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岡崎トミ子君 私は、民主党・新緑風会を代表して、
独立行政法人国民生活センター法案など四十六件の
法律案について、
小泉総理及び
関連大臣に質問いたします。
初めにお尋ねしなくてはならないのは、
小泉総理、あなたが
日本というこの国と
社会の将来像をどのように描いているかという点です。
政府、
公的機関の在り方はどうあるべきか、
民間との
役割分担はどうあるべきか、さらに
市民社会の育成のために何をすべきか。今日から本院で審議される四十六の
法案は、本来その
ビジョンを反映したものでなければなりません。
総理の
ビジョンをお聞かせください。
総理は、今
国会の冒頭、
所信表明演説において、
就任以来、
聖域なき
構造改革を断行してきたと述べられました。いかにも
総理が主体的、創造的にリーダーシップを発揮し、今必要とされている抜本的な
構造改革を力強く進められているという言いぶりであります。しかしその
実態は、これまでの自民党の
族議員が支配してきた戦後
政治の行き詰まり、
政官業の癒着の
構造による弊害、そしてこれらによる限界がいよいよはっきりしてから十年間の
無為無策、これらの結果としての厳しい現実に対し、やむにやまれずに、しかも実のない
状況対応を勇ましい掛け声とともに繰り返しているにすぎないことが明らかになっています。
これは
特殊法人改革の
実態にそのまま当てはまります。
総理は、同じく
所信表明演説で、
特殊法人改革を着実に進めていくと述べています。昨年十二月に
特殊法人等整理合理化計画が策定されてから約一年がたちました。この間、
石油公団の
廃止、
道路関係四
公団民営化推進委員会の
設置等、様々な施策が実行され、今回また四十六の
法案が審議されています。
法案の数だけを見れば、
改革は進んでいるという印象を与えます。しかし、
道路関係公団や
政府系金融機関など、大物の
改革についてはいまだに確たる成果は上がっていません。
特殊法人改革は、
小泉総理の
聖域なき
構造改革全体の中でどのような位置付けになっているのか、そしてこの一年で
特殊法人等改革がどこまで進んだと考えているか、
総理にお尋ねいたします。
思えば、
特殊法人等の
抜本的改革は
小泉内閣最大の目玉の一つでありました。
総理は、例のごとく髪を振り乱して
原則廃止、
民営化を叫び、
政府は徹底した
事務事業の
見直し、
業務の
効率化のための検討を進めたはずでした。
それなのに、今、私たちの手元にあるこれら四十六本の
法案は何なのか。
組織形態について
独立行政法人へと看板を掛け替えたものが三十八
法人と八割近く、
廃止・統合が五つ、
民営化はわずかに
七つという
状況です。各
府省がそれぞれの権限を残すべく、
改革逃れの
駆け込み寺として争って
独立行政法人に逃げ込んだ結果と言われても仕方ありません。そもそも、この惨たんたる
政府案の基礎となっている
特殊法人等整理合理化計画自体が、
総理の当初の絶叫からはほど遠い極めて不十分な
中身だったことも指摘しなくてはなりません。
改めて伺います。
総理はこの四十六本の
法案を百点満点で何点だと評価しているのでしょうか。
総理お得意の
努力点ではなく、
実績点でお答えいただきたいと思います。お答えによって、
総理がこれまでほえ、居直ってきた
中身がどの程度のものだったのか、その質の高さ、低さが問われます。率直な御答弁を願います。
特殊法人改革の重要な背景に
天下り批判があることは言うまでもありません。
衆議院での
質疑においても、
天下り問題について、
同僚議員による活発な追及が行われました。
一九九七年十二月二十六日の
閣議決定で、
特殊法人の
役員について、
主管官庁からの直接の
就任者及びこれに準ずる者をその半数以内にとどめるものとする、また、
民間人の起用を
促進するとしていますが、この
閣議決定は今後
独立行政法人にも適用されるのでしょうか。最低限、何らかの
努力目標を設定すべきと考えるのが当然ですが、
石原行革担当大臣のお考えをお聞かせください。
天下り問題は、
公務員制度改革とセットで取り組まなくてはならないことは言うまでもありません。
そこで伺います。さきの
公務員制度改革大綱によって、それまで人事院が行っていたチェックを各
府省大臣に任せてしまうことになった点について、
石原行革担当大臣は、これまでよりも厳しく
天下りを是正する体制になったという認識を示していますが、およそ
見当違いです。当事者に任せてしまって、これまでよりも厳しくなるとなぜ言えるのか。石原大臣に、精神論ではなく具体的にお答えいただきたいと思います。
また、少なくとも
政府の対応について、人事院総裁も主張してきたとおり、内閣、官邸そのものが取り組むべきだと考えますが、
総理のお考えはいかがでしょうか。
独立行政法人化によってメリットが発揮されるとすれば、それは当然、単なる組織の枠組みの変更によって発揮されるのではなく、正にその運営の在り方が変わることによるところが大きいはずです。そうであれば当然これまでの
特殊法人の運営に求められる人材と
独立行政法人の運営に求められる人材には違いがあるはずです。
例えば、
特殊法人時代よりも効率的運営に主眼が置かれるとすれば、企業経営的な手腕を持つ人材が必要になるはずです。
総理、この認識は間違いでしょうか。正しいとすれば、当然、
民間出身の
役員、特に
理事長が出てこなくては話が通りません。新しい
独立行政法人を見渡して、
特殊法人時代とは
役員の出身比率が異なってきて当然、むしろそれでなければ十分に
改革の
趣旨が生かされないと考えますが、いかがでしょうか。
先行して発足している五十七の
独立行政法人について、民主党が
衆議院調査局を通して行った予備的調査で明らかになった数字を見ていただきたい。
旧組織の
役員ポストの総数が九十であったのに対して新組織の常勤
役員の総数は百七十一。何と倍に近い数字になっていますが、特に、百四十五人の
理事長、常勤
理事のうち、実に百四十人、すなわち九七%までが官僚出身者で占められています。これを
総理と行革担当大臣は是としているのか非としているのか、それぞれの認識を伺います。
衆議院での
質疑において
総理は、
法人の長について、公募によって広く人材を集め、
民間人の積極的な登用を図るべきとの考え方に前向きの姿勢を見せました。その実行を今ここで約束すべきと思いますが、いかがでしょうか。
役員の給与の問題にも関心が集まっています。広く人材を集めるために人件費を惜しまないことは大切です。けれども、先行した五十七の
独立行政法人の中には余りにも常識外れなケースが見られます。産業総合技術研究所
理事長の二千六百五十万円を筆頭に、年収が二千万円を超す団体が十一もあったことは、
衆議院で我が党が既に指摘したとおりです。
役員の
報酬等について規定している通則法第五十二条、五十三条の意味するところをどう認識されているのか。現状に対する率直な反省に基づいてこの条文が明記されたのであれば、そしてその
趣旨に沿った運用がされるのであれば、現状とは違った水準が出てくるはずだと考えますが、
総理、違いますか。国が運営経費を負担していること、納税者として国民の関心が非常に高いことを踏まえ、給与水準を不断に見直すことが必要です。
総理の見解を求めます。
独立行政法人化に伴って、従来の
行政監察の対象から外れることになっています。各
独立行政法人の
監事及び会計監査人による監査、主務官庁と総務省の評価
委員会による評価、国民による監視を可能にする情報公開の重要性は極めて高く、
独立行政法人制度の正当性そのものにもかかわります。
まず、
法人自らの監査について伺います。
現在、
特殊法人の監査
報告書を見ると、その質、量のばらつきは極めて大きなものになっています。私が見た中でも、ほんの二、三ページで済ませているものから数十ページにわたる比較的詳細なものまで様々です。監査の視点、詳細さ、厳正さの点から、一定の水準が担保され、また
法人間で比較可能なものにするべきです。国が運営経費を負担していること等を踏まえ、監査の在り方について何らかのガイドラインを設けることが必要と考えますが、いかがでしょうか。また、監査水準の均質化にどう取り組んでおられるのか、そのスケジュールを含め、片山総務大臣の見解を伺います。
各
府省と総務省の評価
委員会が行う評価についても、最低水準を示すガイドラインが必要です。評価の視点としては、単に個別
事業の費用対効果を見るばかりでなく、そもそもそれぞれの
事業が本当に
独立行政法人が行う
事業としてふさわしいのか厳しくチェックすることが必要です。
さらに、評価
委員会の人選が決定的に重要です。
ここで再び先行五十七
法人についての予備的調査の結果を引けば、ほとんどの官庁について、その官庁の審議会などの委員を兼任している評価委員の方の方が、割合が半分近く、若しくはそれ以上となっています。日ごろからお付き合いのある方多数に評価委員を委嘱したのでは評価の正当性に疑問を持たれます。
改革の
趣旨が徹底され、国民の関心、利害を反映できる人選が行われるよう、
総理は各大臣に明確な御指示をいただきたい。
ガイドラインの必要性、人選についての考え方について、
総理の答弁を求めます。
評価結果については情報公開が行われることになっておりますが、公開された情報に対する国民等の反応をフィードバックするシステムも必要と考えます。パブリックコメントの活用などが考えられますが、
総理の見解を伺います。
また、各大臣も、評価
委員会の評価を受けて、必要に応じて
業務改善命令や長の罷免などの措置も機動的に活用する姿勢が必要と考えますが、具体的にはどのようなシステムを考えているか、総務大臣の答弁を求めます。
さらに、
独立行政法人の役割は
行政の執行です。各
府省、総務省による評価と、それに基づく措置、その結果については
国会への
報告事項とすべきと考えますが、
総理の認識はいかがでしょうか。
今回の
法案が成立すれば、新たに三十八の
独立行政法人が設置され、評価
委員会の負担は飛躍的に大きくなります。そもそも有識者の集合体で常設の事務局を持たない現在の評価
委員会制度では、制度の
趣旨を生かす適切な評価を行う上で限界があります。評価
委員会の在り方について議論が必要と考えますが、総務大臣、いかがでしょうか。
評価のすべての段階において市民の視点が生かされ、
独立行政法人の
業務等の内容によって当事者などの参画が図られることが必要であることを併せて指摘いたします。
有効な中間評価、事後評価のためにも事前の明確な目標設定は必要があり、その点からも、主務大臣が設定する中期目標、各
独立行政法人が設定する中期
計画が具体的で明確なものになることが重要です。
中期目標、中期
計画には、更に
政府が全体として取り組むべき施策をそれぞれの
独立行政法人で具体化するための
事項を盛り込むべきだと考えますが、総務大臣、いかがでしょうか。例えば、男女共同参画の推進、循環型
社会の形成、
障害者の
社会参画の
促進など、
政府の建前として重要テーマとして掲げられながら、
現場での取組に必ずしも十分に反映されているとは言えないテーマをどのように具体的レベルで実現するか、中期目標、中期
計画に書き込むべきだと考えます。総務大臣の見解を求めます。
特殊法人等の
事業、運営の内容については透明性の確保が不可欠です。
法人自ら情報提供を積極的に行って、国民の監視の下に置くとともに、主務官庁としても、情報公開に最大限協力することが求められます。
会計検査院が今月末に公表を予定している会計検査の中で、農林水産省系、旧文部省系の先行した二十九
法人すべてが情報公開の対象となる財務書類への計上漏れをしていたことが明らかになったと報道されている問題は重視すべきです。今後の移行に当たっては、財務書類への計上漏れなどが起こらないようにしなくてはなりません。
大島農林水産大臣、遠山文部科学大臣の認識を伺うとともに、他のすべての
特殊法人についても総点検が必要ですので、総務大臣の見解を伺います。
今回提出されている
法律が成立すれば、新たに三十八の
独立行政法人が発足します。
行政のスリム化、アウトソーシングの活用、
公務員の定数削減などが進めば、
独立行政法人の増加が予想されます。しかしながら、
独立行政法人が増え続け、肥大化する結果となれば、従来の
特殊法人の二の舞となってしまいます。
特殊法人改革の次は
独立行政法人改革だというのでは笑えない笑い話になってしまいます。
独立行政法人についても、
社会情勢の変化に応じて
民営化あるいは
廃止するべきであり、
聖域を設けるべきではありません。現在、評価の仕組みは一応ありますが、スクラップの仕組みがありません。役目を終えた
独立行政法人を整理する手続の設計が必要です。
その点、
総理と総務大臣のお考えを伺います。
独立行政法人制度においては、
法人の裁量度の高さが制度の根幹です。
国の関与について、通則法上は大臣の関与が限定的になっていますが、国の個別関与規定を定めているものもあり、さらに、明文化されていない国の関与も心配されています。
これまで比較的機動的に運用されてきた制度について、
法案準備の過程で各
府省が縄張りを主張した結果、
府省による関与が強化された例もあります。
衆議院で議論された一例を挙げれば、国際協力機構によるいわゆるNGO支援
事業です。外務大臣の認可、そのほかの関係
行政機関との協議を必要としたことについて、これは、同機構の自律性を損なうばかりか、NGO等との機動的な連携を妨げるものであり、慎重な検討が必要と考えますが、川口外務大臣、いかがでしょうか。
国の関与には、
独立行政法人の自律性、裁量に影響を及ぼして
改革の
趣旨を損なうおそれがあり、どうしても必要な場合において最小限のものに限定すべきです。この点、内閣として各
府省の関与に対して厳格なチェックを行うべきだと考えますが、
総理、いかがでしょうか。
特殊法人改革についての考え方、取組は、結局のところ、二十一世紀
日本社会において、諸課題への対応をだれがどういう形で担うべきなのかという問題に行き着きます。
いつまでも
政府がすべてを抱え込む時代は終わりました。
社会の価値観、ニーズは多様化し、それらへの対応には機動性と創造力が求められるようになっています。こういう時代には、
行政のスリム化や地方自治体への権限の移譲ばかりでなく、
民間非営利の活動を
促進し、多様な担い手を育成しなくてはなりません。
折しも、昨日から、財政金融
委員会で野党四党が共同提案したNPO支援税制
法案の
質疑が始まっています。これは認定要件の大幅緩和などを内容としたものです。今回、八つの
府省もNPO税制の
改正要望を出しています。内閣
委員会では、竹中経済財政担当大臣が、NPO支援税制は改善、改良の段階に入ったという答弁をされました。二十一世紀
日本社会のかぎの一つとして、
民間非営利の活動を
促進するんだという
政府の決意が伝わるNPO支援税制の本格的な充実が必要と考えますが、
総理及び財務大臣の答弁を求めます。
また、公益
法人改革の議論が進もうとしていますが、新しい制度を作るならば、それは
行政の裁量を極力排除し、
法人の自治を尊重するなど、NPO制度の精神を生かした制度とならなくてはならないと考えます。この点について、
総理及び行革担当大臣の見解を求めます。
総理が
聖域なき
構造改革を叫びながら、
特殊法人改革を含めた諸
改革が次々に骨抜きにされていることは、
日本は
改革のできない国だという世界と市場の不信を呼んでいます。一方で、国民不在の
改革の在り方は国民の間に将来不安を広げています。
特殊法人改革、
行政の
構造改革に当たっては、民でできることは民に、地方でできるものは地方にという原則に忠実にのっとって、公正に毅然とした態度で臨む。一方、
政府や
公的機関が担うべき新しい役割があれば、必要に応じて大胆かつ規律を持って人も金もつぎ込む。今、求められているのはそうしためり張りです。間違っても、今回のような骨抜きと焼け太りをこれ以上繰り返して許す余裕は今の
日本社会にはありません。
実行を通して、
日本も決断をする国家になった、
日本は未来に向かって責任ある歩みを踏み出した、そういうメッセージを市民、世界、市場に対して発信してほしい。そのことで信頼と安心を取り戻すことを
政府に求め、また、民主党自身そのような姿勢で
国政に当たっていくことを改めて明らかにして、私の質問を終わります。
ありがとうございました。(
拍手)
〔
内閣総理大臣小泉純一郎君
登壇、
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