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政府参考人(渡辺博史君) お答え申し上げます。
我が国は、既に一九七八年に、国連貿易開発会議、英語でUNCTADと申し上げますが、そこの貿易開発理事会の決議ということで、債務救済をある国々に対して行うということを決めております。また、それに加えまして、一九九九年のケルン・サミットにおいて合意されました
拡充重債務貧困国イニシアチブ、俗称HIPCイニシアチブというものがございますが、それに基づいても、これらの国々に対する債務救済というのを既にコミットをしているわけでございます。
今回、方式の変更をいたしましたが、その方式の変更の対象国は、この一九七八年の決議、あるいは九九年のイニシアチブに基づいて対象とした国々と同じでございます。
これまで
日本が取っておりました債務の救済方式は、まず、
我が国に対する債務を最長四十年間繰り延べるという
措置を取った上で、お金を返さなくていいということになりますとその国にとって言わば片が付くわけでございますから、その余った金を何に使うかということは向こう側の
政府の裁量にゆだねられるわけでありますけれ
ども、
日本国の
政府としては、そういう形で浮いたお金が例えば軍事目的に使われるということでは、債務救済をやった趣旨に合わないということで考えておりまして、そういう
意味から、
我が国といたしましては、一遍返していただいて、その後で非軍事目的に使うということが明らかになったものに対して今の払っていただいた金額と同額のものを無償資金として交付すると。ですから、実際上の負担はないわけでありますけれ
ども、そういうシステムを取るということが数々の債務救済の実効をより確かなものにするということがいいのではないかということでこの制度を取ってきたわけでございます。
しかしながら、最近、様々な議論が行われている中で幾つかの新しい展開が見られまして、まず第一は、よその多くの国の場合には、
我が国のようなやり方ではなくて、ある時点で債務を全額カットをするという形になります。それに対しまして、
日本の場合は四十年間繰り延べても債務の形で残っておりますので、
日本国から開発途上国に対する債権というのは形の上では残ってしまうものですから、そういう
意味では非常に分かりにくいという指摘が寄せられておりました。
また、債務国からは、後からはファイナンスが
日本政府から無償資金で提供されるわけでありますけれ
ども、やはり一遍払うためには外貨の調達をしなければいけないということで、そういう資金繰りに悩むという国もございますし、そのための事務負担というものも
相当な負担になっているという国もあったようでございます。
それから、最後に申し上げました使い道がきちんと使われているかどうかということにつきましては、既にIMFとか世銀とか国際機関を通じて、それぞれの国に対して、こういう方向で
経済計画を進めろということについてはかなりのモニタリングができるようになっておりますし、その中で
日本政府も理事を通じましていろいろ意見が言えるようになってきております。そういう段階におきましては、そこはIMFなり世銀なり例えばアジ銀なりの、そういうところのモニタリング機能にある程度依存してもいいのではないかということで今回方式を切り替えまして、一遍払ってもらってその後にファイナンスをするという仕組みを変えたということでございます。そういうことで、昨年から外務省、
財務省、
経済産業省及び国際協力銀行の間で
検討を行いまして、今回からそういう形に切り替えたというわけでございます。
したがいまして、今回の
措置自体は、既に国際的に公約したものについての方式の変更だけでありますので、新たな負担を
我が国政府あるいは
国民が負うというものではございませんけれ
ども、そこら辺の
説明については、昨年の十二月に外務省、外務
大臣の方からの御
説明があったようでありますけれ
ども、議員御指摘のようにやや
国民に届いていないという御指摘であるとすれば、我々としてもまた何らかの方策を考えていきたいと思いますし、外務省あるいは
財務省のホームページにおいてもこの経緯の
説明あるいは考え方について掲示をしているところでございます。
それから、費用の分担につきましては、基本的にはJBICに今までありました積立金等を使うということで考えておりますが、今年度交付金で三百億円立てておりますのは、例えば昨年までは、先ほどのような方式でいいますと、一遍先方から返したものに対して無償を払っているわけですが、この無償資金として三百四十五億円、十四年度の場合は計上しているわけでございます。今回はそれは制度は切り替わりましたけれ
ども、その三百四十五億円今まで
政府が外務省経由で先方に渡していたものを逆にJBICに渡して、JBICで債権を償却するという形にするということで、基本的には今までの負担と同じような形で考えていきたいと思っております。
いずれにせよ、四十年にわたってこういう債務救済無償の方式を続けるよりは、なるべく短い間で全体の債務をカットをするという方が現在価値的に言えば金額としては少なくなると、そういう判断もありまして今回決めさせていただいたというところでございます。