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参考人(
竹山清明君) では、
発言いたします。
大体お手元に配っております要旨を中心に
発言したいと思います。
私自身は、
住宅とか
住宅環境の、住みやすい、暮らしやすい、そういうものをどう作るのかというところを中心に研究をし、実践活動もしております。そういう立場から、今回の法改正について
発言をさせていただきたいと思います。
まず、
住宅金融公庫の評価ですが、私は、前の方もおっしゃったように、非常に大きい
役割を果たした、
国民の
住宅難の解消を進めるために中産階級を中心に大きい
役割を果たした。それから、
経済政策としても、
住宅白書の一番前に書き過ぎている感はあるんですが、
経済政策としても
役割を果たしたというふうに思っております。
そういう中で、情勢が変わりまして今回の法改正に至ったかというふうに思うんですが、それはどういうことかといいますと、
住宅の量が世帯数を上回ったという変化。それから、これは少し意味合いが違いますが、環境重視をして
住宅の質を上げていこうというふうな方向も出てきている。それから、またはマイナス面としては、国や公共団体の財政難が生じている。それから、超低
金利で
民間資金の活用が可能になってきた。そういうことがありますが、私自身の問題意識としましては、
日本の
住宅というのはこれで
住宅問題が解消したというふうには思っておりません。
諸先生方もヨーロッパなどへよく出掛けられていると思いますが、ヨーロッパの町とか
住宅と
日本の町と
住宅とは大きな開きがあります。ヨーロッパは非常にすばらしい町がたくさんあり、すばらしい
住宅がたくさんあるわけですが、
日本でこの町並みに住みたいとか、この町並み残したいとか、この
住宅を、古くなってもこの家に住みたいというような
住宅ってほとんどないんですよね。
ほとんど、僕は、だから非常にひどい財産といいますか、財産であるのかどうか分かりませんが、そういう形で
日本の
住宅と
住宅地が形成されてきたと。多分、この今の
住宅は一、二代で廃棄をされて再度更新されるんではないかと。やっぱり、
日本は一応ある程度豊かになりましたので、豊かな場所に住みたいという
国民の願いが強くなれば、やはりヨーロッパのような町並みを目指して作り替えられることになるであろうというふうに推測しております。そういう意味では、公的な
住宅政策の
役割というのは終わったわけではなくて、これからますます、より高度な形で展開がされる必要があるというふうに考えております。
そういう中で、今回の法改正なんですが、前の
参考人の
方々もおっしゃったように、低
金利であるということで、取りあえず
住宅金融として成り立つ
可能性がある。しかし、高
金利の時代になるとすぐ破綻をするだろう、
民間依存では。公的な支援がないと
国民が
住宅を真っ当に取得することはできないだろうというふうに考えております。
そういう中で、
住宅の
証券化の話ですが、
住宅ローンの、
民間資金を活用するということは、これはこれで有益なことであるし、
一つの進歩であるというふうに判断してもいいかもしれません。しかし、やはり
金利が上がりますと
証券の
金利ももちろん上がるわけで、もちろん負担できないような内容になるというのは、さっきの方もおっしゃいました。
それと、もう
一つの問題は、
証券というのは担保物件があって
証券なわけですから、担保物件が本来は
証券の裏付けにならないといけないわけですね、金額の。ところが、現在の
日本で供給されている
住宅といいますのは、土地は多分これから下がりますでしょう。ますます下がるのではないかと思います。それから、建物は建設された後にどんどん価値が下がりまして、十年から十五年たつとほとんど無価値になるわけですから、
証券と申しましても、
証券の裏付けがないわけですね。
例えば、先ほど
発言されました
住宅生産団体連合会の
住宅金融の在り方という
委員会でも、ノンリコース
ローンになるようにする必要がある、だから価値を持ったものに対して
証券化するということが大事であるというふうに
発言されておりますけれども、
アメリカでは
中古住宅が新築
住宅を上回る価格で取引をされておりますので、
証券化の裏付けがあるわけですね。
証券は価値を持っておるわけです。
日本の場合は残念ながら今の
状況では
証券自体は本来の価値がない。
なぜそれが取引されるかというと、お金を借りた人が生命保険も掛けて
自分の命と引換えにお金を返すということと、政府が裏書をするということで一応AAAの評価を得ているようですが、それは本来矛盾のある、正しい成立の仕方ではないというふうに思っております。
証券化を進めるのは
一つの方向としてあると思いますが、それを進めるのであれば、当然
中古住宅が取引されるときに新築時よりも高い価格から同等の価格で取引されるような
状況を作り出すというところが絶対的な前提
条件ではないかというふうに思います。ですから、
アメリカのようなそういう
条件がどう作り出せるのかということを
政策的に追求する、それが危なければもう少し進め方を検討するということが必要になるのではないかというふうに思います。
それで、
証券化と矛盾のないまちづくりの仕方ということで考えておりますのは、最近私がいろいろ問題意識を持って調査をしている中で、
アメリカの
住宅がなぜ
中古で高い価値で取引をされているのかという内容ですが、
一つは町並みのデザインが優れている、その町に住みたいと思わせる価値がある、それから個々の
住宅のデザインが優れていて、
中古でもあの家に住みたいという強い希望を持たせるような家が並んでいる、そういうものは非常に高い価格で取引をされております。
一般的には、構造が堅牢であるとか、仕上げとか修繕がしやすいということが
長期耐用の
住宅の
条件である、
中古物件の
条件であるというふうなことが
政策的にも出されておりますけれども、僕は、それが不十分で、やはりそこに住みたい、愛着を持ってあそこに住みたい、あの町に住みたいというふうな思いを起こさせるような質がないと
中古としてはなかなか流通し難いんではないかというふうに思っておりますので、そういう形での補強が要るんだろう。そこが
一つのポイントではないかというふうに思います。
それから、あと、そういうふうな
証券化のことだけではなくて、最初に申し述べましたように、
日本のこれからの
住宅、まちづくりを考える上で、そのようなみんなが愛着を持って
長期に住み続けられる豊かな
歴史的な町をつくるという意味で、それが非常に大事なんではないかと思います、本来的な
住宅政策としまして。
日本の
住宅は旧建設省の発表でも二十六年の寿命であって、イギリスが七十五年、
アメリカが四十四年と書いてあったと思いますが、そういうふうなことを改善していく上で、やはりそういう
住宅の町並みとか
住宅のデザインの質を改善させ、それが
中古住宅の取引の価格にちゃんと反映するような形の
政策とか、そういう
動きをちゃんと作っていく必要があるのではないかと。
例えば、これは非常に話として空想的にお聞きになるかもしれませんが、先日、関西の建て売り
住宅団地の調査をいたしまして、ある団地では、五年前に建った団地が今年新たに建てられている同程度の建て売り団地よりも高く
住宅が取引されているという事例が見付かりました。十五年前に建て直した神戸の建て売り
住宅が、新築時の一・五倍の値段で取引をされているという事例も見付かりました。
ですから、
日本でもいい
住宅、いい町並みを作れば、その価値が古くなっても継承されるということが分かりまして、そういうふうな
政策が非常に大事なんではないかと。今後の
日本の資産価値、
住宅によって資産価値を形成するという、国の富を形成するという上では非常に大事だと思いますので、そういうことを考えながらやっぱり
政策を展開したい、する必要があると考えます。
それから、あともう
一つ、今回、今
公庫がもしだんだんなくなるとすれば、いろんな大きなこれまでの
住宅政策の展開の中の障害が生じるというふうに思っております。
一つは、定期借地権の問題ですね。
住宅金融公庫は定期借地権
住宅に貸付けをしておりますが、
民間の
金融機関は土地が担保になりませんので貸付けはほとんどしないという
状況になっております。
国民が安い価格で質の高い
住宅を手に入れるという上では定期借地権というのは非常に大事な
制度だというふうに思っておりますが、その中でも、そうしたら五十年で
返済、返却して建物を壊すという今の
制度はかなり不備ではないかと。むしろイギリス型の、百年程度定期借地をして、優れた建物を建てて、それは
社会資産として地主に返すというふうな
制度が必要なんではないかと。これは今の
日本の法律でももちろんできるわけですが、そういう辺りを国として誘導するような
政策が要るんではないかというふうに思っております。
こういう形で、イギリスなどは非常に優れた
住宅地を
歴史的に継承して現在も使っております。
日本が五十年で家をつぶしてしまうとか、二十六年でつぶしてしまうというふうな
状況は非常に問題が多いというふうに思っておりますので、それちょっと
長期的な観点でも
政策を考えていただきたいというふうに思います。
それから、その他、
公庫の
役割としましては、単に
一般的な
住宅に貸付けをするということだけではなくて、コーポラティブとか、いろんな
政策的な内容を付与して、建築文化とか生活文化、住文化を豊かにするような
政策展開を行っておりました。そういうふうなものをやはり大事にして、単に量さえ供給すればいいということではなくて、
住宅の質を上げるような内容で公的な機関が有効な働きをするということは非常に大事なことではないかというふうに思っております。そういう意味で、すべて
民間の
金融機関に依存してしまうということは相当な損失が
日本の
住宅全体の在り方の中で生じるんではないかというふうに思っております。
以上、まとめまして、今回の
公庫法の改正につきましては全体の流れの中でなかなか押しとどめ難いところもあるかと思いますけれども、単純に
証券化をすればすべてが解決するということではなくて、非常に大きな矛盾が生ずるであろうということ、それからやはり、中産階級といいましても収入階層いろいろでありまして、非常に多くの方がやはり低
金利、高
金利の時代であってもそれなりのアフォーダブルな
金利で
住宅を更新する必要があるとすれば、それを支援する
制度はやはり公的な力でやらなければできないんではないかというふうに思います。
これからも継続して
住宅の更新がつながっていくだろうというふうに私は最初お話ししましたが、そういうことを展望いたしますと、この
時点で
住宅の公的施策の大きな
部分をそいでしまうというふうな法改正はやはりかなり見直していく必要があるんではないかというふうに思います。
以上です。