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参考人(
片岡勝君) 私は、今何かが変わっている、それを現場で感じたことを今日ここで
お話しさせていただいて、その変わっている方向、
英語で言えばパラダイムシフトとは那辺にあるのかということについて
お話しさせていただこうと思って来させていただきました。
レジュメにございますように、私は
市民バンクというのを十年前に始めまして、夢を担保に融資して、百九件、五億六千数百万円、
貸倒れなしという実績を上げることができました。既存の
金融機関から見れば大変小さな数字でしかございません。しかし、この中にかなり様々な
金融機関再生、あるいは新しい
時代の価値という点からの
可能性を感じるわけです。
じゃ、どうしてそういうふうに一度も
貸倒れがなかったんだと申しますと、実を言いますと、これは正に
NPOでございまして、金利では稼いでおりません。
長期プライムで引いて
長期プライムで出すと。
じゃ、どうやって食っているんだということになるんですが、実は周辺の
サービス業務からお金をもらっております。例えば、女性のための
ビジネススクール、これはもう既に五千数百人が
全国で卒業しまして、千人が起業しております。あるいは、起業した後希望する人には
記帳サービスを行う、こういうことを通じて一貫した
サービスを提供し続ける。
例えば、
パン屋さんが雨の日になりますとなかなか売れません。
天然酵母の
パン屋さんが困っているだろう。そういうときは、私のスタッフもそうですが、ほかの人にも実はなるべく連絡して、今日雨が降っているから御飯炊くなよと、こうやって近くの人で支え合う。こんなような
社会を作ってきていることが、単に
貸倒れがないということ以上にきちっと
事業としても成り立つということを担保してきたんじゃないかなというふうに
思います。
その中で、どういうことに貸してきたかということにつきましては
資料をごらんいただきたいんですが、
星野さんからもございましたように、いいことということからそろそろ
NPOというのが脱して、新しい
社会サービスの
担い手になる、そういう時期に来ているのではないか。今、正にここで議論されております
社会参加システムの
在り方ということでいいますと、
参加というよりか、むしろ
担い手そのものになっていく。財源が逼迫する中で
行政による
サービスの提供ということは先細りしていかざるを得ない。
そういう中で、格差を広げないためには何をしたらいいかといえば、小さな単位で
社会サービスを提供する自立した
事業というものがたくさん生まれるしかない。このように思う中で、これからはそういう形でやっていくために
経営能力が求められる。この
経営能力をどうやって磨くかというのが私にとっての課題でした。
アメリカの
経営学者ドラッガーが言っているように、
NPOがこれから新しい
経営ノウハウを教えるんだ、作るんだ、こういうことを言っております。
行政に対してはコストパフォーマンスを、
企業経営に対しては
自発性、やりがい、そんなようなものを教えていく。
私の
資料の中で、週刊誌が、五
ページですか、「週刊現代」が金融、証券、
保険の中で「わが子に薦める「いい会社」ベスト50」というのに、ちょっと自慢話になりますが、私のところが三菱東京と並びましてダブルAになっております。三井住友よりもみずほよりもいい。ちょっと面映ゆいんですけれども、こういうふうに
経済規模で物を見るのではなくして、働く
人たちにとってのやりがい、そんなようなものを育てていく
経営ノウハウは今の逼塞した
日本経済の経営者
たちに
NPOが教えなきゃいけないんだ。
最近は随分変わってまいりまして、金融庁の再生アクションプランというのを各地銀などが作らなきゃいかぬということになったことから、地方銀行から呼ばれるようになりました。正に
NPOである
市民バンクがこれから既存の大きな
金融機関を変えていく、そんな
時代が来たんだなと。
しかも、随分変わってきましたのは、昔は担当者から講演しろ、教えてくれというふうに来たのが、最近は常務が直接、
自分はこういうふうに感動した、是非教えてほしいんだと。そんなふうに規模ではなくてノウハウの差から教えを請う、そんなようなことが行われるようになってきております。あとは、どれだけのスピードで既存の
経済なり
システムが変わっていけるかということが問われております。
まず
一つ目の、
NPO市民バンクは夢を担保に融資して
貸倒れなしということから、私がやってきたことから学ぶこととしてこんなことがあるのかなということを
お話しさせていただきました。
二つ目が、大きな変化が今起きているんじゃないかということなんですね。
山口県の単独予算でコミュニティービジネスカレッジというのが始まりました。私が実行
委員長で、その中の実行
委員には山口大学の先生もいらっしゃいますが、日銀の支店長の武藤さんですとかあるいは西京銀行の頭取の大橋さんなども入っていらっしゃいます。コミュニティービジネスに
経済は大事なことだということを教えておりまして、これを運営しておりますのが、私が大学で教えておりまして育ってきた十七人の学生起業家です。二十ぐらいの学生がこれに
参加しております。平均年齢で五十を越すでしょうか、最高齢の人は八十近い、こういう
人たちがここで学んでおりまして、そして
最初に教えることは何かといいますと、ミッションを教えます。使命感を教えます。
最初の申込みが五十三名いらっしゃったんですが、ミッションばかり言っておりますと、大体二十人ぐらいの方が怒り出し始めました。ここはビジネスを教えるんだろう、ビジネスを教えるのに何でミッションばかりやっているんだと。いや、違うんです、これからの経営にとって最も大事なことはミッションなんです、
経営ノウハウなんて大したもんじゃないんですと。その次に教えるのが、みんなで
地域のために何を持ち寄れるか、こういう考え方を教えます。その次に教えますのが、あなたは
地域のために何をやれるかという覚悟を教えます。
ここまでで二十人の方はドロップいたしまして、三十三人の方が残られました。これですっきりいたしましたので、ここから
経営ノウハウを教えます。
経営ノウハウにつきましても、いわゆるバランスがどうなるとか、私も銀行員十五年やっておりましたので、そういうことで小さいことを言っていたんじゃだめなんですね。もっと大きな夢から語っていく、これが共感者を得ていくんだと。
そういうノウハウというのはどこにあるかというと、発信能力なんですよ。あるいは
自分のことだけじゃなくて、後進を育てる育成能力なんですよ。そういう新しい経営者に求められる資質、これを一年間掛けてやってきた結果、十三人の方が
自分で、中小
企業の社長とか、あるいはリ
タイアした大
企業の役員だった方ですとか、リストラの方ですとか、こういう方が
地域でいろんな形で
活動を始めました。
どういう
活動か。
地域で問題を解決する
人たちが集まるんです。
地域で問題がある
人たちが集まる場は既存の
行政に行ってください。私がこれから皆さんに作ってほしいのは、問題を解決しようとする
人たちのステーションなんです。そうしますと、例えば山口県の光市というところでは、じゃ、酒蔵を使ってくれというように持ち寄る。ブレア首相が言う言い方で言えばステークホールドですね、ステークホールドしていく。みんなが持ち寄って様々な
地域の問題に
地域の財を集めていく。
もう
行政だけが何かを解決することは難しい分野、これがたくさん出てきております。特に
福祉、
教育、環境、この分野で
市民の協力なくしては何もできない。そういう持ち寄っていくというステーションが十三か所
動き出して、それぞれ元気に、一番高齢の方は七十幾つで起業されて、
NPOを起業されて
動き出しました。
そんな実績を持って、今私が大事だなと思っているのは、実は若者が中高年の男性に志を教えることが重要だというふうに思っています。今までのように年齢が、
経験を積んだ人のみが若者を教えるということではなくして、
若者たちがむしろ、志がない、お金もうけしかない、
組織の命令しか聞けない、そういう
人たちに対して自発的に
動きなさいというのを今呼び掛けているんです。
資料にございます、三
ページですね、コミュニティービジネス育成基金、四百十万円、学生がファンドを開設。二十歳の女子学生、起業した連中ばっかりですが、これが、おじさん、中高年の
男性たちを応援しようじゃないかと。まあわずかではあります。しかし、そういうふうにみんなが持ち寄って解決するんだ、こんなようなことを学生が呼び掛けるようになったんですね。あるいは、六
ページにありますこの学生耕作隊。これも私の山口大学での教え子なんですが、彼女は、畑で作業する人がいない、高齢化している、そういうところに一年間で実に千人の人を動員いたしました。金だけじゃないんです、人の動員も。こういうふうにして、若い連中がみんなで持ち寄っていく、
地域を活性化していくという事例がここにあると思うんです。
そして、これが単に一人で終わったら駄目だと思うんです。私が教えたそういう
若者たち、あるいは十三人の中小
企業の経営者
たち、この
人たちの今年の課題は何かといいますと、是非皆さんはインターンを受け入れてください、できればその
人たちに雇用を作ってくださいという再生産の仕組みを作りつつあります。
ページ七にございますように、公開オークションと申しまして、これも
地域財オークション
会議という
NPOにしたんですけれども、みんながここにございますように二百人ぐらい集まりまして、私はこういうことをしたい、例えば近藤紀子さんが学生耕作隊をしたいとか言いますと、みんなが札上げるんです。お金だけじゃないんです。例えば、農業のノウハウを教えよう、あるいは今余っている肥料を上げよう、軽トラックを上げよう、トラクターももうぼろいけれども使ってくれ、こういうように
地域の財が集まる、そんなようなことが今、少しずつですが、
地域の中で実践されつつあります。
私、小泉内閣のタウンミーティングというので、一回目と二回目、両方第一発言者をさせていただきました。
一回目は千葉県で、木更津で
活動していたからだと
思いますが、木更津在住ということで。このときに私は
市民バンクの事例を話しました。
市民がこれから大事なのは
自分でリスクを取ることなんだ、人にリスクを頼っていちゃいけない、だれかがやってくれると思っていちゃいけないんだ。小泉さんが最後の、タウンミーティングで、こういう民間からの新しい
動き、これこそがこれからの
日本を変えるんだというふうに長いこと引用されていたのが印象的でした。
第二回目のときは山口在住で話させていただきました。そのときは、通産大臣、経産大臣が来られておりまして、そのときに産官学ということを大変強調をされました。私はちょっと違うんじゃないかと。一以上であれば掛けるとだんだん増えていくけれども、コンマ以下であると、一以下で〇・五ぐらいの自立性と、しかないと掛ければ掛けるほどニア
イコールゼロになるというようなことを考える自治体がない、これは大変危険なことではないか。実際に産官学ということに今大きな期待を懸けてたくさんの予算を使っておりますが、果たしてそこに期待していいものでしょうかという人がやっぱりたくさん出てこないとおかしいと思うんですね、実態を知れば知るほどそう思うと思うんです。そういうようなことを申し上げました。
私が三番目に申し上げたいのはどういうことかといいますと、これから先、新しい自治の精神といいますか、一人一人の
人たちがもう、ここの課題でありますところの「真に豊かな
社会の
構築」というのは、実はだれがやってくれるのでもない、
自分たちがやるしかないんだということを明確に言うことではないかというふうに思っております。私は、
行政に期待しないで私
自身も
活動してまいりました。運動、
星野さんと同じように
世界八十か国を回って、PKOが行ったところはほとんど行ってまいりました。そういう中で、これで
日本はいいんだろうかという大変強い危機感を持ちました。
次に、影響力を持つためには
事業をしなきゃいけないということで、
事業をやりました。今、
全国で十二か所の事務所を持って百五十人が働いております。そして、今もっと大事なことは何かというと
教育ではないかということで、今四つの大学で教えております。だんだん軸足をそちらに動かしつつある。
そんな中で何を教えたいかというと、知恵と勇気なんです。知恵というのは何かというと、問題解決は必ずできると思うそういう若者、これを教えること。勇気というのは何かというと、
世界に出て危ないところで活躍する、これも必要ですが、それと同時に、リスクを持って
事業に投資したりあるいは経営していく。経営者というのがどうも何か困ってくるとすぐに財政投融資を頼む、これは自立していない、堕落していると思うんです。そうではなくして、依存しない、
自分たちのお金。
それはそうですよ、今お金を持っているのは
政府ではなくて
市民だと思うんです、千何百兆とか言われている
市民。これをどういうふうに循環させるか、この仕組みというのを次の課題にしたいと思うんですね。それは何かといいますと、豊かな
社会は
自分で実現するんだ、そうしたらば、そのために
自分たちでお金を出し合うんだ、そして新しい
社会サービスを
事業としてやっていくんだ。私のところでファンドも、
市民バンクだけではなく、チャレンジ若者ファンド、山口県に二億円で作ったんですが、幾つかほかにも助成のファンドですとか作っております。こういうのを使って投資していく。
これからの投資の
イメージというのは、株式に投資することではないんです。そうではなくして、近くにある、
自分がこれから生活していこうとするときに必要なもの、例えば老人介護のグループに投資する、近くの有機のレストランに、オルガニックのレストランに投資する、米がいいものが欲しいなと思ったら農家に投資する。そして、それが十年後、二十年後継続していることが新しい豊かな
社会なんだ、こういうふうにすることがこれからの内需拡大の
イメージではないでしょうか。
そして、今、生産側にインセンティブを与えているという政策は私は間違っていると思っております。そうではなく、一番大きな消費サイドのインセンティブをどういうふうに与えるか。それには、作ってももう豊かで物が余っている
時代にはなかなかもう買いません。だけれども、
地域で豊かに生活したいという願望は大変強いわけですから、そこにインセンティブを与える。生産側、
企業側に、あるいはアントレプレナーに対してインセンティブを与えるんではなくして、消費にインセンティブを与えていくこと、これがこれからの新しい豊かな
社会を作っていく、これをやはりきちっと確信されることだと
思います。小泉首相を始めとしてこれを確信して、このことを語り続ける。
今、やはり生産サイドに置いた過去の政策インセンティブになっていると
思います。それをこれからは、ここに書いてございますように、こんなことが可能か、僕は法制局に言ったらこんなのは無理だよと言うかもしれませんが、真に豊かな
社会を
構築する基本法というのを作られたらいかがと。それ以外のことは一切決めない。そんなことが行われて、後は
地域が決める。
地域の中で決めてこないところはしようがないんです。
地域の中で自治体がリーダーシップ、イニシアチブを取るところはそれが取る、取らないところは
NPOが取る。新しい
地域の経営者
たちがこれから生まれていって、その
人たちが
自分たちでしかこれからの次の
社会を作れないんだ。そういう
意味でいいますと、
行政がやれることというのをだんだん小さくしていく、小さな
政府を作って、そして
行政が言うことは方向だけを示すんだ、そんなようなことがこれから必要だと思うんです。
ここにございます
タイトルの
社会参加の
システムの
在り方というのは、ちょっと古いパラダイムでの言い方だと
思います。そうではなくして、一人一人の人全員が
NPO、全員が
自分たちの問題は
自分たちで解決していく一億総
NPOの
時代に、それの総和が国家というものになっていく。
社会システムというものが何かあって、それにみんなで
参加するんだよという言い方自体がパラダイムシフトから後れているのかな、そんなふうに
思いました。
そういう点で、これからの変化という今回の大きな、デフレということでいえば産業革命以来かもしれません、数百年に一回の変化というものは、今回は上からじゃ駄目なんだ、下からやらない限り価値がないし生命力がないんだ、そんなようなことを今回ここで言わしていただければなというふうに
思います。
終わります。