ですから、もう一度、これまでの金融行政在り方がここ数年間適切だったのかどうかということを一度検証していただきたいと思います。そうしないと、これまで自分たちが作ってきた制度設計なり何なりが果たして本当に適切だったのかどうかということが分からないからです。  銀行なども、本当に公的管理のような銀行を作ってしまうことが本当に良かったのか、それとも債権ごとに振り分けてそれを引き受けてもらった方が良かったのかどうかとか、それとも合併させた方が良かったのかと、コストの点でどれが一番良かったんでしょうかという話を前に谷垣大臣のときにお伺いしたときには、合併したときの方がコストとしては掛からなかったかもしれないなと、そういう答弁をいただいたこともあるんですよね。その意味で、是非、違う角度から本当にこれで良かったのかどうかということを御確認いただきたいと、そう思っています。  最後になりましたけれども、大臣として、私、大臣が就任された当時に予算委員会で質問させていただいてちょっと気になったことがあったので、最後にもう一度お伺いしたいことがありますが、構造改革をやるに当たって国民の皆さんに痛みが伴いますよと、そういうお話があったときに、私は、じゃ、大臣はどういう痛みがおありなんですかと、そのような質問をさせていただいたときに、これは後で答弁書見ていただければ分かりますが、私はかなりの高額所得者であったけれども、それを捨てて大臣というこういうポストに就いたんですよという、実はそういう御答弁されているんですよ。それは就任当時なんです。就任当時、そういうことなんですが、大臣を経験されて、今の金融行政在り方等について、それから、自分が今こう立たれていて、こういう問題点をやっていかなければいけないし、自分にこういう痛みもあるんだということがございましたら、最後に御答弁いただきたいと思います。
  19. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) いろんな痛みがいろんな方にあるんだと思います。それを構造改革と直接結び付けて議論するというのはなかなか難しいかというふうに思いますが、私としては、これは痛みかどうかはともかくとしまして、大臣という職責は大変やはり重い職責であると、プライベートなものを私の家族も含めて犠牲にしてでもやらなければいけない仕事があると思っております。しかし、それはそういうことを承知で引き受けた仕事でありますから、その点については、構造改革を更に進めるべく、是非ともしっかりとやり抜きたいと思っております。
  20. 櫻井充

    櫻井充君 終わります。
  21. 大門実紀史

    大門実紀史君 日本共産党の大門実紀史でございます。  株買取りの方を今日は質問させていただきますけれども、既に問題点は衆参の今までの議論でかなりもう議論されています。問題あり過ぎてもう質問するのもうんざりするぐらいの法案だと私は思っておりますし、大体今国会は、何といいますか、こういう筋の悪い、たちの悪い法案が多過ぎますね、本当にね。前回の生保なんか、本当にもう、経済分野では本当にこの委員会で最悪の法案だったんじゃないかと、今年ですね、今国会、思います。  今回のこの株買取りについては、もう何といいますか、レベルが低いといいますか、本当に、何といいますか、国会でこういうのを議論するのかと思うふうな法案だと、本当に情けなくなるというふうに、私、指摘したいと思いますし、何かこう数が、数の力が、数の力で通せるからといって、生保もそうですしこの株買取りもそうですけれども、こういうものを次々通していると、私、必ず国民の皆さんのしっぺ返しに遭うんじゃないかと、近々遭うんじゃないかというふうに思います。  ですから、もう少し国会として、胸を張る、国民に胸を張れる法案を出してもらいたいなと。私どもと自民党、与党、もちろん立場は違いますけれども、昔の先輩に聞きますと、昔の自民党はそれなりに骨のあるものを出してきたというふうに本当に思うんですよね。こういう何かこそくな、取りあえず取りあえずこの継ぎはぎみたいなのばっかり出して、しかもそれが国会審議の時間を使うというのは本当にどうなのかなというふうに思います。  前回のこの法案の改正のとき、私、反対討論もする気がしないと言ったぐらい、申し上げましたけれども、またこんなものが出てきたというので、本当にどうなっているのかという印象をまず持っているところです。  今日はもう余り、最後ですのでテクニック的なことをお聞きするつもりはございません。何でそもそもこんなものが出てきたのかという基本的なところだけ幾つかお聞きしたいというふうに思いますけれども、確認のために改めて発議者の方にお聞きしますけれども、結局、この法案はだれのための法案なんですか。
  22. 熊代昭彦

    衆議院議員熊代昭彦君) いろいろな御評価もあると思いますけれども、私どもは自信を持って出させていただいたものでございます。  要するに、この法案そのものは、全体といたしましては、株式の持ち合い構造、日本の株式の持ち合い構造を直すということでございまして、しかもそれも、二年八か月の短期間でBISに合わせて、BIS規制の強化に合わせて直すというものでございますから、非常に市場を乱す要素は十分あると、それに対して手当てをしなければならない、それが国民の公益に合致することであるということでございます。  ただ、それが八%という拠出制度があったためになかなか利用しづらいものになっていたと。ですから、二千二百億弱の買取りしかなかったということでございますので、やはり本来の制度の趣旨を全うするように、八%規制を除去する傍ら、公益のためにリスクを負うわけでございますから、そのリスクを最小にするために、五年間の株式を売る期間を延ばすということでリスクを最小にすることができるというのが我々の考え方でございまして、極めて意義のある法案であるというふうに考えているところでございます。
  23. 大門実紀史

    大門実紀史君 そういう答弁、何度も衆参でされてきましたけれども、国民の公益というのは、具体的にこの法案で何が公益になるんですか。
  24. 熊代昭彦

    衆議院議員熊代昭彦君) 直接金融偏重の我が国の金融システムというのを、間接金融も相当な程度にしたいと。アメリカですと、現在は大ざっぱに言って三割程度でございますかね、個人金融資産の三割程度が行っているというようなこともございますので、個人、例えば個人金融資産の相当部分が直接金融の方に行くのは公益として非常に大きなことだというふうに思います。  この法律、冒頭に、当初出ましたものはなかなか厳しい法律でございまして、相当に日経平均を押し下げた面があるというふうに私は感じておりますが、しかし結果として、結果として、東証の流通利回りというのが一・一八ぐらい、少し、ほんの少し前のデータでございます、ぐらいになったというようなことでございまして、配当利回りで買えると、そういう資産株というような面がかなり出てきた面がございます。ですから、間接金融偏重じゃなくて、直接金融の市場をしっかりしたものにすると、そういうために、かなり短期間に、荒療治ではあるけれども出した法案でございます。  その趣旨が全うされるように我々は改正法案を出したということでございますから、これが国民の公益に沿うものであるというふうに考えているところでございます。
  25. 大門実紀史

    大門実紀史君 お答えになっていないと思うんですけれども、要するに、何ですか、直接金融を発展させるためということですか。
  26. 熊代昭彦

    衆議院議員熊代昭彦君) 極めて大きなパースペクティブでこのことを考えれば、そういうことがあるというふうに思います。  直接金融を発展させるためには、やはり株主に対していい環境の投資環境がなければならないということでございますから、そういう環境を作るということでございますけれども、繰り返して申し上げますけれども、短期間にそれをするというのは極めて大変な副作用が伴うということでございますので、それを最小にするということは私は大切な公益の目的であるというふうに考えているところでございます。
  27. 大門実紀史

    大門実紀史君 この法案のそもそも、今回じゃなくて、この法案のそもそもの目的にはそんなこと書いてないと思いますけれども。違うんじゃないですか、そうしたら。
  28. 熊代昭彦

    衆議院議員熊代昭彦君) お断り申し上げたとおり、大きなパースペクティブで考えればということでございますから、法案は大きなパースペクティブで趣旨を書いているわけではないと。法案はもう少し狭い直接の目的ということで趣旨を書いているところでございますので、矛盾するものではないというふうに考えています。
  29. 大門実紀史

    大門実紀史君 要するに、おっしゃってきたのは、前回も改正して、使い勝手が悪いと。竹中大臣も何度も答えられておられますけれども、使い勝手が悪いから今度改正するんだと。非常にはっきりしているわけですね。  だれが使い勝手が悪いのか。銀行ですよね。だから、これ銀行のために改正って、だから私ははっきりおっしゃったらいいと思うんですよ。そんな公益性とかなんとかいろんなこと言わないで、これは銀行がこのままじゃ使えないんだと、だから改正するんだと堂々とおっしゃればいいと思うんですよ。何でその公益性とか直接金融とか訳の分からない話になるんですか。
  30. 熊代昭彦

    衆議院議員熊代昭彦君) 私ども考えますのに、例えば銀行、例えばほかの団体ですね、一団体のためにいいから法律ができると、そしてそれを作成して通すということではないだろうと思うんですね。それは、確かにそれは団体の要望もございましょうが、それはやはり大きなパースペクティブから見て公益に合致しているということがなければ法律として成立しないものであろうというふうに考えているわけでございまして、そういうことでございますので、そういう趣旨、大きなパースペクティブでの公益というのを御説明申し上げたところでございます。
  31. 大門実紀史

    大門実紀史君 その大きな何とかはいいんですよ。私が申し上げているのは、ずっと答弁されてきたのを踏まえてお聞きしているんです、もう最後ですから。銀行の要望を聞いたんだろうとかそんなことを言っているわけじゃないんです。  皆さん、与党のチームの皆さんが判断されたかも分からないけれども、あくまで銀行が使いやすくしてあげるように、要望があったかとかどうとか、銀行に言われてやったとか、そういうことを言っているんじゃないんです。皆さんの判断として銀行が使い勝手が悪いと、だろうと、だからこれを拠出金をなくすというふうに皆さんが判断されたんでしょうと。だから、銀行が使いやすくするようにということなんでしょうということを確認のためにお聞きしているだけなんですよ。
  32. 熊代昭彦

    衆議院議員熊代昭彦君) 何度も同じ質問でございますから同じことを答えざるを得ないんですけれども、銀行の使い勝手ということは、要するに、市場に急激に株式を放出しないで、それは大変なディスターバンスになりますので、銀行だけではなくて株を持っている人すべてに影響が及びますし、日本経済全般についても大変な影響が及ぶわけですね。  それを避けてこの株式買取り機構があるわけでございますから、その本来の株式買取り機構が機能を発揮する状況を作るということは、銀行も確かに株式買取り機構に売りやすいと。しかし、そのことによって全般の市場の安定も図られるし公益の実現もできるということでございまして、それがなければ、銀行のためだけに我々はやるということはございません。
  33. 大門実紀史

    大門実紀史君 ですから、最初の質問に戻るわけですけれどもね。だから、その国民の公益性って何ですかとお聞きしたら、直接金融とこれもまた話が広がるから戻して言っているだけのことで、これはもう衆議院でも指摘されていますけれども、そんな国民全体にかかわりませんよ。そんなに、全体がこれがなかったら困るとか、八%取って銀行が売りやすくなったら国民が助かるとか、たとえ株を持っている人たちにとっても、そんなふうにだれも思っていませんよ。そんなことはもう御承知の上でおっしゃっているんだと思います。  もう一つは、竹中大臣にちょっとお聞きしたいんですけれども、私、前にも申し上げましたけれども、どうなんですか、こういう、何か私、市場経済かなと本当に思う。何でこう、要するに、何度も竹中大臣には申し上げているけれども、今の経済政策でこういうふうに株価が下がり、デフレが進みと。だからといって、何でこうやって国民負担のリスクを増やすような形を取ってまで株を買ってあげようとか何をしてあげようとか、こういう本当に護送船団的な、恥ずかしいと思いませんか、こんなの。こんなこと日本がいまだやっていて、だれもこんなの、これ、世界から見たら笑われますよ、本当に。国民負担のリスクを増やして株をまたもっと買い取りやすくしてやろうなんてね。全体として、これまともなことが進んでいるとお思いですか。
  34. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) 冒頭、大門委員が筋悪の政策である、前回の生保も含めて、そういうパッチワーク的な政策を並べることが筋悪の政策であるというような言い方をされました。今の御質問、正にそうではないかという御指摘なんですが、私は、こういった政策が結局筋悪のものになるかどうかは、その根本になっているより大きな政策目標に向かってどの程度我々が成果を挙げられるかどうかということで決まってくるというふうに思います。  例えば、これペイオフの延期も同じであります。ペイオフの延期というのは、これは市場原理からいうとペイオフ延期はしない方がいい。しかし、より大きな政策目標である不良債権の処理、それを混乱なく行う、正にその過渡期の緩和措置をどのように評価するかという問題だと私は思います。  これは、例えば銀行が株式保有をしていることによってそれが、前回申し上げたように非常に融資が、景気のいいときは融資は思い切り増やす、景気の悪いときは融資を思い切り圧縮するというプロシクリカルな動きをしてしまっている、これをやはりきちっとなくさせようではないか。そのときに一つ考え方は、じゃ、株を制限しろと。それによって株が売りに出されて株価下がるかもしれない、下がってもいいじゃないか、下がってもいい、株価はゼロになることはないから、どこか下がったら必ずどこかで上がり出すから、それをほっておいたらいいじゃないか。これはこれで一つの市場経済に対する考え方だと私は思います。  しかし、現実には、市場の調整機能というのはそんな一〇〇%完全ではなくて、そういうことになると、株が下がると更に下がるのではないかというような憶測を呼んで、市場が非常に乱高下してしまう可能性がある。そうした場合に、正にセーフティーネットとしてその受皿を用意しておくというのは、これは激変緩和措置としては、私はやっぱり現実にはあり得るのだと思います。  その場合に、その激変緩和の措置だけが独り歩きをして、銀行から株を買ってあげます、しかし結果的には、その銀行の本来の融資の健全化が進まないという状況下でそれだけが進んだら、これはやはり筋悪の政策というふうに後々評価を受けるかもしれません。  我々はしかしそうは考えておりません。不良債権をしっかり減らす、銀行融資機能をしっかりと立て直していく、自律できる金融にする、その激変緩和措置としてこういうものを位置付けなければいけないということだと思います。
  35. 大門実紀史

    大門実紀史君 もう何度もそういう議論をしていますが、私は、激変緩和とか何かじゃなくて、いわゆる竹中政策、竹中プランでやってきたことの後始末処理、マッチポンプ。そもそも、自ら株価を落とすようなことをやっておいて、どうしようもないからこの受皿を作っているという、何かそういうものだと思いますよ、本当に。だから、わざわざ収入を減らしてまで大臣お続けにならないで、本当に決断された方が私は本当に日本経済のためだと思うんですけれども、それはもう再三申し上げていますけれども。  法案の方に戻りますけれども、要するに、今まで衆参でいろんな議論、議事録読みましたけれども、答弁はそれなりにさっき言われた抽象的なことも含めてもっともらしいことを言われていますけれども、要するにああ言えばこう言うような話で、本当にああ言えばこう言うような話で、何か審議時間さえ過ぎればいいのかと思っているのか、本当にその辺、こういう法案というのは必ず評価されますから、国民銀行、生命保険会社と国民、これは必ずしっぺ返し食うと思いますけれども、問題点として既に指摘されているのは、簡単に言えば国民負担の最小化の方策として八%の拠出金を設けたと。今度は使い勝手が悪いから簡単になくしてしまう、銀行が使い勝手悪いからなくしてしまうと。  前回のときかなり議論になりまして、私も質問しましたけれども、特別勘定よりも一般勘定がメーンなんだということを言われてきたのが、何のこっちゃない、政府保証が付く特別勘定ばかりですよ。これも、あのときの答弁、柳澤さんのときからですけれども、全然違うと。そもそも銀行保有株制限のためにと言っていたのが、先ほどもう直接金融の話まで広がったわけですね。いつの間にか銀行の持っている株なら何でも買ってあげた方がいいみたいな話になってきていますよね。  だから、もう一個一個、この法案に関していえば最初からそうですけれども、言ってきたことがころころ答弁が変わってきている。ずっともう朝令暮改ですよね。もうなし崩し的にどんどんどんどん外していって、ただ買い取りやすくしてやっているだけのことで、最初からそんなことをねらっていたんじゃないかということを指摘してきましたけれども、全くそのとおりに今なってきているわけです。  私、看過できないのは、やっぱり国民負担の生じるリスクの問題ですけれども、熊代議員はこういうことをおっしゃっていますね、繰り返し。皆さんは心配するけれども、株は上がるかもしれないんだ、むしろ利益が出るかもしれないと。そういうふうに何かこう、大丈夫なんだ、心配する必要がないんだという答弁を何度もされていますけれども、私は発議者のこの答弁というのは大臣の答弁に匹敵すると思っているんですね、こういう議員立法の提案ですから。これ熊代議員、後々責任持たれますか。あなたのその答弁で大丈夫なんだというのを振りまいているわけですよ、そんな心配ありませんよ、もうかる可能性だってあるんですよと。責任持たれますか、後々この。ずっとこの発言をされてきましたけれども。
  36. 熊代昭彦

    衆議院議員熊代昭彦君) 私は、繰り返し答弁申し上げたことは、これは確かにリスクはありますと、リスクはありますけれども、それに見合う公益のためならば政府はリスクを取らなければならない。  しかし、単にリスクを取るということではなくてリスクを最小限にしなければならないということでございまして、同じ株で同じ収益の株が非常に低いときに買えば、それは上がる確率もあるでありましょうということでありますから、このシステムは、八%を拠出し、上がれば元々拠出した人に、もし利益が上がれば倍の一六%まではお返ししましょうというシステムでもございます。  そういうことも含めまして、八%のリスク担保を外すときには、やはり期間を長くして、いいタイミングでそのリスクを最小にして税金の無駄遣いができないような体制にすると、そういうことで出したんだということでありますから、公益のためにはリスクは取らなければならない、それはしかし必要最小限、最小限のリスクにするという工夫で法律を出したということを申し上げたかったわけであります。
  37. 大門実紀史

    大門実紀史君 私申し上げたのはそういうことではありません。議事録、御自分の議事録、会議録をお読みになれば、度々、熊代議員は、心配する必要はないんだ、もうかるかもしれないんだと。我が党だけじゃありません、民主党の議員に対しても、あなたたち心配し過ぎだみたいなことを繰り返し衆参でおっしゃっておりますので、そういう発言は初めてですから、今までこの法案の審議の中で。心配することない、大丈夫だと、そんなこと言われているのは初めてですので、責任持たれますかということを申し上げているんですが、責任持たれますかということを申し上げているんですよ。
  38. 熊代昭彦

    衆議院議員熊代昭彦君) 同じ御質問でございますので同じことを繰り返す以外にないんですけれども、要するに、我々はリスクゼロだとは思っておりません、リスクはゼロだとは思っておりません。しかし、リスク、公益のためにはリスクは取らなければいけないんだと、しかもそれを最小限にするわけでありますから、悲観的に見れば必ず損失が出るということでございましょうけれども、これは損失の可能性だけではなくて利益の出る可能性もあると、そういう法律の構成になっているということを申し上げたわけでございます。
  39. 大門実紀史

    大門実紀史君 じゃ、最後にお聞きしますけれども、そういうことでしたら、今回拠出金なくしてしまうと、仮に銀行が株を機構に売ってさっぱりした、銀行の経営も改善していったと、ところが機構に売られた株はその後値下がりをしたと、で、国民負担が生じる事態になった場合、その時点で私は、当然銀行にその損失を、今回は八%、これは採決されるんでしょうから、なくしたとしても、損失が出た時点で、出た時点で改めて銀行に負担を求めるのは当然のことになると思いますが、その辺は発議者はどうお考えですか。
  40. 熊代昭彦

    衆議院議員熊代昭彦君) この法律仕組みに従って、法律の定めるところに従って銀行の責任を求めるのが法の支配でございますから、法律は、繰り返し申し上げましたように、拠出金百七億円ですか、それから七%の売却時の拠出金と、いや八%ですね、八%の拠出金ということで、その範囲では銀行が責任を持つと。しかし、利益が出た場合には、その倍、一八%までは銀行に返すと。その先は、その先は、国が債務保証をしておりますので、その債務保証を履行しなければならないとなれば責任を持つと、そこのリスクは国が取っていますと、こういうシステムでありますから、万一の話で、全体としてリスクを国が最後に取らないといけないというときに、銀行に求めるものではないという、それが法律の趣旨でございます。
  41. 大門実紀史

    大門実紀史君 私、それじゃおかしいんじゃないですかと申し上げているんですよ。国の政府保証は結局国民負担につながるわけでしょう。今回あなた方は、そういう心配少ないということで八%を取って、期間延長すればそういうリスクは少なくなったんだと、そういうことで自信を持って提案されてきているわけだから、何度も答弁されてきているわけですから、確定したときですよ、損失が、国民負担が。政府保証を出さなきゃいけないとなったときには、当然振り返って、そのとき銀行はさっぱりして経営良くなっているわけだから、国として銀行業界にそのときに負担を求めるのは当然じゃないですか、考え方として。  この法案はそもそもそういうことで始まったんですから、最小限の銀行の負担を求めようと。あなた方が取っ払う提案をされているわけだから、大丈夫だとおっしゃっているわけだから、損失が確定したときぐらい、当然でしょう、改めて銀行に負担を求めると、そういう考え、与党として持っていますと言うぐらいは当然じゃないですか。
  42. 熊代昭彦

    衆議院議員熊代昭彦君) 一六%までのことを申し上げましたが、一六%を超えて利益が出ればこれは政府の利益になるわけでございますので、リスクもあれば、それゲインの可能性もあるというようなことですね。  罪刑法定主義ですから、共産主義の国は知りませんけれども、罪刑法定主義でありますから、法律の支配でございますので、法律で決めていただいたとおりにするのが趣旨でございますので、リスクもあり、それから利益の可能性もあるという中で、それはおっしゃるようなことを法律を超えてするということは良くないことでありますので、法律のとおりにさしていただくのが我々の趣旨でございます。
  43. 大門実紀史

    大門実紀史君 もうちょっと責任持って、これ与党のあれでしょう、PTで、与党金融政策PTで提案されているわけでしょう。与党でしょう、法案の範囲でしか何も言えないんですか。そのときぐらい国民の皆さんにちゃんと言ったらどうですか、銀行業界に負担求めていきますと、何でそれぐらいのことはっきり言えないんですか。それじゃやっぱり、これは結局、銀行の負担だけなくしてリスクだけを国民に回すと、もう明らかになってきちゃうじゃないですか。そういう考えは一切ないんだと、銀行の負担の考え、全部取っ払うんだという考えになっちゃうじゃないですか。どうしてそれぐらいのこと言えないんですか、堂々と。与党でしょう。  もうちょっと、何というか、本当にこんなこそくな当面の、当面のこそくな提案しかできないんですか、自民党は。公明党の皆さんもそうですけれども。与党でしょう、もうちょっとしっかりしたこと言えないんですか。
  44. 熊代昭彦

    衆議院議員熊代昭彦君) 法律の支配する国ですから、法律で御提案して、それを法律で、国会で御承認いただいたらばそのとおりに実施するということでございます。それを超えて実施するということは法の支配ではございません。
  45. 大門実紀史

    大門実紀史君 だから、そういう法律を、法律を出すおつもりはないんですかと。今回は取っ払うんだから、損失が確定して国民負担に明らかになるとなった場合、与党として銀行に負担を求めると、そういう法律も出すことも検討している、それぐらい考えているというぐらい言えないんですかということを申し上げているんですよ。
  46. 熊代昭彦

    衆議院議員熊代昭彦君) 我々はそういうのは正しいことだとは思っておりません。法律仕組みで、この仕組みで我々は行くということでしたわけでございますから、損の可能性も得の可能性もあるわけですから、万一損が出たら必ず、法律には書いていないけれども別の法律出すよというようなことを私どもは考えておりません。
  47. 大門実紀史

    大門実紀史君 政治家でしょう。政治家としての答弁を求めているわけですよ。お役人じゃないんでしょう、金融庁の役人じゃないわけでしょう、官僚じゃないわけでしょう。議員立法として出されたわけでしょう、政治家として責任持って。だから、政治家として、与党の責任あるそのチームのメンバーとしてそこに座っていらっしゃるわけだから、政治家として答えてくださいよ。  じゃ、全くあれですか、それじゃ全部国民負担でこれからもやっていくということを明言されるわけですか、今。
  48. 熊代昭彦

    衆議院議員熊代昭彦君) 私は、議員立法という言葉を廃絶しようと思っているわけなんですけれども。立法は全部立法府でやるわけじゃないですか。政府立法なんというのはあるんですか。(発言する者あり)いや、そういう趣旨で、我々は立法府の人間として立法府の誇りを持って議員提案でこの法律を出させていただいたわけでございまして、政府提案よりも議員提案の方が質が悪いとか、そういう質問に対しては私は極めて侮辱を感じる次第でございます。  ですから、私どもはそういう枠組みで法案を出させていただきました。それは納得できる枠組みでございましょうと、だから、この法律を御承認いただいたらばその法律のとおりやらしていただきますと、それは決して国民の利益に反するものではないと、こういうふうに考えているところでございます。
  49. 大門実紀史

    大門実紀史君 もう少し骨のある答弁が出るかと思ったんですけれども、本当に情けない。本当にこんなことで提案されて、数が多いからといってこんなことが通っていくと。この国会の状況ですね、本当に私、情けないと。野党頑張って、選挙で頑張らなきゃいけないと思いますけれども。  本当にね、しかし、本当にこういうことをまだ国民の皆さんよく知らないから、銀行のためにいずれ自分たちが負担に来るような法改正が今度出ているというのは国民の皆さんよく知らないからまだそれほど批判が広がっていないのか分かりませんけれども、これは伝わりますからね。しかも、考え方として今日明確に言われたのは、その後のことは考えていないと。政治としての最低限の責任ですよ、国民に対して。今回こういうことをお願いしたんだから、生保のときもそうですけれども、良くなった場合は還元しますと同じですよ。国民の皆さんが大事だったらそういう発想ぐらい持つべきですよ。  本当に、そういうこともなしに提案されているこの法案ですから、もうこれ以上質問する気もしないというふうに本当言いたいというふうに思います。あとは反対討論で申し上げたいと思います。  質問を終わります。
  50. 平野達男

    ○平野達男君 国会改革連絡会(自由党・無所属の会)のうちの自由党の平野達男であります。  大体問題点は今までの議論の中でほとんど整理し尽くされていると思うんですが、それでもかつ整理されていない部分も多々あるかなという気もしますので、落ち穂拾いみたいな感じの質問になるかもしれませんが、三十分いただきましたので、質問させていただきます。  まず、通告申し上げた質問とちょっと違いますけれども、順番変えますが、今回の法律で、いわゆるティア1以内、いわゆる株式の取得の保有の制限の期間を二年間延長して緩めることをやっておりますね。これは、二年前の財政金融委員会のこの席で私は柳澤大臣に質問したときに、柳澤大臣はこういう答弁しているんです。BIS規制があろうとなかろうと、こういった銀行が株の保有しているというのはリスクにさらされる可能性があるんだ、だからこういうものは早くやった方がいいんだという答弁をされておるんです。  今回の趣旨は、一番最初のその趣旨というのは、やっぱり何といっても銀行が株式を保有していることに対して問題がありますよと。だから、一定の制限を設けまして株式を市場に放出させます。それによって市場がいろいろ影響受けますから、その影響を緩和するために取得機構を作りましょうと、こういう趣旨なんですね。  ところが、一番最初の、銀行が株式を持っているリスクを早くとにかく取り除こうということに対しては、わざわざ二年間延期しちゃったんですね。これは一番最初の趣旨からいって違うんですね。これは、竹中大臣金融再生プログラムをやって、金融の健全化健全化とやってきた。資産査定だとか、それから引き当ても十分にやるとかね。市場のいろんなリスクをとにかく銀行に持たせないようにしましょうということをずっと言ってきたんですね。  だから、今回の改正の二年延長というのは、なぜこんなことをやったのか、そもそもの趣旨と全く反するんじゃないかということを、まず熊代発議人と竹中大臣にそれぞれちょっと質問したいと思います。  ちなみに私は、少なくとも、今までの流れからいけば、竹中大臣はこの二年間の延長は困ると言わないとおかしいはずなんですよ。ということなんですが、まず先にお願いします。
  51. 熊代昭彦

    衆議院議員熊代昭彦君) この法律は、極めて直接的な目的からすれば、銀行が株を持っているということでプロシクリカルな傾向があると。ですから、株の危険と銀行とを切り離したいということでございます。更に大きなパースペクティブでいえば、持ち合い株制度自体を消していこうということでございますが、最初、ティア1の範囲内にするといったときに、十五兆円オーバーしていたんですね。十五兆円オーバーしてございました。それで、十五兆円を二年八か月のうちに売りなさいと。しかし、売るということは、BIS規制がそのときにちょうど強化されますから、それまでに売ると。大変短い期間で、二千八百億じゃないんです、失礼しました、千五百億じゃないんですから、十五兆円、大変なものでございます。  私、こういう面での先進国のアメリカにこの一月行ってまいりまして、グラム・リーチ・ブライリー法を最近出されたリーチさんにお会いできまして質問したんですけれども、こういう制度を御説明しましたら、いい方向ではある、しかし物すごく期間が短いねと。これは、株式買取り機構があるといっても二兆円しか買い取らないし、売る方は十五兆円ということでありますので、そういうこともございまして、BISがあったので二年八か月ですが、BIS規制が二年延ばされたということは、確かに早く売った方がいいわけですが、みんなが早く売ることを急げば株はもう激しく下がってしまうわけですね。ですから、BIS規制が延びたということに合わせて、それだけの余裕を持たせてあげることが必要ではないかというのが我々の趣旨でございます。
  52. 柳田稔

    委員長柳田稔君) 竹中大臣はいいですか。
  53. 平野達男

    ○平野達男君 答弁の前に。  ですから、私がさきに申し上げたように、柳澤大臣BIS規制があろうがなかろうが早くやった方がいいと言ったんです。だから、そういう答弁に対して熊代発議人はどのようにお考えになりますかということと、今の答弁はBIS規制が変わったから二年間延長しましたと、こういう話ですね。  それからもう一つのあれは、リスクがあるというふうにおっしゃいましたけれども、リスクがあるからということで、失礼しました、銀行が株を保有していることのリスクは早く取った方がいいということについてはお認めになりましたね。早く売れば市場にそれだけ早く放出しなければならない。市場にいろんな影響がある。だから取得機構を作ったんじゃないですか。だから、二年間延長したということは、そうすると、今の答弁の中では、単純にBIS規制が延びたからという御理解でよろしいんですか。そういう答弁でよろしいですか。
  54. 熊代昭彦

    衆議院議員熊代昭彦君) 私が申し上げたいのは、大変いい目的のためだと。要するに、株式から銀行の経営を遮断したい、可能な限りですね。ということでありますから、ただ、市場で物を売るときに、一定期間内に大量の物を売れということは大変危険の伴うものでありますよね。ですから、早く売った方がいいに決まっていますが、みんなが早く売るのを売り急げば物すごい下がるわけですよ。それから、あの当時、正確に覚えていませんけれども、ダウ一万五千円ぐらいだったですね。それが八兆円売った段階で八千円台になりました。それから、七千円台になったということもございます。  ですから、それはやっぱり市場の実態を見ながら物事を考えなければいけないということでございます。
  55. 平野達男

    ○平野達男君 じゃ、最近の株価の下落というのは、この株式の、要するにティア1の規制を掛けたことによって市場に出たから株が下落したという、そういう分析なんですか。
  56. 熊代昭彦

    衆議院議員熊代昭彦君) 株の上下は、それはいろんな要素がございますから、国際的なものもございますからね。しかし、その八兆円を売らざるを得なかったということも一つの重要な売り圧力でございます、東証全体は二百四十兆ですからね。それは私どもは考えているところでございます。
  57. 平野達男

    ○平野達男君 そうしますと、株式取得機構は今まで何をやっていたんですか、そうすると。  株式取得機構と銀行は、株を放出するときに市場に悪影響があるときに株式取得機構に特別勘定を使って売りますという規定だったんですよ。それが働いていないということを認めるということじゃないですか。もう全然答弁がめちゃくちゃですよ、そんなものは。
  58. 熊代昭彦

    衆議院議員熊代昭彦君) 事実として二千二百億弱の購入であります。  なぜそういうことになったかというと、御承知のとおり、八%の拠出があればBIS規制からいえばそれがオフバランス化されないということですから、売る実益が銀行としてはないということですね。だから、オフバランス化されるものでなければならないだろうということでございますので、その障害を取りたいというのが私どもの考えでございます。
  59. 平野達男

    ○平野達男君 この法案を提出するときに、ティア1を超えるものは約二兆円だというふうな説明がありました。で、政府保証枠は二兆円ということで取ったんです。この間、日銀が一・五兆の株買いました、同じようなスキームで。それから、この株式取得機構も二千億買っています。一・七兆円買っているんです、もう。当初のスキームからいけば、それで買いますと、今までの説明からすると、もう計画どおり買っているという解釈も成り立つんですね。  もう一度繰り返しますけれども、質問を確認しますが、この八%あったために株式取得機構に回せなくて、それでやむを得ず市場に出したために株が下落したというふうな、こういう御説明をされるという、こういう理解でよろしいですか。
  60. 熊代昭彦

    衆議院議員熊代昭彦君) 二兆円とおっしゃったのは、よく我々は理解できないんです。私の理解するところでは、ティア1をオーバーするのは十五兆円であったというふうに考えております。  それから、これが影響あったかというと、どれだけ影響があったかは、それは分かりません、これは物理の問題じゃございませんから。しかし、かなりの程度影響はあっただろうというふうに考えているところでございます。
  61. 平野達男

    ○平野達男君 前の議論をちょっとよく精査してもらいたいんですけれども、平成十三年三月の中でティア1を超えるものは十一兆あるという話だったんです。そして、年間の今までの株式の取引量が平均で二・五兆から三兆ございますと。その差額を引きますと二兆円ですから、二兆円が政府保証枠の、その枠のあれになりますと、こういう話だったんです。  だから、十五兆円とかなんとかという話じゃないんですよ。政府保証枠はそういう考え方を取っているものだから、まあマクロ的にいえばそれ。ミクロ的にはいろいろありますよ、二兆円がこれは市場に影響を与える最大の数字なんだなと、取りあえずその当時はですね、こういうことなんです。だから、先ほど私が申し上げた、日銀が一・五兆円買っていますよと、株式取得機構が二千億買っていますよと、それでなぜそういうことが言えるんですかということだったんです。ただ、これはまずちょっと、本当ならこれをずっとずっとやりたいんですが、ちょっと時間があったらまたこれに戻るかもしれませんが。  さきに言った、最初に言った、二年間をなぜ延ばしたという答え、全然答えていませんね、もう一度お答えください。
  62. 熊代昭彦

    衆議院議員熊代昭彦君) 柳澤大臣BIS規制あるなしにかかわらずと言われましたけれども、一応BIS規制の強化に合わせたことは確かなんですよね。早く売った方がいいというのも確かだったと思いますが。しかしまた、早く売るということは、大変狭い市場になったところでそれは相当な売り圧力で下げ圧力になるということでありますから、BIS規制が延びたということで二年あと延ばせば、売るのを二年あと延ばすかどうかは分かりません、土俵が広い中で早く売った方がいいだろうということもあると思うんですよね。けれども、土俵が非常に狭い中でみんなが売り急ぐというのはなかなか大変なことだということでございます。
  63. 平野達男

    ○平野達男君 竹中大臣、どうでしょうか。
  64. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) 基本的には熊代先生言われたこととダブるような気がいたしますが、そもそも今回のスキームというのは、一方で、株価変動のリスク銀行の財務、さらにはそれに基づいて貸付けを行うわけですから、その貸付け行動を切り離したいという一つの政策目標が一方であると。しかし、これはあくまでもセーフティーネットのために行うわけでありますから、株の乱高下は防ぎたい、株式市場に与える影響は抑えたいと。これまあ二つの要因の、まあ一種のトレードオフにある関係のどこにバランスを求めるかというところに実態的な政策判断があるのだと私は思います。  最初のものをファクター一として、後のものをファクター二とすると、例えば当時柳澤大臣の下でそのファクター一というものに対してやっぱり非常に大きなウエートが置かれていたんだと思います。相対的なものですからファクター二はもちろん重要ではありましたが、今に比べれば株価はまだ高いわけでありますから、株式市場の吸収能力もあったであろう。したがって、柳澤大臣としてはこのファクター一というのを当然のことながら大変重要視するというようなことをおっしゃったんだと思います。しかし、その後株価はやはり下がりました。で、ファクター一、依然として我々にとっても重要な要因でありますけれども、先ほども少し申し上げましたけれども、セーフティーネット等々、以前に比べたらその貸付けの変動に対する対応策も重要視されている。となると、我々としてはやはり当然のことながら実態判断、政策判断としては、まあ数年前に比べるとファクター一も重要だけどファクター二を相対的に重要視しなければいけない、これは当然のことながらそういう状況になっているんだと思います。そこにBISの、このBISの規制というのは御承知のようにリスク評価が、株式に対するリスク評価がひょっとしたら更に高まるかもしれないという要因が働いてきているわけでありますから、このリスク二に今までよりは軸足を置いたような形で実態判断をせざるを得ない、私はそのように思っております。
  65. 平野達男

    ○平野達男君 ファクター一とかファクター二とかよく分からなかったんですが、逆に、その当時の株価の状況をおっしゃるんであれば、今、株価はちょっと上昇基調にあるわけですよね。じゃそれはどういうふうに評価されるのかという問題が一つ出てくるかと思います。  それから、熊代発議人のお話を聞いていますと、問題は二つあって、八%という問題と、短期間に大量に出すということが問題だと、こういう二つで、だから延長したんだと、こういうことですね。ということですよね。  後者の問題であれば、八%の問題であれば、今回八%削りますよと、いいか悪いかは別として、これは提出されていると。前者の問題は最初からあったんですよね、これは。どうやって株の状況というのを、株式の、何というんですか、市場に影響があるときにどうやって判断するかというのは随分議論しました。だから、期間は延長するということではなくて、少なくとも株式取得機構がきちっと作用している、その作用していない原因が八%だというだけであったら、今の説明だったら八%だけ取っ払えばいいんですよ。  で、私はこだわりたいのは、リスクは早くできるだけ取り除こうということで出発していますから、これを取っ払ったというのは、私はこれは大きな間違いだと思いますよ。しかも、前の法律は猶予期間を設けて、二年間、大変なところは銀行さん手挙げてくださいと、救済措置をやりますよという、これ猶予期間を設けていますね。だけれども、金融庁の説明になりますと、猶予期間設けて、要するに、うちの銀行はティア1以上の株式をもうちょっと期間長く持ちたいという銀行一つもなかったというんですよ。何でわざわざこれでなおかつ二年間延長したんだと、こういう疑問が物すごいよく分かります。  繰り返しますけれども、私は、これは金融再生プログラムの流れからいきますと全く逆行していると思いますよ。  で、ちょっと時間をこれだけで半分過ごしてしまいましたので、次の質問に移りますけれども、持ち合い株の解消につきまして、前回の改正の中で二分の一の制限を設けて、かつ八%枠を設けないということの議員提案でこれ改正がなされました。これは私、何でこんなことをやるんですかということを盛んに質問しまして、二分の一の数字自体意味ないじゃないかと言ったら、これは腰だめでやった話だから、それじゃ腰だめじゃなくて腰砕けじゃないかというふうに言ったことを覚えております。  それで、問題は、この持ち合い株の解消なんですが、日銀は一・五兆円もう買っているんですよね、銀行から。銀行から買っているときに、銀行から事法株買っているんですが、売られた事業法人は持ち合い株どうしたかといったら、受皿何もなくて、多分これきちっと処理しているんだろうと思うんですね。で、日銀が一・五兆を買ったときの持ち合い株というのがどういうふうに処理されたかというのは、これ検証されましたか。  熊代さん。発議人です。
  66. 熊代昭彦

    衆議院議員熊代昭彦君) 私どもはそれを、日銀の買われた株について、その相手の企業がどのようになったかということについては、私どもとしては調べておりません。むしろ金融庁ないしは日銀の所管だというふうに思います。
  67. 平野達男

    ○平野達男君 調べていないということは、金融庁にも多分聞いていないということでしょう。そうしますと、二分の一を何で制限を取ったんですか。何か問題があったから取ったんじゃないですか。
  68. 上田勇

    衆議院議員(上田勇君) 今回の改正でこの上限であります二分の一をなぜ取り除いたかということでございますけれども、今回の改正の理由というのは、この持ち合い解消を行うに当たって金融機関から売却をされるものについてですね……
  69. 平野達男

    ○平野達男君 いいです、済みません。答弁途中ですが時間がもったいないですから。
  70. 上田勇

    衆議院議員(上田勇君) あと、よろしいですか。
  71. 平野達男

    ○平野達男君 途中で遮って申し訳ないですけれども、時間がもったいないですから。  それじゃ金融庁は、日銀が一・五兆を買ったときのその持ち合い株、どういうふうになったかというのは、何か問題がありましたか、市場で、持ち合い株の解消ということで。  当時は、相沢委員からこういう質問あったんです。銀行から事法株買うときに、事法株がもうやっぱり持ち合い株としての株を放出しなくちゃならないんだと、そうしないと事法株を買うにもいろいろ支障が生じると、だから受皿を取るんですよと言ったんです。当時私はそのとき、そんなこと言ったって日銀はもうそんな受皿がなくたって買うと言っているじゃないですかといったら、わけの分からぬ答弁返ってきまして、もうそれで時間切れになっちゃったんですね。  今回も、何かよく分からぬですけれども、二分の一を要するに、腰だめか何か知りませんけれども、外してしまって同額程度にやっちゃっているんですが、そもそもこれは、本当に必要なのかどうか、これがなければ何か問題があるかどうかというその検証がされているのかどうかということなんです。
  72. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) ちょっと理屈からいいますと、日銀がどの株を買っているかというのは分かりません。したがって、どの株を買っているか、そうするとその相手方の株が何であるかということも分かりようがありません。したがって、その株ないしはその株価において何が起こったかということは私たちとしても実は調べようがありません。それが実態でございます。
  73. 平野達男

    ○平野達男君 まあいずれ日銀は、これ当初の二兆から三兆に枠膨らまして、持ち合い株の受皿というのは何にもないといってやっているんですよ。それに対して日銀さん、おかしいと言いましたか、そしたら。多分言ってないですね。  いずれにせよ、一つのこれ、多少の中身が違いますが、同じ銀行保有株を買うについても、今回八%の拠出がなくなりますが、その持ち合い株に関しては全く、片っ方は受皿がある、片っ方は受皿がないと。どっちが本当かいなという疑問は強くあります。  しかも、前回、持ち合い株の何で二分の一を制限を設けたんですかと聞いたら、いや、これは国民の負担をちょっと少なくしたいんですと言ったんですよ。今回は負担を薄くするどころじゃない。これは役に立つか役に立たないかは別として、八%の拠出をまず取っ払ってしまった。取っ払ってしまうと、理屈上は株式取得機構に一杯株が入ってきますね。そうすると持ち合い株の枠もぐっと広がるんですよ。そうすると、枠を取っ払って、それからなおかつ八%のやつ、拠出金を取っ払っていますから、国民負担を減らすどころじゃない、ダブルで要するに国民負担が増加する方向になっているんですよ。  どこで方針転換起こりました、この方針転換。熊代発議議員で。質問の意味分かるでしょうか。
  74. 熊代昭彦

    衆議院議員熊代昭彦君) 従来の、御承知のとおり、二分の一を限度として買取りをすることができるというふうにしているときも、事業法人からの拠出金はなかったというのは御承知のとおりだと思います。それで、今度は量が増えるからリスクが増えるだろうと、こういう御指摘だというふうに思いますが、確かにリスクはあります。リスクはあるけれども、このリスクを公益の観点から取ろうではないかと。しかし、そのリスクを最小限にするために、機構が株式を全部売って機構が解散する、そういう期間を五年間延ばしたということで、十分それを補うだけのチャンスがあるのではないかということで、法案を出させていただいたわけです。
  75. 平野達男

    ○平野達男君 ちょっと答弁になっているようななっていないようなあれなんですが、いずれにせよ、今回は、前回はやっぱり持ち合い株を買うということに対してはリスクがありますという前提で、国民の負担を少なくしたいから二分の一にするんですという答弁だったんですよ。今回は、いや、リスクはございませんと、リスクを最小限にするというような、ああ、ごめんなさい、リスクをとにかく最小限の方向にするという、まあそういう説明なんですけれどもね。  私が今言いたかったのは、先ほど言いましたように、今回、八%枠を撤去しますね。そうすると、繰り返しますけれども、取得機構に対する銀行株、一応量が増えてくる。それの見合いで持ち合い株の量も増えてくるという意味においては、ダブルの要するにリスクというか、国民負担を増やす方向に、ベクトルに動きますねということをちょっと指摘したかったと、こういうことです。  それから、まだまだ何点かあったんですが、最後にちょっと金融庁にお伺いしますけれども、先ほど言いましたように、当時の説明は、国の保証枠二兆円というのを設定していまして、二兆円のバックにつきましては、ティア1を超えるやつが十一兆、それで三年間で今までのペースで株式が大体九兆円ぐらいはけるでしょうから、二兆円の部分がオーバーですよということで、政府保証枠二兆円と設定しました。  今回、二年間延長しました。それからかつ、日銀がもう一・五兆の株買っています。政府保証枠は今の段階でどれだけあればいいというふうに考えますか。これ、簡単な数字だけでいいです。
  76. 伊藤達也

    ○副大臣(伊藤達也君) 現在、十五年三月期の主要行のティア1超過の株式保有額が二・八兆円となっておりまして、先生御指摘のとおり、機構が買取り枠、株式の買取り枠が二兆円、日銀が三兆円買取り枠があるわけでありまして、そこから今までの買取り額を除いた額は、現在、機構で一兆七千八百億円程度、そして日銀で一兆四千九百円程度となっているわけでございます。  機構においては、事業法人保有銀行株の買取りの可能性というものを考えますと、両者に対する売却ニーズは引き続き存在するというふうに考えておりますので、機構が株式保有制限の円滑な達成のためのセーフティーネットであるということをかんがみますと、この借入限度額を変更する必要はないんではないかというふうに考えております。
  77. 平野達男

    ○平野達男君 それは、借入限度枠を変更する必要がないというのは全くそのとおりで、でっかい枠を取ったので。これは枠なんですよね。そうじゃなくて、今の考え方でいけば政府保証枠というのは実際にどれだけ必要ですかということなんでしょうが、ということをお聞きしたかったんです。  しかし、なかなかこれ数字は出せないでしょうね。しかし、あえてもう一度お聞きします。
  78. 伊藤達也

    ○副大臣(伊藤達也君) 繰り返しで大変恐縮なんですが、私どもとしては、先ほど御答弁をさせていただいたように、セーフティーネットにかんがみてこの機構の目的があるわけでありますから、株式買取りのための買取り枠、借入れの限度額を変更する必要はないというふうに考えております。
  79. 平野達男

    ○平野達男君 先ほど言いましたように、お答えありましたように、今の段階でティア1を超えるのが約三兆円、二・八兆円ですね。この数字からいくと、前の閣法の提出時の考え方からいきますと政府保証が要らないということになっちゃうんです、その考え方からいきますとね。つまり、それだけ取得機構の果たす役割の余地というのはずっと小さくなっているはずなんです。したがって、今回の改正でもっても理屈上は、理屈上はですよ、株式ががばっと上がれば別ですけれども、株式取得機構が買い入れる株というのはよっぽどのものがないと量は増えないはずです。これは理屈上からそうなっちゃうんです。まずこれを一つちょっと申し上げておきたいと思います。  時間になりましたから、ちょっと最後の質問になるかどうかは分かりませんが、先ほど大門先生がいみじくも大体きちっと言われたと思うんですが、今までの銀行等株式等保有の制限に関する法律につきましては、提出時から今日までの経緯を見ますと、非常にもうジグザグジグザグして何が方針かもよく分からない。  まず、一番最初の法案の提出、これいろいろ議論ありました。その後、日銀が銀行保有株を買うと決定した。ところが、八%拠出金も何もない。これは前にも申し述べましたけれども、閣法のときは八%の拠出と決めたわけですね。ということは、私がこの議論で言ったのは、政府が株の変動リスクを八%以上は引き受けないというのを決めたにもかかわらず、日銀が早々と取っ払ってしまったので、財務大臣、何も言わなかったんですかと言ったら、いや、日銀は日銀でございますからという答弁だったんです。そうしたら、すぐ後、今度は議員提案でこの改正が出てきた。その改正は何かというと、今度は持ち合い株については八%要りませんと言ったんですね。で、この議論で言ったのは、この場の議論で言ったのは、持ち合い株の解消なんというのは強制力も何も掛けていないじゃないですかと、片っ方で強制力を掛けているやつに八%の拠出金を取って、片っ方のやつに何で取らないんですかと言ったら、これに対する答弁は余りほとんどなかったんですよ、きっちりした答弁は。そして今回、その八%の拠出については、今度は取っ払います、しかも二年間の期間延長をしますと。翻って考えますと、今までの議論というのは本当に一体何だったんだろうかと。  私がまず第一に言いたいのは、これは銀行リスクをとにかく早く取るんですということ、耳にずっとこびり付いているんです。それが一体どこへ行っちゃったんだと。早く取るために、市場に相当の影響があるから、だから株式取得機構を設置するんですと。そして、その中でいろいろと市場の動向を勘案しながら買い取るんですという、こういう説明だったんです、ずっと。それが今、今日、今の説明で全部吹っ飛んじゃっている。それから、今までのこの経緯ですよね。政府と日銀という、一体ということを言っていますけれども、政府と日銀との今回の一体性についても、この株式の取得については全然一体性が確保されていなくて、結果的にぐるぐるぐるぐるっとめぐってきたのは、最終的には八%の拠出金なし、それで日銀のシステムはそのまま残します、株式取得機構もそのまま残しますと、これだけなんですね。  竹中大臣にお伺いしますけれども、こういった法案の提出の仕方、それから成立の仕方、竹中大臣、これ趣味に合いますか。
  80. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) こういう実務に根差したというか、実利に根差した政策というのは、やはりその時々で微調整、微修正を必要なものというのはやはりどうしても出てくるんだと思います。特に、この数年間、二年間ぐらいの銀行の財務内容の変化、銀行貸出しの変化、さらには株式市場の変化、これやはり予想を上回る大きなものがあったということ、これがやはりそれに応じて微調整をせざるを得なくなった一つの大きな要因であるというふうに思っております。そこに日本銀行という別のプレーヤーが絡んでくるというのがこの件、本件であろうかと思います。  この点についてはいろんな御評価があるかと思いますけれども、我々としてはこの株式、銀行の持ち株保有制限、ティア1の実現まであと二・八兆円という最終段階に来ているということもあって、ここはやはり、日本銀行独自の考え方は考え方として尊重して、協力する形でともに役割を果たして、当初の保有制限の目的を果たしたいというふうに思っております。  同時に、先ほどからいろいろ御議論いただいてくる中で、株式市場の状況も良くなっているじゃないかというようなお話もございましたが、実はなぜこういったセーフティーネット、激変緩和を考えなけりゃいけないかというと、株価形成そのものが、残念ながらそんなに理論的に、理論価値をすぐに実現してくれるわけではなくて、短期の需給に非常に影響されると。そういった観点からいいますと、株価は確かに持ち直しているというのは一つの良いサインではありますが、一方で、当初十分に考慮に入れられていなかった需給要因、これは公的年金の代行返上でありますけれども、これが実は予想より大きいというような要因も私たちはやはり考慮しなければいけないんだと思います。  株価が上昇している中でも、実はプレーヤー別に見ますと、信託銀行がやはり大幅に売り越している、その大きな要因が代行返上であるというふうに関係者の間では言われている。そういった点も考えて、ここはやはりきめ細かく実利的な判断をせざるを得ないんだというふうに思っております。
  81. 平野達男

    ○平野達男君 当初に比べて株価の下落リスク、いわゆる蓋然性を全然見通せなかったということで、当初に比べて随分株価も落ちたので、それに弾力的に対応したという、こういう御説明だったかと思います。  私も、前にこの委員会で言いましたけれども、私は、長所粘り強い、短所しつこいで、表裏一体なんですね。弾力的に見直すというのは、もう要するに、原理原則がない、場当たり的というのはセットですから。今回のこの銀行等株式等保有制限等に関する一連のこの法律の審議、それからいろんな政府・与党の対応というのは、正に本当に場当たり的な対応の典型じゃないかというふうに申し上げて、時間になりましたので、私の質問を終わります。     ─────────────
  82. 柳田稔

    委員長柳田稔君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、西田吉宏君が委員辞任され、その補欠として加治屋義人君が選任されました。     ─────────────
  83. 柳田稔

    委員長柳田稔君) 他に御発言もないようですから、両案に対する質疑は終局したものと認めます。  まず、銀行等株式等保有制限等に関する法律の一部を改正する法律案について、討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  84. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 ただいま議題となりました銀行等株式等保有制限等に関する法律の一部を改正する法律案について、反対の立場で討論をいたします。  一昨年十一月、我が党の強い反対にもかかわらず、銀行等の株式保有等の制限に関する法律が成立いたしました。にもかかわらず、一年半の間に、今回で二度目の改正提出となります。この事実だけ取っても、本法律がいかに筋の悪いもの、先ほども共産党の大門委員ございましたけれども、極めていかに筋の悪いものであるということが分かるだろうと思います。  以下、本法律案に反対する理由を具体的に述べたいと思います。  第一番目に、立法の趣旨が完全な論理矛盾に陥っているということであります。金融システムから価格変動リスクを遮断するための株式保有制限という当初の立法趣旨からいえば、実施時期を延期するのではなく、むしろ前倒しすべきであります。結局、本当の目的は公的資金投入による株価対策であるということが明らかになったのではないだろうか、私どもはそのように考えます。  第二点に、銀行等保有株式取得機構の存在意義がもう既に失われているんではないかということであります。株式保有制限を課すことによる短期間の大量の売り圧力を吸収することが銀行等保有株式取得機構の設立目的でありましたけれども、株式保有制限を延期するのであれば、短期間の大量の売り圧力はなくなります。さらに、ティア1を超過する株式は、この二〇〇三年三月末時点で約三・五兆円まで減少しております。機構の存在意義はもはやありません。  第三番目に、売却時拠出金を廃止することは、国民負担最小原則を放棄するに等しいわけでありまして、八%の売却拠出金は、国民負担最小の原則に基づいて、機構に損失が発生した場合のバッファーというふうに設けられたものでありました。これを廃止することは国民負担最小の原則を放棄するものである、このことを指摘せざるを得ません。  それから第四に、事業法人からの買取り額の増額も、これまた国民負担最小原則を放棄するに等しいんじゃないかということであります。事業法人から買取り額を銀行からの買取り額の二分の一以下というふうにした理由というのは、第一に、事業法人には売却時拠出金が課されないということから、将来の価格下落による国民負担を小さくする、また第二に、銀行保有する事業法人株と事業法人が保有する銀行株の割合が十対四であるということでありました。したがって、買取り額を増額することは、銀行と事業法人の持ち合い状況から説明が付かないばかりでなく、国民負担最小原則を放棄するものになるんではないかということを指摘せざるを得ません。  これまでも指摘したように、本法律銀行救済のための国家的飛ばしであるということを指摘せざるを得ませんし、株式市場をゆがめ、巨額の国民負担をもたらしかねないと。このようなPKO的政策にはもういい加減に終止符を打つべきであるということを強く申し上げたいと思います。  さらに、一言やはり苦言を呈したいと思っているわけであります。それは、議員立法の在り方の問題であります。先ほど大門議員からも発言がございましたけれども、一般的に言って、議員立法はもう増えることは私どもも大変良いことだというふうに思っているわけであります。しかし、与党側だけが、十分なパブリックコメントもなくて、いささか表現は悪いのでありますけれども、国民全体の利益、先ほども国益なんという言葉が出ておりましたけれども、そういう国民全体の利益よりも一部の狭い既得権を擁護するだけの法案を力ずくで通すということについては、これは私どもはよろしくないということを申し上げたいと思うわけであります。特に今回のものは、銀行を中心にした一部業界の利益を優先するということが余りにもはっきりしておりまして、国民の税負担の増大ということを招くという点で大変問題が多いということを指摘せざるを得ません。  その点、議会の在り方について警鐘も乱打をし、我々は反対であるということを申し上げて、私の討論を終わりたいと思います。
  85. 大門実紀史

    大門実紀史君 本法案に反対の討論を行います。  峰崎先生からございましたので、結論だけ簡潔に申し上げたいと思います。  そもそも本法律に、銀行に八%の売却時拠出金を義務付けたのは、銀行に最小限の自己責任を求めるためでございました。今回の改正は、要するに銀行が使いづらいからといって売却時拠出金を廃止し、代わりに国民の負担のリスクを高めるものにほかならないというふうに思います。  小泉内閣の経済失政で招いたデフレの深刻化、あるいは株価の低迷の結果生じた銀行保有株の含み損を国民負担に回す、何がどうなればこういう発想になるのか私は信じられませんが、こんな理不尽な法改正は認めるわけにはいきません。  以上の理由から、断固反対し、私の討論を終わります。
  86. 平野達男

    ○平野達男君 私は、本法案に対し、反対の立場から討論します。  以下、反対の理由を述べます。  反対の理由は、そもそも株式取得機構の必要性がなくなってきていることであります。株式取得機構の設立目的は、法第五条で規定されているとおり、銀行等保有する株式に制限を掛けることに伴って、銀行等が株式を放出し、市場に与える影響を緩和することにあります。  しかしながら、日銀による銀行保有株式の買取り、株式取得機構による買取りなどもあって、ティア1を超える株式は約三兆円に減少しています。日銀は一兆円を超える買取り枠を残している一方、これまで主要行は年間約三兆円程度の株を市場に売却してきた実績を踏まえれば、株式取得機構に売却しなければならない必要性はなくなっています。  また、前回の法改正で、持ち合い株の解消を目的とした、事業法人が保有する銀行株の買取りが認められ、今改正では、その株式買入れの量的制限を緩和することとしています。しかし、一方で、日銀は既に独自に一・五兆円以上の銀行保有する株式の買入れを行っていますが、持ち合い株の売買の受皿がないにもかかわらず、問題が生じた話を全く聞きません。  そもそも持ち合い株解消のための受皿など必要なかったことを示しており、改正案は必要のないものに必要のない改正をすることになり、お疲れさまと言うしかありません。  さらに、株式保有の制限は、銀行が株式を保有することに伴う株価変動リスクを少なくすることを主眼として設定されたものであり、である以上、できるだけ早く株式の放出を促すべきです。また、そのための受皿として株式取得機構が設立されたはずです。  今回の改正では、わざわざ保有制限の期間を二年間延長しようとしていますが、これは当初の法制定の意図と全く反するものであるし、金融健全化とも逆行するものです。金融再生プログラムなるものを作った竹中大臣がこれに異議を唱えなかったのは不思議としか言いようがありません。  最後に、法律制定から前回の改正、今回の改正案に至るまでの経過を総括すると、政府・与党は理念なき場当たり的法制定と法改正を行ってきたと言わざるを得ません。  株式保有制限と取得機構設立のそもそもの目的を確認していただくとともに、株式買取りに関する日銀との役割調整を行って、一貫した方針の下、政府・日銀が一体となって取り組むことが必要であると申し上げて、私の反対討論といたします。
  87. 柳田稔

    委員長柳田稔君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。  これより採決に入ります。  銀行等株式等保有制限等に関する法律の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  88. 柳田稔

    委員長柳田稔君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  次に、貸金業規制等に関する法律及び出資受入れ預り金及び金利等取締りに関する法律の一部を改正する法律案について討論に入ります。──別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  貸金業規制等に関する法律及び出資受入れ預り金及び金利等取締りに関する法律の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  89. 柳田稔

    委員長柳田稔君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  この際、円君から発言を求められておりますので、これを許します。円より子君。
  90. 円より子

    ○円より子君 私は、ただいま可決されました貸金業規制等に関する法律及び出資受入れ預り金及び金利等取締りに関する法律の一部を改正する法律案に対し、自由民主党・保守新党、民主党・新緑風会、公明党、日本共産党及び国会改革連絡会(自由党・無所属の会)並びに各派に属しない議員大渕絹子君及び椎名素夫君の共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。     貸金業規制等に関する法律及び出資受入れ預り金及び金利等取締りに関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、次の事項について、十分配慮すべきである。  一 ヤミ金融の撲滅を実現していくため、国及び都道府県の関係当局において、体制及び連携を強化・充実して関係法令に基づく徹底した取締りを行い、厳正かつ的確な法令の適用を期すること。また、関係機関及び民間団体において、被害者のための相談体制を整備・拡充し、相互の連携を一層強化することができるよう努めること。  一 今後、貸金業に関する制度のあり方について、実態に即したより的確な規制体系の構築及び適切な金利規制のあり方につき検討すること。    右決議する。  以上でございます。  何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
  91. 柳田稔

    委員長柳田稔君) ただいま円君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  92. 柳田稔

    委員長柳田稔君) 全会一致と認めます。よって、円君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、竹中金融担当大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。竹中金融担当大臣
  93. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても、御趣旨に沿って配意してまいりたいと存じます。
  94. 柳田稔

    委員長柳田稔君) なお、両案の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  95. 柳田稔

    委員長柳田稔君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  ちょっと速記を止めてください。    〔速記中止
  96. 柳田稔

    委員長柳田稔君) 速記を起こしてください。     ─────────────
  97. 柳田稔

    委員長柳田稔君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  財政及び金融等に関する調査のため、本日の委員会に、理事会協議のとおり、参考人として日本銀行総裁福井俊彦君外四名の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  98. 柳田稔

    委員長柳田稔君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  99. 柳田稔

    委員長柳田稔君) 財政及び金融等に関する調査を議題とし、日本銀行法第五十四条第一項の規定に基づく通貨及び金融の調節に関する報告書に関する件について、日本銀行から説明を聴取いたします。福井日本銀行総裁
  100. 福井俊彦

    参考人(福井俊彦君) 日本銀行の福井でございます。  日本銀行は先月、平成十四年度下期の通貨及び金融の調節に関する報告書を国会に提出いたしました。今回、日本銀行金融政策運営について詳しく御説明申し上げる機会をいただき、厚く御礼を申し上げます。  本日は、最近の経済金融情勢や金融政策運営につきまして、日本銀行考え方を申し述べさせていただきます。  まず、最近の経済金融情勢について御説明申し上げます。  我が国の経済は、横ばい圏内の動きを続けております。個人消費は、厳しい雇用・所得環境の下で弱めの動きを続けておりますが、設備投資は、企業収益の改善を背景に、振れを伴いつつも緩やかな持ち直し傾向にございます。また、輸出は横ばい圏内で推移しております。  先行きにつきましては、輸出や生産が次第に増加基調に戻り、前向きの循環が働き始めるものと考えられます。その背景として、イラク情勢や新型肺炎をめぐる不確実性の低下などから、今年の後半には海外経済の成長率が高まるとの見方がございます。  七月初めに公表いたしました日本銀行の短観を見ましても、企業収益は増益基調を維持する見込みでございます。設備投資の持ち直し傾向も確認されたところでございます。もっとも、過剰雇用、過剰債務の調整圧力が根強い中、当面内需の回復は緩やかなものにとどまる可能性が高いと考えられます。また、輸出環境につきましても、米国経済の回復力などをめぐって、なお不透明感の強い状況が続いております。国内面でも、金融システム情勢や金融資本市場の動向などについて引き続き注視していく必要があると考えております。  この間、物価動向を見ますと、消費者物価は、需要の弱さや技術進歩、流通合理化といった要因が引き続き物価を押し下げる方向に働いておりますほか、海外からの安価な消費財の輸入もごく緩やかながらも増加傾向を続けておりますことなどから、当面、現状程度の小幅下落が続くと見られます。  金融面では、日本銀行の潤沢な資金供給の下、金融市場は総じて落ち着いた推移をたどってまいりました。また、資本市場では、このところ、世界的に、景気や物価の先行きに対する悲観的な見方が若干後退している中で、株価が大幅に上昇し、長期金利も上昇しております。  企業金融をめぐっては、全体として緩和的な環境が維持されております。ただ、相対的に信用度の低い企業の資金調達はなお厳しい状況にあるものと認識いたしております。  次に、最近の金融政策運営について申し述べさせていただきます。  前回御説明させていただいてから約三か月が経過いたしましたが、この間、日本銀行は、経済の先行き不透明感が高まる中、金融政策面での対応を機動的に講じてまいりました。  すなわち、四月三十日の金融政策決定会合では、日銀当座預金残高の目標額を五兆円引き上げました。この時期、欧米諸国の景気回復力については依然不確実性が高く、東アジア経済についてもSARSの影響が懸念されておりました。金融面でも、銀行株を始めとして、株価が不安定な動きを示しておりました。このような経済金融情勢に関する不確実性の高まりを踏まえ、金融市場の安定確保に万全を期し、景気回復を支援する効果をより確実なものとするために実施したものでございます。  また、五月半ばには、りそな銀行の問題が生じたのを機会に、金融面からの対応措置を強化いたしました。日本銀行は、まず、同行に対して、必要が生じた場合直ちに、日本銀行法第三十八条に基づく無担保の貸出しを含め、所要の資金を供給する方針を決定いたしました。また、金融調節の面でも、当座預金残高の目標を更に三兆円引き上げ、十分な資金を供給することといたしました。このころは、海外経済をめぐる不確実性に加え、株価や為替相場の不安定な動きなどから、景気の先行き不透明感が強まっていました。それだけに、金融市場で不安定性が高まるような事態になれば、実体経済活動にも悪影響が及ぶ懸念がございました。このような対応もあって、りそな銀行の資金繰りには問題が生じず、金融市場もおおむね安定を維持しております。  その後の状況を見ますと、日本経済をめぐる先行き不透明感は多少後退しているようにうかがえます。  まず、輸出を左右する海外経済については、米国経済の不透明感はやや緩和され、東アジアにおいてもSARSの問題が終息に向かっております。これを受けて、国内資本市場では、経済や物価に対する悲観的な見方が若干後退し、株価は大きく上昇いたしました。銀行株価も大幅に反発しております。こうした状況の下、長期金利は、〇・四%台の史上最低水準まで低下した後、その後上昇いたしました。  このように、幾分明るい動きも見られますが、日本経済が引き続き様々な構造問題を抱えていることに変わりはございません。日本銀行といたしましては、引き続き、海外経済の回復力や金融システムの状況、金融資本市場の動向などに十分注意を払いながら、機動的な金融政策の運営に努めてまいりたいと存じます。  この間、日本銀行は、金融緩和の効果が経済全体に行き渡るよう、波及メカニズムの強化に取り組んでおります。その一環として、今月二十九日より、資産担保証券の買入れが可能となるよう鋭意準備を進めています。中央銀行が民間の信用リスクを直接負担することは異例ではございますが、我が国の金融機関の信用仲介機能が万全とは言えない現状においては、資産担保証券市場の発展を支援することは意義があると考えております。  具体的な実施の細目を決定する際には、中堅・中小企業金融の円滑化に資するよう最大限配慮をいたしました。まず、裏付けとなる資産は、売掛債権や貸付債権、リース債権など幅広い資産を対象とすることとしました。また、信用力の低い債券に対する投資家が不足していることも市場拡大を阻害する一因となっていることにかんがみ、BB格相当の債券まで買い入れることといたしました。買入れ総額については、当面一兆円に設定しております。  資産担保証券は、将来、日本金融市場にとって非常に重要な市場になると考えております。日本銀行の買入れも契機となって、市場が自律的に発展していくことを期待いたしております。  なお、日本銀行は、株価の変動が金融機関経営、ひいては金融システム全般に及ぼすリスクを緩和する趣旨から、昨年十一月以降、銀行保有株式の買入れを実施いたしております。本年七月二十日時点の買入れ額は一兆五千五十九億円となっております。  以上申し上げましたとおり、日本銀行は、厳しい経済情勢に対応するため、必要と考えられる政策は、中央銀行としては、異例の対応を含め、果敢に実施してまいりました。同時に、新たな資産保有することに伴うリスクを適切に把握し、財務の健全性確保にも努めております。財務の健全性は、将来にわたる日本銀行の政策運営能力を維持し、通貨の信認を支える重要な基盤であると認識いたしております。  日本経済は、八〇年代後半から生じたグローバル化、情報通信革命、少子高齢化などの大きな潮流変化に対して、新たな経済の仕組みを構築すべく苦闘を続けております。様々な制約の下で、これは決して容易なことではございませんが、日本企業の持つ高い技術力や知識創造力を生かしていけば、必ずや実を結ぶものと信じております。  日本銀行といたしましては、こうした民間の努力も踏まえながら、デフレ克服と持続的な成長軌道への復帰に向けて、今後とも全力を挙げて取り組んでまいる所存でございます。  少し長くなって恐縮でございました。  ありがとうございました。
  101. 柳田稔

    委員長柳田稔君) 以上で説明の聴取は終わりました。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  102. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 福井総裁以下、大変御苦労さまでございます。  約一時間でございますけれども、質問をさせていただきたいと思いますが、実は、昨日、日本銀行総裁、「日本経済の将来の発展に向けて」ということできさらぎ会で講演なさった要旨がもう既にインターネットで閲覧することができましたので、これも実は読んで、この中身についても、今日慌ててちょっと、事前に言っておりませんけれども、付加して是非お聞きしたいと思っております。  そこでまず、日本銀行にとって私は最大の問題というのは、やはりデフレの克服の問題だというふうに思っているわけであります。このきさらぎ会における講演の中身を読んでおりましたときに、グローバル化と、それからある意味では情報化といいますか、そういう大きなメガトレンドが動いていて、そうした中では、ある意味ではディスインフレといいますか、価格が余り上がらなくなるというのは、これは仕方ないことだというような感じでちょっと書かれている節があるように思うんでありますが、このデフレの克服ということについて、総裁自身は今どんな確信を持たれ、また展望を持たれているのか。これは国民にとっても最大の問題だと思っていますので、この点どのようにお考えになっているのか、また、今の確信、展望をどのように持たれているのか、この点まずお聞きしたいと思います。
  103. 福井俊彦

    参考人(福井俊彦君) 昨日の講演の要旨を早速お読みいただいて、大変恐縮に存じております。  昨日のスピーチも含めて、今のお尋ねに簡潔にお答えいたしますと、私は、日本経済がデフレから脱却するための最大の要件というのは、経済全体として持続的な回復軌道に早く乗せるということですが、その中で更に重要な要因は、日本の経済を支える企業が改めて強い競争力を築くということだと考えています。確かに、世界的な要因あるいは国内的な要因重ね合わせまして、物やサービスに対する価格の形成のされ方というものが従来の経済とは基本的に変わってきたと。従来は、どちらかというとインフレになりやすい経済、デフレは余り心配しなくていい経済でございましたけれども、これからはデフレということも心配しなければならないほど価格形成のメカニズムが変わってきたということでございます。  その中で、企業が単に国内的な競争に勝つというだけではなくて、厳しい国際的な競争場裏においても勝利を収めていくというためには、従来に比べて一層付加価値創出の力が強いビジネスとして築き上げなければならない、これが私の昨日のスピーチの一番根幹となるところでございます。  今、日本におきまして全般的に構造改革が進められています。これは、経済、社会、場合によっては政治の仕組みまで含む全般的なものでございますが、経済の点について申し上げれば、構造改革の一番中心的な部分は、企業のイノベーションの力を強めて付加価値創出の力を付けていく、そのために、政府及び日本銀行の政策はそうした企業の努力を全面的にサポートできるような環境を十分整えると、こういうふうなことだということでございます。  昨日のスピーチの要旨はそういうことでございますし、ただいまの御質問に対するこの場でのお答えも全く同じことになるというふうに考えております。
  104. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 非常に私自身も納得できる点がたくさんあったと思うんですが、私があえてそのことを申し上げたのも、先日ちょっと予算委員会で非常に中途半端に終わってしまったので、本当は日銀総裁にもいろいろ聞きたかった点なんですけれども、実は、フローのデフレとストックのデフレというふうに申し上げていいと思うんですが、そういう意味でいうと、一般的な物価上昇はマイナスになっている。これ自身も経済に余りいい影響を与えていないと私は思いますが、しかしある意味では、今お話しなさったように、国際的に見て非常にデフレが起きやすい状況になっていると。もう一つ日本の場合は、それに輪を掛けて膨大な借金を、実は企業も、あるいは国も自治体もそうでありますが、そうすると、そのストックのいわゆるデフレ、これが非常に深刻な問題になって今我が日本経済を非常に押しつぶそうとしているんじゃないかなと。  その点に対する御指摘がどうもやはり十分でないのかなというふうに思うんですが、この点はどのように、ストックデフレの問題についてはお考えになっているんでしょうか。
  105. 福井俊彦

    参考人(福井俊彦君) 御指摘のとおり、昨日のスピーチの中では、金融政策に絡むところを論点としたいと思いましたものですから、そこのところは少し議論を少なくしておりますが、企業の過剰債務というバックグラウンドの中にその問題が潜まれていると、少なくとも昨日のスピーチではそういうふうに含まれております。しかし、この問題を真正面から申し上げれば、委員指摘のとおり、非常に大きな問題でございます。  何といいますか、価格の下落率という点だけで取りますと、いわゆるおっしゃったフローの物価の下落率というのは、これ自身問題ではありますけれども、数字の上では下落率は、数字としては小さいわけでございますが、ストックの、つまり資産価格の下落率ということからいきますと、ピークの水準に比べてその下落幅は八割を超えるというふうな大きな下落でございます。特に金融との関係で申し上げれば、不動産価格の下落率、八割を超えるということが日本経済に対して今非常に強いダメージを与えていると思います。  しかし、よく考えてみますと、では八割も高かった過去の不動産価格の水準というものがどうして形成されたかといいますと、それは必ずしもその土地を、個々の土地を利用した場合に期待される収益率に見合って値段が決まっていたかというと、それ以上に高い値段に実は跳ね上がっていたというところに問題がございます。大幅に下落いたしましたけれども、現在、土地の価格が行き着こうとしているところは、これから先、企業ないし個人が当該土地を利用したときの収益ないしは個人の場合は便益、その価格に見合うところに収れんしようと、こういうふうにしております。そのときに、どういうレベルに収れんするかというときにフローの経済と非常に密接な関連があると思います。フローの経済が早く元気付いて、たとえ過去のような高成長でなくても、持続的な成長を遂げ、その中で一定のフローの収益率を上げられるということと、今後のストックの価格の水準というのが、両者が結び付いていくということでございます。  したがいまして、引き続き重要なことは、フローの面で見た持続的な経済成長ということを早く実現すること、その中で、個々の企業は過去に比べてより高い収益率が実現できるようなビジネスモデルを確立できること、そして、不動産価格等の資産価格については、かつてのような神話に惑わされない経済合理性のある価格形成メカニズムをまとうこと、身にまとうこと、この三点が非常に重要だというふうに考えております。
  106. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 地域でいろんな企業方々ですね、銀行融資その他をずっとお聞きしていると、やっぱり圧倒的に土地担保でまだ、貸出し債権の担保というのがやっぱり圧倒的に土地なんですよね。そういう意味では、その地価がずっと、商業地も、それから住宅地も依然として一部の地域を除いてまだ下落し続けているということは、やっぱり担保価値がずっと下落しているということで、その意味でいうと、これを人為的に上げろとか、かつてのように土地税制が非常にゆがみをもたらしたというようなことは、これはあってはならないと思っておりますから、またそれはそれで構わないんですが。そうすると、日本経済が、バブルの後遺症がすべて原因だとは思わないんですが、今申し上げたような、土地からどれだけの利益を上げられるのかという、正に利益を上げられる体質に回復するということが、実は株価にせよ、それからいわゆる地価にせよ、そのストックに対してやはり大きな問題になっているんだろうと思います。  その観点で、私は、ある意味ではストックのデフレの問題が非常に依然として深刻である、そこの改革をするための、これがやはり一つは構造改革が重要なポイントだというふうに思って、私自身はそう思ってやってきたわけでありますけれども。  その観点からすると、先日のやはりりそな銀行に対する資金投入以降上がってきていると、いわゆる株価が上がってき始めた。これはどうもその辺りが、先日ちょっとデータでこれは竹中大臣にもお話し申し上げましたけれども、どうもやはり、もう本来なら退出しなければいけないような企業が、株が余りにも上がり始めてきているという点で、やはり今の、ちょっと最近の株価は私は余りウオッチしておりませんけれども、たしか七月の初旬の株価一万円を日経平均でやや超したときの株価の水準には、どうもやはりそういった点から見て、構造改革という観点から見たらどうも問題があったんではないかという、私自身は株価の上昇を見ておったんですが。  この点、日銀総裁は、あの株価の一万円台に上がったときの状況ですね、きさらぎ会のお話の中では、株価が少し回復し始めた、それは将来に対する見通しの好転だと、日銀短観でもいい結果が多少出ているんだよと、世界的にもSARSもなくなったし、いろいろそういう御指摘をされているんですが、そのこととか、五十円の原価を割るようなものが一気に三倍になったり、そういったこと等、どうもなかなか説明しにくいのではないかということをやや言いたかったんですけれども、その辺りはどのように株価については見ておられるんでしょうか。
  107. 福井俊彦

    参考人(福井俊彦君) 株価を全部解剖して要因を一〇〇%説明し切る自信は私にはもちろんございませんけれども、昨日の講演でも申し上げましたとおり、やっぱり大きなバックグラウンドは、世界全体としての経済の見通しがこの春先ぐらいまでに比べますとやはり好転していると。したがって、日本だけでなくて、主要国あるいはLDC、アジア諸国の株価まで含めてやはり一定の方向を向いて改善してきていると、世界経済全体の何がしかのいい方向をこれは反映しているということは否定し得ないというふうに思います。  今は、経済が、個別の経済だけで見れば全うできるということではなくて、グローバル化経済の中でございますので、相互に連関し合って動く度合いが強くなっていると。経済のシンクロナイゼーションと言われておりますが。したがいまして、日本経済についても、世界経済が良くなるときには日本経済もある程度同じ方向に動くと。したがって、その部分、まず日本の株が買われるということがあっておかしくないんじゃないかというふうに思いますが、同時に、国内的に見ましても、過去失われた十年と言われる中で、結構やはり、個別企業ごとに見ますと、企業の体質改善努力あるいは将来に向かっての新しいイノベーションを身に付ける努力が進んできていると。リストラも進んできていて、最近、企業が生み出しております収益はリストラによるものだと、こう簡単に言われておりますが、損益分岐点をきちんと下げながら収益を出しているということは、今後の投資機会にこれは結び付く体質改善だと。これは投資家が見ても明らかにそういう認定をしていることで、そういった点もやはり株が買われている要因だというふうに私は思っています。  金融との関係でいきますと、あのりそなの問題のようなことがほんのやはり数年前に起これば、これは預金の引き出し等、非常に大騒ぎになったであろうということはまず想像に難くないわけでありますけれども、金融の問題も大変難渋を窮めながらも進展してきている、進展すべきところはそれなりに進展してきているということが、やはり一般の世間の認識、マーケットの認識になっていると。そして、今回のりそなのケースについて言えば、やはり早めの対応ということが一つ恐らく評価されているということと、それから、りそな銀行のコーポレートガバナンスがきちんとその瞬間から変えられたと。新しい経営体制がこれからどういう、本当にどういう経営を示されるかということは、まだこれからの課題を残しているとはいえ、やっぱり単純に従来の経営体制のまま公的資金が投入されたのは違うという判断が恐らく市場にもあったんではないか、そういうふうに私は考えております。
  108. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 その点、りそな銀行というのは、本当にこれは債務超過ではなかったのかというふうに私たち自身はこの間ずっとこの委員会等で、特に監査委員会、朝日監査法人が新日本監査法人とは違う、同時に監査をしていた監査法人がそういう認定をやはり一時期していたというふうに私たちはつかんでおりますので、どうもやはりその点、なかなか合点いかない点がありますが、先にちょっと進ましていきたいと思うんですが。  実は私、労働界出身なものですから、非常に気になるのは雇用の問題なんです、雇用の問題ですね。それで、いわゆる何といいましょうか、雇用といいますか、うん、そうですね、雇用というふうに申し上げていいと思うんですが、これは竹中大臣にも後でお聞かせ願いたいと思うんですが、このいわゆる日本的な雇用慣行、いわゆる終身雇用制とか企業別労働組合であったりとか、かつて非常に高く評価をされていた。  どうもこの資源の再配分機能が十分発揮される仕組みがないんではないのかという中で、昨日のきさらぎ会の中でも、賃金や雇用の問題があって、流動的な労働市場の問題に触れられて、「生産性に見合って賃金が決定される仕組み、流動的な労働市場、この二つがこれからの日本経済には欠かせない要素」だと、こう指摘をされております。「年功序列型の賃金体系や終身雇用制をこうした新しい要請にどう調和させていくかが、大きな課題です。」と、こう書かれているわけです。  私は、いわゆる雇用労働者、つまり、働く以外にはほとんど自分の生きていく上に当たっての何も持たない人たちが圧倒的に多いわけですね。もちろん、部分的に家に資産があるとかという人もおりますけれども。しかし、いずれにせよ、そういう雇用をする労働者がこれまで、自分はこの会社で働いている、働いて雇用は、もちろん首切りとかそういうもの全くないと言っているんじゃないんですが、この会社で雇用がほぼ六十歳なら六十歳までは安定して働いているんだということが一つのある意味では安心の材料になって、そこで一生懸命仕事に働くと。こういう、いわゆる大企業を中心にしてそういう仕組みが保たれていたわけですね。  そうすると、それは実は、いわゆる構造的な意味で言えばマイナス要因というふうにこれを切り捨ててしまったら、そうすると、そこで働いている労働者にしてみると、雇用がいつリストラに遭うかもしれないねと。もちろん、今の二十代、三十代の若い方々の意識というのはどうもやはり最近変わってきていて、いや、もう自分はこの会社に一生勤める気はないよという、そういう人たちももちろんいるんですが、まだ現在働いている大部分は、やっぱりまだそういう雇用を、ある意味では年功序列型の雇用というふうに言われてきたところで働いて実は生活をしてきたわけです。そして、それで安心して働き、企業のための努力をし、それがまた企業の生産性を高めていくという大きな要因にもなってきたわけですね。  そうすると、私はそこは、どうもやはりこれは市場メカニズムでいわゆる流動化させて進めていくことということだけで本当にいいんだろうかねというところにやや疑問を持っている一人なんです。市場が重要だということを否定しているつもりはないんですが、そこに何らかの安心というものがないと、実はやはり、働いている労働者が一生懸命働こうというインセンティブが、そこが不安定になっちゃうんじゃないかと。  先ほど土地の問題も実はあったんですが、土地は値上がり続けるものだというのは、実はよくよく考えてみると、働く労働者がこの資産形成をするときにも、実は頭金を出して、やがてそれが土地も上がっていき、そして賃金も上がっていくという正にインフレーションのメカニズムの下では、それがまた一つの、自分の資産を安定させ、将来のこれは生活のある意味では土台になっていたという点で、これもまた、実は非常に働く労働者からすれば安心の材料になってくるわけです。そういう安心の材料が構造改革という形で次々に切られ始めてきたと。これが実は今日のいわゆる将来に対する不安、自分の生活に対する不安というものの大きな要因になってきているんではないかなと。  そのときに、こういう形で流動化させなきゃ駄目ですよと、あるいは流動化を進めるための様々な今規制緩和が進んでいるんですが、事人間が生活をするという、つまり労働力の流動化という問題に関しては、そこに何かの安心できる制度なりシステムというものが組み込まれなかったら、私はやはりこれは、日本の社会というものは、本当に企業の、会社のためというのが余りよろしい表現かどうかは別にして、この日本経済発展のために頑張って努力をするという、そういうことと結び付かなくなる危険性がありはしないかと思うんですが、この点はどのように日銀総裁考えられ、また竹中大臣も、これはちょっと私、言葉足らずで、もしかしたら、同時にまた答えていただければと、こう思っております。
  109. 福井俊彦

    参考人(福井俊彦君) 現在の私の専門的な仕事の分野から少し離れたところで昨日お話を触れたことをお許しいただきたいと思いますが、雇用の問題は、それにもかかわらず私は非常に根幹的に重要だというふうに考えています。  一言で言えば、私は、新しい日本型雇用慣行というものをいかに前向きに作っていくかと。恐らく昨日の話もそういう表現をした方が、今の御指摘からいけばより良かったのかなという気がいたします。昨日の表現の中でも、私は、年功序列型賃金体系あるいは終身雇用制を切って捨てろとは書いておりません、否定しておりません。いかにこの新しい時代の要請に対応できるようなものにするかという疑問形で出しているわけでございます。  つまり、最初に例えば学校を出てある有力な企業に就職した場合に、確かに、今までの時代ですと、かなりこれは一生を保証されるような安定した職場というケースが多かったと思います。その職場の中で個々の個人が自己実現も図り得る度合いが高かったと思いますけれども、これだけ国際的な競争が厳しくなり、かつイノベーションの速度が非常に上がってきた状況の下にあっては、恐らくどんな立派な企業に就職したと思った方であっても、本当に一生がそれだけで保証されたかどうかはもう分からなくなった時代になったということだけは明らかだと思います。  やっぱり引き続き、この流動的な社会の中で自分自身を、どんな立派な職場に最初に就職したとしても、更に自分自身を磨き上げる努力、常に自分というものの人生を最後まで自己実現的にいいものに築き上げようということと職業生活ということとの結び付きというのを絶えず考え続ける、そういう時代になったという意味で、したがって、それは一見厳しいように見えますけれども、実は余り役に立たないかもしれないと思いながら会社に長くいるよりは、ちょっとした意識の切替えで一生がむしろ幸せになるような、そういう社会づくりというのはどうやってやるんだというのが昨日の私の問題提起でございます。  世間では労働の流動化を手助けする公的な仕組みもいろいろできていますが、民間においてもやっぱりそういうことを仕事にする会社などが随分出てきておりまして、やっぱり転職するときには大変不安だと、むしろ自分の人生の場が失われるかもしれない、家族が路頭に迷うかもしれないというところまで極端に心配なさる方も、ある種の訓練を受け、あるいは意識の変革の手助けを受けて職場を替えた場合に、今度は意外に自分には能力があるということを発見する方も非常に多い。こういう日本の我々が一人一人持っている能力というのは、本人が考えているよりも非常に広いものだと、そういうものをきちんと引き出せるような新しい社会をみんなの工夫で出していけばすばらしいことではないか。  我々、金融の面から仕事をさせていただいておりますけれども、いろいろこれからやっていきます新しい金融市場づくりという場合にも、やっぱり特定の会社の中だけでずっと単純に仕事をするという方だけではなくて、やっぱりもっと幅広く活躍できる人材というのが育っていくということと、いろいろ資金調達ルート、資金供給ルートが多岐に広がる機能的なマーケットを作っていくということとが表裏一体となるものですから、そういう意味では私どもも、専門外ではございますが、雇用の流動化については大変強い関心を抱いております。  ただし、私ども専門家ではございませんで、もし現段階で知恵が非常に不十分で、むしろ、表現不十分なところがあれば御指摘いただいて、勉強させていただきたいというふうに思っております。
  110. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) 大変大きな問題の提起だと思います。しかし、あえて少し問題を提起させていただきますと、日本における長期雇用慣行、いわゆる日本型の雇用慣行というのは、実は専門家の分析によれば比較的新しい制度であると。古いという人でも一九二〇年代以降、その他の人たちではむしろ戦後の制度であるということだと思います。  明治とか大正の初期までは、日本というのは非常に雇用の流動化がむしろ進んでいて、同じ職場になかなか定着しないということが一種の社会問題とされていた時代さえあった。しかし、これ、日本型の長期の雇用慣行というのは明らかにメリットがあったわけであります。これは働く方にとっての安心感というのもあるし、企業から見ると、長期に定着するということを前提に人材投資を行って、それが良い結果を生んだということも、これは間違いなく事実としてあったわけだと思います。  しかし、そもそもどうしてこういうことが可能であったのか。個人の安心感があるというふうに申し上げましたが、しかしこれは企業から見ると一種のリスクを背負い込んでいる。それは、人件費が固定費になる。人件費というのは変動費ではなくて固定費になる。大きな固定費を持つ企業というのはそれだけ財務上のリスクを持つわけですから、企業がそれだけのリスクを負担していたということになります。  しからば、どうしてそういうことが可能であったのか。それは正に、財務のリスクはその分大きかったかもしれないけれども、いわゆる右肩上がりの経済の中で、営業上のリスク、ビジネスリスクがその分小さいという非常に恵まれた環境下にあったということで、そのリスクのバランスを取ることが企業においても可能であったということだと思います。  しかし、残念ながら成長率そのものが国として低下してくる。グローバリゼーションが進んでくる。そういう中で、財務リスクそのものをやはり減らしていかざるを得ないというような状況にありますから、無理に今の日本の長期慣行を続けようと思えば、これはもちろん企業には、企業によって違うわけですけれども、雇用は守られるかもしれないけれども企業は残れないかもしれない、そういうような厳しい状況下に置かれてきたんだと思っております。  重要なのは、雇用の流動化というと、常に何か出口が開いていて、すぐその職場から出されるかもしれないという不安がある。しかし同時に、本当の意味での流動化というのは、そこにまた別の入口があって途中からでもどんどん入っていける、そういうようなやはりシステム全体を作っていかなければいけないということだと思っております。  しかし一方で、個人、一人一人は大変弱い立場にありますから、それに対しては、私はやはり新しい雇用のセーフティーネットが必要になっているということなのではないかと思います。それがどのようなものなのか、これは更に我々大いに知恵を出さなければいけないというふうに思います。  これは、もちろんいざというときの場合の失業保険のセーフティーネットというものもありますが、さらには、どんどん新しい入口に入っていけるようにするという意味では、これはやはり人材教育、人材教育の機会を様々な形で設ける。私は個人的には、教育訓練バウチャーのようなものが何らか考えられないだろうかということをずっと問題提起をさせていただいているわけでございますけれども、そうした新しいタイプのセーフティーネットが要るということも、これは重要なポイントであろうかと思います。経済財政諮問会議では、そういう点も含めて、人間力の強化というのを重要なテーマにしておりまして、引き続き、そのバウチャーの問題等々も含めて、やはりここはしっかりと議論をしていきたいと思っております。
  111. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 お話を聞いていて、私はブルーカラーとホワイトカラーとちょっと違うんじゃないかと思っているんですが、私は、実は私自身がブルーカラーの家庭で生まれましたので、また今おっしゃられたこと非常によく分かるんですが。  実は、ブルーカラーの労働者が重化学工業を中心にして労働組合を組織して、労働条件を上げていくと。恐らく、そこのところにも恐らくリストラの問題とか雇用削減の問題も相当進出しているんですが、そのときに、アメリカにおいてはセニョリティーという仕組みがあるんですね。つまり先任権。つまり、その中にもちゃんと、これは経済合理性からは割り切れない問題で、セニョリティーというシステムが組み入れられていますよね。そうすると、リストラを進めていきますよ、雇用の問題をやりますよといっても、やはり首切られていく順番というのは決まっていて、またそこから、レイオフをした後は、また景気良くなってくるとそこからまた入っていくという、そういう一つ仕組みがブルーカラーを中心にしてでき上がっているんですね。  ですから、そこのところはやはり、その国その国の一つのやはり経済合理性で割り切れない、いわゆる一人一人の働いている人にとってみると、どこにいい情報がある、まあ、そこの情報は今ハローワークだけで十分できているとは思いませんけれども、いわゆる一人一人の労働者ではやっぱり弱いためにそこの、いわゆる、何でしょうか、社会の仕組みとしてそういうものができ上がっていると。  そういうものがもし、今先ほども、新しいもの、新しいネットを作らなきゃいかぬとおっしゃっているんですが、その制度が長い間機能した制度を変えるときには、やっぱり新しいネットを先に作っていくことをしないと、リストラをやりました、構造改革をやったけれどもまだセーフティーネットの方は十分でありませんよと、こういう状態の下で進められていけば、これは社会の中に不安が蔓延していくし、不信の連鎖みたいなものがやはり広がっていくと私は思うんですよね。これはやっぱり一つブルーカラーの問題の中に大きい問題としてあるのかなと。  もう一つは、実はホワイトカラーの問題に関して言うと、ちょっと最近非常に私注目している岩井克人さんの本読ませていただいて、新しく、本当にこれ、そうなのかもしれないなと。  二十一世紀こそは、今総裁も、これは切って捨てるんじゃない、新しいものにするということをおっしゃったんですが、つまりそれは、正に人間を大切にしていかないと、つまりホワイトカラーで優秀な人材というのは自ら、先ほどおっしゃったように、研修を積み、能力を高めていくという努力をされていると。問題は、そういう人が簡単に逃げられてしまったらその企業にとっても実はマイナスだという観点からすれば、正に日本で、人間を大切にするというか、そういう意味での企業に対する信頼感といいますか、そういうものをしっかりと土台に据えた労使関係というものをきちんと作らないと、これはやはり、二十一世紀のいわゆる知識中心の、ナレッジ革命と言われるような、そういう社会ではその企業の存続もやはり危うくなってくるんじゃないかなと。  その意味で私はやはり、今、総裁が決して、流動化でばっさり、今までの仕組みは全部駄目だよということで市場にほうり出せばそれで済むというふうにおっしゃっているというふうには受け止めておりませんけれども、そういうものはやはりきちんと社会的に作り上げていくことが必要なんじゃないかなというふうに思っておりまして、少しちょっと本来の財政金融のところから離れてしまいましたけれども、でも私は、土地と、それから労働力とお金というのは、やっぱりなかなか商品として、一般的な商品としてなじまないものを持っている要素だなというふうに思っておりますので、その点はやはり絶えずセーフティーネットを、あるいは社会的な規制と言われているものをそこにはやはりかませていかないと、うまく資本主義って機能しないんじゃないかなというふうに思っておりますので、その点は私の意見でございます。  そこで、実は長期金利の問題にちょっと次移らせていただきたいと思うんですが、実は七月のたしかあれは十一日の予算委員会で、実はこの長期金利があの当時は一・四%台まで上がったわけです。〇・四%台からたしか急激に一%上がって一・四%台までなりましたねということであったわけでありますが、今は少しそれが、一%前後だったでしょうか、やや落ち着いているんですけれども、これは当時からすれば、なかなかこれは大変なことが起きているのか、これは本当にいいことが起きているのか。  ちょっと、日銀のOBの方で、私の地元の銀行の関係者の方にもちょっとお会いする機会がございまして、この点どうですかとお聞きしたら、いや、これはいいことです、いい金利上昇ですと。つまり、短期金利と長期金利との間のイールドカーブが非常にフラットになってきて、このままではもう銀行としては利益の上げようがないぐらいのところまで下がっていましたと。これが一・四%ぐらいまで上がって、急激に上がり過ぎたという嫌いあるかもしれないけれども、このイールドカーブが少し上がってもらう方が我々としては商売としてはやりやすいんだと、こんなお話がございまして、それは早速、今度予算委員会があるので少しそこら辺で日銀総裁の意見も聞いてみますというお話をしたんですが。  そういう意味で、あの金利上昇といいますか、今もどのようにお考えになっておられるのか。なぜああいう問題が起きてきたのか、それはいいことなのか悪いことなのか、それからその影響というのは一体どんなところに現れてくるのか、こういった観点で日銀総裁に御意見をいただきたいと思いますが。
  112. 福井俊彦

    参考人(福井俊彦君) 金利の変動にいたしましても、あるいは為替相場の変動にいたしましても、よく、これはいい動きだ、あるいは悪い動きだというコメントが出ることがございます。私はこれは、そのマーケットの中で特定の仕事をしておられる方が、これはいい動き、悪い動きとおっしゃるのは非常によく分かる。あるいは、特定の分析手法を持っていて、かつその手法に自信を持っておられる方が、マーケットの動きが、その手法から明らかに望ましいと思われる方向に動いているときにいい、そうでないときに悪いとおっしゃる。これも非常によく分かります。  しかし私ども、金融政策の当事者としてマーケットを見ます場合にはそう簡単に色付けはできない、これが私どもの基本的な立場でございます。やっぱり経済は正に生き物であって、いろいろな現象、それから将来起こり得るいろいろな事象というものを取り込みながら、市場はある意味で探りを入れるために動く場合もございます。したがいまして、前もって余り、いいとか悪いとかというふうな判断を自ら持ちますと、政策情勢判断そのものがいびつなものを自ら抱いてしまうということになりますので、基本的にそういうスタンスは取っておりません。  ただ、金利が上がります場合にも、市場金利が下がります場合にも、その背景は何か、市場は一体何を読み取ろうとしているのかというふうなことを極力的確に我々は理解しようと、これは最大限努力をいたしております。  そういう立場から、最近の長期金利の上昇について、少なくとも私どもがこうではないかというふうにある程度確信を持って見ておりますのは、これはまず、世界的に株価が上がり、そして長期金利が上がったと。世界共通の現象ということから、そのバックグラウンドをたどれば背景の探索が一つ容易になる。それは明らかに、最近はイラクとの戦闘が終結し、SARSの問題が終息し、したがって多くのエコノミストが、海外の経済についても、足下の動きはまだちょっと鈍いけれども先行き現状よりはいい方向に動くんではないかというふうな方向が一般的な見方になっている。こういったことが背景になっているであろうということは、かなりの確度でもって我々も認識し得ると。  それからもう一つ言えますことは、国内のマーケットの動きでございますが、こうした突然一・四とかというふうなところに跳ね上がります直前までの段階でいきますと、もう本当に長期金利が一本調子で下がり続けてきた。これは、私どもがかなりアグレッシブにマーケットに流動性を追加供給した、そのことの影響ということはもちろんございますが、マーケットというのはどうしてもある時期弾みが付く。これは市場関係者の中でも、この動きを見て、行き過ぎではないか、ひょっとしたら国債バブルではないかという極端な表現をもってそれをおっしゃる方も出たぐらいでございます。恐らく、私どもは決して国債バブルだったというふうに見ておりませんけれども、多少マーケットの動きに加速度が付いて、マーケット自身がある折り返し点を迎えた後は自律的な調整局面に入る、これも市場としては通常の運動法則でございまして、国内的にはそういう通常の反転調整の運動法則が働いた。これまた明確に確認できることではないかというふうに思っています。  したがって、今、市場金利はある落ち着きどころに向けて今落ち着きつつあるということでございますけれども、その中でも、なお地合いを見ますと決して十分安定しつつあるとも思えません。まだいろいろ不安定な動きを潜めておりますので、私どもが探り当てているバックグラウンド以外に、市場はまだ何か先行きいろいろ考えているかもしれない。そこを一生懸命今考えているところでございます。
  113. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 財務大臣、長期金利が上昇されたとき、記者会見などの記録などを見ると、これは大変なことだわいと、こういうふうに何かちょっと感ずる、私が一方的に感じたのかもしれませんが、何せかんせこれだけ国債を大量発行しているわけですから、毎年、借換債で百四十兆円と。これは金利が上がり始めたらそれこそ国家財政が大変な状況になるねと、こういう思いを持たれたんだろうと思うんですね。  財務大臣は、この長期金利の上昇はどのように受け止められたんですか。
  114. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) 先ほど日銀総裁が説明されたあの状況等において全く私も同様の感じでございますが、要するに、二週間ほど前でございましたでしょうか、あの変動があったとき、余り急激であったので私はこれは良くないと思ったんですけれども、現在の時点に立って現在の水準を、ポジションを見ます場合は、まあ悪いことではないという認識をしております。要するに、安定してくれることが大事であって、あのときは〇・五でしたですね、それが一挙に一・一%ぐらいがっと二週間ほどの間に上がってしまった、これは私もちょっとあれあれと思ってびっくりしました。  しかし、現在ちょうど一%ちょっとを割ってきたというところは、国債発行十年物の利回り等、表面利回りとかいろいろ考えてみたら、そんなに悪いことではないんじゃないかという感じ。それと、長期金利と要するに短期の金利の差が相当、ちょっと開いてきたということは、これは私は金融機関にとってもいいことじゃないかなと思っておりまして、〇・五四のときはちょっと行き過ぎだったなと、それが戻ってきたのかなという、そういう感じで現在見ておりますけれども、これがずっと一・四まで行きましたので、このときまたびっくりしまして、これがこれ以上また上がっていくようなことになったら困るという感じもして、現在のポジションだったらまあまあいいんじゃないかなと、悪いことではないと見ております。
  115. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 一%程度だったらいいわなと、僕もそうだろうと思うんですよ。  たしか、毎年予算組まれるときに、国債の利率というのは二%ぐらいで、予定で組んでおられる。今年もそれで助かったんでしょう。税収不足、二回ほど。補正予算を組まれたときに、今度は間違いない、これだけの税収があるだろうということで見込んで、実はそれも税収落ち込んでしまったという、正に一体財務省何していたんだろうなというふうに思うこともあったんですけれども、そのときも、実は政府が二%予定していたけれども利率が非常に低かったから、その差額分が何とか歳入欠陥を防げたというような話になっていますが。  そうすると、どの程度、今申し上げた一%程度までゆっくり上がるのはいいですよと。そうすると来年、今年の秋から冬にかけて二%になり、また十二月に三%になり、緩やかに上がっていくものだったら問題ないと。こういうふうに長期金利が、かつてのように四%、五%と、こういう形で徐々に上がっていくものであれば問題はありませんと、こういうふうに財務大臣としてはお答えでしょうか。
  116. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) ただ、それだけじゃございませんで、やっぱり経済成長がどの程度行くのかということ、これが非常に私は金利との関係あると思う。経済成長が逆に停滞していくのに金利だけ上がると、これは私は非常に悪いと思いますし、その点を勘案していくということが非常に大事なところだと思って注目をしております。
  117. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 ところで、七月九日に、財務大臣の方から福井日銀総裁と一度この問題で話してみたいということで会談をされたようなんですけれども、七月九日に福井総裁・塩川財務大臣会談というのは行われたんでしょうか。行われたとしたら、何時にどこで行われたんでしょうか。  ちょっと、これは依然として新聞など読んでも余りそこは明確になっていないんですが、隠すことでもないだろうと思っているので、もしよければ、どちらからでも構いませんが。
  118. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) 私が話しせいということですから。あれは九日でしたかな、たしか。
  119. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 と言われています。九日の何時。
  120. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) 朝ちょっと一緒に食事しながらちょっと会い、一時間でしたけれども、時間なかったものですから。これは、そんな変なところでやったんじゃございませんで、ちゃんとした施設のところでやっております。場所は、言いますとマスコミの関係もございますので、場所はちょっと勘弁してほしいと思うんです。  話しました内容は、総裁がスイスの会議、バーゼルですかのBIS会議に行かれた、その中でどんな話があったのかということ等を中心にお聞きいたしましたこと、その中で総裁から、グリーンスパンの意見がこうであった、トルシェに会った、意見はこうであったということをお聞きしまして、これは大分非常に先行きのことについて参考になりました。それから、私の方は、ASEMに行きましたときにアジアボンドのことについてこういうことになっておるという会議の模様を話をいたしまして、それで今後、債券市場の動向について我が日本の方で大体主導権取ってやっていくような格好になりましたから、これから一生懸命やっていくので日銀も横から協力してもらいたいという、そういう要望をいたしました。長期金利の見通しにつきましては、これは先ほど総裁から話したようなそういう話を私は聞いたと。  お互いに話はしておりましたけれども、一時間ぐらいですから、まあぐじゃぐじゃで済んでしまうことが多いですね。そんなに、議論の結論を出すというような、そんな話じゃございませんで、情報の交換ということが主体でございました。
  121. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 どこでやったか、マスコミがあれだからというので明らかにされないんですけれども、天下の財務大臣と日銀総裁ですから場所ぐらいは明らかにしてもいいんじゃないかなという感じはしますが、それ以上は私自身も追及するつもりはございませんが。  さて、そのときに、長期金利が上がっていったときに、これからの国債管理政策といいますか、財務大臣の方とすれば当然国債発行の問題になりますね。何か超長期債をあれだとか、あるいはシンジケート団を整理するとか、様々なことをいろいろと提起されているようなところがありますし、日銀は日銀でまた恐らく、これは長期債を買い入れるのにどうしようかとか、そういったオペの政策なんかも含めて、そういう話合いはなされなかったんですか。
  122. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) その話の中にはございました。
  123. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 あったんですか。
  124. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) ええ。それは日銀総裁の方から、発行について多様性と、それから、何といいましょうか、情報の収集を十分にやられたらどうだというサジェスチョンがございました。  発行の仕方について、例えば長期債と短期債を適当に組み込んでいくというようなこともございましたし、それからできるだけ募集について多様性、例えば郵便局とか、それから中小金融機関等でそれをさばいていくということも、これも一つのいい手段じゃないかと、そういうようなことをいろいろ話をしたということがございまして、そういうことが国債管理政策の一環であろうと、私はそう思っております。
  125. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 総裁もそんな話だけだったんですか、それともオペの話なんかもされたんでしょうか。
  126. 福井俊彦

    参考人(福井俊彦君) ただいまの財務大臣がおっしゃいましたような内容で約一時間お話をさしていただきました。違っているのは、二人で自然に大阪弁で話したという点だけは違います。  一つだけ、私、大臣国債管理政策についてお話し申し上げました趣旨は、本当にこれから、みんなで努力しているように日本の経済がいい方向に向かう場合、財務大臣のお言葉をかりれば、持続的な成長に見合って長期金利が上がっていく場合、これはもう当然起こる、ある意味で望ましい現象なんですけれども、ただそれを普通に考えていていいかどうかということになりますと、これだけ超緩和というものを長く続けた後の話であるし、その間に国債の発行残高というものが非常に累積していると、この二つの条件考えながら、先行き本当に望ましい長期金利が形成されるかどうかということは注意深く見ていかなきゃいけないでしょうと。恐らくこういう頭で私はお話を申し上げさしていただきました。  その点だけが強いて言えば付け加えさしていただくところでございます。
  127. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 大阪弁で話されたということになると、きっと阪神タイガースの話も話題になったのかなと思って、(「いやいや」と呼ぶ者あり)いえいえ、これは決して野球の話が、談義が悪いということじゃなくて、私は、実は景気は気からというのはよくおっしゃるんですけれども、決してそういうことで言っているんじゃない。  私、かつてこの委員会でもお話ししたことがあるんですが、アメリカの政治学者にロバート・パットナムという人がいて、イタリアの北イタリアと南イタリアがなぜ経済的に格差があるかというときに、北イタリアは非常にそういう、フットボールチームの問題だとかクラブ組織とか、そういうものが非常に密接に地域をネットを結んでいると、そして人々の連帯も非常に強いというのが経済にとって非常に重要だということで、そういう意味では、そういう正に関西で今阪神タイガースが躍進しておるというのは、きっとその地域の皆さん方も飲み屋に行っても交流したりいろいろつながりが増えていくという点で、私は非常にかなり合理的な根拠があるんではないかなというふうに思っておりまして、私の応援しているチームはちょっと違うんですけれども、最近低迷しているものですから、是非、北海道なんかも少し頑張ってもらいたいと思っているんですが。  ちょっとその話は別にいたしまして、今日は余り、もう十五分程度なので事実関係を中心にして今日お聞きしておきたいと思うんですが、五月下旬にFRB、元FRBですか、バーナンキさんという方、有名なバーナンキという方おられますね。日銀の幹部の皆さん方と会合があったと、新聞報道などにあるわけでありますが、そこでは一体何がお話し合われたのか。これは理事の方でも結構ですし、総裁でも構いませんが。
  128. 白川方明

    参考人(白川方明君) お答えいたします。  議員御質問のように、FRBのバーナンキ氏は現職のFRBの理事でございます。また、欧州復興開発銀行のバイターさん、この方は学者でイングランド銀行の元金融政策委員ということでございまして、日本銀行にも旧知の人が非常に多いということでございます。五月から六月にかけまして来日された機会に日本銀行にも立ち寄られ、何人かの役職員と会いました。  その際の話題でございますけれども、バーナンキさんはアメリカ、それからバイターさんは現在今ロンドンにいらっしゃいますけれども、日本あるいはアメリカ、欧州の景気、物価情勢や、あるいは金融資本市場の動向などにつきまして一般的な意見交換を行ったということでございます。
  129. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 一般的な景気動向の情報交換だけだったんですか。それとも、我々余り報道が十分なされていないんですが、私ども民主党、野党第一党ですけれども、よくIMFとか世界銀行の幹部の方、来られるんですよ。来られるたびごとに、実はインフレターゲットの話をよくされるんですよ。今、日本の経済のデフレ状態に陥っている状態から回復するためには、もうインフレターゲットを取る必要があるんじゃないですかと、こういう話を随分得々と私たちにお話をなさることが多いものですから、バーナンキさんもたしか、インフレターゲットではありませんが、何というか、政府紙幣を発行しと、ちょっとかなり実質上、国債の日銀引受けみたいなような、そんなことになりかねないような話をされるようなことをちょっと私どもも聞くことがあるんですが、そういう金融政策をめぐって、特に今の日本のデフレをどうしたらいいのかという、そういう意見交換はなかったんですか。
  130. 白川方明

    参考人(白川方明君) お答えいたします。  バーナンキ理事は、理事に就任される前、プリンストン大学の先生でございまして、元々有名な経済学者でございます。そういう立場でこれまでいろんな論文をお書きになっていまして、今回日本に来られたときにも金融学会での講演をされました。今、議員がおっしゃった話は主として金融学会で講演されまして、それは、日本銀行国債を市場から買い入れると。一方、政府の方は国債を発行したその資金でもって減税を行っていくという、そういう政策提案を学会でもされておりました。  そういう学問的な意味でのいろんな政策提案、こうしたことももちろん話題にはなってまいりますけれども、IMF等と違いまして、何か特定の政策をめぐって、こういう政策を何か明確に要請をするとかあるいは議論するのではなくて、あくまでも一般的にいろんな意見交換を行ったというふうに認識しております。
  131. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 金融学会でそういう話をされたのは分かるんですが、そうではなくて、日銀の今取っている量的緩和の政策とか、介入に及ぶような、こうしろああしろという、昔、ルービンさんの後のサマーズさんなんというのは、比較的結構押し付けがましい何か対応を取られたというような話がありますが、そうじゃなくて一般的に、こういう政策が今日本銀行の政策では不十分ではないですかと、そういう中身上の討論というかディスカッションはあったんですか、ないんですかという、そこをお聞きしたいんですが。
  132. 福井俊彦

    参考人(福井俊彦君) バーナンキ理事は、今、白川理事から申し上げましたとおり、日本金融学会で講演をするためにいらっしゃいました。私自身も同じ金融学会で、バーナンキさんの方が先でしたかね、バーナンキさんが先に講演をやりまして、翌日私が同じテーマで講演をいたしました。したがいまして、二人とも金融学会で講演をやるんだということが分かっておりましたので、前もってバーナンキさん日本銀行へ来られまして、私自身もバーナンキさんとは食事をしながらディスカッションをいたしました。  バーナンキさんは、日本銀行にこういうことをやるべきだというふうなことをおっしゃるようなタイプな方ではなくて、非常に学者らしい、やはり理路整然と物を考える方であり、自分の理屈というのは日本銀行から見るとどういうふうに理解されるかということをいろいろお尋ねがございました。  私どもの方は実際日本金融政策のかじ取りをやっている立場でございますので、理屈の部分と実践の部分と両方かみ合わさったところがございますが、我々はこういう考え方でやっている、どこがバーナンキさんの理屈と合う部分であり合わない部分であり、実際、バーナンキさんが日本の実際のところはどこまで理解しておられるかというふうなことについてのフランクな意見交換はもちろんいたしました。しかし、お互いにそれを押し付け合うとかそういうことではなくて、そういったお互いの考えを含んだ上で、翌日、バーナンキさんが金融学会で講演をされ、そしてその翌日、私が同じ金融学会で講演をしということでございまして、両方のテキストブックの中に議論のすり合わせができた部分はある程度入っているというふうに思います。
  133. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 もしまたそういったことの内容がオープンにできるようであれば、どこかでやっていただければなと思いますが。  さてそこで、日銀のこれからの、いわゆるゼロ金利状態がずっともう続いているわけですけれども、たしか前回、日銀総裁とこの委員会お話をさせていただいたときも、ゼロ金利の弊害というものが、非常にここでも副作用と、きさらぎ会でもたしかゼロ金利の副作用のことを触れられているんですが、ゼロ金利であることのマイナスと、それからゼロ金利であることの言ってみればメリットといいますか、ここでゼロ金利が大きな効果を果たしているんだと、こうおっしゃっているんですが、私からすると、かえってマイナスの方が大きくないかなと。何度もこのお話をしているんですが、ゼロ金利であることが構造改革を遅らせているんではないかというふうに思えてならないところなんですね。  それは、正にマーケット、市場ですから、当然、多少の金利が払えない企業というのはやはりどうしても退出せざるを得ない。ところが、それを退出させないで実は維持できているというのは、どうもこの金利がゼロであるがゆえに貸出し金利が非常に低く抑えられている。当然、それは本来ならば、社債発行をやれば大変高い社債の利率を払わなきゃいけないのに、銀行がそういったところに対してはかねてからの追い貸しをずっとやってきているという、そんなような状況がずっと何か今、これが今日の正に大きな問題になっているんではないかなというふうに思えてならないんですね。  それともう一つは、何度もこれは、我々が地元に帰ると、金利が全く付かないということで、個人の預貯金ですね、それに対する利息が付かない。利息収入が、実は本来家庭に入るべき利息収入というものが銀行部門の方に移っちゃっている。その銀行部門が本来ならそれを貸出しに、八%であれば十二・五倍まで、四%であれば二十五倍貸して、実はそれがどんどん貸出しに回っていくんだったらいいけれども、それが国債に回ったり、全然企業部門に回っていない。そうすると、このゼロ金利の弊害の方が大きくありませんかねというふうに思えてならないんですよ。  その意味で、そういった点で日銀の中でももちろんいろんな議論をされているんでしょうけれども、一体これは本当にいつになったら効果を表すんでしょうかねと。物価は消費者物価が安定的にゼロ以上になるまでということをおっしゃり続けているんですが、これは本当に一体どんな状況になったらこのゼロ金利状態というのは緩和されるんだろうかねと。そうこうするうちに、こんな二年半も異常な状態が続けば、必ずこの反動はどこかに私は来ると思うんですよ。だから、それは恐らく危機なんだと思うんですね。  たしか、竹中大臣、今度の骨太の第三弾の中に財政破綻という言葉が出てくるんですよ、財政破綻、財務大臣。その財政破綻というものが、もちろん財政破綻だけが危機のすべてではないと思っているんですが、本当に今日の状況の中でこの状態をいつまでお続けになるのかな。そして、もしできれば日銀の持っておられるスタッフを使って、一体、今、ゼロ金利をやっていることの方が国民経済的にとってみると有利なんですよと、これは金利が少々上がって預貯金の金利が上がるよりも、企業が倒産をしたり、そうしたことの方がかえってマイナスなんですよと、こういったバランスシートみたいなのをもし作っていただければ我々も納得できるんですが、私自身は、どうもこのゼロ金利状態というものが持続していることが、資本主義が資本主義でなくなっているような状態を作り上げちゃっているんじゃないかというふうに思えてならないんですが、この点について改めて日銀の見解なり、あるいはもし、これでもう時間も少なくなりましたから、竹中大臣あるいは塩川大臣の御見解も併せて伺えればと思っています。
  134. 福井俊彦

    参考人(福井俊彦君) 構造調整の進展を、金利水準の低さというんでしょうか、それがどの程度妨げるか、つまり、構造改革の進展のスピードに対してある意味で逆のブレーキを低金利が掛けるかという問題は、ゼロ金利の瞬間から始まったというよりは、それ以前の段階から、金利を引き下げてくる過程で常にやっぱりある問題でございます。  民間のエコノミストの中にも、非常に早い段階から、金利はもっと高くして構造調整を一挙に進めろという議論をなさっている方もずっと以前から存在いたします。そういう意味では、日本銀行は、ゼロ金利になる以前から、金利を引き下げる都度、やはり金利引下げによる効果と副作用というものをいつもやっぱり頭の中に置きながら、しかし、マクロの観点からいえばやはり金利引下げのメリットの方があるという判断の下に今日まで来ていると。ゼロ金利という瞬間あるいは量的緩和に踏み切った瞬間以降は、それに加えて、マーケットの機能、我々の直接のプレーグラウンドであるマーケットの機能も損なわれてきているという更に追加的な副作用も念頭に置きながら、しかしなおかつマクロのメリットの方が大きいという判断で今日まで来ているということでございます。  事前に、どちらの効果、つまりメリットと副作用とどちらが大きいかということをバランスシートのように描いて提示できれば、これは一番望ましいわけですけれども、恐らくそのシミュレーションは正確には不可能でございます。かえってその提示は政策的な意見の混乱を招くリスクの方が大きいと思いますのでそれはできませんけれども、実際、政策を進めてまいります都度、構造調整がどれぐらい進展しているか、あるいは過度の摩擦が生じていないかということを点検しながら進んできているということを申し上げさせていただきたいというふうに思います。
  135. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) 福井総裁がおっしゃったことに特に付け加えることはないと思っております。  ただ、一点。金利、今話題になっているのは当然名目の金利でありますけれども、一方で実質の金利、インフレ率がマイナスでありますから、実質金利はどれほど低いのかというような点についてもやはり議論はあるところであろうかと思います。名目金利で判断しなければいけない場合もある。実質金利で判断しなければいけない問題もある。そうした点も含めて日本銀行において金融の総合的な政策が取られているというふうに思っております。
  136. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) 両者がおっしゃいましたのと大体私も同じ意見でございまして、現在は安定しておるからこれで注目して経過を見るよりしようがないと思っておりますけれども、しかし、これだけ低金利状態、ゼロになってしまいますと、金融政策が非常に難しくなってきたということが、これは私も日銀の御苦労を察するに余りあるんですけれども、そういうことは感じます。  ただ、これがマイナス金利になってきた場合困るなということを思いまして、そうならないような手だてはやっぱり考えておかなきゃいけないんではないか、こう思っています。
  137. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 構造改革、これの最大の目的は資源を効率のいいところに配分していくということですよね。そうすると、効率がいいということは、当然のことながらそこで付加価値を高めていける分野にお金が回るということですね。それが付加価値の回らないところにまでどんどん進展しているんじゃないかと。つまり、お金が本当に効果的なところに行っていないんじゃないのかというふうに私どもは、今のゼロ金利状態、確かに名目と実質、実質金利から見れば、物価上昇率がマイナスですから、その分、利率は高くなっている。一%でも三%でもなっているかもしれないというのはあったとしても、本当に実は、例えば有利子負債に対して利益がどのぐらい上がっているのか、ほとんど上がらない企業がずっと存続をし続けるという状態が続いているわけですよ。それと、株価ももちろん低下している。ところが、なかなかそれがずっと存続して実は過剰な供給体制というものを形成しているのではないか。それが正に構造改革の必要性なのでありまして、その構造改革を、やあ、産業再生機構を作った、ところがだれも持ってこない。日銀もたしか、いや、銀行に言って、金融担当大臣もそうでしょうけれども、産業再生機構へ持っていく企業はようやく第一号が、今日何かダイア建設とかというのが出ていましたけれども、作ったけれども何にも機能しないものがこの間何ぼあったんだろうかと。先ほどの八%の条項を取った法案もそうでありますけれども、銀行保有株をある意味では買い取っていきましょうという、これもほとんど機能しなかった。  要するに、何でそういうものを作っても機能しないのかというと、それは、人為的にかなり国がいろんな形で、市場の中にも手を突っ込むようなことをしていったわけですね。ところが全然それは機能しない。おまけに、ある意味では今申し上げたように金利機能が効いてないために全然その話が進んでいかないということでですね。そういう意味で……(「時間だよ、五十七分だ」と呼ぶ者あり)ああ、ああ、ごめんなさい、ごめんなさい。四時までと思っていたんで。  もう最後にしますが、いずれにしても、その問題は私は、恐らく必要なところにお金が行かない仕組みというものを日銀自体が用意していて、構造改革をやれ、やれと言っても、これはブレーキとアクセルを両方踏んでいるような感じがしてならないんですが、その点をお聞きして、私、最後、終わりたいと思います。  済みません、失礼いたしました。
  138. 福井俊彦

    参考人(福井俊彦君) 金利は資源再配分機能を果たす最も重要な道具立てでございます。それが少なくとも名目金利で見る限り資源再配分機能を著しく減殺している状況、しかもそれが、金融政策の結果としてそれが出ている状況、これは非常に大きな副作用だというふうに私どもも率直に認めております。  しかし、今のマクロの経済情勢から見ると、それをも乗り越えて、やはり今の量的緩和を更に続けざるを得ない。その効果を全うさせることによって必ずデフレ脱却のパスにたどり着くことができると、この点については私どもは確信を持っているということでございます。
  139. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 終わります。
  140. 大門実紀史

    大門実紀史君 日本共産党の大門実紀史でございます。  資料を配っていただけますか。    〔資料配付〕
  141. 大門実紀史

    大門実紀史君 今お配りしている資料は、五月の二十九日の予算委員会竹中大臣に御質問した資料でございまして、ただ、そのときは時間が短かったんで、私、これ大変重要な日銀の資料だと思っているんですけれども、この問題だけで詳しくは聞けなかったんです。それで今日は、日銀福井総裁を含めてじっくりお聞きしたいと思いまして、配付をさせていただきました。  日銀が作られた資料なんですけれども、日銀が作られた資料を基にグラフにしただけなんですが、日銀の資料を日銀の質問で私が説明するのも変なんですけれども、ちょっと私の説明がもし違ったら正確にしてもらうという、補足もしてもらう意味で私の方から説明をいたしますけれども、何を表しているかといいますと、日本の大手行の今年の三月決算時点までの自己資本の内訳でございます。  まず、公的資本というのは何かといいますと、これは公的資金のうち優先株の部分だけの数字です。民間資本というのは何かといいますと、これはティア1、中核自己資本ですね、それから公的資本と繰延税金資産を引いたというふうな逆カウントで出てくるのが民間資本。そして税の、繰延税金資産と、その三つの推移を表したグラフでございます。〇〇年度、これは具体的に言えば十三年三月末から〇二年度末、すなわち今年の三月末までのものをグラフにしたということですね。  何を表しているかということで申し上げますと、全体として大手行の自己資本というのは縮小していると。これはもうそのままの数字です。中でどういうふうなことになっているかといいますと、この間問題になってきました税の繰延資産が、ずっと数字も増えておりますけれども比重も増している。公的資本、この数字は変わりませんが、比率としてはずっと自己資本に占める比率が増えてきている。つまり、今、純粋な民間資本というのが非常に限りなくゼロに近づいていって、大手行の自己資本の内訳というのは、公的資本と税の繰延資産、まあ言わばかりそめの自己資本ですけれども、そういうものだけになっているというふうなことです。  これ、計算上は、例えば今年の〇二のところですけれども、今年の三月末は民間資本、マイナス二・〇になりますが、これはバランスシート上のマイナスという意味です。つまり、何といいますかね、非常に異常な日本の大手行の自己資本の中身はなっているということですね。  こういう状態だということを踏まえて公的資金の議論を私はすべきだということでこの資料を予算委員会のときにお配りしたわけですが、日銀が作られている、これはあれですよね、毎年作られている、八月ごろですかね、全国銀行の決算でしたっけね、それに基づいて作られているのを並べただけと。ただ、今年の三月末については、まだ今年の八月ですから、こちらの方で計算方法をお聞きして、計算してグラフにしてというだけだと思いますけれども、まず、このグラフの見方、それでよろしいかどうか、補足があればちょっとお願いしたいと思います。
  142. 三谷隆博

    参考人(三谷隆博君) お答えいたします。  ここにある数字、それぞれそれの正確な数字ではございますが、ただ、この民間資本というものの出し方が、全体の資本合計額から公的資金を引いて、かつ繰延税金資産を引いたものが民間資本というふうにここでは定義されているわけでありますけれども、これはちょっと私どもとしてもおかしいのかなという感じがいたします。  今あります資本勘定は、基本的に公的資金があり、また民間資金があり、それと別に、その資本勘定をどういう資本が入っているかということとは別に、繰延税金資産として、これは別に資本注入されているわけではなくて、繰延税金資産に見合ったものとしてどの程度の額があるのかということが本当は議論されるべきだという意味では、そういう意味では、民間資本をもし定義するとすれば、全体から公的資本の六兆円を引いた額を一応民間資本として、その全体の中で繰延税金資産がどれぐらいのウエートを占めていると、そういうふうに考えるのが適当ではないかというふうに思っております。
  143. 大門実紀史

    大門実紀史君 それ、よく分かります。例えば、やっぱり今年の三月末のところで、表示的にマイナス二・〇になってしまうというところで、やっぱりちゃんとした、分かりやすくしないと誤解を与えるという意味ですよね。  つまり、それまではこのグラフどおり、毎年日銀が出しておられたそのままですから、今年の時点でちょっと誤解を与えて、何か民間資本がマイナスになっているのかという意味で今説明があったんじゃないかというふうに思います。  ですから、あれですね、グラフの作り方を今度変えられるということをお聞きしていますけれども、これだと何か、要するにマイナス二・〇、民間資本がもうマイナスになっているのかと思われるという、誤解を与えるという意味でね、それはよく分かるんです。  そういうふうに、今年の〇二のところですね、三月末は見ていただくという前提ですが、いずれにせよ、私これ、二〇〇一年の、二年前の秋だったと思いますが、速水総裁にこの質問をいたしまして、速水総裁がそのときに、つまり、速水総裁のときは一番左の〇〇年度の、まだ民間資本が十一・四兆円ある時点でお聞きしたんですが、そのときに速水総裁が、この時点でいきますと、アメリカ並みの計算をしてみると、仮にですけれども、アバウトなところあります、確かに。ただ、アメリカ並みの計算、つまり公的資金を抜いて繰延税金資産を一年分、アバウトなところありますけれども、仮に一年分だけ計算に入れてみると、日本の大手行の自己資本比率はどれぐらいになりますかとお聞きしたら、七%台ですと、八%割っておりますというふうな、速水総裁言われたんですね。それを非常に危惧されておりまして、それで本当に、取りあえず見かけ上は一〇%超えたり当時はしていましたけれども、いいんだろうかと、海外の評価、市場の評価含めてね、そういうことを速水総裁は非常に心配されていたわけです。  ちなみに、今年の三月末、そういう速水総裁の計算、つまり公的資金抜いて税の繰延べを一年分だけカウントした場合、何%ぐらいの自己資本になりますか。つまりアメリカ並みに見ると。
  144. 三谷隆博

    参考人(三谷隆博君) 申し訳ございません。  ちょっと計算をあらかじめしておりませんので、答えがちょっと正確な数字は申し上げられませんけれども、この三月末、大手行、総じて平均してみますと大体九%台半ばの水準でございます、自己資本比率が。この三月末の自己資本比率ですね。そのうち公的資金が資本勘定の約半分を占めておりますので、仮に同じような計算をするとすれば、その九%台半ばの半分ぐらいというのが一応の答えになるだろうと思います。
  145. 大門実紀史

    大門実紀史君 それは違うんじゃないですか。私、日銀に出してもらった資料手元に持っているんですけれども、二%台と。これ、日銀の資料でいただいているんですよ。計算の仕方も全部中に書いてあって、それで計算すると二%台。速水総裁言われたときは、確かに七%台と。
  146. 三谷隆博

    参考人(三谷隆博君) 失礼いたしました。  今、繰延税金資産一年分というところをちょっと忘れておりましたので。繰延税金資産を仮に一年分しかカウントしないということであれば、おっしゃるような数字になるはずでございます。
  147. 大門実紀史

    大門実紀史君 私、今日はちょっとじっくり、今の現状をどう見るかということで見解なりお伺いしたいという意味で、何も二%だといって騒ぐとか、そういう意味で申し上げているのではないので、数字的に正確にした上で質問したいと思うんです。  ちなみに、このグラフでいきますと、十四年三月、つまり〇一のところですね。〇一のところでもう三%台にその計算でいくとなっているんですね。速水総裁は、七%台、この〇〇年度のときにもう七%台で、これじゃ、名目といいますか、見掛け上は八%クリアしているけれども大変心配だとおっしゃっていたのが、今おっしゃったとおり二%台ですね。  これは福井総裁としてどういうふうに評価、まずされておりますか。
  148. 福井俊彦

    参考人(福井俊彦君) 大手銀行のいわゆる資本的厚みの中で非常に、何と申しますか、不良債権の処理額がここ数年非常に大きくなっている結果として、公的資本のウエートが上がり、繰延税金資産のウエートが上がりという状況になってきております。  これが意味するところは、やはりこれから先、不良債権の処理の手心を緩めるというんではなくて、やっぱり引き続きなるべく早く不良債権を処理しながら、一方で民間としては資力を付けていかなきゃいけない、つまり収益力を上げていかなきゃいけない、こういう課題により厳しく直面してきているという意味だと私どもは理解しています。  これは、新しいビジネスでどんどんもうけるという話が最終的なゴールなんですけれども、不良債権処理の問題にいたしましても、いわゆる企業再生というふうな努力をもっと重ねた場合には、企業の中で将来有望な部分と将来有望でない部分、これをはっきり切り分けて企業再生を図れば、企業も収益力が回復するし、金融機関もつれて収益力が回復する、それで当該企業分類上の基準が上がることによって不良債権も消える、こういうプロセスが実現できるわけでありますので、実際、いろいろな金融機関においてこういう方面の努力の姿勢が今強まっているという状況でございます。私どももそうした金融機関の姿勢を強くバックアップしていきたいと、こういうことでございます。  非常に難しい課題でありますけれども、自己資本が落ちてきていることは不良債権の処理が進んでいるということと同義でございますので、どんなに厳しくとも、ここでひとつ折り返しをして金融機関の収益力を高めていかなきゃいけないということだと思っております。
  149. 大門実紀史

    大門実紀史君 それは今後どうするかというので、私お聞きしたのは、今時点で、海外の、速水総裁心配されたような、格付の問題も含めて、そういう今の時点でのマーケットの評価といいますか、いろんな評価について今はこの現状をどう思われるかという意味でどう思われますか。
  150. 福井俊彦

    参考人(福井俊彦君) 海外の日本金融システムないしは個々の銀行に対する評価は依然として厳しいものがございますけれども、しかし、ひところに比べますとやはり不良債権問題の処理が進展している、しかもその局面が、やっぱり企業再生の段階、更には金融機関の収益力そのものの構築というふうに局面変化もだんだん伴ってきているということは、海外の目から見ても、決して早いとは言えないけれども、やはりそれなりの進展をしてきているという評価が加わってきているような気はいたしております。
  151. 大門実紀史

    大門実紀史君 じゃ、こういう現状は海外のマーケットを含めて知られていますよね。知られた上で、これは良くなりつつあるというふうに今見てくれているというふうな評価をされているということですかね。もしあれば。
  152. 福井俊彦

    参考人(福井俊彦君) 決してまだ十分だという評価を受けているとは思いません。しかし、以前に比べてそれなりに前進が見られるという評価にはなってきているというふうに思います。
  153. 大門実紀史

    大門実紀史君 竹中大臣も、予算委員会のときにはもう短い時間でしたのでぱっぱっとしかやり取りできませんけれども、もしお考えといいますか、まずどういう評価されるか、お考えあればお聞きしたいと思います。
  154. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) 何度も申していますように、不良債権問題の終結に向けては三つのことをやらなければいけないと。資産査定の厳格化、自己資本の充実、コーポレートガバナンスの強化、すなわち収益力の向上、それぞれをどれ一つ欠かせることなくバランス良くやっていかなければいけない。  この図で、今、自己資本のことを議論していただいていますが、必要があればもちろん公的資金、りそなの場合そのように行ったわけですけれども、そうした我々が持っている政策のツールを活用しながら、今申し上げた三つの点をバランス良く解決に向かって進めていきたいというふうに思っています。
  155. 大門実紀史

    大門実紀史君 例えば、これはりそなが数字、この公的資金、資本に入っていませんから、これが更に深まる結果になると思うんですよね。  そういう点でいくと、予算委員会のときには厳しい言い方申し上げましたけれども、本当に公的資金漬けになっちゃっていて、これは福井総裁言われたように、収益力回復していつこれが解消できるのかというのが非常に危惧されるわけですけれども、当然こうなったのは、不良債権処理に伴う処理損もありますけれども、株価の問題とか、いろいろ複合的にこうなっているというふうに思います。  まず、公的資金の、これから、例えばりそなにすぽっと入れられましたけれども、今の竹中プランだと更に公的資金が入る銀行が出る可能性はないとは言えませんですよね、率直に言って。だから、引き揚げる方向といいますか、解消される方向というよりも、まだ公的資金がこういう入っていく、こういう流れの中に私あると思うんですけれども、その辺はちょっといかがですか。
  156. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) 例えば、今の時点で、今後公的資金の注入がどのぐらい必要であるかとか、そういった予見、予断を持っているわけでは全くありません。企業には、銀行にはしっかりと資産査定をしていただきたい。そのための枠組みは作ったつもりであります。自己資本充実のためにはまず自ら努力をしていただくというのが当然の原則であろうと思います。  しかしながら、何といっても重要なのは、コーポレートガバナンスの強化、それによって収益力を高める、それによって公的資金、注入された公的資金をどのように回収するかに関してはいろんなパターンがあると思いますが、例えば剰余金を蓄積していっていただいて回収する場合もあれば市場で売却する場合もあるでしょうが、いずれにしてもその前提になるのは、収益力を高めてその内部にしっかりとした余剰を持っていただくということでありますから、そうした方向に向かって引き続き努力をしていただかなければいけないと、この点は変わらないと思います。
  157. 大門実紀史

    大門実紀史君 まず、返せるかどうかということなんですけれども、金融庁の方から各銀行の経営健全化計画いただきまして、これは公的資金の返済も計画もこの中にあるわけですけれども、相当甘いんじゃないかなと。今の時点でですね、これ以上入れないと。今まで入れられたものを返すだけでも相当厳しいんじゃないかと私思います。  といいますのは、これからまだ不良債権処理、大手行だけで十兆円規模のオフバランスしなきゃいけない、景気の見通しもそんなに良くなるとは思えないという中で、この経営健全化計画、一々一つ一つ言いませんけれども、大手行だけにしたって厳しいような気がいたしますけれども、これは返せるというふうに判断されていますか、金融庁。もし御見解あれば日銀の方もお聞きしたいと思いますが。公的資金、今まで入ったのが計画どおり返せるかどうかと。
  158. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) 先ほども言いましたように、公的資金については、利益をもって償却する場合、さらには、しっかりと内部蓄積をしていただいて、それが株価に反映されて、これはりそなの場合は普通株で入れておりますから、それで市場で売却する場合、いろんな場合があろうかと思いますが、それを可能にしていただくような基本的には経営健全化計画を作っている。我々としては、そうした経営健全化計画がしっかりと実行に移されるように、このフォローアップは、これはしっかりとしていかなければいけないと思っております。  そうした観点からも、それぞれの決算期については、その収益の状況をしっかりと把握しながら、例えばいわゆる三割ルール等々を我々は作っておりますから、そうした点、金融再生プログラムないしはそれに基づいて作られたガイドラインに基づいてしっかりと監督をしていくというつもりでいます。
  159. 大門実紀史

    大門実紀史君 今度、あれですか、業務改善命令を出してでも三割ルールをクリアしろというような、それぐらい厳しくやっていかれるということですか、いわゆる収益を求めるという意味では。新聞報道でありましたけれども、ちょっと確認だけ。
  160. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) 新聞報道は承知をしておりますけれども、今、我々まだ決算の数字を精査している段階でありまして、今の時点でどのような監督上の措置を取るかということを決めているわけではありません。ただ、いずれにしても、我々としては幾つかのルールを持っております。そのルールにのっとってしっかりと監督をやると、これはやっぱり我々の務めだと思っています。
  161. 大門実紀史

    大門実紀史君 この経営健全化計画が、各行の、大手行のやつが甘いとかいろいろ今言っても仕方ないとは思うんですが、頑張ってもらうしかないというのも、返してもらうしかないというのもありますから、ただ、ちょっと前提として、銀行によって違うのかも分かりませんが、それぞれ経済見通しというのを立てているんですね、各行。これ、何%か御存じですか。
  162. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) 済みません、ちょっと御質問、その点はいただいておりませんでしたので、正確な数字を個々に記憶はしておりませんが、基本的には、政府経済見通しなり政府の中期的な経済の枠組み、それに沿っている、ないしはそれとは最低限矛盾のないものになっているというふうに思っています。
  163. 大門実紀史

    大門実紀史君 そうしたら確認してください。  例えばみずほなんかは二%で見ていますし、かなり高いんです、経済見通しそのものが。だから、ちょっとそれが前提だと違ってくるんじゃないかというのもありますし、いずれにしても剰余金を出す計画ですから、経済見通しがどうであろうとこれだけ出してもらわなきゃいけないという意味ではいいのかも分かりませんけれども。少し、どういいますか、なかなかそんなに簡単に返せるというふうには普通には思えませんので、是非この点は点検をしてもらいたいというふうに思います。  さっきの話、この表に戻りますけれども、ですから私、申し上げたいんですけれども、公的資金を入れてでも不良債権を一気に処理しろとか、いろんな議論があります、率直に言って。いろいろあると思いますけれども、入れて、入れた後どうなるのかと、これ以上入れた後どうなるのかということも考えながらやらないと、不良債権はなくなったけれども、みんな公的資金漬けの銀行になってしまったという、化け物みたいなのを一杯作っちゃったということも、その寸前まで私は行っているというふうに思いますので、公的資金の議論は、そういうふうに、性格、入れた後どうなるかということも含めてしていっていただきたいと思いますし、それは引き続き取り上げていきたいと思います。  もう一つは、これはちょうど速水総裁のときに御質問したときに併せて聞いたことなんですけれども、田谷さんでしたか、田谷審議委員、田谷理事さんでしたっけ、今もうおられないんでしたっけ、田谷さんだったと思うんですけれども、済みません、ちょっと手元に資料なくて記憶だけなんですけれども、いわゆる負債を伴う、負債になるような、簡単に言えば返さなきゃいけないような公的資金、公的支援というのはこういうふうにどんどんどんどんこういう事態になるので良くないんだと、私質問したんですね。そのときにちょうどRCCに日銀が支援をするという話が出ていましたので、そうしたら、直接銀行に入れるのじゃなくてRCCを通じてやるとか、そういうことなのかという質問をしたら、具体的にそんなことは考えておりませんという話が確かにあったんですけれども。  例えば先ほどの株買取りの問題。日銀が株を買い取るのもそうですけれども、何か直接注入するとこういった事態になるので、ほかの迂回して公的支援をやるというような、そういう枠組みがずっと出てきているような気がしてならないんですけれども、そんなことを考えておられますかと言って、そうですと言うわけないでしょうけれども、何かほかのところから公的資金を入れるという枠組みがずっとこの間出てきているんで気になるんですけれども、絶対そういうことはないですよね。
  164. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) ちょっと具体的に委員は何を御指摘になっておられるのか。例えば、これは公的資金そのものも預保を通じてもちろん入れるわけでありますけれども、それ以外、例えばもう見えない形で公的資金が入るとか、そういうようなものは基本的にはあってはいけないというふうに思っております。  これは例の、この国会でも御審議をいただきました、地域金融機関を主として対象とした組織再編の特措法とか、こういうものもこれは直接念頭に置いておりますし、これは非常に国民から見てもやはりビジブルなものでなければいけない。なぜならば、やはり公的資金の注入、これは委員御自身もおっしゃいましたように、お金を入れるだけでは駄目で、その後のガバナンスがきっちりと整うということをもって初めてこの公的資金注入の意味も出てくるわけでありますから、そのガバナンスの強化と一体になっているという意味では、やはりビジブルであって、ガバナンスの強化を伴っているような、そういうシステムでやらなければいけないと思っております。我々としてはそういう観点から常に制度設計をしているつもりでございます。
  165. 大門実紀史

    大門実紀史君 私申し上げたのは、例えば今日の株買取り、事実上、銀行の損を公的資金で埋めるような枠組みになっていると。ところが、銀行に直接公的資金入れるわけじゃないと。こういうような仕組みが結構出ているという意味で、そういう危惧を申し上げたということで、透明性という意味じゃないんです、間接的支援という意味で申し上げたわけです。  日銀報告、日銀に対する質問に話は戻りますけれども、資料の二枚目に、日米の長期金利についてグラフにした、これも日銀からいただいた資料で、作っていただいた資料です。  前回の日銀報告のときに福井総裁に、私、日米の資金循環といいますか、マネーの流れのことを御質問いたしました。具体的に言えば、イラクの戦争支援につながる、つまりアメリカの財政を支えるようなお金の流れになっているということを指摘したわけですけれども、今回は、それと関連するんですが、日米の長期金利金利差をグラフにしたものです。これ、よく言われるんですけれども、写真金利と。見たとおり、もう影で映したように、ずっとアメリカの方がとにかく高くなるように見事に動いていると。これについて、よく経済学者の方々が写真金利だという言い方をされているわけです。  これはもう時間がないので幾つかまとめてお聞きして終わりたいというふうに思いますけれども、まず一つは、なぜ見事にこういうふうになっているのか。ただの偶然では私ないと思います。もちろん私申し上げたいのは、何もアメリカに言われたから金利を下げていると、低金利だと、こんな単純なことを申し上げているわけではありません。日本の独自の、何といいますか、低金利政策を取った理由がもちろんあります。ただ、アメリカとの関係も私一つの重要なインパクトだと思っておりまして、そういう点で、なぜこういうふうに見事に絶えず日本の方が低くなる。  カントリーリスクという言い方、御存じだと思いますが、日本から、例えば日本からアメリカにお金が流れる場合、為替とか、いろんな国の事情が違う、いろんなリスク考えると二%以上の差がないと資金が移動する理由がないというので、カントリーリスクと言われています。ですから、アメリカの方が二%以上金利が高くないと日本からわざわざアメリカに投資をする、お金が流れるということはないという意味でカントリーリスクと言われているのは御存じだと思いますけれども、そういうものは大体クリアして、一時近づいていますけれども、近づいたときには必ずアメリカからもうちょっと金融緩和してくれという要請が来たりしておりますけれども、今日はそこまで取り上げる時間はもうなくなってきましたが。  ですから、日米の資金の流れ、前回、福井総裁にお聞きした、日本マネーが、総裁言われたとおり、貿易黒字を解消するために結局はアメリカの国債を買うというふうな流れが、資金循環があるわけですけれども、そういう中でも起きていると思いますが、まず、どうしてこういう見事な金利差が、こういう構図になっているか、御認識をお伺いしたいと思います。
  166. 福井俊彦

    参考人(福井俊彦君) 恐らく、今お示しいただいたのは日本とアメリカの金利の動きでございますが、仮にヨーロッパの金利をもう一枚加えてみましても、やっぱり三者は同じような、少なくとも金利の方向性としては同じような方向性を示しているというふうに思います。  これは、恐らくここ十年ぐらいの間にこの傾向は更に強まっているのかなと私は思いますが、まず実体経済の面で、やっぱり経済のグローバル化の中で、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、各国経済の景気の同時性といいますかシンクロナイゼーション、景気のいいときは同じように良くなる、悪いときは同じように悪くなるという、実体経済が同じ方向に動く傾向がより強まっているということ。それに加えまして、物価の面でも、最近ディスインフレーションという言葉で御承知のとおり、価格形成メカニズムの変化の下で同じような物価の傾向を示す度合いが強まっていると。  そういうふうなことが反映しているのに加えまして、資本移動の自由化の下に国際的な資本移動が非常に活発に行われて、そういう意味では、この国際的な金利裁定が働きやすくなっていると。これらの要因によって金利の動く方向性というものがかなり一致するようになってきていることは事実でございます。  ただし、ごらんのとおり、金利水準という点ではそれぞれかなり格差があるわけです。この開きというものは、それぞれの国の、あるいはその地域の先行きの実体経済の予想、それから物価の予想、併せて見れば名目経済成長率の予想の違いというふうに、長い目で見て、それぞれの国ないし地域の実体経済の相違というものも同時に反映しているというふうに考えております。
  167. 大門実紀史

    大門実紀史君 もう時間がなくなってきましたので、この議論、これもこれで私は大事な問題だと思っていますので幾つかだけお聞きしたいんですけれども、もちろん総合的な、総合的といえば総合的な要因で金利は決定されますからそういう面もあると思いますが、私は、その決定要因の一つとしてアメリカとの関係があると。ヨーロッパのは今日持ってきませんでしたけれども、こんな単純ではありません。ヨーロッパの場合は国によってまた違います。非常に単純です、日本の場合は。だから、写真金利日本だけ言われるという事態です。  時間の関係で二つだけ。この流れの中で、例えば今の低金利政策、これはいろんな副作用を起こしているというのはもう指摘してきたとおりですけれども、重要なきっかけになったのが私幾つかあると思っています。全部もう取り上げる時間ありません。  この間のこの数年のことで行きますと、九八年四月にアメリカのルービンさんと宮澤会談というのが、例の有名なサンフランシスコの会談がありました。その五日後に無担保コールレートが、あのときは〇・二五ですかね、〇・二五に下げたと。これは二、三年ぶりに下げられたんじゃなかったかと思いますが、下げたと。このときの事情を話すと長くなりますけれども、要するに日本金融不安が高まって、例の六十兆円の金融安定化法とか公的資金枠とかいろいろあったときですね。そういうときにサンフランシスコの緊急会談があって、その五日後に〇・二五に無担保コールレートを下げると。これ非常に重要なきっかけだったと思います。  もう一つは、九九年の一月二十九日ですかね、ダボス会議、有名なダボス会議ですね。これはもう決定的だと私は思っていますけれども、そのときの資料、向こうの高官の発言も含めますと、ルービン、サマーズが日本に、日米金利差が縮まる傾向になってきたからもっと金融緩和してくれと。実はこのときに日銀の国債の購入を求めたという報道があります。これ私、分かりません。報道では言われています。そのときには、さすがに日銀は国債の購入なんかできないということで拒否されて、拒否されてといいますか、そういう話もあったけれども、結局は、二月ですか、二月の十二日にいわゆるゼロ金利政策を取られたと。  私、重要な局面でやっぱりアメリカの強い要請というのはあったというふうに思っているんですけれども、前の速水総裁のときかも分かりませんが、福井総裁もそのとき日銀におられたと、──いらっしゃらないですか、そうですか。全体としてそういう評価はどう思われるか、お聞きしたいと思います。
  168. 福井俊彦

    参考人(福井俊彦君) ひところコンテージョンという言葉が国際金融経済を物語る一つの象徴的な言葉になったわけですが、九七年の後半以降のアジア危機が、やはり経済及び金融両面から世界全般に悪い影響を伝播する。これに対して、それぞれの国が経済政策及び金融政策両面で協力しながら、そうした厳しい状況からいい局面へいかにして切り抜けていくかということが共通のテーマになったということだと思います。  したがいまして、最初におっしゃいましたようなルービン・宮澤会談、これはやはりそういうアジア危機の世界経済への伝播というのがひときわ厳しく見られるようになった時期でありますし、その後それがロシアに飛び火したとか、挙げ句の果てにアメリカにさえ飛び火しかねない。で、象徴的にLTCMの事件というのが起こったと思います。そういう一連の連鎖の中で、やっぱりいろいろな国際的にこれを共同して防圧していかなければいけないということの協力の話合いが行われた。  そういう一環のものでございまして、単に日本の経済金融政策のために何かアメリカと日本が話し合って協議して物事を決めたということとは、かなりそれは、何といいますか、バックグラウンドが違っているのではないかと。当時私おりませんでしたものですから正確ではないかもしれませんが、恐らく私は外から観測しておりましてもそういうことではなかったかというふうに思っております。
  169. 大門実紀史

    大門実紀史君 ただ、……
  170. 柳田稔

    委員長柳田稔君) 大門君、時間ですので。
  171. 大門実紀史

    大門実紀史君 時間になりましたので、資料に基づいてまた質問したいと思います。  ありがとうございました。
  172. 平野達男

    ○平野達男君 国会改革連絡会の平野達男でございます。(「答弁も、時間考えて答弁せよ」と呼ぶ者あり)
  173. 柳田稔

    委員長柳田稔君) 御静粛にお願いします。
  174. 平野達男

    ○平野達男君 ちょっと冒頭、通告申し上げておりませんでしたが、実はこの委員会の前に銀行等の株式の保有に関する法律の議論がありまして、その中の議論の中で、実は、株式取得機構は銀行保有する事法株以外に、事法が、事業法人が保有するいわゆる銀行株、いわゆる持ち合い株ですね、これを買い取る機能が今、前回の法律改正で入っています。  この説明は、いわゆる取得機構が、銀行保有する事法株を買うときに併せて持ち合い株を放出させなきゃいけない。そのときにちょうど、銀行保有する株式というのは当然ティア1という制限を掛けますから、市場の動向にかかわらず強制的に吐きなさいということで吐かせるわけですが、それとセットで持ち合い株も出ていくから、これも市場に大きな影響があるからということで株式取得機構が買うという機能が備わったんです。  ところが、日銀さんは二兆円という枠を設定して銀行保有する事法株を買入れを決定しました。これ八%の拠出金も何もなくてですね。これを改正して三兆円という枠に設定しましたが、既に実績として一・五兆円買っております。このときに、買ったときに、持ち合い株の解消というか、持ち合い株を出さなくちゃいけないというようなことに絡めて何か市場に混乱があったかどうかだけをちょっと確認しておきたいんです。これは通告申し上げなくて恐縮ですけれども、これは先ほどの議論の中で、実は与党の提出者も金融庁もその辺の辺りをよく把握していない。把握していないにもかかわらず、持ち合い株の解消としての受皿が必要なんですよというようなことを盛んに力説しておられましたので、私は、日銀が一・五兆円もう買ったという実績を踏まえれば、実は何も混乱なかったんじゃないかということを言ったわけですが、本当に通告申し上げなくて恐縮ですけれども、そこの感触というか、で結構でございますから、ちょっと冒頭お聞きしておきたいと思います。
  175. 三谷隆博

    参考人(三谷隆博君) 昨年の九月に公表いたしまして、その後いろんな検討も行ってきたわけでありますが、その際、私どもはあくまでも金融機関の株価変動リスクを軽減促進していくということでやったわけであります。  その際、確かに、金融機関企業の株を売る、その一方で企業の株を買ってくれる受皿がないじゃないかというふうな話が一部で出たことはあったようでございます。ただし、我々の目的からしますと、持ち合い解消そのものをねらったわけじゃなくて、金融機関の持っているリスクを減らすということでありますから、企業の株を買うことは、企業の持っている株を買うことはやや性格が違うじゃないかと。もちろん、銀行株ということで、私どもと銀行との関係から見て、やっぱり銀行株は買い難いという面もございますけれども、いずれにせよ、そういうことはできないという話をいろいろそういう照会があったときにいたしまして、それで特に大きな問題は生じなかったというふうに聞いております。
  176. 平野達男

    ○平野達男君 最後に、特別大きな問題が生じなかったという答えがありましたので、しっかり議事録に残されたと思いますので、ありがとうございます。  じゃ、御通告申し上げた質問、三つあります。順次質問していきたいと思います。いずれも実はこれまでに質問を申し上げまして、福井総裁からも御答弁をいただいた内容であります。今回は、確認という意味で再度御質問を申し上げたいと思います。  まず一点目は、日銀の仕事の範囲ということであります。  実はまだ私、財政金融委員会に属しまして二年間たったんですが、日銀さんがどういう仕事をしているかという全体像、果たして分かったのかどうかというのが自信ありません。ただ、今回の資産担保証券の購入、これをどうやらこれは決めて、今具体化に既に動いているようです。それから、先般の銀行の事法株の購入といったことで、今までの、特に銀行保有する株式の購入については、福井総裁も、今までの仕事の範囲からちょっと一歩あるいは半歩踏み出たというような御答弁が前の財政金融委員会であったかと思うんですが、どうも日銀の仕事の範囲というボーダーが一体どこにあるんだろうかと。  特に、資産担保証券の購入につきましては、今までの御説明聞きますと、金融緩和していますけれども、その金融緩和した効果が末端まで行かないんだと、どこかで目詰まり起こしている。目詰まり起こしているところをよく見ると、資金需要があるところにお金が回っていかない。それが一つの売掛債権ということに注目した背景だというような御答弁があったかと思います。  しかし、全体の市場から見ますと、資金需要があってお金が回らないというのはこれだけかなという感じがするのが一つと、それからもう一つ、前回の御答弁の中で、売掛債権、資産担保証券の市場が未発達だと、薄い市場だと、その市場の育成もこれは念頭に置きたいというような御答弁があったと思うんですが、そもそも市場育成なんというのは日銀さんのお仕事なのかなと。  しかも何で、繰り返しになりますけれども、市場育成ということであれば、この資産担保証券というものに限った市場の育成なのか、この辺りがちょっとよく見えないんで、改めてちょっと日銀の御見解をお伺いしたいと思いますが。総裁じゃなくても結構でございます、御答弁は。
  177. 福井俊彦

    参考人(福井俊彦君) 日本銀行の仕事は、やはり実体経済の健全な発展を支えるために、その裏付けとしてはやっぱりお金の流れが円滑で、経済のフロンティアを切り開く人たちが使いやすいお金をいつでも手に入るということを用意していく、あるいはそれが用意し過ぎて景気が行き過ぎるようであればコントロールする、少な過ぎるようであれば水道の蛇口をひねって十分に供給が行き届くようにすると。簡単に言えばそれが私どもの仕事でございます。  そういう場合に、普通の考え方、つまり普通の経済情勢であれば、私どもが金利を下げるなりそのほかの方法を講ずれば、金融機関のバランスシートの負債サイド、つまり預金がどれぐらい増えるか、もっと一般的に言えばマネーが幾ら増えるかということを見ていれば、十分金融が緩和しているかどうか、あるいは金融の引締めが十分であるかどうかということが判断できる。そういう判断できるところまでマネーの状況実現するために我々はいろんな資産を買うわけですけれども、資産を買うときには、やっぱりなるべく信用度が高くて流動性のあるものという目で買っていれば結局よかった。したがって、基本的な着眼点は金融機関の負債サイドでございます、マネーの状況がどうか。  しかし、今のこの厳しい経済状況の下では、我々は流動性を狭い意味金融市場に供給しても、金融機関のバランスシートの負債サイド、マネーが増えないという状況があります。したがいまして、我々は改めて資産サイドを見て、どの資産サイドから我々が資産をテークアップすることによって流動性を供給すれば、より我々の効果が実現することができるかというふうに、金融機関のバランスシートの資産サイドを見る目が、従来とは違ったきめ細かい目くばせをしながら見ていこうと。そこが従来と違っているところですが、全体として目的としているところは少しも変わっていないということでございます。  なぜ資産担保証券かということになりますと、いろいろな資産のある中で、やはり我々はなるべく早く企業の手元に必要な緩和効果が及ぶようにということでありますので、銀行貸出し市場、それを取り巻くクレジット市場というところからアプローチするのが非常に現実的だと。そこは現実的なアプローチを取っていると。  なおかつ、将来を展望いたしますと、日本においていろいろな金融市場が発達しなければいけないと。株式市場というようなリスクを取るためのマネーの市場もありますけれども、そのうんと手前に社債市場であるとかCP市場であるとか、そのほかいろいろな形の、つまり銀行貸出しというルート以外に、クレジットマーケットというのは非常に広範囲に広がる余地がある。それに対して起爆剤になるようなポイントというのは、まず銀行貸出しが行われて、それが流動化されるというところがやっぱり出発点になっていくと、こういった点をとらえて、資産担保証券というのを最初に取り上げたということでございます。  したがって、すぐに企業のお手元にお金をお届けするという短期的な目的プラス、長い目で見て日本の金融資本市場、なかんずくクレジット市場の広がりのための触媒効果ということをねらっているということでございます。
  178. 平野達男

    ○平野達男君 私は資産担保証券の購入に踏み出すということについて特に反対をしているわけではないんです。ただ、日銀の仕事というのはやはりどちらかというと金融緩和、あるいは先ほどのお話のあったように、今ゼロ金利ですからあれなんですが、金利操作をするということで、どちらかというとマクロ的な観点で仕事をされているというイメージが非常に強い。ところが、先ほど出た銀行保有株の買上げ、それから資産担保証券の購入、こういった各論に入っていくときについて、どこまで行くんだろうかという、バウンダリーというのがちょっと見えないなという感じがします。  特に株式の購入につきましては、政府も株式取得の、これは先に作ったわけですね。その後、若干、考え方がちょこっと違いますけれども、基本的なスキームは同じで、日銀が株の買上げを決定した。  この資産担保証券でも、仮に例えば市場の育成ということであれば、資産担保証券の買上げというような機構を作るということだってこれは政府で考えられるはずなんですね。それに例えば政府保証を与えるとか、そういったアイデアを出して、これを政府の仕事にするというようなことも考えられるはずなんです。  どうも政府の仕事と日銀との仕事の中での、政府、日銀の一体性という言葉言っていますけれども、まさかこんなことを、これを指して一体性と言っているわけないんで、仕事のバウンダリーというのが非常に見えにくくなってきているという感じがしまして、何か一定の方針の下で、こういう考え方で、こうこうこういうことで資産担保証券ですよというような御説明を、多分先ほど総裁はそういう観点でされていたのかもしれませんが、もうちょっとしっかりと言ったら失礼ですけれども、もう一度そこのところを御説明願いたいと思いますが。
  179. 福井俊彦

    参考人(福井俊彦君) 私どもの政策のフレームワークというのはあくまでマクロの視点であり、それを踏み外していることはいささかもないというふうに思います。  資産担保証券につきましては、まず金融緩和効果の浸透ということですから、あくまでマクロの政策を全うするためにということが出発点になっております。  それから、資産担保証券市場さえ発展すればそれで事足れりとは決して思っておりませんで、先ほど触媒と申し上げましたとおり、この発展というのは、将来の金融資本市場のうち、クレジットマーケットの幅広い発展の最初の出発点になるに違いない。あとは、日本銀行は全部のマーケットのお手伝いしなくても、それは自律的に波及していく効果があるという確信を持ってやっているという意味で、視野は非常に広いものでございます。  それから、銀行保有株式の買入れという点につきましても、これは、個々の銀行を救済するとかなんとかいうそういう視野ではなくて、まず金融システムの保全ということですし、金融システムを保全しなければマクロの金融政策の効果が安定的に伝わるということもないというふうに考えておりまして、マクロの視点が常に最初の出発点にあり、かつまた最後の結論にあるという点は違いありません。  ただ、途中の経路が、従来であれば非常に幸いなことにマネーだけ見ていれば事足りるけれども、そうではないと。ほかの視点もきめ細かく見ないと最終ゴールに行けなくなっている。それから、金融機関の問題にいたしましても、不良債権の問題だけ一生懸命やれば問題が解決するかというと、併せて株の問題まで考慮しないと最終ゴールに行かない。  したがって、最初の着眼点と最終のゴールという点ではいささかも変わっていないということでございます。
  180. 平野達男

    ○平野達男君 大体のスキームは今御説明あったかと思うんですが、どうも資産担保証券で終わってしまうのかどうか、そこのところだけちょっと御確認します。
  181. 福井俊彦

    参考人(福井俊彦君) あらゆるマーケットに手を付けるという意味で視野が広いと言ったわけではございません。我々は、マーケットに直接介入するということは極めて例外であり、したがって限定的でなきゃいけない。資産担保証券が入ったからといって、すべてで他のあらゆる市場に手をかすという考えはありません。これが触媒になるという意味は、これからほかのマーケットに効果が波及して発展するだろうということを申し上げたわけであります。
  182. 平野達男

    ○平野達男君 私の言いたかったのは、その資産担保証券というのはある日、ある日突然というか、この購入を決定したということが出てきたと。じゃ、次の手は何なのかなという、じゃ次、その第二弾、第三弾、第四弾が出てくるのかなというような感じを持っていまして、それに対して自分自身、どういう説明をすればいいのかというのがちょっと分からないので、ちょっと今回の質問をさせていただきました。  ちょっと時間がないんで、あと二つ質問通告申し上げていましたけれども、不良債権の問題、時間あったらやりますが、三番目の、デフレは金融現象かということ、これは一回福井総裁とかなりのやり取りをやらせていただきました。  実は、先般、予算委員会の集中審議がありまして、小泉総理に同じ質問をしたんです。恐らく質問自体理解していただけないだろうと思ったんですが、そのとおり、答弁も何か訳の分からぬ答弁で終わってしまったんですが、前にも申し上げましたけれども、今まで政府は骨太の方針とか出しながら、例えば税制改革、規制改革とかということで、どちらかというと供給サイドの改革なのか、あるいは需要サイドの改革なのか分かりませんが、そういった一応、まあ一応改革らしきものを出してきたと。ところが、どうもその効果がなくて、その注目がどうも日銀に向いてきて、金融緩和だ、金融緩和をどんどんやれ、あるいはインフレターゲットを設定したらどうかという議論が一時盛んにされたわけです。その中で出てきたのが、やっぱり竹中大臣が、最近は余りはっきり言わなかったんですけれども、デフレは金融現象であるということを言われておりまして、これは前の委員会でも私言いましたけれども、それと同じ問いを、同じ問いというか、デフレは本当に金融現象ですかと速水前総裁にしたら、そうではないということをはっきりと答弁されていました。  この問題がまだどうも、日銀さんと政府との間の中でどうも見解がまだ溝があるんじゃないかという感じがしておりまして、改めて、このデフレは金融現象かということについて、福井総裁の見解をちょっとお伺いしておきたいと思います。
  183. 福井俊彦

    参考人(福井俊彦君) 単なる金融現象でないということは、日本の現在の経済、それから物価の情勢をごらんになれば極めて明確じゃないかと。  先ほどからも御説明申し上げておりますとおり、非常に世界的な背景がやっぱりあると。グローバル化の下で、どこの国の企業を取っても、国境を越えた企業の競争というのは非常に激しくなっていて、物価の決まり方が変わってきている。そして、国境を越えてコストの調整が進んでいて、やっぱり高コストの国に対しては、そのコストを是正するプレッシャーが掛かってきているというふうな実態があるということはだれも否定し得ないことだと思います。  それから、国内的に見ましても、やはり今は、日本の場合には過去の過剰投資の調整という局面が進んでいると。それから、将来を見ますと、更に人口が減るというふうなことを考えますと、ほうっておけば期待成長率が下がるという状況になっているというふうなことですね。様々な要因がバックにあるわけで、しかしそれだけ将来に対する、あるいは現在の物価問題に対する解決が難しければ、できる限り金融面ではその問題をカバーしていけるだけの条件を提供していく我々が用意をしなければならないと。その面だけをとらえますと、かなり金融的な問題にウエートが掛かって見られる面があるということは我々も承知しております。  したがって、我々が何か問題を押し付けられているとか、そういうふうなゆがんだ心でもって仕事はしていない。我々は十分責任を感じて、できることは全部やろうということでやっておりまして、ただし、そういうバックグラウンドは非常に広くかつ複雑な問題の下に今の日本の困難が起こっているということは、認識としてみんなでシェアしなければ、やはりお互い正しいポリシーミックスもできないし、あるいは金融政策をその努力をしてもその成果の上がり方が違うというところに差が出てくる。したがいまして、そのバックグラウンドの複雑さということについて共通の理解を得たいという気持ちは、同時に我々としては非常に強いということでございます。
  184. 平野達男

    ○平野達男君 私は、日銀が金融緩和をして、資金需要があった場合にはいつでも資金調達できますよという、そういったプール作りをしていますよと。あとは、資金需要をどうやって生み出すかというのは需要対策であるし、その需要対策として税制改正とか規制緩和があるという説明は非常に分かりやすいんです。  しかしその一方で、やはり先ほど言いましたように、最近インフレターゲット余り聞かなくなりましたけれども、やはりどんどんどんどん金融緩和していく、金融緩和することでデフレが解消するんだという論があるわけですね。政府、日銀一体と言ったときに、政府の方でそういった論があるときに、日銀さんはそれに対してどう思うんですかということを明確にやっぱり意思表示すべきだと思うんです。  そうでないと、実は前回の予算の集中審議の中でも、日銀、政府一体となってあらゆる政策をやってデフレを克服するんですといって、そんな答弁になっちゃうんです。あらゆる政策って一体何でしょうかというときに、こう腑分けしてしゃべったときに、少なくとも、デフレというのは金融現象ですかということに対しては明確なやっぱり御答弁を用意していただきたいなというふうに思います。  最後、時間になりましたので、これに対する答弁を福井総裁にもう一度お伺いして、私の質問を終わります。
  185. 福井俊彦

    参考人(福井俊彦君) 少なくとも、現在の日本のデフレは非常に複雑な要因によって成っていると。いわゆる単なる金融的現象ではないということは明確に言えると思います。  したがいまして、政府、日本銀行の政策はすべてよろしきを得て相乗効果が出るようにやっていかなければいけないし、何か国民に単に安心感を与えることは非常に大事だと思うんですけれども、民間部門が努力しなければならないところについてはしっかりやってもらわなきゃならないということも事実です。待っていれば政策によってすべて条件が整えられるということも原則だと、この点も強調したいということです。
  186. 平野達男

    ○平野達男君 終わります。
  187. 柳田稔

    委員長柳田稔君) 本件に対する質疑はこの程度にとどめます。     ─────────────
  188. 柳田稔

    委員長柳田稔君) これより請願の審査を行います。  第二三四号銀行被害者救済に関する請願外四百二十九件を議題といたします。  本委員会に付託されております請願は、お手元に配付の付託請願一覧表のとおりでございます。  これらの請願につきましては、理事会において協議の結果、いずれも保留とすることといたしました。  以上のとおり決定することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  189. 柳田稔

    委員長柳田稔君) 御異議ないと認めます。よって、さよう決定いたしました。     ─────────────
  190. 柳田稔

    委員長柳田稔君) 継続調査要求に関する件についてお諮りいたします。  財政及び金融等に関する調査につきましては、閉会中もなお調査を継続することとし、本件の継続調査要求書を議長に提出いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  191. 柳田稔

    委員長柳田稔君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、要求書の作成につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  192. 柳田稔

    委員長柳田稔君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時五十九分散会