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参考人(堤
和馬君)
ジャーナリスト・前
特殊法人労連事務局長の堤です。
私、昨年六月の
道路公団
民営化法案、設置
法案のときも
参考人として陳述をさせていただきました。私の
立場は経歴をごらんいただけば分かると思いますが、約二十年間、特殊法人に関係した労働組合の仕事をやってきました。そういう中で、今回で特殊法人の改革は四回目ということになったわけですが、その経過を見ながら、特殊法人改革はどうあるべきかというような
観点を含めて今日の
議論に参加していきたいというふうに思います。
まず、小泉政権の特殊法人改革についてなんですが、これまで数回行われてきた特殊法人改革では、どこかとどこかの法人を統合するというようなやり方で特殊法人の数を減らしていくということが非常に先行してきました。村山政権、九四、五年に改革をやりましたけれ
ども、ここでも相当な数は減っておりますが、実態的には中身はほとんど同じ形で残っていると。その後の橋本政権のときの改革についても基本的に大きな変化はないと。
今回の中で非常に特徴的だったことは、中央省庁の再編の
議論の中で出てきた独立行政法人いうものに特殊法人を変えていくということが大きな道筋だったのではないかというふうに思います。その中で、やはりこれまでの
政策がない見直し、統合、独立行政法人化というものが
大半を占めております。廃止が
幾つ、独立行政法人化が
幾つ、数はいろいろ出ておりますが、実態的に見れば二つの事業を
一つの法人に統合しただけにすぎないと。そのまま独立行政法人になったところもあります。でも、この独立行政法人が本当に独立して特殊法人の弱点を克服するものであるかどうかというのは、この後、
本四架橋のところでちょっと述べたいと思います。
しかしながら、非常に今回の改革は特徴がありまして、特に今苦境にあえぐ大銀行、大ゼネコンなどに対して非常に政府の側から
政策的な援助を行ったということが言えるような内容の改革が行われました。住宅金融公庫の住宅債権の証券化、また都市公団の都市再生事業への重点化といいますか、は特にこういう側面が強いのではないかと。特に都市公団の都市再生事業について、昨日早くも六本木ヒルズの、十チャンネルでやっておりましたけれ
ども、つい四、五年、二、三年前まで多極分散型の国土の形成ということが言われて、片方で一極集中の是正だということが言われて首都機能移転まで話し合われていた、それが突如、
政策を転換をして都心に超高層の大ビルディングを次々と造っていくと、こういう
政策をやれば当然更に一極集中が進むはずだというふうに思うわけです。
私
どもは、特殊法人の本社というのは十年以上前に、竹下政権のときでしたか、本社を全部地方に移転しろということが言われて、ほぼ十数年たって完了を今しようとしております。片方でそういう一極集中是正のためのことがやられながら片方で集中させるようなことをやるというのは、非常に
政策的な矛盾が大きいのではないかというふうに思います。
もう片方で、
国民生活という点から見れば、賃貸住宅の
政策から撤退するとか、奨学金の返還免除
制度が縮小されるとか、
国民金融公庫の補給金がカットされるとか、
国民生活センターの機能が縮小されるとか、また住宅金融公庫の長期、固定、低利の融資事業からの業務の縮小などが行われて、
国民生活にとっては更に厳しい
状況が生まれているのではないかというふうに危惧をしております。
また、この改革の中で、なぜこれを特殊
会社にするのか、また、なぜこれを民間法人化するのかと。民間法人化というと、新聞報道では
民営化等で特殊
会社や株式
会社になることを指しているように見えますが、実態的にはほとんど特殊法人や認可法人と変わりはないわけですね、政府が関与するかどうかしか違いはないと。また、独立行政法人化、そして今回の改革でも特殊法人で残るもの、認可法人で残るものもあるわけです。そういう点からいうと、行政機構を簡素で透明化するということを標榜して行政改革を行っているわけですが、結果としては行政の複雑化を招いているのではないかというふうに思います。
そして、この改革の中で特殊法人への補助金を一兆円
削減したというふうに小泉首相は胸を張っておりましたけれ
ども、今回の
本四公団への
債務肩代わり、また
直轄高速道路、またその他独立行政法人になったところへの交付金などを含めると、この一兆円は別の形でほかのところへ投入されているということになるのではないかと。そういう財政
効果という点から見ても、決してうまくいったとは言えないのではないかというふうに思います。
次に、
道路四公団の
民営化についてです。
これも前回、
参考人で来たときに申し上げましたが、これは二〇〇一年の十一月、小泉首相と古賀自民党前幹事長との会談で、償還期間五十年で
民営化するということと、古賀前幹事長の方は一万四千キロは譲らないということで政治決着をしているわけです。ですから、
民営化委員会が幾ら頑張ったとしても
高速道路政策全般についての見直しはできないわけです。
私、よく
マスコミの人からインタビューされたりするときに、いつもこう言っているんです。
高速道路政策を見直すという試験があったとする、これは裏と表と五十点ずつある、しかしながら
道路公団
民営化委員会がやれるのは元々五十点しかないんだと。
ということで、私はこの
民営化委員会の
意見書はやっぱり
民営化するための
意見書であって、
高速道路建設計画全体の見直しではないと。そして、この新しくできる
会社が
採算性を優先すると。また、株式を上場すれば当然
料金は永久に
有料化するであろうし、不採算のところについては
国民負担で建設をしていくことになるだろうと。そしてまた、完全に
民営化することによって、ファミリー企業などの問題、また
高速道路の建設計画の在り方の問題を含めて大きな政治的な利権的な体質は温存されていくのではないかというふうに思っております。
三番目、
本州四国連絡橋公団への
税金の投入による
債務軽減についてですが、特殊法人の失敗を挙げたときに、これほど失敗した事業はないというふうに思うわけです。
独立行政法人を作るときに、政府の方は特殊法人の
経営責任のなさ、不透明さなど
幾つかの点を挙げて、それを克服するものだということで独立行政法人を作ってきたわけです。そういう点からいうと、この破綻した
本州四国連絡橋公団、事業的には破綻、組織的にはどうだったのかというような
検討がなされることが特殊法人改革の第一歩であったはずであります。しかしながら、そういう検証や、組織の在り方について、また当事者の
責任追及などは
一つも行われていないのではないかというふうに思います。こういう原因究明や
責任追及もなく、ただ特定
財源で処理するということでは
国民の納得は得られないだろうと。
さらに、五全総では六大湾口
道路というものが既に計画へ上っております。
調査費が今年計上されるそうでありますが、このような六大湾口
道路などの計画についても、こういう本州四国連絡橋の失敗をきちっと総括しない限り、同じような誤り、失敗になっていくのではないかと危惧しております。
道路特定財源で処理することについて、
通行料金で償還するものだったものを特定
財源を使用するということは、
一般道路の
整備が犠牲になると。特定
財源は余っているのかと。余っているなら
税金を下げるか、他の
目的、つまり環境対策や地球温暖化対策などに使うのが筋ではないかと。地方自治体に
責任がないとは言えませんが、国家
プロジェクトとして推進してきた経緯からいえば地方自治体の更なる
負担は酷ではないかというふうに思います。他の
高速道路の
料金収入で返済するという方法もあったと思いますが、特定
財源での処理は
整備計画を早く完了させることがねらいではないかというふうに思います。
四、
直轄高速道路の建設についてということで、
現状でも隠れ
高速道路と言われる高規格幹線道があります。一般
有料道路として事業を採択し、
費用の一部を公団が
負担するものですが、その延長は既に六百キロを超えています。
特定
財源による
高速道路建設は、赤字の心配がないので更に政治的
路線採択とならないだろうか。例えば、第二東名・名神を
直轄で行うということになれば、莫大な
費用を
税金で賄うことになりかねないと。
国民から見れば、
税金が更に政治的に使われることになると。
税金を投入した
高速道路は無料、
道路四公団を引き継ぐ新
会社が建設したものは
有料と。通行量の多いところが
有料、少ないところが無料。並行して建設されるものは、古いもの、新
会社が保有するものが
有料で、
直轄のものが無料、新しいものが無料などという珍妙な
状況が生まれないかと。
現在建設中の
路線を含め、今後の建設予定計画はほとんどが不採算とされていると。新
会社は、採算重視だと新
会社はほとんど新規
路線を引き取らないことになると。新
会社がどこまで建設するのか定まらないうちに
直轄建設を推進するのは、
国民負担を限りなく増やすことにならないだろうかと。
最後に、既にこの
法案が通ることを見越してといいますか、国幹審改め国幹会議ですか、夏の国幹会議でこの
直轄高速道路の
路線を決めるというふうに報道されています。これに対して小泉首相は難色を示されているようですが、こういう建設の仕方が、新
会社が行う
道路建設の優先順位などが明らかにならないうちにこういう事業を始めていくということは、非常に政治的に
路線が決定されていく危険があるということで、私は新
会社のそういう方針を待ってから行っても遅くはないのではないかというふうに思います。
以上です。