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野口参考人 おは
ようございます。
文化女子大学文学部健康心理学科の
野口でございます。
私は、きょうこういう
機会をいただきまして、私の専攻の分野の心理教育的な面からお話しさせていただきたいと思います。
資料に沿いまして、まず、この
法案に私は基本的には賛成しております。
どちらの
立場に立たれる方でも、
出会い系サイトを利用した
犯罪の防止と子供の健全育成、非行防止という
目的には賛成なさると思いますが、この
マイナス点に挙げました子供に罰則を与えるということについていかがなものかということと、同時に、
規制をかけると、表現の自由と健全な出会いを求めてそういう
インターネットあるいは
出会い系を、人と交流を求めていく人のそういう
機会を奪うことがあるのではないかということが出てくると思います。
以下、二番、三番に沿いまして、私が
規制をかけた方がいいという論点をお話ししたいと思います。
まず第一に、いろいろな論点がある中でも、特にこの
委員会がそうですが、子供を守る、
児童を守るという視点がまず優先順位の第一に入ると思います。その
児童を守るということは
児童をどういう状態に置いていくかというと、健康な状態。その健康という
意味も、体だけではなくて心も、それから人間関係の中でもよい状態にいる子供
たちをつくりたい、そういう子供
たちであってほしい。でありますと、それがこちらの、子供
たちに対する健全育成と非行防止に
大人がどのぐらい力をかせるかということになると思います。
私
どもの
理論からいいますと、行動を変える。つまり、
出会い系サイトを利用するとか
援助交際とか、そういう行動、一応よくないと言われている行動を本来の
児童としてのふさわしい行動に持っていく、行動を変えるということに対して、三番にございます
ように、いろいろな方法がございます。そうし
ようと心から思う、願う動機を高める。あるいは、それのための環境を整える。なぜそうしてしまうか、そうせざるを得ない
ような何か
理由があればそれを弱めてあげるとか、事情を
説明し、こういうことをすると体はこうなっていくとかいう教示を与えるのもありますし、正しい行動をとっている人を見せるというモデリングもあります。先ほど
宮台先生がおっしゃいました試行錯誤という方法もありますが、最後に強制という方法もあります。
今、心理学の動向といたしましては、いろいろな行動の結果に対して
自分で責任を持つ、自発的に
自分で変えていく、
児童のそういう対応というか態度を図ることが
目的になっている。それが今の動向で、
被害に遭ってもみんな
自分の責任ということになっておりますが、その行動を選ぶための判断とか
自分の意思決定をするために正しい
情報を与えるというのがやはり
大人の役割でありまして、それに対して、それに進めていける
ようなソーシャルサポート、サポートを与えるというのが当然、自発的な行動を促すのですが、必要なことになります。
そうしますと、試行錯誤してひっくり返ってしまったり死んでしまったりしたら何にもならないということで、この問題に関しては、強制ということもある程度必要ではないか。
これを、一
ページの下に図がかいてありますが、行動を変えるために幾ら
個人の力だけに頼るといっても、
児童の力で、幾ら教育をして、いけないんだと教えても、それだけではやはり、この図にあります
ように、
個人の力が少なければ
規制の力を強くする、
規制が全然なければ
個人の力だけで働く、これはどちらだけでもだめでして、両方の力がちょうどよいバランスでかかわったときにその行動が変わっていく。
個人の力と組織、環境からの働きかけということが大事になる。
そうしますと、今回の問題の
規制というのは組織や環境からの働きかけということで、子供の自発的にかかわっていく心を助け
ようではないかということになります。
二
ページ目に参りますと、もちろん自己責任ではあります、いろいろな問題は自己責任でありますけれ
ども、子供の発達によっては、本能的なものとそれから理性的な部分とあとは
規範的な部分、いろいろエネルギーが行ったり来たりいたしますけれ
ども、それがどの
ように発達しているか、あるいはバランスがどうかということによって、責任能力とその範囲が異なってまいります。
児童は
大人と比べまして、まだ十五、六歳といえば、体は大きくなっておりますけれ
ども、内臓の部分ではまだつくられていく最中でありまして、ですから、たばことかお酒はいけないんだということになるわけです。そういう生理的な部分からもまだ未熟
段階にもありますし、ストレスに対する耐性、耐える力というものも弱いわけで、また、善悪の判断とか健康に関する知識がなかったり、
自分のそのときの衝動とかを抑える理性的な思考というものに至らないまま、この
ような
援助交際あるいは
出会い系サイトでの行動に結びつきますと、これは後で取り返しのつかない、そういうストレス後の症候群が出てくるということになります。
それで、この
ようなことを考えまして、今回の
規制がどういう役割をするかということで、二
ページ目にまた
一つ図がございます。
今回、こういう
法案をつくられたときに、いろいろパブリックコメントな
ども聞きましたし、いろいろな方々のお話を聞いてなされたと思いますが、この図でいいますと真ん中にあります。
児童がそういった行動を起こすときにどういう動機づけとか
理論づけをしているか。そして、そういう行動を起こすときに、やはり実現させている条件や要素がある。また、それを強化している、つまり報酬とか誘因を与えるものがある。例えば金品、お金をもらうとかそういうことも入るわけで、そういう行動を起こしている要因から出て、では、それをなくせばいいのではないかということで
規制が考えられてくるわけですね。
要因をアセスメントすることによって考えた本案のこういう
規制のプ
ログラムを実行するということで、この今出てきた要因が改善されていくという、
規制の役割というものは非常に、この図でいうとこういう位置づけをしているので、おわかりいただけるかと思います。
次の三
ページ目に、パブリックコメントで学生の年代のアンケートがちょっと少なかったもので、私も関係の方で調べてみました。
これはローデータでして、きちっとコントロールも何も置いておりませんが、ごらんいただきますと、十八歳、十九歳、ちょっと前に
児童のこういう対象の年齢を過ぎてきたばかりの大学一年生ぐらいのところなんですが、この
人たちの数字を見ますと、かなり、斜をかけたところですが、罰則を科すということにも賛成しております。
これは、最初、ああみんな反対じゃない、これでいいんだなというふうに考えることもできるんですが、実は、また二
ページ目に戻りまして、「今後の課題」。この
規制を通して行っていく、実施するということになりますと、やはり、子供
たちも、外側からの
規制によってきっとやらなくなるだろう、それが抑止力になるだろうと考えているという、もう
一つ深めて考えますと、やはりそれだけでは危険で、もっと
自分で自発的にやめていく力も同時に考えていかなければならない。
と申しますと、「今後の課題」のところで、この
規制プ
ログラムを、通りましてこれが実施された場合には、結果がどうなったか、経過と、それを見て手直しをするところがあるか、あるいはどの
ような影響が出てきて、ほかの、つまりそれを利用する人のまた
マイナス影響もあるかもしれません、結果としてそういう
行為が減ったかどうかということをきちっと評価していく必要があるということと、同時に、家庭や学校での教育で健全な
児童をつくるための方策もしていく、それが大事なことだと思います。
規制というのは当然一部、子供を守るための一部でございますから、同時に、ほかの教育的な配慮も今以上に強くしていく。
それから、三番目に書いてあります
大人の役割の自覚。相手側は大体
大人になる、低年化しているといってももう
大人でございますので、
大人がこれをやめればまずこういうことはなくなるということで、この際、
大人も姿勢を正すということ。それから、
大人の罰則の方ももう少し強化してもよろしいかと思います。
それと四番目に、先ほどのアンケートから見ましても、同世代のこういうことをしていない
児童、子供
たちの
意見というものが広がっていけば、そして、これは罰則によっていけないことだということが抑止力になりますと、全体的に数は減っていくだろう、そして、よい方を広げて悪い方を抑えていくということになる、そういう方法も教育分野の方で考えていくことが大切かと思っております。
以上、ありがとうございました。(
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