○近藤昭一君
民主党の近藤昭一でございます。
私は、
民主党・
無所属クラブを代表いたしまして、
民主党・
無所属クラブ提出の
難民等の保護に関する
法律案につきましては
民主党・
無所属クラブの
提出者に、政府
提出の
出入国管理及び
難民認定法の一部を改正する
法律案につきましては関係大臣に、質問させていただきます。(
拍手)
我が国の難民受け入れ
体制が確立した直接の契機は、一九七五年ごろから我が国に到来したインドシナ難民です。当初の閣議決定によるインドシナ難民の定住受け入れから始まり、一九八一年には、難民
条約・
議定書に加入いたしました。それに伴い、
出入国管理令を改正し、
出入国管理及び
難民認定法が成立したのであります。
一九九四年には、インドシナ難民に対する受け入れの特別枠が廃止されましたが、それは、我が国の難民受け入れが終わりを迎えたことを意味するものではもちろんありません。現在も、アフリカやアジアから、難民としての保護を求めて我が国にやってくる人が大勢いらしゃいます。
しかしながら、我が国の難民認定数は、諸外国に比べ非常に少ないのが現状であります。また、難民認定
手続上の問題も多く、難民保護の国際的な義務を十分に果たしているとは言いがたい状況にあります。
アフガニスタン、イラク、北朝鮮の例を出すまでもなく、今日、難民問題は内外社会の大きな関心を集めており、一九八一年に発足した我が国の難民認定制度のあり方あるいは紛争地域等からの避
難民等に関する人道的な配慮や国際貢献のあり方が問われており、二十年ぶりに
法律の見直しが行われ、政府案、
民主党案が出されたわけであります。
二〇〇〇年の難民認定の
世界番付、UNHCR、国連難民高等弁務官事務所によります番付を見ますと、
日本は、対面積比で百五十九カ国中九十位、対人口比では百二十五位、対GDP比では百三十六位という、
世界の中で極端な劣等生と思われます。人数にすると、わずか二十三人であります。
従来、政府は、
日本が海に囲まれているから申請者数が少ないと
説明してきたわけでありますが、米大陸も難民発生地域から見れば海を渡る点では同じでありますが、二〇〇〇年は一万六千六百九十三人を受け入れています。オーストラリア、ニュージーランド、イギリスも島国でありますが、申請者数はけたが違っております。ちなみに、二〇〇〇年の受け入れ人数は、それぞれ四千五十人、二百三十五人、二万六千百八十九人であります。
日本とよく比較されるドイツを参考に申し上げますと、二〇〇〇年は一万八百九十四人を受け入れています。
そこで、まず、一体、今回の法改正では、どういった理念に基づき、どのような
方針を持つのか。申請者数、認定者数をふやす方向に誘導するのか、抑制するのか。それぞれお聞きしたいと思います。
また、二〇〇二年九月三十日のUNHCRの執行
委員会で、外務省の野川保晶氏は、
日本政府は四つのS、
日本語で実質、協調、連帯、誠実をもって難民問題に取り組んでいくと述べておられますが、今回の法改正のどこにその理念は生かされているのでありましょうか。
外務大臣にお聞きしたいのでありますが、あいにくG8外相会合で御不在のため、代理で法務大臣の答弁を求めます。外務大臣に対しては、
委員会審議の場で改めて御質問させていただきます。
政府
提出法案では、仮滞在許可制度を設け、
一定の条件を満たせば
日本での仮の滞在を認めるとしています。しかし、多くの難民は仮滞在許可の除外事由に該当するため、実際は与えられないケースが多いと思われます。
例えば、付与の要件として、
日本への直接入国が挙げられているわけでありますが、現実には、ほとんどの難民は第三国を経由します。UNHCRが昨年接触した難民認定申請者百八人のうち、直接
日本に来たのは二十四人にとどまるということであります。そうしますと、表向き、難民に道を開いたかのように見せかけて、実際は、従来と何の変化もないのではないでしょうか。あるいは、逆に仮滞在許可を与えない決定により、かえって収容を強化することになるのではないでしょうか。法務大臣の御答弁を求めます。
さらに、仮滞在許可を受けられなかった者について、
審査中は強制送還しないとあるのでありますが、その場合、強制収容の
対象になるのかならないのかについても、あわせてお聞きいたします。
また、
民主党案では、難民認定希望の申請者に対して、まず、在留資格を与えるのかどうか、特に第三国経由により入国した人に対して在留資格を与えるのかどうか、お尋ねしたいと思います。
難民申請の期間期限である六十日ルールとその硬直的な運用が難民を締め出しているという批判が絶えませんでした。今回、政府
提出法案では、仮滞在や難民認定に伴う在留資格付与の条件として六カ月以内の申請期限を設けていますが、なぜ、誤りなく難民を難民として認定し保護するための方策や、制度の本質とは思われない難民認定申請期限をいまだ設けるのか、その合理的な理由をお聞きしたいと思います。
また、この期限延長により、以前より厳格にこの法定申請期限が運用され、結果的に以前より強く難民を締め出すおそれはないのか、法務大臣に答弁を求めたいと思います。
また、
民主党案は、法定難民認定申請期間を撤廃していますが、その理由をお尋ねいたします。
日本の難民認定制度の根源的な問題は、外国人の入国・在留管理を行う部局である入国管理局が国際的な保護を必要とする難民の受け入れをも担当している点にあると思います。
しかしながら、政府
提出法案は、相変わらず、入国管理と難民認定を一元的に入国管理局で行うこととしており、難民認定行政を見直す姿勢が見受けられません。なぜそうなるのか、法務大臣の見解を求めます。
また、我が国には、
平成十四年一月一日現在、二十二万四千六十七人もの不法滞在者がいると言われています。こうした中で、迫害を逃れて来日し、正当に難民申請をした人が、ほとんど難民認定されることなく、本国に多額の費用をかけて強制送還されるのは理解しにくいのですが、いかがでありましょうか。
さらに、この一年ほどの間に、政府は、難民認定に係る裁判で六回の敗訴裁判を受けています。このことについてどうとらえていらっしゃるのか、お聞きしたいと思います。
一方、
民主党案は、入管
業務と難民認定
業務の分離をうたっているわけでありますが、その理由を御
説明ください。
難民申請の関係書類は、地方入国管理局長がまとめて法務省本省へ送るのですが、本省でどんな
審査が行われているのか、全くわかりません。そして、難民認定申請が却下された場合、いかなる理由で却下されたかについて、十分な
説明がありません。
また、入国管理局の解釈は、難民はみずからが難民であることを証明しなければ難民と認められないと聞いています。難民は危急の事態を着のみ着のまま逃れてきており、自分が難民だと証明できる資料などは持っていないのがほとんどであります。難民の実情に全くそぐわないのではないでしょうか。
難民認定の本質とは関係のないと思われるそういった
方法論によって
規制している理由は何なのか、法務大臣にお聞きしたいと思います。
また、
民主党案では、どのように難民認定のプロセスを透明化しようとしているのか、詳しく御
説明いただきたいと思います。
東京地裁は、先月、ミャンマーの人の難民認定に係る裁判の中で、難民調査官が申請を虚偽と決めてかかっている、供述を客観的な事実と照合して
評価していないなどの点を挙げ、事実調査の常道ができていないことを指摘しています。また、本国で敵対する部族の出身の人を通訳にあてる状況もあるようであります。
現在の難民調査官の難民発生地域に関する知識に関して申し上げれば、ある調査官は、アフガニスタン難民の調査で、カルザイ大統領の名前を知らなかったり、タリバンを民族と誤解していたと指摘されています。こういった入管職員が難民の調査をするのは無理があるのではないでしょうか。
今後、専従の難民調査官の数を増員するつもりはあるのかどうか、また、難民調査官の専門的知識及び調査技能向上のための訓練、
情報収集能力の改善のために具体的にどのような策を準備しているのかについて、見解を求めます。
また、難民調査官のポストが入管局内の配置転換ポストの一つにすぎず、試験もなく、研修も不十分で、昨年はわずか三時間ほどであったと聞いています。そして、限られた二、三年しか在任しないという現状では、永遠に専門性、客観性は
確保されないのではないかと危惧しておりますが、法務大臣の御見解を伺いたいと思います。
これに対して、
民主党案は、より質の高い難民調査のためにどのような制度を用意しておられるのか、お尋ねいたします。
難民認定申請者に在留資格が与えられていないことから、難民申請した方に対しては、退去強制令書による強制収容がまず行われるのが通例であります。
しかしながら、長期間の収容が被収容者にもたらす精神的ダメージは深刻で、精神疾患を患ったり、出口の見えない長期収容への絶望感から自殺未遂を起こすケースも多数
報告されております。また、実際に自殺で命を絶った方もおられます。
しかも、精神的バランスを崩したり体調不良を訴えても満足な治療が受けられず、また、必要なときに迅速に外部の病院に連れていかれなかったり、連れていかれる際は犯罪者のように腰ひもをつけていくという深刻な人権問題が存在しています。また、収容所係員による暴行、強圧的言動なども市民団体から多数
報告されています。
政府は、難民への長期収容をなくすつもりがあるのか、また、この改正案の
提出を機に難民の処遇のあり方や人権の保障について改善するつもりはあるのか、法務大臣の答弁を求めます。
現行の難民生活支援プログラムに対しては、国連人種差別撤廃
委員会から改善勧告が出されておりますし、インドシナ難民と
条約難民への生活支援においても差別が行われています。
平成十五年度よりようやく
条約難民の方へも生活支援が行われるようになったわけでありますが、定員はわずか二十名にとどまっています。
そこで、今回の政府
提出法案では、仮滞在許可を得た人に対してどのような生活支援を行うのか、法務大臣の答弁を求めます。
また、
民主党案における生活支援のあり方についてもお尋ねしたいと思います。
先週、有事関連
法案が衆議院を通過いたしました。小泉総理は、「備えあれば憂いなし」とおっしゃいました。確かに、そういった側面もありましょう。しかしながら、最大の備えは相互理解と扶助のはずであります。
これから、
世界はますます相互依存を深めてまいります。今後、
日本在留の外国の人の数はさらに増加していきます。
日本が外国の人にとって住みやすい魅力的な国に変わっていかなければ、
日本の将来はあり得ません。外国の人に対するきちんとした理解と対応を持ち、難民保護をきちんと行っていくべきと考えます。この二十年間で三百人にも至らないというのは、余りにもお寒過ぎます。
このような状況の背景には、私
たちの価値観や偏見の問題もあるのではないでしょうか。最近では、東電OL殺
人事件で犯人とされているネパール人のゴビンダ氏は冤罪ではないかと言う人もいます。
難民制度は
世界平和のためのセーフティーネットであり、今回の改正がきちんと行われること、運用する立場の人々が開かれた視野を持って柔軟に対応することを願って、質問の締めくくりといたします。
ありがとうございました。(
拍手)
〔
国務大臣森山眞弓君
登壇〕