○木島
委員 抵当権者たる金融機関の同意、承諾がなければ自分のテナントが維持できない、居住が継続できないとなれば、賃借人と銀行、
抵当権者との力
関係が、どっちが強いかは明らかでしょう。銀行の方が強いに決まっているんですよ、承諾するかしないかは自由なんですから。そうしましたら、日本の経済法則からいったら、資本主義の経済法則からいったら、金融機関たる
抵当権者は、いわゆる承諾料を持ってきてください、あるいは家賃を値上げしてくださいと言うに決まっているじゃないですか。
そういう
配慮が全然なしに、今回、
民法三百九十五条を
改正して、いろいろ理屈を言って、
抵当権者の承諾を得れば引き続きテナントは借りられるんだ、居住者は借りられるんだという
制度をつくったからいいじゃないかなんというのは、全く、社会的弱者たるテナントや居住用賃貸物件の賃借人の権利を損なうもの、
抵当権者たる大金融機関ですよ、金融機関の利益を一方的に図るものと私は
指摘せざるを得ないんです。
大体、マンションにしろ、農村での賃貸住宅にしろ、貸し主たる金融機関は何を目当てにしているかといったら、そのマンションなり賃貸物件が、きちっと賃借人がいて賃料が入ること。銀行の貸し金の唯一の回収の基礎は賃料
収入でしょう。当たり前ですよ。それなら、こんな変な、承諾が必要だなんということを言わずに、
民法の基本原則を変えて、明治以来の基本原則をここで変えるんですから、
抵当権と賃借権との
優先劣後
関係、力
関係を変えるわけですから、せめてそういう
制度をつくるべきではなかったか。まだ遅くはありませんから、この
審議を通じて、つくるべきではないかと私は思います。
ちなみに、
民法の大御所であり、今は亡き我妻栄教授の文章を読みましても、大体、この
民法六百二条、短期賃貸借というのは借地借家法の立法
趣旨と合わないと。借地借家法というのは、そこに住んでいる限り権利は永続するんだというのが借地借家法の原点でしょう。そういうことを言っているということ。これは民事
局長、十分に御勉強のことですから、そこをしっかり受けとめていただきたい。
今回の何でこんな、短期賃貸借が、現行でも不十分な短期賃貸借の
保護制度がさらに後退する、短期賃貸借
保護制度廃止ですからね、なってきたのかといったら、私は一言で言ったらこれは
法務大臣の責任だと思うんですが、
政府の経済政策だと思うんですよ。
政府の経済政策で、短期賃貸借をもうなくせなんということが連続して出されています。
指摘してみましょうか。
平成十一年二月二十六日、経済戦略
会議、「日本経済再生への戦略」でもそんなことが書かれています。平成十二年十二月十二日、行政改革推進本部規制改革
委員会、「規制改革についての見解」でもそんなことが書かれておる。平成十三年十二月十一日、総合規制改革
会議の「規制改革の推進に関する第一次答申」でもそんなことが書かれておる。短期賃貸借が、まるで目のかたきにされている。
そもそも、こんな問題が今噴き出しているのは、
政府の経済失政によってバブルがはじけて、不動産価格が低落をして、そういう中で競売もうまく進まない、
倒産もふえる、そういう経済失政の結果でしょう。それなのに、物件が売れないというその責任を挙げて社会的弱者である賃借人、テナント、居住者に押しつけようとしているのが、この短期賃貸借
保護制度の廃止じゃないですか。
銀行の利益を余りにも
保護して、弱者である賃借人の権利をないがしろにするという本質がここに見えるんじゃないかと思えてならないんです。これはもう基本問題です。
法務大臣、そう感じませんか、午前中からの論議を聞いて。