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青山参考人 環境総合研究所の
青山と申します。今回はもう
一つ、
環境行政改革フォーラム、二百二十名の
環境問題の専門家、三十人ぐらいの大学教授が入っていますけれども、世の中で言うところのNPO、それの
代表幹事もしております。
きょうは、
浅野さんもおっしゃっていましたけれども、急の話だったんですけれども、私自身、この分野、
環境庁、今でいう国土交通省、建設省、
東京都、横浜市、
川崎市、
千葉市、
千葉県等々の仕事の中で、この
自動車大気汚染の予測、
評価を十五年ぐらいやってきた者として、ほかの先生方がお話しされなかったところを特に中心に、皆さんにわかりやすくお話ししたいと思います。
第一点目は、この公害
健康被害補償予防法というのができたときは、
工場、事業所、発電所、いわゆる
固定発生源と申しますけれども、煙突から
大気汚染が出る。一番有名なのは
四日市の公害問題であります。そのころに、それによる
健康被害を
補償するためにこの法律ができたわけでありますが、そのときは約八割が
工場、事業所、今言いました煙突から出る
大気汚染です。二割が
自動車とか、
東京のように羽田飛行場があるところは飛行機とか、港があるところは船の
大気汚染、それが二割の
時代でありました。
汚染物質としては、
硫黄酸化物。今またイラクで油が燃え出しています。僕は十二年前、湾岸戦争のときに、世界で唯一、油が燃えたものを、最後は現地にまで行きまして予測したんですけれども、ああいう油が燃えますと、硫黄がまず高
濃度で出ます。それに近いもの、それが当時の主流でありました。ところが、この公害
健康被害補償予防法により新しい
患者認定を打ち切った、山東議員がたしか
環境委員会の
委員長だったと思います。その後から急激に
自動車による
大気汚染がふえてきました。
汚染物質は、
窒素酸化物というのが
一つです。通称NOx、NO2と言っています。昔の
鈴木都知事がナンバーツーと言ったあれであります、NO2、NOxであります。もう
一つは
浮遊粒子状物質、エアロゾルも含めました小さな粒子が肺胞の中に入ることにより
影響をもたらす
浮遊粒子状物質、その二種類があります。
これは、実を言いますと、
東京を例にとりますと、七割が
自動車からの排出であります。三割が
工場、事業所、つまり煙突からであります。今お話ししたように、法律をつくったときと現在、全く
汚染の
割合がひっくり返っております。
内容も変わっております。現在は、今申し上げましたように、
自動車排ガスが特に大都市の場合七割、神戸市では多分八割を超えると思います。にもかかわらず、この公害
認定の話とか
補償が昔の
工場、事業所
時代の
割合で行われている、これが
一つ大きな問題であります。
だからといって、
工場、事業所の話を打ち切るわけではもちろんありません。それはそれとして、その当時
発症した方、
健康被害を受けた方が
補償を受けるのは当たり前でありますが、現在このモータリゼーション、世界でも有数の
自動車大国であります日本の社会にあって、
自動車の排ガスによって受ける
影響、これを放置してはいけない。
石原都知事が再三にわたり、ペットボトルの中の、ディーゼル排ガスに含まれております黒鉛とかDEPと言っておりますけれども、発がん性物質をテレビでお見せになって、その規制を強く訴えているということは、皆さん御承知のとおりだと思います。それが第一点であります。
第二点と第三点は、私ならではのお話であります。
第二点は、私は、
東京大気汚染公害
裁判の証人にもなりましたし、
川崎公害
裁判も証人になりました、
原告側のであります。ふだんはお役所の仕事をやっているのでありますが、
原告が、だれもそういう分野の専門家が証人になってくれない、
青山さん、なってくれということで、私もやむなく引き受けた経緯がございます。
島先生がおっしゃいましたように、今までの
裁判では、大きな
道路の
沿道から五十
メーターの範囲の
原告が、
被害者が一部認められているわけであります。
私の
資料の二ページ目に、これは仕事でやると大変な話なんですけれども、衆議院から頼まれたということで、急遽やってきました。
二ページ目のこの図の持つ
意味は、ケース一というのは、
島先生がおっしゃられたように、
幹線道路の
沿道五十
メーターのところでの
大気汚染がどのぐらいのものか、これは
東京でやっています。
東京を例にして、コンピューターを使ったシミュレーションと言うんですが、そういうものでやったものであります。五十
メーターで一本の
道路のときに、縦に置いた場合、南北に置いた場合と、東西に
道路を置いた場合、例えば環七とか、そういう大きな
道路を置いたときのものを示しております。ケース一とケース二が一本の
道路であります。
これは、年間を通じての平均でやっています。あるときですとあるところから北風だけがある、これではわかりませんので、
年平均値をとりました。
三つ目が、二百
メーターの間隔で二本の
道路を置いた場合であります。十二時間で四万台走る
道路を二本置いた場合がケース三であります。
ケース四は何かといいますと、十二時間で二万台通る
道路を
四つ、碁盤の目のように置いた場合であります。
東京、特に都心、千代田区、中央区、港区は、このケース四もしくはケース三がそこらじゅうにあるわけです。
その場合の
大気汚染濃度をシミュレーションによって求めたものが、下から二つ目のグラフであります。
ケース一、ケース二が、
島先生がおっしゃったような
状況での
大気汚染であります。それに対し、二つの
道路があって、仮に
患者が真ん中にいる、
道路の端からでいいますと九十
メーター、両方の
道路から九十
メーターにいるときの話がケース三であります。これが一、二よりはるかに
濃度として高くなっています。
四つ目は、交通量は半分でありますが、碁盤の目のように置かれた場合であります。この
四つ目を見ていただきますとわかりますように、ケース一、二より若干
濃度が高くなっております。
裁判所は、やむなく、五十
メーター以内に
居住する
原告を
対象に、
東京大気汚染裁判の場合には九十九人のうち七名について
損害賠償を認めたわけでありますが、実は私は証人になったとき、
東京のように、どこに行っても
道路、ちょっと歩くと次の
道路、百
メーター行かなくても次の
幹線道路がある、まして二百
メーター歩けば当然次の大きな
道路がある、このようなところでは、線として
道路をとらえるのではなく、面として
汚染をとらえるべきだということを強く
裁判所で訴えたわけでございます。しかし、残念ながら、
東京でもし私が言うようなことを、ここにあるようなことを認めますと、恐らく全員を認めなくちゃいけない、恐らく膨大な国家賠償のお金がかかるというこ
ともあって、従来の五十
メーター以内ということを認めたんだと思います。
しかし、ここに書いてあるのはごく一例でありまして、一枚めくってください。次のこれが、私が
東京大気汚染裁判で出した、実際はカラーでありまして、実は
裁判所でも、パワーポイントといいます、OHPとかスライドを使って判事等にお見せしました。
左の図が何かといいますと、九十九人の
東京大気汚染裁判の
原告の方が
居住している位置であります。この黒い点が
原告の方の住まわれている
場所であります。右の方が実は
大気汚染の
濃度です。これはちょっとカラーでないとわからないんですが、太くなっている部分が当然
幹線道路であります。
東京がいかに一極集中であり、日本の首都であり、千代田区を中心に日本全体に
国道が延びているか、
幹線道路が延びているかということがよくわかります。
次のページをちょっと見てください。これは、昭和四十九年度から、
裁判で私が証人になったときの
データとしては
平成六年度が一番新しいものでした、四十九、六十、
平成二、
平成六と、それぞれの年度における
大気汚染のシミュレーションを行ったものであります。もちろん、予測ではなく、実際に値がありますので、その値を
もとに再現したものであります。
見ていただくとわかりますように、この
四つの年度、何十年かたっているわけでありますが、千代田区を中心に真っ黒であります。つまり、
大気汚染は、幾らか
改善したときもありましたけれども、事この狭い
東京に一千万から住んでいるその
地域にありましては、
大気汚染はこのような面的な
汚染を呈するということが私の申し上げたいことの大きな第三であります。
今申し上げました二つ目の論点と三つ目の論点は密接に
関係がありまして、過去の
裁判では大きな
道路の近くにいる方だけが賠償の
対象になったわけでありますが、私自身は
環境省にも建設省にも
東京都にもこういう仕事をさんざん仕事の中で出してきたわけでありますが、そういう
裁判、司法の場と実態を
調査する話はまた
判断が乖離する、
評価が乖離するかもしれませんが、さっき申し上げましたように、五十
メーター以内の方だけが高い
濃度を受けるということは、よほど地方にあって
幹線道路がたくさんないところの話であります。
東京とか大阪とか横浜のように、狭いところに
道路が集中するところにありましては、面的な
汚染状況が現出しているということを私は強く主張したわけであります。
そういうことを
前提にした上で、
四つ目、これは
村松弁護士がるる御説明されました。実は、私自身、今まで
裁判所ではこのことは一切言わなかったんです。それは
バイアスがかかるということで言わなかったんですけれども、私は、一九九二年のときに非常に重度な
ぜんそくに見舞われまして、その後四回、きょうは実は妻も傍聴人で来てもらっているんですけれども、救急車で運ばれるほどの
発作に見舞われまして、そのうち一回は十日間ほど入院いたしました。昭和大学とか国立医療センター。
東京に五十五年住んでおりますが、そういう中での私の体験を少し四番目にお話ししたいと思います。
それは、未
認定なわけです、打ち切られた後。
東京都内に、未
認定であり、実際重度な
症状を持った
患者の方がいらっしゃる。その方は、もちろん私自身も何回となく仕事ができないほどのことになりましたけれども、それとは別に、年をとってから
ぜんそくになりますとほとんど治らない。薬で、コントロールというんですけれども、それを抑えるしかないわけであります。そうすると、ずっと一年通じて、一貫して薬を飲まなくちゃいけない。その薬がただじゃないわけです。
私は、たまたま会社とか大学とかいろいろなところの職がありまして、収入がありますからいいわけですけれども、収入がない方、生活保護を受けている方、そういう方にとっては、実はこのお金はばかになりません。実はそれは医療控除の
対象になるぐらいの高額になるこ
ともあります。まして、入院を繰り返している方にとっては何十万になるわけであります。さらに、この四月から健康保険の個人負担が一割ふえます。実はそれはもろに薬代にも
影響してくるわけであります。
ですから、たまたま
工場が多く、煙が
工場から来ている
時代に
認定された方は、曲がりなりに今もさまざまな
意味で
補償されているわけでありますが、その後の方は、白か黒かでいいますと、今度は全く何もない中で、自分の仕事に関しても、そういう医療費に関しても、薬代に関しても自己負担しなくちゃいけないという現実は、ぜひ皆さんに聞いていただきたいということであります。
最後に、ほかの方は政策というより実態でお話しされたんですけれども、私は大学でも
環境政策、公共政策というのを担当しておりまして、政策的に申し上げますと、この間、
道路の特定財源の使途というのがずっと問題になりました。
それに関連して言えば、こういう、
自動車が大都市で七割、
浮遊粒子状物質に至りましては八割発生源である、かつ、
島先生がおっしゃるようなそれなりの
因果関係が
汚染と
患者の間に認められるようなものに関しましては、やはり新しい財源をもって、つまり、重量税だけじゃなくて、例えばガソリン税、軽油税、保有税、いわゆる
道路特定財源に当たっています
道路系の、
自動車系の財源があるわけです。それのごく一部でもそういうところに向かわせ、かつ新規の
認定をする中で、当然それはちゃんとした手続、
審査をすべきでありますが、
自動車公害によって
影響を受け
被害が
認定された方に対しては、そういう財源を一部でも
補償のために充てるということを提案したいと思います。
以上であります。ありがとうございました。(拍手)