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参考人(
佐藤陵一君) どうも
皆さん、御苦労さまです。
建交労北海道本部で
委員長を務めています
佐藤です。
建交労という
労働組合は、
建設とそれから
交通運輸関係の
労働者、
地域では
中小企業と
失業者を
労働組合に結集をしている
日本の
労働組合運動の中ではまれな
組合でございます。
私は、一九七〇年に当時
失業対策事業で働いていた
労働者を
中心に組織されていた全日自労に加入をしまして、以来三十年間、
北海道の中で
建設現場労働者の
冬期間の
失業問題、最近では
ハローワークの
求職者の
調査とそれから
失業者の
皆さん方の
ネットワーク作り、それから今
政府が進めている
緊急地域雇用、こういう
仕事作りの問題について携わってまいりました。私の所属する
労働組合は、
失業と貧乏と戦争に
反対をするということを伝統としてきているわけですけれ
ども、そのことを自負をしているわけです。
今回の
雇用保険法改定に対する評価なわけですけれ
ども、
政府資料にいろいろ論点が整理をされています。
雇用保険は
社会保険の性格と
雇用政策の重要な手段だという二つの側面がある、この二つの
政策目標を実現する
中心が
求職者給付である、この
求職者給付によって
失業者の
求職活動中の
生活の安定を確保する、それからこの
求職者給付を通じて
求職活動を奨励すると、こういうふうに説明されているわけです。
今回、もらうお金が高いので積極的に再
就職しないと、いわゆる逆現象の問題も
指摘されています。
政策判断の根底に積極的労働市場
政策というものが意識されているわけですけれ
ども、これはEUやOECDでもいろいろ
議論されていまして、その中では
失業の
社会的コストの問題、あるいは公的
雇用創出の積極性、こういうものが
議論されているわけですけれ
ども、私、議事録ずっと見まして、この
議論が避けられているのか、あるいは深まりがないというふうに実は見ているわけです。
今回の法改定で、
雇用保険の
政策目標である
失業者の
生活の安定が確保されるのかどうか、このことが鋭く問われるわけですね。それから、
求職活動を奨励するというわけですけれ
ども、これが実際の
ハローワークを
中心として現場でどう変化するのか、そのことによって結果として
失業者とその家族の苦難、これが軽減されるのかどうかということが私は
中心問題だと思うんです。
結論的に言いますと、
給付削減、日数の
削減、これはもうほとんどそうなるわけですけれ
ども、
失業者の
生活の安定は確保されない、逆に
悪化するというふうに私は見ています。それから、一連の再
就職促進の奨励策、
失業者は劣悪で不安定な就業、これを強いられると。現在の
失業というのは、その規模、それから長期化する期間、それからその
失業の中身ですね、もうかつてない深刻さが
指摘されて久しいわけですけれ
ども、いずれも
事態を改善することにはならないと、こういうふうに危惧しているわけです。
それで、私は少し
北海道の
失業者の実態に即しながら、これは全国共通すると思いますけれ
ども、今回の
雇用保険の改定の
中心部分、これはやっぱり容認されないということを少し申し上げたいと思うんです。
第一は、基本手当の
削減の問題なんです。札幌の職安
求職者の聞き取り
調査をしますと、
失業中の主な収入、これは
失業給付だという人が三二%、あとどうやっていますかと聞きますと、定期預金を解約している、退職金を取り崩していると。退職金はどのくらいもらいましたかということを聞きましたら、これは私
どもの
調査の平均では四百三十六万円です。退職金もらっていないという人が四一%にも及んでいるんですね。そして、アルバイトや借金で生きている。
世帯の収入は、四三%が
失業前の半分になった、六割から九割減ったという人も相当いるわけです。そして、家計が五五%が赤字、赤字になっていないというのは二八%です。六%の人がもう生きていけないというところまで答えるわけですね。そして、このまま
失業が続いたらどうなるかという問いに対して、四九%、約半数の人がもう
仕事を選ぶことはできないと。そして、資産の売却とか
生活保護とか借金と続いて、中には夜逃げだとか蒸発とか子供の退学というところまで追い込まれると。今、厳寒の
北海道には百人を超えるいわゆるホームレスと言われている人が視認されるわけです。
今回、半世紀続いてきた六割の
失業給付、これが時の
財政状況で切り下げられることになると。六割でも厳しいわけですよね。ですから、最初に申し上げた
失業者の
生活の安定、もうこの言葉は、言葉としてはありますけれ
ども、もう一層空虚になると、そしてその
制度の信頼も根底から崩れてくるんじゃないかということを私は危惧するわけです。
それから第二は、
給付日数の問題です。
日本にはいわゆる無
拠出の
失業手当というのはないわけですね。そういう中で何をする必要があるのかということなんですけれ
ども、長期
失業の指標、これを一年と定めて一年以内は
雇用保険、長期の
失業に対しては
失業手当、これは無
拠出ですけれ
ども、この
セーフティーネットを抜本的に
拡充することが必要でないかと。
失業者の実態というのは、
政府資料によっても一年以上はもう三〇%に及んでいるわけです。私
どもの
調査では、自己都合退職、自己都合の
離職ということなんですけれ
ども、その中身を聞けば聞くほど非自発的なやっぱり
離職なんですね。会社がリストラ計画を作り始めた、一方で嫌がらせが始まる、結果として自分で辞めるという選択を取らざるを得ないと。ですから、自発的
失業といっても、いろんな複雑な
要因が重なっているということを示していると思うんです。
今回、常用
労働者とパート
労働者を区分しないというふうに言っているわけですけれ
ども、これは当然です。しかし、常用
労働者の
給付日数を減らすというわけですから、これは
労働者の少しきつい言葉で言えばマジかと、少しエゴいんでないかと、こういう話だと思うんです。
それから第三の、いわゆる逆転現象の問題です。
再
就職の意欲を喚起するというふうに言われているわけですけれ
ども、この
理由は私は不条理だと思うんです。
失業は長期化していると。今、
政府のやっている緊急
雇用の
仕事ですね、これは六か月なんです。極めて限られているんですけれ
ども、この
仕事であっても働きたいという人が二六・四、条件が合えば働きたいという人が六〇・三%、職安に来ている人の中でそういう
仕事には関心はないというふうに答えた人は一三%なんですね。結局、働きたいのに
仕事がないと。そして、六〇%の人が、再
就職の見通しはないけれ
ども、もう応募し続けるしかないと。極めてやっぱり悲壮なわけです。そして
最後は、もう
仕事を選ばなくなると、選べないという方が今四九%になっているわけです。
現地の職安所長の
皆さんとお話をしますと、職員の
皆さんは靴の底を減らして、そして足を棒にして求人を開拓している、しかし求人
そのものがないと、こう心を痛めているんですね。
ですから、
失業者だけの意欲ではもう決して解決しないわけです。
事態は国家として
雇用の絶対量を増やすことなしに打開できないところまで来ているんだということを私は強調したいわけです。
第四は、
早期再
就職の
促進なんですけれ
ども、これはもう当たり前の話なんですね、ある意味では。
政府は
完全雇用を掲げて
政策展開を図っているわけです。ですから、当面して三%程度ですか、
失業率を下げると、こういう数値目標を持って実効的な
政策を打ち出すべきなわけです。
今、
失業者はどういう状態にあるかというと、もうこれから高成長でどんどんどんどん
仕事が出てくるということは望めないわけですね。加えて、
雇用構造の変化、これが規制緩和をてこにパートとか派遣とかフリーター、もう規制緩和をてこにドラスチックに強行されていると。
日本の働く
労働者の二七・七、こういう三分の一がもう非正規の
雇用と言われる状態にあるわけです。ですから、こういう中で不安定就業にも
就業促進手当を支給するという発想は、これは金を出せばいいというものではないんですね。
早期退職のために一時金、退職金を割増しするともう同じ発想です。安定した職業への再
就職というこれまでの
政策を転換するものだと私は思うんです。
結局、どういうことかというと、
雇用保険財政に依存する
求職者に割増金を付けて、そして
保険から排除をすると
日本の労働市場が低
賃金で極めて大変な状態に追い込まれていくと。多様な働き方といいますけれ
ども、不安定な条件で働かざるを得ないという中で、多様な働き方ではなくて、この不安定な劣悪な
労働条件を強制することになるというふうに言わなければならないと思います。
最後に、ある
失業者の人は私にこう言いました。
失業して初めて
日本は冷たい社会だと感ずる、二十回も断られたと、そうすると自分はこの世の中に必要ない人間なのかと思うと、こういうふうに
失業者ネットワークの集まりで語っているんですね。
それから、今、高校生が卒業しましたけれ
ども、本来なら夢と希望にあふれるはずの人生の第一歩ですね。これを
失業者として迎えるわけです。私は、ある意味では、青年に
雇用を保障できない社会というのは、驚くほど早くその基盤が崩壊しているというふうに言わざるを得ないと思うんです。
そういう点で、
失業者の労働力の保全はもとより、その自尊心や自負心、これを破壊から守ると。そのためには、今言われましたけれ
ども、
国庫負担を拡大をすると、そして
雇用保険制度そのものの
拡充を図ること。同時に、
失業の
社会的コストの軽減を図る立場から、公的な
雇用創出に本格的に取り組む、これが求められているし、求めたいというふうに思うわけです。
以上でございます。ありがとうございました。