○東(祥)
委員 要するに、
プライバシーの不当な侵害が、とりわけ今の激変する状況の中で起こりやすくなってしまっていると。
先ほど来いろいろな
方々が御
議論されているとおり、十年前に比べるならば、今、IT革命という名のもとに、またインターネットが普及することによって、大量の
情報が、
個人にかかわる
情報が一瞬にして多数の
方々に伝播されていってしまう。そういう状況の中で、
個人の
情報というのをどういうふうに守っていったらいいのか、そこに不当な侵害があった場合どうしたらいいのか。不当な侵害というのは、なかなかこれは定義するのはまた難しいんだろうというふうに思うわけでありますが、多分、それをどのように守っていったらいいのかという話なんだろうと思うんですね、抽象論で言えば。
問題は、そういう
個人の
情報を、今度、当事者以外で
利用する事業者がある。
報道機関も含めた上で、あるいはまた
行政機関も含めた上で、それを
利用する
方々がいらっしゃる。その
バランスをどういうふうにとったらいいのかというのが、多分最大のポイントなんだろうというふうに思うんです。
そこで、また基本的な
質問なんですけれ
ども、私はこの
法案を読んでいて、どうもしっくりこないところがあるのであります。それは何かといいますと、まず、
個人の
情報を最も
利用するところというのはどこなのかといえば、それは行政なんでしょう。他方、商業を
目的とする、商業上の
目的を持つ事業者がいる。それに対しての規制というのもちゃんとできている。さらにまた、
報道機関を初めとするいわゆる
義務規定除外の
団体、これも
個人情報というのを物すごく扱っているわけでありますね。それと同時に、もう
一つの第三者の
個人が、いわゆるインターネットを使って大量の
個人情報をいろいろな形でもって流すことができる。
では、それに対して一体どうしたらいいのかという話であるにもかかわらず、いわゆる
社会的な影響力を持っている
報道機関、これのいわゆる過熱
取材というのがございますね。そういう問題を通じて、不当に
個人の
プライバシーが侵害されている。こういう問題に対してはぽっこり抜けてしまっているんじゃないのかというふうに思えてならないのであります。
つまり、二〇〇一年十二月二十日に、民間放送連盟がいわゆる
自主規制をしているわけですね。集団的過熱
取材という新しい用語で
自主規制をしているんです。
集団的過熱
取材とは何かというと、これまではマスコミの殺到あるいは集中豪雨的
取材あるいは
メディアスクラムなどと種々呼ばれてきた用語であります。何を
意味しているかというと、大きな
事件、事故の当事者やその
関係者のもとへ多数の
メディアが殺到することで、当事者や
関係者の
プライバシーを不当に侵害し、
社会生活を妨げ、あるいは多大な苦痛を与える状況をつくり出してしまう
取材、これはやめましょうという
自主規制が行われてきたわけであります。
ここにいらっしゃる
方々は
皆さん全員御存じのことだと思いますけれ
ども、例えば九八年の和歌山カレー毒物混入
事件、九九年の埼玉県桶川の女子学生ストーカー殺人
事件などを経て、過熱した
取材ぶりに対する世論の批判が先鋭化。そして、二〇〇一年、事態は急速に進んでいった。二月に、有名女優の次男の覚せい剤取締法違反容疑の裁判をめぐる混乱で
弁護士が民放連に厳重抗議、三月には、HIV訴訟の安部被告の公判を前に初めて
取材規制の仮処分が申請された。さらに、六月には、大阪教育大学附属池田小学校で、児童八人が殺害される惨事が発生。このときは、児童へのインタビューに視聴者から抗議が殺到、その後の被害者、遺族への
取材にも、学校や警察から強硬な自粛要請がなされた。こういう一連の
事件があったんだと思うんですね。
多分こういうものを背景にして、さきの旧
法案というのは、多大な被害を受けている
人たちもいる、そういうことで何かしなくちゃいけないだろう、そういう要素もあったんじゃないかというふうに僕は思うわけであります。
しかし、その後、今申し上げましたとおり、こういうものをもとにした
自主規制、いわゆるルールがあるにもかかわらず、例えば最近の例で言えば、御記憶だと思いますけれ
ども、いわゆる拉致被害者に対する
報道でそのルールが破られるということもあった。
最も
社会的な影響力を持つ
報道機関、それに対して
表現の自由を侵すことはできない。憲法上もその
部分は明確になっている。しかし、現実の問題として、そういうことに対して政府は一体どのように
考えているのか。
最も
個人情報を扱うそのものが、結果として種々の不当な
個人の
プライバシーの侵害を起こしているというものがある。それがどんどん積み上がってきている。そういうものに対して、この
法案を見る限り、
個人の
情報がちゃんと守られているというふうには私はどうしても思えないのであります。それは、
野党の
法案に対しても私は全く同じものを感ぜざるを得ないんです。
つまり、今回出されている
法案というのは、
個人情報を扱う極めて重要な
対象の一
部分がぽっかり穴があいちゃっているんじゃないのか。それに対して、今後政府としてどのようにお
考えになっているのか。今回出されている
法案に、
個人情報に対する
保護にかかわる問題として全部入っているのか。
先ほど片山
大臣が言われたとおり、制度として完璧なものはない。しかし、その制度の中に、今僕が申し上げた
部分というのはすっぽり抜けちゃっているんじゃないのか。それをただ単に
自主規制という名のもとに言っているにすぎない。それは、問題が山積しているにもかかわらず、問題が所在しているにもかかわらず、その問題に対して何ら政府として手を打っていない、そういうことなんじゃないのか。その辺の整理をどのように
内閣としてお
考えになっているのか、その基本的な
部分をまずもってお聞きさせていただきたいというふうに思います。