○城島
委員 大臣、ここも、だから、申し上げないけれ
ども、今、
判決文をお読みになりましたよね。解雇権濫用法理とは一体何ですかと僕は聞いたんです。
いや、私も門外漢ですよ。でも、本当に調べて、勉強させていただきましたけれ
ども、解雇権濫用法理のへそは何だというと、実は、今おっしゃった
部分はそれは
判決文であって、それは
基本的には、一言で言うと、最も重要なことは、使用者が、客観的に合理的な理由ですよ、実はここが大事なところで、使用者が客観的に合理的な理由と
社会通念上の相当性について
主張、立証を尽くす必要があって、客観的に合理的な理由なんです、これが欠けているんじゃなくて、使用者が客観的に合理的な理由と
社会通念上の相当性について
主張、立証を尽くす必要があって、実は大事なのは、この点について裁判官がグレーの心証形成しかできない場合は、使用者は敗訴するということが解雇権濫用法理のへそなんですよ。これが本質なんですよ、ここが。判例文じゃなくて、それが一体何を指しているかというと、そういうことなんです。
したがって、さっき読み上げたじゃないですか。越山調査官の中にも、これは正当事由説を裏返したようなものだと。これは一番わかりやすい解説かもしれない。それは何かというと、使用者が客観的に合理的な理由と
社会通念上の相当性について
主張、立証を尽くす必要があって、やはり
法律ですから、裁判官が何をもって
判断するか。解雇だから、ゼロか百かということはあり得ないわけですね、
大臣。これは、一方的にどっちかが正しくてどっちかがゼロということはあり得ないから、それは難しいわけですよ。
そのときに、やはり裁判官ですから、きちっとある
法律に基づいてそれを
判断するというときに、今言った点が大事、使用者に合理的な理由があるのかと。いわゆる逆説的に言うと、合理的な理由がないということを
労働側に証明責任を求めるんじゃなくて、合理的な理由があるかどうか、
社会通念上相当かどうかということを、一生懸命
主張立証活動をどんどんさせる、すなわち
現実的には証明責任ということになるわけですけれ
ども、そのことによって裁判官の心証がどうもグレーだなといったら、これは使用者側が負ける、これが解雇権濫用法理の骨子なんですよ、実は。
私は、そういう点からいうと、この
問題点、今回の第十八条の二の
問題点を申し上げますと、時間がないので骨子だけ申し上げますが、形式的証明責任は
労働者にあり、実質的な証明責任、これは最近、ここも僕は問題あると思っているんですけれ
ども、厚労省は
主張立証活動というふうに表現を去年からことしになって変えられているんですけれ
ども、それは後で論議になるとすればちょっとやりたいんですけれ
ども、実質的な証明責任は使用者にあるという、判例法理で確立した、今申し上げた解雇権濫用法理が条文化されていないということなんです。この条文は完全に、だれが見ても、これは素人が見ても、証明責任は
労働側にあるということに尽きるわけですね。
二番目。
審議会で
厚生労働省と公益
委員は、解雇権濫用法理について、実質的な証明責任は使用者だと実は説明をしているんだ。
それから三番目が、しかし、条文では、
労働者が証明責任を
負担することだけが明確になっているんですね。実質的証明責任を
主張立証活動ということにどうもちょっと矮小化した上に、これをどのように行わせるかは裁判所任せだという。これは、私の
質問主意書に対する、その
判断は裁判所だという内閣
答弁。
ポイントでいうと、この三点に、私はこの解雇権濫用法理の
部分、出口の問題についてあるというふうに思っています。
政府案は、これはどう読んでも、率直に言って、解雇自由説ですね。まず本文が明確に、「使用者は、」「解雇することができる。」ですから。これは本文。解雇自由説。条文の要件と効果の間に、すなわち、「できる」とか、あるいは要件の中に権利濫用という言葉が入ってくるわけです。そのために、形式的な証明責任が
労働者にあるという解釈しかできないわけですね、これは、どこを読んでも。したがって、証明責任がどこから見ても
労働側にある。それを、先ほど言った、転換する、すなわち使用者側にその証明責任を転換するのは立法者意思だと、どうもこういうふうにおっしゃっているわけです。
解雇権濫用法理というのは、先ほ
ども言ったように、一番大事なのは、実質的な証明責任を使用者が負っているということなのであって、それを明らかにしなきゃならないんです、立法者意思じゃなくて、条文に。条文として、実質的な証明責任を使用者が負っているということを明らかにしたときに、初めて足しも引きもしないことになるんですよ、
大臣。足しも引きもしないというのは、一番大事な証明責任が実質的に転換しているということをあらわす文章にしなければ、足しも引きもしないどころじゃない、引き算しかない。
入り口
規制も取っ払って、今度はこの条文も、実質的な証明責任は、とにかく、こういう
答弁でとか、あるいは通達でもいいや、何とかその立法者意思——この論議で、いや、そういう思いはない、
大臣も一生懸命本
会議で、そういう意図はない、そういう考えはない、それはそのとおりだと思いますよ。それはそのとおりだけれ
ども、それは民事法ですから、これは裁判官は、先ほ
ども言ったように、憲法と
法律に忠実でなきゃならない、それに拘束されるわけですから。それは独立したものですからね。
それは、
行政法なら立法府の意向を縛ることは可能ですよ。だけれ
ども、立法者意思でなければ転換できない、この一番大事なところは、立法者意思に頼っているという、これは引き算ですよ。引き算以上ですよ、これは。足しも引きもしないというどころじゃなくて、ここに一番問題がある。
資料十五ページ、おあけいただきたいと思いますが、最
高裁が、「説明として解雇権の濫用という形をとっているが、解雇には正当な事由が必要であるという説を裏返えしたようなものであり、」先ほど読み上げたところと同じですが、「実際の適用上は正当事由必要説と大差はないとみられる。」と語っているのは、実質的な証明責任を使用者に負わせているからなんですよ、
大臣。実質的な証明責任が一番大事なんだ。
ところで、二十九ページをおあけいただきたいと思いますが、十二月十七日の第二十七回
労働条件分科会における
議論で、これはインターネットの中に、厚労省のホームページに記載されておりますが、次のようなくだりがある。これは
審議会のあれです。
大事なので、ちょっと急ぎ足で読ませていただきますが、
労働委員、
ここで一番の心配は、正当な理由が、解雇をした側、いわゆる使用者側に立証責任、挙証責任があるのか、あるいは不当だと言っている
労働者側が、これは不当だよ、あるいは正当ではない、というのを立証しなければいけないのかというのが大きな争点になってくると思うのです。
今の論議です。
そういう意味では、○○
委員がおっしゃった見解の中で、自明であれば、「
労働者が解雇ができるが」
これはもともとは「できる」で丸じゃなかったんですね。「できるが」で続いているわけでありますが、
自明であれば、「
労働者が解雇ができるが」というのは外してもいいだろうと思います。また、その立証は使用者側に、これで負わせることができるのかどうなのか先生の
意見をお聞きしたいと思います。
今の
質問を公益
委員に聞かれている。公益
委員と思われる方が、
民法では、「当事者が解約の申入れをすることができる」となっていて、解雇と退職がいっしょくたになっているわけです。特に使用者側の解約について、正当な理由が必要である、そうでないと客観性合理性が認められませんよ、ということを書くためには、民法の解約という中から解雇を取り出して、それについて正当な理由がなければ権利濫用として無効になるというふうに、
一つの完結した文章にしなければ、前提を省略しろというのは、ルールの全体像としておかしいような気がしているのです。
それから
ここです。
立証責任の問題ですけれ
ども、権利の濫用については、濫用を
主張する側が一応立証する必要があるだろうと思います。つまり、
労働者が、自分はこういう理由で解雇されたけれ
ども、その覚えはないと。しかし、それは一応の立証で、
「一応の立証」、ここが大事ですね。
実質的には正当な理由に基づくものだということを使用者が具体的な事実や理由を挙げて、
主張立証しなければ濫用の推定が働くということに当然なっていくわけですので、実質的な
主張立証の
負担は、やはり解雇権者
すなわち使用者ですね。
やはり解雇権者の方が負うことになっていくだろうと。
そして、もう一人の公益
委員と思われる人も、
私も同じ
意見ですが、三頁に書いてあることは、現在の判例法理をそのまま条文の形でルールの透明化を図る、ということで盛り込もうとしているわけです。現在の裁判実務における立証責任は、もちろん権利の濫用は、濫用を
主張する方が
主張立証するというのが民法上の原則ですが、こと
労働関係について解雇の濫用を争う場合には、濫用だということを
労働者の方で
主張すれば、それが濫用に当たらないということを使用者が立証する、これが現在のほぼ確立した判例の取扱いでありますので、この文言はそれを踏襲するという立法者の意思で書かれているということです。
労働者の方で、これは濫用に当たる、ということをすべて立証しなければいけないという解釈には、この条文はならないと考えております。
公益側の先生方と思いますけれ
ども、使用者の実質的な立証責任についてはっきり述べております。
厚労省にお聞きします。このお二人の認識は正しいんでしょうか、間違っているんでしょうか。