○
参考人(少徳
敬雄君) ただいま御紹介をいただきました、松下電器
産業で海外部門を担当いたしております少徳でございます。
本日の私のテーマは、
中国の
WTO加盟など、市場経済化と
国内外への
影響ということで事前にレジュメをお配りいたしておると思います。基本的にはその流れに沿って御説明いたしますが、一部データなどでより分かりやすく見ていただくためにパワーポイントを使わせていただきたいと思います。
なお、私のスタンスの方は、実務の現場から見てこの
中国の最近の動きをどう感じているかということでございまして、論理的な分析に欠けてはおりますけれども、具体的な実例をもって率直な
意見も含めて御説明申し上げたいと思います。
本日は五つのパートに分けてお話しさせていただきます。
まず、私ども松下電器の
中国事業の概要について簡単に述べさせていただき、そして二番目に、
中国WTO加盟に伴う市場経済化と製造
競争力の拡大に関連して、事業環境の変化に対応しながら私どもがどういう
考え方で
中国での事業を展開しようとしているのかにつきまして御報告申し上げます。そして三番目に、
中国の製造力強化がどう
国内外に
影響しているかということについて具体的なデータでもって御紹介いたします。そして、そういう
中国の躍進の中で
日本の物づくりの事業環境が直面している課題について、政治に対する要望も含めて御報告申し上げます。
これは松下の連結売上げのデータでございまして、二〇〇一年度の連結売上高が約六兆八千八百億円でございまして、そのうち五一%が海外での売上げで、
中国及び
アジアが最も多く、四〇%となっております。
これは我が国の電機メーカーが海外展開をしてきた経緯について概略をまとめたものでございまして、これは
皆さんがよく御高承のとおりでございますので割愛をさせていただきます。
当社は、
中国事業展開の開始が、一九七〇年代の後半に当社の創業者松下幸之助が訪中をいたしておりまして、以後、一九八七年にブラウン管合弁会社BMCCを皮切りに展開をいたしておりまして、特に九〇年代、
製品別事業部単位での
中国への
工場展開が加速化されております。
現在、
中国各地に分散して約四十二の製造拠点を持っておりまして、四十二社の内訳が、完成品製造会社が二十二社、
部品・デバイス製造会社が二十社でございます。これら四十二の会社は、それぞれ
製品別事業部ごとの展開でございまして、四十二社のうち三十三社が合弁会社でございまして、合弁パートナーは全部で三十七社ございます。
松下の
中国での事業
規模でございますが、二〇〇一年度で約三千億円の生産販売でございまして、本年二〇〇二年度は約四千三百億円の見通しでございます。利益は、一九九七年から黒字転換いたしておりまして、二〇〇二年度は四・四%の営業利益を出す見込みでございます。
次に、
中国事業について、
中国国内での販売と
輸出という観点で見てみますと、ごらんのとおり、年々
輸出比率が高くなっておりまして、
中国での生産がグローバル拠点化をいたしておることがお分かりいただけると思います。一方、
中国事業の当初は、
部品・デバイス関連の生産比率が高かったのでございますけれども、近年、完成品生産の
中国シフトが進んでおり、二〇〇二年度からは完成品の比率が半分を超えるまでになっております。
それでは次に、
WTO加盟に関連して、
中国の変化、特に市場経済化と製造
競争力の拡大という点に焦点を当てて御報告申し上げます。
中国での
競合関係の分析は、地場系、欧米系、台湾・韓国系、そして日系といった分類で見てみますと、
中国の地場系のメーカーは九〇年代より急速に
競争力を高めておりますが、
WTO加盟を機会に外資共々熾烈なグローバル
競争にさらされており、それに対応するためにも、外資との提携戦略で商品開発力の強化を図ったり、海外への展開を進めるなどの戦略を取っております。その中でも、急速に地場系メーカーの中での
企業の淘汰が進んでおります。
一方、外資系メーカーにつきましては、欧米
企業が戦略的な集中投資や国のサポートを得た事業拡大を進めており、特に今日、目を離せないのが、欧米
企業に次いで韓国メーカーの急速な
中国との結び付きの強化であります。
日本も確かに
中国シフトが加速してはおりますが、その
規模や動きの素早さ、国を挙げての支援などは他の
国々に劣っておるのではないかと思います。
中国での
製造業の
競争力は、単に人件費が安いという
部分に目を奪われがちでありますが、
世界じゅうの
企業は決して人件費だけにメリットを感じて展開しておるわけではありません。これは後ほど詳しく述べますが、
中国が
企業にとって魅力ある事業環境を持っておると言えるのではないかなと思います。
中国は、今日まで徹底した規制緩和を行い、外資などの
企業誘致に熱心で、かつ社会の仕組みに
競争原理を強力に導入してきました。その結果、
中国では事業インフラが改善し、
産業のすそ野も広がり、また経営面では信賞必罰を徹底した人材活用、そして豊富で安価で、良質、勤勉な
労働力の存在、そして
競争原理で自らの事業を起こそうとする大学の教授陣等々の努力、こうした結果として
中国が非常に大きな市場を生み出してきておるわけでありまして、これらのエネルギーを最大効率で
経済発展に生かす
産業政策を徹底し、スピード、コスト、人材の点で強力な
競争力を拡大させてきたわけであります。
中国は、強い
産業を伸ばして国家発展を目指す、戦略的な資本主義の徹底とも、ある面では言えるのではないでしょうか。一方、
日本はまだ弱い
産業を保護し、これが両国の社会、国家の活力の差となっておる印象を受けます。
この
中国が一昨年の十二月に正式にWTOに加盟いたしました。当初、この
影響に関しましてはいろいろな見方がありました。
これは通商白書で分析されたものをまとめたものであります。中長期的には必ずや
中国産業の
競争力は更に強化され、そのことによって
アジア全体の
産業地図が更に大きく変化すると予測されておりました。
そして、一年経過した今、実態はどうであったかと申し上げますと、短期的な
影響として予想された経済環境の変化による社会混乱は顕在化せず、一方、目覚ましい
経済発展スピードは御高承のとおりでございます。つまり、中長期で予想された
影響が実際一年で現実のものとなり、
中国の
競争力が加速する中で東
アジア全体の
産業地図は大きく変化し、
日本の
製造業の
空洞化問題はますます深刻になってきたと言わざるを得ません。
WTO加盟一年を経て、今や
中国市場は既にメガ
マーケットとしての存在感をますます高め、
中国を収益源とする事業展開なしには
企業経営が成り立たなくなってきております。
一方、
競争相手としての
中国のパワーの拡大は、
日本経済そのものを揺さぶるところまでなってきております。
WTO加盟後の事業環境の変化を考えてみますと、私どもとしては、今後、更に
中国の
競争力が拡大することから、
日本国内生産の
空洞化と
日本企業の
アジアでの製造事業との競合は避けられないものとして経営戦略を立てております。つまり、確固とした
中国事業戦略なしにグローバル事業戦略が成り立ち得ないという認識でございます。
しかし、
競争力だけに目を奪われ、すべて
中国へ製造拠点を展開いたしますと、一方では
日本から製造事業がなくなってしまいますし、事業リスクも高いと考えます。
中国には
競争力という大きなメリットがありますが、一方、政治安定上のリスクや通商摩擦が起こり得るリスク、そして知財権上のリスクを考えた場合、私どもとしましては、
中国一辺倒の事業戦略でなく、
日本も含めた広域
アジア視点での分業戦略が大変重要になってくるわけで、その戦略の中で
日本が物づくりで生き残る領域を考えていかなければならないと考えております。
一例を申し上げます。エアコン用のコンプレッサーでございまして、
中国でグローバル量産拠点として一般的なエアコン用コンプレッサーの量産を更に加速化させますが、一方でマレーシアは当社が二十年来生産活動をしておる拠点でございまして、この強い拠点を使って新興市場への攻略基地として活用する一方、
日本は新
技術商品の
輸出拠点として滋賀県の草津、山梨県の甲府に製造拠点を引き続き持って展開をいたしております。
私どもは、
中国を単に
脅威としてとらえるのではなく、いかに
中国の
競争力をグローバル事業戦略に生かすかという視点が大事であると考えております。そして、それを実現する切り口が、現地化、集約化、協業化というキーワードに集約できると思います。
具体的には、現地化につきましては、開発、設計から生産、販売サービスまで現地で完結し、現地の優秀な人材を活用し、また徹底した
部品、材料、生産設備、金型、外注先の活用を図っていくということであります。集約化でございますが、四十二あります製造拠点の統合や、
世界の
工場として生産の集約を図り、事業単位を拡大し、スケールメリットを追求するということであります。協業化につきましては、政府機関や大学等の共同開発、ODMやEMSの活用などを考えております。また、現地有力メーカーとの販売面も含めた協業などもこの路線の延長にあります。
以上、
WTO加盟と
中国の変化、そしてそれを見据えた当社の
中国事業戦略の
考え方について御説明申し上げました。
では次に、この
中国競争力拡大が具体的にどのような
影響を
国内外に及ぼしておるかということにつき、データを
中心に紹介させていただきます。
まず、主要家電
製品の
世界生産に占める
中国産品の比率であります。
中国が
世界の
工場化している実態がうかがえると思います。
ちなみに、北米市場に対する
輸出を国別に分析してみます。二〇〇〇年と二〇〇一年のカラー
テレビでありますが、
輸出国としてはマレーシアとタイが
中心でありますが、着実に
中国がその構成比を上げてきております。DVD、デジタルビデオディスク・プレーヤーでは断トツの生産占有率となっております。ポータブルCDプレーヤーも
中国が七割を占めております。一般電化
製品につきましても、恐らく二〇〇二年度は
中国が韓国を抜いて北米市場で
輸出第一位となっておるものと思われます。エアコンについても同様であり、総数が伸びていない中で
中国シフトが進んでおります。
一方、
日本市場に対してどうかという点でございますが、カラー
テレビの
日本国内におきます総販売台数が一千万台を割り込んで低迷しておる中で、台数では
中国産品比率が着実に増えており、今や三台に一台は
中国製であります。電子レンジの
グラフでございます。当然、これは当社を含む日系
企業の
中国からの持ち帰り
輸入が含まれておりますが、
中国シフトが進んでおることがお分かりいただけると思います。エアコンもここに来て一気に
中国からの
輸入比率が上がっております。洗濯機も同様であります。
中国シフトがデフレを加速させているという見方をされる方もおられますが、我々のメーカーの立場になってみますと、
中国シフトしなければ、シェアを落とし、
競争から脱落してしまう。
企業として成長するためにやむを得ないという面があります。
欧米や
日本市場に対する
中国産品の比率は着実に上がってきている一方、高関税に守られていた
アジア各国でも徐々に
中国製品の浸透が進んでいる様子がうかがえます。
日本メーカーが分業戦略に従って
中国拠点から
アジアへ
輸出するというのはまだまだ少ない段階でありますけれども、今後、増加傾向にあるということは否めません。
中国事業戦略の重要性は、
中国でいかに事業を拡大するかということもさることながら、
日本を含む
中国以外への
影響が深刻であり、
中国をいかにうまく活用した事業戦略を立て、推進するかということが
日本企業の成長戦略の生命線となってまいります。
消費地立脚型で展開した欧米での製造事業はもとより、欧米市場向けを
中心としていた
アジアでの製造事業も
中国との
競争が急速に激化する傾向にあり、海外事業全体の構造改革に迫られているところであります。
こういったグローバル供給基地化が進む
中国で
競争力を確保するためにも、既に欧米
企業や台湾・香港系
企業の大型・積極投資による
RアンドDを含む事業本体機能が集結してきており、今までの
中国展開の
考え方を根本的に考えていかなければならないと思います。つまり、拡大する市場としての
中国だけでなく、グローバル供給拠点としての
中国として今後の発展が更に加速化することを考えた場合、
中国を活用する事業選択がますます加速していくものと思われます。
このような
影響に立ちすくみ、政府に頼った保護政策を求めるのではなく、いかにグローバル化の中で勝ち抜く戦略を実践していくかということが
製造業の重要なミッションと考えております。
最近、
日本の
空洞化への懸念がしばしば指摘されます。
日本の
製造業の国際力が失われているのではないかとの指摘があります。今後、
日本が
競争力を維持発展させていくためには、外的要因として
中国の
影響を考えざるを得ませんが、別の見方をすれば、
中国とは関係なく、
日本自身の課題というものがより顕著になってきていることを痛切に感じております。
初めに、
製造業の雇用者数推移を見てまいりますと、九三年に一千五百万人であったものが二〇〇二年には約一千二百万人と、三百万近く減少しております。
製造業が
中国からの
輸入急増の打撃を受けて縮小しているのではないか、
製造業が縮小することにより雇用の受皿がなくなってしまうのではないか、今後の経済成長の基盤が失われてしまうのではないか等々、深刻な問題としてディスカッションがされております。
では、なぜこのような事態になったのでしょうか。
一つ考えられますのは、国際
競争が激化する中で、
日本が物づくりに適しにくい国になりつつあるということであります。
これは事業インフラコストの比較でありますが、電力・輸送・通信料金の社会インフラにおいても高コスト構造が顕著に見られます。通信料金はディレギュレーションの結果、大幅に下がっておりますけれども、このデータはジェトロからいただいたものでございまして、据付け、それから基本料金等々を加味いたしますと、まだ国際
競争力のレベルに達していないということでございます。電力料金は香港を除く
アジア諸国の二倍、運輸・通信は欧米の
先進国と比べても著しく高くなっております。空港・港湾
使用料は
アジア諸国の三倍以上であります。こうして高コスト体質を放置しては、よく言われる
日本で最先端のハイテク・高
付加価値商品を作り、
付加価値の低いローテク商品は
中国などへシフトするというすみ分け構造も難しくなってまいります。
日本の高コスト体質は
日本経済の二重構造の帰結と言っていいでしょう。
日本の
産業別
労働生産性を見ても、
輸出主導型
製造業、一般機械、電器機械、輸送機械、精密機械でありますけれども、米国全体の
生産性を一〇〇とした場合、
日本は一二〇と高い数値を示しておりますが、一方、サービス
産業においてはその
生産性は約六〇%と低いレベルにとどまっております。これは、やや乱暴に言えば、多くの
産業が国際
競争にさらされず、規制に守られてきた結果ではないでしょうか。
日本の
産業競争力強化、
空洞化阻止という観点から高コスト構造をとらえると、
輸出主導型
製造業が国際
競争で勝ち抜けるようにするためには、
生産性の低い
産業への
競争原理導入、すなわち規制改革が不可欠と考えます。また、縦割り行政もビジネスの効率化を阻害する要因となっておると言えます。
例えば
貿易手続でありますが、円滑化するための電子化が進められているのは大変いいことでありますが、経済
産業省、国土交通省、財務省の三つのEDIシステムには互換性がありません。荷主、船会社、運送会社などはそれぞれの立場では情報化に取り組んでおりますが、ネットワークという
意味ではつながっておりません。現金化されない、つながっておりません。これではタイムリーな
輸出入サービスや迅速な
輸出代金の現金化ができません。また、
先進国では当たり前の常時二十四時間オープンの税関及び船積みも是非早期に実現すべき課題と考えております。
続いて、法人税を見てみたいと思います。
実効税率という点では、
アジアはおろか欧米と比べても高くなっております。
企業が国を選ぶ
時代にふさわしい、国際的に通用する法人税制の再構築を望んでおります。多くの国が、自国
産業の
競争力を高め、あるいは海外からの直接投資を誘引するために、引き続き法人税負担の軽減を進めております。また、
中国の経済特区における二免三半、二年間は法人税ゼロ、三年間法人税二分の一と、二免三半制度を始め、多くの
国々から、外国からの
企業進出を促すために経済特区を設け、大幅な税制優遇措置を講じております。
日本でも、このような国際的な動きを考慮し、法人
所得の実効税率は少なくとも欧米主要国並みの水準まで引き下げていく必要があるのではないでしょうか。
改めて
先生方に御認識をいただきたいのは、経済のグローバル化において、
企業は簡単に国境を乗り越えていくということであります。事業
競争をしていく上で、経営資源の最も有利なところ、税制の最も有利なところに
企業活動の拠点を移していくのはむしろ当然であります。グローバル
企業にとっては、国籍がどこかというのはもはや
意味がないと言っても過言ではない
時代になってきておると思います。規制に守られている
産業を保護することは、国家として成長戦略が描けないと思います。
また、人材の質とコストのバランスということでいえば、表にありますように、エンジニアでは
アジア諸国の七倍から十六倍、
工場のワーカーになりますと十倍から三十倍という開きがあります。海外の多様なレベルでの豊富かつ良質な
労働力を活用するという視点がグローバル経営には欠かせません。また、
日本においても、少子高齢化による人材不足を補い、
世界じゅうから優秀な人材を集めるようにすべきであります。このためにも、
企業や学校において、外国人を受け入れる制度や環境の整備が必要となってまいります。
また、外国人労働者の問題は、これまで外国人にはできるだけ来てほしくないというスタンスを取ってきた結果、優秀な人は来なくて不法入国者だけが来るという非常に危機的な
状況にあるのではないでしょうか。
次に、FTA、自由
貿易協定実現の重要性についてでございます。
締結国間の関税や非関税障壁を撤廃して
貿易を拡大しようとするFTAは、九〇年代以降、
世界じゅうに急速に拡大しております。EUは自ら中東欧へ拡大し、来年には現在の十五か国が二十五か国になる予定でありますし、一方、中近東やアフリカほか、メキシコともEUはFTAを締結しております。さらに、南米と
アジアともFTA締結を目指しております。米国も、これまでカナダ、メキシコとのNAFTAが
中心でありましたが、北米、中南米全域を含むFTAA、米州自由
貿易圏の形成に向けて活発に動いております。また、シンガポールなど、
ASEANともFTAを検討中であります。
御高承のごとく、
日本はシンガポールとFTAを締結いたしました。しかし、メキシコとのFTAは、
産業界からの強い要望にもかかわらずまだ締結されておりません。このために、関税ハンディのためにメキシコでの販売の機会が
日本のメーカーから北米や欧州へシフトすることで、メキシコの
輸入に占める
日本のシェアが、九四年の六・一から二〇〇〇年には三・七と大きく減らしております。経済
産業省の研究報告書によれば、九九年の販売逸失は約四千億円、九四年からの累計では一・六兆円になるということでございます。
アジアはどうでしょうか。
日本は対
ASEANにおいて過去四十年にわたる日系
企業のオペレーション経験による人材の厚みや
産業集積があり、
輸出拠点として基盤も確立されていることから、
ASEANを重要戦略地域として
ASEANとの包括的経済連携構想の具体化に向けて動いております。また韓国とも検討中であります。
しかし、
中国の動きは素早く、
ASEANとの自由
貿易協定に合意し、二〇〇四年度から二〇一〇年までに両者間に具体的に自由化を実施いたします。
日本・
ASEANのFTAより一歩早く、二〇一〇年には巨大な自由
貿易圏が実現する方向であります。
中国・
ASEANのFTAが実現した場合、
日本企業は両国の拠点間で
製品やサービスの調達を増やすことで、これでは
日本の
空洞化回避策にはならず、完全に蚊帳の外に置かれた結果となります。
ジェトロの報告によりますと、
日本を除く形で
中国と
ASEAN諸国に自由
貿易圏が誕生すると
日本の
GDPはマイナス
影響が生じると予測されております。FTAには域内の
競争を推進し、
日本国内の経済構造改革を促す効果があります。FTAによって、
貿易、投資、サービス、人の移動の自由化や相手国との規制、制度の調和が進めば、
日本国内における諸規制の撤廃、緩和、高コスト要因が是正され、国内
産業の活性化、効率化、
競争力強化につながるに違いありません。東
アジアに自由
貿易圏が誕生すると、人口二十億人、
GDP六兆ドルという巨大な成長が期待できる単一
マーケットが実現いたします。供給、需要両面におけるダイナミズムを今後の成長の源泉として活用していく以外に
日本の再生はあり得ないのではないでしょうか。
しかし、これらFTAの取組を妨げているのは規制による保護政策であります。特に農業に対する政治決断が重要であります。私どもは
中国から学ばなければならないことがあります。むしろ
中国の方が農業に対して深刻な問題を抱えております。にもかかわらず、政治の指導力により、国として発展すべく、WTOの加盟と先端
技術の導入のための外資誘致を積極果敢にする一方、国家戦略として東
アジア自由
貿易体制を確立するリーダーを目指し、
日本を取り残してFTAの取組を進めております。農業や既成
産業を守ることに主眼を置いた政治を続ける限り、国家として成長戦略は望めない、グローバル
企業はことごとく
日本を逃れ、景気回復はほど遠くなるのではないかと心配をいたしております。
確かに農業問題は食糧安保や環境保全という面で重要な点はありますけれども、農林水
産業の
GDPに占める割合は一・六でありますし、就業者も全体で約五%であります。推計しますと約三百万人以上になり、先ほど説明いたしました全
製造業の就業人口が千二百万人まで減少したことを考えますと、国として
競争していくために何を決断すべきかは明らかだと思います。
最後に、
中国を
中心に変貌する当社のグローバル戦略の
考え方について簡単に御報告を申し上げます。
既にマスコミを通じて御高承のとおりでございますが、当社はグループの五社の子会社を完全子会社化いたしまして、事業ドメインを再編成をいたしまして、それぞれの新しい十四の事業ドメイン会社がグローバルに連結して経営する体制を取りつつあります。社内的には、ダブりをなくし、経営資源の効率化、集中化を図ることに主眼を置いていますが、今までは
日本に利益をいかに還元させるかという単独決算
中心の経営体制から、グローバルに最適の経営、連結経営に構造を変えていくことに大きな
意味があります。
別の言い方をすれば、どこで売上げを上げ、どこで収益を出しても構わない。連結でどれだけ経営成果を出すか、キャッシュフローを生み出すかということに価値があります。つまり、キャッシュフローを生み出す上でベストな経営環境での事業経営に主体を移していくことにこれから注力をしてまいります。
新しい事業ドメインによる事業再編の体制で、
中国事業はその根幹を成しております。私ども松下電器では、
中国事業戦略がグローバル事業の勝敗を決める、
中国市場で勝つことが
世界で勝つための必要
条件という認識を持っており、先ほど申し上げましたように、
中国での事業を現地化、集約化、協業化という三点でもって進めております。
WTO加盟後、大きく変化をし、ますます
競争力を強化される
中国とどう対峙し、それを活用していくかが今後の
企業の重要な課題であると同時に、国家としても同じく重要な課題であろうかと思っております。
以上をもちまして御説明を終わらせていただきます。
御清聴ありがとうございました。