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国務大臣(細田博之君) 実は、この
個人情報保護法は日本の法制度の歴史からいうと極めて特異な
内容になっております。今までの
法律はえてして、電波の監理が必要だからこういう許認可にしようとか、こういう事業、環境についてはこういう規制を、基準を設けて、これ以下のものは絶対駄目ですよという規制をしようとか、そういうことで、それぞれの主務
大臣が、決まってもう直接的に、官公庁が公の立場から、それが環境であったり、あるいは公の電波とか土地だとか、そういうものの使用の制限であったり
権利の制限であったりして、直接の規制がかぶるような
法律はこれまで戦前戦後を通じて極めてたくさんあって、そういうものがないと
法律にならないというぐらいたくさんの
法律も存在するわけでございます。そして、その中で規制緩和等が行われているわけですが、なぜこの
法律が非常に特異かというと、正に森議員がおっしゃいますように、この
法律は、少なくとも本人が
自分の
情報、
個人情報に関連して、
個人情報取扱事業者の様々な扱いがおかしいぞと感じたときに、自ら求めてそこへ問い合わせると。そして、利用目的を通知せよ、あるいは
開示せよ、訂正せよ、利用停止をせよと、そこでこの第一弾、三階建ての一階建てというのが極めて広範に行われておるわけですね。
これは正に民間レベルの自主的なやり取りによって実現すべきものであって、これがベースである。かつ、様々な請求がある場合には当然ながら
開示義務等が掛かって、その本人との間で、ではこういうふうに
開示いたしましょうとか、このように訂正いたしましょうということで応対するような仕組みになっているわけですね。
それを前提といたしまして、さらに、そこでらちが明かないと、あるいはどこかに、政府のどこかに苦情を申し込みたいという場合には、窓口を設定をいたしましてそこに苦情を持ち込むと。これもまずは、こういう業界団体もございます、あるいは直接のそういう企業が問題になっているのなら企業に御照会いたしましょうというような、これまでも消費者行政等でもう多岐にわたる問題で行政庁が行ってきておりますような個別の照会、苦情処理、これも行政権限があるわけではなくて、あくまでも、この人が
個人的に非常に困っているようですから聞いてあげてくださいという非常にソフトな形のものを
法律上位置付けているわけですね。
そこで、その次でございますが、それじゃそれだけで用が足りるのかというと、この八年半に起こった六十六件ほどの大きな案件でそれで足りそうなものは大体八割でございます。だから、大体足りるんですね。それはどういう
ケースかというと、苦情を申し立てると、いや、これは申し訳ない、こういう過失がありましたと、例えばホームページに懸賞で応募したらその
情報が漏れて人に分かるようになっておる、これはおかしいんじゃないかと言えばもうこれは企業側は申し訳ないと謝るしかないような事態、これが八割ぐらい実はあるわけでございますので、これはほとんど全部是正されるであろうというふうに私は現状では考えております。
しかし、どうもそのうち、この八年半で起こった事柄のうち、どうも故意があるようなもの、つまり何か意図的にわざと
情報を流して金を稼いだとか、会社内で違法に
データを取得した、これは十五件ほどあるわけです。したがって、二割強ですね。
しかし、この二割強においても、何ゆえにそのような故意の、悪意の
データの移転が行われたかということを考えますと、その企業の管理が悪いわけです。つまり、企業は社会的存在でありますから、
データを集めた場合に、それが安易に人に漏れておる、その元が○○銀行であるとか○○デパートであるということが分かれば大変な信用失墜になりますから、それは申し訳ないと、ここは、あなたのところから悪いやつが出てこういうものが漏れましたよと言えば当然その人を解雇するでありましょうし、今後の問題としては、ソフトウエアをちゃんと変えて、そして特定の社員がその中から引っ張り出せばその証拠が残る、残ればそこまで犯人として分かってしまいますからそれをやらなくなるというような自己責任による改善が非常に可能なわけでございます。そういうものはまた、この十五件のうち私の見るところでは七、八割です。つまり、悪意、故意、社内の管理が悪いために起こった事件ですね。
一番悪質なのは、もう会社ぐるみが悪いことをしている、あるいは
データを扱う、名簿業などを扱う者が、金になりそうな
情報を集めて会社ぐるみで、多重債務のこういう
情報がございますよ、一件三十万円で買いませんかというのは、もうこれは企業ぐるみの悪意、それからそれで金をもうけようという言わば違法行為に近いもので飯を食おうという企業でございますから、これは断固取り締まらなきゃいけないんです。しかし、今の
法律上は、社内で取ったものでも、本当は刑法上窃盗だとか横領だとか背任だとかいって捕らえたいんだけれ
ども、
法律がない。そして、せいぜい会社は首だというぐらいですが、会社の信用は失墜する。そして、ソフトウエアか何かを変えるか、セーフティーネットをきちっと張らなきゃならないということで対応するわけですね。
したがいまして、最後の悪いところは主
務官庁が出ていって、あなたのところはこれはひどいことをしていますねと。そして手続としては、ちゃんと
報告しなさいというところまで来る。そして、どうしても直さない、これはけしからぬと勧告をする。そして、こういうことを是正しなさいという命令をする。それでも聞かないで同じことを繰り返す場合には懲役、罰金もありますよと。
したがいまして、もう今まで八年半に起こった中で、本当に主
務官庁なるものが出てきて、悪質なものに対して懲役、罰金まで取れるようなものが幾つあるかというと、実はほとんどないのであります。ないのでありますが、そういう担保もないと、これはやはり法治国家の中で、それは構わないじゃないか、やっても別に刑罰もないし何もないよということでも、今の時代にこれはきちっとした対応が取れないじゃないか。だから、最終の、もう何%か分かりませんが、極めて小さい確率ではあるけれ
ども、そこはきちっと押さえて、処罰までできる規定があることが
個人情報の
保護に関して最終的な担保となると。あらゆる罰則についてはそういう性格があると思うんです。
何でも罰則があるからというのは、昨日もちょっと申しましたけれ
ども、こんな軽微なものを取ったから、刑法で窃盗罪は十年以下の懲役としか書いていないんだけれ
ども、十年以下の懲役とは重過ぎるから、罰金の
ケースと何か禁錮の
ケースと懲役の
ケースと決めるべきだとかなんとかというんじゃなくて、これは最悪の
ケースについて書いてあるけれ
ども、それまではいろいろ指導をしたり、可罰的違法性がないから無罪ということもあるでしょうし、起訴猶予もありましょうし、説諭で済む場合もあるし、中で、企業内で処分する場合もある。
いろんなことでこの対応ができるわけですから、この
法律を、主務
大臣というのがあるということと処罰規定があるということをもってこれが物すごい規制であるということを感じられる議論が今まで多かったんですが、決してそうではない。むしろ、今までの許認可問題の法制というのは、その許可を得ずして何かをやったらもう必ず罰則が付くようなそういう法規制形態になっておったのに対して、これはまず本人の対応前置主義であって、かつその団体等による処理もし、直接の指導も行い、かつそれでどうしようもない部分について一応処罰の担保があるという法体系は、極めて我が国法制度においては珍しい提案をしているわけでございますので、やや長くなりましたが、誤解のなきようお願い申し上げます。