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政府参考人(
渡辺博史君) 今、
先生の方から、
通貨危機におきますIMFの対応の話とそれから
アジア・ボンド構想について
二つ御
質問がございましたので、それぞれ
お答えをいたします。
まず、
通貨危機のときにIMFが取りました行動については、今、議員御
指摘のように、やや画一的であったのではないかということは、当時から
日本はそういうスタンスを取っていたわけでありますけれ
ども、結果的には、IMFの中におきましても、結果を見てどこがどういう形でうまく復活してくるかというところを見ておりますと、やはり一律ではいけなかったのではないかという反省はそれなりにしているようでございます。
当時のタイの反応あるいはマレーシアの反応というのは、今から見ればいろいろ議論があるわけでありますけれ
ども、それぞれそのときの
状況に応じて取られた政策だと思っておりますが、これに加えましてインドネシアというのが
アジアで三つそれぞれ危機を迎えたわけであります。
御承知のとおり、タイ、マレーシア、インドネシアは、それぞれ金融構造あるいは
経済構造において大きな発展段階といいますか、
状況の格差がありましたので、それに応じていろいろ使い分けをすべきであったのではないかということがございます。
タイの場合には、かなり外から大きく
お金が入っておりまして、それを地場の銀行が運用をしていると。それに対しまして、インドネシアの場合には、外からかなりの銀行がもう既に現地に入っておりまして、金融の深まりという、深化というよりも先に国際化が先に進行しているという
意味での
現状の違いがあったわけでありますから、そういうものに対してIMFがなすべき処方せんは本来それぞれ違うべきものがあったのではないかということをIMFの方も感じているようでございます。
基本的には、まず引締め一本でいく、つまり、危機を迎えた場合には必ず財政、金融を引き締めるのだというのが、当時の九七年、九八年の
アジアの
現状には必ずしも合っていなかったということがございます。
それからもう
一つは、それぞれの国が必ずしも単線的発展志向ではないわけですが、何かあるべき姿というものを絵に描きまして、それとの差がどれだけあるかによって、おまえのところはこういう構造改革をしろとか規制改革をしろという議論があるわけでありますけれ
ども、それをその当初の段階において一斉にやりますと、どうしてもデフレ的な効果を及ぼしてしまうということから
経済の復興というところにはかなりマイナスの要因をもたらしていたというところがございますので、やはりそれはそれぞれの国の
状況等を見ながらやっていかなければならないということは御
指摘のとおりでございます。
現在、IMFといたしましては、当時、九七年、九八年に起こりました危機のうち、ロシアとブラジルとそれから今の御
指摘の
アジアの三つ、それぞれについてどういう政策をIMFが取り、それをどういうふうにそれぞれの国が受け止めてやってきたかということについて評価というのを現在進めておりますので、近々それがまとまると思いますので、また御報告ができればと思っております。
それから、第二点の
アジア・ボンド構想につきましてでございますが、これは、今の
通貨危機にもありましたように、
アジアというのは基本的には貯蓄が超過している国であると。それにもかかわらず、開発資金というものが円滑に国内で調達あるいは流通していないという
現状を踏まえて、なるべく国内の貯蓄を国内の民間の企業家に渡すような形でうまく仕組めないかというのが当時の
通貨危機に対する反省であったわけであります。
御
指摘のように、当時は、
アジアというのはどうしても銀行貸付けが
中心になっておりますので、家計とかあるいは企業は銀行に預金をすると。銀行はそれを企業に流すわけでありますが、必ずしもそれがうまく流れないときには、基本的には外へ持っていきまして、ウォールストリートなりロンドンにおいて運用をすると。それがヘッジファンドのような形を通じてまたそれぞれの
アジアの国に戻ってくるわけであります。
アジアの国の
状況がいいときには、そういう金がどんどんどんどん続けて入ってくるわけですから、いい循環として
お金が回るわけでありますけれ
ども、ある日突然、どうも
アジアはおかしいなと思った瞬間に、そういう
お金は基本的には短いタームで入っておりますので、六十日とか半年で期限が来る
お金でございますので、ある日突然それが止まってしまうということが起こってしまうという
意味で、非常に短い
お金が入ってきていると。しかも、それが一遍、外から入ってくるがために
ユーロ建てであったりポンド建てであったり
ドル建てで入ってくるわけでありますが、国内の投資はタイであればバーツでありますし、インドネシアではルピアで運用していると。
そういう
意味で、短い資金を長く運用する、あるいは
ドル建てとか外貨建てで入ってきたものを国内は現地
通貨建てで運用するということで、期間とそれから
通貨と、二重のミスマッチが起こっているという
状況があったわけであります。
それを改善するためには、やはり国内にある貯蓄を直接国内で長期の投資に向けられないかということで、今までの銀行貸付け
中心ではなくて、ボンドという形で五年なり七年なり、あるいは
日本でいえば十年と、そういった長めの投資に向けられないかというのが基本的な
アジア・ボンド構想であるわけであります。
そのうち、タイのタクシン首相が言っておりますのは、今の全体の
アジア・ボンド構想のうち
需要サイド、デマンドサイドというふうに彼らは言っているわけでありますが、そういう
アジアの債券を買う
お金としてどこかにそういうものがないかということに着目して、今のタクシン構想というのは、
アジアの
各国の中央銀行が持っております外貨準備額、これの一定部分を
一つのファンドに集めまして、これを域内の
各国が出しております国債に投資をしようということであります。したがって、マレーシアの国債とかタイの国債というものをその
各国の外準で作りましたプールのファンドで買うということで考えております。
ただ、これの
一つの問題は、外準で買うものですから、外準自体が為替リスクを取るわけにはいかないので、どうしても域内の国債を買うときに
ドル建てのものを買うというふうになってしまっております。したがいまして、さっき申し上げたように、長いものに投資するという
意味での期間のミスマッチは解消するわけでありますけれ
ども、
通貨のミスマッチということについては必ずしも完全にこたえるものにはなっていないと。
それを受けまして
ASEANアンド3、
ASEANプラス3の
各国が集まりまして去年の後半から、いわゆるサプライサイド、供給側の方の
アジア・ボンド構想というものをやっておりまして、これは、
各国において国内の債券市場を育成する、それを踏まえて
アジアの域内市場を作っていく、そういうことによって
各国の、タイであればバーツで作られた預金、それがバーツ建ての債券に回っていく、そういうものを円滑にしていこうということを考えているわけであります。
例えば、まず
各国では、国が国債を出して債券市場を整備する。国だけでは少し銘柄が足りないということであれば
政府関係機関も出ますし、あるいはアジ銀とかIFCとかいった国際開発機関がその国の
通貨建てで債券を発行いたしまして、その上がり金をその国に貸し付ける、あるいは投資をするということをやる。あるいは場合によっては、域内で活躍しております、多国籍企業という表現になりますが、
日本の企業なり
韓国の企業が、それぞれの国に行ってその国の現地
通貨建てで債券を発行して、そこで行っています直接投資のファイナンスに使うと。そういった形で、なるべく市場の厚みを増やしていこうということを考えておりまして、また、それを中小企業が発行するものに広めていくために
幾つかの中小企業を集めた形の
バスケット債券を出すと。これがもし信用力が足りなければ、
各国の保証機関、あるいは将来的には
アジア全体で
一つの保証機関を作りまして、そういうものに保証を与えることによって市場で消化をさせるようにしようといったことを全体として、
アジア債券市場イニシアチブという構想で昨年の後半から議論しておるところでありまして、これらのうち
幾つか年内にも実現ができるのではないかと、一応そんなことで考えております。