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遠山国務大臣 このたび、政府から提出いたしました
著作権法の一部を改正する
法律案について、その提案理由及び
内容の概要を御説明申し上げます。
我が国の著作権
制度については、情報化等に
対応してこれまでも逐次整備を進め、その
充実を図ってまいりましたが、昨年七月に策定された政府の知的財産戦略大綱や、本年三月に施行された知的財産
基本法に示された
基本的な方針を具体化するため、その一層の
充実が必要となっております。
この
法律案は、著作権の分野について知的財産戦略を推進し、著作物の利用形態の多様化等に
対応した適切な保護と活用に資するため、映画の著作物の保護期間を延長すること、
教育機関等において著作権者の許諾を得ずに著作物を利用できる範囲を
拡大すること、著作権が侵害された場合の司法救済
制度の
充実を図ること等について、必要な改正を行うものであります。
次に、この
法律案の
内容の概要について、申し上げます。
第一は、映画の著作物の保護期間を、公表後五十年から公表後七十年に延長することであります。
著作権法上の映画の著作物には、いわゆる劇場用映画だけでなく、我が国の作品が国際的にも高い
評価を得ている、アニメ、ビデオ、ゲームソフトの映像なども含まれますが、その保護期間は「公表後五十年」とされております。これに対し、一般の著作物の保護期間は「著作者の死後五十年」とされており、これには「著作者の生存期間」が含まれております。このため、映画の著作物の保護期間は、一般の著作物の保護期間と比較すると「著作者の生存期間」の分だけ実質的に短いという
状況にあります。また、他の先進諸国においては、公表後五十年という条約上の義務を超えて、より長い保護期間を法定することが一般化しております。このような
状況を踏まえ、内外における我が国の映画の著作物の保護を強化するため、映画の著作物の保護期間を「公表後七十年」に延長するものであります。
第二は、
教育の情報化等に
対応して、
教育のための著作物の利用を円滑化するため、著作権者の許諾を得ずに著作物を利用できる範囲を
拡大することであります。
具体的には、授業の過程で使用するために
学習者が複製を行う場合、遠隔授業において教材等の公衆送信を行う場合、インターネット等を用いた試験等における問題として公衆送信を行う場合、いわゆる
拡大教科書を作成する場合を、著作権者の許諾を得ずに著作物を利用できる例外に加えるものであります。
第三は、著作権が侵害された場合の司法救済
制度について、これをさらに
充実するための規定を設けることであります。
著作権の侵害訴訟においては、
権利者みずからが、侵害行為や損害額を立証することが必要ですが、著作物等の利用形態の多様化に伴い、その立証が困難な
状況が生じております。このような
状況を踏まえ、裁判における審理を促進し、侵害行為への迅速で有効な
対応を推進するためには、
権利者の立証負担をできる限り軽減することが必要となっております。このため、まず、侵害行為についての立証負担を軽減するため、原告が侵害品だと主張するものを被告が否認する場合には、被告自身が自己の行為の具体的態様を明らかにする義務を負わせることとするものであります。次に、損害額についての立証負担を軽減するため、侵害品が販売された数量を、
権利者が販売し得たものとして、その数量に正規品の単位当たり利益を乗じて損害額を算定できることとするものであります。
最後に、施行期日等についてであります。
この法律は、
平成十六年一月一日から施行することとし、所要の経過措置を講ずることとしております。
以上が、この
法律案の提案理由及びその
内容の概要であります。
何とぞ、十分御審議の上、速やかに御賛成くださいますようお願いいたします。