運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

2003-04-16 第156回国会 参議院 国際問題に関する調査会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十五年四月十六日(水曜日)    午後一時開会     ─────────────    委員異動  四月十五日     辞任         補欠選任         榛葉賀津也君     辻  泰弘君     ─────────────   出席者は左のとおり。     会 長         関谷 勝嗣君     理 事                 世耕 弘成君                 今泉  昭君                 沢 たまき君                 緒方 靖夫君                 田村 秀昭君     委 員                 泉  信也君                 椎名 一保君                 野上浩太郎君                 森元 恒雄君                 吉田 博美君                 大塚 耕平君                 佐藤 雄平君                 辻  泰弘君                 藁科 滿治君                 井上 哲士君                 大田 昌秀君    事務局側        第一特別調査室        長        渋川 文隆君    政府参考人        総務大臣官房参        事官       寺崎  明君        総務省総合通信        基盤局国際部長  石田 直裕君        外務大臣官房審        議官       渥美 千尋君        外務大臣官房参        事官       高原 寿一君        財務大臣官房審        議官       浦西 友義君        財務省国際局長  渡辺 博史君        農林水産大臣官        房参事官     山下 一仁君        経済産業大臣官        房審議官     松井 英生君        経済産業省通商        政策局通商機構        部長       田中 伸男君     ─────────────   本日の会議に付した案件政府参考人出席要求に関する件 ○国際問題に関する調査  (「新しい共存時代における日本役割」の  うち、東アジア経済現状展望について)     ─────────────
  2. 関谷勝嗣

    会長関谷勝嗣君) ただいまから国際問題に関する調査会開会をいたします。  委員異動について御報告いたします。  昨十五日、榛葉賀津也君委員を辞任され、その補欠として辻泰弘君が選任されました。     ─────────────
  3. 関谷勝嗣

  4. 関谷勝嗣

    会長関谷勝嗣君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  5. 関谷勝嗣

    会長関谷勝嗣君) 国際問題に関する調査を議題といたします。  本調査会では、「新しい共存時代における日本役割」のうち、東アジア経済現状展望について、これまで政府から報告を聴取するとともに、参考人から御意見を伺うなど、重点的かつ多角的な調査を進めてまいりました。  本日は、これまでの調査を踏まえ、東アジア経済現状展望について、午後三時ごろまでを目途に委員間の意見交換及び政府に対する質疑を行います。  本日の議事の進め方でございますが、あらかじめ発言者を定めず、自由討議方式により意見交換を行います。  発言を希望される方は、挙手の上、私の指名を待って発言を行っていただきたいと存じます。  できるだけ多くの委員の方々が発言できますよう、委員の一回の発言時間は五分程度お願いをいたします。  また、本日は総務省外務省財務省、農林水産省及び経済産業省から政府参考人出席もいただいておりますので、発言者政府参考人説明を求めていただいても結構でございます。  また、御発言はすべて着席のままで結構でございます。  なお、理事会協議の結果ではございますが、まず大会派順に各会派一人一巡するよう指名いたしたいと存じますので、よろしくお願いをいたします。  それでは、まず世耕弘成君
  6. 世耕弘成

    世耕弘成君 自由民主党の世耕弘成でございます。  今回のテーマ、「新しい共存時代における日本役割」、そしてまたその中で東アジア経済現状展望について、特に、新しい共存時代における日本役割東アジアでどういう日本役割を果たせるんだろうか。特に、経済あるいは産業面での役割というのをいろいろ考えてみました。  そういうときに、単純にお金を出して交通網を整備するとかあるいは医療関係の機関を整備するとか、そういった貢献を除きますと、いわゆるシステムとしての貢献、どういうことができるだろうか。大きく二つしかないと思っていますが、やはり金融面での貢献、そして特にIT面での貢献と、この二つになってくるかと思っています。  しかし残念ながら、金融面については、なかなか日本も今自分のところに火が着いている状況で、他国に新しいシステムの提案とか貢献というのはなかなかやりにくいのかなというふうに思っておりまして、やはり今現時点ではIT面アジアにどう貢献をしていくかというのが、特に次世代をにらんだ日本東アジアへ向けての一番重要な役割になってくるんではないか、またそれが日本にとって大きな国益につながってくるんではないかという気がしております。  特にITの面では、光ファイバー関係ネットワーク技術ですとか、あるいは次世代インターネットIPv6の日本技術ですとか、あるいはトロン等オープンなOSですとか、あるいは多言語に対応したOSですとか、そういったかなり日本がオリジナリティーを持っている、あるいはアメリカヨーロッパあるいは韓国に比べても負けない技術というのが要素的にもかなりあるんではないかなというふうに思っております。  しかし一方で、私も去年、おととしとアジア各国を、特にIT関係視察というテーマで回らせていただきましたけれどもアジア諸国においてITの面で日本プレゼンスというのが全く見えてこない。一部電話網の、昔のいわゆるもしもし電話電話網の整備に日本の企業が参画しているとかそういうのはあるわけですけれども、いわゆる先端的なIT分野日本コミットというのは、一部マレーシアのスーパーコリドールのサイバージャヤとかその辺では少し見えましたけれども、なかなか見えてこない。  逆に、シンガポールなんかへ行ってショッキングでしたのは、シンガポール国立大学という、これ非常にバイオ関係なんかではかなり先端を行っている大学ですけれども、これが例えば次世代インターネットを使ってアメリカMITネットワークをされていて、そしてアメリカMITとその次世代インターネットを使っていろんな情報交換をしながら共同研究をやっているなんという姿を見て、これは日本はだんだん外れていくのかな、プレゼンスがなくなっていくんじゃないかという、逆に危機感を持ったりもしたわけでございます。  そんな中で、やはり私が非常に期待をしているのは、森総理沖縄サミットコミットをした、IT関係アジア、特に途上国に対して百五十億ドル協力をするというこの約束でございまして、これがやはりどう生かされていくかというのが、私、今後非常に日本東アジアにおけるIT面での貢献に大きなポイントになってくるんではないかと思っています。ただ、現時点では残念ながら二十数億ドルしか、消化という言葉がいいかどうかは別にしまして、消化できていないという状況でございます。  まず第一の質問としましては、これは総務省にお伺いをしたいと思いますが、なぜこのせっかく約束した百五十億ドルがきっちりと消化されていないのか、これが日本東アジアにおけるIT面でのプレゼンスの増加につながっていないのかというのを少し詳しくお伺いをしたいと思います。相手国事情なのか、あるいは我が国事情なのか、お願いいたします。
  7. 石田直裕

    政府参考人石田直裕君) 総務省でございます。──それでは、座らせて御答弁させていただきます。  今、先生指摘のとおり、百五十億ドルコミットメントがございましたけれども平成十三年度までの統計によりますと、二十三億ドル程度しか使われていないという実態がございます。  私どももいろいろ調べてみますと、まず最初に、先生御案内のとおり、各国におきましては通信事業体民営化がかなり進んできております。したがって、ODAに対象になる案件が自動的に縮小してきているというのが一つの大きな原因だろうと思います。大きな国におきましては、かなり携帯電話を含めまして民営化が進んでおるという実態にございます。  二つ目に、これは私どもとしては非常に残念なことなんですけれども開発途上国におきましては今なおやはり水、食料、こういうものがODAの中では優先順位が非常に高くて、前、先生に御指摘いただいた国を調べてみますと二十番目三十番目にその案件がいるということで、なかなか各国事情もございまして、情報通信分野案件がこれまで必ずしも優先的に上の方に上がってきたわけではなかったと。  大きく分けて、このような事情があるんではないかと考えております。
  8. 世耕弘成

    世耕弘成君 じゃ、今のお答えの中にも出てまいりましたけれども、そうなってくると、やはりODAのやり方の問題というのも一つ出てくるのかなと。やはり、どうしても今、日本ODAは基本的に相手国からの要請主義に基づいているという中で、どうしてもITのプライオリティーが低い、日本側がある程度意思を持って、このIT技術を採用してくれるところへこういうお金を付けていきたいというようなことがなかなかやりにくい状況になっているんではないかと思っています。  ですから、最後に外務省にお伺いをしたいんですが、このODA要請主義というのを今後、ODA大綱の改定とかがこれから迫っておりますけれども、そういう中でどういうふうに具体的に進めていかれるのかについてお伺いをしたいと思います。
  9. 高原寿一

    政府参考人高原寿一君) お答え申し上げます。  先生指摘のとおり、百五十億ドルといいます包括的協力策のこの二年間の実績につきましては、当初の予測に比して低調であることは事実でございます。  他方、同協力策は現在実施中でございますので、百五十億ドルとの目標を達成できるかどうかといいますのは、今後の世界的な景気の動向等によるところが大きいと考えております。こうした状況を踏まえまして、外務省といたしましては、今後とも、優良案件の発掘に努め、目標額の達成に向けて努力していく所存でございます。  その関連で、ただいまODAのいわゆる要請主義ということにつきまして御質問をちょうだいいたしました。先生指摘のとおり、現在ODA大綱見直しを実施しているところでございます。本年の半ばに発表させていただきたいと思っております。  その中で、今の時点で詳細に立ち入ることはちょっといたしかねますけれども、いわゆる要請主義につきましては、狭義の要請主義にとどまらず、政策協議の強化といったことを図ることによりまして、相手国経済開発あるいは貧困削減等の総合的な援助需要にこたえる形で我が国援助を位置付けるという観点から、その在り方を、要請主義在り方を検討するという方針を取っております。
  10. 世耕弘成

    世耕弘成君 やはりこのODA是非要請主義ではなくて、例えばIPv6を採用してくれるんだったら協力しますよ、あるいはトロンOSを採用してくれるんだったら協力しますよという形へ切り替えていかない限り、なかなかIT面での本当の協力というのが進まないんではないかなと思っていますし、またODA要請主義というのは現実にはこれ形骸化しているところもありまして、実際には日本のメーカーが、あるいは商社が相手国に成り代わって要請の内容を作ってそれを上げてくるという辺りが少し不正の温床になっているところも、これ具体的に事件としてあったわけでございますので、そういうODA要請主義については是非ODA大綱、今度見直しの機会に完全に抜本的に見直すべきだという意見を申し上げまして、私の陳述を終わらせていただきます。
  11. 関谷勝嗣

    会長関谷勝嗣君) 次に、佐藤雄平君。
  12. 佐藤雄平

    佐藤雄平君 佐藤雄平でございます。  この国際問題研究会調査会、本当にいろんな勉強をさせていただきまして、ありがとうございました。  私は、この勉強会の中でやっぱりアジアという大事さを改めて今痛感しておりまして、世界経済の中のアジア経済、こういう、これをこれからどういうふうな形の中で日本は示していくのかなと。世界人口の約半分いる、人口がいるというのは消費がある、消費と同時に、最近は中国中心生産工場でもあると。だから、需要と供給というのが一番ある地域アジアでありますから、そういうふうな意味から申しますと、アジア世界のある意味では経済中心になってもおかしくないと、そんな思いをしております。  しかも、その中で、先般から関税の問題、いろいろ質疑をしているんですけれども、どうしてもやっぱり世界全体から見ると、片方ではヨーロッパ経済圏域があり、そしてアメリカ、NAFTAを中心とした圏域があり、さらにまたこれはアジアという、そういうふうなゾーンでの考え方というのがこれからも大事な時代になってくるかなと。  そういうふうな中で、私は、このアジアは、ややもすれば今日まで開発途上地域が非常に多くて、それが最近はどんどんどんどん振興してきて、我が国をも、またヨーロッパアメリカをも脅威とするような形になってきている中で、まず私は、これは外務省かどこになるのか、後でその所管の省から答弁いただきたいと思いますけれども、まず共同体というか、こういうふうなものがいずれ必要になるんであろうなと、東アジアアジア共同体というか。  それは、おととし、ベルギーそれからフランス行かせていただいて、ベルギー視察をして、それからフランスのドゴール空港から乗ってくるときに、何か全く、国境の違和感が全くなかったんですね。これならやっぱりEUという形ができても当然であるなと思ってきて、さてそれを今度アジアを見ると、やっぱり島国がどうしても多いんで、いろんな障害があるかなと思いながらも、将来的には経済圏域共同体という、それにはアジア銀行等をまた中心に、さらにまた今、何というのかな、それぞれ関税の話をしておりますけれども、そういうふうな中で障害を取り除いていかなきゃいけないのかなと。  ですから、まずその共同体を構想するにつけて、日本の今見ている現況の中で、その可能性、それから例えば障害、どういうふうなことが障害あるかなと。そんなこと、それぞれの役所の中の一つの見識があればお聞きしたいと。  もう一つは、これ、この調査会で一回話をさせてもらったんですけれども中国に去年行かせてもらったときに、それこそ中国で一番今、あの当時活躍していたのは外務大臣でもだれでもなくて、宇多田ヒカルが実は活躍をしておりまして、CDが一番売れていたと。これは考えてみると大変なことなんですよ。外交辞令以上に、宇多田ヒカルCDが何千万枚売れているというのはやっぱり基本的に日本を理解する大変な基礎を作ると。  ですから、そういうふうな面で、私は、これから今、国土交通省が外国からのお客さんを一千万人にまずしようという努力を今試みているみたいですけれども、そういうふうな中で、観光にもつながる、文化にもつながってくる話かなと。そういうふうな中で、アジアの中で日本の、これも経済にもつながる話になるわけですけれども、どういうふうな方針を取っていくのかなと。これも私は大きな、これから日本アジアの中でのいろんな意味での大きな要素になってくるであろうと。  もう一つは、農林省来て、これ、耳、頭痛い話だろうけれども、これは当然のことながら、二十年前は工業製品をどんどんどんどん日本は輸出をして、場合によっては農業生産者からすれば我々が工業製品の犠牲になっていると。大変な話があって、工業界をある意味では農村社会というのは恨んだ経緯があって、だけれども、それが一転して、もう今は工業製品までも輸入する時代になって、決してそれが障害農業製品云々じゃなくて、逆に農業製品農業品生産物そのものが輸入の今最大の話題になっている、WTOにしてもそうだし。  その中で、私は、やっぱりこれからの日本農業というのは国民そのもの一つの理念を持った社会にならなきゃいけない。要するに、市場経済では日本農業というのは絶対無理だと。ですから、そういうふうなものを、やっぱり貿易のはざまにありながら農林省というのは日本農業をどういうふうに確立していくのか、この辺の私見があればお伺いしたい。  今のその三点について、それぞれ所管の省庁からお伺いしたいなと思います。
  13. 渥美千尋

    政府参考人渥美千尋君) 今お話がございました東アジア地域中心とする共同体考え方でございますけれども、昨年一月に小泉総理大臣シンガポールに行かれまして、そのときに、将来の話としてでございますけれども東アジア共同体という考え方を提唱いたしました。  その具体的な中身としましては、基本的に、今ASEANあるいはASEANプラス3ということでいろんな協力が進んでおりますけれども、こういった協力を、もう初めからこの国がメンバーということを決めることなく、やりやすい具体的な分野協力を積み重ねていくことによって共同体としての共通の認識が深まっていく、そして中長期的にそういう共同体ができていくと。そうなれば望ましいということを提唱されまして、その具体的な方法としまして幾つかのイニシアチブを出したと。その一つ御存じ経済連携構想でございます。それに従って着実に各国とのお話合いを進めていると、そういう状況にございます。  ちなみに、シンガポールのゴー・チョクトン首相も、長期的な話としてではありますけれども、その同じような共同体といった話について言及されていると承知しております。  それから、今、じゃ、どういう問題があるかという御指摘かと思いますけれども、一言で言えば、やはりアジアにおける多様性ということじゃないかと存じます。もちろん、文化的にも御存じのとおり文化は違いますし、宗教的にも違うということ、それから政治的にも、まだ中国ですとかあるいはベトナムですとか、社会主義体制を取っているところもございます。それから、経済的に限って見たとしても、経済発展の段階が大変違います。そういうことで、特に、例えばASEAN日本としては大切にしておりますけれどもASEANの中でも、十か国の中でも、後から入ってきた四か国というのは非常にレベルが低いわけですから、一つのまとまったグループとしてやっているんだろうか、そういう問題もあるかと思います。  そういったことを念頭に置きまして、一つ一つ協力を積み重ねて、できれば将来そういう共同体というものを作っていくという努力を続けたいと考えております。
  14. 佐藤雄平

    佐藤雄平君 それで、やっぱり通貨の問題というのは必ずこれ出てくると思うんですね。ですから、当然一番いいスタイルというのはやっぱりEUユーロみたいな形、経済貨幣の問題からすると。この辺は何か研究していることがありますか、通貨
  15. 渡辺博史

    政府参考人渡辺博史君) 今、議員御指摘のとおりに、ある程度共同体あるいは共同経済圏みたいなのができたときに、内部での取引の決済を何で行うかという意味でいえば、相互に貨幣が変動しておりますとお互いに非常に信頼性が薄くなるということから、なるべく同じようなもので取引ができるようにしたいというのは基本的にあるわけでございます。  現在のところ、アジアの国のかなりのところは今フロート制度になっておりますけれども、やはりある程度ドルを見ている、あるいは実際の取引の中でドルのウエートが極めて大きいという状態にあるわけでございます。したがいまして、ドルが振れる、あるいはドルと円が振れる中で、ASEANの国あるいは韓国辺りはそのはざまに入ってしまうということがありまして、そういう意味では、アジアの中で通貨が非常に安定していくというのは非常に必要なことだと思っております。  そういうことで、今、ASEANプラス3という枠組みの中で、通貨バスケットによって取引をする。これはヨーロッパで六〇年代、七〇年代に行われておりました一つの形態であるわけですけれども特定通貨ではなくて、幾つかの通貨を寄せ集めてそれで一つの固まりを作って、それに対してお互いの国が交換レートを決めていくということになりますと、そのバスケットの中に通貨が入っているのが、片方は上がり片方は下がるということになりますと、相対的に変動幅が小さくなるというような形でお互い取引を安定化させようという試みがあったわけでありますけれども、それはヨーロッパは五十年掛けてユーロという一つ通貨に持っていったわけでありますけれどもアジアの場合も基本的にそういう方向に向けてそれができないかどうかということを今始めておりまして、ですから、そういう意味でのバスケット通貨での取引、あるいはそういうものを使っての債券の発行というものを通じて、まあ北極星と言うとちょっと遠い感じがいたしますが、近い将来にはそれを使ってアジア通貨単位といったようなものができればということで、今既に作業を始めているところでございます。  ただ、なかなか数年でできる話ではないというふうには思っておりますが、一応そんなことを今考えてやっております。
  16. 佐藤雄平

    佐藤雄平君 どれぐらいの年数、どれぐらいを目標にしていますかね。
  17. 渡辺博史

    政府参考人渡辺博史君) お答えを申し上げます。  今のところ、先ほど申し上げましたように、ヨーロッパで約五十年も掛かっておりますし、それからヨーロッパよりはアジアの域内の方の経済格差というのがまだ大きいので、これの収れんというのを一緒に図っていかなければいけないということでありますので、なかなか十年という単位では難しいかと思っておりますが、なるべく早くやりたいということで努力しております。
  18. 山下一仁

    政府参考人山下一仁君) お答えいたします。  正に先生指摘のとおりだというふうに我々も理解しております。まず、昭和三十七年だったと思いますが、農業基本法というのが作られまして、その法律が四十年間、基本法として継続したわけですが、やはり時代の流れに沿わなくなってきたということで、平成十一年に新しく食料農業農村基本法というのを農林水産委員会で大変な長時間の御審議をいただきまして成立させていただいたということになっております。  そのタイトルにありますように、農業の果たしている役割というのは、単に食料生産を供給しているというだけじゃなくて、単なる経済的な面だけではなくて、農業だけではなくて、食料生産、これはもちろんあるわけで、それは我々としていかに国民に安定的に食料を供給していくか、基本的には、詰まるところは食料安全保障という議論になるかと思いますが、そういう食料の問題とそれから農村の問題、農業があって農村がある、農村がどういうふうに社会的な安定要素として果たしているか。そういう問題を全部、農業だけの基本法じゃなくて、食料農村も全部合わせた食料農業農村基本法ということで平成十一年に制定されたわけでございます。  その中で、基本的な考え方としましては、食料についてはやはり自給率が四〇%という極めて低い水準になっておりますので、やはり輸入とか備蓄の組合せも必要なんですが、基本は、国内生産を基本としていかにして自給率というのを上げていくかということで、新しい基本法を踏まえまして基本計画というのを閣議決定させていただきまして、食料自給率四〇%を四五%に二〇一〇年までに上げる、そういう目標を掲げまして、今、我々として努力しているところでございます。  もう一つ、市場以外の価値ということで多面的機能という、これはOECDでも一九九八年の農業大臣コミュニケで認定された概念でございますが、農業農業以外の例えば景観でありますとか、あるいは日本の水田で申し上げますと洪水防止あるいは水資源の涵養、こうしたダム的な機能も果たしている、いろいろな農業以外の価値を国民に供給している、こういう多面的機能をしっかり見据えて農政の中に位置付けようではないかということで、多面的機能という概念も新しく基本法の中に入ったわけでございます。  具体的な例えば施策の例としまして、例えば日本の条件不利地域と申しますか、過疎地域と申しますか、我々中山間地域というふうに呼んでいるわけですが、基本的には棚田とかかなり傾斜地で、山の側面で水田や畑を営んでいる、そういったところはやはり条件が悪いもんですからどうしても市場経済ではこれは撤退せざるを得ない。そういうところにEUが一九七五年に条件不利地域の直接支払を導入したということも参考にしまして、新しく平成十二年度から中山間地域に対する直接支払を導入した。そういう意味で、正に経済だけの価値ではなくて、そうした多面的機能も踏まえながら施策を展開する必要があるというふうに思っております。
  19. 関谷勝嗣

    会長関谷勝嗣君) 今のは佐藤先生の三番目の問題ですね。三番目は今のでいいですか。
  20. 佐藤雄平

    佐藤雄平君 はい。  付け加えると、もう一つはやっぱり、これは農林委員会の話かも分からないけれども、やっぱり京都議定書のCO2の話とか、そういうふうなこともきちっとしないと、直接支払というのは山の中だからもう十分分かっている。だけれども、そういうふうなこともうんと大事かなと思うんだね。  だから、むしろ酸素、二酸化炭素だよ。そういうのも一個入れたらどうですかということ。
  21. 山下一仁

    政府参考人山下一仁君) 正に中山間直接支払を導入した契機と申しますのは、単に条件が不利だから農業を維持するという考えではなくて、そういう傾斜地とか、そういうところにおける農業というのが、それがやはり水を食い止めて、それを森林と合わせて水資源を供給する、洪水とか地すべりを防止するとか、あるいは森林と一体となって生活の場を供給している、そういう中山間地域というのは、大体農家というのは林家でもありまして、農林業を一体として営んでいるということに着目してやっているのが背景でございまして、そういう施策をそういう側面に配慮しながらやっていきたいというふうに思っております。
  22. 松井英生

    政府参考人松井英生君) 二つ目の御質問は、宇多田ヒカルCD中国ですごく売れて、非常に日中の相互理解に役に立っているのではないか、こういう御質問、御指摘であったと思います。  必ずしも経済産業省が答えるのが適切か、ちょっと疑問のところもございますけれども、実は、私も昨年から中国に、月に一回から二度ほど、都合七、八回行っておるわけなんですけれども、ちょうど去年の十月ごろ、日中国交三十周年記念で、日本のGLAYというバンドが江沢民主席にもお会いして、向こう側の球場で三万五千人以上集めて大コンサートを開いたようです。これが、そういう大規模なコンサートはもう本当に中国初めてでございまして、かつ中国語で歌を歌ったり、あるいは中国語でメッセージを送ったり、あるいは中国の歌をアレンジして歌ったりしたこともありまして、非常に若い人の間で日本に対する理解と関心が高まったやに聞いております。  そのほかにも、韓国におきましても、文化の侵入を抑えるんだということで日本の音楽、映像を国としては止めておったんですけれども、実は裏のショップでは日本の若い歌手のCDが飛ぶように売れておりましたし、台湾においても日本の若手の歌手が非常に人気がございました。  また、日本におきましても最近は、歌手でBoAという韓国の歌手が大変な人気で、百万枚以上のヒットを連発しておりまして、若い方の間で韓国に対する親近感が非常に高まっていると、こういうふうに聞いております。  こういう意味で、文化面においてアジアにおける交流が進み、かつこれがお互いの国の信頼関係、あるいは人間と人間の信頼関係につながれば、地域の安定あるいは地域の繁栄に貢献するのではないかと、こういうふうに思っております。  経済産業省におきまして、実はサービス産業、つまり、こういう音楽、映像、もっと広く申し上げれば、医療、福祉、介護等々まで含めて、いわゆる製造業に対するサービス産業、これが将来の我が国経済社会を引っ張る重要な新しい産業になる可能性が非常に強いということで、現在、サービス産業に携わる各界のトップの方を中心勉強会を、サービス産業フォーラムという形で勉強会を開いております。その中で、やはりこういうコンテンツビジネスについては是非日本も欧米諸国に負けないように推進をしていかなくてはいけない、こういうコンセンサスができております。  前回、この調査会に参加させていただきましたときに、先生からの御指摘で当時の月尾総務審議官お答えになっておったんですけれどもアメリカはテレビもVTRも日本に全部駆逐された、しかしながら、一番付加価値を生む、収益を生むコンテンツの部分、つまりハリウッドは一兆円大産業になっている、日本もそういうところにこれから入っていかなくてはいけないと、こういうふうにお答えをしておったんですけれども、我々も正にそうだということで、この分野の推進というものを是非進めていきたい。その一環として、やはり国際的な展開というものを進めていかなくてはいけないのではないかと、こういうふうに思っております。  特に、アジアの場合には、この知的所有権の問題、つまり、CDについては海賊版が非常に多うございます。今おっしゃられた宇多田ヒカルCDも、日本から正規に出されたものもあると思いますけれども、相当のものが向こうでコピーされたものが多うございまして、こういう知的所有権侵害問題というのは、これはもちろんサービス業だけじゃなくて製造業の分野でも大きな課題でございまして、これにつきましても昨年の秋に、知的財産フォーラムミッションというのを、松下の森下会長をヘッドに関係者百人ぐらいのミッションを中国に派遣いたしまして、中国の関係政府当局に知的財産権の管理をきちっとやるように申入れをしてきたところでございますけれども、こういう対策を今後とも力を入れて、是非我が国のコンテンツ産業を始めサービス産業全体の更なる拡大、それから国際展開を支援をしていきたい、こういうふうに思っております。
  23. 佐藤雄平

    佐藤雄平君 ありがとうございました。
  24. 関谷勝嗣

    会長関谷勝嗣君) 次に、沢たまき君。
  25. 沢たまき

    ○沢たまき君 今、佐藤先生のお話で経産省の方がおっしゃったので、それはもう、私はその業界を、少し席を汚していた者として、遅いんだという気がしてなりません。なので、文化芸術振興基本法を作らせていただいたんですが、経産省だけじゃなくて、実はもう本当は文化庁を省にしてもらいたいし、文化大臣を作ってもらいたいと実は思っているくらいでありまして、ハリウッドなんというのはもうみんな分かっているのになかなかやってくれなかった。あれはもう本当にお金も稼ぐけれども、本当に基幹産業で、景気の悪いときにはこんなに稼ぎやすい場所がないわけですので、どうぞもっと勉強していただきたいというふうにまずは要請しておきますし、どこにお願いしたらいいか分かりませんが、是非文化庁にも文化のこと分かる人、もう少し役人で入れてもらいたいと。そうしたら、長官が、そんなのはこういうところへ来ないよと言われてしまったんですが、そういう人も是非入れていただきたいと思っております。大体、頭のいい方は音楽やる方が多いんですから、途中で捨てないで、役所へ入ってもやってもらいたいと思っております。それは要請です。  それから、ITのことに関しても世耕先生がもうおっしゃってしまったのですけれども文化とか芸術に関連しまして私が思うのは、参考人の方とお話ししていたときにすごく思いましたのは、アジア地域に対してIT分野でいろんな支援を我が国がしておりますが、それがなかなか見えてこない。百五十億ドルが余り消化されていないというお話もありましたけれども、その条件の決定に時間が掛かったり、そしてその返済に三十年も掛かる。ITの機械なんて三十年も同じものを使っているわけでないので、こんなのじゃ話にならないと参考人がおっしゃっておりましたが、こういう状況ITの現実に即していないと考えます。  また、ODA世耕先生お触れになりましたけれども、特にODAに対する考え方の中で、ITの支援については、途上国ITは不釣合いという偏見がいまだにあると。参考人からは具体例を示されましたが、ITが貧困を解決する有効な手段であると認識を持つべきではないかと思っています。  例えば、インターネットというのは水とか食料、医療、何十番目に来ちゃうとおっしゃっていましたけれども、こういうものと同様に、ベーシックなヒューマンのニーズであるとの認識がもう不可欠になってきていると思います。ODAの先進国として、当然ながら人材の育成も含めてIT支援の先頭に立つべきだと思うんですけれども、最先端の地位を築く上において、まず外務省伺いますが、参考人からこういうことを言われましたね。現地の援助担当者の間にITがデジタルオポチュニティーとなるとの認識が欠けている、また、ITの知識が不足しているとの指摘がありました。  この点の改善をなされているんでしょうか。また、金額は余り伸びていないというか、聞いてもしようがないかなと思いますが、ITの支援の件数、金額はどうなっていますか。  それから、総務省伺いますが、e—Japan戦略の基本理念について教えていただきたい。  この基本理念の中に、「既存の制度、慣行、権益にしばられず、早急に革命的かつ現実的な対応を行わなければならない。」というのがありますが、これについて参考人から、実行されていないのではないか、改革の実行が最大の課題ではないかとの指摘がありました。この文言にありますように、今、早急に革命的かつ現実的な対応を行わないと我が国IT二流国になってしまうんじゃないかという危惧をしておりますが、この点に関して総務省の見解を伺います。  もう一つアジア経済の統合について伺いたいんですが、私の意見としましては、東アジア地域において各国間で自由貿易協定が締結、それに向けての動きが大変活発になってきておりますが、我が国はこうした動きに後れを取っているような感じがしてなりませんし、むしろリードしていくべきだと考えているんですが、しかし、多くの委員とか参考人から指摘されましたように、我が国の場合は、FTAを推進させる一方で、農産物の自由化問題をどう解決していくかが大変にセンシティブな問題であって、最大の課題となっていると思っております。  この私はグローバリゼーションの進展とともに、各国の産業構造が猛烈なスピードで変化をしておりますし、今後もそのスピードがもう加速していくんだろうと思っているんですが、その意味我が国農業が厳しい局面に立たされていくんだろうと思います。そこで必要なことは、環境の問題も含めてですが、食料安全保障をいかに確保するかであると思うんですが、そこで安全保障の内容はどんなようなものなんでしょうか。  それから、FTAの促進と食料安全保障の確保という二つの課題は相反するものと理解されているんでしょうか。もし相反する部分があるとすれば、その摩擦をいかに小さくするか、具体的に影響を受ける農業部門の痛みをいかに小さくするかについて、基本的な考えを農水省に伺います。  経産省には、農水省の主張される食料安全保障の確保とFTAの推進は相反するものとお考えでしょうか。もし相反する部分があるとすれば、食料安全保障の確保という要請によってFTAの促進が阻害されてはならないというお考えでしょうか。  外務省伺います。FTAの促進と食料安全保障の確保という二つ要請が基本的に相反するものであるとすれば、経済外交の元締としてのお立場から、外務省が農水省と経産省の調整役になるというお考えはおありでしょうか。  それから、本調査会質疑の中で、矢野副大臣からは、FTAに関する縦割り行政の弊害をなくすために官房長官の下で各省も関係局長が集まって協議していると、こういう御説明がありました。この協議は有効に機能しているというお考えでしょうか。  また、我が委員の中からは日本版のUSTRを設置してはどうかとの提案もありました。外交の一元化という観点から外務省が猛反対されると思いますが、この点に関する御意見をお聞かせください。  以上です。
  26. 関谷勝嗣

    会長関谷勝嗣君) たくさんの御質問もございましたし、各省庁間の関係も悪化するような御質問もございました。こういう調査会でございますから、どうぞ忌憚のない御発言をしていただきたいと思います。
  27. 石田直裕

    政府参考人石田直裕君) 順番にお答えさせていただきます。  最初に御指摘がございました条件の問題につきましては、私ども、また外務省と十分に協議させていただいて、改善に努力をさせていただきたいと考えております。  それから、過去の件数でございますが、私ども、今手元に持っておりますのは平成十四年度の資金協力でございますけれども、大きなものといたしましても六件ございます。モンゴルの短波ラジオ放送計画だとか、また一番大きなものといたしましてはベトナムに対する南北海底光ケーブル整備計画というのがございまして、これは百九十五億円の交換公文が交わされたところでございまして、資金協力だけ、ちょっと今、私手元に持っておりますけれども、六件アジアにおいて行っております。  それから、援助をされている方あるいは受け入れる方に認識が不足しているのではないかということですが、これは私どもも度々耳にする御意見でございます。したがいまして、私ども、まず援助される側の人材育成ということについても積極的に取り組んでいきたいと考えております。今引用していただきましたアジア・ブロードバンド計画におきましても、そういう人材育成について今以上に努力してまいるということを掲げておるわけでございまして、そういう方の人材育成をすることによりましてそういう認識が徐々に減ってくるのではないかというふうに考えております。  また、先ほど外務省から御説明がございました、ODA大綱の中で、見直しの中でそういうことも行っていただけると考えておりますけれども、特に私どもの方からは、その大綱の見直しの上で積極的に、先ほど世耕先生の言われたことと関係いたしますが、情報通信技術を活用した案件を積極的に私どもも持ち出していきまして向こうを説得していきたいと。あるいは政策対話等を通じまして、こういうITが水、食料に並んで極めて、その国の経済力を活性化させるために極めて重要なものであるということを説得していくという努力も必要であるというふうに考えております。  それから、アジア・ブロードバンド計画は何を目標にしているのかということでございますが、ICTというのはアジアの発展にとって極めて欠かせない技術でございますし、特にブロードバンドは多種多様な情報が時間的、空間的な制約を受けないで流通するということでございますので、個人の生活の充実についても極めて大きな影響があるというふうに考えております。  したがって、このようなブロードバンドを含めたものについて、アジア多様性にも配慮しながら普及と利活用を一層進めていくというのが必要だというのが基本理念でございまして、これに向けて七つの目標を立てまして順次実行してまいりたいと考えております。これはまた、我が国にはこういう分野でリーダーシップを発揮することが期待されておるわけですので、アジア各国に対してこういう取組を支援していくことがアジア各国からの期待にもこたえるものになるというふうに考えております。  総務省からは以上でございます。
  28. 山下一仁

    政府参考人山下一仁君) お答えさせていただきます。  なかなか根本的な問題なので、果たして的確に御答弁できるかどうか、ちょっと若干自信がないところですが、精一杯努力させていただきたいというふうに思っております。  まず、FTAの推進と農林水産物との関係でございますが、我が国政府全体としまして、基本的にはWTOを中心としました多角的な貿易体制、この維持とか強化、これを基本としまして、これを補完するものとして経済連携とかFTAを推進していると、こういう基本的な立場で臨んでいるところでございます。  その中で、農林水産物でございますが、ガット二十四条という自由貿易協定の規定がございまして、これは実質的にすべての貿易について自由貿易協定の対象とするという規定がございますので、農林水産物を、農林水産分野をセクターとして除外するのではなくて、それを含めて包括的な分野について各国と交渉に入ると、そういう基本的なスタンスで臨んでいるところでございます。現に、農林水産省としても、外務省、経産省それから財務省の方々と一緒に共同議長省ということで種々の国の協議に参加させていただいているということでございます。  それから、食料安全保障の内容でございますが、まず、日本食料自給率が現在どういうふうな水準になっているのかということについて御説明させていただきたいというふうに思っております。  先ほど申し上げましたように、日本のカロリーベースの食料自給率というのは四〇%でございまして、これは先進国、OECDに加盟している先進国の中で、アイスランドという極端に小さい国と、それから花産業で生きているオランダとかそういう二つの国を除きまして先進国で最低の水準になっています。特に、穀物自給率につきましては二八%という水準でございまして、人口一億人以上の国・地域の穀物自給率としてはほとんど最低に近い水準になっているところでございます。  他方、世界食料供給が今後どうなってくるかということでございますが、世界の耕地面積を見ますと、砂漠化の進展でありますとか、あるいはアメリカ農業というのは強いというふうに思われているわけでございますが、アメリカでも表土がどんどんどんどん流亡していくと。表土というのは、一インチの表土を作るのに五百年掛かると言われているんですが、それを毎年毎年二十七分の一ずつアメリカ農業は削っていっていると、こういう問題もあります。  それから、オーストラリアでは塩類が集積して、これは不適切なかんがい農業をやるために、水をやると水が土の中に浸透しまして、それが蒸発するときに土の中の塩を表面に持ち上げるものですから、周りが全部塩で覆われまして、結局農業ができなくなってしまうと、そういう問題も抱えております。そういうふうに、かなり、世界の耕地面積が将来どうなっていくのか、かなり予断を許さない。  それから、単収の増加でございますが、かなり、今までは単収の増加で世界の増大する人口を養ってきたというのもあるんですが、この単収の増加もかなり鈍化していると。その中で、世界人口が二〇〇〇年の六十一億人から二〇五〇年には九十三億人になると。こういうふうな中では、やはり輸入の多角化と、そういうのも重要なんですが、あるいは備蓄をするということも重要なんですが、やはり、いざとなったときの最低限の国内生産、できれば国内生産を自給率四〇%という数字からできるだけ伸ばしていきたいというのが農水省の考え方でございまして、これは総理府の世論調査にもありますように、例えば将来の食料供給に不安を持たれている方が七八%存在する、あるいは食料の安全保障が確保されるべきであると答えられた方が九五%も存在すると。そういう中で、やはり新しい基本法の中で一番食料の部分で強調されましたように、食料の安全保障というのはやはり重要な課題であるというふうに思っております。  そことFTAとをどういうふうに整合性を図っていくかという御質問でございますが、我々基本的にはFTAをやることによって貿易の利益を増加する、これも一つの目的だと思います。他方、貿易以外の目的、例えば食料安全保障のような、非貿易的関心事項というふうに我々は呼んでいて、これは農林水産省が呼んでいるわけではなくて、WTOの中でも例えば農業協定なんかにも頻繁に出る言葉でございますが、そういうものとどういうふうに調和していくのかと。実質上すべての貿易ということで関税を下げていく、関税をゼロにする、それが食料安全保障とか、それから日本が今進めておりますような農業の構造改革とか、そういうものを悪影響を生じないような形で推進していく必要があるのかなというふうに思っております。  こういう観点から各国で結ばれている自由貿易協定を見ますと、例えば農業につきましては各国ともセンシティブな品目を抱えておりまして、基本的にはその協定の対象外とすると。実質的にすべての貿易ということでございますので、一〇〇%やる必要はないわけですので、各国とも、例えばEUが結んでいる自由貿易協定、あるいはアメリカがNAFTAといってカナダ、メキシコと結んでいる自由貿易協定、これについてもかなりの品目について例外規定を設けたり、あるいは自由化の速度をずらしたり、いろんな工夫をしているところでございます。各国ともセンシティブな品目を持っているものですから、できるところからやっていこうというのが世界の自由貿易協定の流れではないかなというふうに思っておりまして、こういうふうな各国の例も踏まえながら、我々としては自由貿易協定を推進していきたい、それに参加していきたいというふうに思っております。  それから、環境との御質問でございましたが、環境については、環境省を中心としましてFTAと環境の関係について検討が開始されておりまして、これに我が省も参加しておりまして、農林水産業と環境、FTAの関係、関連について今後検討させていただきたいというふうに思っております。  最後に一言、貿易以外の非貿易関心事項ということで一つ指摘させていただきたいと思いますが、ガットの世界では環境という言葉は一つも出てきませんでした。ところが、ウルグアイ・ラウンドでできたWTO協定につきましては、WTO設立協定の前文で環境の保全というものが出てきましたし、あるいは農業協定におきまして、環境とか食料安全保障とか、そういうふうな非貿易的関心事項の重要性も指摘されているところでございます。  貿易の利益、これは重要な利益だと思いますが、貿易だけがすべてではないと。人間の健康、それから環境、いろんな世の中には価値があるわけでございますので、そういう貿易の目的と、環境とか国民の生命とか健康とか、そういうものをいかにして調和を図っていくか、これが今後重要な課題になってくるんではないかなというふうに思っております。
  29. 田中伸男

    政府参考人田中伸男君) ありがとうございます。  基本的に、山下事官が御説明された以上に私が付け加えるものはないんでございますが、事前に意見をすり合わせているわけではございませんけれども、正に参事官おっしゃったように、FTAはすべての分野においてその自由化を図っていかなくちゃいけないと。ある特定のセクターを例外にすることはいかぬというのはもうWTOのルールでございますので、農業についてもその例外ではないということはFTAを始めるときからの前提になっていたわけでございます。もう山下さん言ったとおりであります。  ただ、FTAにしてもWTOの今回のラウンドにいたしましても、国内のやっぱりセンシティブなエリアがあるのはどの国でも同じでありまして、農業においてもそういったものがあるのは各国とも同じ状況でございますので、こういったものについては十分配慮しなきゃいかぬと。構造改革を農水省さん中心になって一生懸命やっているわけでございますので、そういうものを邪魔しないようにFTAそれからラウンドの交渉をしていく、これが我が国の交渉姿勢でございます。  FTAは、もう先生御存じのように、随分この調査会でも議論されておられましたけれども、単に自由貿易を進めるだけではなくて、いろいろな幅広い経済統合のための環境整備をしているわけでございまして、投資やらサービスやらITやら、各種のものがあるわけであります。そういったものを通じて日本の中でも構造改革が進むわけでありまして、農業においてもその例外ではないわけでありますので、そういったものが進むことは必ずや食料安全保障上もプラスになっていく、日本農業も強くなっていくというプロセスに私はあるんではないかと思います。  現に、FTAをやれば、今、日本から余り農産品は輸出されておりませんけれども、輸出するチャンスは当然に増えてくるはずでございまして、こういったものも農業の構造改革を進める原因になってくるのではないかと思うわけです。  各省の連携のお話もついでに一言だけ申させていただきますと、官房長官の下で局長以下、各種のレベルで調整が行われています。私どもも海外に出張いたしましていろんな交渉に当たるわけでございますが、そういったときにいつもこういったメンバーが一緒にやっているわけでございまして、共同議長という言葉もございましたけれども、日々調整をして、基本的統一ポジションを作り、国内の関係者の説得をして交渉していくと、こういうことでございまして、現体制で相当効率的にやっているのではないかというふうに考えます。  以上です。
  30. 渥美千尋

    政府参考人渥美千尋君) FTA促進と食料安保の関係でございますけれども、今まで各省庁の方々からお話ございました。いずれにしろ、我が国の安定と繁栄にとりまして両方とももちろん大変大切でございますし、今話ありましたように、WTOの関係あるいは難しい品目をどうするかと、そういったことを念頭にいかにうまくバランスさせるかということを検討を進めていく必要があろうかと思っております。  外務省としても、関係省庁と十分に意思疎通をし、協力して国全体として適切な対応ができればと思います。例えば、各国との協議におきましても、四省庁の議長体制を取っておりますけれども、その中でも一応調整役として外務省が全体をうまくまとめるような努力しております。  各省間の体制等々につきましては、同僚の経済局参事官から御説明させていただきたいと思います。
  31. 高原寿一

    政府参考人高原寿一君) 御説明申し上げます。  先ほど先生の方から、FTAと食料安全保障の関連で、各省の調整あるいは日本版USTRといった考え方に関しまして御質問をちょうだいいたしました。大変微妙な御質問でございますけれども。  一般論でございますけれども、対外経済政策を進めるに当たりましては、経済関係の省、各省間の調整、協力というのが不可欠でございますし、その間の調整を確保しなければ、効率的、効果的な対外経済政策は実施できないものと考えております。  また、外交政策という観点から見ますと、経済のみならず政治あるいは文化、そういった各種の分野にわたって総合的な観点からこれを進めるということが重要でございまして、例えば経済であれば、経済という分野のみを切り離して実施していくということでは、時により我が国全体としての国益を損なうということにもなりかねないと考えております。  その意味で、政府部内で対外経済政策にかかわります各省の考え方というのを総合的また公平な観点から調整し、調整された結果を一つの声として対外的に出していくということが重要かと思っております。  FTAに関しましては、先生指摘のとおりでございまして、政府の中では官房長官の下に関係省庁連絡会議というものが設置されておりまして、従来、数次にわたり会合を重ねてきております。そうした政府全体としての総合的な検討を踏まえて、日本ASEANとの包括的経済連携構想に臨んでいるところでございます。具体的な各国との交渉に当たりましても、各省の間の意見を十分調整した上でこれに臨んでおります。先ほど農水省の方でしたか、からもお話ありましたように、四省の共同議長体制というものが取られておりますし、また外務省は共同議長の一つであると同時に全体の調整役を務めさせていただいているという状況でございます。  もし差し支えなければ、先ほどのITの関連につきまして、外務省の方からの補足をさせていただければと思います。  IT分野でのアジア各国に対する支援ということでございますけれども先生御案内のとおり、ITというのは普及すればするほどその便益も拡大するという特性を持っております。したがいまして、これは被支援国である途上国のためだけでなく、我が国にとっても有益であるという観点を踏まえる必要があると思います。その意味で、私ども外務省といたしましても、IT分野における途上国に対する支援というのを重視しております。  また、先生が御指摘のとおり、ITというのは貧困を解消するための非常に有効な手段の一つであると認識しておりまして、外務省といたしましても、従来、例えば教育分野における支援を実施するに当たりましてITを活用するというようなことを行ってきております。  最後に、金額、件数について御質問ございました。  IT支援の実績でございますけれども平成十二年度及び十三年度の合計額で、ODAで約八百三十三億円、OOFで約千八百二十五億円でございます。これは東アジアではなく世界全体に対する数字でございます。  また、このうち二国間ODAについて見ますと、平成十二年度が三百四十四億円、約三・二億ドルでございます。十三年度は四百五十億円、約三・七億ドルでございます。円ベースでおよそ三〇%増加いたしております。  件数につきましては、実は資金協力ですとか技術協力ですとか様々な支援の形態がございますので一概に比較することはできませんが、おおむね同数と、件数としてはおおむね同数となっております。今申し上げましたのは十二年度、十三年度の数字でございます。  十四年度の数字につきましては、集計中でございますが、無償資金協力に関しましては、無償資金協力、二国間のODA一つでございます無償資金協力に関しましては、平成十二年度が約四十三億円、平成十三年度が約五十六億円に対しまして、平成十四年度は八十一億円と大幅に伸びております。  この中身といたしましては、電話回線網ですとか無線通信網、放送網などの電気通信のインフラの整備、次に情報通信分野の人づくりのための研究訓練センターの設置、あるいは教育研修機関への機材供与、最後に防災システムの整備といったものが挙げられます。  今申し上げました、八十一億円に伸びております、失礼しました、今申し上げた三つの分野、いずれも東アジアの国を含む支援の数字でございます。
  32. 関谷勝嗣

    会長関谷勝嗣君) 次、緒方靖夫君。
  33. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 私は、三点ぐらいをお伺いしたいと思うんですけれども一つは、アジア通貨危機の教訓と今後の問題です。  東アジア通貨危機の克服した教訓というのはとても示唆に富んでいる、教訓に富んでいると思います。当時、大銀行とかヘッジファンドがそういう投機活動などによって東アジアに深刻な事態を招いたわけですけれども、当時、IMFがそれに乗り出して、その対応がいろいろ国によってあったわけですが、今から振り返ると、これについては大体一つの教訓ができるんじゃないかと思います。それは結局、IMFがかなり画一化した従来型の処方せんを各国に押し付ける、それをそのまま受け入れた国も、例えばタイなどのような国も、今のタクシン政権の下では、それについてのやはり誤りというか、そのことを指摘しながらそれを是正する、そういう政策を取っていると思います。あるいは、当時、マレーシアでしたけれども、半年ぐらいそれを受け入れて、それから切り替えて対応して、やはり、何といいますか、IMFの言われたままじゃなくて自主的に対応することが大事だと、そんな教訓を出してきたような、そういう経過があったと思うんですね。  一つ伺いしたいのは、IMFのそうした、IMF自身、反省とか自己批判とか、そういうことがあったと思いますけれども、そうした事態をどうごらんになっているのか、それが一点です。  それからもう一つ、そういうことに派生して、今例えばタイのタクシン政権が、せっかくアジアで作った富をアジアではなくてほかの地域に持っていかれてしまうと、かなりが。それをアジアで、アジアで作った富はアジアでという考え方の下にアジア・ボンド構想というのを出していると思うんですけれども、それについてのお考え、それを伺っておきたいと思います。  それから、二点目ですけれどもアジアの中での日本の存在感あるいは役割ということなんですけれども東アジア経済的な結び付きが東アジアの政治的安定を促す、これは非常に大きな真理だと思うんですね。また、そこに、そういう考え方の下に、日本に対する期待というのは世界から、アジアからあったと思います。ただ、この間の動きを見ると、例えば本当にこの二、三年見ても、中国がかなり進出する。例えば中国ASEANに対してFTAをということで働き掛けて、部分的でもできるところはどんどんどんどん協定を結んでいくという、そういう形を進めているし、その下で、中国に対して、かなりかつては脅威と見ていた見方も変えていると。すなわち、中国の比重がうんとこの間大きくなって、その分だけ日本の比重が軽くなるという、そういうふうに見て取れる経過があったと思うんですね。  また、同時に、人的交流も、中国自身、例えば最近、私訪問して改めて驚いたんですけれども、タイなんかは中国人と日本人の観光客はほぼ並んでいるんですよ。急増しているんですね、この間。それから、マレーシアは、日本大使に伺ったところ、日本を追い越して中国の方が上に行っているという。そういう形で人的交流もそういう形で強まっている。したがって、中国の存在感が国民の中で経済的にもまた社会の中の存在としても大きくなっているということがあると思うんですね。  ですから、この間作られた大きな変化だと思うんですけれども、そういう中で、日本経済的な役割が求められている。そこで、じゃ何ができるのか、何すべきかということが問われていたときに、やはり私が思うのは、政治的なマイナスあるいはマイナスと印象付けられることがその何というか役割を縮小している、そういうことがあるんじゃないかと思うんですね。  一つはイラクに対する対応ですね。これはニューズウイークの二、三号前で非常に印象深く読んだんですけれども日本政府アメリカ全面支持という、そういう対応をしたときのことですけれども世界地図から日本が消えた日と、そんな形で表現していましたけれども、もちろん非常に誇張された形でジャーナリスティックに書かれているわけですけれども、しかし、アメリカの週刊誌がそうやって書くように、日本役割世界の中でよく見えない。あるいは、アメリカの政権内で本当に重要な決断をするときに日本が視野から抜けていると。援助をもらうときにはそれが復活するという、そういう関係になって、決定的な場ではなかなか日本役割が見えてこないということがあると思うんですね。  あるいは、最近の報道でも、北朝鮮をめぐる問題で日本外しということが言われると。これも現実的ではないと思うんですけれども、しかし、中国を外すとかあるいはほかの国を外すという話にはならないで、非常に関係の深い日本を外すと、よりによってですね。そういうことが出てくるということの中にも、またそういうことが議論として出てくるところにも、やはり日本の存在感の軽さということが出てきているのかなと思うところです。  そんなことを今改めて思っているところですけれども、これは質問ではありませんけれども、何かおっしゃりたいことがあったらどうぞ。  それから三番目に、イラク戦争の東アジアでの影響ということなんですけれども、私は、この影響というのは、例えばイスラム人口東アジアの中ではやはり全体の半分ぐらいを占めると。パキスタンももちろんありますし、最大のイスラム国であるインドネシアがあるし、マレーシア等々ありますよね。ですから、そういう中でどういう動向が生まれるかというのは非常によく見ていく必要があるんじゃないかと思っているんですね。  もちろん、あの戦争の中で、アメリカが期待したような形で花を持って解放軍として迎えるということはなかった。しかし、圧倒的な軍事力で片を付けたと、強引に、そういうことだと思うんですね。  そうすると、これからが非常に大事だと思うんですよね。私は、イスラム世界の中ではやはりこれまで親米的であり親日的だった、もうそれがほとんどだと思いますけれども、そういうところで複雑な動きを作ってしまったと。そして、それがこれからどういう形で現れていくかということが、非常に慎重によく見る必要がある大きな課題だと思うんですね。その意味では、政治的にはこれから非常に大事な時期になってくると思います。  そういう中でお伺いしたいと思うのは、例えばASEANだけに限って見ても、この戦争がASEANの中で一つの分岐を作ったと思います。支持する国もあった、それからそれに強く反対する国もあった。そして同時に、イスラムということで見ると、結局、何といいますか、今のアメリカの行っている行動というものが非常に大きな憤激といいますか、いろんな様々な感情を持って受け止められて、せっかく、例えばインドネシアありマレーシアあり、それからイスラム国ではありませんけれども人口の数%のイスラム人口を抱えるタイなどでは、これまで百年間、本当に平和裏に共存してきた関係が、今様々な形で影響が現れていると、そういうことがあると思うんですね。  ですから、これはこれからの課題ということになると思いますけれども、こうしたイラクでの戦争が東アジアの中でどういう影響をもたらしていくのか、それをどの程度着目されているのか、どう見通されているのか、それについてお伺いしておきたいと思います。  以上です。
  34. 渡辺博史

    政府参考人渡辺博史君) 今、先生の方から、通貨危機におきますIMFの対応の話とそれからアジア・ボンド構想について二つ質問がございましたので、それぞれお答えをいたします。  まず、通貨危機のときにIMFが取りました行動については、今、議員御指摘のように、やや画一的であったのではないかということは、当時から日本はそういうスタンスを取っていたわけでありますけれども、結果的には、IMFの中におきましても、結果を見てどこがどういう形でうまく復活してくるかというところを見ておりますと、やはり一律ではいけなかったのではないかという反省はそれなりにしているようでございます。  当時のタイの反応あるいはマレーシアの反応というのは、今から見ればいろいろ議論があるわけでありますけれども、それぞれそのときの状況に応じて取られた政策だと思っておりますが、これに加えましてインドネシアというのがアジアで三つそれぞれ危機を迎えたわけであります。  御承知のとおり、タイ、マレーシア、インドネシアは、それぞれ金融構造あるいは経済構造において大きな発展段階といいますか、状況の格差がありましたので、それに応じていろいろ使い分けをすべきであったのではないかということがございます。  タイの場合には、かなり外から大きくお金が入っておりまして、それを地場の銀行が運用をしていると。それに対しまして、インドネシアの場合には、外からかなりの銀行がもう既に現地に入っておりまして、金融の深まりという、深化というよりも先に国際化が先に進行しているという意味での現状の違いがあったわけでありますから、そういうものに対してIMFがなすべき処方せんは本来それぞれ違うべきものがあったのではないかということをIMFの方も感じているようでございます。  基本的には、まず引締め一本でいく、つまり、危機を迎えた場合には必ず財政、金融を引き締めるのだというのが、当時の九七年、九八年のアジア現状には必ずしも合っていなかったということがございます。  それからもう一つは、それぞれの国が必ずしも単線的発展志向ではないわけですが、何かあるべき姿というものを絵に描きまして、それとの差がどれだけあるかによって、おまえのところはこういう構造改革をしろとか規制改革をしろという議論があるわけでありますけれども、それをその当初の段階において一斉にやりますと、どうしてもデフレ的な効果を及ぼしてしまうということから経済の復興というところにはかなりマイナスの要因をもたらしていたというところがございますので、やはりそれはそれぞれの国の状況等を見ながらやっていかなければならないということは御指摘のとおりでございます。  現在、IMFといたしましては、当時、九七年、九八年に起こりました危機のうち、ロシアとブラジルとそれから今の御指摘アジアの三つ、それぞれについてどういう政策をIMFが取り、それをどういうふうにそれぞれの国が受け止めてやってきたかということについて評価というのを現在進めておりますので、近々それがまとまると思いますので、また御報告ができればと思っております。  それから、第二点のアジア・ボンド構想につきましてでございますが、これは、今の通貨危機にもありましたように、アジアというのは基本的には貯蓄が超過している国であると。それにもかかわらず、開発資金というものが円滑に国内で調達あるいは流通していないという現状を踏まえて、なるべく国内の貯蓄を国内の民間の企業家に渡すような形でうまく仕組めないかというのが当時の通貨危機に対する反省であったわけであります。  御指摘のように、当時は、アジアというのはどうしても銀行貸付けが中心になっておりますので、家計とかあるいは企業は銀行に預金をすると。銀行はそれを企業に流すわけでありますが、必ずしもそれがうまく流れないときには、基本的には外へ持っていきまして、ウォールストリートなりロンドンにおいて運用をすると。それがヘッジファンドのような形を通じてまたそれぞれのアジアの国に戻ってくるわけであります。  アジアの国の状況がいいときには、そういう金がどんどんどんどん続けて入ってくるわけですから、いい循環としてお金が回るわけでありますけれども、ある日突然、どうもアジアはおかしいなと思った瞬間に、そういうお金は基本的には短いタームで入っておりますので、六十日とか半年で期限が来るお金でございますので、ある日突然それが止まってしまうということが起こってしまうという意味で、非常に短いお金が入ってきていると。しかも、それが一遍、外から入ってくるがためにユーロ建てであったりポンド建てであったりドル建てで入ってくるわけでありますが、国内の投資はタイであればバーツでありますし、インドネシアではルピアで運用していると。  そういう意味で、短い資金を長く運用する、あるいはドル建てとか外貨建てで入ってきたものを国内は現地通貨建てで運用するということで、期間とそれから通貨と、二重のミスマッチが起こっているという状況があったわけであります。  それを改善するためには、やはり国内にある貯蓄を直接国内で長期の投資に向けられないかということで、今までの銀行貸付け中心ではなくて、ボンドという形で五年なり七年なり、あるいは日本でいえば十年と、そういった長めの投資に向けられないかというのが基本的なアジア・ボンド構想であるわけであります。  そのうち、タイのタクシン首相が言っておりますのは、今の全体のアジア・ボンド構想のうち需要サイド、デマンドサイドというふうに彼らは言っているわけでありますが、そういうアジアの債券を買うお金としてどこかにそういうものがないかということに着目して、今のタクシン構想というのは、アジア各国の中央銀行が持っております外貨準備額、これの一定部分を一つのファンドに集めまして、これを域内の各国が出しております国債に投資をしようということであります。したがって、マレーシアの国債とかタイの国債というものをその各国の外準で作りましたプールのファンドで買うということで考えております。  ただ、これの一つの問題は、外準で買うものですから、外準自体が為替リスクを取るわけにはいかないので、どうしても域内の国債を買うときにドル建てのものを買うというふうになってしまっております。したがいまして、さっき申し上げたように、長いものに投資するという意味での期間のミスマッチは解消するわけでありますけれども通貨のミスマッチということについては必ずしも完全にこたえるものにはなっていないと。  それを受けましてASEANアンド3、ASEANプラス3の各国が集まりまして去年の後半から、いわゆるサプライサイド、供給側の方のアジア・ボンド構想というものをやっておりまして、これは、各国において国内の債券市場を育成する、それを踏まえてアジアの域内市場を作っていく、そういうことによって各国の、タイであればバーツで作られた預金、それがバーツ建ての債券に回っていく、そういうものを円滑にしていこうということを考えているわけであります。  例えば、まず各国では、国が国債を出して債券市場を整備する。国だけでは少し銘柄が足りないということであれば政府関係機関も出ますし、あるいはアジ銀とかIFCとかいった国際開発機関がその国の通貨建てで債券を発行いたしまして、その上がり金をその国に貸し付ける、あるいは投資をするということをやる。あるいは場合によっては、域内で活躍しております、多国籍企業という表現になりますが、日本の企業なり韓国の企業が、それぞれの国に行ってその国の現地通貨建てで債券を発行して、そこで行っています直接投資のファイナンスに使うと。そういった形で、なるべく市場の厚みを増やしていこうということを考えておりまして、また、それを中小企業が発行するものに広めていくために幾つかの中小企業を集めた形のバスケット債券を出すと。これがもし信用力が足りなければ、各国の保証機関、あるいは将来的にはアジア全体で一つの保証機関を作りまして、そういうものに保証を与えることによって市場で消化をさせるようにしようといったことを全体として、アジア債券市場イニシアチブという構想で昨年の後半から議論しておるところでありまして、これらのうち幾つか年内にも実現ができるのではないかと、一応そんなことで考えております。
  35. 渥美千尋

    政府参考人渥美千尋君) 先生の方から、一つ中国の問題、それから二番目にイラク等の問題、御指摘ございました。  最初の中国の関連でございますけれども御存じのとおり、依然として日本アジアでは一番大きな経済規模、中国の四倍でございます。他方、先生指摘のように、中国が非常に急激に、七%、八%という年々の成長をしておるし、新しい政権も二〇二〇年に向けて同じぐらいのスピードで成長する、そうすると二十年ぐらいで同じ規模になる、もし日本が成長しなければですが。そういうようなことで、確かにそういう経済規模を比較すれば、そういう先生のおっしゃったような面もあろうかとは思います。  ただ、小泉総理がボアオのフォーラムで申しましたように、そういう中国の発展を脅威と見るのではなくて、これをいかに日本としてチャンスととらえて生かすかと。要するに、ここの東アジアにおきまして、東アジア全体が発展するためには、日本中国双方が発展して、一緒に協力して安定をもたらすということが大事かと思いますので、そういう意味でやっていきたいと。その一つの対応策というものが、先ほど私申し上げましたけれども、小泉総理の昨年のシンガポールでの演説、すなわち中長期的に共同体を作っていく、こういうことかと存じます。  それから、イラクそれから北朝鮮の話もちょっとございましたけれども、私、必ずしもイラクの担当ではないんですけれども、一言だけ申し上げますと、おっしゃるとおり軍事面では確かに少し問題があろうかと思います、日本として対応は難しいと。しかし、単に経済面だけではなくて、政治的にもこれだけの日本の立場があるわけですから、イラクでも北朝鮮でもやれることはあるだろうと思いますし、例えば北朝鮮にしてみますと、御存じのとおり、日本とそれからアメリカ韓国と常に緊密な連絡を取り、そしてまた中国あるいはロシアとの関係を大事にして、どうやってその問題を解決するか、政治的に圧力を掛けていくと、そういうようなことも努力してきておるのは御承知のとおりでございます。  そして、イラク戦争の関連で、先生指摘のように、東アジアで支持する国、支持しない国あったではないかと、こういう話でございますが、確かに、例えばインドネシアとかマレーシアとか、特にイスラム教の方々が多いところでいろんな不協和音も起こっているのも事実でございますけれども、基本的には、先生御存じのとおり、東アジア、東南アジアのイスラム教徒の方々、皆、穏健な方がほとんどでございます。中東のイスラム教とはちょっと違うところがありまして、イスラム全体の連帯という、イスラム教徒全体の連帯という面もないわけじゃないですけれども、やはり、まずその国の中で自分たちの生活をどう守っていくのか、そういうようなことを大変に関心を持っていると。そういうようなことを考えますと、ちょっとやっぱり中東とは違った対応もあるんじゃないかと。  そして、イスラムという、今ちょっと誤解するおそれがあるのは、アメリカ対イスラムということではなくて、あくまでも国際社会とテロリズムだと、そういう観点で議論が進んできているというふうに私どもは理解しておりまして、その中で東南アジアにつきましては、やっぱり経済社会の安定、これが大事じゃなかろうかと。  そういうことを考えれば、日本としても従来からやってきていることでございますけれども経済面での協力を始めとして、東アジアにおいてそういう問題についても対応するやり方があるんじゃなかろうかと、そういうふうに考えております。
  36. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 一言だけ述べておきますけれども、確かに東南アジアのイスラムというのは穏健だと、穏健がほとんどだと言えると思いますけれども、しかしそれが今こういう状況の中でやはり構図を変えつつあるというのが私が述べたことで、従来こうだからこうだという話じゃなくて、そこを外務省としてよく見ていただきたいというのが私の意見です。  つまり、東南アジアから留学して行くわけですよ、中東のイスラム国に。そこでいろんなものを持ち帰ってきて、それが広がるということもあるわけです。あるいは国際社会対イラクという構図を言われましたけれども、そうじゃなくて、マハティール首相自身が結局、北朝鮮に対してはなぜ大量破壊兵器をほぼ持っているというふうに言えるのに外交的な対応でいくのか、なぜ持っているかどうか分からないイラクに対しては戦争を仕掛けるのか、そこはイスラムの差別だということをはっきり述べて、それが広がるわけですよね。ですから、そういうことの中で、結局ブッシュ大統領も十字軍ということを述べてしまったように、やはりそうは見ていないんですよね、国際社会対イラクとは、彼ら自身は、多くは、そこが問題でね。  ですから、そこのところをよく見ていくということが必要だし、そこに着目して、今後も不安定化が東アジアの中で大きくならないように仕事をしていただきたいということをお願いしておきたいと思います。
  37. 関谷勝嗣

    会長関谷勝嗣君) 次に、大田昌秀君。
  38. 大田昌秀

    ○大田昌秀君 簡単に三点ばかり政府参考人にお伺いしたいと思います。  まず、一点目でございますが、自由貿易協定の締結推進に向けて、海外からの人材や投資の受入れのための規制緩和について総合規制改革会議での審議を始め、検討がかなり進んでいるようですが、規制緩和の具体的な内容について御説明ください。  それと、二点目でございますが、たしか今年の一月だったと思いますが、日本経済新聞が、アジア各国地域ユーロでの外貨準備を増やしている、中国ドルや円に対しユーロの比率を引き上げる方針を明示したのに続き、韓国シンガポール、台湾もユーロシフトの動きを見せ始めていると報じていました。このような外貨準備のユーロへのシフトについて政府はどのように分析されているのか、特に、こうした動きが今後のアジア経済にどんな影響を与えるのか、外務省の方にお伺いいたします。  それから、三番目でございますが、去る三月二十八日に決定された政府アジア・ブロードバンド計画から沖縄の情報通信ハブ化構想が外されています。私の記憶に間違いがなければ、昨年の四月に施行された新しい沖縄振興特別法に基づいて同年七月に閣議決定された沖縄振興計画では、沖縄をアジア太平洋地域における国際的な情報通信ハブにしていくとの方針が打ち出されていたと思います。今度のアジア・ブロードバンド計画と別個に推進されるお考えなのか、その辺り総務省の方にお伺いしたいと思います。  以上でございます。
  39. 寺崎明

    政府参考人寺崎明君) 私、三点目の沖縄の関係につきましてお答えさせていただきたいと思います。  沖縄につきましてのITの関係につきましては、現在、総務省といたしましては、沖縄をアジア太平洋地域の情報通信の拠点、いわゆる情報通信ハブとすることを目指しまして、沖縄国際情報特区構想、これを推進させていただいております。  具体的には、情報通信関連産業の集積、振興だとか人材の育成確保と研究開発の促進、情報通信基盤の整備と、こういったようなものに取り組みまして、約四千四百人の雇用創出、そういった点を結び付けさせていただいております。  さらに、今お話のありました沖縄における情報通信産業の集積、中枢機能の整備を図ることを目的としまして、沖縄振興特別措置法の施行により各種税制の創設を実施しております。  したがいまして、アジア・ブロードバンド構想については明示的には書かれていない部分がありますけれども、私ども総務省としては、積極的に沖縄国際情報特区構想を推進することによりまして、アジア太平洋地域における情報通信関連産業の位置付けとして国際的な情報ハブ、これを目指して頑張ってまいる所存でございますので、よろしくお願いを申し上げます。
  40. 田中伸男

    政府参考人田中伸男君) 先生の御質問の第一点目でございますが、規制緩和の進め方、FTAについて一体どういった検討が今後進むんだろうかという御質問であったと思いますけれども、私がすべて答えられるわけではございませんけれども、規制、FTAを進める中でいろいろなセクターの自由化を相互に進めるということが起こるわけでございまして、それは、例えば投資の世界では、投資をお互いに自由に行き来がするような形での規制緩和を進める必要があるわけでございまして、例えば現小泉内閣でも、対内直接投資を五年間で倍増するという目的を立てていろいろな規制緩和を進めたり、経済特別区を作ってそこに投資が入ってくるように、こういった改革を一生懸命進めようとしておると、こういうフロントもございます。  他方、総合規制改革会議の中に国際連携、経済連携ワーキンググループを作りまして、その中で更に必要なサービス業における規制の緩和、例えばフィリピンが求めておりますFTAの中では、人の移動の問題、介護士とか看護師の問題なんかがございます。こういった問題、非常にいろいろな関係者があってなかなかセンシティブな問題であるわけでございますけれども、こういったような問題も議論するというふうに聞いております。  そのほか、いろいろなセクターの規制緩和の中でFTAに関係する部分、それからWTOのサービス協定の問題についても同様の問題が起こってまいりますので、こういったところで検討が進むものというふうに考えております。
  41. 渡辺博史

    政府参考人渡辺博史君) 二番目の御質問の外貨準備の構成の話でございますけれども財務省の方からお答えさせていただきます。  新聞にそのような報道がされていたことは私どもも承知をしておりますが、なかなか外貨準備の構成を具体的にどうするかというのは各国それぞれいろいろな思惑がありまして外に明らかになっているわけではありませんけれども、一般的に申し上げますと、それぞれの国の外貨準備高は、各国が持っております債務の通貨建て、つまりどこからどういう、ドル建てで借りているのか、ユーロ建てで借りているのか、したがってそれに対して利払いもしなければいけないし元本も償還しなければいけないという意味での債務の通貨建てと、もう一つは、貿易決済の通貨建て、これもそれぞれの支払が生じるわけでありますから、そういうものを見ながら、なるべくそれと大きく違わないような形で外貨準備の構成も持っていた方が、実際に必要になったときにある通貨から別の通貨に切り替えるという不測の攪乱要因をマーケットに与えないという意味ではいいというふうにされております。  そういう意味でいいますと、従来、幾つかの通貨に分かれておりましたヨーロッパ通貨一つになったことから割合まとめて持ちやすくなってきている状態もありますし、昨年のASEM、アジアヨーロッパの首脳会合の中の財務大臣プロセスにおきまして、失礼、サミットプロセスにおきまして、アジアにおいてユーロ通貨をもう少し使ってもらえないかという話がヨーロッパの首脳の方からありまして、アジア各国それを受け止めている状況でございます。そういう目で見まして、少しずつユーロのウエートが各国上がっていくのではないかというふうに私どもとしては思っておりますし、それは自然なことではないかと思っています。  ただし、どのようなスピードでそれが行われるかにおきましては、今の段階で、例えばドルからユーロヘ急激にシフトをするということになりますと、市場においてドルが極めて安くなるということが起こって、これはまたアジア各国必ずしも望ましいことではありませんので、時間を置きながら、徐々にそういう方向へ向かっていくということではないかというふうに理解しておりますし、それはそれで理解のできる行動ではないかというふうに思っております。
  42. 関谷勝嗣

    会長関谷勝嗣君) 大田先生、いいですか。
  43. 大田昌秀

    ○大田昌秀君 結構です。
  44. 関谷勝嗣

    会長関谷勝嗣君) 以上で各会派一人一巡いたしましたので、これから自由に発言を行っていただきます。
  45. 野上浩太郎

    野上浩太郎君 東アジア経済を考えますときに、今も中国の議論というのが非常になされているわけでございますが、中国脅威論というのもありますし、それを好機ととらえるべきだという議論もいろいろあるわけでございますが、中国経済のまずは今後のいわゆる成長をどのように考えているのかと。  先ほど、大体七%から八%の今成長があって、新政権もそれは続いていくと、二〇二〇年には日本の規模に追い付いていくというようなことを言われてはおりますけれども、例えば私自身も中国に進出をしているいろんな経営者の皆さんと話をしたりビジネス関連の人と話をしますと、もう当然中国の方でもデフレみたいなものも始まっていますし、教育問題もある、人口構成問題もあるという中で、本当の意味でどういうふうに中国の今後の経済を分析をしているのか。  あわせて、中国経済の位置付けなんですが、日本にとって脅威なのか好機なのかということを考えますときに、FTAのいろんな枠組みによって脅威なのか好機なのか、競合なのか分業なのかというところも変わってくると思いますので、そのFTAの枠組みと中国経済日本に対する位置付けというものをどういうふうに考えているのか、お聞きをしたいと思います。  また、あわせて、アジアにいわゆるそういう広域経済圏を作りますときに、電子商取引というものをどういうふうに生かしていくのかという視点が非常に重要だと思うんですね。ある機会に、参考人からも電子政府というのがそのための大きな道具となるというようなお話もございましたけれども、正にその電子商取引といわゆる自由貿易というのは車の大きな両輪だと思います。  それで、e—ASEANフレームワークアグリーメントの中でもその認識というのがもう完全に一致していますし、ASEANの電気通信情報ワーキンググループの中でもかなり具体的な議論というか取組がなされているんですね、電子認証をどうするかとか。そういうことについて、日本として電子商取引についての今の取組と現状等々についてお聞きをしたいと思います。
  46. 渥美千尋

    政府参考人渥美千尋君) 中国の問題についてお答えいたしたいと思います。  先生指摘のとおり、中国も、彼らの基本的な今後の期待としては二〇二〇年までに四倍に持っていくという目標を掲げてこれから始めるわけでございますけれども、当然いろんな問題があり得るということかと思います。短期的な問題、それから長期的な問題、両方あると思いますが、短期的には、今、WTO加盟ということをしたわけですけれども、当然それに伴う問題が出てくると。  ちょっと簡単に一言、二言申し上げますと、WTO加盟により、どちらかというと難しい問題としましては、農業分野、穀物ですとか大豆ですとかそういったものの輸入が増えてくるということになれば、当然そういう農業分野での問題が起こってくる。それから、国際競争力の低い、例えば自動車、医薬品、化学品等々、資本集約的な産業におきましては、外資産業が、今度外資が仮に入ってくれば当然大幅な工場喪失が迫られるということで、こういったことから失業者は増えるというようなことがあり得るかと思います。  他方、しかしWTOに加盟したわけですから、国際ルールの下で市場経済が定着するということになりますと、やはり国内経済の改革が進展し、それから国内経済自体も拡大していくことが期待されます。個別の産業について一言申し上げれば、繊維とか食料品とか軽工業、家電といった労働集約型の産業、あるいは一部農産品もそうだと思いますけれども中国の安い労働力を背景として一層伸ばし、更に成長していくと、そういうプラスの面での動きもあろうかと思います。  それに加えて、今度は中長期的には、先生も御指摘がありましたけれども人口の高齢化の問題もございますし、それから国有企業の改革ですとか財政金融問題、最近、国債のようなものも発行しておりますけれども、そういった問題、それから、もっと根本的な農業をどうするんだという問題、いろんな問題がありますので、こういったことが中長期的には経済成長の阻害要因になり得るというふうに考えております。  ただ、いずれにしろ、こういう中で新しい政権、温家宝総理は、基本的には経済成長の維持が一番大事だということで、経済構造を進める、対外開放を進めるということでやっていくということを明確にしておりますので、日本側としても、そういう中国の発展が世界経済全体、日本にとっても適切なものになるように働き掛けていくということが大事かと思っております。  その関連で、FTAとそれから中国の話がございました。  今申し上げたように、中国はまだWTOに入ったばかりでございますので、まだいろいろと問題を抱えております。ですから、日本側としては、まだ中国側と、もちろん一部には日本中国あるいは日中韓のFTAという話がございますけれども、そういうことにすぐ入るのではなくて、中国側がWTOの約束をどう守っていくか、そういうことを見極めて、そして将来の話としてそういうことも考えてまいりたいと。当面は、これまでも話がありましたように、東アジアASEANですとか韓国ですとか、あるいはメキシコもありますけれども、そういった国々とのFTAを優先的に考えて対応してまいりたいと、こういうふうに考えております。
  47. 寺崎明

    政府参考人寺崎明君) 電子商取引の関係につきましてお答え申し上げたいと思います。  電子商取引を安心して利用するためには、電子署名や認証業務といったものが安心して利用できる環境を整備することが必要だと思っております。その観点から、平成十三年の四月に、総務省、法務省、経済産業省の共管により電子署名及び認証業務に関する法律を施行させていただいております。こういったような電子署名・認証業務につきましては、こういったような普及活動の実施等によりまして電子商取引の普及振興を図っているところでございます。  なお、外国との間で行うような商取引につきましては、国境が当然インターネットですとなくなりますので、ネットワーク上の本人確認等の手段としまして電子署名とか認証業務が欠かせないものと認識しております。この法律では、外国において認証業務を行う者は国内の認証業務と同一の基準により我が国において認証認定を受けることができるということにしておりまして、そのため認証業務の認定に関する国際相互承認の実現に向けた取組を今推進しております。  具体的には、二〇〇二年十一月末に発効した日本シンガポール経済連携協定によりましてシンガポール政府の認可を受けた事業者が日本の認定を受けようとする場合には手続が簡素化されると、こういったようなことも取り組んでおります。  なお、電子政府、電子自治体につきましても、こういったような観点からセキュリティーの確保等を十分配意しながら進めているところでございます。
  48. 松井英生

    政府参考人松井英生君) 電子商取引について補足させていただきます。  今、総務省の方から全体的なお話がございましたけれども、個別具体的には、日本韓国、あるいは日本と台湾、さらにはASEANベースで電子商取引を進めるための様々な制度的な枠組み作りについて協力をしておるところでございます。具体的には、電子商取引を進めるためのセキュリティーということでパブリック・キー・インフラストラクチャー、PKIの相互運用の推進ということでアジアPKIフォーラムをアジア・オセアニア諸国の間で始めております。  それから、日韓との間ではいわゆるトラストマーク、つまり、この企業は信用できる企業かどうかというマークがトラストマークということで日本の商工会議所等々が運用しておるわけでございますけれども、この相互承認を進めるとか、あるいは情報を保護できるようなちゃんとした企業かというものに対してはプライバシーマークというのを作っておるわけでございますけれども、これの相互承認を進める等々の話合いを日韓で行っております。  それから、日台間におきましても制度の協調を、運用の協調を行う等々、話合いを続けているところでございます。  さらに、加えまして経済産業省の方で電子商取引に関するガイドラインというのを作っておりまして、これをASEAN各国に対して今普及啓蒙運動を行っているところでございます。  以上でございます。
  49. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 民主党の大塚でございます。今日はちょっと遅刻をいたしまして、大変失礼いたしました。  これでこの東アジア経済現状展望調査、一区切りだと思いますので、ひとつお願いと簡単な質問を申し上げたいんですけれども。  よくアメリカの、あるいはヨーロッパもそうですけれども、かつて閣僚であったり行政関係者であった方が回顧録のような形で物を書いたりテレビのインタビューに出てきたりすると、何が過去の失敗の原因だったかみたいな、そういうことをきちっと、情報公開共々、顧みて、教訓としてやってほしいみたいな、割とそういうメンタリティーで表に出てくることが多いんですけれども、今回、この調査会参考人として何回かかつては皆様方の上司であった方々がいらっしゃっているんですけれども日本のそういう方々は、全員とは申し上げませんけれども、自分たちのときはうまくいったと、今の現役はどうしたんだみたいな、そういうロジックでおっしゃる方々が非常に多くて、私はこれが日本の停滞の一つの原因ではないかと思っております。  だから、まあかつての方々はともかく、今こうやって現場で御苦労をしておられる各省の皆様方は先輩たちの轍を踏まれないように、今後、大変重要なお仕事をしておられるわけでありますが、OBになられた後に、やはり皆様方が御担当をしておられたときに皆様方の想定どおりにいかなかった理由は何かということをきちっと分析していただいて後輩の皆さんに教訓としていただくというような、そういういいOBになっていただきたいなということをひとつお願いを申し上げておきます。  そういうことを申し上げた上で、先ほど沢委員がUSTR、日本版USTRの御質問をしておられて、非常にいい御質問だなと思ったんですが、日本はよく明治維新と敗戦と今回と、三度目の大きな変化に見舞われているというふうによく言われますが、通商産業政策面においては私は二度目だと思っておりまして、富国強兵という形で、明治維新になった段階で、強兵というのは途中でなくなりましたけれども、しかし、国が官僚機構を中心に富国と、通商政策、産業政策を富ませるという面ではずっとこの百数十年はうまくいっていたと思うんですが、プラザ合意ぐらいを機会に、ターニングポイントにして、やはりなかなか縦割りの組織並びに官主導での通商産業政策の運営がうまくいかなくなってきて、二度目の大きな転換期だと思っておるわけでございます。  そういう観点で、もう一度、日本版USTRの必要性について、もうこの理屈は結構でございますので、是非、各省庁のお一人で結構ですから、今現場でやっておられて、やはり日本版USTR的なものが必要だと思うか思わないかだけ聞かせていただきまして、今後の政務の参考にさせていただきたいと思います。個人的な見解で結構でございます。
  50. 浦西友義

    政府参考人浦西友義君) 私、四省庁の一つとして、WTOとかFTAの交渉に参加しておりまして、皆様方の目から見れば、どうして財務省がそういう交渉に参加しているのかという御疑問があるかもしれないんですけれども財務省関税制度を全般見ておりまして、また、工業製品だけではなくて農産品についても毎年関税改正をしておりまして、そういう制度面から貢献できるのじゃないかということで参加しておるわけですが、この前省内で中国の方が、その方は、中・ASEANのFTAの交渉の当事者のお一人だったんですけれども、面白いことをおっしゃっていました。  それはどういうことかというと、ある方が、どうして中・ASEAN、早く経済連携、FTAが交渉を妥結したのかという御質問をされて、その中国の方がおっしゃったのは、普通、国を代表して一つのUSTRのようなところが交渉するわけだけれども、中・ASEANの場合は中国から主要な官庁が全部出ていたと。したがって、交渉は多少時間が掛かったけれども、その交渉が終わったら直ちにそれを実行することができて、結果として素早く中・ASEANの交渉が、一部ですけれども、実行する段階に至ったということで、USTRというやり方も一つのやり方としてあるんでしょうけれども、やはり日本のやり方というのもうまくいく側面もあるのかなという印象を持っております。
  51. 寺崎明

    政府参考人寺崎明君) 個人的なということでありましたので、実は私、旧郵政省で携帯電話、長らく担当いたしまして、周波数だとか標準方式ですね、日米貿易摩擦、運悪く担当しておりまして、USTRに何回か行ったことがございます。かなり長い間、アメリカ時間の昼はアメリカと交渉して、夜は日本側と打合せするというふうなことで眠れなかったという記憶があるわけですけれども。だから、そういった意味ではUSTRと聞くだけでは、個人的には余りいい印象を持っておりません。  ただ、やはりそういったような組織の必要性については、私は、やっぱり何をするのかと、具体的に、そういった面でやっぱり冷静に是非をよく検討する必要があるのかなという感じがします。
  52. 田中伸男

    政府参考人田中伸男君) 個人的見解を述べよという御指摘でございますが、これはオフレコの場に送りまして、私もワシントンに二回勤務をしたことがございます。USTRは、私の要するにカウンターパートとして向こう側の席に座っていた機会が多いわけでございますが、この人たちはどちらかというと専ら攻めてくる人たちでありまして、我々はさんざん痛め付けられたわけでございますけれども、そういった中で、そういう人たちとの友情を作りながら交渉がうまく進んでいくと、こういうプロセスでありまして、USTRはアメリカ型の交渉のスタイルを代表する攻め方の交渉であります。  翻って日本のやり方を見ますと、やはり日本の通商交渉のやっぱり本質は、アメリカヨーロッパと闘う、もちろん闘うんでございますが、国内調整がやはり非常に重要だろうと思います。やはり日本の中は、非常にこれだけ高度成長をしてきた国でございますし、規模も大きいわけでございますので、一々小さなことについて政府内、又は政府外、民間との間、いろいろな方々との調整をするのが、これがやはり一番難しいわけでございまして、内外問題には必ずその国内問題が付いてまいるわけでございます。  そういった意味で、その日本の今のシステムを私なりに見ますと、国内のコンセンサスを形成するのにはやはり相当いいシステムになっています。手間も掛かります、コンセンサスには手間も掛かりますが、やはりこういった形で徐々に徐々にコンセンサスを作っていく方式というのは、結果としては非常にうまく戦後はワークしてきたというふうに私は考えています。  これから先、一体じゃどうするかと。これはFTAを我々がやり、WTOの交渉をやり、非常に多面的な交渉をやっていくわけでございますので、またいろいろな考え方があろうかというふうに個人的には私は思っております。中身のところは、また先生、別の機会にオフレコの場でお話をさせていただきたいと、こう思います。
  53. 山下一仁

    政府参考人山下一仁君) 正に今、田中部長がおっしゃったとおりだと思いまして、私もかつて外務省の方と一緒に仕事をさせていただいたときに、外交というのは半面、国内調整なんですよというふうなことをおっしゃられて、正にアメリカのようにどんどんどんどん攻めていく場合には比較的そういう問題がないのかとも思いますけれども、それでも、例えばアメリカ各国といろんな通商交渉するときに必ずその企業の、要求する側の企業の人と必ずUSTRの代表がコンタクトを取って、実は必ず交渉が終わったら夜はその業界の人とディナーを食べて、今日のその議論の総括をやって意見交換をして、更に翌日の会議に臨むと、そういうことが頻繁に起こったわけで、そういう国内調整というのは、特に我々が所管しております農林水産分野というのは、必ず攻め込まれて、いかにしてそれを防御するかということですので、必ず難しい国内調整が必要になってくるわけでございます。  そういう意味で、その役を農林水産省がやって、そこをうまく外務省さんと、あるいは経産省さん、財務省さんと連携しながらWTO交渉とかFTAの交渉に臨んでいるわけでございます。  農業分野でも、先ほど通商交渉一般についてUSTRの話を申し上げましたけれども、例えばUSTRが実際その農業問題についてどういうふうにやっているかといいますと、農務省のフォーリン・アグリカルチュラル・サービスというのがあります。海外農業局というふうに訳しておりますが、この人たちと綿密に実は調整して交渉に臨むというのが今のやり方でございます。昔の、私がウルグアイ・ラウンド交渉を担当していたときは、交渉の最後の方は、むしろ農務省の方が若干前面に出て交渉してきたというのもありますけれども、基本的にはUSTRの人と農務省の海外農業局という人が一緒になって交渉しているというのが交渉のやり方だったというふうに思っていまして、今のように外交を担当している、あるいは通商政策一般を担当されているところと国内部局を担当している我が省というのが一緒になってやるというのは、田中部長おっしゃられましたように、時間は掛かったとしてもある意味での合理性はあるのかなというふうに思っております。
  54. 吉田博美

    ○吉田博美君 私は、中国の脅威論について再度お尋ねをしたいと思うんですけれども渥美議官の方から、中国の脅威論につきましては中国経済等も含めた中で、このことについては総理の考えもお聞かせいただく中で、むしろお互いに補完をしながら助け合っていくような形の中でアジア経済をリードしていくというようなお話をお伺いしたわけでありますが、参考人として中国から関参考人がお越しいただきまして、そのときも同じようなことを言われたわけでありますが、そのとき出された数値が、中国経済状況日本の四十年前と同じだと。そして、特化係数、製品の特化係数等を見ましても、繊維などの雑製品が輸出超過になっている、機械だとか原材料は大体中間に位置して、そして化学製品が輸入超過だと。日本と全く逆な構成になっているから日本とは二〇%しか競合しないんだ、だからお互いに補完しながらやっていけるんだというようなお話をお聞きしたわけでありますが。  私はそこで心配しておりますのは、先ほど農林省の方からお話ございましたように昭和三十七年に農業基本法ができたわけでありますが、実は昭和三十六年に日本経済農業外所得が農業所得を上回ったわけでございまして、そんな中で、そこから急激な日本経済成長をして、むしろアメリカ等に日本経済の脅威論というものを起こしたわけでございまして、そんな中で中国が、今の数値だけを比較しますと確かに脅威はないんだ、四十年前と同じじゃないかというんですけれども日本もその当時から、急激な高度成長をしたときに化学製品だとかそういうものに対する影響というのはあるんじゃないかと思いまして、この点について経産省の考えはどういう考えか、お聞かせいただきたいと思います。
  55. 田中伸男

    政府参考人田中伸男君) 先生指摘のとおり、中国の脅威は四十年後に、じゃどうなっているかというふうに考えると、大変なものがあることは間違いないと思います。もちろん渥美さんもおっしゃったように、我々もそう思うんですが、中国経済成長がこのまま七、八%のスピードでずっと続くというのは非常に考えにくいわけでございますので、不良債権問題とか国営企業の問題、それから沿海部分と内陸の差、それから教育問題、人口問題、もうありとあらゆる問題を抱え、それから環境問題だって深刻なものになってくることはもう間違いありません。日本の成長がやはり戦後八%、七%で続いた時代は長くても十数年であったわけでございますので、今のまま進むとは思いません。  ただ、脅威では、さはさりながら強い国として非常に今伸びてきているわけなんで、我々として座して死を待つというか、黙って中国にやられっ放しになろうというふうに経産省が考えて、政府が考えているわけではなくて、いかに日本中国との関係においても、関さんは補完関係と言いましたけれども、彼の説明で非常に面白いのは、たしか中国日本、先進国の産業構造を三角形の図か何かにして、だんだん日本の方に中国の三角形が近づいてくるというような競争力の分析、補完関係の分析を彼はしていたと思いますが、日本もその逆に、日本の産業構造の三角形をより高度な方に動かしていくという手を打つことによって逃げていくと。ますますどんどん低レベルの加工分野等において中国に持っていかれるのはもうこれは間違いないわけでございますので、我々としては日本が立っていく産業に資源を集中して、又はそれに加えてサービス業、これが言えると思いますけれども、そっちの方に資源を移すことによって十分闘っていけるというふうに考えております。  補完する部分について、中国に出ていった企業、こういった企業が収益を上げる、広い中国のマーケットで収益を上げてそれを日本に還元する、また、中国において豊かになった人が今度は日本に来て日本のサービスを消費してもらうと、こういった形でいろいろな協力が出てくるわけでございますので、我々、悲観をするんではなくて、どうやってそのウイン・ウイン関係を作るか、その制度設計をするか、それを考えるのが私どもの仕事であろうかというふうに考えております。
  56. 関谷勝嗣

    会長関谷勝嗣君) 予定の時刻が参りましたが、あと二人の方のお申出がございますので、質問も、また答弁も時間を考えてひとつお進めをいただきたいと思います。
  57. 辻泰弘

    辻泰弘君 円の問題について一点だけ国際局長に御所見をお聞きしたいと思うんですけれども、財務大臣もかねてより、百二十円の水準ですけれども購買力平価からいくと百四十円、百五十円が適当なところじゃないかという話をされているわけでございますけれども、デフレ不況の中にある日本経済の中で、やはり円安誘導というのに、誘惑に駆られるところがあるわけですが、そのことについてはアジアからの反発があるというふうな議論もあるわけですが、その点どう見ておられるか、その点だけ教えていただきたいと思います。
  58. 渡辺博史

    政府参考人渡辺博史君) 円の水準についての御質問でございますが、購買力平価という数字もあることはあるわけでありますけれども、これは、いつの年度を使うか、あるいはどういうバスケットで計算するかということにおいてかなりぶれが出るものでございますので、それを、特定の数字をターゲットにしてそれに向かって人為的に誘導するということについては、そもそも適当な数字とは余り思っておりません。  ただ、そういうものが一つの水準、目安として流布していることは事実でございますから、そういうものは念頭に置いていかざるを得ないと思っております。  今申し上げましたように、人為的に誘導する、例えばそれを為替介入で行うといった面につきましては、今、議員御指摘のように、アジアからの反発だけではなくて、先進国のG7の中におきましても、そういうものではなくて基本的にはやはりマーケットで決めるべきだという話が一般的になっております。  往々にして、景気が悪くなりますと、各国が自らの通貨を安くするということについてはやや魅力があることは否定できないわけでありますが、全体としてそういうことになりますと、ほかのものと違ってあくまでも相対水準で決まるものでありますので、そういうところで、特定の国だけが人為的に為替の相場に何か手を突っ込んでやっていくということについてはなかなか難しいと思っております。  しかしながら、全体としての経済の動向あるいは金融、金利の動向等において、それが為替の相場に反映していくということはあろうかと思いますので、今、我々としてデフレ克復のために何ができるかという全体の中において、それが円高にならないような方向で市場に影響が与えるようなことが起こればいいと、そういうことで政策を進めていきたいというふうに思っております。
  59. 井上哲士

    ○井上哲士君 先ほど若干議論になりましたイラクと東アジア問題、これは意見だけ述べておきますが、アジアのイスラム教とは違うということと、国際社会とテロリズムだというお話もありましたけれども、問題は、イスラム世界がどう見るのかということかと思うんです。  去年、中東の派遣に行かせていただきまして、イスラムの指導者であるタンタウィさんという方とお会いをする機会があったわけですが、この最高指導者がジハードを呼び掛けたという報道もありました。また、今シリアに対して非常にアメリカが圧力を掛けているということを見たときに、これがやはりイスラム世界アメリカというような形になるやはり懸念というのは非常にあるわけで、それが東アジアなどでいろんな亀裂を呼ぶことを望むわけではありませんから、やはりこの点で、日本が今後の、例えばイラクの復興などへの国連の明確な関与の問題とか、大きな役割、明確な対応が必要だということを述べておきます。  それで質問は、先ほど若干出ていましたトロンのことなんですが、昨日たまたま久しぶりに「プロジェクトX」を見ましたらこのトロンをやっておりまして、スーパー三〇一条のねらい撃ちにされていったんは失敗かと言われたのが復活をされて、大変興味深く見ていたんですが、このトロンがいわゆる日本アジアにおけるIT戦略又は貢献の中でどういう役割、どういう可能性を持っているのかという点についてお考えをお聞きしたいのが一点と、それから、その関係で、やはり非常にソフトの開発ということの重要性をそのテレビ番組でもやっていたんですが、これ、前回のときにも少し議論になりまして、インドが非常にソフトの技術者が輩出をしている、その理由は何かという中で、非常に子供のときからの計算力が高いというお話があるんですね。  ただ、日本を見ておりますと、むしろ、そういう自由な発想をする子供たちを育てるという中で、むしろ非常に計算が、基本的な計算力を付けることがむしろ小学校教育の中では今後退していると思うんですね。必ずしも経済要請だけで教育の中身を考えるのはふさわしくないかとは思うんですが、今のそういうインドなどと比較をして、日本のそういう基礎的計算力を付けるという点でどんなことをお考えか。これは文部省の所管ということかもしれませんが、個人的でも結構ですので、これは経済産業省になるんでしょうか、御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  60. 松井英生

    政府参考人松井英生君) 今、先生の御指摘はトロンということでございましたけれども、御案内のとおり、コンピューターのOSにつきましてはマイクロソフトが相当高いシェアを維持しているというのが現状でございます。これに対しまして、やはりコストを低減させるという観点から考えるとやはり競争を促進しなくてはいけないということで、他の選択肢を増やしていく必要があるんじゃないかという問題意識が一つ。  それからもう一つは、マイクロソフトのOSにつきましては、やはり中身が開示されていないということで、ソースコードが開示されていないということで、いざというときのセキュリティーの問題もあるというような問題意識もございまして、いわゆるオープンソースソフトウエアというものを少し広めるべきではないかと、こういう問題意識が我が国政府にあるばかりでなく、かつASEAN各国の中にもそういう考え方が非常に広がっているわけでございます。そういうOSとして、いわゆるリナックスというものとこのトロンというものがオープン化の流れの一つの新しい選択肢として有望視されております。  経済産業省といたしましては、こういうオープンソフトウエアの推進を図る観点から、アジアにおきましてOS、オープンソフト、オープンソースソフトウエアの推進を念頭に置きましたセミナーを今年の初めにタイのプーケットで開きまして、各国で共同してこのOSSを開発、発展、普及をしていこうと、こういう問題意識で意見の一致を見たところでございます。このほかにも、日中韓辺り中心に、オープンソース、OSSをベースにしたいわゆるアプリケーションの開発、こういうものについても今後協力をしていきたいと、こういうふうに思っております。  それから最後の、御指摘の教育の点でございますけれども、これはもう先生御案内のとおり、我が国のソフトウエアに関する基礎的な技術力がアジアの中でもそれほど強くないというのが現状でございまして、確かにインドの技術力が相当高いというふうに認識をしております。更に加えまして、中国技術力も大変高いものがございます。  これは、人数におきましても、日本の工科系大学の卒業生の、数え方にもよりますけれども、十倍ぐらいの多くの卒業生を中国は出しております。そういう人々がアメリカにも留学をしまして最先端の技術を身に付けてソフトウエアの開発にいそしんでいる、こういう事実がございますので、我が国といたしましても、人材の開発が今や一番重要であると、こういう問題意識で、様々な施策をこれから人材育成のために集中をしていきたいと、こういうふうに考えております。
  61. 寺崎明

    政府参考人寺崎明君) ちょっと補足させていただきますけれどもOSの問題、今、経済産業省さんからありましたけれども、要はやはり日本の国際競争力という点でそういった面をどう考えるかというポイントと、あと情報通信の安全保障という点からそういったような問題をどう考えるかというポイントがあろうかと思います。そういった意味では、私ども本年度、セキュアなOS在り方、こういったものをちょっと調査する予定ですので、ちょっと勉強していきたいというふうに思っております。  それから、人材の関係ですと、やはり今、理工離れ、理工学部ですかね、そういったものが、離れみたいな雰囲気があるんですけれども、そういったものにどう対処をしていくかというのがポイントになるんじゃなかろうかと思います。
  62. 関谷勝嗣

    会長関谷勝嗣君) それでは、本日の調査はこの程度といたしまして、これにて散会をいたします。    午後三時十分散会