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坂口参考人 坂口でございます。こういう場で発言の
機会を与えていただきまして、感謝申し上げたいと思います。
私たちの団体は、略称を
全国食健連といいます。お手元に配付させていただきましたパンフレットの裏にもありますけれ
ども、労働組合、女性
組織、それから農民組合ですね、あと、書いてありませんけれ
ども、中小業者だとか、県によっては生協も含めて、
国民の安全な
食料、健康、そして
日本農業を守ろうという一致点での
運動を各地で進めています。
私は、この
運動の中で感じていることをもとにして、今進められている
米政策改革や今回出されております
食糧法改定案について、考えるところを述べさせていただきたいというふうに思います。
今回の
改革の
方向によれば、
価格保障もありませんし、補助金もかなり削減されるということで、仮に
担い手とされた農家であっても、果たしていつまで
稲作が続けられるかということで、大変心配の声が聞かれています。また一方で、
担い手とされなかった農家は、農機具の処分も含めて、もう
農業やめなさいということで切り捨ての
対象になるわけですから、いずれにしても農家にとっては余り
展望のない
方向ではないかというふうに考えておりますが、私は、この
改革の
方向が、今のこととも相まって、
消費者にとっても結構大きな問題があるという点について、幾つかお話をさせていただきたいというふうに思います。
まず第一は、今回の
改革の中で、米は
国民の主食だという理念が見えてこないという問題です。
今回の
改革論議の中で、いわゆる主食である米も含めて、一般の商品と変わらないと。
生産調整研究会の論議の過程で、余り物には値なしということも記述されておりますけれ
ども、そして、ほかの商品を見てみなさい、こういう指摘さえあります。これが果たして主食に対する
政策なのかということが非常に疑問であります。
今回、主食の
生産や
流通から国が手を引いて
市場原理に任せる、こういう
方向が大枠としてあるわけですけれ
ども、これも、主食は
日本でつくるんだという理念がないことによるのではないかというふうに思います。
この米問題を考える際に、我々はあの十年前の米不足、米パニックのことを思い起こす必要があると思います。あの寒いさなか、国産米が入荷するよという話がスーパーなんかに掲示されますと、暗いうちから並んで買い求める。運がよく買えても、当時はタイ米とセットだったということもありますし、いわゆる体に不自由を抱えている皆さんは並ぶのさえ大変で、一般の健常者よりもさらに大変な思いをされたということも聞いております。
このときの教訓というのは、私たちはやはり
日本の主食は
日本でつくるんだ、しかもゆとりのある
需給を
確立するんだということだったんではないでしょうか。今回の
政策にそのことが見えてきません。しかし、
国民の世論としては、この教訓というのはしっかり根づいているというふうに私は思います。
お手元に配付しましたパンフレットの四ページの下の方に、
食糧庁の行ったモニター調査の結果を書いています。これを見ましても、「外国産米を購入したいと思うか」というのには、思わないという者が九一%に対して、思うという者が四%しかありません。しかも、この外国産米を購入したいと思わない理由が、
安全性に不安があるだとか、おいしくなかっただとか、おいしくなさそうということが理由になっています。私は、主食こそ、安心して、そしておいしく食べられて、しかも安定的に
供給されるべきだと思いますが、今回はこのことが見えてこないということが大きな問題だと思います。
二つ目は、BSEの国内での発生という不幸な事態があったわけですが、これを
反省して、
日本の
食料、
農業政策は
消費者重視の
政策に切りかえるんだということを
政府もおっしゃっています。私は、もともとの
食料、
農業政策が
生産者重視だったとは思っていません。もしそうであれば、BSEが上陸することを徹底して防いだというふうに思うわけですけれ
ども、そのことはおいておいたにしても、
消費者並びに
生産者ともに重視した
政策が必要だということになるわけです。
ところが、今回の、米ではありませんが、牛肉のトレーサビリティー法案の
審議の過程でも、アメリカから横やりが入って、それで、結局は輸入牛がとりあえずは
対象から外れると伝えられております。これなどは、
消費者重視になったはずなのに、実は輸出国の事情を優先したというふうに言われても仕方がないんじゃないでしょうか。このことが米についてもあらわれているのではないかということを心配するものです。今回の
方向ではそういう心配をしています。
この三月、私たちは、この法案がまとめられた後、
食糧庁に行ってこの法案の説明を受ける
機会を持ってもらいました。そのときにまず我々が心配したのは、
消費者としては何としても、米が投機の
対象になるんじゃないかとか、あるいは売り惜しみ。それから、逆ですけれ
ども、年間の安定的な
出荷、こういうことが保障されるんですかということをお聞きしましたら、担当官の方は、いや、それは法
制度上は担保されておりませんということを答えておりました。
とすれば、
流通がかなり自由になる中で入ってくる、大手の卸も含めて、こういう大企業、大商社の良心に期待するしかないということだとすれば、これはちょっと、そこに期待するほど我々
国民はお人よしではないというふうに言わざるを得ないと思います。国がきちんとこの辺の管理をするべきだということが私の考えであります。
第三は、ミニマムアクセス米の問題です。
政府は、このミニマムアクセス米は国内
需給に影響していないということで、そもそもこの論議の枠の外に置いていたというふうに聞いております。しかし、私はこれはどうも納得できません。
例えば、加工用米
一つとってみても、これが国産米で賄われていたとすれば、これは十分国内の
需給に影響するということはだれでもわかることではないかと思うんですね。今ミニマムアクセス米というのはだれも歓迎していないと思うんですね。ですから私は、この際、このことについては削減、そして
廃止を目指すように、ぜひ国としても、あるいはこの
委員会の議員の先生皆様方の御努力をいただきたいということを提起したいというふうに思います。
食料を輸入に依存するという
政策はこの際改めまして、少なくとも主な
食料については国産で賄う、こういう理念なしに
食料自給率の向上というのはないと思います。もしこの考えがWTO協定と矛盾するのであれば、国内の
政策を変えるのではなくて、やはりWTOの原則を、少なくとも
農業協定については、おかしいということで改定を提起するのが本筋ではないかと思います。
ところで、
消費者は
食料について、安ければよいという基準だけで
消費行動に走っているわけではないと思います。安全、安心が大きな基準になっています。この安全な国産
食料をという願いは、今各地で地産地消を広げる
運動として広がっていますけれ
ども、私は、国の
政策としては、このような
運動あるいはこの流れを応援するような
方向の
政策をぜひ
お願いしたいと思います。
例としていえば、学校給食に地元のものをたくさん使うという
運動は広がっています。
東京の隣の埼玉に私は住んでいますけれ
ども、埼玉の学校給食では、輸入の小麦でつくったパンには残留農薬というのはかなり高い確率で検出されますので、これを県産の小麦にかえようだとか、千葉もその
方向に倣おうだとか、いろいろ努力されておりますけれ
ども、ぜひこういう施策を国としても応援してほしいなというふうに思います。
その中心に座っている米については、つぶすのではなくて、やはり、今米をつくっている農家だとか、あるいは米を軸にしながら多様な
農業を営んでいる農家の
経営を応援するような形でこそ
政策を
確立していただきたいということを特に
お願いしたいと思います。
以上のような点から、今
提案されている
食糧法の改定案については賛成いたしかねます。ぜひ、議員各位が抜本的な修正のために御努力いただきたいというふうに思います。
最後になりますが、パンフレットの七ページにあります神戸新聞の、子供の誕生日ぐらいは娘に国産米を食べさせたい、こういう時期が来ないようにという心配ですが、本当にこういう心配をしなくてもいいような、そういう
米政策をぜひ
確立していただけるように要望して、発言を終わります。
どうもありがとうございました。(
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