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大橋参考人 私は、
廃棄物による環境破壊の問題で、日夜、四苦八苦している全国各地の
住民運動団体の一員として、この国会の場で
意見陳述の機会を与えてくださった本
委員会の皆さんに対して、心からお礼を申し上げたいと思います。ありがとうございます。
さて、恐らく
委員の皆さん御推察のとおり、我が国において
廃棄物がもたらす自然環境の破壊と
汚染の度合いには、今やはかり知れない恐ろしいものがあります。また、地域
住民の日常生活をかき乱しているという意味でも大変なものであります。
そのためもあってか、過去十年余りの間に
廃棄物処理法が三度も大
改正されました。これは異例のことだと思います。そして今、四度目の
改正案です。今回は大
改正ほどではないと思いますが、それにしても実に頻繁な
法律の
改正であります。いわば場当たり
改正とか後追い
改正とか言われても仕方のない
状況にあると思わざるを得ません。
私は、重要
法律の
制定、
改正に当たっては、政府、国会ともども、常に真剣かつ厳格であってほしいと思います。すなわち、
法律をいじるのなら、将来展望をしっかりとつかみながら、歴史の批判に耐え得るものとしてやってほしいということであります。
今までの
廃棄物処理法の
改正や
循環型社会形成
推進基本法の
制定、そして数々の
リサイクル法の
制定にはこうした資質が欠けていたと言わざるを得ません。
以上のような認識を
前提に、これから私の
意見を述べさせていただきます。
私は、「
意見の要旨」という文書を配っていただきましたが、おおむねこれに沿って
意見の内容を申し上げたいと思います。なお、時間不足で一部省略させていただくことがあるかもしれませんが、あらかじめ御了承ください。
まず、
廃棄物処理法改正案についての
意見から参ります。
要旨の(1)、
廃棄物の
定義の問題ですが、
廃棄物処理法の
運用に当たっては、しばしば
廃棄物の
定義をめぐる問題が、結果的に各地の
現場で大きな、深刻な問題を引き起こしてまいりました。それは、
不法投棄や悪質な脱法行為の横行であります。これを長年にわたり旧厚生省通達のまま放置し、
法律がいまだに手当てをしないのは、いかにも怠慢であります。
今回の
改正で、
廃棄物の疑いのある物という言葉が入りましたが、この程度では問題の困難性には対処できません。
廃棄物の
定義を、環境保全優先の
見地に立って
法律の中に具体化するべきものと思います。
次に、(2)の
拡大生産者責任制度の
導入の問題ですが、
中央環境審議会においてせっかく前向きの提言をしたにもかかわらず、一部報道のように、
産業界等が反対したからといって
改正法案から外されるようなことは許せません。
政府は
産業界に対して、今日の深刻な環境問題の主な原因が産業優先で来たことによるものである点を強調して、生産者の社会的
責任の法制化を受け入れさせるべきであります。
なお、これは
一般廃棄物のみでなく、
産廃の分野でも同様の理念で生産者
責任の法制化をするべきものと考えます。
次に、(3)の
産業廃棄物税の問題ですが、これは、本質的には
事業者に
産廃の発生を最大限回避させることを
目的とする意味で、国全体で
制度化を図るべきものであります。
事業者は
産廃を出せば出すほど損をし、出さなければ出さないほど得をするような、いわばむちとあめの経済的誘導策を早く法制化するべきものと考えます。
現在の、一部
地方公共団体による
産廃税の
制度化は否定したくありませんが、国に方策がないままでは健全に施行されないおそれがありますので、国として
導入の方向で
検討をしていただきたいと思います。
続いて、(4)でございますが、今回の
改正案では、国が実際に
産廃行政のある部分部分に
関与する幅を従来以上に広げております。
広域的な問題、そしてまた
リサイクルという、いわゆる
廃棄物処理そのものとはかなり意味合いの異なったようなもの等について、総合施策として国が
関与したり
調整したりするという点はよろしいと思いますが、あるいは必要だと考えますが、このこととは別に、かねてから言われていることの大事な問題として、基本的には
廃棄物行政をできるだけ自治
事務に移行するべきだと思います。
この理念としては、ここに書きましたように、日本列島全部一体の
循環型社会形成というのは、部分的には、あるいはその種目によってはよろしいかもしれませんが、基本としては、やはり地域地域の環境等を踏まえ、あるいはその
住民の風俗等を踏まえて、地域完結型の資源
循環社会、これを構築することの方がより理にかなってくるのではないかというふうに私どもは考えてきております。
もちろん、地域完結型の
循環社会が個々ばらばらに日本列島でうごめくのではなくて、これらを国が知恵を絞ってネットワーク化し、地域特性に合った環境保全を図ることによって国全体としての持続可能性を追求することが大事ではないかというふうに考えるものであります。
(5)につきましては、今回、従来あった
廃棄物処理業許可の除外
規定が大幅に広げられることとなりそうであります。
広域
処理事業者への
規制緩和の
特例、これにつきましては、経済界からかねてより相当強い要望が繰り返されてきておったかと思います。
産廃業界からも当然、それはあったことを承知しております。
今回の
改正案で、私どもとして、政令もありませんし、不明の点、読み取り切っていないという問題があり、若干不正確なことを、疑義を呈するかもしれませんが、マニフェストの適用が一体どうなるのかというようなこと。
今回の
改正では、
都道府県と市町村の
報告徴収、立ち入り等も
導入されて、結構なことなんですが、この
特例対象事業者にはどういうふうにこれらが適用されるのかどうかとか、もう
一つ、一番気がかりなのは、この業種に限っては、他人への業務委託、まあ再委託みたいなものですが、それを認めることになっておりまして、これも、細かいところは政令、省令を見ないとわかりませんが、
リサイクルとは言いながら、
廃棄物の
処理の一環としての
リサイクルを行う
事業者が別の
業者に委託をしていいという場合。これは、丸投げは認めないだろうとはもちろん思いますけれども、この辺の懸念がございます。
次に、(6)の
罰則の
強化の問題ですが、本
改正案の部分についてはよろしいものといたしまして、これとは別に、二十九条のいわゆるマニフェストに関するもろもろの違法行為と、三十条の虚偽記載、虚偽報告、
立入検査拒否などの刑罰が、それぞれ五十万円、三十万円程度の罰金のままであることは余りにも軽く、やり得を根絶できません。体刑を伴う必要があります。
特に、マニフェストの悪用等は、非常に問題視されている中でこのような軽い刑罰でマニフェストの悪用が済んでしまうということは大きな問題だろうと思いますので、何とかここの二十九条、三十条についても、体刑を伴う刑罰にする必要があろうと思います。
次に、(7)の本
改正案の各条項とは別の問題についてでありますが、私どもとしては大事な問題ですので、
説明をさせていただきます。
まず、1の
廃棄物処分場の立地
規制についてであります。
廃棄物処分場の多くは、御存じのように、いわゆる水源地域に立地されるのですが、これが地域
住民の不安と反発の大きな要素となっております。しかし、
現行法には立地
規制の考えが全くないため、地域
住民との紛争は絶えません。
全国の紛争の多発と環境
汚染の深刻さから考え、もうそろそろ
廃棄物処分場の立地
規制に踏み切るべきではないでしょうか。
もう
一つ、2のいわゆる建設残土と言われるものの
規制の問題なんですが、残土と
産廃の見分けがつきにくいケースが非常に多く、
産廃行政をてこずらせているようであります。
多くの地域
住民も、残土による環境破壊のすさまじさになすすべもなく、困り果てております。問題の多い自治体では、緩やかな
規制条例を設けて、せめてもの防衛策を講じてはいますが、
法律の後ろ盾がないため実効性が乏しく、法
規制を望んでおります。
なお、
産廃をあんこにし、残土を皮にした
不法投棄まんじゅうがはびこってきたことは、大方御承知のとおりであります。
このような次第で、建設残土について
規制法を求めたいと思います。
次に、特定
産廃除去特措法、ちょっと略称させてもらいますが、それについての
意見を申し上げます。
この
法案は、率直に言って、遅きに失したと思います。少なくとも、昭和五十一年の最初の
廃棄物規制強化から十年以内くらいには
制度化されているべきだったと思います。
しかし、現に
廃棄物による国土の荒廃と
汚染が拡大する中で、いかにしておくれを取り戻すかが厳しく問われているものと考えます。したがいまして、この
法案が問題に対処するための第一歩としてとりあえず
制定されることには異存はありません。
そこで、この
法案のよりよき
制定のために、次に述べますような問題点を十分に御
検討いただきたいと思います。
まず、「
意見の要旨」(1)でありますが、この
法案は
環境省が把握したこととしている不適正
廃棄物の数量が
前提となっていると考えられるのですが、私たちはこの数量に大きな疑問を持つものであります。千百万トンという数字が
資料に載ったりしておりますけれども。つまり、不適正
廃棄物は全国にもっともっと大量にあるだろうということであります。
例えば、付近
住民から現在は苦情が出ていない古い
産廃の山、これなどは草が生えていることも多いのですけれども、こんなのとか、
許可処分場だからその中身についてとりたてて問題にできないとか、
行政が自己の怠慢を今さら露呈したくないとか、さまざまな理由で
実態調査には反映されてこないものが考えられるのです。
今までの
環境省の全国
実態調査は、このような問題を克服しているとは思えませんので、この
法案を
審議するに当たっては
前提条件を精査する必要があると思います。その上で、
前提条件が大幅に違うようであれば、この
法案の
考え方に相当な修正を加えなければならないものと考えます。
(2)の時限立法の問題ですが、仮に
環境省の
前提条件千百万トン、こうしてああしてという条件がついていますけれども、この
対象不適正
廃棄物の数量どおりだといたしましても、なぜ十年以内に
支障の
除去ができるのでしょうか。ちなみに、香川県豊島の五十一万立方メートルの
処理には既に二年有余がたち、これから十年以上を要すると言われております。