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大地参考人 大地でございます。
私のフィールドは
保険評論家となっているわけですけれども、主には
生命保険、これを約十年、いろいろな角度から
評論活動をさせていただいております。特にこういう場を設けていただきまして、ありがとうございます。
ちょっと
立場が違いますので、私なりに四点、今回の業
法改正について、違った角度から
意見を述べさせていただきたいと思います。
まず一点目なんですけれども、この業
法改正の生じた
理由、何でこういう業
法改正を行わねばならないという案が出たか。
これは、
ベースが、今、特に国内
生保十社、ここが非常に対象になっているかと思いますが、この十社がすべてこの案、いわゆる
予定利率の
引き下げが必要かということに関しましては、そうではない。俗に言えば、経営内容が甲乙丙丁あります。
その甲乙丙丁の厳しいところ、これはどういう経営を行ってきたのか。
例えば、バブルの真っ最中に
予定利率の高い
保険契約を大量
契約した。当然、バブルの最中で運用利回りがいいときは、これはどんどん
保険料収入がふえて、総
資産がどんどんふえていく。いわゆる新規
契約高競争、総
資産競争、この中では勝ち組だったかもしれないです。
ところが、バブルが崩壊しますと、これはもう言うまでもなく
逆ざやに苦しめられる。いわゆる利差損の発生です。となると、その穴埋めをせんがために
リスク性商品を大量に抱え込まざるを得ない。端的に言えば、株式に投入して利ざやを稼ぐ、あるいは外国証券に投入して利ざやを稼がなきゃいけない。
ところが、これはうまくいけば結果オーライだったんでしょうけれども、残念ながら、世の中の金融情勢は逆に走ってしまった。特にそういう二重の逆回転症状が起きた。さらに、そういう
生保においては、社内の改革、うちは健全なんだということを世間に、あるいは社内に広く知らしめるために、社内改革におくれをとった。つまり、この三重苦がどんどん回転していって、いわゆる経営体力がどんどん疲弊していった。
片や、その十社の中の甲乙丙丁のいい方は、バブルの真っ最中に、確かに高い
予定利率を標榜して
保険料を集め、総
資産をどんどん増加させることができたにもかかわらず、全く逆の商品、いわゆる定期性商品をどんどん販売した。当然これは総
資産もふえない。しかしながら、定期性商品を売ったがために、無理な運用をする必要が全くない、いわゆる
保険料率の基礎になる
もとが全く心配要らない。当然、こういう
生保は今でいうところの勝ち組
生保というふうに評されます。もちろん、無理な、
予定利率の高い
契約を集めなくてきた
生保は、無理な運用をしなくていい。そういう
生保が十社の中に複数あります。
やはりこの違いをまず前提としてとらえなければ、十把一からげにすべて国内
生保はそうなんだ、あるいは外資系
生保、これも全部が今
予定利率の問題とは
関係ないわけではなくて、やはりそれを内包した
生保もあります。だから、各社いろいろな事情がある。
では、その中で、その
生保のどこに
問題点があったのか、これを
分析しない以上、単に
予定利率を下げればいいではないか、これは、病気でいうならば、どこかから血が出た、とりあえず塗り薬を塗っておいて血をとめればいいじゃないか、ところが、開いてみたら内臓疾患でもう傷んでいたよ、当然これは命が助からない、こういう小手先の論法ではないかなというふうに私は考えます。
そして、二番目なんですけれども、
破綻処理、いわゆる
更生特例法、
保険業法のいずれでもいいんですけれども、それから今回の
予定利率の
引き下げ、この両方を比べますと、今回は三%に仮に下げたとしても、果たしてこれでその
生保が健全な
生保の仲間入りだというふうに
評価されるか。
例えば、
破綻した
生保の場合、当然
予定利率は下げます。過去例、七社ありますけれども、その大概が、それに
責任準備金の
カット、二社はゼロ%ですけれども、大半が
カットした。
それから、
早期解約控除。これは、営業再開後すぐに
解約に行かないように抑制するために、
解約返戻金を二〇パーとか一五パーとか
カットしていく。ちなみに、一番最初に
破綻した日産生命、ことしが
早期解約控除の最終年度になります。そういう手を打った。
さらに、
責任準備金の積み立て型。先ほどちょっとお話がありましたけれども、今、平準払いを前提としてやっているんですけれども、
破綻した
生保の場合は、
全期チルメル、いわゆる責準の積み立て方が一番少なくていいよ、こういう積み立て型にして、二重三重に二次
破綻がないような
仕組みをつくっています。
さらに、
破綻した場合には当然
スポンサーが入りますので、幾ばくかの資金投入を行います。当然この中には
基金であるとか
劣後ローンも入りますので、かなり経営体質としては強固になる。こういうことをやって初めて、二次
破綻、
破綻から次の
破綻は絶対ないんだよという烙印を押される。
ところが、たった、
予定利率を三%に下げて、しかも今の運用環境が三%を優に超える
状況ならいいですが、国債利回りが〇・五%の時代に、三パーになったからどこがどういうふうに安全なのか、極めて考えにくい。この辺を考えますと、
生保の健全性という問題からいきますと、単に三%に下げることがどういう問題を持つのか、こういう大きな疑問を持っております。
それともう一つは、
破綻処理生保と、それから
予定利率を
引き下げた
生保、そこの境界線は何なのか、どういう
条件なのか、これが全く見えない。つまり、どこのラインまで行くとこちらは
破綻で、どこのラインまで行くとこちらは
予定利率を三%に下げれば済むのか、この境界線が全く見えない。
それでは、単に下げればいい。これは
契約者はどうとるかといいますと、三%に下げた時点、これでこの
生保は安全だ、健全だととるか。私は、一〇〇%とらないと思います。しかも、
早期解約控除がありませんから、営業再開後、恐らく殺到するでしょう。それがどうなるかということは、私が
説明するまでもないと思います。
つまり、この
予定利率を下げるという案は、一回、
予定利率を下げるということで、
契約者に一つのショックを与えます。さらに、その
生保に加入している
契約者は、この
契約が
破綻するのではないかという不安を思いながら、毎月
保険料を払わなきゃいけない。結果として、これはわかりませんが、しかし、
破綻という結果をもし招いたとするならば、二重に
契約者は精神的ダメージを受けなくちゃいけない。
しかも、これが一社で済むか。悪い
意味のいわゆるビジネスモデルになりかねない。次はどこだ、次はどこだ、こういう
状況に追い込まれることが果たして是か非か。私は、これはとても賛成できない。
それから三番目なんですが、今言ったこととほとんど重複しますけれども、要は、今いろいろ言われている、単独個社で
引き下げをやりますよ、これはほとんど私は無理だと思います。これは今まで言った
理由と同じなんですけれども、強いて言うならば、どこかの
生保、健全と言われている
生保と統合して
救済の道を探すということになるかと思うんですけれども、これとても、
契約者の意思がどう動くか、非常にこれは不安定な話だと思います。
それから四番目、最後になりますけれども、まず、
金融庁でいろいろな資料をつくっていただきました。これを全体的に眺めますと、非常に資料として不足している。
例えば、どういうところが問題かといいますと、これはもう再三この場でも
議論になっていますけれども、いわゆる三%に下げた場合のシミュレーション、それから一・五%、いわゆる
破綻した場合のシミュレーション、ここに使われているデータが
一般の
契約者に一番マッチした内容かどうかということ。数字が云々というのはあえて言いません。
まず、ここの中に
個人年金保険が入っておりません。今回の
逆ざやの大きな
問題点は、商品としては
個人年金保険です。終身
保険とか養老
保険とかは、まだ
死亡率、いわゆる
死差益がとれます。
個人年金保険はこれがとれません。まさに
逆ざや問題の根幹をなす
保険商品です。これのデータが全くない。果たしてこれで論議をすること自体がいかがなものか。
しかも、この中には、
関係ないと私は思うんですが、定期
保険、三十年満期が載っています。定期
保険の三十歳加入の三十年満期という
契約者、どれほど実態いるのか。非常に微々たるものです。なぜならば、この期間に加入した
契約者の大半は、定期
保険は定期
保険特約、いわゆる定期つき終身
保険の定期
保険特約、これの十年更新型、もしくは十五年更新型、もしくは二十年更新型が大半です。つまり、データとして
実務性がないデータ、これを並べてどうのこうの言っても、非常に説得力が弱い。そういう面では、このいろいろな資料、つくるのが大変だったかと思うんですが、
個人年金保険の問題が一切触れられていないこと。
それから、ほかには、時間がありませんのでポイントだけ言いますと、平均
予定利率、これも非常に私はいかがなものかと思います。それと、あとまだいろいろ何点かあるんですけれども、これを
ベースにして論議される一番肝心な部分が欠落して、結果だけ、とにかく下げりゃいいじゃないか。まさしくこれは、
生保が
破綻してもらっちゃ困るよ、いわゆる、俗に言う
銀行救済、これが前提にあるのではないか、そういううがった発想を私は考えております。
まとめますと、私としてはこの
法案に当然
反対ですし、むしろ、この
法案が成立して、試しにやってみたらいいじゃないかということでもし実行されるとするならば、
生保としては全体的に信用を失うことと、それから日本の金融マーケットがどういう反応を示さざるを得ないかということは、間違いなく
契約者の
解約は急増します。そのときに
生保はどういう資金準備をすればいいのか。今ですら、現金
預金、コールローン、かつかつでやっています。ところが、それを準備しなければ
保険金を払えといっても払えない。
解約に行ったけれども
保険金はすぐ手に入らない。さらに、その相乗効果で、あそこの
生保は金がないんじゃないかというような風説が流布される。いわゆる悪循環になる
危険性が非常に高い。マーケットはそのときどういう反応をするのか、非常に私は危惧しております。
契約者に余計な心配をさせるような
法案には私は
反対であるということを述べさせていただいて、終わりにしたいと思います。御清聴どうもありがとうございました。(
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