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2002-12-12 第155回国会 参議院 内閣委員会 第12号
公式Web版
会議録情報
0
平成十四年十二月十二日(木曜日) 午前十時五分開会 ─────────────
委員
の異動 十二月十二日 辞任
補欠選任
筆坂
秀世君
畑野
君枝
君 ─────────────
出席者
は左のとおり。
委員長
小川
敏夫
君 理 事 阿部 正俊君 亀井 郁夫君 森下 博之君 長谷川 清君 吉川 春子君 委 員 阿南 一成君 竹山 裕君
西銘順志郎
君 野沢 太三君 山崎 正昭君
岡崎トミ子
君
川橋
幸子君 松井 孝治君 白浜 一良君
山口那津男
君
畑野
君枝
君 島袋
宗康
君 黒岩 宇洋君 田嶋 陽子君
事務局側
常任委員会専門
員
鴫谷
潤君
参考人
中央大学法学部
教授
横田
洋三
君
神戸大学大学院
国際協力研究科
助教授
戸塚
悦朗
君 ───────────── 本日の会議に付した
案件
○戦時性的強制
被害者
問題の
解決
の
促進
に関する
法律案
(第百五十三回
国会円より子
君外六名発 議)(
継続案件
) ○透明で民主的な
公務員制度改革
に関する
請願
( 第一
号外
一九七件) ○
慰安婦
問題の戦後
責任
を果たすための
立法
の早
期制定
に関する
請願
(第一九六
号外
一〇件) ○
道路交通法改正
に関する
請願
(第二〇五号) ○戦時性的強制
被害者
問題の
解決
の
促進
に関する
法律案
の
早期成立
による
慰安婦
問題の
解決
に関 する
請願
(第三五六
号外
六五件) ○食の安全の抜本的な
見直し強化
に関する
請願
( 第五八四
号外
三件) ○
国民
のための民主的な
公務員制度改革
に関する
請願
(第九三二
号外
四八件) ○
国民
のための民主的な
公務員制度
の
改革
に関す る
請願
(第九五〇号) ○元
従軍慰安婦
に、国による
謝罪
と
補償
を直ちに 実施することに関する
請願
(第九六九号) ○
継続調査要求
に関する件 ○
委員派遣
に関する件 ─────────────
小川敏夫
1
○
委員長
(
小川敏夫
君) ただいまから
内閣委員会
を開会いたします。 戦時性的強制
被害者
問題の
解決
の
促進
に関する
法律案
を議題とし、
参考人
の
方々
から
意見
を聴取いたします。
参考人
を御紹介いたします。
中央大学法学部教授横田洋三
君、
神戸大学大学院国際協力研究科助教授戸塚悦朗
君、以上の
方々
でございます。 この際、両
参考人
に一言ごあいさつを申し上げます。 本日は、御多用中のところを当
委員会
に御出席いただき、誠にありがとうございます。 本
法律案
につきまして、両
参考人
から忌憚のない御
意見
をいただきたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。 次に、議事の進め方について申し上げます。 まず、両
参考人
から、
横田参考人
、
戸塚参考人
の順に、お一人十五分以内で順次御
意見
をお述べいただき、その後、各
委員
からの質疑にお
答え
いただきたいと存じます。 なお、御発言は着席のままで結構でございます。 それでは、まず
横田参考人
からお願いいたします。
横田参考人
。
横田洋三
2
○
参考人
(
横田洋三
君)
委員長
、ありがとうございます。おはようございます。 本日、
参考人
として、戦時性的強制
被害者
問題の
解決促進
に関する
法律案
につきまして、私の
意見
を述べる機会を与えられまして大変感謝いたします。また、この
法律案
の
発議者
、そして
賛成者
、いわゆる
慰安婦
問題につきまして真摯に
解決
の方向に向けて御尽力してこられたということについては心より敬意を表したいと思います。
最初
に、私の本
案件
、すなわちいわゆる
慰安婦
問題につきましてどういうかかわりを持ってきたかという
背景
をごく簡単に御紹介させていただきたいと思います。 まず、この問題が国際的な
場面
で取り上げられましたのは、私が
代理委員
として出ておりました
国連
の
人権促進保護小委員会
の場で一九九一、二年のころでございます。そこでこの問題が、もう一人の
参考人
として今朝出席しておられる
戸塚先生
その他の
方々
の御活躍もありまして、
人権小委員会
の場でずっと議論、
審議
が続けられてきているという
背景
がございます。 なお、この
人権小委員会
における
審議
の
状況
につきましては、本日お配りしました私の原稿でございますけれども、「
国連人権小委員会
における「
慰安婦
」
問題審議
の
状況
」というものを御参照いただきますと有り難いと思います。 二番目には、私は
専門
として
国際法
それから
国際人権法
を
研究
してまいりました。この
立場
から
慰安婦
問題というのは極めて重要な
問題提起
をしておりまして、我々
国際法学者
が真剣に取り組み、適切な
答え
を出していかなければいけない問題だと考えておりまして、その点からもこの問題に関心を持っておりました。 三番目に、そういった経緯もございまして、一九九五年に
日本政府
がイニシアチブを取りまして作りました
女性
のための
アジア平和国民基金
、いわゆる
アジア女性基金
でございますけれども、これの設立当初から
運営審議会
、これは
理事会
に対する
諮問委員会
でございますけれども、それの
委員
を仰せ付かりまして、この中で私なりのいわゆる
慰安婦
問題についての正しい
答え
に向けての
努力
をしてきたつもりでございます。なお、現在私はこの
運営審議会
の
委員長
も務めさせていただいております。 この
アジア女性基金
の
活動等
につきましては、やはり本日
追加資料
としてお配りいたしましたこの白い
パンフレット
がございますが、「
女性
のための
アジア平和国民基金
」という表題でございますけれども、これを随時御参照いただきますと有り難いと思います。 まず、本
法律案
につきまして私の基本的な
考え方
を述べさせていただきたいと存じます。 本
法律案
は熟読いたしました。そして、
一般論
として妥当な
内容
を含んでいると
判断
いたしました。しかし、本
法律案
をこのまま
国会
で採択し、その規定に従って
政府
が
一連
の
措置
を取ることについては、私の
個人的判断
は適当ではないという
意見
でございます。 その理由は、以下の六点でございます。 まず第一に、これまで
日本政府
は
一定
の
対応
をしてきたということでございます。 第二点は、
国連
での
審議
をある程度
日本政府
の
対応
は反映しているということでございます。 第三点は、既に一九九五年から今日まで七年近くにわたる
活動
を
アジア女性基金
はしてきておりまして、その
活動
に対して
国際社会
の
一定
の
評価
がございます。 第四番目には、
アジア女性基金
に対する多くの
国民
の
方々
の
理解
と
支援
というものがございます。 五番目には、
日本政府
の
対応
に対する
関係
諸
外国政府
の
理解
と
協力
、これもございます。
最後
の六点でございますけれども、
オランダ
、
フィリピン
、
韓国
、
台湾
の
被害者
、はっきりと確認された御
存命
中の
方々
の、
半数
までは行きませんが、
半数
に近い三百六十四人が
アジア女性基金
の償い
事業
を受け取られたという事実がございます。 こういったことを踏まえますと、私は、この
法律案
を
国会
を通して
政府
にこの
法律案
に基づく
一連
の
措置
を取らせるということには適切でない
部分
があるという
意見
を持っております。多少、この私の
考え方
をこれから敷衍して御説明させていただきます。 まず、
日本政府
は既にいろいろな
場面
においてこのいわゆる
慰安婦
問題につきまして、とりわけ
被害者
となられた
方々
に対しまして
謝罪
を
表明
してきております。
最初
は一九九三年のいわゆる
河野官房長官談話
でございます。この点につきましては、この白い
パンフレット
の四ページの年表のところに、九三年の
河野官房長官談話
の一番の
おわび
に当たる
部分
の文章が書いてございますので、御参照いただけると有り難いと思います。 さらに、一九九四年には、
村山総理大臣
が
談話
でやはり深い
おわび
と
反省
の
気持ち
を
表明
されました。 それから、
人権小委員会
におきまして、
日本政府
の
オブザーバー
、これは
日本政府代表
ですが、
人権小委員会
は私
ども委員
とか
委員代理
が主要なメンバーでございますので、
政府代表
それから
NGO
の
代表
、これは
オブザーバー
という資格で討論にも参加されるということでございますが、その場におきまして
日本政府
の
オブザーバー
がやはり深い
おわび
と
反省
の
気持ち
を
表明
しました。 それから、償い
事業
の一環としまして、償い金、それから医療・
福祉事業
、更にこれに加えましてお一人お一人の償い
事業
を受け取られる
被害者
の方につきまして
総理大臣
の
おわび
と
反省
の手紙が付されております。 これらの
おわび
の
表明
は、いずれも
道義的責任
の
立場
から
被害者
に対して、それから
被害者
の属する
国民
に対して、
政府
に対しての
おわび
と
反省
の
気持ち
の
表明
でございます。 それから二番目には、
歴史
の教訓とする
事業
ということにつきまして、事実の究明、更にははっきりと分かった問題についてできるだけ正確に
国民
に広く知らせるための
活動
を行うということ、こういうことをこれまで
アジア女性基金
はやってまいりました。 それから三番目には、
女性
の名誉と尊厳にかかわる
事業
も継続してやってまいりました。これはどういう
事業
かと申しますと、過去に
日本
が行ったいわゆる
慰安婦
の
方々
に対する甚だしい
人権侵害
、これに深い
反省
をしまして、さらに、現在同様の
状況
が戦乱の中で起こっている、その
被害者
の
人たち
に対する私
たち
の
気持ち
それから
政府
の
気持ち
を
表明
する意味で、現在起こっている問題についての
研究
と、それから
被害者
に対する救済の手を差し伸べる
事業
、こういったようなことについても
アジア女性基金
が
活動
してきております。 この
法律案
は、こうした
日本政府
の
対応
、とりわけ
アジア女性基金
を作ってそれを通して
政府
と
国民
が一体となってこの問題に取り組んできたという、その実績をどのように踏まえて新しい
法律案
の中で
政府
に新たな
措置
を取るように要請しておられるのか、この辺が私にははっきりと見えないという感じがいたすわけでございます。 次の点でございますけれども、
アジア女性基金
に対して現在におきましても根強い厳しい
批判
があるということはこれは事実でございます。 しかし
他方
で、
人権小委員会
の
委員
の多くの
方々
、この方
たち
とは私は毎年八月、
ジュネーブ
で会合を持ちましたときにはこの問題を含めて
意見交換
をしておりますが、そういう
人たち
の
意見
、さらには、度々
日本
でも報道されました
国連
の
女性
に対する
暴力
に関する
特別報告者クマラスワミ
さん、それから、やはり戦時における
女性
に対する
暴力
の
特別報告者マクドゥーガル
さん、それから、最近辞められましたがごく最近まで
国連
の
人権高等弁務官
を務められたメアリー・ロビンソンさん、こういう
方々
が折に触れて、
日本政府
のこの
慰安婦
問題に対する
対応
は前向きの
措置
である、とりわけ
アジア女性基金
を作って
被害者
のために
活動
していることについては前向きの
評価
を下されているということがございます。 それから、
日本国民
の多くの
方々
がこの
基金
に
寄附
を寄せてくださいました。この
寄附
にはいろいろな
メッセージ
を付けてくださっておりますけれども、その
メッセージ
を読みますといろいろな御
意見
があることがよく分かりますが、同時に、いずれにしても
日本国民
として
被害者
の
方々
に深い
おわび
を申し上げたいという、そういう
気持ち
を込めて
アジア女性基金
に
寄附
をしてこられました。こういう点で、やはり
国民
の間に
協力
と
支援
の
気持ち
を持っておられる方が多数おられるということ、これもやはり考慮する必要のある点だろうと思います。 それから、多くの
関係
の
政府
、とりわけ
フィリピン
、
オランダ
、インドネシアの
政府
につきましては、
日本政府
とこの問題で幾度にもわたって協議をしてまいりまして、全体として、
日本政府
の
対応
に
協力
する姿勢を示してきました。 さらには、先ほども申し上げましたけれども、実際に、
韓国
、
台湾
、
フィリピン
、
オランダ
などでは、
存命
中の
被害者
の
方々
三百六十四名が
基金
の償い
事業
を受け取られたと。 こういう
状況
を考えますと、
批判
があることは事実です。それも非常に厳しい
批判
ですし、私もその
批判
には常に耳を傾け、考慮することをしてきておりますけれども、しかし
他方
で、こういう前向きの
評価
があるということも認識しておく必要があることだろうと思います。
アジア女性基金
に対する厳しい
批判
が今でも続いておりますが、その一番の論点は、
日本政府
は
法的責任
を認めて
法的謝罪
、
法的補償
、
法的責任者
の
処罰
をしていないということでございます。ところで、この
法律案
を読みますと、この
日本政府
の法的な
責任
を認めて
法的謝罪
、
法的補償
そして
責任者
の
処罰
という、
被害者
及び
被害者
を
支援
する
団体
が
要求
しております点につきましてはこたえるものにはなっていないという私の
判断
でございます。 そうだとしますと、仮にこの
法律案
に基づきまして
日本政府
が
一連
の
措置
を取ったとしても、依然として、
被害者
の
方々
で
批判
的な
意見
をお持ちの方、そしてそれを
支援
しておられる
方々
の
批判
にこたえることにはならないということになろうかと思います。もし、これで
批判
する
方々
が納得するということでありますと、七年前に作られた
アジア女性基金
の
対応
も、正に今度の
法律案
で実現しようと思っていることに沿ったことではないかと、そういうふうに私は考えております。 この
法律案
の第五条を見ますと「我が国が締結した
条約
その他の
国際約束
との
関係
に留意しつつ、」となっておりまして、必ずしも明確な表現ではございませんが、従来の
日本政府
の
立場
、すなわち
個人
の、第二次
大戦
中に生じた
個人
の
請求権
は
平和条約
その他の二
国間条約
によって
解決済み
であるというその
立場
に配慮している
法律案
のように私は
理解
いたしました。そうだとすると、いまだに強い
批判
をしておられる
被害者
の方、そしてその
被害者
を
支援
しておられる
方々
の
批判
、
要求
にこたえるものにはなっていないのではないかと、そういう
判断
でございます。 私の
意見
は以上でございます。
小川敏夫
3
○
委員長
(
小川敏夫
君) ありがとうございました。 次に、
戸塚参考人
にお願いいたします。
戸塚参考人
。
戸塚悦朗
4
○
参考人
(
戸塚悦朗
君) 初めに、
レジュメ
を訂正しておきます。
レジュメ
の中で二番目の
クマラスワミ
というふうにありますのは
マクドゥーガル
の誤りですので、訂正いたします。 初めに、大変重要な
法案
の
審議
のために、しかも
人権週間
という特別な時期にお招きいただきまして、ありがとうございます。 私はこの
法律案
を
成立
させるべきであるというふうに考えます。これまで
民間基金
の受取に反対、拒否してきた
被害者
、
支援団体
、
被害国議会
がこぞって歓迎しておりまして、これはこれまでの
日本
の
国家機関
が行った
提案
について初めてでございます。これまでの
日本政府
、
民間基金
の
措置
によっては
解決
がなされておりません。全体としてはこれは受け入れられていないわけでありまして、
国連
、
ILO等
も
解決
とは見ていない、
国家
による
補償等
の
措置
をいまだに求めております。 次に、具体的な
内容
に触れたいと思います。 私がいわゆる
従軍慰安婦
問題にかかわるようになりましたのは、現
参議院
副議長であられる
本岡昭次議員
からこの問題に関する
法的意見
を求められたときからであります。それは一九九〇年の
本岡議員
のこの問題に関する
最初
の質問のころでありました。この点については、
本岡議員
の方にお願いをして
先生方
のところに
国会審議
の経過と
国連
、
ILO等
の
資料集
をお届けいただいておりますので、よく御存じなことだと思います。 率直に申し上げますと、当時の私の
法的見解
は大変消極的なものでありました。
日本法
と
日本
の
司法
が持つ重大な欠陥のために、
日本国内法
を援用して
日本
の
裁判所
で勝訴するということは
被害者
にとっては極めて困難と予想したわけであります。ところが、金学順さんほかの
被害者
の方が名のり出られまして
被害
を証言し、
歴史家
が
日本軍
の関与を証明しました。そして、
首相
が
一定
の
おわび
をするという事態になりました。そこで、当時は私は
日本
にかかわる重大な
人権侵害
問題を
国連
に報告するということを課題にしておりましたので、九二年二月、この問題を
国連
の
人権委員会
に報告いたしました。これがきっかけとなりまして、
被害国
の
支援者
、
支援団体
と
協力
することになりました。
ジュネーブ駐在
の
日本
の
報道関係者
が極めてナショナリスティックな
拒否反応
、
否定的反応
をしたことに異様な雰囲気を感じましてかえって奮起したということもあります。結局、
被害者支援
の
活動
は十年以上も継続しました。 その後、
研究
を継続した結果、
日本法
上、
日本
の
国内裁判所
で勝訴することは極めて困難であっても、
国際法
上は
日本政府
が
国家責任
を免れることの方が難しいというふうに確信するに至りました。そこで、
国際法
の諸問題に関しまして、IED、IFOR、JFORなどの
国連NGO代表
として
日本軍慰安婦制度
が
奴隷制
であり
強制労働条約違反
であることを指摘したほか、不
処罰賠償理論
を援用いたしまして
日本政府
の
条約
の
抗弁
を
批判
するなどの国際的な
法的論議
を起こすことに努めてまいりました。 また、この問題の
解決方式
の提唱もさせていただきまして、市民、
議員立法
による
解決
への筋道を付けるという
努力
を継続してまいりました。その結果がこの
審議
につながっておるのだと思います。さらに、これらについて著書、
論文
を公表するなど
研究活動
を継続してきたこともありまして、お招きいただいたのだと思います。 次に、何が
国際法
的に問題なのかということを申し上げます。 第一に、
提出資料
の説明でありますが、
配付資料
にあります
岩波講座
「現代の法」
掲載論文
に
国際法
上何が問題になるのかの、九七年
時点
での
情報
の概要を書いております。その後の
情報
を加えまして、九九年一月
時点
までをかなり詳しく、お
手元
にあります「
日本
が知らない
戦争責任
」に書きました。しかし、残念ながら今
審議
の対象になっている
法案
はまだ存在しておりませんので、触れておりません。その後につきましては、先ほど申し上げました
本岡昭次先生
のお作りになった
資料集
を見ていただければと思います。 これらを見ていただきますと、
国際法
的な問題がどこにあるのか御
理解
いただけると思います。更に詳しくは、
週刊法律新聞
の
国際人権レポート
、
法学セミナー
に掲載しました連載、「
日本
が知らない
戦争責任
」及び「これからの
日本
と
国際人権法
」などを御参照いただければと思います。 また、
日本
の
司法
による
解決
が困難であるということに関連しまして、
配付資料
の中に
参議院憲法調査会
に提出いたしました私の
論文
が、
国際法
の遵守を求める
憲法
九十八条二項に従わない
日本
の
裁判所
の現状を説明しておりますので、それをごらんください。 なお、この問題については、
日本
の
大審院
も、犯罪であるということを非常に
早期
に認めておるという証拠として
大審院
の判例もお
手元
にお届けいたしました。 第二に、要点につきまして簡略に説明いたします。まず、
国際法違反
の成否が問題になります。 第一に、一九二六年、これは
奴隷条約
が
国際慣習法
を確認して
成立
した年でありますが、この年までに
奴隷制
の禁止は
慣習国際法
になっていたと考えます。
女性
を軍需品同様に軍の
所有物
とした
日本軍慰安婦制度
は、この
国際慣習法
に違反しておりました。 第二に、
日本
が一九三二年に批准した
強制労働条約
は
女性
の
強制労働
、労務を全面的に禁止していましたので、
慰安婦
としての
性的サービス
を強制した
日本軍
の
行為
は同
条約違反
であったと言わざるを得ません。 第三に、
人道
に対する罪の
構成要件
は、殺りく、せん滅、
奴隷化
、
強制的移住
、その他の非
人道的行為
及び政治的又は
人種的迫害行為
から成ります。
日本軍性奴隷被害者
に対する
日本軍
の
行為
は
奴隷化
、
強制的移送
、非
人道的行為
にも当たりますし、
朝鮮人
、
台湾人
などに対する
人種的迫害
でもあったので、
人道
に対する罪にも当たります。
国際法
には
時効
がありませんので、今も
国際法
の
違反状態
が継続していると考えられます。また、
人道
に対する罪に当たる場合は国内法的にも
時効
を適用してはならないとされております。 次に、
国際法律家委員会ICJ報告書
、
国連人権委員会クマラスワミ報告書
、
国連人権小委員会マクドゥーガル報告書
、
ILO専門家委員会報告書
はそれぞれ詳しく
国際法違反
があったことを認定しております。それらは先ほど申し上げた
本岡先生作成
の
資料集
に挙げられておりますので、ごらんください。 二〇〇〇年十二月に
女性国際戦犯法廷
が開催されました。世界的な
国際法
の
権威者
による二〇〇一年十二月四日の
判決
、これは
日本軍性奴隷制
を裁く、
女性国際戦犯法廷
の全記録に、
緑風出版
として出版されております。この
判決
の
国家責任
に関する
部分
、三百六十八から四百四十三ページでありますが、には、今申し上げた以上に広範囲にかつ厳しく
国際法違反
を認定しております。 次に、
日本政府
の
条約
の
抗弁
について申し上げます。 第一に、
日本政府
はこのような
国際法違反
の指摘に対していつも、「
日本
としては、さきの
大戦
に係る
賠償
、
財産請求権
の問題について
サンフランシスコ平和条約
などに従って誠実に
対応
してきた」、これは
橋本首相
の九六年五月九日
参議院予算委員会
での答弁であります、などと
条約
の
抗弁
を繰り返してまいりました。これは、
平和条約
及び二
国間条約
によってすべての
国家責任
が解除されたと言いたいようにも聞こえます。しかし、
条約
の
抗弁
は既に破れております。
日本政府
はこれに固執することをやめるべきです。 第二に、具体的に
個別条約
の検討をしてみますと、これらの
抗弁
は崩壊してしまうことがよく分かるわけであります。 第三に、
平和条約
などの
条約
によって
性奴隷被害者
の権利は放棄できないという
法的見解
は、
国際法
の
権威
が承認するところであります。 時間の
関係
上、詳細は省略いたします。 次に、
民間基金政策
では
国際法違反
の
状態
は解除されていないということを申し上げたいと思います。 仮に、
被害者
すべてが
国民基金
による償い金を受け取っても、これは
民間
による
措置
ですから
国家責任
を法的に解除することはできません。その上、
民間基金
による
解決
の試みは、多くの
被害者
、
被害国
の
支援団体
などの
拒否反応
によって
被害者
全体との和解を達成することができませんでした。 先ほど申し上げた
国連
・
ILO
の
報告書
は、
民間基金
に
一定
の
評価
を与えましたが、これにより
国家責任
が解除されたとは
評価
せず、
被害者
が求めるように
日本政府
に対して
国家責任
を果たすよう求め続けています。今後も
国際世論
による
批判
は継続すると思われます。 先ほど申し上げた
法廷
の
判決
でありますが、その末尾で
日本政府
に対する具体的な
勧告
をいたしました。これらが実現して初めて
国家責任
が解除されるというふうに考えられます。これについては、
レジュメ
の
最後
の「
勧告
」というところをごらんください。
解決
のためには、
審議
中の
法案
の
立法
が必要であるというふうに考えます。
被害国
の
被害者支援団体
は、こぞって
内閣委員会
で
審議
中のこの
法案
の
国会提案
を歓迎し、
被害国
の
議会
がその
成立
を望む決議を次々と
審議
し採択しております。
日本
の
国家機関
、
国会議員
もこの
委員会
も
国家機関
でありますが、によるこの問題に関する
提案
が歓迎されたのは初めてのことであります。 しかし、
法案
に問題もあります。
日本人慰安婦
の方も、
女性
として軍による
性暴力
の
被害
を受けた点では同じですから、
被害者
に含むことができるようにする方がよいと思われますが、その他の点では、私が
提案
してまいりました暫定的な
個人
賠償
法案
等、これは特に
謝罪
という言葉を欠いておりましたので重大な欠陥がありますが、これよりもはるかによくできています。ですから、この
法案
が可決、
成立
すれば、この問題は
解決
に向けて急速に動き出すというふうに考えます。
立法
の国際的な位置付けでありますが、詳細は省略しますけれども、
立法
ができないという観測が有力であります。なぜなのでありましょうか。
条約
の
抗弁
にもかかわらず、
審議
中のこの
法案
が
提案
され、
参議院
の事務総長により受理され、内閣委に付託されました。それは、法的には
立法
による法的な
解決
ができるということを示したわけです。
国会議員
の多数の
先生方
がこの
法案
を
成立
させるか否かという問題が残っているだけであります。
立法
ができないというのは法的な問題ではありません。政治的な問題でありまして、
立法
に
協力
する
気持ち
がない議員がおられれば、これはできないことになるわけであります。もし、この
委員会
がこの
法案
を否決したり廃案にしたりすれば、世界じゅうの多数の人々から
日本
の
国会
が
批判
されることは避けられないと思われます。 慎重な
審議
の上、可決してくださるようお願いいたします。 ありがとうございました。
小川敏夫
5
○
委員長
(
小川敏夫
君) ありがとうございました。 以上で
参考人
からの
意見
の聴取は終わりました。 これより
参考人
に対する質疑を行います。 なお、質疑時間が限られておりますので、簡潔に御答弁いただくようお願い申し上げます。 それでは、質疑のある方は順次御発言願います。
亀井郁夫
6
○亀井郁夫君 自由民主党の亀井でございます。 今日は、両先生にはお忙しい中を御出席いただきましてありがとうございます。今、お二人の先生からいろいろとお話を聞いたわけでございますけれども、短時間ではございますけれども、何点かお尋ねしてみたいと思うわけであります。 特に、この
従軍慰安婦
の問題というのは過ぐる世界
大戦
における本当に悲しい事実であり、そういう意味では多くの
女性
の
方々
が苦痛を経験された、また精神的にも肉体的にも大変いやし難い深い傷を負われたと、これに対して
日本
人の一人としてまず
最初
に
おわび
したいと思うわけでもございます。 この
従軍慰安婦
問題というのは、やはり激しい戦争
状態
の中で、異常
状態
の中で、特に被占領地におけるいろんな問題、そういう意味では強姦等のそういった事案をできるだけ少なくするためにということで当時軍が行った方策だろうと思うんですけれども、しかし、それにいたしましても
従軍慰安婦
の
人たち
は大変深い傷を負われたことは事実でありまして、この問題をどのような形で
解決
していくかということが戦後の大きな課題でもあるわけでございます。 しかし、戦後処理の問題については、そうした戦争中の
賠償
の問題だとか、あるいは
財産請求権
の問題等につきましては、こうした
従軍慰安婦
の問題を含めまして、サンフランシスコの講和
条約
、あるいは他国との両国間の
条約
によって一応法的には
解決
されたというふうな
考え方
を
政府
は取ってきたわけでございます。 そうは言いながらも、やはり
従軍慰安婦
の皆さん方が高齢になり厳しい
状況
にあるというふうなことから、道義的には何とかこれについて
対応
していかなきゃならないというふうな思いから、
日本政府
もいろいろと
対応
してきたわけでありまして、先生からもお話しございましたように、平成三年から二年間にわたって調査をし、そしてまた平成五年には河野官房長官が心から
おわび
と
反省
するという
気持ち
も
表明
しましたし、そしてまた平成六年には時の村山総理が
おわび
と
反省
の
気持ち
を分かち合うための幅広い
国民
参加の運動として、このいわゆるアジア
基金
、
アジア女性基金
を作ったということでもあるわけでございまして、これは平成七年から
アジア平和国民基金
、
アジア女性基金
としていろいろと
対応
してきたわけであります。 これにつきましては、今お話しございましたように、これを受けてもらえた方、これを拒否された方、いろいろあるわけでございますけれども、非常に大きな、特に性格上なかなか、私はこうでしたと言って本人から言いにくい問題でもあるわけでございますから、そういう意味でいろんな難しい問題がたくさんあったんではないかと思います。 そういう意味では、この問題に先頭になっていろいろと
対応
してこられたのが
横田
先生でもございますし、また
横田
先生は
国際法学者
として非常に著名な先生でもございますので、まず
最初
に
横田
先生にお尋ねしたいと思うわけであります。 今申し上げましたように、
日本政府
は、この
従軍慰安婦
問題については法的にはサンフランシスコ講和
条約
及びその他の二国間の関連
条約
によって
解決済み
だという
考え方
を取り、
道義的責任
を果たすべく
努力
しておるわけでありますけれども、これに対して
戸塚先生
は、これだけじゃ駄目なんだ、やはりその
責任
は解消されていないというふうにおっしゃったわけでありますけれども、
国際法学者
として、
国際法
的には治癒されていないのかどうか、治癒といいますか、サンフランシスコ講和
条約
ないしは二国間の
条約
によってこういう問題は
解決
されたと考えることは、法的に間違えているのかどうなのかということについてお尋ねしたいと思うわけであります。
横田洋三
7
○
参考人
(
横田洋三
君) 亀井先生、大変適切な御質問をありがとうございました。 私も、先ほど
戸塚参考人
がおっしゃられましたいわゆる
慰安婦
の
方々
に与えた苦痛、精神的肉体的苦痛、これは当時の
国際法
に照らしても違法であったという
判断
をしております。
戸塚先生
が挙げられた
強制労働条約違反
、あるいは戦時
国際法違反
、さらには
人道
に対する罪、いずれにも該当します。 問題は、その当時の
国際法
は違法な
行為
を
国家
と
国家
の間でどう
解決
するかを決めるという仕組みになっておりまして、
個人
の問題はそれぞれの
個人
が属する
国家
が国内的に処理する、つまり
国際法
と国内法を二段に分けて処理する、そういう
考え方
が圧倒的多数でした。 そういう枠組みの中から見ますと、
平和条約
というのが
国家
と
国家
の間の戦争
状態
をなくし、戦争中に
国家
と
国家
の間で生じた違法
行為
に対する
賠償
、そういったような問題を全部一括して
解決
して、今後はもう戦争中のことは終わりにして二国間の友好
関係
を前進させようということを決める、これが
平和条約
でございます。正に
サンフランシスコ平和条約
、それから、
平和条約
ではございませんけれども、戦後、
日本
の植民地から独立した
韓国
につきましては、一九六五年に基本
条約
が締結され、それに付随した
請求権
問題に関する協定がございまして、大体
サンフランシスコ平和条約
と同様の
請求権
放棄の規定が明確にございます。一切の
請求権
を放棄する、その場合には、
国家
の
請求権
のみならず
個人
の
請求権
も放棄するということが明文で書かれております。 したがいまして、第二次
大戦
中の
国際法
の構造からいいますと、違法ではあったけれども、法的に
個人
が
国家
に対して請求することはできませんので、
国家
間で問題を
解決
する、その
解決
は
平和条約
で終わっていると、こういう仕組みになっておりますので、その限りにおいては
日本政府
の説明は
国際法
的に妥当なものだと考えます。 ただ、私は、
日本政府
はしたがって、
請求権
問題がもうないから、それ以上のことは
日本政府
は発言しておられませんが、私は、いわゆる
慰安婦
の
方々
に与えた損害、これは
国際法違反
だったという
判断
を明確にしております。 以上でございます。
亀井郁夫
8
○亀井郁夫君 よく分かりました。 ということは、やはり戦争中に起こったそういうことに対しての問題は国と国の問題で
解決
し、
個人
は自分の属している国との
関係
においてその問題を
解決
する、これは
従軍慰安婦
の問題ですけれども、と財産上の問題とかいろんな問題がありますけれども、含めてそうするのが
国際法
のルールだというふうに考えてよろしいわけですね。
横田洋三
9
○
参考人
(
横田洋三
君) そのとおりでございます。 ちょっと付言させていただきますと、国内的にはそれぞれの
政府
に対して国内法上の裁判を起こすことができます。現実に、
戸塚参考人
も先ほどちょっと触れられましたが、
日本
の国内でもそういう意味での訴訟が起こっております、
国家
賠償
法。それから、アメリカでも、実は現実に係争中の、この
慰安婦
問題を含めた
強制労働
被害者
のアメリカ国内法上の
請求権
は起こっております。 そういうことを考えますと、国内法上の法的な
解決
は現在まだ係争中であるという
状況
でございます。それは、
答え
が
裁判所
によって出されると、こういうことでございます。
亀井郁夫
10
○亀井郁夫君 次にちょっとお尋ねしたいのは、いつも出てくるのが、
国連
の
人権委員会
等でのいろんな報告が出されて、
日本
はそういう意味では
国連
のそうした決定に違反しているんだ、
違反状態
が続いているんだというふうなお話が多いわけですね。
国連
の
人権委員会
での
クマラスワミ
報告だとか、あるいは
人権小委員会
のマクドガル特別報告等が、さっきも
戸塚先生
からのお話がございましたけれども、そういうことが出て、
日本
があたかも
国連
の決定に違反している
状況
が続いているんだというふうな形での説明があるわけでございますけれども、
国連
結成以前に行われたこうした
一連
の事案でもございますし、そういう意味で、
国連
の報告というのがそういう形で覊絆力を持ったものとして報告が国を縛ることができるのかどうなのか、これについて
横田
先生、
国際法学者
としてお教えいただきたいと思います。
横田洋三
11
○
参考人
(
横田洋三
君) ありがとうございます。 結論から申しますと、覊絆力はございません。ただ、無視していいというものでもございません。
国連
の場で任命された
権威
のある特別報告者によって、いろいろな人の
意見
を聞き、いろいろな事実を検討して出された
報告書
、これは
関係
者は真剣に受け止めるその
責任
はあると思いますが、法的に拘束力があるかと言えば、
答え
はノーでございます。
亀井郁夫
12
○亀井郁夫君 よく分かりました。 その後、
アジア女性基金
につきましてはいろいろと
横田
先生自身が中心になってやってこられたわけでございますけれども、そういう意味では三百六十四名の方がこれを受けておられる。そしてまた、インドネシア、
オランダ
等については、受けておられないけれどもいろいろな施設の整備に
努力
してこられたという形で、国による
状況
もこういう形で違うんだろうと私は思うわけでありますけれども、そういった国のこの制度に対する
評価
というものが、国によって、例えば
韓国
、
台湾
、
フィリピン
、あるいはインドネシア、
オランダ
と、違うのかどうなのか、その辺りを、それからまた、この対象になっていない国がまだたくさんあるんじゃないかと思うんですけれども、その辺りの国はどう考えておるのか、お教えいただければ有り難いと思います。
横田洋三
13
○
参考人
(
横田洋三
君) ありがとうございます。 大変適切な御指摘だと思います。国によって大分違いがございますが、さらに、同じ国の中でも
意見
が分かれているというのが実情でございます。 全体として非常に
日本政府
の
対応
に現在でも厳しい
意見
を多く持っておられる方がいるのは
韓国
でございます。それから、地域としての
台湾
もかなり厳しい
意見
を持っておられる方がおられます。
フィリピン
は分かれておりまして、厳しい
意見
を持たれている方と、それから
日本政府
の
対応
を歓迎している
方々
とがかなりいらっしゃるという
状況
でございます。
オランダ
は全体として
対応
を歓迎する空気の方が強く、反対の方もおられますけれども、その方
たち
は現在
日本
で訴訟を起こして法的に問題を追及するということをやっておられます。
亀井郁夫
14
○亀井郁夫君 ちょっともう一つお尋ねしたいのは、反対して拒否した方がおられるわけですけれども、そうした人の数というのは、受けている人は三百六十四名ですけれども、拒否している方の数というのは何人ぐらいいらっしゃるんでしょうか。
横田洋三
15
○
参考人
(
横田洋三
君) ありがとうございます。 その問題に対するお
答え
は大変難しいのでございます。と申しますのは、我々が直接
被害者
の
方々
に会って御
意見
を聞いたり、事実
関係
を確認して、確かにこの方
たち
が
被害者
であるということを確認する。しかし、申し出てきた人が全部ではございません。いろいろな事情で申し出てこられない方もいらっしゃいますし、それから、ある程度、それぞれの国ではあるいは地域では、
政府
又は
NGO
によっていわゆる
慰安婦
にされた方だと認定されているとしましても、その方
たち
がどのくらい本当に
慰安婦
として慰安所に長期にわたって拘束されていた方かどうかという確認の方法がないものでございますから、どうしてもラフな数字にならざるを得ません。それから、残念なことですけれども、もう戦後五十年以上
たち
まして、
被害者
の方
たち
もかなり多くの方がこれまでに亡くなっておられます。 そういうことを考えますと、正確にどのくらいかということは申し上げにくいんですが、私どもが確認しております
韓国
、
台湾
、
フィリピン
の
政府
又は
支援団体
の
NGO
が確認している
被害者
であるという数字の、
半数
まではいきませんが、四〇%ぐらいの方がこの三百六十四という数字になるのではないかというふうに
理解
しております。
亀井郁夫
16
○亀井郁夫君 ありがとうございました。
戸塚先生
に一点お尋ねしたいんですが、ここにもあります二〇〇〇年十二月の
女性国際戦犯法廷
ということの
判決
を基にしていろいろと議論されておられますけれども、この
女性国際戦犯法廷
というのは、私の記憶では東京で行われたやつではないかと思うんですが、これは
国連
やその他だったらそれなりの
権威
のある
法廷
だと思うんですけれども、
女性国際戦犯法廷
というのは、だれがどういう形で判事を選び、どういう形で行われたのか、誠に不勉強で申し訳ないんですけれども、ちょっと教えていただきたいと思いますが。
戸塚悦朗
17
○
参考人
(
戸塚悦朗
君) ありがとうございます。 実は私、その記録の一部を持ってまいりまして、先生に是非お読みいただければと思いますが、先ほど御紹介したんですけれども、
緑風出版
というところから出ております「
女性国際戦犯法廷
の全記録」というものがありまして、そのⅡでありますが、ここに
判決
が出ております。詳しくは、このⅠというものがございまして、この
女性国際戦犯法廷
がどのように開催されたのかという経過、そしてその
内容
、こういったもの、起訴状、
判決
文、すべてここに
日本
語訳されておりますので、それをごらんいただければと思います。 これを組織されたのは、松井やよりさんほかの
日本
の
女性
団体
の
方々
、バウネット・ジャパンというのがございますけれども、そこと、それから
韓国
、
フィリピン
の
慰安婦
問題の
支援団体
の指導的な
立場
にあられる尹貞玉先生とか、そういった
方々
が提唱されまして、世界の
女性
運動に呼び掛けられて組織されたものであります。そういう意味で、民衆
法廷
でございます。前例としてはラッセル
法廷
というのがございましたけれども、そういうものと同じでありまして、
民間
のものであるという点。 ただし、そこに参加した検事団あるいは裁判官の
方々
は、ここに詳しく出ておりますけれども、国際的に大変著名な法律家の
方々
であります。その
方々
が下した
判決
の
内容
を私拝見いたしましたけれども、過去の
国連
、
ILO等
の議論、あるいは私どもの提出した議論、あるいは
日本政府
の言っておられる議論すべてを非常に広範囲にまた丁寧に調べておりまして、それに対して事実認定もしておりますし、法的
判断
もしておられる。 大きく分けて二つありまして、一つは……
小川敏夫
18
○
委員長
(
小川敏夫
君)
戸塚参考人
、亀井
委員
の質問時間が過ぎておりますので、御答弁を簡潔にお願いします。
戸塚悦朗
19
○
参考人
(
戸塚悦朗
君) 申し訳ありません。 そういうことで、是非この本をごらんいただければと思います。 ありがとうございました。
亀井郁夫
20
○亀井郁夫君 ありがとうございました。 今のお話で、大衆、民衆運動家の
方々
を中心にして行われた
法廷
だということがよく分かりましたので。ありがとうございました。
岡崎トミ子
21
○
岡崎トミ子
君 今日は、
横田参考人
、
戸塚参考人
、
国際法
の学者の観点からこの戦時性的強制
被害者
問題、
解決
をしようということで、
発議者
として、一人の議員としてこの問題、是非この法律は
成立
させたいという願いからお二人に本日お話を伺えますこと、大変心から感謝を申し上げたいと思います。 昨日、私は東チモール議員連盟に所属をしておりますけれども、この東チモールから、二十一世紀の
最初
の独立国でございますが、ここからマルタ・アブ・ベレさんが、
被害者
の方でいらっしゃいます。一九四二年から三年半
日本軍
が駐留いたしましたけれども、その慰安所で、彼女は年齢がよく分からない、七十歳推定と言っておりますから
被害者
となったときの年齢もはっきりしておりません。でも、胸は大きくなかった、生理はなかった、そのころに
被害
に遭ったということを証言されていらっしゃいました。 そして、私は今年、この
法案
の
発議者
とともに、まずは二月にインドネシアに参りました。その後、
フィリピン
、
韓国
、
台湾
に参りまして、
被害者
のおばあさん
たち
にお会いしました。本当に一様に年を取っている、本当にいつ亡くなってもおかしくない、そういう年齢の方で、一様に今日まで大変つらい思いを抱いて生活をされている。そして、忘れることはできない、何とかして正義を取り戻したい、これは共通して昨日のマルタさんも含めておっしゃっていたことだなというふうに思っております。 今回の私
たち
の戦時性的強制
被害者
解決促進
法案
は前の通常
国会
で初めて
審議
することができましたが、その際、私は宮城県の選出の議員なんですけれども、宮城県の地元に宋神道さんという方がいらっしゃいまして、在日の
被害者
で唯一名のり出て裁判を闘っている方でございますが、この方が証言されたこと、多くの
方々
に、
慰安婦
とされたことは一体どんなことなのかということの証言をしていただきまして、これを私が代読をして御紹介をし、多くの
方々
の共感を得ました。 この方の東京地裁の
判決
は、
国際法違反
を初認定しております。
国際法違反
は、そのほかの裁判や
国連
人権委員会
、
人権小委員会
、
ILO
専門
委員会
などで指摘をされておりますが、
国際法学者
でいらっしゃって
国連
でも人権分野で活躍をされております
横田参考人
から、まずお伺いしたいと思います。 確認でございます。ただいま既に亀井さんのときにもおっしゃっていたかと思いますけれども、
国際法学者
として例えば
慰安婦
制度は
強制労働条約違反
だったと考えるかどうか。大変時間が短いので、短くお
答え
いただきたいと思います。
横田洋三
22
○
参考人
(
横田洋三
君) 今の御質問に端的にお
答え
するならば、私は、そのとおり
強制労働条約違反
であったと考えております。
岡崎トミ子
23
○
岡崎トミ子
君
ILO
専門
委員会
はこの
慰安婦
制度は
強制労働条約違反
だというふうに言っていること。それはそうしますと、
日本
としてもしっかり受け入れなければいけない、その重みを持つものだというふうにお考えですか。
横田洋三
24
○
参考人
(
横田洋三
君) あらゆる法律違反、これはその違反をした人、そして国、
団体
、これは極めて重く見なければいけないものです。今おっしゃられた具体的な
ILO
専門
家
委員会
の
意見
も含めました
強制労働条約違反
という
判断
、そのほかにも、
人道
法、
人道
に対する罪等の違反もありますが、これはやはり
日本政府
として重く受け止めるべき性質のものだと
判断
しております。
岡崎トミ子
25
○
岡崎トミ子
君
ILO
憲章の三十七条には、
ILO
条約
についての最終的な解釈権限は国際
司法
裁判所
にあるとしております。
ILO
の見解が受け入れられないのであれば
日本政府
は国際
司法
裁判所
に訴えることもできるという、この点に関しましてはどのようにお考えですか、可能性があるかどうかということについて。
横田洋三
26
○
参考人
(
横田洋三
君) 当然、可能性はございます。ただ、国際
司法
裁判所
の管轄権というのは自動的ではございませんので、それぞれの
条約
が果たして
日本
に関して、ICJと言っていますが、国際
司法
裁判所
に持っていって法的な
解決
が得られるものかどうか、これは綿密に検討する必要のある問題だと思います。 ちょっとついでに申し上げますと、国際
司法
裁判所
は二つの方式によって法的な
判断
を下すことになっておりまして、一つは、国と国の間の
国際法
上の解釈の違いを
解決
する場でございます。この場合には、
日本
の解釈とほかの、
ILO
条約
、特に
強制労働条約
の当事国のどこかが
意見
を述べて、その
意見
の対立が生じたときに紛争を
解決
するために国際
司法
裁判所
に持っていくと、これが一つでございます。 もう一つは、
国連
等の機関が、どこかから問題が出てきたということではなく、この点についていろいろな人の間に
意見
の相違があるので国際
司法
裁判所
の
勧告
的
意見
を求めるということを決議して求める場合がございます。この場合に
勧告
的
意見
を出すというのも一つの国際
司法
裁判所
の役目でございます。この場合の
勧告
的
意見
は、問題を最終的に
解決
する
判決
とは違います。
勧告
的という言葉が示すとおりでございますが、やはりそうはいっても国際
司法
裁判所
の
権威
ある
判断
ですので、その重みはおのずとあると考えております。
岡崎トミ子
27
○
岡崎トミ子
君
奴隷条約
違反も指摘されておりますけれども、確かに
日本
はこのときには
条約
を批准しておりませんけれども、既に慣習法だったのではないかと思いますが、その点に関してお願いします。
横田洋三
28
○
参考人
(
横田洋三
君) 奴隷は
国際慣習法
違反でございます。これは、
日本
は十九世紀の後半に、ペルーの船が横浜に入港しているときに中国人のクーリーをたくさん積んでいて、これを解放しました、
日本
の
政府
の
判断
で。これは最終的には仲裁
判断
で
日本
のやった
行為
は
国際法
上問題がないという
答え
が出ましたけれども、そのときの
日本政府
の
考え方
は、やはり奴隷は
国際法違反
であるという
判断
の下に行われたと私は承知しております。
岡崎トミ子
29
○
岡崎トミ子
君 そうしますと、この
条約違反
ということになりますと、
民間
の機関のアジア
基金
でこの問題を
解決
、解除というふうにはお考えになりますか。
横田洋三
30
○
参考人
(
横田洋三
君) 今ちょっとおっしゃられた、
条約違反
とおっしゃられましたが、私は慣習法違反と思っております、この奴隷の問題は。 ですが、それはそれとしまして、
アジア女性基金
のスタートは、
政府
が道義的な
責任
を認めて
アジア女性基金
を作り、
国民
と一緒になって
被害者
の
方々
に
おわび
と償いの
事業
を進めると、こういうことでございますので、これで法的な問題があるとしてそれを
解決
するための方策ではなかったというのが私の
理解
でございます。 したがいまして、
答え
としましては、法的な問題に直接影響を与えるような
措置
ではなくて、それとは別に、年を取って健康も害しておられる
方々
がたくさんいる、そういう
被害者
の
方々
に対してなるべく早く、早急に何らかの、少しでも
気持ち
が和らぐ
措置
を取るべきであるという、こういう
考え方
に沿って取られた
措置
だと、こう考えております。
岡崎トミ子
31
○
岡崎トミ子
君 慣習法だったということは、加盟していなくてもこの違反を正さなければならないというふうに
日本
はあるのではないかと思います。そして、国が
国家
としてこれに
対応
しなければなりませんから、私どもの考えでは、アジア
基金
では解除をされたというふうには思いません。 その
対応
としてなんですけれども、これをなぜ国できちんと税金で
対応
しなかったのか。
国家責任
でやらなければならないというふうに考えておりますので、実は
民間基金
で行われましても、
国家責任
でないものは受け取れないという、そういう
人たち
が多く今御指摘のようにいらっしゃるわけです。大変混乱をいたしました。
基金
が媒介したからではないかというふうに思うわけなんです。 そして、私は、先ほど申し上げましたように、インドネシア、
フィリピン
、
韓国
、
台湾
へ参りましたときに、多くの受取拒否者がいらっしゃることが分かりました。受け取った方の中でも少なからぬ
被害者
が新たな名誉回復の
措置
を願っておりまして、やはり
解決
をされていない。むしろ、
横田
先生のさきにお書きになったものを拝見いたしましても、受け取った
方々
には
おわび
の手紙が大変誠実に書かれていて、そういうものを受け取ってそれは
解決
したかのようにもおっしゃる方が非常に多いわけなんですが、実は受け取った方も、これは
国家
として
謝罪
したものではないといって手紙を返しているという方もいらっしゃいますし、受け取っていない方がまず本当に多くいらして、その間に大変な問題になっているわけなんです。
横田参考人
は、実はこの書かれたものの
最後
に、不十分であると、この
基金
の問題については不十分であるというふうにお書きになっておりますけれども、不十分であるが前向きの
対応
だというこの
評価
ですね、どの点が不十分だったのかをお伺いしておきたいと思います。
横田洋三
32
○
参考人
(
横田洋三
君) ありがとうございます。 直接尋ねられた質問の
答え
の前に、前提で、岡崎先生がおっしゃられたことについてちょっと私の
意見
を加えさせていただきます。
アジア女性基金
の……
岡崎トミ子
33
○
岡崎トミ子
君 手短にお願いします。
横田洋三
34
○
参考人
(
横田洋三
君) はい。簡単に申し上げます。
アジア女性基金
は国のお金で運営費が賄われ、また、医療・
福祉事業
につきましては全額国が出しておりまして、国がお金を出していないという一般的な表現は不正確だろうと私は
理解
しております。ただし、償い金の
部分
につきましては、これは
国民
から集めた
寄附
でやっております。その辺は明確に区別して認識した方がいいという考えでございます。
国家責任
につきましては、国と国の間の
国家責任
の問題は、先ほど申し上げましたように、
平和条約
等二国間の
条約
で
解決済み
という
日本政府
の
立場
は
国際法
上支持できるものであると考えております。 ただ、不十分だと私が考えておりますのは、
被害者
の
方々
の多くが、まだ自分
たち
の
気持ち
がこれではいやされない、そして
アジア女性基金
のお金を受け取れないということをかなり多数の人がおっしゃっているという
状況
をどうやって
解決
するかということをやはりやるべきであって、こういう方
たち
の
気持ち
を十分に受け入れるということを今後する
努力
を、
日本政府
も、私
たち
、
アジア女性基金
を中心に
活動
してきた我々も真剣に考えなければいけない、そういう問題だというふうに考えております。そういう意味で不十分だということでございます。
岡崎トミ子
35
○
岡崎トミ子
君 もう本当に時間が迫ってきてしまいましたけれども、先ほど
横田参考人
がおっしゃいました、この法律の不十分さも指摘をされておりましたけれども、実はこの法律を作る前にも、当初、
立法
解決
ができないかということを言われておりまして、そしてこれが作れるようになって現在この
法案
があるわけなんですが、この
法案
ができますときに、各国を本岡昭次
参議院
議員は回りまして、各国がこれは
解決
の突破口となるというふうにして支持をしているということでございます。 この支持をされているということをもって私
たち
は
法案
を提出をしているということについて御
理解
をいただきたいと思いますが、
戸塚先生
に
最後
にお伺いしたいと思いますが、私が回りましたときに、各国でたくさんの支持を得ているこの結果としまして、
フィリピン
では
国会
決議を次々に出しております。現在も出し続けております。それから、
韓国
でも生活安定
支援
法改正について今でも取り組んでおります。
基金
の受取をめぐって微妙かつ深刻な問題が発生しているということで、二重に受け取りたいという人の議論も起こっております。
オランダ
では、吉川議員が行っていらっしゃいまして、まだまだこれは
解決
していない、怒りで一杯だったということもよく分かりました。それから
台湾
では、これは
立法
院全体で
法案
支持決議が提出されまして、十月二日に提出されまして、これは
議会
全体で合意をしているという現状がございますが、こうした各国の
被害国
の動きに関しまして
国際世論
の広がりをどう考えるのか、お聞かせいただきたいと思います。
戸塚悦朗
36
○
参考人
(
戸塚悦朗
君) お時間がほとんどないと思いますので簡略に申し上げるつもりですが、一つは、今の御指摘のとおり、各国で
議会
がこの
法案
を支持しているというのは非常に重要なことだと思います。
国家責任
の解除ということにつきましても幅がある程度ありまして、確かにあらゆることをやらなきゃいけないということは困難なんでありますけれども、例えばアメリカの
議会
が戦時中の
日本
人の収容問題で取った
措置
、これも非常に象徴的な
行為
でありますが、
国家
の
行為
であります。その他、
台湾
、
韓国
の軍事独裁政権の時代の重大
人権侵害
問題についての過去清算の
立法
、あるいは南アフリカにおけるアパルトヘイト下の重大
人権侵害
問題への
立法
等を見ましても、あるいはナチス・ドイツの過去清算の
立法
、こういったものも決して完全ではありません。しかし、
国家
が
責任
を明確な形で象徴的に取るという点で共通点があります。
日本
では、そのような過去清算がいまだに一度も行われていない。この
法案
が初めての
法案
でございます。 そういう意味で、世界的にもあるいは
日本
の
歴史
の上でも注目すべき立
法案
でありまして、これがどうなるかということは今後の
日本
がどうなるかということを占う、あるいはアジアにおいて
日本
が生きていくことができるのかどうかということを占う非常に重要なものであります。 この
法案
が歓迎されている、
被害者
団体
、
支援団体
だけでなくて各国の
議会
によって歓迎されている事実というのは極めて重く見るべきであると。したがって、この
法案
が
成立
すればこの問題は
解決
に向かう、また他の問題も
解決
に向かう、つまりアジアにおいて
日本
が胸を張って生きていけるようになるという意味で極めて重要だと思います。 そのほかにも国際的な問題ございますけれども、お時間がないと思われますので、そこでまとめさしていただきたいと思います。
岡崎トミ子
37
○
岡崎トミ子
君 ありがとうございました。
山口那津男
38
○
山口那津男
君 公明党の
山口那津男
でございます。 今日は、両
参考人
には貴重な御
意見
を賜りまして本当にありがとうございます。 私がこの問題に初めて
個人
として接したのは一九六〇年代でありまして、従軍カメラマンの撮った写真が軍の検閲によって不許可になっていたものが数多くありまして、それが公表される機会がありました。様々な写真がありまして、
日本
が戦勝気分に浮かれていた当時と同時進行で、それとは裏腹の、その軍の言わば不祥事にまつわるような様々な実態が写された写真があったわけでありますが、その中にこの
従軍慰安婦
に関する写真もあったわけであります。慰安所に列を成して並ぶ兵士の姿とか、あるいは
慰安婦
と戯れる兵士の姿とか、あるいは軍とともに行軍する
慰安婦
の集団の姿とか、リアルに写されていたわけでありますが、そういう忌まわしい実態を見て、私は大変ショッキングな思いに駆られました。 こういう言わば戦時下で起こった様々な問題についてどういう
解決
を図っていくかということは、今この問題に限らずいろんな
場面
で問題視されている、訴訟もいろんな形で提起されていると思います。そういう
解決
の方法の一つとして、
立法
的に
解決
するという試み、これはその意欲は私は歓迎すべきであると、そう考えております。 ところで、
国際法
というルール、この基本的な原則から見た場合に、
被害
を与えた当時、それらの言わば違法な
行為
、不法な
行為
が行われたとすれば、その当時の法律、
国際法
によって裁かれる、あるいは国内法が存在すればそれによって裁かれるというのが法の原則であって、後に作ったルールで裁くということはできないだろうと思います。 そうすると、この
従軍慰安婦
問題が起きた当時の
国際法
の基本的な
考え方
として、この
被害者
なる
個人
が加害側、加害者
個人
はもとよりなんですが、その加害者の所属する
国家
に対して
賠償
ないしは
補償
を請求できる権利が確立されていたと見ることができるかどうか、この点の基本ルールについてどのように御
理解
をされているか、お聞かせをいただきたいと思います。
横田参考人
、そして
戸塚参考人
、順にお
答え
いただきたいと思います。
横田洋三
39
○
参考人
(
横田洋三
君)
委員長
、ありがとうございます。 結論的にいいますと、当時の
国際法
の圧倒的多数の
考え方
は、
国際法
は国と国の間の権利義務を定めており、先ほどから
国家責任
ということが言われておりますが、この問題の
解決
も国と国の間の
条約
その他で
解決
されるという仕組みになっておりまして、
個人
は、
被害者
であれば、その
被害者
としての権利がもし侵されているとすれば、それは国内法上の何らかの救済手段を求める、これが仕組みでございます。
個人
に与えた損害というのは、
平和条約
におきましてそれを含めて相手国に
賠償
という形でもって
解決
をする、あるいはお互いに相手に
被害
を与えたということでそれを相殺してお互いに
請求権
はもうやめようという
解決
をする。
平和条約
の場合にはそういう
解決
を大体は取りました。アジアの近隣の国に対しては、その後
賠償
を
日本
はしました。この
賠償
の基準の一つは、
被害者
個人
がどのくらいの
被害
を負ったかということが念頭にあって交渉が進むということに
理解
しております。したがいまして、その後の問題は、国が
日本
から
賠償
金を受け取って、その受け取った
賠償
金を今度は
被害者
がどういうふうにその国の中でもって
被害
を
補償
されるか。これは、その国の国内法上の問題と、こういうとらえ方をしていたのが当時の
国際法
であったと思います。 ただ、私が申し上げましたように、
日本
が
国際法違反
を起こしたか起こさないかという問われ方をすれば、これは明らかに侵しているというのが私の
答え
でございます。
個人
は、その当時は侵された
被害者
なんですけれども、
国際法
上の
国家
に対する、
外国政府
に対する
国際法
上の
請求権
を持っていたかといいますと、それは当時の
国際法
としてはなかったというふうに言わざるを得ません。ただし、この点は、その後
国際法
が発展しておりまして、現在の
国際法
は少しずつその点は変わってきております。
戸塚悦朗
40
○
参考人
(
戸塚悦朗
君) ありがとうございます。 極めて的確な御質問をいただきまして有り難く思っております。また、同時に非常に難しい問題でありまして、私のできる限りでお
答え
したいと思います。 この問題について、私は
横田
先生と多少違う考えを持っております。一つは、実体法上の問題と手続法上の問題に分けなきゃいけない。これは、
国際法
上もどういう
行為
が
国家
犯罪あるいは国際犯罪あるいは
条約違反
になるかという、その点についてはその当時の
国際法
を見なければならないことは先生のおっしゃるとおりでありまして、当時、奴隷が
国際慣習法
であったと、奴隷禁止がですね。あるいは
強制労働条約
に
日本
が拘束されていた。あるいは、当時、既に
人道
に対する罪という
考え方
が存在していたというようなことは当時の問題であります。これは今、
横田
先生も当時の
国際法
に違反していた事実をお認めになっておられますので、間違いのないことだと思います。 その場合に、
国家
が何をしなきゃいけないか。これは
国家責任
の問題でありますが、これも実体法上、
補償
その他
謝罪
、真相究明、
被害者
の
処罰
、こういった、あるいは将来の同様の
行為
が起こらないようにする再発防止とか、これは当時からそういうルールがあったわけであります。ただし、今、先生のおっしゃった
個人
の
請求権
がどうであったかということは、非常に問題が難しいんでありますけれども、問題があると。それがすべて国と国との間で
請求権
の放棄まで含めてなされるのが実態であったかどうか、これは議論してみなきゃいけない。 一つは、第一次
大戦
当時の戦後処理があります。このときには、
国家
間の
賠償
問題とは別に
個人
の
請求権
をどうするかということが非常に大きな問題になりまして、仲裁裁判で
解決
するという制度ができました。これは一九一九年のパリ平和会議で議論をした結果なんでありますけれども、なぜそうなったかというと、実は一九〇七年のハーグの平和会議で陸戦法規に関する
条約
が結ばれておるわけでありますけれども、この
条約
の三条に
個人
の
請求権
が認められているのではないかという条文がございます。これは
日本
でもカルスホーベン先生が
裁判所
に鑑定書を出しまして、
個人
の
請求権
が明確にあったということを言っておられます。 したがって、
国際法
上も
個人
の
請求権
が当時からあったんだと、
国家
に対する。これは議論の余地のある問題。もっとも、手続上それをどう実現するかと、
国際法
上。これは、
横田
先生がおっしゃったように
国家
間の交渉が主でありましたし、国内裁判で勝てなければ実現はできないということだったことはそのとおりだと思います。しかし、手続法上も国際仲裁によって
解決
しようというような試みもあったと。 ところで、その手続法はいつの手続法を使うのかという問題なんですけれども、実はこれは現在の手続法を使わざるを得ない。これは裁判を見ていただいても分かりますけれども、実体法は昔の
行為
当時の実体法を使います。しかし、
裁判所
は現在の
裁判所
を使う。これはどこの国に行っても当たり前であります。したがって、現在の
国際法
上こういった問題を議論できる場所、それは
国連
の
人権委員会
であり、
人権小委員会
であり、
奴隷制
部会、あるいは
ILO
の
専門
家
委員会
、こういうような実際にそういう
個人
の
請求権
の問題を議論できる場所ができてきた。そこが強制力ある
判決
みたいなものを出せるわけではありません。しかしながら、これは
横田
先生もお認めになっているように、そこの見解は重みを持ったものとして受け止めなきゃいけない。 それで、
最後
でありますけれども、どうしても法的に問題があるということになったら、国際
司法
裁判所
は
日本
も認めております、ここで
個人
の
請求権
の問題を
国家
が持ち出すということはできるということを、これは国際
司法
裁判所
規程を批准する際に
日本
の
国会
で議論して、
政府
が答弁しております。したがって
個人
の問題も国際
司法
裁判所
で議論ができるということでありまして、最終的にはそちらの見解を伺うのが良いと。もし
日本政府
が
国連
や
ILO
の
方々
が言っておられることは間違いだということであれば、国際
司法
裁判所
に持ち出して議論をすることは十分可能である、そういう手続は発達してきているというふうに申し上げたいと思います。
山口那津男
41
○
山口那津男
君 戦後の
国際法
の発達について両
参考人
からも言及をいただきました。国際刑事
裁判所
というのが批准、発効されまして、今後進んでいくことになります。我が国がこれを批准していないのは誠に残念でありますけれども、この刑事
裁判所
規程の中で、七十五条というのがありまして、一項におきましては、
裁判所
が
被害者
に対する
賠償
について原則を定めることができると書いてあります。そして二項には前段後段がありまして、二項前段で、有罪
判決
を受けた者に対して
賠償
に関する命令を出すことができると、こう書いてあります。そして二項後段では、
賠償
の裁定が信託
基金
を通じて行われるよう命令することができると、こう書いてあるわけですね。これは、刑事
法廷
における刑事
判決
を出す手続規程でありますけれども、そこに唯一民事
賠償
についての規定も設けられているわけであります。 私は、これは
被害者
個人
の
賠償
について言及した明確な
国際法
として注目すべき
内容
だと思っております。これについて、特に
被害者
個人
に対する
賠償
に言及するとともに、信託
基金
を通じて行われるということも書いてあるわけであります。私は、この
従軍慰安婦
の問題が直ちに戦争犯罪と断定できるかどうかはいろんな
意見
があるとは思っておりますけれども、非常に参考になる規定だと思うんですね。ですから、これがこれからの
国際法
をリードする規定の一つだと、こう考えれば、私はこれを参考にして、これから何らかの
立法
的な
解決
、あるいはその他の事実上の
解決
を図っていく道が開けるのではないかと思っているわけであります。 この国際刑事
裁判所
規程七十五条、今私が申し上げた趣旨に関してどのような感想をお持ちになられるか、両
参考人
からそれぞれお伺いしたいと思います。
横田洋三
42
○
参考人
(
横田洋三
君) ありがとうございます。 大変重要な
問題提起
だと思います。 国際刑事
裁判所
は今年の七月一日に発効いたしました。御指摘のとおり、
日本
はまだ批准しておりませんが、私も早急に
日本
が批准することを希望しております。 これは、そこに書かれている三つの犯罪、すなわち集団殺害の罪、それからいわゆる通常の戦時
国際法違反
、それから
人道
に対する罪、この三つのカテゴリーに属する犯罪を犯した
個人
を
処罰
する場所でございまして、
国家
を
処罰
する場所ではございません。これがまず第一点、重要な点でございます。 それとの関連で七十五条の御指摘がございましたが、
個人
で違法な
行為
を行ってこういう犯罪を行って
被害
を与えた場合には、その人は刑事
責任
を負うだけではなくて
賠償
責任
も負うと。人によっては財産を持っている人がいますから、刑事罰だけではなくて、
被害者
に対しては、その人の財産をやはり
被害者
の
気持ち
を和らげるためにでも使うべきだという
考え方
がその
背景
にはあると思います。 これからの
国際社会
は、こういう形で
個人
の
責任
を直接追及する、そしてまた
被害者
を直接
請求権
を持つ主体として扱うという方向に向かっていることは事実でございまして、国際刑事
裁判所
は正にそれの画期的な一つの出来事であったと思います。 ただ、この
裁判所
は、
裁判所
ができた今年の七月一日以前に起こった犯罪につきましては
処罰
できない、管轄権を持たないという規定になってございますので、いわゆる第二次
大戦
中の性的強制
被害者
の方
たち
に対しての問題
解決
には当面ならないと考えております。
戸塚悦朗
43
○
参考人
(
戸塚悦朗
君) 私も
横田参考人
の
意見
と全く同様の見解を持っておりまして、この
条約
が批准されてもそれは
慰安婦
問題に適用されるものではないわけでありまして、直接には活用できない。しかしながら、将来の同じようなことを起こした場合には適用があるわけでありますから、再発防止という点では十分な有効なものになるだろうと。したがって、この問題の関連としてやはりこの
条約
を批准していくということは、
日本
が
国家
として
慰安婦
問題に対する
国家責任
を取っていく一つの方法であるというふうに考えます。 また、その
解決方式
ですね。これについては、ここで
提案
されているようなものを
日本
が自ら受け入れていくことはできるわけであります。例えば、非常に極端だと思われるわけでありますけれども、刑事
責任
についても
処罰
をもし本気で
日本
が
対応
しようとすれば、訴追事項というのは訴訟条件でありますので、これを撤廃するという
立法
も可能でございます。 したがって、そこまで進んで
日本
が自らこういうような問題に対して過去の問題も
対応
しようとすれば可能であるというふうに申し上げたいと思います。
山口那津男
44
○
山口那津男
君 ありがとうございました。
小川敏夫
45
○
委員長
(
小川敏夫
君)
参考人
にお願い申し上げます。 各
委員
の質疑時間が限られておりますので、御
意見
は簡潔にお願い申し上げます。
吉川春子
46
○吉川春子君
日本
共産党の吉川春子です。 お二人の
参考人
に心から感謝いたします。 この
慰安婦
問題を何とか
解決
したいということで、
参考人
質問が今日実現いたしました。これは当
委員会
が真剣に取り組んだ結果であり、それにふさわしい今質疑が行われていると思います。
横田洋三
先生にお伺いいたしますが、先生は、
強制労働条約違反
、人身売買禁止
条約違反
あるいは
奴隷条約
、慣習法違反が明確にあったということをおっしゃいました。これは
国際法学者
として当然とも言えるんですが、
政府
が、つい最近の質問でも、
強制労働条約違反
に当たるんじゃないかと私が繰り返し聞いても、言を左右にして認めないんですね。だから、当時こういうことで
国際法
に違反していたということを明確に認められたということに対して私は良かったなと、当然のことながら良かったなと思うわけです。 そこで伺いますが、
国際法
に違反しているということは違法
状態
が今も続いていると、このように
理解
してよろしいのでしょうか。端的にお願いします。
横田洋三
47
○
参考人
(
横田洋三
君)
答え
の方から申し上げますと、違法な
状態
は続いておりません。ただ、違法な
行為
の結果、
被害者
が
存命
中で、しかも心身ともに傷付いたままの
状況
がかなり残っているという
状況
、これはございます。これは一応区別して考えた方がいいと思います。
日本
はもう、第二次
大戦
後、いわゆる慰安所を作ったり
慰安婦
を強制的にそこに連れてきたり性的な奉仕をさせたりというようなことは一切しておりませんので、違法な
状態
は今は全くないということでございます。
吉川春子
48
○吉川春子君
日本
がこういう
国際法
に違反したという
行為
を行って、その違法
状態
が解除されたのは、なくなったのはいつの
時点
ですか。
横田洋三
49
○
参考人
(
横田洋三
君) 違法な
行為
が行われなくなった
時点
で、私は正確には分かりませんが、少なくとも、終戦によって
日本
の軍隊が解散させられましたが、もうその
時点
では違法な
行為
はなくなっていると思います。
吉川春子
50
○吉川春子君 違法な
行為
がされなくなったということと、違法
行為
を犯してその違法の問題についてちゃんと決着が付いていないということとは別ではないでしょうか。
横田洋三
51
○
参考人
(
横田洋三
君) 御指摘のとおりでございます。私もそういう考えで、御質問が、違法な
状態
が続いているかどうかという御質問に対しては続いていない、それがいつ終わったかということにつきましては遅くとも終戦のときに終わっている、
日本
の軍隊が解散させられた
時点
では終わっていると、こういうふうに了解しているということでございます。 しかし、その違法な
状態
の結果が続いている
状況
にあったということはそのとおりでございます。
吉川春子
52
○吉川春子君 この違法な
状態
の結果が現在も続いているとすれば、これに対して
日本
は何らかのこれをなくする
措置
を取らなくてはいけないのではないでしょうか。
横田洋三
53
○
参考人
(
横田洋三
君) ありがとうございます。そのとおりでございます。 一つは、国と国の間の
関係
での先ほどから出ております違法な
行為
に対する
国家責任
の問題でございまして、国と国の間の
関係
につきましては
平和条約
等でそれぞれの国との
関係
は
解決
しているという
日本政府
の
立場
がございまして、これは
国際法
的にそのとおりだと言わざるを得ません。 問題は、
被害者
がまだ心身ともに傷付いたまま残っておられたということ、そして今でも残っておられるということ、この点をどうするかというのが御指摘のとおりの問題でございまして、私もその
被害者
の
方々
に何かをすべきだという
気持ち
は強く持っておりました。したがいまして、この問題が提起された
人権小委員会
の場でも発言をし、
被害者
の
方々
にできるだけその
気持ち
を少しでも和らげていただけるような方法はないかということを考え、それなりに
人権小委員会
でも発言し行動してまいりましたし、
日本政府
が、先ほど不十分だと申し上げましたが、しかし前向きの行動として
アジア女性基金
を一九九五年に作って、以後は
被害者
の
方々
の
気持ち
を少しでも
解決
できる方向に向かう
活動
とするように
アジア女性基金
にもかかわってきた。
アジア女性基金
は、そういうふうに
被害者
の
方々
の
気持ち
を少しでも和らげるための方策はないかという、そういう私どもの
努力
の一つの現れ方であったということを申し上げさせていただきます。
吉川春子
54
○吉川春子君
アジア女性基金
は明確に
道義的責任
ということで行われてまいりました。そして、今、先生が御指摘のように、違法の結果があるということですので、
アジア女性基金
でもってその違法な結果に対してその
責任
を果たしたというふうには言えないのではないかというふうに思いますし、また、国と国との間で
戦争責任
を
解決
してきたということは私も認識はしておりますけれども、
個人
の
請求権
については
日本政府
もあるんだというふうについ最近の
国会
でも答弁しております。 これは、
オランダ
の外務相スティッカーと
日本
の吉田全権大使との間に交わされました書簡等にもそういうことがあり、それを全体的に及ぼしていると思いますが、その問題には今日は入る余裕がありませんので、全く
個人
の
請求権
がないんだということは
政府
自身もそういう
立場
を取っておりませんので、明らかにしておきたいと思います。 そして続けて、
横田参考人
、お伺いいたしますけれども、
アジア女性基金
の償い
事業
はこの夏に打ち切られました。そして、その
アジア女性基金
を受け取った人は
台湾
、
フィリピン
、
韓国
の
被害者
の四割ぐらいだろうということを先ほど言われました。ということは、あと六割の方が、
参考人
の
立場
からしてもあと六割の方が受け取っていない、拒否している。とりわけ一番深刻なのは、
韓国
の
政府
そして
被害者
が圧倒的多数が拒否されているということにあるわけでございまして、今後どうしていったらいいのか。 もうこのまま
アジア女性基金
ですべて終わりではないということは官房長官も繰り返しおっしゃっております。この
アジア女性基金
ですべてを終わらすことができなかったとすれば、私
たち
は
アジア女性基金
を全面的に否定してという
立場
ではなかったんですけれども、
立法
解決
という一つの方法を出しました。 それで、
戸塚参考人
、
横田参考人
両方に伺いますけれども、今後、こういう残された問題、
アジア女性基金
では
解決
できなかった問題についてどのようにしていけばいいのか、前向きの御
意見
を伺わせていただきたいと思います。
戸塚悦朗
55
○
参考人
(
戸塚悦朗
君) 今後どうすればよいかということなんですが、一つは、私は、この
解決
に向かっての
日本
人の行動というのは、私も含めましてプロセスの問題だと思っております。できる限り
被害者
の
方々
の
気持ち
を酌む、そして
被害者
の
方々
の同意の得られる
解決
に向かって最大の
努力
をする、
日本
側でここまでしかできないんだからそれを受け取れということを言ってはいけないんだと、そこが一番の大きな問題だと思います。
横田
先生も大変御
努力
いただいて、確かに
道義的責任
を
一定
程度取るということで
民間基金
が
努力
された、これは私も認めております。
関係
者が善意であったことも認めております。しかし、こういう
立法
の
法案
が
提案
されていないという
状態
ではこれしかないというふうに思われたのも無理がないと思われるんでありますが、だから、不可能なんだからこれを受け取ってくれということは、やはり
被害者
にとっては、受け取る方は受け取りますけれども、拒否される方も出てくると。したがって、全体として
被害者
の方に受け取っていただける方法を考えなければいけない。 そこで出てきたのがこの
立法
でありまして、
立法
の
提案
が
被害国
あるいは
被害者
で
民間基金
を拒否された
方々
から歓迎されているという事実は極めて重い。これを、私は更に
被害者
側と対話を継続しながらこの
審議
を続けていただく、この
審議
を続けていただくことそのものが私は
被害者
側に対する
謝罪
の
行為
であると。このプロセスを明確に
被害国
側に示すことで
被害国
側が納得してくださる。 どのような
立法
をしても、本当に
被害者
の
被害
は返ってきません。結果として表れるのは
被害者
側の許しです。この許しを得るために私
たち
は何をしなきゃいけないのか。これは
被害者
側と誠実に向き合う、
被害者
側の言われることを熱心に誠実に最大限の
努力
をして実現しようとするというそこにあると思います。 アジアと
日本
が和解をするというためにはあらゆる
行為
をしなきゃいけない。その場合に
被害者
側の
気持ち
を最大限に尊重する、押し付けない。そして、私はだから、この
立法
でも
被害者
側が拒否されるんであればすべきでないというふうに考えております。現在のところ歓迎されておりますので、この
立法
を進めていただく、そして慎重な
審議
の上
成立
させていただく、これが最大の
被害者
に対する
謝罪
のプロセスだというふうに思っております。
横田洋三
56
○
参考人
(
横田洋三
君) ありがとうございます。 私も
戸塚参考人
が言われた継続的、真剣な継続的対話とお互いの
理解
の
促進
を行う、これは極めて重要な問題だと思います。これは私も私の
立場
でこれまでやってきましたし、また続けたいと思いますし、また
日本政府
もできるだけの
努力
をしていただきたいと、そういうふうに思っております。 法的な問題ですが、
被害者
の
方々
及びその
支援者
が
国連
の場、とりわけ
人権小委員会
の場で明確に述べておられる
立場
は、
日本政府
が
法的責任
を認めて、法的な
謝罪
と法的な
補償
をすること、これです。そして
責任者
を法的に
処罰
することなんです。
戸塚先生
は先ほど、
立法
が法的
答え
になるというおっしゃられ方をしましたが、私の
理解
しているところでは、それはそれで一つの法的
対応
ですが、
被害者
及びその
支援団体
が
要求
している
法的責任
を認めるというのは、これから作る法律、
立法
による
解決
という意味ではなくて、既に存在する法律の下で違法
行為
を行ったんだから、法的にそれを認めて
謝罪
をし、現在あるあるいは過去にあった法律に基づいて、
国際法
に基づいて
補償
をすべきだという
要求
、そしてその当時の
国際法
に基づいて
責任者
を
処罰
すべきであるという、こういうことを
要求
してきているわけでございます。これが私が
人権小委員会
で毎年繰り返し聞いている
支援団体
の
方々
の発言と考えていいと思います。 そうしますと、その点については今の
法律案
も
答え
を持っていないというふうに私は認識しております。したがいまして、
戸塚先生
もちらっとおっしゃいましたが、これで完全に
解決
するかどうかということはまだ分からないという
状況
であろうかと思います。 私の考えでは、法的な
答え
は、現在係属中の様々な裁判、
日本
やアメリカで行われている裁判、これに一つ一つ
答え
が出ていくプロセスの中で法的な
答え
は探さざるを得ないという、そういう
理解
でございます。
吉川春子
57
○吉川春子君 私どもが
提案
しております法律は、一つは、私が直接行きましたインドネシア
政府
そして
オランダ
政府
の
代表
の方も
評価
をしていただいております。
オランダ
は確かにサンフランシスコ
条約
で決着済みという
立場
を取っておりまして、しかしながら、この法律についても非常に期待を持っております。 それで、私
たち
の
法案
は、当時の実行
行為
者について
処罰
せよと、こういう
内容
は含んでおりません。それは、それをもってしないと完全に法的
解決
ができないんだとおっしゃる
横田
先生の御発言の意図がどこにあるのか私は分かりませんけれども、例えば
慰安婦
被害者
の皆さんが心の傷、トラウマに悩んでいる、そして
日本政府
が全然
謝罪
をしてくれない。先ほど
横田参考人
のお話でもありましたけれども、
アジア女性基金
を受け取る人にはお手紙が渡っているんです。でも、受け取らない人には渡っていない、こういう問題もありまして、本当の意味で
日本政府
があのときは本当に戦争としてこういうことをやって済まなかったという態度を
表明
するに至っていなくて、その点についてもやっぱり
謝罪
も行われていない、そしてましてや
政府
のお金による
補償
ということも行われておりません。百歩譲って、医療・福祉
支援
事業
がこれが
政府
の
謝罪
の表れだという形で法的に取れればよかったと思いますが、そういうことも取られていない。そして、償い金の二百万は
民間
のカンパだというところで、本当に
日本
が法的な
責任
を認めてそれに基づく
行為
が行われていないということに対して、多くの
被害者
、
被害国
は
拒否反応
を示しているわけです。 ですから、私
たち
の法律がパーフェクトだとは思いませんけれども、今、
日本
の
憲法
、
条約
、そして法令の中でぎりぎりなし得るものとして出しておりますので、実行
行為
者まで
処罰
せよという法律にはなっていないから不完全だということはちょっと私は思いません。 それで、
最後
、もう時間がなくなりましたけれども、なぜ
政府
はなかなか
解決
できないのか、毎年国際的な
批判
にさらされているのか、その理由について、一言ずつしかもう時間がありませんが、答弁をお願いします。
小川敏夫
58
○
委員長
(
小川敏夫
君) 時間が来ていますので、簡潔にお願いいたします。
戸塚悦朗
59
○
参考人
(
戸塚悦朗
君) その問題、非常に難しい問題でありますが、なぜ
解決
できないのか、これは、一つは国際性の欠如だと思います。それから次は、私一番大きいと思うのは、
日本
が極めて男性中心的であるというところにあると思います。
女性
に対する犯罪を認めると
日本
社会がひっくり返る、それがやりたくないということではないかと思います。それが二つですけれども。 それから、今の
処罰
せよという問題があるということでしたけれども、これについて非常に強い反応があることは間違いありません。しかし、不
処罰
の場合どうすればいいか。
国際法
上、
補償
すればよろしい、不
処罰
に基づく
補償
と。それはこの
法案
に含まれているというふうに私は考えております。ですから、
拒否反応
をそんなに強く示される必要はないのではないかと思います。
横田洋三
60
○
参考人
(
横田洋三
君) ありがとうございます。
責任者
処罰
の問題につきましては、
戸塚参考人
も言われましたが、
被害者
及び
支援団体
が強く
要求
していることであることは、これは確かでございまして、
国連
の場で
要求
している項目の一つにございます。 したがって、いわゆる市民
法廷
もそういう
要求
の流れの中で出てきていることでございまして、私が意図しているわけではなくて、私は、そういう
方々
の主張をここで紹介させていただいたと、その主張に沿えばこの
法律案
では依然として問題は残されていると。今、先生がおっしゃったとおり、これでも完全ではないとおっしゃられました。そのとおりだと思いますが、それは私の認識と一致しております。 そこで、私どもが
国連
で
審議
をし、
日本政府
に早く
対応
してほしい、一九九五年の
時点
で
対応
してほしいと考えて、
アジア女性基金
が完全な
答え
ではないとしても、とにかくあの
時点
で
存命
中の、しかも受け取る意欲のある方がいらっしゃれば、その方
たち
に対しては当面何かをすべきだという、そういう
気持ち
で、不完全だけれども
協力
していこうという
気持ち
になったそのときの
気持ち
は、今先生がおっしゃった
気持ち
と同じでございます。 ですから、私は、
アジア女性基金
の
答え
をまず踏まえて、あのときそういう
気持ち
でこれを作ってここまでやってきた、この先どうするかということになったら、やはり先ほど申し上げたように、法的な問題は法的な場で
解決
、しかし、私
たち
としては継続して誠意を示し続けるということでないかと思っております。
島袋宗康
61
○島袋
宗康
君
国会
改革
連絡会の島袋
宗康
でございます。今日、お二人の
先生方
、大変お忙しい中を御
意見
賜りまして、ありがとうございます。 まず、
横田参考人
にお伺いいたします。 当
内閣委員会
調査室が、一九九八年東信堂刊の大沼・下村・和田編「「
慰安婦
」問題と
アジア女性基金
」より引用して作成した「「
慰安婦
」問題と
国連
の人権保障」という題の論稿の中で次のように
横田
先生、述べられております。 御自身も参画された経験を持っておられる
国連
の人権
関係
機関での
審議
状況
を踏まえて、 「
アジア女性基金
をとおして「償い金」と
首相
の
反省
とお詫びの手紙を
被害者
ひとりひとりにお届けするという
活動
は、
法的責任
の問題に対する
答え
ではないという点と
政府
のお金が「償い金」の
部分
に含まれていないという点で不十分である。しかし、医療・
福祉事業
のか
たち
で
被害者
の方
たち
には
政府
の予算からも相当の額が支出されること、および
首相
の手紙の誠実な
内容
、さらに尊厳
事業
や調査・
研究活動
などは意味のある
活動
である。全体としては
被害者
も高齢になられて一刻も早い
対応
が要請されている
状況
を考慮すれば、このような
日本
の
対応
は前向きの
措置
として
評価
できる」というものであると思います。 と述べておられます。 これは、
国連
人権
関係
機関における
慰安婦
問題に対する主要な論調であると同時に
横田
先生御自身の御見解でもあると
理解
できるわけでありますけれども、このような
国連
人権
関係
機関や
横田
先生の御見解にもかかわらず今なおいわゆる
従軍慰安婦
問題が
解決
されないままに終息が、要するに終息しない真の原因がどのような点にあるというふうに、終息しないということについてどういうふうな点が問題であるのかということをお尋ねいたします。
横田洋三
62
○
参考人
(
横田洋三
君) ありがとうございます。 島袋先生の御指摘、私、今、先生が読んでいただいた
部分
、私が書いた
部分
でありますが、聞いていまして、今の
気持ち
と全く変わりがありません。そのときの、書いたときの
気持ち
のまま今もそう思っております。 そこで、先生の御質問のポイントでございますけれども、なぜこれだけ誠意を持ってやってきたけれども十分に
理解
が得られないのかと。私どもとしてはできるだけの
努力
をして、
被害者
の
方々
お一人お一人にできれば説明したい、それから反対運動を続けておられる方とも対話をしたいということで、いろいろな形で
被害者
の方への接点を求め、それから反対運動をしておられる方との対話を求めてまいりました。一部はそれで実現しまして、私どものやってきたことを説明することによってかなり
理解
を得られた
部分
もございます。そういう
人たち
の中には、先生
たち
のやってきたこと、それから
アジア女性基金
がやってきたことを自分はちょっと誤解していたというふうに率直におっしゃる方もおられます。 なぜ反対運動がまだあるのかということにつきましては、大変残念でございますけれども、私どもの誤解を解く
努力
不足と、それから、国境を越えての問題ですので、お一人お一人にじかに説明をしてすべての誤解を解くことができないという、そういう限界のある中での
活動
でございまして、これはしたがいまして更に継続して私
たち
は対話を続けていきたいと、そういうふうに思っております。 結論的に申しますと、なぜそうなのかということについては、私は私
たち
の
理解
を求める
努力
がまだまだ足りないんだと、こういうことでございます。
島袋宗康
63
○島袋
宗康
君 受け取っていない
方々
の
気持ち
を大体考えてみますと、やはり
日本政府
はこの問題を
謝罪
し
補償
しなければ正しい信頼
関係
は生まれないというふうなことが大方の
方々
だと思うんですよ。したがって、先生がおっしゃるように、
基金
を設けて四〇%の
方々
が受け取ったにしても、まだ
日本
人、
日本政府
に対するいわゆる信頼、そしてこれからアジアに対する全体的な信頼
関係
というのは生まれ出てこないんじゃないかというふうな、私
たち
はそういう考えを持っているわけです。 したがって、村山
首相
時代にそういった
政府
による
謝罪
、いわゆる
謝罪
と
補償
金じゃなくして
民間
に任せた、
民間
から調達したというふうな点で、やっぱりこれは
政府
の
責任
を果たしていないんじゃないかというふうなことが今問われているんじゃないかと思いますけれども。 先ほど来いろいろ説明ありますけれども、やはりその点についてアジアの
方々
が本当に
日本政府
を信頼し、あるいは
日本
人とアジアの皆さんと本当にこれから二十一世紀に向けて信頼
関係
を築いていくというふうなことを踏まえていくならば、やはり皆さん方の御
意見
を十分尊重して、
政府
の
責任
においてこれを
謝罪
し
補償
していくというのが私は基本的になされるべきだというふうに思っているんですけれども、再度お願いします。
横田洋三
64
○
参考人
(
横田洋三
君) ありがとうございます。 私は、基本的に今、島袋先生がおっしゃられたことに賛成でございます。 私どもは、
アジア女性基金
の
活動
を
協力
して支持するという
立場
で、できるだけ反対者の
方々
の
理解
を得るように努めてまいりまして、反対者の
方々
もいろいろな御
意見
があることは承知しておりまして、その中で、比較的これまで誤解をしていたと、先生がおっしゃったことでよく分かりましたという方もかなりいらっしゃることは事実でございますが、私が期待したいのは、これから
日本政府
もいろいろな問題についてやはり、この問題だけではありませんが、いろんな問題についても
関係
者にきちっと説明して、
日本政府
の意図を
理解
してもらう
努力
をするということは大事だと思いますが、特に国際的な影響のある外国の国籍を持つ方
たち
が
被害者
で多くいらっしゃるということを考えますと、そういう方
たち
に対して
日本政府
として
理解
を得るための
努力
を一層続けてほしいという
気持ち
もございます。それもやはり今後の問題の
解決
に結び付くのではないかと考えております。
島袋宗康
65
○島袋
宗康
君 先ほど岡崎
委員
からお話がありましたように、東チモールの方が非常に強制的にいわゆる
従軍慰安婦
として大きな
被害
を受けたというふうなことで私らに説明がありましたけれども、本当に先ほどありましたように、自分の年齢さえ分からないというふうなことで、もう大変な
状況
ですね。これはもう
日本
の軍隊そのものが大きな
被害
を与えたというふうな点では大変
人権侵害
だというふうに思われます。 それで、その説明の中で、東チモールだけでも六百人か七百人の
慰安婦
がおっただろうと。実際に、また今本当に名のりを上げるということが大変難しい
状況
でありますけれども、三十名ぐらいはその中に名のりを上げた人がおると。しかし、それもやはりいろんな点で、
政府
に対する
要求
といいますか、
補償
要求
というものは十分な組織を作っていないためにうまくいっていないというふうな説明でありますけれども、
政府
としてやっぱりそういった具体的に、例えば東チモールだけでも六百から七百人の
慰安婦
がおったと、そういったことを十分把握して、そしてその上でその
基金
というふうなものを、私は
基金
を認めるわけじゃないけれども、そういうふうな本当に大所的な人数を把握した上で
基金
というものを作って、そしてやるべきじゃないかという、これは
基金
を賛成するわけじゃないということをはっきり申し上げていますけれども、そういうふうな仕組みを
政府
として取るべき
責任
があるんじゃないかというふうに思いますけれども、その点についてお伺いいたします。
横田洋三
66
○
参考人
(
横田洋三
君) 私は、七年、八年前に
基金
を作って、それに
協力
するという
立場
を取りましたので、その点では島袋先生とは違いますが、恐らく
被害者
に会って感じられた
気持ち
は先生と同じでございます。 私もそのころ十数名の
被害者
の方とかなり細かいお話を一緒にさせていただいて、その経験のひどさに私もショックを受けました。
被害者
の方
たち
の
気持ち
を一人一人伺いますと、これは早急に何かしなければいけない、
日本
の
国民
の義務だと私は自分で思いました。私は
政府
でありませんが、自分で思いました。それが私のこの
基金
にかかわるきっかけでございます。 東チモールの問題、それからさらにほかの国、地域、今、朝鮮民主主義人民共和国との国交に向けての交渉が順調に進む
状況
ではありませんが、しかし一応そういう
努力
は始まっているわけですけれども、そこでは当然まだ未
解決
の問題としてこの問題が一つの議題になるとは考えられるわけですね。 こういう問題について、私は、
政府
は今から七年前に
アジア女性基金
を作って
対応
するという決断をし、我々もそれに
協力
したわけですので、私の
意見
は、こういうまだ
対応
していない問題についても
アジア女性基金
を通して
答え
を出せるような道を探るのが
政府
としては一貫性のある
対応
ではないか、こういうふうに考えております。これは私の
意見
でございます。
島袋宗康
67
○島袋
宗康
君 それじゃ、
戸塚参考人
にお伺いいたします。 この論稿の中で、
女性
のための
アジア平和国民基金
の償い金によっては
被害国
、民族、
被害者
、
支援団体
全体との和解を実現するものとなっていない事実を直視し、
法的責任
の問題を将来の課題とし、今、暫定的
国家
補償
の支払すべきとするICJ、
国際法
律家
委員会
勧告
の実現を図るべく
日本政府
が
被害者
個人
に対し暫定
措置
金を支給することができる
議員立法
の
成立
の必要性について説いておられます。 そのお
立場
から、現在、当
内閣委員会
に継続している戦時性的強制
被害者
問題の
解決
の
促進
に関する
法律案
をどのように
評価
しておられるのか、その重要な論点についてお述べいただいた上で、いわゆる
従軍慰安婦
問題の現状についてどのように御認識なさっているのか、お伺いいたします。
戸塚悦朗
68
○
参考人
(
戸塚悦朗
君) ありがとうございます。 私のその
時点
で書いたものは非常に不十分でありまして、この
法案
の方がはるかに進んでいるという点で高く
評価
しております。 第一は、私のその
時点
では暫定でありました。しかし、この
法案
では、それは最終的な
措置
になっております。それから、この
法案
は公的に
被害者
に対して国が金銭を支給するという点で極めて明確であります。
国会
が行うという点でも明確であります。
政府
が行うという点でも明確であります。 先ほど、
横田
先生から言われた誤解を受けていたというその誤解を受けやすかった最大の原因は、
民間基金
を間に入れることによって訳が分からないようなものになってしまった、
政府
の
行為
ではないようになってしまったというところにあると思います。
国家
が、
国会
が関与し、そして
政府
が支払うということで極めて明確になっているという点で非常に優れているというふうに思っております。 最大の点は、
謝罪
という言葉がある。私が
提案
した当時は、その
謝罪
という言葉がなかった。実は、
被害者
側と何年にもわたって私は交渉をいたしました。自分の
提案
を持って
韓国
に行きまして、二年間ソウルで
被害者
側と協議をしましたけれども、この秘密協議の結果、結局拒否されました。拒否されて私は非常に意気消沈していたわけでありますが、しかし、まだ希望はあると。その拒否された
状況
を実は法制局の皆さんにお伝えしました。法制局の皆さんが極めて熱心な作業の結果、この
謝罪
という言葉を入れた。これが
最後
の瞬間に
韓国
の
支援団体
が、
日本
に対するジャパン・バッシングの切り札を失うということもあるのに歓迎した。これは極めて大きなことだと思います。ですから、その点で非常に優れているというふうに
評価
いたします。 しかし、そうなってきた原因はやはりプロセスにあるだろうと。これは本岡先生始め議員の
先生方
が
被害者
側を丁寧にお訪ねになって、懇切にこちらの意図も説明し向こうの
意見
も聞いて、その上ででき上がってきた、そのプロセスが最大の
謝罪
になっているというふうに私は思います。 この
審議
もそのプロセスの一つであります。これが
理解
されれば、必ず
被害者
側全体によって受け入れられると。したがって、この
法案
は
解決
の端緒になるというふうに私は考えておりまして、高く
評価
しているというふうに申し上げたいと思います。
島袋宗康
69
○島袋
宗康
君 私
たち
も今、先生の御期待に沿うように頑張ってまいりたいということを
表明
して、時間でありますので、終わります。
田嶋陽子
70
○田嶋陽子君
戸塚参考人
にお伺いします。 今、
謝罪
ということで御説明いただいたんですけれども、今のお話を伺って、どれだけ
日本
の
人たち
がよく分かるかというのは疑問だと思います。というのは、私の周辺でも、あるいは世間でも、
日本
は土下座外交だとか、これだけ謝っても謝っても、まだよこせ、まだよこせと言うという、そういう感じで受け取っています。このギャップは何なんでしょうか。
戸塚悦朗
71
○
参考人
(
戸塚悦朗
君) やはり、最大の問題は、
被害
が
日本
人の想像を超えたほど大きかったということだと思います。したがって、私も実はこの問題に取り掛かる前は全く知らなかった。先ほど言った経過で、
国連
にこの事実を報告した、その後で
被害者
側の
方々
と頻繁にお会いするようになって、一つずつ植民地支配とは何か、
女性
に対する
日本軍
の行ったことは何か、そういうことを伺って、私自身が極めて男性中心的な人間であった、家父長制そのものの考えを持っておりましたので、その点を強く
反省
した次第であります。 お
答え
になるのかどうかよく分からないんですけれども、これまで
日本
が、例えば先ほど言われたような
条約
によって終わったというふうに言ってきたりという問題でありますけれども、実際問題として、
政府
が言われたことは、先ほど私は橋本
総理大臣
の答弁をちょっと引きましたけれども、これは実際はよく見てみますと、
解決
したとは言っていないんですね。
サンフランシスコ平和条約
等でその
財産請求権
の問題は誠実に
対応
してきたと、こういうふうに言っているだけでありまして、
解決
したとは一言も言っていない。その点をやっぱり重視すべきだと思います。 例えば、北朝鮮に対しては
条約
はないんですね。
台湾
との
条約
は
日本
が破棄したわけであります。これはないんですね。それから、
韓国
に対しても、違法
行為
について
個人
の
請求権
を放棄するという条文はどこにもない。中国に対しては、
日本
は
賠償
というものは全く払っていない、あれだけの
被害
を与えて一銭も払っていない、それで誠実に
対応
したと、こういうふうに言っているんですね。 中国とは、確かに日中
平和条約
ございますし、日中共同声明ございます。しかし、その中に
個人
の
請求権
の放棄という言葉は一言も入っていない。当時は、もう既に
ジュネーブ
条約
によって
日本
も中国も
個人
の
請求権
の放棄を禁止されておりました。だから、できなかったというのが私の考えであります。北朝鮮に対しても、今、北朝鮮が
個人
の
請求権
を放棄しようとしても
ジュネーブ
条約
の拘束のためにできない、そういう
状況
であります。 これを、
条約
によって
解決
してきたかのような発言を繰り返すということで、言わば
国民
もあるいは
被害国
の
人たち
もだましてきたと、この態度に問題があるのじゃないか。私は、そういう事実を上手に言葉で丸めて、
被害国
をだまそうとかあるいは
日本
の市民の
人たち
に誤解を与えようとか、そういうようなことをやってはならないと。それをやればやるほど
関係
は悪くなる。人をだましたら必ずその反動が来ます。したがって、真実をきちっと認めて、究明して認めて、そして
被害者
に対して、
被害国
に対しても
日本
の市民に対してもきちんと事実を全部明らかにすると、決してだまさないと、そういうことがないといけない。 このだましてきたというか、うそをついてきたというか、誠実に
対応
してこなかったのに誠実だと言うその態度が私は一番大きなギャップを作っている。このギャップを埋めるには誠実に
対応
するしかない、先ほども申し上げたとおりです。それが初めて、本当に初めてなんですね、
日本
の
国家機関
の
行為
が、ここで
審議
するという
行為
が
被害国
に歓迎されたと。これはいまだかつて
歴史
的にないんです。その事実を極めて重く認めていただければ、それを続けていったら必ず溝は埋まっていくと、そういうことだと思います。
田嶋陽子
72
○田嶋陽子君 確かに、その橋本元総理が謝ったということも、英語を見れば、マイ・パーソナル・フィーリングであって、国として謝っているわけではないですよね。でも、
日本
語になったときにはそこの
部分
はあいまいにされていると。少しずつ少しずつずらしながら、確かに相手をだましてきた。相手の方は真剣ですから、そういうことに敏感に感じるわけですよね。ですから、幾ら
謝罪
したと言っても相手には通じていないということはそのとおりだと思います。 そこで、一つ、
横田参考人
にお伺いいたします。
横田参考人
は、これは
人道
に対する罪であるということを、
慰安婦
制度ですね、お認めになったわけですけれども、その国際刑事
裁判所
の規程の七条のgにある要件を挙げてください。
横田洋三
73
○
参考人
(
横田洋三
君) 大変申し訳ありません。今ちょっと
手元
にございませんので、もし田嶋先生お
手元
にお持ちでしたら、御指摘いただけると有り難いと思います。
田嶋陽子
74
○田嶋陽子君 そこではずっと、殺人、せん滅、
奴隷化
からずっと来まして、e、f、fが拷問で、gが強姦、性的
奴隷化
、強制売春、強制妊娠、強制断種又はその他同等の重大な性的
暴力
とあります。 それに関して、
横田参考人
にお伺いいたします。どうしてこのgのようなことがこの世界で起こるのでしょうか。
横田洋三
75
○
参考人
(
横田洋三
君) 私は男性ですから、こういう問題について確たる
女性
の
立場
や
気持ち
を十分に
理解
した
答え
が出せるかどうかは分かりませんが、御質問に端的にお
答え
するならば、やはりこれまで男性は
歴史
の中で、自分
たち
はやろうと思えば好きなことができる、やりたいことができる、その場合に
女性
に対して何かをする場合も何かができると。そして、
女性
は社会的に政治的に弱い
立場
でしたので、あるいは家庭の中でもそうでしたので、それに対して抵抗することも文句を言うこともできないという、そういう人類の長い
歴史
の中で
女性
と男性の
関係
がゆがんだ形でもって続いてきた。それの表れが戦争という
状況
の中で、兵士
たち
が極限
状態
で死ぬ前にもうやりたいこと全部やるんだというようなやり方でもって行動する。それが占領地における強姦
行為
であり、また慰安所を作り兵士
たち
にそういう奉仕をさせようという
判断
を、これも男の
人たち
がしたわけですけれども、したという、そういうことだと思います。 私は、率直に言って、これは人類の
歴史
の中で男性が男性の
立場
からしか考えずに行ってきた
行為
、これが一番極限の形でもって出てきた姿だと、こう考えております。
田嶋陽子
76
○田嶋陽子君 ありがとうございます。そのとおりだと思います。 先ほども
戸塚参考人
が
反省
なさったように、この問題を
理解
するためには本当に男性が良識的に勉強しないとできないほど、要するに百八十度角度を変えないとこの問題が見えないほど大変な問題なんですね。ですから、これがそう簡単に
解決
する問題ではないと思うんですけれども、今のお話を聞いた上でもう一度
横田参考人
にお伺いいたします。 先ほど、この
横田参考人
がお書きになった本の中にも、アメリカの
委員
の
意見
とか何か、取りあえずこの
人たち
はみんな高齢なんだから、健康上の問題もあるんだから早くこの問題を
解決
しなければという言葉があります。そして、私も
政府
に物を言うときには、急いでください、この方
たち
はもう命が短いんですから、生きていらっしゃるうちに
解決
してほしいと、こういうことを言います。この言葉はとても危険なわけで、先ほどからお二人の
意見
を聞いていますと、特に
横田参考人
はやっぱり健康のために高齢のためにということを言っていらして、途中からは心身ともに傷付いているということをおっしゃり始めました。 私は、
最初
、やっぱり
日本
の
女性
基金
も半分はODAですね、それは医療
部分
です。すなわちその根本にあることは、今、
横田参考人
がおっしゃったように、
女性
は昨日の、先ほど島袋さんがおっしゃって、同じ会にいたんですが、東チモールから
慰安婦
の方がいらして、その人は耳も聞こえない。実際には殴られて耳も聞こえない人もいるし、おなかに刀で切り付けられて傷を付いたまま生きていらっしゃる方もいて、皆さん大変、健康の面では大変なんですけれども、結局は肉体を傷めたから肉体にと、そういう発想なんですね。その東チモールの
女性
もこう言っていました。私は牛のように扱われた。人間ではないんですね。 だから、今、
横田参考人
がおっしゃったように、男性の意識の中には、よく言えば女は大地の母と言われて自然扱いされて、一方では男性の都合によって動物扱いされるという、その極限
状況
が今、
横田参考人
がおっしゃったような戦争での慰安所での在り方だったと思うんです。今もその意識は続いていて、肉体が傷められたから肉体の
補償
をということが
最初
に来ていると思うんですね。 この
慰安婦
の方
たち
は、本当に体の傷を引きずりながらも心の傷で苦しんでいらっしゃるわけですね。よく眠れない、トラウマに苦しんでいらっしゃる。その
人たち
はそれでも苦しんで苦しんでここ五十年来たから、この間
台湾
に行ったときにはこう言っていました。私は許そう、でも忘れない。許すと言っているんですね、でも忘れないと。だから正義を果たしてほしいと。 お二人にお伺いします。 この
女性
の言う正義とはどういうことなんでしょうか。
横田洋三
77
○
参考人
(
横田洋三
君) 正義というのは、
女性
を、まずは
被害者
について申し上げますと、
被害者
の
女性
としての、人間として、
女性
であり人間としての尊厳を尊重することです。そして、男の
人たち
がこれまで
女性
を虐げられた
立場
に置き、そして性的な側面でも、実は慰安所、
慰安婦
の問題だけではありません。公娼制度とか、それから私が今真剣に取り組まなければいけないと思っておりますのは、少女
たち
の国際的なトラフィッキングの問題です。今でも数百万人の少女
たち
が、十一歳、十二歳、十三歳の少女
たち
が国際的に性的な搾取のために売られ、強制的に連れて行かされ、私はその少女
たち
の証言を
国連
の場でも聞きました。もう本当にショッキングな出来事です。これが現在、数百万人がそういう
状況
に置かれているということを考えますと、これはもう本当に深刻な問題なんです。 ですから、
慰安婦
の
方々
、もちろん私
たち
はこの問題に真剣に取り組む必要がありますが、もっともっとたくさんの
女性
もいろんな形で
被害
を受けているということも考えると、これは男性の意識と、それから男性中心に作られた法律、制度、これを根本的に変えるという形で、
女性
を男性と対等に、
女性
を一個の人間、
個人
として尊重する、そういう制度と法律に変え、そして男性がそういう意識を持つように
努力
する、最終的にはそういう
状況
を作るということが、恐らく
被害者
の方がおっしゃっている正義ということではないかと、こう思います。
戸塚悦朗
78
○
参考人
(
戸塚悦朗
君) 私も極めて同様の考えを持っております。 実は、お
手元
に配付していただきました国外移送誘拐被告事件という
大審院
の
判決
があります。これは極めて古い、一番
最初
に上海で慰安所が作られたときに起きた事件を、
大審院
がこれは明確に犯罪であるというふうに、
日本法
上犯罪であると認めて
処罰
をしたものです。中では、被告側は軍に頼まれたんだというふうに言っておりますけれども、仮に軍に頼まれたものであっても認められないというふうに言っておるわけです。これが、私は正義の出発点だと思います。 しかし、残念なことに、このような
処罰
がなされないような手だてが後に取られました。したがって、その後
処罰
はなくなった。この問題、なぜこの犯罪が全面的に
処罰
されなかったのか。これは、
日本軍
が男性によって作られていたから。
日本
の検察官も警察官も全部男性だったから。
日本
の裁判官も全部男性だったから。
日本
のその他の官庁もすべて男性であります。
国会
も男性。したがって、このような法律があっても、それを適用しないということは容易にできたわけであります。この
状態
を変えない限り正義は来ない。現在でも私はそれは変わっていると思いません。ここでも
女性
の方は極めて少数でありますし、
女性
の方がこの
法案
をリードしているんでありまして、男性の方はそれを厳しく受け止めているという段階だと思います。 したがって、このような正義を行わなければならない、そしてこの
法案
を
成立
させることが正義であるというふうに私は思います。
小川敏夫
79
○
委員長
(
小川敏夫
君) 田嶋さん、簡略にお願いします。
田嶋陽子
80
○田嶋陽子君 ありがとうございました。 今、
横田参考人
は私が言いたかった結論、ここ過去三十年間でも三千人の
女性
が商業的に、トラッキングといいますか拉致されて密輸されているという
状況
、それを
解決
したいとおっしゃってくださって、それも正義につながると言ってくださって、大変有り難いと思います。それから、
戸塚参考人
も私
たち
が日ごろ思っていることをここで言ってくださって、私の結論の一つですが、大変有り難かったと思います。 ですけれども、もう一つ、先ほど
横田参考人
が、途中から子供のトラッキングのお話に行ってしまったんですが、この
慰安婦
の問題としてもう一度お伺いいたしますが、
女性
の人間としての尊厳を尊重するということは、この
慰安婦
の問題に関しては具体的にはどういうことをお考えですか。簡潔に、一言だけ。
小川敏夫
81
○
委員長
(
小川敏夫
君)
横田参考人
、簡略にお願いします。
横田洋三
82
○
参考人
(
横田洋三
君) 私
たち
は、そういう方
たち
の話したいこと、我々に出したい
メッセージ
、とりわけ我々男性に対して出したい
メッセージ
、これを一つ一つ丁寧に聞いて、その一つ一つの重みを男性の側で受け止めていくということをする必要があると思っております。 長期的には、私は、
被害者
の方
たち
の非常にまじめな形でのヒアリングということをどこかできちっとやって、その方
たち
の経験を基に二度とこういう
女性
をつくってはいけないという方向で、政策も、それから男性の
人たち
も自覚を持つという、そういうことが重要だと思っております。
小川敏夫
83
○
委員長
(
小川敏夫
君) 田嶋さん、もう時間。
田嶋陽子
84
○田嶋陽子君 はい、これで終わりますが、具体的なこととしては、
横田
さん今はっきりおっしゃいませんでしたけれども、これは国が関与した
慰安婦
制度であるということを国がきちんと認めることですよね。で、もう一度
謝罪
することですよね。そのことを言っていただきたかったんですが、それでよろしいですか、
横田参考人
、イエス、ノーでおっしゃってください。その後一つ、もう一つあります。
小川敏夫
85
○
委員長
(
小川敏夫
君) 田嶋さん、もう時間過ぎています。 じゃ、
横田参考人
、ただいまの点、イエス、ノーの点、簡略に
答え
て。それで終わります。
横田洋三
86
○
参考人
(
横田洋三
君)
答え
はイエスです。
田嶋陽子
87
○田嶋陽子君 それでは、もう一つ、これだけで終わります。
小川敏夫
88
○
委員長
(
小川敏夫
君) 田嶋さん、田嶋さん、もう終わります。発言はやめてください、田嶋さん。
田嶋陽子
89
○田嶋陽子君
横田参考人
は、この
解決
を目指して引き続き
活動
を続けていきたいとおっしゃいましたけれども、この
法案
を
成立
することがその
解決
に結び付くとお考えでしょうか。このまま継続
審議
を……
小川敏夫
90
○
委員長
(
小川敏夫
君)
参考人
は
答え
なくて結構です。
参考人
は
答え
なくて結構です。 今、大幅に時間を超過しましたので、質問は終わらせていただきました。 以上で
参考人
に対する質疑は終了いたしました。 この際、一言御礼を申し上げます。 両
参考人
におかれましては、大変御多忙の中、貴重な御
意見
をお述べいただきまして誠にありがとうございました。
委員会
を
代表
して厚く御礼申し上げます。(拍手) 速記を止めてください。 〔速記中止〕
小川敏夫
91
○
委員長
(
小川敏夫
君) 速記を起こしてください。 ─────────────
小川敏夫
92
○
委員長
(
小川敏夫
君) この際、
委員
の異動について御報告いたします。 本日、
筆坂
秀世君が
委員
を辞任され、その補欠として
畑野
君枝
さんが選任されました。 ─────────────
小川敏夫
93
○
委員長
(
小川敏夫
君) これより
請願
の審査を行います。 第一号透明で民主的な
公務員制度改革
に関する
請願
外三百三十件を議題といたします。 これらの
請願
につきましては、
理事会
において協議の結果、すべて保留とすることになりました。 以上のとおりとすることに御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
小川敏夫
94
○
委員長
(
小川敏夫
君) 御異議ないと認めます。 ─────────────
小川敏夫
95
○
委員長
(
小川敏夫
君)
継続調査要求
に関する件についてお諮りいたします。 内閣の重要政策及び警察等に関する調査につきましては、閉会中もなお調査を継続することとし、本件の
継続調査要求
書を議長に提出いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
小川敏夫
96
○
委員長
(
小川敏夫
君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。 なお、
要求
書の作成につきましては、これを
委員長
に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
小川敏夫
97
○
委員長
(
小川敏夫
君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。 ─────────────
小川敏夫
98
○
委員長
(
小川敏夫
君)
委員派遣
に関する件についてお諮りいたします。 閉会中の
委員派遣
につきましては、その取扱いを
委員長
に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
小川敏夫
99
○
委員長
(
小川敏夫
君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。 本日はこれにて散会いたします。 午後零時二十四分散会