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沓掛哲男君 その他、新
会社が支払うべき
賃貸料の具体的な
設定方式や通行
料金の在り方など、難問がたくさんありますが、時間の
関係もありますので、次に移ります。
私は、昨年九月に
イタリアのローマにある
アウトストラーデ社の本社を訪ね、役員とこの
有料道路事業
関係のことについていろいろ懇談してきましたので、その
内容を少しお話ししたいというふうに思います。
アウトストラーデ社へ行ったのは、欧州で最大の
有料道路事業をやっている
株式会社であるからでもございます。
アウトストラーデ社は、
高速道路を
有料道路として
建設し、
一定期間管理する
コンセッション、
特許を国から受けている
会社です。
特許を受けた
高速道路の
延長は、この
アウトストラーデ社だけについていえば二千八百五十五キロメートルでございますが、既に全線完成して二千八百五十五キロメートルを供用いたしております。今後、自社で更に
建設する
予定はありません。短
区間の
高速道路を
有料道路として
建設するためにグループ
会社六社を作っております。
コンセッションのこのグループ
会社六社の総
延長は四百八十六キロで、
既供用は二百六十キロです。
アウトストラーデ社は、一九五〇年に、IRIという
国家資金を
民間会社に出す金ですね、
昭和の初めにできたものですけれども、そこから一〇〇%の出資を受けて一九五〇年に設立されたものです。そして、一九九八年から
株式を市場に上場し、二〇〇〇年、三年前に完全
民営化し、二〇三八年まで
料金を
徴収し、その後
高速道路を国に帰属させることになっております。
そこで、
経営内容ですが、
アウトストラーデ社一社のはなくて、連結決算をしていますので、
アウトストラーデ社グループとしてのものをもらいました。その
内容をお話しいたしますと、
道路本体には
固定資産税は掛かっておりません。
法人税はかなり、税引き前利益の約四四%ぐらい掛かっております。そして、
料金収入は、年間で、
日本円に直しますと約二千四百億円の
料金収入がございます。
債務の方は、株主資本は
日本円に直して三千四百億円ほどです。それから、中長期の
債務が千三百億円ぐらいです。したがって、返せなきゃ、
日本でいえば
道路公団等で償還しなきゃならぬものは、この株主資本三千四百億円と、それから中長期
債務の千三百億円、合わせて四千七百億円ほどです。四千七百億円出せば、それで償還、一応終わるという、そういうシステムです。
株式の所有は四千七百億円で、
料金収入が二千四百億円あるわけですから、二年分の
料金収入でもう
有料道路にしておく必要はないんです。でも、なぜしておくかというと、彼らは
国家の
方針ですと。
法人税もたっぷり入るし、維持
管理費も要らないし、そういうことでいろいろやっているんだということで、もう
有料道路としては終わってしまう状態になっているんです。
さて、その
株式の所有は、昨年九月、私が訪問したときは、ベネトン社が三〇%、銀行等の大企業は四〇%、中小企業が三〇%でしたが、その後外国企業、例えばフランスのバンシ等が
アウトストラーデ社の
株式公開買い付け、いわゆるTOBというのが大変はやっているんですけれども、
株式を公開すると、それを買い付けて、そして
会社を支配し、その事業を支配するという、そういうことに動きましたので、防衛的にベネトングループが
株式五四%を追加取得し、現在ベネトングループで合計八四%の
株式を
保有しています。真偽は分かりませんが、
イタリア政府が後ろからバックアップしたといううわさもあります。
それは、ほかの
会社にこの
アウトストラーデを独占されて
高速道路を外国の企業が独占するというのは、これはやっぱり陽気な
イタリア人でも容易じゃないんだなと、そういうことではないかというふうに書いてある本もありますが、そこは分かりません。
民営化に伴う
株式公開は、外国資本による
会社の、そして
高速道路の支配の危険性をはらんでおります。
これらのことから、完全
民営化にはやっぱり次の二つのことが必要だなと思います。
一つは、もう
高速道路の
基本的ネットが完成しており、業務として
料金徴収と維持
管理、すなわち穴ぼこ埋めですね、あるいはサービスエリアのサービス、そういうようなこと、又はこれに近い状態にあるということ。それから二番目、返済金は
料金収入に比べて僅少となっていること、
経営の安定性が担保されていることが必要だというふうにも思います。
そのほか、ベネトン社からの役員は
日本道路公団の
民営化に強い関心を示し、新
会社に我々も参加することを
検討したい、是非招待してほしいという要請もございました。それは、まだそういうことはよく分からないんだからということで帰ってきましたけれども、強い関心を持っておりました。
また、
民営化に当たって、そこで次にもう
一つ是非お話ししたいことは、また
民営化に当たって、一昨年倒産した英国のレールトラック社の例を肝に銘じておかなければならないなというふうにも思います。それは、英国で、九〇年代、国有鉄道の
民営化のために、全国のレール、駅舎等、鉄道のインフラを所有するレールトラック社と、運行
会社二十五、車両リース
会社三とに
分割されました。レールトラック社の
株式は九六年五月にロンドン証券取引所に上場され、株価は高い利益と配当により急上昇し、
分割・
民営化の成果として評価されました。ところが、それは
路線その他のメンテナンスを節減し利益を作り出したものであることが次第に判明いたします。維持
管理を怠った結果、二〇〇〇年のハットフィールド脱線事故を契機に行われた調査で千八百五十か所に
路線の破損があることが判明し、列車の遅れは日常的となり、巨額の復旧修理のためレールトラック社は、二〇〇一年十月七日、二年前ですね、十月七日、倒産いたしました。しかし、鉄道を廃止することはできませんので、また国が乗り出してその対応を図ることになりました。
このことから、
民営化してもよい業務とは、その
事業主体が倒産した場合なくなってもよい業務であって、なくなることができず、公的
機関がもう一度その業務にかかわらなければならないものは必ずしも適さないのではないかというふうにも思います。利潤を上げることを第一の目的とする
民間会社では、短期で結果の出にくい維持
管理部門の節約が強く求められ、その結果、数年後に取り返しの付かない結果が発生することをレールトラック社の例が教えてくれているのではないかというふうにも思います。
さて、次に、今度は
本四公団関係の質問に移りたいと思います。
このたび、
本四公団の
債務処理等が講ぜられることは、本四架橋としての自立的
経営を可能とするものであり、適切な
措置であると思います。
本四架橋に至る経緯を簡単に申し上げますと、
昭和三十七年、河野
建設大臣が就任され、明石海峡大橋の構想が打ち出されました。翌年、
昭和三十八年に神戸に調査事務所が設けられることになりました。当初は一ルートのみを考えていましたので、瀬戸大橋ルートと明石―鳴門ルートの争いでした。しかし、種々の経過を、経緯を経て、
昭和四十四年の新全国総合開発
計画で三ルート
建設が明示されました。
本四架橋は、三ルートともに
有料道路として
建設することに無理があったのではないかなというふうにも思います。右肩上がりの経済を、それによる
交通量の増大を過信し過ぎたことにあったのではないかというふうに思います。
そこで、これに関連して本四
関係の質問を行いますので、よろしくお願いいたします。
最初に、
岩城政
務官にお願いしたいんですが、本四架橋三本は無駄だという説も、言う方もおられますが、本四がなかったら四国はどうなっていたのか。本四の完成前後で人的、物的交流はどれほど変化しているのか。四国と中国の所得格差の変化はどうなのか。これまで
本州四国連絡橋の果たしてきた役割と今後の使命などについて、御指導いただければ有り難いと思います。よろしくお願いします。