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平湯参考人 平湯でございます。
三年前にこの青少年問題特別
委員会の
先生方の御尽力によって
防止法が
制定されましたこと、改めてありがたく
思います。そしてまた、
見直しの審議をお始めいただいたことについて、大変ありがたく思っております。
三年前、あるいはそれに先立つ時期と申しますのは、ちょうどさまざまな
虐待の
事例が新聞、テレビで報道されまして、そしてまた、その直接の行政責任を負った
児童相談所が、幾つかの
地域を転々とした
子供について、連係プレーができなくてみすみす死なせてしまった
ケースとか、そういう幾つかの
ケースが報道されて、
早期発見、そして
児童相談所が早期に介入する、そして
子供を
保護するということの大事さというのが非常に鮮明に出ていた時期だと
思います。
この
防止法もそういう目的に沿って必要な規定を盛り込んでいただいたわけでございますけれ
ども、それによって社会の関心が非常に広まって、
通告件数も急増いたしました。また、それに伴っていろいろな問題がまた見えてきたというふうなこの三年間だったと思うわけであります。
私がかかわっております
日本子どもの
虐待防止研究会といいますのは、
虐待に関するさまざまな分野、福祉、医療、保健、教育、そういうさまざまな分野の
専門家を
中心にした広い研究団体でありまして、そちらでこの
見直しに向けての提言を取りまとめて、ことしの二月に発表させていただいたわけであります。きょうの
資料として配っていただいたのがこの四枚つづりのものでございます。
これは前文の後、1から20まで番号が振ってありまして、そのうちの1と2が総論ということになります。1として、
防止法の一条に、
虐待が
子供の人権の侵害であるということと、それから
家族への
支援、これを目的として明記していただきたいということであります。
2は、それを受けまして、
虐待防止法の四条、国及び自治体の責務のところでありますけれ
ども、これを大きく拡充していただきたいということであります。
それから、3以下は各論でありまして、各論のどれが大事でどれが大事でないという優先順位はつけているわけではございませんけれ
ども、それでも、この各論の最初の3のところでございますが、これだけは各論の中でも緊急にやはり重視していただきたいのが3であります。
先に3を申し上げますと、平たく言いますと、
児童相談所の充実強化、特に福祉司の増員、それから
児童養護施設などの
施設の
職員の増員を含めた充実。この
児童相談所と
児童養護施設がもう大変な事態になっているというのは、きょうのお二人の
参考人が既に述べられているわけですけれ
ども、全体的な課題の中でもこれはやはり非常に重要な課題だというふうに言うべきであろうかと
思います。
それから、あと各論の中にはいろいろございます。その中で、司法、裁判所の関与が必要な部分というのが幾つかございます。それについてもきょうはお話しさせていただきたいと
思います。
以下、二点に絞りたいと
思いますが、一つは、
児童虐待防止法の四条の拡充強化と申しましたけれ
ども、例えばどういうふうにしていただきたいかということを、きょうのもう二枚のペーパーの中の一つでありますが、四条の改正私案というペーパーに即してお話しさせていただきたいと
思います。
現在の四条というのは右の欄にございます。一項、二項、三項。それに対して、
希望します改正というのは一項から七項までございます。
一項でまず何を
希望するかと申しますと、
児童虐待についてどういうことが課題になるかということを書いたものであります。
これはいろいろな機会に言われておりますので御
理解いただけると
思いますが、まず発生予防が大事である、それから
早期発見、そして
虐待児童の
保護、その後の心身の回復、親への
援助、それから啓発はもちろんでありますけれ
ども、こういうものが課題になるということです。
これは当たり前のようでありますけれ
ども、三年前の現行
防止法の重点が、先ほど申しましたように、
早期発見と
保護というところがポイントになっているために、その後の、
子供を
施設や
里親家庭でどう心身の回復を目指すか、あるいは親に対してどのように
援助するかというところがやはり足りないといいますか、それがまだ十分でないということを意味しておりますし、もう一つは、
早期発見以前の、そもそもの発生予防ということに対しても、大きな施策の重点になるということを強調したいためであります。言いかえますと、全般的な課題を同時並行して推進していかないと、いろいろ足りない点、無理が出てくるということでございます。
そして、2、3、4、5は、それぞれの課題について項目ごとに設けて、その課題のために必要な方向を書いていただきたい。
2のところは、発生予防という課題のために、医療
機関や母子保健の充実、それから
学校などの人権教育、これは、やがて親になる
子供のためにも必要ですし、現に
家庭で育っている
子供のためにも必要でありますが、そのような人権教育というのも発生予防という観点からはやはり必要であろうということであります。
それから、3のところは、
早期発見という課題のためにこのようなことが必要だ。この3というのは、現行の規定の中にもう既に盛り込んであると
思います。
それから、4でありますけれ
ども、これも、被
虐待児童の迅速な
保護とその後の適切な回復、こういう課題のために、
児童相談所や
施設などの
職員の確保、
里親等の充実、こういう施策が必要だということであります。
この4も現行規定である
程度書いてございますが、右の方に書いてございますけれ
ども、
児童の
保護という言葉だけでは、最初の、危険な
子供を急いでとりあえず
保護するというニュアンスがありまして、その後の長期にわたる
施設や
里親家庭での心身の回復ということまで十分出ておりませんので、その点を課題として、適切な回復という課題をきちんと書いた上で、かつ、このような
児相職員や
施設、
里親の充実ということをまた明記していただきたいと思うものであります。
それから、5について、親への
援助ですが、これは現行法ではございません。それに関連する規定は幾つかございますけれ
ども、課題としては明記されておりませんが、
虐待防止というのが
家族への
援助ということであるとするならば、これはぜひ入れていただきたいというのが各方面の
希望であります。
それで、この課題のために具体的に何が必要かということも少し挙げましたけれ
ども、親への
援助というのはさまざまございます。経済的な
援助、教育的な
援助、それから福祉的な
援助、あるいは、観点を変えまして、
在宅の
育児の
援助、これは広い意味での
子育て支援と通ずるところでありますけれ
ども、そういう幅広い、親へのあるいは
家族への
援助というのが土台になって、予防にも有効であり、かつ、その後の親への
援助でも必要になってくるということであります。
6と7はこれに関連したことでありますけれ
ども、6というのは、いろいろな
機関の連携が必要なんですが、その
機関同士の連携がまだまだ十分でないということがございます。
例えば、
学校や保育所が
児童相談所に
通告まではするけれ
ども、その後の
子供の心身の回復や親への
援助のためにはまだ十分連携ができないということもありますので、そういうことを明記し、かつ、その連携の軸になる民間団体、例えばきょうおいでの
アン基金プロジェクトな
どもそうでありますけれ
ども、そういうものの充実に努める必要があるということを特にうたっていただきたいということであります。
それから、7というのは、
地域間格差その他の格差のことであります。
これは、
虐待防止のために何が必要かということを議論するときに常に出てくることでありますけれ
ども、同じ名前を使った
機関でも、
地域によっていろいろ違う、人によっても違う。違うといいますのは、残念ながら、レベルとして違うということが非常に多々ございます。例えば、
児童福祉司の
専門職としての採用
制度がきちんとできている自治体とそうでない自治体というふうな差もありますし、それから、市町村の
対応にしても、これまたいろいろ違うために、
児童相談所と市町村の連携ということを議論してもまた違う。そういうことがございますので、この格差是正というのは常に頭に入れていく必要があると思っているわけでございます。
二点目の話に移らせていただきたいと
思います。
二点目の各論の中で、裁判所の関与が必要な場合ということが幾つかございます。弁護士としていろいろかかわっていることもございますので、この点を特に一項目申し上げさせていただきたいと
思いますが、もう一枚のペーパーで、1、2、3と、三つの場合を書きました。この中には、先ほどの
児相のお話にありましたような
ケースも含んでおります。急ぎ足ですが、申し上げたいと
思います。
1について言いますと、
子供を外に出さないで長
期間いわば閉じ込めているような場合に、やっと
保護したときには体重が標準の半分であったとか、先ほどは、もっとひどい、シビアな例も話に出ました。こういう場合に、中で
子供がもう息も絶え絶えというふうな現状がわかっていれば、緊急事態ということで警察官の職務執行法でも
対応できますし、あるいは
児相自体が玄関のかぎを壊して入るということも、必ずしも違法とは言えない場合もあると
思います。
しかし、そのことがあらかじめ明らかでないときに、つまり、緊急性ということが明らかでないときに、別な言い方をしますと、例えば半年間閉じ込めてあるわけですから、あと一カ月放置したって同じではないか、二カ月だってそんな大して違わないじゃないかという意味で、緊急性が必ずしもわからないときに、じゃ、どうしたらいいのかという問題でございます。このことについては、ひとつ社会的な検討の必要があると
思います。
それから、2については、これは医療拒否であります。このような場合でも現行法では十分な
対応ができず、お医者さんが非常に困っているということがしばしば報道されております。きょうの朝日新聞でも、ちょっと場面は違いますけれ
ども、新生児の
治療を親が拒んだときに、お医者さんがどうしたらいいか非常に悩んでいるという記事もございました。
それから、3については、これも先ほどから
児相や
里親家庭の
関係の話がありました。このままでは親が
児童相談所のアドバイスや
指導に乗らない、これに対してやはり裁判所の関与が必要ではないかというのが、現在、各方面の共通の願いであります。
以上、まとまりませんでしたが、お話しさせていただきました。(
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