○重野
委員 私は、社会
民主党・市民連合を代表して、
政府提出の
武力攻撃事態法案、
自衛隊法改正案、
安全保障会議設置法改正案の有事関連三
法案、
与党三党及び
民主党による
修正案に対し、反対の
立場から討論を行います。
まず、反対討論を行うに当たって、私は強く強調しておきたいことがあります。それは、いわゆる有事
法制の必要性の可否についてであります。この点については、私はその必要性を認めません。
東西冷戦が終わり、
日本が他国の正規軍による直接侵略を受けるおそれはなくなりました。グローバル化が進み、相互依存が深まっている世界では、
国家間の正規戦争が起こる可能性はかつてなく小さくなっています。冷戦下で旧ソ連軍による着上陸型侵略からの防衛を
前提に検討されてきた有事
法制論議の延長線上で提案されている本
法案は、その
前提としている時代認識が全く誤っていると申さざるを得ません。万が一防衛出動があった場合の自衛隊の任務遂行については、現行
自衛隊法の
規定で
対処が可能であり、あえて新たな
法整備を急ぐ必要は全くありません。
北朝鮮の核問題や
拉致問題等は、あくまで
外交で
解決すべき課題であり、警察や国境警備、国際的核不拡散
体制の問題であります。これを防衛力
整備や有事
法制の論議に結びつけることは、全くの詭弁であり、認めるわけにはまいりません。
そもそも、本
法案で言う
武力攻撃事態とされるものの
定義はあいまいであります。拡大解釈される可能性が強く危惧されており、現に、
武力攻撃を受けた場合だけではなく、
武力攻撃のおそれのある場合、
武力攻撃が
予測されるに至った
事態から
武力攻撃事態と
認定され、自衛隊の活動が始まりますが、この基準は全く不明朗であり、
政府の恣意的な解釈に任されるのであります。
日本が直接侵略を受けるといった
事態とはほど遠い
状況から
武力攻撃事態と
認定され、むしろ軍事的緊張を招き寄せる、あるいは、実際には
日本の安全とかかわりのない米国の軍事行動に追随し、その兵たんを支える法的基盤として機能していく、こうしたおそれの方がはるかに強いのであります。
修正案は、これを
武力攻撃事態と
武力攻撃予測事態とに分けて整理したものの、原案に対する疑問を何ら
解決、解消するものではありません。
自衛隊の行動に関する法規制を大幅に外す一方、
国民に戦争協力を義務づけ、
基本的人権を制限する。地方分権に逆行し、自治体の主体性を奪う。いかに有事への備えを理由にしても、
日本国憲法の根本理念をこのように大きく突き崩すことは許されることではありません。有事
法制は、戦争を否定した
日本の法体系に戦時
体制を持ち込み、
基本的人権の尊重や
国民主権の理念をもじゅうりんする憲法破壊法と言わざるを得ないのであります。
有事
法制の制定は、自衛隊の発足、日米安保条約、新ガイドライン関連法と続いてきた
日本の再軍備過程を完成させ、改憲なき憲法停止
状況をつくり出すものであり、党として強く反対するものであります。
なお、
与党と
民主党による
修正協議によってもこうした
法案の本質は何ら変わりませんでした。そもそも、立法を必要とする客観的事実が存在せず、有事
法制自身が不要であるという
立場から、社民党としては、
修正案についても反対するものであります。
世界は、紆余曲折を経ながら、軍事バランスによる安定から、人間の
安全保障などの発想を中心に据えた、総合的な
安全保障体制の構築に向けて進んでいます。悲惨な沖縄戦の経験や、広島、長崎の被爆体験を持ち、世界に誇るべき平和憲法を持つ
日本こそが、その先頭に立ち、軍事力への依存を断ち切るための勇気ある道を歩むべきであることを心から訴え、
有事関連法案に反対する討論を終わります。(拍手)