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参考人(
小島喜與徳君) 私の方からは、新規高卒者の
就職状況の厳しさを職場代表ということで話させていただきます。
資料の方は用意できませんで、申し訳ございませんでした。
まず、高校現場の方で最も深刻な
状況だというのはやはり求人数の激減です。
全国で一〇・一%減少、また神奈川では一七・七%減少なんていう話があります。求人数が減ったと、そのときによく求人倍率という話が出ますけれ
ども、全国で一・二一倍、神奈川で一・六二倍、これは前年度より〇・〇五から〇・一七ポイント下回っているという
状況です。求人倍率ですから一倍あれば一人一社あるというふうに普通には考えられるわけですけれ
ども、実際のところ、例えば私の勤務する学校、求人票の件数でいきますと三百九十件ございます。
就職決定者三十五名です。そうしますと、
就職決定者の十倍はあるという
現状にはあります。
ただ、元々私の勤務する学校は全日制普通科の進路先多様校です。そのような
状況で、当初百名ぐらい希望者がいるところを、どんどん絞り込まれていって、最終的に決定したのが三十五名と。途中で脱落していく者が
かなりの人数出ているわけです。
その中身としまして、求人票が例えば三百九十件あったとしましても、実感として一倍ないというのが
現状の認識です。それは職種ですとか業種の偏りが出てきている。サービスと技能工が主体で、生徒が一番希望するような、生徒に合った販売、それから事務職が非常に減っている。それから、生徒が魅力を感じるような
企業がほとんどないんですね。本校ではアルバイトをしている子が非常に多いんですが、アルバイト先と同様の勤務先というんでしょうかね、そういったものが非常に多い
関係で、生徒の方が求人票を見て引いていってしまう、そういう
現状があります。ですから、単純に数ではどうもうまくいかない。実際には求人票の内容と質というんでしょうかね、生徒の
ニーズに合っているかどうか、その部分で今非常にうまく合っていない。
特に、高校生のフリーター化の問題なんかのときに、高校生はわがままで自発的にそうなっているなんというお話がありますけれ
ども、大人が仕事を選ぶ際にもやはり自分に合ったものを探しているわけです。高校生も自分なりに考えている
状況があります。ですから、自発的にしているというのも言い過ぎではないかと。むしろ非自発的にそうならざるを得ない
状況もあるのではないかと。まず、その点で求人数の内容的なものの言わば生徒との
ミスマッチというんでしょうか、それが非常に大きく感じられます。
それから、内定率の件なんですけれ
ども、内定率、全国で九〇・〇%、これ〇・三%上昇と言っています。神奈川九五・〇%、これは〇・三%下降です、前年度比ですけれ
ども。ただ、これも数値的なトリックがいつもあるといつも私は思っているんですけれ
ども、
就職希望生徒に対する
就職決定者の割合です。ですから、
就職希望生徒が
就職希望を下ろしてしまえば内定率は上昇するわけです。ですから、途中でリタイアする子たちの数というのが正直言って表面には表れてこない。
就職内定が九〇あるというと非常にいいような数字に見えますが、途中で下りている子たちが非常にたくさんいる。
私の所属しています進路指導協議会の方でちょっとデータを取ったことがあるんですが、昨年十月末現在百八十四校あるうち百七十九校から回答をいただきまして、十月末の状態で、
就職希望だったけれ
どもフリーターへ切り替えた子、男女合わせて二百人、
就職から進学へ切り替えた子、二百六十四人、これ十月の末現在ですからそれ以降どんどん増えていきます。この四百六十四人という数字は、簡単に言いますと二校分ですか。それから、元々フリーター希望、最初から求人票を見てあきらめちゃうですとか、
かなり早い段階からあきらめている子、九百四十名います。ですから、十月末現在で
かなりの数がもうフリーター若しくは進学へ切り替えていくという
状況があります。
もっと具体的な数字で申しますと、私の勤務校では、実績で申しますと、大学、短大に行くのが三十名強、専門学校等が六十名、
就職三十五名、その他と、これがほぼフリーターなんですけれ
ども五十七名程度です。この子たちの
動きなんですが、春の
就職説明会のときには大体百名程度
就職説明会に参加してきます。夏前になって約六十名程度。実際に夏休みに入って
企業見学に入るのが五十五名でした。最終的に三十五名。途中でどんどん減っていってしまうという
状況があるんですね。
どうも、
経済的にゆとりのある家庭の生徒は進学へ変更ができます。ただ、一番の問題は
経済的にゆとりのない生徒で、そのゆとりのない生徒は高校
時代にほとんどがアルバイトをしています。本校の生徒はほとんどアルバイトしています。十時以降やっている子も
かなりいます。問題はあるんですが、そうせざるを得ない
状況があるようです。そういった子たちは、やはりアルバイトに専念していますから学校の方では成績が良くない、欠席が多くなる、そういった
状況があります。
企業に学校が推薦する際、やはりどうしても成績が良い子、欠席が少ない子というふうになります。そういう
現状がありますから、そういった
経済的にゆとりがなくてアルバイト経験のある子たちはどうしてもそこからふるい落とされていく。
さらに、そのアルバイト経験が、アルバイト先の正社員を見て非常に同じ仕事をしていて余り楽しそうではないな、そんなところを見ている
関係で、そのアルバイト経験が逆に正社員離れを起こしているのではないかと、そんなふうにも感じます。
今どきの子ですけれ
ども、よく
企業の方からは、高校生の資質の問題、礼儀を知らない、基礎学力が不足している。ただ、はっきり申しますが、全日制普通科で
就職者のいる学校というのは基礎学力を徹底的に学ばせようとしているんですが、それができない
状況にあるんですね。その子たちが
就職を希望していくわけです。ですから、最初から即
戦力というふうに言われましても、全日制普通科でそこを卒業した子が即
戦力になるかというと、これは正直言って困難な話です。ですから、それに
対応する形で、最近ではインターンシップですとか進路学習なんというような、出口指導ではない、
キャリア形成の
支援ということで、そういった教育がどんどん入ってきています。これはある
意味非常に効果的だと思います。一年生、二年生のときからやっていけば効果が出るだろうと。
ただ、一年次でやったところで、三年で即効性で効果が出るかというと、この
キャリア形成支援というのは時間が掛かるものだと思いますので、二年やれば三年のところですっきりいくかと、これはまず難しいんじゃないかと思うんですね。将来を見通した上では非常に重要なことだと思います。ただ、三年で卒業させる段階では非常に難しい。
さらに、今、
就職慣行の
見直しということが進んでいます。高校の一番の問題だということで一人一社制というのがよく言われます。一人の生徒が一社を受ける。それは、校内選考で成績のいい子、欠席の少ない子を選んで、その子の希望する
企業をあてがうような形のシステムです。これがあるから成績の悪い子たちはふるい落とされて未内定になる、フリーターになるというところがよく強調されているわけですが、ここのところで慣行の
見直し、関東でも
かなり入りました。複数応募というようなことで、一人一社ではなくて一人二社というような形の話が
かなり入ってきています。
ただ、これは正直申しまして、従来の進路指導で、例えば本校ですと金髪、茶髪の指導、それから生徒全員の個人写真を撮らせる、マナービデオを見させる、模擬面接をやる、履歴書を書かせる練習をする、作文指導をする、それから適性検査の練習をする、そういったことを頻繁にやりながら、複数応募ということになりますと複数見学、これは去年辺りから行われていることですが、そういったものと絡めて事務量が非常に多くなる。結局のところは個々人の生徒との進路相談の時間が失われているという
現状が実はあります。
生徒にどういうふうにして
対応していくかということなんですが、
就職支援員等の配置はできていますが、そういった下の方の学校で
就職を希望する子たちというのは、信頼
関係のある人でないとなかなか相談しに来ないという
現状があります。ですから、制度的によそから持ってこられた人に相談ができるかというと、それはなかなかうまくいかない。
それから、生徒の個人情報を分かった上で話ができなければいけません。そうすると、どうしても教員じゃなきゃまずいんですね。そうすると、
就職支援員という外の人を連れてくるのではなくて、むしろ教員の時間的措置みたいなものを取っていただいた方が、生徒の進路相談等には非常に時間が割けるのではないかと。
学校現場は往々にして教務部と
生活指導部重視で大体動いています。進路指導部は予算措置も割かし低くて
意見の力も少ないというのが実は実情でして、その辺りの県への指導ですとか、そんなところもある程度、進路指導が非常に重要なんだというところを実はいろんなところで言っていっていただけたらと。
私としましては、まず生徒に有効な求人数をいかに
確保できるか、それから進路相談のできる教員への時間的な措置、それから、先ほどお話が出ましたけれ
ども、即
戦力だけを言うんではなくて、
企業も社内で
人材を育てるということを積極的にしていただきたい。それからあともう
一つなんですが、
経済的に苦しい家庭の子が、例えば専門学校に行って
就職できるような奨学金のシステムというのがどうしても今必要かと思います。高卒でどうしても働かなきゃいけないというと、もう仕事が限定されてしまうんです。生徒に夢がないのが
現状です。ですので、そこのところを考えていただけたらと思います。
以上です。