○織方
参考人 織方でございます。
三十年ほど
道路公団に勤めた後、今評判の悪いいわゆる関連企業に十年ほど勤めました。二年ほど前から、
道路利用者の視点に立って
有料道路問題を考えようということで、
有料道路研究センターの活動を始めておるものでございます。
本日提案をされております
最初の
本四公団の
負担軽減に関する
法案でございますが、これについては、次の二つの理由から反対でございます。
第一に、
本四公団の経営が破綻していることは明らかでありますが、しかし、
本四公団がどうしてこのような危機的な
状況に陥ることに至ったのか、その原因と
責任を明確にしないまま救済策を講ずることは、現在の
有料道路制度に内在する構造的欠陥がそのまま温存され、将来に禍根を残すことになると考えるからであります。
第二に、現在の
本四公団の収支
状況から見ますと、現在実施しようとしている一・三兆円程度の
債務の
切り離しでは抜本的な問題の解決にはならないと考えるからであります。
十三年度の
本四の
収入八百五十億円に対しまして、
管理費は二百五十億円、
民間企業仮定の損益
計算書による減価償却費が五百四十億円でございますから、合わせて支出は約八百億円になるということを考えなければいけません。そういたしますと、金利
負担の余力はほとんど残されていないわけでありまして、したがって、少なくとも三兆円以上の
軽減策を講じない限り、自立可能な抜本的な経営改善にはなり得ないと考えるからでございます。
現在、
本四公団を含め
道路四
公団の
資産、
負債を一括して保有
機構に移す案が検討されております。この案は、いわば四
公団をどんぶり勘定にして、
道路公団の黒字で
本四の赤字も埋めようというのが基本的な発想ではないかと理解しておりますが、
道路公団自体の経営実態すら明確になっていない現時点で、余りにも安易な救済策であると言わざるを得ないわけであります。
それでは、どうすればよいのかという対案について御説明をいたします。
冒頭申し上げましたとおり、
本四公団は既に破綻しているわけでありますから、一刻も早く
民間企業の破産
処理に準じて思い切った
債務の
処理を行い、
有料道路として運営可能な額まで
負債を
軽減した上で、新しい経営主体に引き継ぐべきであると考えております。
新しい経営主体については、
民間企業も含め、幾つかの選択肢があると思います。
本四、三ルート一体とする必要はなく、例えば、しまなみ海道については広島、愛媛両県の
道路公社に引き継ぐなどということも考えられます。このルートの
中間部分は、歩行者、自転車、耕運機な
ども通る島民の生活
道路でございますから、
高速道路と一体として取り扱うことはどだい無理があり、早い
機会に
無料開放することが望ましいと考えております。
新しい経営主体の決定に時間がかかるようであれば、破綻
処理を早急に行うために、暫時、
道路公団への仮預けということも可能であろうと考えております。
次に、直轄
高速道路に関する
法案についてでございますが、この
法案についても反対でございます。理由を四つ書いてございます。
第一に、
民営化委員会の
審議の中で、
採算性だけでなく、
費用対
効果に加え、住民生活や
地域経済への
効果にも配慮して
高速道路建設の
優先順位を決めることになっておりますが、その具体案ができたとは聞いておりませんし、まして、最終的に新
会社がどこまで
建設できるかは、これは新
会社が自主的に
判断すべきことでありますから、現時点では
新規建設区間は全くわからないと言っていい
状況でございます。
このような段階で直轄の
高速道路の
建設を始めますとすれば、これは、
採算性、
費用対
効果、外部
効果のいずれの点でも、はしにも棒にもかからない区間から着工されることになる危険性が非常に高いということが危惧されるわけでございます。
これは、必要性の乏しい
道路の
建設にブレーキをかけようという
行政改革そもそもの理念に著しく反することでございます。
第二に、直轄で
建設された
高速道路は、
無料道路として国が直接
管理する
方針だと伺っておりますが、従来から、
高速道路は一般
道路に比べて格段に高い交通サービスを提供するものであり、
有料道路の
通行料金は鉄道の特急
料金に相当するものだという趣旨の説明が一般になされてまいりました。
一方、
高速道路は
有料だという点については、幸いにも広く
国民から御理解をいただいていると思う次第でございます。
それが、同じ
高速道路でも、国がつくれば
無料、
公団、
会社がつくれば
有料ということになりますと、混乱が生じますし、現在営業中の
高速道路の中にも
料金徴収経費さえ賄えない区間もあるわけでありますから、これらとの公平性をどう考えるのかというような矛盾が出てまいります。
私は、
有料道路制度というものは、正しく運用される限り、極めてすぐれた
制度であり、正しい形で今後とも存続させることが望ましいと考えております。
資料にIBTTAのゼア・アー・ノー・フリー・ローズという標語を引用させていただいております。世界
有料道路協会というのは、世界じゅう二十六カ国の
有料道路関係公団及び関連企業が参加している国際機関でございますが、これは平たく訳しますと、世の中にただの
道路はない、どんな
道路もだれかが何らかの形で
費用を
負担しているものだという趣旨でございまして、
有料道路は、本来、自分が利用する
道路の
費用は自分が
負担するという利用と
負担の関係が極めて明確であるという点で、極めて合理的なシステムであるということを強調しているものであります。
残念ながら、日本の現状では、
プール制の範囲が野方図に拡大されてしまい、東名の利用者が北海道の
費用を
負担しているというようなことが
道路公団問題の根源になっていると考えますし、こういう点を改めていくのが今回の
改革の趣旨であろうと思っております。
第三に、十年ほど前から
合併施行方式による
有料の自動車専用
道路の
建設が盛んになってきております。国が特定
財源で
道路の相当部分を
完成させて、残りを
道路公団が施行して
有料道路として
管理する
方式でありまして、通称、薄皮まんじゅうの表面の薄い皮ということをもじりまして、薄皮
有料道路と呼ばれております。既に営業中の薄皮
道路で見ますと、国の
負担割合は平均で六二%、一番多いところでは九八%にも達しております。
自動車専用
道路は
有料にしておくことが望ましいという
道路局のお考えが基本にあって、国交省が施行したものを途中から
公団にバトンタッチされているということも見聞いたしております。
もし、この
方式、つまり直轄高速についても、でき上がってみたら
有料道路だったという形にすることを考えておられるのであれば、
最初から直接、
公団、新
会社に
負担金を投入する
制度に改める方が、事業執行の統一性、効率性の観点から望ましいと考える次第であります。
以上のようなさまざまな点を明確にしないまま、
会社が
建設できそうもないからおれたちが直接やるというのは、いささか乱暴ではないかと感ずるところでございます。
そもそも、少々言い過ぎかもしれませんが、国交省は行政官庁として政策の立案、指導監督等に専念されるのが本筋でありまして、監督の
対象である
公団、
会社あるいは
地方自治体と同じレベルで現業を持っておられること自体が、行政効率化の観点からも見直すべきではないかと考える次第であります。
対案として、三つ書かせていただいております。
第一は、高度成長期に策定された一万一千五百二十キロメーターの高速自動車
国道計画そのものを見直し、その一部を一般
国道自動車専用
道路に変更すべきではないかということであります。
第二に、従来の
高速道路の
整備手法では、
出資金以外は全額金利のつく資金が使われてまいりました。この点を改め、
有料道路として
建設される場合であっても、国及び
地方が
費用の一部を
負担する
制度の改正こそが望ましいと考えます。
有料道路利用者が納入しておりますガソリン税などは二重
負担に相当すると思われますので、この点についても改める必要があると考えるからであります。
最後に、薄皮
有料道路ですとか、あるいは高速自動車
国道に並行する自動車専用
道路などという、非常にわかりにくい、複雑怪奇な
建設方式の原因になっていると思われますのが、
公団と
道路局の現業組織の並立であると考えます。この点を改め、これを一元化することを御検討いただいたらどうかということを御提案申し上げたい次第でございます。
このことは、行政組織の簡素化にもなりますし、また、民営
会社になれば、現在の
公団のような膨大な
建設部隊は維持できなくなるはずでございますので、この提案は有効ではないかと考える次第でございます。
以上で私の陳述を終わらせていただきます。(
拍手)