○
増田参考人 おはようございます。
岩手県知事の
増田でございます。
きょうは、この
憲法調査会におきまして
発言をいたします機会をいただきまして、光栄でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
お手元に
レジュメをお配りいたしておりますので、順次、その順番に従いまして話を進めていきたいと思います。
北東北三県、
青森県、
秋田県、
岩手県で、最近かなり多くの広域的な
連携事業を進めているところでございます。こうした
事業でございますけれども、実は、この
北東北三県というのは、
人口や
経済力などがかなり似通っているというところにまた
連携が進んでいく素地があるのではないか、このようなことも考えております。
例えば
人口でございますが、
青森県が今百四十七万人ほど、それから
岩手県が百四十一万、
秋田県が百二十万弱でございます。それから、県内総生産で見ますと、これは
岩手県が四兆九千億ほど、それから
青森県が四兆七千億ほど、
秋田県が三兆九千億弱でございます。
平成十二年の数値でございます。ということで、かなり三県が似通った
人口や
経済力がある。これでどこかの県が突出して大きいでこぼこがございますと、なかなか組み合わせとしても難しいところがあるかもしれませんが、三県かなり似通った
経済力あるいは
人口などがございます。
しかし、そうはいいましても、従来は、これは
全国どこの県もそうだと思いますが、やはり県の
行政というのは
東京の
中央省庁ばかり見て
行政をしておりましたので、
余り、隣の県だということではございますが、隣県と
協力して
行政を行っていくというような、そういうことはございませんでした。
実は、最近進めております
連携事業も、
平成九年に、三県の
知事が集まりまして
知事サミットを
開催したわけでございます。
テーマは
観光ということで、第一回目の
知事サミットを
開催いたしました。
観光事業については、三県で
共通して取り組む
課題が多いのではないかということで、この
観光を
テーマに
サミットを
開催したわけでございますが、これを
皮切りにさまざまな
連携事業が進んでいったというような
状況でございます。
実は、ちょうどそのころでございますが、
岩手県で、
福岡の方にいわゆる
物産販売の
アンテナショップをつくろうということを
計画してございました。また、あわせて、
福岡を
中心とした
九州の方からもっと
観光客を
誘致したいということで、その誘客も含めたいわゆる
県外事務所を
福岡の
博多に設置しようということで
計画をしておりましたけれども、
岩手県の
財政状況を考えると、年間大体五千万ぐらいは出せるだろう、それから
職員も二人は
現地に派遣できるだろうということで、物件を探したんです。そうしますと、裏通りの方のビルの七階か八階ぐらいにしか
場所が借りられないということがございました。
青森県さんが、ちょっと前に、もう既に同じような、少し裏の方でございましたが、
事務所を設置しておりました。それから
秋田県は、これからやはりそういうことを考えてもいいというような
状況でございましたので、私も、両県の
知事さんに話を持ちかけまして、ぜひここは三県で
共同で設置をしましょうということを持ちかけたわけでございますが、三県の方でもすぐに快く引き受けていただいて、
おかげさまで、
博多の天神の一等地の、目抜き通りの一階のところに大変いい
場所を借りることができました。三県の
物産、
特産品をすべてそろえておりますので、行きますと、私が見ましても
大変迫力のある
アンテナショップになってございます。
それから、
九州あたりから
北東北の方に
観光で来られる
お客さんは、
岩手だけに来られるという方は非常に少なくて、やはりかなり
旅行商品お金がかかりますので、せっかく
岩手に来るのであれば
青森の十和田湖の方もあわせて見ようとか、幾つかの県、
複数県を連ねてお帰りになる方が多いわけでございますので、
旅行会社にそうしたツアーの
パッケージ商品を随分つくってもらいまして、それを向こうの方で発売しましたところ、
お客さんにも
大変好評でございます。
これは、例えば
仙台から
観光客を
北東北三県が
誘致をする、あるいは
東京から
誘致をするというときは、やはり
お互いの県が競争し合って、それで
お客さんを
誘致するんですが、
九州、大変遠いところからというときには、むしろ
協力した方が全体のパイが広がるのではないか、そんなことも基本的には考えていたわけでございます。そんなことで、三県やってみて、大変これはよかったなということが実感でございました。
先ほど言いましたように、
平成九年の
知事サミットと申し上げましたが、この
サミットのときに、
サミットの
成果として、
福岡の
事務所は三県統合してつくろうということを
サミットの
結論にして、実際に
オープンしたのは、少し
準備期間がございましたので、
平成十一年の二月の初めに
オープンをいたしたわけでございますが、これで私ども、三県で
協力して行うことのよさというものを大変実感したわけでございます。その後、
サミットの
テーマを
環境ですとか教育ですとか、いろいろ変えて毎年実施をしているわけでございますが、
おかげさまで、随分三県の
連携事業が進んできております。
例えば、先ほど言いましたような
事務所の
関係でございますと、
北海道にやはり三県で個別に
事務所を出しておりましたが、昨年の四月にこれは
一緒にいたしました。ことしの四月からは、
大阪事務所、
名古屋事務所も全部三県で
一緒にしようということになっております。それから、
大阪にはまた同じような
アンテナショップを三県
共同で出して、
関西方面に大々的なセールスをしようと思っております。
それから、昨年の秋に
ソウルに
海外事務所をつくりまして、韓国からの
観光客を大幅に
誘致したいと思っておりますが、これは
北海道も入っていただいて、四
道県でつくりまして
大変好評でございます。
北海道も入ったことでさらに
迫力が増しまして、
ソウルで
オープンのときに、我々、
現地に四
道県の
知事が行きまして、
金大中大統領などにもお目にかかりまして随分宣伝をしたんですが、随分注目をされました。ことしの四月には、シンガポールの
事務所もそういうことで四
道県ということになっております。
そのほか、
科学技術、これは青少年の
科学セミナーを三県で
開催してございます。
環境分野では、例えば小学校五年生に配付する
環境副読本を三県
共通で作成して配付しておりますし、
子供環境サミットも三県
持ち回りで毎年やっております。
情報発信の
分野では、
みちのく夢ネットというもので
物産情報、
産業情報などを
共同で提供してございます。
観光分野は、今言いましたようなことがございますし、そのほか
外国人観光客の
誘致とか、
受け入れ体制の
整備などを三県
共同で今考えております。
農林水産分野では
食農フォーラムを
持ち回りで
開催したり、
あと、
伝統文化の
分野では、
子供伝統芸能の、やはり三県で
持ち回りでの
開催をやったり、スポーツでは、剣道を初めとする武道などの
一流選手、なかなか各
県単位だと呼べないんですが、
一流選手を三県で
共同してお呼びして、
子供たちに集まってもらっていろいろけいこをつけてもらったりということで、
平成九年の
サミットを
皮切りとしたさまざまな
成果が、
レジュメに「二十
事業以上」というふうに書いてございますけれども、大変広がっているということでございます。
特に、最後のところで「
産業廃棄物税」と書いてございますが、これは、昨年の十二月の三県の
議会でそれぞれ全く同様の
内容の
産業廃棄物税の成立をお認めいただきました。それから、
県外から
廃棄物が持ち込まれるときの
事前協議制と、それから
経済的な負荷をかけて
協力金をいただくという
制度をあわせて組み入れてございますが、これも三県全く同じ条例で、
議会の方でお認めをいただいて成立させていただいたところでございます。
ここに「意義」というふうに書いてございますが、初めはそういうことで、
スケールメリットの追求からこうした
連携事業を始めたわけでございます。ちょうどそのときに五全総の方でも
地域連携軸の展開を
地域づくり戦略の
一つにする、こんなようなことがあって、こうしたことも踏まえながら
連携事業を始めたわけでございますが、なかなか
経済状況も厳しい中で
資源をもっと有効に生かしていく必要があるという
問題意識もございましたし、そういう
スケールメリットを生かして、
地域の
経済的、文化的な
自立性を確保したい、各県がばらばらに
対応していたのでは
地域戦略が描きにくいところを
共通の
意識で切り開いていこう、こんなことでございます。
そして、それを、後ほど申し上げますが、ただ単に
スケールメリットだけではなくて、最近では、うまく三県で
機能分担をしてそれでもっと全体を向上させていこう、そんな
意識のところまで今進んできているところでございます。
「実績積上げ重視」というふうに書いてございますが、
余り難しい
テーマに挑戦をしますと、やはり
意見が食い違うこともありますし、今まで
お互いに
県同士が
協力するというのは
余りないわけでございますので、できるだけ
成功体験を積み上げていって、そして物事を考えていこうではないかと。やはり県民の
皆さんとこうしたことを
議論するにしても、
実践の
具体例がないとなかなか抽象的な話になりますので、そういう実績を積み上げていこうと。こんなことで始めているわけでございますが、
住民の
皆さんに
メリットとかデ
メリットをお示ししながらというふうに思っていますが、やはり
具体例で積み上げていきますと、
議会などの
議論でもいろいろわかりやすい
議論ができるだろうというふうに思っております。
それから、「今後の
方向性」というところでございますが、ぜひこれからは、「
地方の
グランドデザイン」と書いてございますけれども、
北東北三県の
共通の
グランドデザインをやはりつくるというところに進めていきたい。せっかくここまで個別の
分野で
連携事業が積み重なってきていますので、
地方の
グランドデザインをつくってみたい、こんなことを思っております。
これは、実は今までほとんどなされていない作業でございまして、一昨年だったと思いますが、
建設省と
運輸省が
一緒になって
国土交通省になったので、その直後、三月だったと思います、
扇大臣が
仙台に来られまして、
東北六県の
知事が集まって、これからの
社会インフラの
整備の
方向性について話をしたんです。
そのときに、
運輸省系統の港湾ですとか空港、鉄道、それから
あと建設省の道路など全体を一枚の
図面にいたしまして、しかもなお、
東北全体のところに落として、十年前がこうだった、それから現在がこう、それから十年後はこうだという
図面を出して、それをもとに
議論したことがあるんです。いろいろ
関係する
人たちに聞くと、
東北全体のそういうことを一枚の
図面に落としてつくったというのは、実はそれが初めてだということでございまして、いかにそれまで
東北全体でそういうことを
議論するということがなされていなかったかということだと思います。
全総など、いろいろ
計画をつくるにしても、個別の県と
中央省庁は、いろいろ
中央省庁からまた御指導いただくわけでございますが、隣の
県同士が、同じブロックであっても、
お互いの
機能を見ながら
調整をするなどということは全く今まで実は行われていなかったわけでございまして、ぜひこうした
地方の
グランドデザインをかくところをやってみたいと思っております。
そのほか、今
計画しているもの、いろいろございます。
これから
資金調達も大変難しい段階に入ってまいりますが、そうした中で、
地方債の
共同発行をして
共通の
財源というものをこれから見出していくべきではないか。あるいは、
電子入札への取り組みなどもこれから三県
共同でやったらどうか。
それから、これは
機能分担の例だと思いますが、
高度医療の
分野で、
秋田は
脳血管の
分野を
県立病院が大変得意としてございますし、
岩手の場合には
循環器関係が大変得意な
分野でございます。そういったことを
機能分担してもいいんではないか、わざわざ
東京まで来ていろいろ診療を受けるよりは、近いところでそういったことで
機能分担すべきではないか。
あるいは、
行政のすべてのベースとなるような
統計システムデータを統合したらどうか、また、
職員も
共通の
意識を醸成するために
共同研修したらどうか、そんなことまで出てきてございます。
それから、できればそういったことを通じて、
地域エゴに最もつながりやすい
分野ではございますが、
社会資本の
機能分担、特に大
規模な
社会資本の
機能分担や
共同利用についてもこれから
テーマとして検討していければなと思っております。
また、国体など大
規模イベントの
共同開催も
資源の
有効活用に効果的ではないかなということを考えております。
そんなことを三県でこれから進めていければと。
後ほど申し上げますが、各県の領域というのは、実は明治二十三年以来、四十七の
単位、ユニットでそのままずっと来ているわけでございますが、確かにいろいろな
行政分野で
手詰まり感のようなものを感ずる場合が多いわけでございます。
知事の
意識も
大分最近変わってきているというのもここらにあるんではないかと思うわけでございますが、
北海道東北知事会議でも、今、
共通の
行政テーマについて
共通で取り組もうということで話を進めてございますので、
北東北三県だけでなくて、
北東北全体というところまで進んでいければなということも思っております。
一番のところは現在の
実践面でございますので、少し細かく詳しく申し上げましたが、要は、国で
全国一律に取り組むというよりも、やはり
地域の特色を出すべき
分野というのが大変多いわけでございます。しかし、それにしても、各
県単位ではどうも小さ過ぎて、数県
共同でやるべきような
行政課題がある。冒頭申し上げましたような
観光などは、我々のところであれば、北国であって、冷涼な気候で、雪、温泉とか紅葉とか雄大な大自然というところが
共通項でございますから、それを数県
共同でアピールすれば大変大きな
アピール効果がある。
それから、
産業廃棄物などを考えますと、現在は
全国どこでも
広域移動が
原則でございますが、本来は、
発生場所にできるだけ近いところで
処理するのが理想なんです。しかし一方で、
リサイクル産業が成立するためには、どうも各
県ごとの
規模でこの
処理を考えていると、どうしてもうまく
リサイクル産業が育たない。ですから、
東北全体ぐらいの
単位の中で
処理を完結できるようなことを考えていけば
不法投棄につながらないような
処理ができるんではないか、こんなこともあって、
行政規模、
行政課題が
大分変わってきているということを前提に、やはり我々の方も柔軟に考えていくべきというふうに思っております。
二番からは簡潔に、
地方自治についての基本的な
考え方を申し上げたいと思うんです。
私は、
地方自治の
考え方は、みずからのことはみずからが決める、
自己決定、
自己責任の
原則にあるというふうに思っております。もちろん、
制度がいろいろ
整備されても、
住民の
自己決定、
自己責任が貫徹されないと幾らいい
制度をつくってもだめなわけでございまして、ここの点が大変重要である。
それにしても、今、現在の
制度は
余りにも
中央集権が強過ぎて、
縦割りの
弊害が各
分野にいろいろ起こっている。「
補完性の
原理」というふうに書いてございますが、やはり
基礎的自治体である
市町村を
中心として、身近な
自治体から
行政を構築していく。
市町村でできるだけ多くのことを行って、できないことは
県レベルで、そしてさらには国、こういうような
考え方で
制度を構築していく、これが
原則であろうというふうに思うわけでございます。
その際に重要なことは、「
参加」「
協働」「
自立」というふうに書いてございますが、
参加、
住民の
参加、最近、パブリックインボルブメントの
制度など、
住民参加のための手段も随分でき上がってきましたし、それから、
NPO団体と
行政との
協働ということが
意識されるようになってきました。こうしたことはこれからも大変必要なことでありまして、もっと大いに進めていくべきと思います。
それから、大事なことは、
受益と
負担の
制度が今非常に見えにくくなっておりまして、これがある
種むだ遣いにもつながるということがございますので、現在の
補助金システムなどは完全にこうした
弊害を持っております。
受益と
負担ができるだけわかりやすいような形、先ほどの
補完性の
原理に戻るわけでございますが、そうしたことが大変大事である、キーワードであろうと思います。
それから、「
経済的自立が重要」というふうに書いてございますが、今、多くの
行政の
財源、県、
市町村においては
補助金や
交付税に依存しているわけでございますが、これではやはり
自前での主体的な判断ができません。できるだけそうした国からの
補助金や
交付税に頼らない
制度をつくっていく。そのためには、
自治体として
経済的に
自立している姿が本来の姿でございまして、
自前の税収でできるだけ
行政需要を賄っていくということ、そのために、
経済が成り立ち得るような
行政の範囲というものをできるだけやはり考えていくべきではないかと思います。
少し話がそれますが、今考えられている国の
経済特区制度などもぜひ
中央省庁に柔軟に考えていただいて、これも
自治体が
経済活動を
自立させていくための非常に欠かせないものでございまして、我が県が提案している
どぶろく特区も
大分苦戦してございますが、そんなことをぜひ考えていただいて、できるだけ
経済的自立を図るような、そういう
単位で
自治体も考えていかなければならない。もちろん最低限の
調整は必要でございますので、
水平的調整は必要でございます。そんなことを思っております。
こういうことを考えますと、やはり国と
地方、それから、
地方の中でも県と
市町村の
役割分担を抜本的に見直す必要があるなというふうに思っておりまして、この際、上からいろいろ
仕事を切り分けるのではなくて、下からの積み上げで整理をしていくということ。
中央省庁、みずからの生き残りを図るためにいろいろな
権限を温存するようなことがあるわけでございますが、ぜひ、こういう下から
補完性の
原理で積み上げていくということの観点で、まさしく
住民の視線で
抜本的見直しをすべきでありますし、そうした上で
市町村中心の
地域経営をしていくべきというふうに思っております。
権限を
市町村に移す、それから、必要なそれに見合った
財源を移すということは大事だと思いますが、さらに私は人の問題も大事だと思っておりまして、
岩手県では今、県の人材を
大分市町村の方に出して、それで
市町村の
行政を行っております。以前、私どもの方で県の
行政を外部の
NPO団体とともに調べたところ、県の
仕事の大体五〇%は今
市町村に移してもいいのではないか、
住民サービスがもっと向上するのではないかという
結論も出てございまして、やはり
市町村にできるだけ移していきたいというふうに思っております。
そうした上で
都道府県の
役割というものを考えますと、ここに書いてございますように、
一つは、そうした中でもまだ小
規模として残るような
小規模自治体の業務をどのように補完するのか、支援するのかという
機能が残ると思いますし、それから、ここには書いてございませんが、もし仮に県がなくなって国と
市町村ということになりますと、国と
市町村が直結ではやはり、国の前では
市町村というのはかなり充実強化されてもまだひ弱でございますので、
中央支配が逆に強まるようなおそれがございますから、国と
市町村の間での
連絡調整機能というのはまだ必要であろうというふうに思います。
一方で、やはりこれからもっともっと拡大しなければいけないのは広域的な
課題への
対応ということで、むしろここの部分が大変重要視されてくるだろうというふうに思うわけでございます。
「近年における
知事の
意識の
変化」というふうに書いてございます。
最近、PHP研究所ですとか
朝日新聞などの方で道州制や
都道府県合併についての
知事の
意識を
調査した
アンケート調査がございますが、PHPの方を見てみますと、四十県のうちの十九県がこうした道州制なり
合併について肯定的に考えておりますし、
朝日新聞の
アンケートを見ましても、四十七の
都道府県のうち十三県が肯定的にとらえております。
以前は、
都道府県の
合併とか道州制ということについては
知事が
大変抵抗感を示していたような時期があって、これは、道州制の
内容が
中央支配を強めるような
内容の話もございましたので、それに対する
抵抗ということもあったかもしれませんけれども、それにしても、こうした
知事の
意識の
変化というのは現場から大変重要なシグナルが発せられているのではないかというふうにも思っております。
「
広域自治体に求められるもの」というふうに次に書いてございますが、こうして今
社会情勢が変わってまいりますと、
自治体が大きく広域的な
課題への
対応を迫られているということでございます。
少し整理して申し上げますと、その背景にあるのは、ここに書いてございますように、少子高齢化、二〇〇七年からですか、
人口が国全体として急激に減少していく、もう既に我々のような
地域では
人口減少が始まっているわけでございます。こうしたことがございますし、低
経済成長、海外にどんどん企業が出ていっておりまして空洞化が生じてございます。もう既に海外との完全な分業体制で産業構造ができ上がっておりますし、国際化、情報化、それから日常生活圏の拡大、
東北六県はすべての県が新幹線で結ばれるようなことになりました。それから、財政も大変破綻をしてきておりますので、公共サービスの一層の効率化ということが求められる。
それから、「中央政府の劣化」とちょっと失礼な書き方をしてございますが、中央政府が
余り頼りにならないと言うとおしかりをいただきますけれども、やはり
地域主権を確立して、我々でしっかりとした
行政をやっていく。
経済外交のような
分野については我々自身がもっといろいろ立ち振る舞いをすべきではないか、そんな
意識もございます。こんなことが
自治体が広域化を進めていっているような背景にあるというふうにも思っております。
その中で、先ほども申し上げましたけれども、必要なことは、
経済的な
自立をしっかりと図るような、その中でできるだけ自己完結できるような、そういう
自治体を目指すということでございます。
実は、
北東北三県でも、先ほど申し上げました県内総生産を足し合わせますとフィンランド並みぐらいの
経済力がございますし、
東北六県ですと、
人口や面積からいうとオーストラリアぐらいでございますが、
経済力ではそれよりも、一・七倍ぐらいだったかと思いますが、多い実力を持ってございます。そんなこともございますので、アメリカの州
知事などもよく我が国に投資の促進プロモーションで参りますけれども、やはり日本のそれぞれの
地域がもっともっと
経済的な
自立を果たすような、そういう
単位というものを考えて、それで
行政を展開していくということが大事ではないかと思います。
それからもう
一つは、「大胆な
機能分担」ということでございまして、従来は、
お互い隣同士の県が競争し合って、それで国全体としての力を伸ばしていくということでよかったのかもしれませんが、今はむしろ、産業の
状況を見ましても、本当の競争相手は、中国にいたり、韓国にいたり、東南アジアにいたりするわけですから、隣県との
関係で、
協力をして、それで力をそうしたところと比べていく、中国などと比べていく時代だろうと私は思います。
大学などの高等教育機関や各県で持っております試験研究機関、いろいろございますが、こうしたものなどももっと
お互いに大胆な
機能分担を行って、そしてその効力が発揮できるようにしていくべきではないか、こんなふうにも思います。
それから、「財政の
水平的調整はブロック
単位で」というふうに書いてございます。それにしても、最終的な
水平的調整機能というのは
自治体間で残さなければいけないんですが、私は、四十七の県に分けて、それで今
交付税で非常に事細かな
調整をしていますが、これはちょっとやはり技術的にも非常に難しいし、透明性に欠けると。大まかな、大ぐくりのブロック
単位であればそういった
調整もかなり明快な基準で可能でありますから、しかも、そういった
調整のときに
お互いのブロック間同士のルールででき上がる、国の影響もできるだけ排除できるような、わかりやすい仕組みを構築できるんではないか。ですから、そういう水平
調整の面でもブロック
単位の方がはるかにやりやすいんではないかと思います。
また、「国の
仕事の大幅な移譲」と書いてございますけれども、やはり
広域自治体としてこれから構築していくためにはこれが大前提でございまして、先ほど言いましたように、下から上に
仕事の
内容をいろいろ構築していくという観点で国の
仕事を大幅に
地方の方に移していく。課税自主権も含めた大胆な移譲を
地方に行いまして、そして
地域主権を確立していく。単なる
スケールメリットの追求だけではなくて、やはりこうした大きな見直しを行った上で
広域自治体というものを構成していくべきというふうに思います。
「
県単位でのフルセット主義」というふうに書いてございますが、どうしても、公選で選ばれる首長というのは、選んでいただいた
人たちの福祉の向上のために最大限尽くす、そういう
役割がございますので、フルセット志向というその
考え方が実は
経済社会のニーズに合致していないというようなことでございます。そういう場合が大変今多くなってきているわけでございますので、逆に言えば、フルセットが最低限成立するような有効な
単位というのは何かという視点で、もう一度そのあたりの
単位というのは考え直してもいいんではないか、こんな気がしているところでございます。
最後に、「
広域自治体の
制度」ということでございまして、私も、学者の先生方ではございませんので、
余りきちっとしたことを申し上げづらいんでございますが、ただ、言えることは、
制度構築は、これは先ほど申し上げましたように、国、県、
市町村の
仕事を大幅に見直すということでございまして、根幹から見直すような
仕事で、国家的な
課題であろうというふうに思うんです。
今、二〇〇五年を目標に
市町村合併が進められておりますが、こうした
都道府県の
あり方については、そうした
市町村の
合併のすぐ後にまた出てくる問題でございますので、ぜひ早急な取り組みが必要であろうというふうに思います。その際には、
全国一律の
制度ということではなくて、いわゆる一国多
制度のような発想で、柔軟な
制度で考えてよろしいんではないか。今、
北海道などはまさしく、もう既に道州制のはしりのようなことが
制度としてもできる素地がございますが、一国多
制度のような発想で考えていっていいんではないか。
「
住民との
協働による
制度設計」ということを書いてございますけれども、大変大きな
制度改革につながることでございますから、ぜひ
住民との
協働というような、下から積み上げていくようなそういう視点を忘れずにやはりこれは考えていくべきではないか。
憲法九十二条「
地方自治の本旨」との
関係で考えますと、多分、連邦制などは、もうこれは改憲の
議論になりますから大変時間もかかりますし、また大きな話でございますが、九十二条の範囲の中でもでき上がることはいろいろあるわけでございます。特に、広域化することによって
住民自治との
関係がどうなるかという問題も一方でございますが、
行政の性質によっては旧
県単位の自治組織のようなもの、独立
行政委員会などは、内部組織として、内部団体としてはそんなものを残す、そういう知恵の出し方もあるんではないかというふうに思います。いずれにしても、
住民の視点に立った
制度設計、そういう視点が大変大事ではないかと思います。
それから、「
連携、
共同事業の実施による
意識の醸成」ということで、今までの道州制や
都道府県合併などの
議論を見ますと、学問的に大変難しい
議論でございまして、実は、先ほど言いましたように、
県同士の
連携の
事業というのが現実にはほとんど行われておりましたので、どうも県民の
皆さん方にもいまいちぴんとこないような
議論でございました。全く
共同意識のないところにはどうも有益な
議論が生じませんので、そういった意味もあって、今まで私どもも実績をできるだけ積み上げるということで
事業を進めてきたわけでございます。
やはり大事なことは、
知事同士でそういうことを積み上げてくるということも大事でございますが、それだけで走っても物事は成就しませんので、
住民の
皆さん方といろいろ
議論をしていくということでございまして、
連携事業を醸成することによってそういうことが少しでも有益な
議論につながっていければというふうに思っております。
最後に、今まで申し上げましたようなことをまとめて申し上げますと、現場で
行政を執行している我々
知事のいわば皮膚感覚のようなものとして、道州制あるいは
都道府県合併など、現在の
都道府県制の
あり方について、
知事の関心がやはり急激に高まっている。先ほどの
アンケート調査の結果でもわかりますように、こうした道州制などの
制度に肯定的な
意見が非常にふえてきているというのは、これは現場から重要なシグナルが出ているんではないか、こんなふうに思われるわけでございます。
これに対して多様な選択肢を用意すべきではないか。その上で、
地域がそういった多様な選択肢を見て主体的に選べるような、そういう
制度になれば大変いいなというふうに思います。憲法改正をせずに、九十二条の「
地方自治の本旨」の中で手段を用意できる余地も大いにあるような気がいたしているところでございまして、ぜひこの点を
制度構築の際にもお考えいただければと思うんです。
もう一度、そういう道州制なり
合併等、広域
行政を導入するときの前提を少し整理してみますと、五点ほどございます。
一つは、以前の道州制、最初に唱えられたときは
中央集権の強化につながるような、国の出先機関の再編のような、そういう
制度の
考え方もございました。これには反対でございまして、
基礎的自治体、
市町村から
仕事を積み上げていくような、そういう方向で考えていくべきではないか。
二点目は、現在の国、県、
市町村の
役割を大幅にやはり見直す必要があるというふうに思います。
三点目は、
全国一律ではなくて、先ほど言いましたように、多様な選択肢の中から選べる、一国多
制度につながるような中で、時間的にも、ある
地域は先行してそういうものを選択している、またある
地域は従来の中で
行政を行っている、こういうことがあってもいいんではないかというふうに思います。
それから四点目は、
仕事の性格によって何らかの内部団体、独立
行政委員会などのようなものについては、場合によっては旧
県単位の自治組織を残すことを考える、そういう知恵も必要ではないかと思いますし、使いやすい、フレキシブルな
制度をぜひ望みたいと思います。
これからの
議論にも、そうした意味で現場の声などを反映していただいて、さまざまな
行政分野の実態を踏まえて、そしてまた、将来のこれからの国の姿、どうしたらそうした周辺諸国と
経済的
地域が
自立を図っていけるのか、そんな観点で将来の
行政の領域というものを決めていただければ、このように申し上げたいと思います。
以上で私の方の
意見の陳述は終わりにさせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)