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松原参考人 東洋大学の
松原でございます。
申し上げたいことが大きく分けて二つございまして、
一つは、この
法律案にかかわって、
住宅ローンに関する基本的な私の考え方をお話しさせていただきたいと思います。
それからもう一点は、この
法律案に則して、幾つかの疑問点、お願いしたい項目がございますので、それをお話しするという形でお話しさせていただきます。
お
手元に、私のホッチキスでとめた二枚紙、A4縦の
資料がございますので、それに沿ってお話しさせていただきます。
まず、
住宅ローンに関する基本的な私の考え方でありますが、
住宅ローンは、基本的に
民間の
金融機関が担うべき
業務である、まずこの原則であります。
しかし、従来、
民間の
金融機関では
提供できなかった
長期固定の
住宅ローンを、
住宅金融公庫が
提供してきたことにより、
国民の
住宅取得が促進された、この歴史的な経緯はきちんと評価しなければいけないと考えております。
その一方で、その
住宅金融公庫の
ローンがマーケットにおいてシェアが大変大きかった、オーバープレゼンスだったということが、結果的に
民間の
住宅ローンマーケットが十分に育たなかったというのも事実である。プラス面とマイナス面があっただろう、こういうことであります。
そして、
現状を見ますと、これは既にお二人の
参考人から御指摘があったように、
住宅の量的不足は基本的には解消した。一世帯当たりの
住宅保有率がもう一を超えておりますし、質の面においても、ヨーロッパ並みの大きさは確保できているという
状況、そして、
国民の不動産取得率七割という
状況をかんがみますと、
政府が
国民の
住宅取得を促進しなければいけない、そこにかかわっていかなければいけない、そういう政策目的自体が見直されるべき時期に今来ているだろう、こういうことであります。
ここで、私がお二人の今までお話しになった
参考人ともしかしたらスタンスが違いますのは、ただ単に
住宅金融公庫を通した直接
融資を見直せということではなくて、
長期固定、超
長期、
固定、
低利の
ローンの
提供のために
政府がかかわる、そのこと自体もやはり本当に必要なのかどうかを
検討すべきだという立場でございます。
それから二番目でございますが、
政府の
証券化支援
業務、本
法律案で規定されているそのような
業務がなければ、
民間は本当に
長期固定金利の
住宅ローンを
提供できないのか、ここをもう一度しっかりと
検討すべき必要があると思っておりまして、
寺西参考人からは、既に
UFJ銀行では三十年という
商品を出しているということであります。
超
長期の
金利スワップが本当に今できているかどうかは問題ではありますけれ
ども、
金利スワップなどの
金融技術の向上も当然勘案しなければならない。また、
住宅ローン証券化市場自体がもちろんまだ
日本では未成熟でありますが、しかし、
民間金融機関は最近の
経済情勢の中で
長期固定金利の
住宅ローンの比重を、これは変動
金利に対する比重を高めている。ということは、事実上、そのような
証券化市場がなくても
資金調達できているのではないかという疑問があるわけであります。
三番目でございます。
長期固定の
住宅ローンを
提供する場合に、これは今までは
住宅金融公庫がやってきた、今度は
証券化支援
業務を通してやっていこう、こういうことでありますが、そういう超
長期の
商品を
提供するときに、本当に、
住宅金融公庫がいわば財投債で
資金を集めて
提供した方が
経済的に見て合理的なのか、それとも、新しいこういうマーケットをつくって、
政府がかかわってやっていった方が合理的なのか、表面的にはどっちが
金利がいいんだ、こういう話になってくるわけだと思いますが、そのあたりの検証も不足しているのではないか。本当に
国民に対して超
長期の
固定の
ローンの
提供が必要だとしたら、もしかしたら
住宅金融公庫をなくさない方がいいのかもしれない。そのあたりの検証が本当にできているのかという疑問がございます。
それから、四番目でありますが、
国民全体に対する
住宅取得支援は、先ほど申し上げましたように、基本的には必要性を失った、
政府がそこにかかわる必要性は失ったと私は考えておりまして、
民間でできることは
民間でという構造
改革の本旨からすれば、
住宅金融公庫の
改革は、形式的に公庫を
廃止して、
長期固定の
ローンを維持すべく
証券化支援
業務を独立行政
法人で継続するということではなくて、そういった
業務自体から
政府の
関与を減らす、そのことが、
民間でできることは
民間でということになるのではないかと私は考えているわけであります。
その上で、
政府がなすべき
住宅取得支援とは何かというと、やはり、
民間の
金融機関の融通が困難な、例えば低所得者層などに対象を限定すべきであると私は考えておりまして、さらに、その際も、
金融公庫のような、あるいは今後できる独立行政
法人のようなものを通した直接
融資が必要なのか、それとも、税制等によって、
ローン減税などによって対応すべきかは慎重に
検討すべきだ、こういう立場に立っております。
以上のような視点に立った上で、今回出てまいりました
法律案についての、具体的な、私が感じた
問題点についてお話しさせていただきたいと思います。
まず、第一番目であります。
今回の
スキームができ上がりますと、
銀行などの
民間の
金融機関は、
住宅ローンについて、
住宅金融公庫の
証券化支援
業務による
ローンと、それから
銀行独自の
ローンの二種類を当面
提供することになる。もちろん、
商品自体は物すごくいっぱいありますけれ
ども、大きく分けるとこの二つになる。
そうなると、
住宅ローンを受ける側に対して、1の方の公庫の支援化
業務による
ローンを
提供するのか、
銀行が独自に持っている
商品を
提供するのかという判断を、
銀行の窓口にその判断がゆだねられるのか。特に、1の方の
資金枠、これは公庫の
証券がどれだけ売れるか、今次は二千億円でありますけれ
ども、そちらの枠が限られているとすると、1の方をどうやって選別するのか。1が外れたものに対して、2を
提供するのか。このあたりの
スキームをしっかり
検討していただきたい。
私が懸念するのは、相当条件が違う二つの
金融商品は、やはり
ローンを受ける側にとってはどちらになるかは大変大きな選択になりますから、そこが不利益がないような形で本当に実施されるかどうかの担保が必要だということであります。
さらに言えば、
住宅金融公庫の直接
融資が
廃止されるまでは、そこに公庫の直接
融資がかかわるわけでありますから、そうなりますと、
住宅ローンのマーケットに三つの異なる
商品が出てくる。支援化
業務の
ローンと、それから
銀行の独自
ローン、それから
金融公庫の直接
融資、こういう三つの
ローンの
商品が同じマーケットの上に上手に共存して乗れるのか。そのことに、
国民の間に何らかの利益、不利益が生じないのか。
私の直観でありますけれ
ども、恐らく、公庫の直接
融資は二%台前半ぐらいだろう。そして、
証券化支援
業務ですとそれよりは恐らくプラスになる、もしかしたら三%近くになるだろう。そして、
銀行の直接の
ローンが四%前後だとすると、マーケットに二%、三%、四%という三つの
住宅ローンの
商品が出てくる。これが上手にうまく
機能できるのかというところは、やはりこの
法律の
スキームの中でしっかり担保していただきたい、こういうことであります。
それから、三番目でありますが、
我が国では
住宅ローンの
証券化のマーケット、
市場はほとんど育ってこなかった。このため、
市場がある
程度機能するまでの間、
政府が
証券化支援策を行うことは一概には否定できない。そういう
スキームで今回の
法律案が出てきたわけであります。しかし、この支援制度が
長期に存続するようなものであれば、未来永劫、
日本では本来の
住宅ローンの
証券化マーケットは形成されないことになる。
そうすると、
銀行などの
金融機関は、
住宅ローンに関しては、みずからの責任で
資金を集め、
融資して、そして回収するという本来の
金融業務から離れて、
証券化支援
ローンのサービサーフィーを稼ぐだけの
機能を果たすことになりかねない。これは
銀行の本来の
金融機能を十分に発揮させることにはならないのではないか。その
意味で、私は、この
証券化支援
スキームの時限を明確にすべきだ、このように考えているわけであります。
先ほど申し上げましたように、例えばこの
スキームで
提供できる
長期固定金利が三%ぐらい、
銀行が独自にやるのが四%だとしますと、この三%が将来的に
規模が物すごく大きく、大量に
提供されるということになると、
銀行は
住宅ローンにみずから
資金を集めて
提供するという道が閉ざされるのではないか、こういう危惧を抱いているので、こういう
政府の支援
スキームの時限を本
法律案で明確に規定すべきだと思っております。
それから、四番目でありますが、現在の
住宅金融公庫の直接
融資では、年収による
金利格差が設けられております。要するに、年収一千二百万とか、給与所得者ですと一千四百万ぐらいですか、そこで条件が変わる。要するに、
政府が
住宅を支援する以上は、無条件に富裕層に対して支援するわけではないという理念がある、こう見ているわけでありますが、それが、今回の
証券化支援
業務に関しましては、基本的には年収による制限が外されているわけでありまして、本当にそれでよろしいのかというところをやはり本
法律案においてしっかりと議論すべきだと思っております。
そして、
最後でございますが、
日本政府の
国民の
住宅取得支援をどう行うのかという議論が必要だということは最初に申し上げました。しかし、現実には、この新しい制度とともに、既に都市基盤整備公団がございますし、都道府県には
住宅供給公社がございます。それから、税制上の
住宅ローン減税等がございますので、
政府が
国民の
住宅取得を支援するということであれば、やはり、その全体、自治体がやるもの、賃貸になりましたけれ
ども、都市基盤整備公団がやるもの、それから
ローン税制、こういう地方を含めた
政府の政策全体の整合性の中で本
法律案は議論すべきだ、このように思っているわけでございます。
以上です。(
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