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田端委員 公明党の
田端正広でございます。きょうは、こういう機会を与えていただきまして、まことにありがとうございます。
本日は医療、福祉ということでございますが、
日本は
環境立国、そしてまた
経済大国、あるいは文化
国家という、そういう
意味では世界にはすぐれた国だというふうに私も感じますが、しかし、そういう
日本の中にあって、三十五年もの長きにわたって苦しんできた人
たちがいるという
意味においては、大変残念なことだと思っております。そういう
意味で、きょうは、
一つの問題提起をさせていただいて、医療、福祉の行政の
責任ということもお
考えいただきたい、こう
思います。
それはカネミ油症患者の問題でありますが、昭和四十三年に起こった事件であり、もう忘れてしまっていた問題であるかと
思いますが、これは大変なことなので、少し経過等も踏まえて質疑をさせていただきたいと
思います。
カネミ油症の患者の方は、この三十五年間、本当に病気に次ぐ病気、もう次から次へといろいろな病気が多発しておりまして、そういう
意味では、もし
国民皆医療保険制度というものがなければ、これはもう大変壮絶な苦しみになっていただろうと、逆に私はそう
思いまして、この問題を取り上げるわけであります。
実は、一昨年十二月の参議院の決算
委員会で、同僚の山下栄一参議院議員が坂口
厚生労働大臣に対して、カネミ油症事件の原因は、PCBによる汚染被害と言われているけれども、実はPCDFというダイオキシンであったのではないのか、こういう問題提起をいたしまして、
議論されました。そして、国会で初めてその席で坂口
大臣の方から、実はPCBではなくてPCDFというダイオキシンによる、主犯説がダイオキシンではな
いかと私も思うという回答をいただき、初めてそういう新たな視点に立った問題としてこのカネミ油症事件が国会で
議論されるようになったわけであります。
それを受けて、私は公明党のダイオキシン
対策本部長をやっておりまして、そんなことから直ちに昨年二月に、福岡市あるいは北九州あるいは
五島列島の方で多発しているわけでありますが、
五島列島に参りまして、福江市、玉之浦町に集中的に発生した、そういう現場に行きまして、約五十人ぐらいの患者の方から直接いろいろなお話を伺いました。一人一人伺ってみますと、本当に壮絶なお話でございましたが、ようやく患者の方々も、そういった
意味で初めて、この因習の深い田舎でできるだけカネミ油症患者であることを隠してきた人
たちが、初めて重い口を開いて切々といろいろな実態をお話しいただいて、聞いてまいったわけであります。
そんなことで、昨年の三月の
予算の分科会で再び私、この問題を取り上げまして、坂口
大臣にいろいろな具体的な
対策の
要請をさせていただきましたが、この一年、そういう
意味では大きく
状況が変わったと認識しております。
カネミ油症事件の経過について御
説明したいと
思いますが、皆さんのお手元にはペーパーが行っているかと
思いますが、パネルをつくってまいりました、大変大きなパネルになってしまいましたが。
昭和四十三年十月に北九州一円に、カネミ倉庫が製造した米ぬか油から約一万五千人の、推定被害者ですが、食中毒によって大変な大きな問題になりました。その後、厚生省の方で認定患者として認められたのは千八百六十七人であり、現在は生存されているのは約千四百名ぐらいと伺っております。これは、米ぬか油が大変健康にいい、こう言われながら、その中にPCBという化学物質が混入してしまった、それを直接摂取したために大きな被害になった、こういう流れでございます。
それで、昭和五十九年三月あるいは昭和六十年二月、第一陣訴訟の福岡高裁判決及び第三陣の福岡地裁判決において、このカネミ油症事件は、その八カ月前、一番上にありますが、四十三年二月のダーク油事件というのがありまして、カネミ倉庫が副産物としてつくっていたダーク油というもので、鶏のえさにまぜていたわけでありますが、このダーク油の中にPCBがまざってしまったんだろうと
思いますが、百七十万羽の鶏が大量に死ぬ、そういう事件があったわけでありまして、そのときに農水省の方できちっと
対応していれば一万五千人の人体への被害というものはなかったんではな
いか、こういう
思いがするわけであります。
それで、そのことが裁判においても明確に認められまして、国が敗訴、こういう判決がおりました。そして、仮払金として八百二十九名の人に約二十七億円、一人当たり三百万とか四百万とかというお金が出たわけでありますが、それがそれ以後、昭和六十一年から六十二年にかけての第二陣の訴訟の福岡高裁判決において、国に
責任がないということになってきました。そのために、最高裁の方から勧告があり、原告と鐘淵化学の間で和解が成立して、昭和六十二年に原告が訴えを取り下げる、こういうことで和解に至ったわけでありますが、そのために、逆に仮払金を返還しなければならないということになるわけであります。
そういう
意味で、非常に残酷なことは、
平成九年、時効まであと一年と言われるような時点になって、国の方が一人一人の患者の皆さんに、返しなさいという調停に入っていくわけであります。そして、
平成九年から十一年にかけて、六百九十八名の人との調停ができまして、返還の手続に進んでいく、こういうことになります。
そういう
意味で、これは大変酷なことでありまして、ダイオキシンといえば、皆さんも大変御存じだと
思いますけれども、非常に猛毒であります。PCBの五千倍の毒性がある、こう言われているわけでありまして、そういうダイオキシン被害という要素を持っていながら、PCBということでずっと今まで来てしまったわけでありますが、しかし、今の表でありますように昭和五十二年、今から二十五年前ですが、油症患者の体内からPCDFが検出されて、油症研究班が初めてそれを明確に認めたわけであります。そして、それ以後、昭和六十三年、今度はPCDFが、これはダイオキシン類に入るんだということを、当時の
環境庁がPCDFはダイオキシンだ、こういう認定をします。
そうしますと、これは明確に、国の方でももう十五年前に、PCDFというものはダイオキシンであって、PCBが、熱
処理をしたときにPCDFとかPCDDとかコプラナPCBとかそういったダイオキシン類に変質するんだ、そして、それを直接このカネミ油症の人
たちは口から摂取してしまったんだ、こういうことが明らかになったのであります。それが、
環境庁が認めたときですら、今からもう十五年前になるわけでありますが、昨年、私
たちが問題提起するまで、そのことが公式には認められていなかったという
意味で、大変にこの人
たちはつらい
思いを長年にわたってやってきたということであります。
ダイオキシンというのは、御存じのように、ベトナムの枯れ葉剤等でも大きな問題になりましたが、ベトちゃん、ドクちゃんということも、あの当時、大きな話題にもなりました。そういう
意味では、大変な毒性の強いものが一たん体に入ったら出ないという非常に悪い性質を持っているわけでありまして、そういう
意味では、当時三十五年前、四十歳であった人は、今もう七十五歳、高齢化しています。そういう高齢化して、次から次へといろいろな病気が起こりますから、もうぼろぼろに体もなっている、こう
思います。
例えば、ダイオキシン類あるいは
環境ホルモン、内分泌攪乱物質と言われているこの一番目にダイオキシン類が入っているわけでありますが、そういうものから人体にどういう影響があるかといいますと、催奇性とか発がん性、あるいは生殖器異常とか免疫機能が低下する、つまりもう抵抗能力が、抗体が少なくなって、本当に人間としての機能がどんどん弱っていく、こういうことで、いろいろな病気が多発するんだろうと
思います。
そういう
意味では、本質的に人間の機能を根底からむしばんでしまうというのがこのダイオキシン類あるいは
環境ホルモンの怖いところだと思うわけであります。しかし、残念なことに、こういう患者の人の治療をどうするかという究明が世界的にもまだ確立していない、研究がされていないといいますか、疫学的にも臨床学的にもそこのところが今まだ途中である、そういうことでありまして、非常にこの方
たちは大変なつらい
思いが続いているわけであります。
昨年、
五島列島に行ったときに、いろいろなお話を伺いました。例えば、由香理ちゃんという方、当時三十三か四だったと
思いますが、黒い赤ちゃんとして生まれました。そして、今二人のお子さんがいますが、今度自分の子供が、また黒い赤ちゃんを産んでいる、こういうことであります。それから、例えば指が六本の子供が生まれたとか、あるいは、息子さんが非常に生殖器異常で悩んで自殺をしたというお父さんのもう本当にすさまじい告白も伺いました。等々、いろいろな
意味で、これは次世代にまで続いていくという
意味でも大変残酷な事件である、こういうふうに思うわけであります。
このほか、ホルモンの異常とか、甲状腺の異常とか、肝臓、腎臓の発がん性とか障害とか、あるいは皮膚病、神経障害、生殖器異常等々、いろいろな病気が次から次へとこういう人
たちに襲ってきては苦しめているというのが現実であります。
そこで、坂口
厚生労働大臣にお尋ねしたいわけでありますが、昨年、私も
質問させていただいて、いろいろな手を打っていただきました。これはもう大変患者の方も素早い
対応だということで喜んでいただいておりますが、例えば油症研究班の体制を強化していただきました。
つまり、PCDFという、ダイオキシンという認定で体制の強化をしていただいて、診断基準の
見直しにも取りかかろう、そして患者の皆さんの血中濃度のダイオキシン調査を全国調査としてやろう、こういうお話もいただきました。あるいは、産婦人科の専門家あるいは疫学の専門家、そういった方々にも検査体制の中に入っていただいて、女性を中心にした相談体制もやっていこう、こういうお話もいただきまして、大変全国的にそれが進んでいるということで
評価をいただいておりますが、この進捗
状況と、さらにまた、医学的な解明はどこまでどういうふうに今進んでいるのか等について、お答えいただければと
思います。