○春名
委員 日本共産党の春名直章でございます。
今
国会は、イラク戦争と世界の平和のルールという問題が正面から問われて、当
委員会でも幾度となく
議論が行われました。
今、イラク戦争の大義とされていたものが失われたことが明らかになってきました。
もともと、国連決議もない、国連憲章に違反する無法な戦争でしたが、それを押し切って強行した
最大の理由とした大量破壊兵器の
存在を示す証拠が虚偽であったことが次々と明らかになっています。例えば、アメリカでは、テネットCIA長官がこの七月十一日、イラクがニジェールからウランを購入しようとした情報について、大統領のために書かれた原稿に含まれるべきではなかったと誤りを認める声明を発表いたしました。イギリスでは、ブレア
首相の
辞任を求める世論が急激に高まっています。
こうした無法な戦争で、少なくとも六千名を超える罪のないイラク
国民、子供たちが殺されているという事実、民間団体のイラク・ボディー・カウントの
調査ですが、この事実を決して忘れることはできません。ブッシュ大統領の言いなりに保有を断定し、イラク戦争をいち早く支持した
小泉首相自身の
責任が、今厳しく問われています。
イラク特別措置法の
違憲性は明白です。
正当性が疑われる占領
行政を支援することはもちろん許されませんし、そもそも、占領地に出向き、占領軍の活動を具体的に支援することは、当然、国際
人道法や
武力紛争法上で規律されるような行為となり、それが
交戦権行使とみなされることは、国際法上、常識であります。実際に引き金を引いていないから、武器を使っていないから
交戦権の
行使にはならないという政府の詭弁は通用しません。
しかも、政府が
憲法違反にならないためのよりどころとしている非戦闘地域で活動するとの詭弁も、もはや通用いたしません。アビザイド米中央軍司令官は十六日の会見で、イラク全土で戦闘行為にある、相手は典型的なゲリラ戦を展開していると言明いたしました。元防衛庁教育訓練局長で新潟加茂市長の小池氏は、「イラク全土がいまだ戦場」「このような地域へ
自衛隊を派遣することは、明確な海外派兵であり、明らかに
憲法第九条に違反する行為」と警告し、廃案を強く要請しています。
さらに、朝日新聞の七月二十、二十一日の世論
調査では、
自衛隊派遣に反対が五五%で、賛成の三三%を大きく上回り、六月の
調査からも反対が急増しています。他のマスコミの世論
調査も同様の傾向であり、
国民の多数が反対の意思を示していることを重く受けとめるべきであります。
今、イラク
国民が求めていることは、非軍事の巨大な
人道復興支援であります。医療、雇用、職業訓練、農業支援、教育、水道
整備などの支援に全力を挙げる必要があります。その際、国連が作成した
人道支援に関する指針が、その原則として、
人道、中立、公平を挙げていることは極めて重要です。軍隊を派遣し、米占領軍を支援することは、この中立、公平の
立場が最も求められる
人道支援に大きな障害をもたらすことになり、また、イラクと
日本の友好
関係に深刻な障害を生むことを改めて銘記すべきであります。
幾重にも
憲法を踏みにじるイラク特措法は、断じて成立させることはできないし、許されないと
考えます。
さて、自民党の
葉梨委員から、周辺国に対する
信頼だけで
我が国の安全は確保できるか、軍事的手段という
外交の選択肢を狭める
規定はかえって危険ではなどの
提起がありました。それらを踏まえて
発言をさせていただきます。
そもそも、
憲法前文の「平和を愛する諸
国民の公正と
信義に
信頼して、われらの安全と生存を
保持しようと決意した。」との文言は、他力本願という
意味では全くありません。
国民の安全と生存を、戦争という手段ではなく、諸
国民の公正と
信義に
信頼を寄せて、平和の手段で
保持することを明記したものであります。
国家の中には戦争を好む
国家もあるかもしれません。しかし、諸
国民は平和を愛しているのであり、
信頼に足るものであります。それは、イラク戦争反対で盛り上がった世界の世論からも明らかだと
考えます。
そして、
前文は、
国民が生存していく上で平和を不可欠の
権利として平和的
生存権をうたい、
侵略戦争への反省を含めて、それらを踏まえた第九条、この全体によって
平和主義を確固としたものにしているのであります。
日本が行うべきは、この
憲法の精神に立ち、国連憲章を初め平和の国際秩序の擁護、軍縮と軍事ブロックの解体、外国軍事基地の撤去、災害、難民、飢餓など非軍事の分野での積極的な
国際貢献、核兵器廃絶のイニシアチブ、テロ根絶のための世界の共同など、大いに平和の
外交を展開することでありましょう。こうして安全と生存を
保持することこそ、
憲法の強い要請であります。
一方、歴代自民党
政治は何をやってきたでしょうか。
今述べた努力も不十分なまま、この十年余り、
自衛隊を海外に派遣することに大きな力を注ぎ、PKO協力法、周辺事態法、テロ特別措置法、有事法制を次々成立させ、今また、イラク特措法で戦闘地域に地上軍を送るところまで進めてまいりました。その目的は、
日本の
国民の安全と生存という枠では到底くくることのできないものであります。
周辺事態法は、アメリカが起こす介入戦争によって
日本の平和と安全に影響が出ると判断した際に発動され、海外での
自衛隊の後方支援を可能にする法律であります。
テロ特措法は、九・一一テロの脅威の除去を行っている米軍の軍事作戦なら、地球の裏側まで後方支援ができるという法律であります。
武力攻撃事態法は、戦後初めて海外での
自衛隊の
武力行使に道を開き、無法なアメリカの戦争に罰則つきで
日本国民を動員する仕掛けでもあります。
そして、今度のイラク特措法であります。まさに先制攻撃、先制核攻撃すら戦略とする危険なアメリカの世界戦略に従い、
自衛隊を海外に派遣し、後方支援するというものであります。
今強調されている九条改憲の背景は、この上に一層の制約の突破、すなわち
集団的自衛権の
行使、
自衛隊の軍隊としての認知によって、大手を振って、米軍支援を
武力行使を含めて実行できる国づくりに進むというところに大きな目的があると
考えざるを得ません。
しかし、この道を進んで本当にいいのかが根本から問われていると思います。
イラク戦争では、平和のルールを守れとアメリカの手を縛る世界の
国民の声がかつてなく広がりました。政府レベルでも、国連加盟百九十一カ国中、実に百三十カ国がイラク戦争に反対あるいは憂慮を表明いたしました。イラク戦争後も、アメリカ一国主義への批判は根強く広がっているのであります。
二十一
世紀の
日本の進むべき道は、
憲法を変えてアメリカとともに
武力行使に乗り出す、そういう国ではなく、国連憲章に基づく世界の平和のルールを守れという、この世界の流れを促進する先頭に立つこと。そのために、九条を今こそ守り生かす国づくりに邁進するというところに私は大事なポイントがあると
考えます。
なお、
北朝鮮の脅威を理由にした九条改憲について一言申し上げたいと思います。
先ほど
葉梨委員が、
日本が
侵略を受けないとする
根拠は何かとの問題の立て方がされましたが、それ自身、問題の立て方が間違っていると私は思います。
これまで
日本は、九条の
もとで、
武力によらない平和と安定、安全を追求してまいりました。それを変えて
軍事力を持つべきというのであれば、
日本が
侵略を受ける
可能性が出てきたという証明は、九条の改憲を
主張される側の方が行うべきことであります。それを、現
憲法を守り生かそうという側に
説明義務があるかのように言うのは、私は本末転倒であると言わざるを得ません。
さて、
北朝鮮の核開発問題について、アジアが今どういう形でこの
解決をしようとしているのかをよく見る必要があります。
八日に盧武鉉韓国大統領と胡錦濤
国家主席が発表した共同声明では、
北朝鮮の核問題をめぐって、朝鮮半島の非核化を確保し、対話による平和的
解決が可能との
認識で一致をし、問題
解決に向けて協力を
強化することを明記いたしました。また、東南アジアでは、ARFなど、国際紛争をあくまで平和的に
解決するという力強い流れも生まれています。
北朝鮮問題もあくまで平和的
解決を目指すのが
基本であり、とりわけ
北朝鮮の力による
外交政策そのものが自身の平和と安全を損なうものとなっているということを道理を持って説得する
日本外交の努力が極めて今重要になっているということを強く
主張しておきたいと思います。
最後に、新しい人権と
日本国憲法について一言述べておきます。
今
国会は、個人情報保護法が審議されたこともあり、当
調査会でも、知る
権利、プライバシー権等の新しい人権について
意見を述べられた
参考人や地方公聴会の
意見陳述人も少なくありませんでした。
そこで表明された
意見で特徴的であったのは、新しい人権は
憲法に明文の
規定がなくとも、十三条などをよりどころにし、立法によってその
保障が可能であること、
日本国憲法の人権
規定は、今日焦点となっている新しい人権に
対応できるのみならず、さらに将来生起するかもしれない新しい人権にも
対応し得る、懐の深い構造を持っている、問題はこれを
保障するための立法作業にあるということが共通して述べられた点にあると
考えます。
あと少し
発言もありますが、後に
発言することにし、この点だけ強調しまして、最初の
発言とさせていただきます。
以上です。