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参考人(
植草益君)
東洋大学の
植草でございます。
事務局から連絡がございまして、今回の
電気事業法及び
ガス事業法の
改正について、私の
専門の
立場から
所見を述べるように、私の
専門は
産業組織論と
公的規制論でございますが、その
観点から
所見を述べるようにということと同時に、
電気事業につきましては、
電気事業分科会の
委員であり、かつ、その下にあります基本問題小
委員会の
委員長を務めてまいりました。それから、
ガスにつきましては、
都市熱エネルギー部会の
部会長を務めてまいりましたので、今回の案をまとめるに当たっての経緯と今後の残された
課題について
お話しするようにということでございまして、
お話ししたいことはたくさんあるんですけれども、まず最初に今回の
改正について、既に
十分御存じのところでございますけれども、簡単にまとめてみたいと思います。
今回の
電気、
ガスの
事業法改正は、御
承知のとおり、第三
段階目に当たります。
電気につきましては、
平成七年にIPPという
独立発電事業者を
導入いたしまして、
卸売市場における
競争を
導入することをいたしました。同時に、このときに各
電力会社に対して、毎年
経営効率化目標を発表していただきまして、その発表に基づいて期末にその
成果を公表するということを
お願いいたしました。これが大きな
改革でございました。
平成十一年に次の
改革で、御
承知のとおり、
大口需要の
自由化というのと
特定規模電気事業者という、
通称PPSという新しい
新規参入企業、
発電をし、かつ
小売も実施できる
企業形態の
導入をいたしました。
今回は
小売の問題に取り組みましたが、御
承知のとおり、
発送電一貫体制の維持と
ネットワーク部門の
公平性、
透明性確保というのが
一つの大きな
政策でありました。そのほかに、
電力取引所の創設、
全国市場の形成、
電力について全国的に売買ができる
体制を強化するということでありまして、このための
地域課金制度、いわゆるパンケーキの解消というのを打ち出しました。さらに、
分散型電源の促進、
自営線敷設の容認ということもいたしまして、そして
最後に
自由化範囲の
拡大ということに踏み切ったわけでございます。
ガスも同じように第三
段階目の
改革でありまして、
平成六年の
大口需要部門
自由化から、
平成十一年の
大口需要部門の
自由化範囲を
拡大するという
政策を取ってまいりましたが、今回は、まず何よりも
ガス導管事業というのを創設いたしました。それから、託送
制度の拡充強化をいたしまして、さらに、新たな企業が
ガス事業に参入できる参入規制の見直しも行いまして、そして
自由化範囲の
拡大ということをいたしたわけでございます。
部会長及び分科会における
委員といたしまして、これまでについて私から申し上げるといたしますと、
電気事業につきましては、最終的に基本問題小
委員会におきまして、アンバンドル問題をどうするか、アンバンドルをしない場合の行為規制の内容をどうするか、中立機関の組織をどのような形にするか、託送料金の届出問題についてどう考えるか、そして
自由化範囲をどこまでするかということが最終
課題になりまして、この
委員会は中立
委員だけから成る
専門家の
委員会でございましたが、大変難しい問題をどういうふうに最終的にまとめるかということについては、二つのワーキンググ
ループがございまして、それぞれ座長に
東京大学の教授の方になっていただきまして、大変うまく、
産業界のことも、官庁が施行しようとする
政策も考慮いたしましてまとめていただきましたので、小
委員会長としては、余り私の
意見を言うことなく、うまくまとめられたというふうに思っておりまして、その案を分科会に出しまして、御承認いただく、御賛同いただけるということになりました。
ガスにつきましては、御
承知のとおり、都市
ガス事業者、企業数も多く、企業
規模も多様でございますし、簡易
ガスも約三千という企業数がありまして、利害の調整に手間を取るのではないかというふうに私は思っておりましたけれども、審議会が開かれます前に
ガス市場整備基本問題研究会というのが開かれておりまして、一年強掛かった研究会でありますが、ここで大変よく
議論をしておいていただきましたので、審議会ではそれほど利害の対立なく案がまとまった次第でございます。そういう意味で、今回は各々、各々といいますのは、経済
産業省も、また
産業界も、
需要家も
消費者も、全体が納得できる案としてまとまったものでございまして、これを是非法案として御通過いただくよう、私からも是非
お願いしたい次第でございます。
専門家の
意見として幾つか述べるようにということでございますが、今回の
一つの大きな
改革のものは、いわゆる
発送電一貫体制を維持するか否かということでございました。審議会の中では、一部アンバンドルを実施すべきだという声もないではなかったですが、大宗ではありませんでした。もし発送電を垂直分割するということになりますと、意思決定が
分散することになりまして、そのことは同時にリスクの
拡大につながると。リスク
拡大は供給の安定性
確保ということを困難にする
可能性を増大させます。そういう意味からも、これについては慎重になるべきだという考え方がやはり重要だろうというふうに思うんですが、そういう
意見がやはり多かったわけです。
それから、
我が国の
発電事業者は、一般
電気事業者でありますが、
原子力発電というものの比率が非常に高く、この維持及び今後の発展ということのためにも、アンバンドルというのは実施すべきでないというふうに言われる
意見が多かったわけであります。
さらに、私は、
海外の原料を購入するに当たっても交渉力を維持しておくということが非常に大事なことだということを申し上げておりました。
そして、発送電一貫というものの統合の
経済性と、先ほどここで出ましたけれども、
発電所から送電、配電全体を同時同量で運営するということの難しさというのは、確かにあそこへ行って、見て、
一つの
発電所に事故が起こったということを想定しながらあれを運営しているあの姿の中にすべては現れるのでありますけれども、
技術的な面でもこの統合の
経済性というのは大事でありますが、
経済性でも多様な利益がございます。それらを踏まえまして、今回は
発送電一貫体制を維持したままでいくということを考えた次第であります。この点は、私は
専門家の
立場として評価しております。
もう
一つ、
専門的な
立場から申し上げますと、これまで幾つかの
改革を行ってまいりました。第一の
改革では、各
電気事業者、
ガス事業者もそうでありますが、
経営効率化目標の設定と
成果公表、これは余り評価されておりませんけれども、
電力会社の経営
効率化に大きな役割を果たしているということに注目する必要があると思います。
IPPの
導入も、
発電分野におきまして、特に一般
電気事業者が
発電機器の投資コストというものについてはIPPの
導入を通じて非常にコストが下がったという事実がございます。当時、有名な
言葉といたしまして、
電力会社に衝撃が走ったという有名な
言葉がありますが、これを通じて
発電コストが、特に火力
発電コストが大きく下がるということになりました。
さらに、新たにPPSというものの
導入を通じて正に
競争が起こったわけでございます、特に小口
分野の
競争と。
新規参入というものの
経済効果といいますのは、
産業組織論の
立場からいいますと、ほんの少数でも
新規参入があるということは既存企業に大きな
競争圧力を与えるものでございまして、今後更にPPSが増えていけば、更なる
競争圧力として一般
電気事業者への
効率化
効果は大きくなっていくというふうに考えております。
さらに、今回、
分散型電源の促進というものをうたっておりますが、その中で自営線というものの敷設を容認するということもやっておりますが、送電についても新たな企業がより
効率的なものを作るということができるようになれば、これも
一つの大きな刺激になるのではないかと思っております。全体といたしまして価格が下がってまいりましたし、さらに今後、こういう
競争がより良い方向に進むということを
期待しているものでございます。
今後の
課題はたくさんございますけれども、失礼、その前に
ガスの方についてももう
一言申し上げておく必要があるかと思います。
ガスにつきましては、今回は何よりも
ガス導管事業という新しい概念を
導入いたしましてパイプライン網の拡充ということを目指したわけです。拡充ばかりでなく、導管
事業者には、
ガス事業者のほか、帝石とか
石油資源
開発等のパイプライン
事業者が既に存在しておりますし、
電気事業者も今や敷設しております。これらの導管を有機的に
連系いたしまして全体の
整合性を
確保するということもパイプライン事業として大事でございますが、やはり将来に向けたサハリン
天然ガスの
導入と、そしてそのためのパイプラインの拡充ということを大きな
政策課題として入れているわけでありまして、これも大変重要だと思います。
今回、簡易
ガスが一般
ガス事業への転換ということをできるようにいたしましたが、都市
ガス、簡易
ガス、そして今回は十分に
議論できませんでしたけれども、LP
ガスというものとの全体の融合を図るというものの先鞭ができたのではないかと思っております。
今後の
課題といたしまして、たくさんありますけれども、最初に何よりもやらなきゃならないのは
原子力問題でございまして、これは間もなく審議が始まるというふうに聞いております。
今後の長期的な問題としては、小口事業
分野の
自由化というのをどう進めるか、これはすべて検証して、これまでの
自由化の
成果や問題を十分検証した上で進めるか否かを検討するというふうにしておりますので、しばらく時間を掛けてからということになります。
さらに、今後の
課題といたしまして、
ガス事業について、先ほど申し上げました都市
ガス、それから簡易
ガス、LP全体の
ガス体
エネルギー産業の組織、
産業組織を新たに作り上げていくということが今後の大きな
課題になります。
電気についても、まだまだ先の話でありますけれども、燃料電池というものが相当程度
経済性を持つようになれば、これは確かに
電気事業の
産業組織を大きく変えることになるというふうに思います。これも大事であります。
そしてさらに、
電気、
ガス、
石油、
エネルギー産業全体の
産業組織をどのような方向に持っていくかということも今後の大きな
課題かと思います。それとともに、
エネルギー間競合というものが強まれば強まるほど、行動
ルールというのを明確にしてもらわなきゃならないし、紛争処理の在り方も検討していかなきゃならない等々を含めまして、今後の
課題も多くあるというふうに思います。
以上でございます。