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山花委員 多分そうなんでしょうね。つまり、この
カルテを見ると、五月十八日の時点で「下垂体腫瘍」という
言葉が一番最初のところに見受けられます。五月十八日、「新入」、サブジェクト、オブジェクトのことが書いてあって、「S58クモ膜下出血 S59下垂体腫瘍 opeせず」、つまり、恐らく本人から過去の既往歴について問診をして、それをメモしたものだと思います。つまり、S59、昭和五十九年に下垂体腫瘍である、そして手術をしていないということは、お医者さんであれば恐らくもうこの時点でわかっている話なんですね。ところが、四枚めくっていただいて、十二年の十一月九日のことです。これはお医者さんじゃない方の字だと思いますけれ
ども、四行目から、「本人は、ちょっとした事で
職員に注意を受けてしまい、なさけないと。頑張る様指導したところ、起き上がり、座っていた。多少、甘えがあると思われる。」この方は十二月四日に亡くなるんですけれ
ども、もう十一月ですから、亡くなる一カ月前です。
こう見ていくと、目が見えないとかいろいろこれまでも訴えられていたわけでありまして、脳腫瘍だということがわかっていて、調子が悪いということがわかっている人に対して、多少甘えがある、こんなひどいことはお医者さんだったら普通書けないと思いますからね。
この方についてですけれ
ども、
カルテを見ていくと、ところどころ、目が見えないとか、全く見えないわけではない、こういうことを一生懸命訴えられているわけであります。
この措置について非常に私は疑問があるんですけれ
ども、例えば、下垂体腫瘍といっても良性のものと悪性のものとがあって、何か脳腫瘍という
言い方をすると物すごく怖い病気のような気がしますけれ
ども、悪性のものというのは大体二割
程度で、普通は、普通はといいますか、多くは良性でして、ただ、目が見えないとかそういう症状が出てくるようです。眼球があって、中で視神経がクロスしていますけれ
ども、クロスしている中心部などに腫瘍があると、ここから視神経が圧迫されまして、目が見づらくなる、つまり外側が見づらくなることがあるようですね。
少なくとも外科の
先生が、こういうときにどうしますかということを言いますと、口をそろえて言うのが、
法務大臣、たまたま目が合っているので恐縮ですけれ
ども、ペンをこう立てて、目の前で横に振るようです。遠いですけれ
ども、私の顔でいいますと、目の前でこうやりますと、外側が見づらいですから、つまり視神経が少し侵されていると。だんだん脳腫瘍が進行してきますと圧迫の度合いが強くなってきますから、見える範囲がすごく狭くなっていくということのようなんですけれ
ども。
この
カルテを見ると、普通、お医者さんというのは、そういうことをやったら、診療記録というか、
カルテに記載すると思うんですけれ
ども、これも個性によって書く人書かない人がいるという
説明を受けていますが、普通は書くものだろうと感じるんですけれ
ども、これは書いていないような気がするんですね。したがって、下垂体腫瘍とかそういうことはお医者さんは聞いてい
たんだけれ
ども途中で忘れちゃったのかなと思うぐらいの話なんです。
といいますのも、五月、六月とずっと受診しているんですけれ
ども、どうも下垂体腫瘍に対する措置とおぼしきものがほとんどないんですね。九月になって初めて、昭和五十九年、「クモ膜出血で温覚異常あり 寒く、長そでが」欲しいということなのかな、こんなせりふが出てきたりしますけれ
ども、あくまでもこれはクモ膜下出血の話ですね。やっとお医者さんがおかしいぞと気がついたように見えるのは、もう十一月になってからなんです。十一月の二十四日、「全く見えないわけではないが、ぼんやりする」、血圧が、上が百、下が八十、「手足マヒ しかし、こちらの指示した動作はできる 見えている」と書いてあります。ここで、普通にこの
カルテを読んでいったときに、これも聞いたお医者さんによっていろいろおっしゃることが違うので、しかもこのお医者さんから聞いたわけじゃないですから推測になってしまいますけれ
ども、恐らく十一月の時点で、おやと思ってどこか
病院に電話をし
たんだと思いますね。
十一月三十日には、恐らく准看護師の手によって書かれたと思われますけれ
ども、マスキングされていて、
病院のどこかのお医者さんから電話があって、十二月十二日にCTスキャン、MRI等の検査を実施するという連絡が来たと。そこで、十二月一日に経過を見て、何とかの何とかのホスピですから、どこかの
病院の、脳外とありますけれ
ども、これは脳外科のだれだれドクターに通っていた、しかもSと書いてあってサブジェクトですから、つまり
患者さんがこう言っていると。読みづらいですけれ
ども、平成六年ぐらいまで通っていた、ガンマナイフ勧められたがやらなかったと。
ガンマナイフというのは、脳の腫瘍を、口の中から当ててその腫瘍を取るもので、ガンマナイフというのも、これもおもしろいんですけれ
ども、外科のお医者さんが見ると、おお、ガンマナイフかと反応するんですけれ
ども、内科の
先生とか精神科のお医者さんは、きのうの
先生もそうでしたけれ
ども、余り反応しないですね。つまり、ガンマナイフがある
施設というのは本当に限られているわけですけれ
ども、恐らく、そういう専攻じゃないと、かつて教科書で読んだとか、あるいは授業で習ったことがあるということぐらいで、余り反応しないのかもしれません。ただ、外科の
先生が聞くと、おお、これかというような反応をされるようですね。
その次のページに行きますと、もうこの辺で本当に慌てたような感じになってきます。「右眼の右半分 左眼の左半分が見えない 両耳側」ちょっと読めませんけれ
ども、つまり、これは脳腫瘍がかなり進んできているぞという感じになってくるわけです。
ところが、十二月三日に保護房に収容されて、この方は十二月四日に亡くなってしまうというわけでして、したがって、こうやって見ていっても、
事件性があるかないかについては断定はいたしませんけれ
ども、少なくとも
医療体制について極めて疑問があるような気がいたします。
余り言うと、このお医者さんがいけないみたいな話になるかもしれませんけれ
ども、少なくともこれはどこかの時点で脳外科、例えば
法務省が所轄をしております
医療刑務所でも脳外科は持っていないですよね、したがって、どこかに連れ出す、連れ出すというか移送するということでしょうか、それが必要だったのではないかなというふうに感じられる事案なんですけれ
ども。
この点について、厚生労働
委員会ではありませんから、個々の症状に対してどういう
対応が適切だったかという話をするつもりはありませんけれ
ども、少し大ざっぱな
言い方をしますと、この
医療的な措置、適切だったと考えられておりますか、
矯正局長。