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2002-11-14 第155回国会 参議院 財政金融委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十四年十一月十四日(木曜日)    午後一時開会     ─────────────    委員異動  十一月八日     辞任         補欠選任      谷  博之君     櫻井  充君  十一月十三日     辞任         補欠選任      大塚 耕平君     松井 孝治君      櫻井  充君     朝日 俊弘君      山本  保君     風間  昶君  十一月十四日     辞任         補欠選任      朝日 俊弘君     櫻井  充君      松井 孝治君     大塚 耕平君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         柳田  稔君     理 事                 入澤  肇君                 尾辻 秀久君                 林  芳正君                 峰崎 直樹君                 浜田卓二郎君     委 員                 佐藤 泰三君                 清水 達雄君                 田村耕太郎君                 中島 啓雄君                 溝手 顕正君                 森山  裕君                 若林 正俊君                 大塚 耕平君                 勝木 健司君                 櫻井  充君                 円 より子君                 池田 幹幸君                 大門実紀史君                 平野 達男君                 大渕 絹子君        発議者      櫻井  充君        発議者      峰崎 直樹君    衆議院議員        発議者      相沢 英之君        発議者      石井 啓一君    事務局側        常任委員会専門        員        石田 祐幸君    参考人        慶應義塾大学経        済学部教授    吉野 直行君        慶應義塾大学商        学部教授     深尾 光洋君        株式会社整理回        収機構代表取締        役社長      鬼追 明夫君     ─────────────   本日の会議に付した案件参考人出席要求に関する件 ○財政及び金融等に関する調査  (金融再生プログラム及び改革加速のための総  合対応策等に関する件) ○銀行等株式等の保有の制限等に関する法律の  一部を改正する法律案(第百五十四回国会衆議  院提出)(継続案件) ○地域金融円滑化に関する法律案(第百五十四  回国会櫻井充君外四名発議)(継続案件) ○特定非営利活動の促進のための法人税法等の一  部を改正する法律案(第百五十四回国会江田五  月君外九名発議)(継続案件)     ─────────────
  2. 柳田稔

    委員長柳田稔君) ただいまから財政金融委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る八日、谷博之君が委員辞任され、その補欠として櫻井充君が選任されました。  昨十三日、山本保君が委員辞任され、その補欠として風間昶君が選任されました。     ─────────────
  3. 柳田稔

    委員長柳田稔君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  財政及び金融等に関する調査のうち、金融再生プログラム及び改革加速のための総合対応策等に関する件の調査のため、本日の委員会参考人として慶應義塾大学経済学部教授吉野直行君、慶應義塾大学商学部教授深尾光洋君、株式会社整理回収機構代表取締役社長鬼追明夫君の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 柳田稔

    委員長柳田稔君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  5. 柳田稔

    委員長柳田稔君) 財政及び金融等に関する調査のうち、金融再生プログラム及び改革加速のための総合対応策等に関する件を議題といたします。  この際、参考人の皆様に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙のところ本委員会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。  参考人の方々から忌憚のない御意見を賜りまして、今後の調査参考にいたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願いをいたします。  それでは、本日の議事の進め方について申し上げます。まず、吉野参考人深尾参考人鬼追参考人の順序で、お一人十分以内で御意見をお述べいただき、その後、各委員質疑にお答え願いたいと存じます。  また、御発言の際は、その都度委員長の許可を得ることとなっておりますので、御承知おきお願いいたします。  なお、参考人及び質疑者ともに御発言は着席のままで結構でございますので、よろしくお願いいたします。  それでは、まず吉野参考人からお願いをいたします。
  6. 吉野直行

    参考人吉野直行君) 慶應大学吉野でございます。どうぞよろしくお願いいたします。座りながら御報告させていただきたいと思います。  お手元に、少し大きな字で三枚ほど私のレジュメがございます。十分以内ですので簡潔に述べさせていただきたいと思います。  内容につきましては、日本経済現状と、それに対する私なりの処方せんというものでございます。全部で七項目ございますが、まず一番目から御説明させていただきたいと思います。  日本経済低迷が十年以上続いているわけでございますが、この中で、アメリカ、イギリスは九〇年代非常に成長が高かったわけです。産業構造を見てみますと、どこの国も、(1)の(Ⅰ)のところでございますが、製造業のシェアは低下いたしております。その中で、(1)の(Ⅱ)のところでございますけれども、金融サービス業生産性が上がったか上がらないかが、やはり日本アメリカ英国の違いであります。日本低迷原因というのは、やはり金融サービス業がこの九〇年から最近まで製造業が落ちてくる中でそれを補うほどの生産力がなかったということが一つございます。  それから、(1)の(Ⅰ)のところでございますが、もう一点は、御承知のように、日本からの海外への直接投資が非常に増えているということであります。それと対比しますと、(1)の(Ⅲ)ですが、海外から日本に入ってくる対内直接投資、これが少ないわけです。対外から日本に入ってきます対外直接投資が少ないということであります。これは(1)の(Ⅲ)のところを見ていただきますと、日本GDP比ではたった〇・二%しか海外から入ってきておりません。それに比べますと、英国は八・五%、ドイツは一〇・〇%でございます。ですから、後でも申し上げますが、いかに海外から日本投資をしていただくかと、こういう方策も今後必要だと思います。  それから、(1)の(Ⅳ)でございますが、設備投資日本の場合には金利幾ら低くても上向かない、いわゆる設備投資利子弾力性がゼロであると、こういう状況が現在のもう一つ問題点でございます。  それから次に、ちょっと(Ⅵ)と書いてございますが、金融政策に関しましては、日本銀行券は非常に高いペースで増発されておりますが、それがマネーサプライ、M2あるいはM2プラスCDに結び付かない。これが信用乗数の低下につながっておりますが、これはやはり金融銀行部門がうまくワークしていないというところが多いわけでございます。  次に、二番目といたしまして、不良債権対策金融業収益性の向上ということでございます。  不良債権対策に関しましては、(2)の(Ⅰ)ですが、一九九九年に八兆円の公的資金注入されました。しかし、その後、金融機関収益の改善はありませんで、また今回の公的資金注入というふうになっているわけであります。その大きな原因は、(Ⅲ)のところに参りますが、金融業収益性が向上していないということにあると思います。アジアの諸外国を見ますと、やはり不良債権はあったわけですが、韓国あるいはマレーシアなどでは銀行業収益をその後改善いたしております。  ですから、やはり日本の一番の問題点は、銀行業あるいは金融業収益を今後どうやったら回復できるかと。これがない限りは、幾ら不良債権対策をやりましても、また三年前と同じ状況で、またつぎ込むと、こういうことになってしまいます。  (Ⅲ)のところ、一ページ目の一番下でございますが、私なりに四つのことを考えております。  一つは、海外のグローバルな情報をもっと日本金融機関は収集しなくてはいけない。現状では逆に動いております。多くの金融機関アジアなどの店舗を閉めて国内に回帰すると、こういう形になっております。その場合には、日本という経済がだんだんしぼんでくる中で全額資金日本で運用しよう、こういうふうになりますと、どうしても不良債権は増加するわけであります。むしろ、成長するアジアなどでやはりもっと運用すると。そのためには、(Ⅲ)の①のところですが、海外のもっと情報を集めなくちゃいけないというふうに思います。  それから、下のところ、二番目でありますが、海外で最も利益が上げられる場所で運用すると。これは、外資系のシティバンクなどは正にこの方針であります。日本からは資金を集め、それで最も収益率の高いところで運用すると、こういう姿勢を取っております。  それから三番目は、日本金融機関は、これまでは日本企業海外進出に追っていく、それに後追いをすると、こういう形で発展してきたわけですが、今後は、海外への進出の援助と同時に、やはり独自で地元のお客さん、アジア諸国お客さんを探すと、こういうことではないかと思います。  日本金融機関勝ち目があるかと申しますと、④のところでありますが、日本の場合にはアジアと時差がございません。そういう意味では日本金融機関のメリットもございますし、アジア銀行中心経済ということでありますので、日本に随分似た部分がございます。  次に、二ページ目に行っていただきたいと思います。三番目の公共投資社会資本効率性の問題であります。  ここも私の少し研究分野でございますので述べさせていただきますが、よく、景気対策と言われますと必ず公共投資社会資本が挙げられます。よく、アメリカの一九三〇年代のケインズ政策と言われるわけですが、アメリカ歴史を見てみますと、三〇年代の中ごろに一時的にケインズ政策が取られましたが、その後は、財政規律を引き締める、つまり増税をするというふうに動いておりまして、アメリカの長い歴史ではケインズ政策はほとんど取られたことがございません。日本を見てみますと、社会資本の整備がこれだけ行われたにもかかわらずなぜ景気が良くならないかと申しますと、(3)の(Ⅰ)の①でありますが、間接効果が小さい、つまり社会資本が整備されたにもかかわらず民間設備投資がその地域に来ない、つまり社会資本をどんどんどんどんやり続けないとその経済が持ち上がらないということであります。  ですから、一番のポイントは、どういう社会資本がその地域民間設備投資あるいは民間企業活性化させるのかと、これが私は一番のポイントだと思います。  それから二番目、(3)の(Ⅱ)のところでありますが、海外から日本に入ってくる企業が少ないということが現在の日本の問題でもあります。特にアメリカなどでは、クリントン大統領アーカンソーの知事のときには非常に日本に来られまして、アーカンソー投資をしてくれと、こういうような政治的なリーダーシップを取られながら、自分の州にいろいろな日本企業を持ってこようと、こういうことをされたわけであります。  ですから、今後私がお願いしたいのは、それぞれの地方の政治の方、自治体の方が、海外企業も含めて、どうやったらそこに民間企業を誘致できるかと、こういうことも考えていただきたいと思います。  次は四番目でありますが、円の国際化東京市場の再活性化であります。  これは、長年、何とか東京市場アジア中心にしようというふうに音頭は取られたわけですが、これがなかなかこれまで実現しておりません。ただ、もしこれができますと、東京あるいは大阪の市場が非常に経済波及効果は大きいと思います、情報の蓄積になりますし。  そのためには、(4)の(Ⅲ)のところでありますが、円の国際化を進めると。これは円の利用度を高めるということでありまして、各国の中央銀行などにバスケット通貨制でリザーブとして円を持っていただく。  特に強調させていただきたいのは、やはり政治的リーダーシップが特に必要だと思います。それから情報通信、その他のインフラが必要であります。  次、三ページ目に、最後に三点ほど述べさせていただきます。  中小企業対策でございますが、ここは、やはり民間の融資をなるべく促しながら、それで政府が助けていくということが重要だと思いまして、信用保証制度はいい制度だと思います。ただ、それを特別信用保証のように全額、一〇〇%保証するということはモラルハザードを生みます。つまり、悪い債権信用保険機構に持っていこうと、そういう形で民間金融機関が悪い債権ばかり信用保証を付けますので赤字がたまります。ですから、そういう意味では部分信用保証制度、例えば九〇%保証するなどのやり方が必要だと思います。  それから、五番目の(5)の(V)でございますが、貸出しだけで中小企業は育成できません。やはりファンドというような、投資信託のようなリスクを伴う金融資産での中小企業への支援ということも、是非両方のチャネルから考えていただければと思います。  それから六番目は、預貯金中心からいかに債券株式に持っていくかということであります。これは、ドイツは一九七五年の辺りには日本と非常に似ておりまして、預貯金中心でありました。ところが、それが最近では株式債券の方に随分動いております。  そこは幾つか理由がございますが、その中で、やっぱり収益の高い商品の提供、三番目、これが一つ重要だと思います。これも、日本金融機関国内だけで運用していますから、どうしてもいい株式国民に紹介できないわけです。ここも、金融機関アジアなどのいい商品国民に紹介することによって、高い収益率株式あるいは債券を販売するということが必要だと思います。  最後、七番目でございますが、財政赤字大量国債発行であります。  やっぱり大量国債発行によりまして、日本欧米諸国よりもGDP比で相当増えております。私個人といたしましては、これ以上の財政赤字は無理であると思います。  そのためには、(7)の(I)でありますが、公共投資の予算は削減すると、しかし、間接効果が大きく、民間経済活動活性化できるような、そういう社会資本をなるべく拡大させると、こういうことが必要だと思います。  時間の関係で以上にさせていただきたいと思います。  ありがとうございました。
  7. 柳田稔

    委員長柳田稔君) ありがとうございました。  次に、深尾参考人お願いいたします。
  8. 深尾光洋

    参考人深尾光洋君) 本日はお呼びいただきまして、ありがとうございました。  今日は、二つの資料、「デフレ下金融再生について」という三枚紙の資料と、図表集財政金融委員会説明資料と、この両方を使って説明させていただきたいと思います。  まず、金融再生プログラムの評価ですけれども、竹中大臣による金融再生プログラム方向としては正しい方向にあると。不良債権引き当て強化、それから銀行自己資本からの繰延税金資産の排除、銀行への公的資金注入は、銀行健全化に必要な措置だと考えております。  しかし、仮にこの再生プログラムを完全に実施したとしても、金融再生はできないと判断しております。これは、現在のようなデフレの下では、貸出し先企業業況悪化が激しく、仮に不良債権を一時的に全部ゼロにしたとしても、また新たに不良債権が発生してしまうということにあります。  公的資本健全化をしたとしても、銀行資本注入して公的資本健全化したとしても、不良債権償却の純利益計上を義務付ければ、不良債権をしっかり償却して利益を上げろというふうに強制すれば、銀行の場合は、将来の貸倒れリスク貸倒れ損失に見合った金利を設定せざるを得ない。そうなりますと、平均金利で、現在一・八%前後のところにありますが、一%は金利を上げる必要がある。  大企業向け金利を上げることは実際上不可能でございます。大企業資本市場に逃げられるわけですが、こうなりますと、中堅中小企業向けの貸出し金利を一・五、二%といった幅で引き上げないといけない。そうなりますと、現在のようなデフレで売上げが減っていく中では、中堅中小企業は耐え切れません。こういったことを考えますと、デフレを止めないことには金融再生はできないというふうに私は考えております。  資料を一枚めくっていただきますと、アメリカの大恐慌のときと日本物価の動向の比較の図がございます。上の緩やかに右下がりになっている線が日本物価でございまして、日本物価は上の目盛りにありますように九四年がピークでして、現状、もうピーク比八%前後下がったところにあります。アメリカデフレの方ははるかに厳しいものがありましたが、当時は農産物価格が六割以上低下しておりまして、この物価下落の半分は農産物下落。そうしますと、残った部分の非農産物下落ペース、幅ということから考えましても、日本デフレというのは相当厳しいということが言えます。  一枚めくっていただきますと、前年比でGDPデフレーターを書いてございます。下の点線でございます。これを見て分かりますように、九五年以降ずっとデフレが続いております。現状、前年比一・八%ということで、いまだにデフレが続いているという状況であります。  では、デフレはなぜこんなに続くのかというわけですけれども、デフレ原因について、どんなマクロ経済学の教科書を見ていただいても分かりますけれども、基本的には需給ギャップデフレを決めるということであります。デフレギャップがありますと、インフレ率は徐々に低下していってゼロになります。さらにゼロからマイナスになって徐々にデフレが加速していきます。これに対して、インフレギャップがあればデフレ率は徐々に小さくなってゼロに達し、インフレギャップが続けば徐々に物価が上がっていくということになります。  現在のように需給ギャップが非常に大きくて、大体私は七%前後、三十五兆円前後のデフレギャップがあると考えておりますが、この程度デフレギャップがありますと、デフレ率は悪化しこそすれ改善する見通しは全くありません。  現在、日銀政策委員会あるいは経済財政諮問会議IMFOECD、その他いろんな研究機関日本経済見通しを出しております。その見通しを見ますと、必ずデフレ率は小さくなって、プラスになっていくという見通しを出しております。この根拠は私は全くないと考えております。これは、個別に私も全部議論しておりますが、IMFOECDのエコノミストが日本に来るときに私もよく会いますけれども、詰め寄って本当にこれは根拠がありますかと言うと、根拠は全くないわけです。あるいは経済財政諮問会議についても、私も友人もおりますので直接話を聞いても、あれは竹中大臣フリーハンドで書いたんじゃないですかと言っても答えられない状態にあります。  つまり、要は希望的観測にすぎない。その希望的観測にのっとって経済政策をしているので、いつまでたってもデフレが止まらない、こういう状況にあります。私は、基本的に危機感が足りないということでありまして、危機感が本当に目の前に現れない限り何もしないというところに大きな問題があると考えております。  次に、不良債権正常化についてお話ししたいと思います。  政府不良債権処理デフレ対策の柱に掲げてきましたけれども、この根底には、日本経済デフレの要因が不良債権にあり、その処理を促進して銀行再生すれば不況脱却が可能になるという考え方があると思います。私は、これは間違っていると考えます。因果関係は、もちろん不良債権処理が遅れているので、ゾンビ企業と言われておりますが、赤字を出し続けても、安値で売って営業を継続する企業があるからデフレが悪化するという面はもちろんありますが、より大きな因果関係は、不況デフレが悪化しているから企業がどんどん悪化していく、そのためにゾンビ企業が増えてしまって更にデフレが悪化する、こちらの方向にあるというふうに考えております。  このために、銀行収益を見てみますと、図表の三枚目をごらんください。これは全国銀行協会が発表している収益数字を分かりやすく直しただけでございます。一番上の資金運用差益というのは、銀行全部、これは全国銀行受取利息受取配当から支払金利を除いたもの、これが十兆弱、二〇〇一年度で九・八兆円です。その他差益といいますのは、それ以外の収益全部から株と不動産損益を除いたもの、つまり株式不動産損益以外のすべての収益が三・一兆円。これが手数料収入や為替、債券、ボンドのディーリング益などになります。合計で十三兆円ぐらいの収益力があるわけですが、これに対して経費の方は、ピーク九七年の八兆円から、現在七兆円まで、リストラで一兆円ぐらい下がっております。この差額を見ますと、大体粗利益が六兆円、まあ五、六兆円、これが業務純益に当たりまして、これで償却しなきゃいかぬわけです。  その次の行、償却する額。これは不良債権損失を全部足したものでございまして、売却損、引き当て、それから償却、全部含みます。この数字と粗利益を比べていただきますと、業務損益(F)というところですが、九三年度以降ずっとマイナスが続いております。つまり、この八年間、一年たりとも本当の利益を上げたことはないと。時々利益を出しているように見せておりますが、株や不動産益出しによるものであります。  このために、銀行部門再生は無理であって、このデフレが続く限りは不良債権損失はこの程度、過去三年平均七兆とか八兆とかいう金額が出てくる可能性が極めて高い。  そうしますと、業務利益を上げる以外にないわけですが、一つリストラでありまして、これまでもやってきておりますが、これを強化というのがあります。ただし、不良債権処理というのは非常に人手が掛かります。正常債権だけであればほっておけば利益が上がるわけですが、不良債権償却には相当の人手が掛かります。また、コンピューターシステムも、この前のみずほの事件で明らかなように、投資が不足しております。  こうなりますと、銀行利益を上げるためには、リストラもありますが、貸出し金利を上げざるを得ない。私は、貸出し金利を一%ぐらい上げて、現在貸出し額が五百兆ありますので、あと四、五兆円、まあ五兆円ぐらいの新たな利益を出してこれを償却していけば銀行利益が出せますので、銀行株も上がって自ら増資ができるという正常な状況に持っていくことが可能です。  ところが、貸出し金利を上げる場合に、大企業から取れるわけがありませんので、中堅中小企業向けの貸出し金利を上げざるを得ない。そうなると、このデフレではもたないということになります。私は、デフレを脱却しなければ金融再生は不可能だと考えております。  では、どうしたらデフレから出られるかというわけでございますが、最後の三ページになります。  現在のようなデフレギャップ、三十五兆円というデフレギャップがありますと、このデフレギャップを埋めるために仮に公共投資をやろうとしますと、ケインズ乗数は大体一・四から一・五ぐらいでございます。そうしますと、二十兆を超す公共投資を新たに追加して、その水準を何年か続けるというぐらいのことが必要です。これはとてももたないと思います。  では、減税でやるということになりますと、減税の乗数効果は大体一ぐらいでございます。減税しても直接使われるのはその六割かそこらでございまして、それが波及効果を生んでもせいぜい一ぐらい。そうしますと、三十五兆円のギャップを埋めようと思いますと三十五兆円の減税、所得税と法人税全廃しても足りないぐらいということになります。これはとてもできない。現在の状況で仮にGDP比一%の五兆円程度の先行減税をやっても焼け石に水だというふうに考えております。  こうなると、何ができるかですけれども、やはり尋常でない政策を取らざるを得ない。現在は、私は既にバブル、マイナスのバブルだと考えております。  これはどういうことかといいますと、不動産株式を売って預金や現金、国債に換えるという動きが続いております。預金や現金、国債に移すという背景は、政府の保証があるからということで安心しているわけです。ところが、政府の信用力はといいますと、税収がどんどん減っておりまして、今年もう相当の歳入欠陥が見込まれております。こうなりますと、本来信用がどんどん減っているものに人々はどんどん金を移している。これは維持不可能でございますのでバブルだということになります。  この現金、預金、国債に資金をシフトするというバブルをつぶす方法としては、二つの考え方があり得ます。  一つは、インフレターゲットを設定して日本銀行が大量に上場投資信託、ETF、TOPIX連動のETFを大量に買い入れる、あるいはREITを大量に買い入れる、これが一つのやり方でございます。もう一つは、これをやってもデフレが止まらない場合は、バブルの対象に課税するということが考えられます。つまり、政府が保証しているすべての金融資産、現金、預金、国債、地方債といったものに対して、デフレ率プラスアルファでデフレが続く限り課税を行うと宣言することです。現状であれば二%程度の課税を行うことが考えられます。これだけ課税をしますと、課税対象は預金、郵貯、簡保、全部込みですので一千兆を超えますので、二%課税しても二十兆近いお金が入ります。これだけあれば不良債権処理や雇用対策にも使える。  これをやりますと、効果としては課税対象外に資金がシフトします。株、社債、貸出し等にシフトが起きます。銀行も日銀当座預金にお金を置いておくだけでは損になりますので、これは二%税金が掛かりますので、貸出しをして損を避けようとします。企業間信用も、代金を現金で受け取ってしまうと税金が掛かりますから、受け取らなくていいよ、後払いでいいよということになって企業間信用も拡張します。また、不動産投資も、預金を置いておくよりは不動産を買う、あるいは耐久消費財を買うといった形で強力な景気刺激効果があります。もっとも、問題点としては、二%政府保証の金融資産に課税をするということは、ムーディーズからパーシャルデフォルト、部分デフォルトではないかと言われるかもしれませんが、それはやむを得ないと考えております。  いずれにしましても、デフレを放置したままでは、公的資金銀行への注入というのは、公的資本と呼ぶべきではなく補助金の注入と言うべきであって、毎年三、四兆、銀行にお金を上げ続ければやっていけますが、それは銀行部門を国有化することと同じだと考えております。  以上です。
  9. 柳田稔

    委員長柳田稔君) ありがとうございました。  次に、鬼追参考人お願いいたします。
  10. 鬼追明夫

    参考人鬼追明夫君) 整理回収機構の鬼追でございます。  では、早速でございますが、私の方からは整理回収機構、RCCの業務の概要につきまして御説明を申し上げまして、十月末に発表されました総合対策あるいは金融再生プログラムの御議論の御参考に供したいと、かように存じます。  お手元に「譲受債権および回収の状況」と題する書面を始め五枚紙が配付されていようかと思いますが、適宜御参照いただきたいと存じます。  それでは、まず組織から御説明をさせていただきます。  御案内のとおり、平成十一年四月一日に住宅金融債権管理機構と整理回収銀行とが合併して株式会社整理回収機構という組織になりました。現在の役職員数はこの十月一日現在で二千四百十九名でございまして、合併時に比べますと約二百名弱減少いたしております。できる限り組織のスリム化を図りたいというところからそういった結果になったものでございます。このうち、役員数は、監査役三名を含めまして十三名でございます。回収拠点は全国に四十三か所の拠点を配置してございまして、北は北海道旭川から南は沖縄県那覇市に至るまで、全国四十三か所で債権回収あるいは企業再生のビジネスに取り組んでいるわけでございます。資本金は二千百二十億に及んでおりまして、これは預金保険機構一社の全額出資ということになってございます。  次に、譲受け資産及び回収の状況について御説明を申し上げたいと思いますが、時間の関係で、住専勘定及び、私どもではRCB勘定と申しておりまして、破綻金融機関から資産譲受けをいたしましてその回収をしておりますが、これをRCB勘定と称しております。これは、お手元の資料をごらんいただきまして、もし御不明の点等ございましたら後で御質問をいただきたいと、かように存じます。  したがいまして、譲受け債権及び回収の状況につきましては、最近特に問題になっております金融再生法五十三条による健全金融機関からの不良債権の買取り状況等について御説明を申し上げたいと思います。  この五十三条勘定と申しますのは、平成十年十月の金融再生法の制定によりまして、健全金融機関から不良債権を買い取ると、こういうことになったものでございます。当初、二年間の時限立法でございましたけれども、平成十三年六月に三年間の延長が行われたことは御承知のとおりでございます。平成十四年九月までの買取り額は、元本ベースで申し上げまして一兆九千九百三十五億円、買取り価格が一千四百三十九億円でありまして、同月時点での回収率はもう既に四〇・九%に達しております。五十三条勘定の買取り対象債権は、表の脚注の2に記してございますように、「原則として、破綻懸念先、実質破綻先又は破綻先に区分される債務者に対する貸出金」、こういうことになってございます。  したがいまして、平成十一年四月一日からの金融再生法五十三条の買取りの破綻懸念先の比率が六・一%ということでございまして、したがいまして九三・九%、これは実質破綻及び破綻先債権を私どもは買い取っていると、こういうことになろうかと思います。  この金融再生法は、実は平成十四年一月十一日に改正が施行されました。その改正のポイントは、これも御高承のとおりでございますが、改めて確認をさせていただきますと、次の四点でございます。  一つは、買取り価格を時価とする価格決定方式の弾力化、あわせて、相対の買取りに加えて入札参加を可能とした、これがまず第一のポイントでございます。  第二のポイントは、回収期間の短縮化ということでございまして、預金保険機構とのこれまで回収委託で、特にRCB勘定では五年間をめどとされておりましたけれども、あるいは五十三条につきましても五年間ということで預金保険機構との間で回収委託協定を結んでおりましたが、改正法によりまして、「当該資産の買取りから可能な限り三年を目途として回収又は譲渡その他の処分を行うよう努めること。」と、このようにされました。  三番目の改正ポイントは、処分方法の多様化ということでございまして、回収に加え、債権譲渡その他の処分も行うこととされました。  四番目は、今大変議論になっております企業再生という新たな機能の付与あるいは機能の強化ということでございまして、債務者の再生可能性を早期に見極めて、その可能性のある債務者については速やかなる再生に努めることと、このようにされたわけでございます。  こういった改正を踏まえまして、私どもの業務内容が拡充強化されたわけでございますが、まず一番目に、金融再生法改正による買取り価格変更の影響について御報告を申し上げたいと思います。  二枚目の表をごらんいただきますと、法改正によりまして買取り価格が適正な、これまでの改正前は適正な価格、つまり二次ロス防止のための適正価格ということになっておりましたものが弾力化をされまして時価となりました。それに対しまして、元本に対する買取り価格が著しく伴いまして高くなってきておりまして、法改正前の元本対買取り価格の比率が三・七%でありましたものが、法改正後は一一・四%と、ほぼ三倍になっております。ただこれは、価格が上がったということと、健全行さんが私どもにお持ち込みいただく、あるいはビッドにお招きいただく債権の質が、時価で買い取ってもらえるという期待からそれに相応する債権に変わってきたと、この二つが原因となっているように考えられます。  また、買取り元本の方は、法改正前の三十三か月間での買取り元本一兆七百六十八億円に比べまして、法改正後の九か月間で、信託を含めますと一兆三千百六十五億円となっておりまして、法改正前の四倍以上のスピードといいましょうかペースで買い取ることが現在はできております。  次に、処分方法の多様化を私どもはどのように実践いたしておるかと申しますと、処分方法の多様化としての流動化、証券化につきましては、昨年九月に信託兼営の認可を得ておりまして、この信託にも積極的に取り組んでおりますが、こういったものを活用しながら不動産の証券化二件、これは売却価格で八百億であります。信託機能を活用した不良債権の証券化四件、これは五千六百九十七億円の証券化、元本ベースでございますが、いたしております。さらに、債権の売却は四十件で三千九百七十二億円ということになっておりまして、既に元本ベースで一兆円を超える規模の処分をいたしております。  三番目には、企業再生に関してでございますが、平成十四年一月十一日の改正金融再生法の施行に先立ちまして、我が社におきましては昨年十一月一日、御記憶にまだ新しいかと思いますが、改革先行プログラムが十月の下旬に発表されておりましたが、それを受けまして企業再生本部を発足させました。この本部には四名の役員を担当役員として配置いたしますとともに、企業再生部を設置いたしまして、当初は五十名体制でスタートしたところでございます。現在ではこれが百三十名体制ということに拡充をいたしております。  そして、これまでの既存案件及び健全行から買い取っていく債権、そういった中で再生可能性のある案件につきましては、この再生本部に企業再生検討委員会なるものを設けまして、我が社の役職員だけではございませんで、外部から、例えば監査法人から、あるいはまた学者の先生方、あるいは弁護士、会計士の人たち等もお招きをいたしまして、企業再生の可否を検討した上で、そこでの御意見等を参考にして再生に踏み切るべきものは踏み切ると、こういうようなことにいたしてございます。  また、この委員会の設置に合わせまして、企業再生検討委員会の顧問という形で外部の方三名、つまりこれは経済人の方、学者の方、それに報道人の方三名をお迎えいたしまして、更に外部の御意見なども十分拝聴するということによって私どもの判断の客観性を持たせたいと、このように考えて、現在その体制で再生ビジネスに取り組んでおります。  そこで、企業再生案件状況ということでございますが、企業再生と申しますと大変耳障りがよろしゅうございますけれども、実際に企業再生ということはどういうことですかということになりますと、人によってまちまちでございます。最終的には恐らく、債務超過企業であるならば債務超過の状態を脱却して利益を生み出すような、そういった企業を目指すということが再生方向であろうかと思いますが、私どもは、民事再生法でございますとかあるいは会社更生法の目的規定の定め方を参考にいたしまして、企業再生というのは、企業再生計画が策定され、その計画について債権者の全部若しくは多数の賛同を得られて、この計画に沿って動き出すことが主要な要件であろうと考えておりまして、私どものこのお手元に配付しました表の中で、既に取組済みの案件として八十七件の再生案件を数えておりますが、何だ、たったそれだけかと言われる方もいらっしゃるのですが、申し上げましたように、私どもが譲り受けております債権が破綻懸念先以下の債権であるということ、さらにまた、企業再生とは何ぞやということについて、私どもは私どもなりの一つの定義と申しましょうか、こういうものを企業再生と言うんですと。ただ債権放棄をしたり、あるいは債権を売却したり、つまり事業の継続を、債務者の事業継続を認容しているだけでは必ずしも再生とは言い難いというようなところから、そういう考えでカウントをいたしております。  債務者に事業の継続を認めながら債権を回収していきますタイプは、こういった企業再生によって回収するほかに、条件の変更をする、あるいは債権を一部放棄する、あるいは債権の売却、他に売却をする、あるいは他の債権者が申立てをした、例えば民事再生の申立てでありますとかあるいは会社更生の申立てについて協力をしていくと、こういうような類型があろうかと思います。  私どもの企業再生としてカウントいたしておりますのは、先ほど申し上げました要件のほかに、私どもが指導的にそういうことを働き掛けた、債務者をそちらの方向に向けて誘導していったというような件数でカウントをいたしております。  私ども、そういった企業再生ビジネスに関しましては、ファンドとのタイアップ、あるいはファンドを言うならば形成する、そういったことがどうしても不可欠のことになるであろうと、このように考えております。したがいまして、企業再生ファンド等との連携強化、あるいは信託機能の活用というものを行いまして、今後とも企業再生を積極的に進めてまいりたいと思っておりますし、現に金融機関あるいは外資等とタイアップいたしまして、RCC企業再編ファンドというニックネームのファンドをもう既に立て上げをいたしました。あるいはまた、銀行がお作りになっていらっしゃるサービサーとタイアップをいたしましてこのファンドを活用していこうと、こういったことも視野に入れているわけでございます。  もっとも、このファンドを活用して企業再生ビジネスあるいはサービサービジネスを進めていくということは、日本では比較的新しい手法といいましょうか、そういったものでございますので、今後とも精力的にそういうことに取り組んでまいりたいと、このように存じております。  以上、私どもの活動につきまして概略御説明を申し上げたところでございますが、最後に、今度のデフレ対応策における構想の具体的な内容については定かには承知しておりませんが、書面で見る限り、産業再生機構の設立が現在準備中でございます。私どもは、今申し上げましたように、私どもの守備範囲は破綻懸念先以下の債権について回収あるいは企業再生というビジネスに取り組んでいるわけでございまして、この総合対策を拝見いたしますと、産業再生機構といいますのは、要管理先債権について、しかも準メーン行以下の債権を買い取る、そして再生ビジネスに取り組むと、こういうふうにお書きになっていらっしゃるわけでございますので、私どもの言うならば役割分担は、一応今後の御議論をいただく場合には明確にしていただいた方がよろしくはないだろうかと、こういったことを考えております。どうぞよろしくお願いを申し上げたいと存じます。  以上でございます。
  11. 柳田稔

    委員長柳田稔君) ありがとうございました。  以上で参考人からの意見の聴取は終わりました。  これより参考人に対する質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  12. 田村耕太郎

    田村耕太郎君 新入生の田村でございます。新入生であることもありまして的外れな質問をするかもしれませんが、どうか御容赦いただければと思います。  今日は御多忙の中、三人の参考人の先生方におかれましては、わざわざお越しいただきましてありがとうございます。先生方の日本経済活性化に向けてのお考えや御活躍、興味深くお聞きさせていただきました。  今度は、先月末に出された総合デフレ対策に対して先生方の御意見やいろんな議論をお聞かせいただければと思います。  先月末に出された総合デフレ対策を概観させていただきまして、個人的な見解なんですが、金融再生と産業再生を同時にやっていこうという、こういう姿勢は評価されるべきではないかと感じます。ただ、全体のトーンを見ますと、金融再生ができて初めて産業再生ができると、どちらかといいますと金融再生先行論みたいなトーンが反映されているのではないかと感じます。私は、大した知識も経験もないんですが、直観的に逆ではないかなと感じております。産業再生ができて初めて金融再生が可能ではないか。今の日本資本不足で苦境に陥っているのではなくて、資本余剰で苦境に陥っているのだと思います。あとは企業がどうやって元気になるかだと思うんですが、やはり企業が厳しく規律のある経営をしながらも、投資機会をしっかり見付けて、そこに参入していって、消費者が喜ぶ商品やサービスをしっかり提供して、経済全体の将来性と付加価値が高まって初めてバランスシートがきれいにできるのではないかと思います。  私はこの産業再生に期待しています。この産業再生の在り方についてちょっとお伺いしたいと思います。その中でも産業再生機構に対する評価をお伺いしたいと思います。  現行制度の下では不十分だということでこういう新しい枠組みが作られたんだと思いますが、現行制度を見ましても、我が国には世界に冠たる民事再生法や、今国会で抜本改正案が出されていますけれども会社更生法、この抜本改正案も早期適用、事業再生を目的に作られているんですが、この法制度、そして産業再生機構さんがこれからお探しになるであろう日本全国にこの苦境下でも立派に経営されている経営者。法制度も経営者もしっかりいる。何が不十分でこの制度が、産業再生機構というものなんですが、必要となったのか、私は少し疑問なんですが、現行制度、これからの日本経済の置かれるであろう状況を勘案しまして、産業再生機構の必要性と意義に関して、三人の参考人の先生方の御意見をお伺いできればと思います。
  13. 吉野直行

    参考人吉野直行君) 先ほど私のところは少しマクロのお話をさせていただいたんですけれども、やはり日本企業の場合には、大手のところは、強いところは海外に出ていく、それから中小企業や中小・中堅企業でも元気なところは中国に出ていくと、こういう形で、一方は強い企業がどんどん出ていっているわけです。その中でいかに日本に新しい産業を呼び込むか、あるいは既存の産業のアクティビティーを上げるかということが私は一番の問題だと思います。  そこにはやはり二つぐらいございまして、一つは、やっぱり研究技術とか、中国などに出ていく産業にないものをやはり日本が作り続けていくと。これは一九六〇年代、七〇年代の日本がずっとやってきたことであります。その意味では、日本のいわゆる特許の数というのはアメリカに次ぐ数であります。ですから、そういういろいろなアイデアがいかに産業に結び付くかと、ここのところが今日本の欠けている問題だと思います。だから、そういう意味では、この産業再生機構のようなところで、やっぱりそういうものとこれまでの既存の産業、うまく結び付けるという意味で働いていただければいいんではないかと思います。  それからもう一つ、これまでは破綻した、RCCの後で御説明あると思いますけれども、再生のメカニズムはなかったわけですから、どうしても不良債権、要注意先になるとそこでもうクローズしてしまうという形だったわけですが、この再生機構のところには、恐らく人材がやっぱりもう一つ非常に重要だと思います。いかに方向として上向きをさせるかといういろいろなアイデアを持った方々の知能の蓄積ということが必要ではないかと思います。  以上です。
  14. 深尾光洋

    参考人深尾光洋君) 私は、産業再生機構については相当疑問に思っておりまして、単に不良債権処理の先延ばし機構になる可能性が相当あるのではないかと。あるいは、ちょっと悪い言い方になるかもしれませんが、どさくさに紛れて新たな政府金融機関一つ財務省と経済産業省が作ってしまったのではないかというふうに私は疑っております。  塩川大臣が閻魔大王とおっしゃいましたが、企業について本来それを破綻させるかそうでないかというのは、債権者とそれから経営者が話し合って、株主は一回置いておいて、場合によっては経営者を入れ替えた上で判断する。その場合の判断機構としては、本来は裁判所がやるべきことであって、これに政府が直接絡むということはやはり相当意思決定をゆがめる可能性がある。そういう意味では私は非常に問題が多い機構ではないかというふうに考えております。
  15. 鬼追明夫

    参考人鬼追明夫君) 先ほども御説明申し上げましたように、整理回収機構はこれまで、破綻懸念先以下の債権について、再生可能性のあるものについては必ずしも清算型回収によらずして、再生によって回収をしていく、こういう手法を取ってまいりました。  御承知のように、今、深尾先生もおっしゃいましたけれども、企業再生というのはやはり、その債務者及びその経営者でございますが、と債権者との間で決まる話でございまして、その間の権利の調整というのがうまくいかない場合に裁判所が出掛けて、例えば会社更生手続でありますとか民事再生手続ということで裁判所が関与していくというのが普通のやり方であろうかと。したがいまして、RCCも、企業再生をいたします場合は、我が社から会社更生の申立てをする、あるいは民事再生の申立てをする、あるいは私的整理で各債権者に私どもの考え方をお伝えして御協力をお願いする、こういった形でやっております。  ただ、今回の構想は要管理先ということになっておりまして、私どもにとりましてはいまだ経験したことのない債務者群のそういった再生ビジネスに関することであります。私どもは政府の施策を実行していくそういう組織でございますので、産業再生機構そのものについてとやかく論評することはお許しをいただきたいと思っておりますが、どちらにいたしましても、現在の窮境にある企業を何とか健全な方向に向けていくために成功していただきたいなと、こんなふうに考えております。
  16. 田村耕太郎

    田村耕太郎君 ありがとうございました。  二番目に、事業再生と産業再生という概念についてお伺いしたいと思います。  総合デフレ対策をよく読ませていただいたんですが、この中で事業再生という言葉と産業再生という言葉が混同されて使っているような感じを受けました。ミクロとマクロの問題にすぎないという側面もあるんですが、今の日本経済現状では、厳密に言えばこの二つの考えには一線を画すべき、相対立すべき概念ではないかと思います。  産業再生の目的は、先ほども参考人の先生のお話がありましたが、デフレ進行の元凶である産業全体の供給過剰体制の是正が目的であると思うんです。やっぱりまじめにやっている会社がばからしくならないように、債務免除企業がダンピング商法を続ける、こういうものはあってはならないと私は思います。  一方、本業の事業は好調なんですがバランスシートが傷んでいる、こういう企業を救済することが事業再生だと思うんですが、これを行いますと供給過剰体制もモラルハザードも野放しになってしまう。是正されずに残ってしまう。産業の再生にはつながらないと思うんですね。産業の再生と事業の再生、この両立に関して三人の先生方の御意見をお伺いしたいと思います。
  17. 吉野直行

    参考人吉野直行君) 今御指摘のように、事業再生はやっぱりミクロ、各企業になりますし、産業というのはそれぞれの業種なりあるいはマクロ的なところになると思います。そういう意味では、マクロ的にまず見ますと、事業あるいは業種に関してどういうところが日本の競争力があるかということだと思います。  私が一番最初に申し上げましたことで、全体的に見ますと製造業というのは日本アメリカ、それからイギリスともにだんだん一九九〇年代から二〇〇〇年にかけて落ちてきておりまして、だから、そういう意味ではやはり、途上国、特にアジアに負けないような部門での新しい技術による産業再生というのはあり得ると思います。ただ、その産業の中でもやはり金融業という、あるいはサービス業という、そういうセクターの向上というのは是非必要ではないかと思います。  それから、ミクロの再生に関しましては、やはりそれぞれの経営者がいろいろこう一生懸命やられているんですが、それが製品に結び付かない。あるいはどういうところに販売したらいいのか、そういう情報がなかなかない。  よく昔、金融機関の方がおっしゃったんですが、発明家には絶対金を貸すなと、こういう議論があったというわけですね。これは、物は作れると、ところが、どうして販売したらいいか、帳簿の付け方が全く分からない。こういうのが日本の欠点であります。それで、アメリカはどうなっているかといいますと、そういう方がおられますと、そこに一緒にくっ付いて、それをサービスする方が必ずくっ付いてくるわけです。それで新しい事業が再生しますとまた別のところに行くと、こういう形でその専門家がいろいろおられるわけです。  だから、そういう意味では、日本では産業再生の中にもそういうような機能も是非含めていただければと思っております。
  18. 深尾光洋

    参考人深尾光洋君) 私も、産業再生というよりは事業再生を目指すべきであって、個別企業のレベルでの再生を考えるべきだというふうに考えます。  しかし、仮に破綻させる企業を破綻させたとして、その産業では過剰供給がなくなったとしても、実は人はどんどん余ってくるわけです。こういう意味では、生産設備を削減したところで、マクロで見れば人はどんどん余ってくる、これが雇用を減らして、これによってデフレを悪化させるということについては止めることはできません。  そういう意味で、過剰設備の廃棄あるいは存続不可能な企業の淘汰ということだけをやっても、私はデフレの根本的な解決には全くならないというふうに考えております。  また、政府は産業レベルの再生に口を挟める時代ではないと思っております。現在の役人の水準を考えれば、私は、個別の産業について国がどうのこうの言うという水準を超えているのであって、マクロの環境を整えれば十分であると考えております。
  19. 鬼追明夫

    参考人鬼追明夫君) 必ずしも私、専門的に勉強しているものではございませんが、産業再生と事業再生関係は、仮に事業再生が全件成功しても産業再生は必ずしもうまくいかないという場合があるだろう、また、産業再生が成功したといえども事業再生としてはうまくいかない企業がたくさんあるだろう、そういう関係にあるだろうと。だから、関係は大いに深いんですけれども同じではないというふうに考えております。
  20. 田村耕太郎

    田村耕太郎君 最後の質問なんですが、この十年に出された改革案を全部目を通してみましても一つの傾向が見られます。それはどういうことかといいますと、様々なポイントがあるんですが、昨今言われている不良債権処理策が代表的なんですが、全体的に減点主義の発想で政策が作られているのではないかという気がしてなりません。  私は、企業の経営でもそうですけれども、減点主義からインセンティブ付与主義に移るべきではないかなと思っております。言うことを聞かなければつぶすとか、言うことを聞かなければ退職金やらないとか、言うことを聞かなければ首にするとか、どちらかというと締め付けや管理に基づく発想で政策が作られているような気がするんですが、それよりは、政府が設定した目標をクリアすれば、それを達成すれば、その経営陣にも企業にも銀行にもいいことがある、そういう発想で動機付けを行う、そういう政策をすべきではないかと思うんですが、この点に関して御意見をお伺いしたいと思います。
  21. 柳田稔

    委員長柳田稔君) どの参考人お願いいたしますか。
  22. 田村耕太郎

    田村耕太郎君 全員。お三方に。
  23. 吉野直行

    参考人吉野直行君) おっしゃるとおりだと思いまして、例えば金融機関の経営でも、リスクを回避した、それから間違いをしなかったと、こういう形の私は人事評価になっていると思います。これが、リスクを取りながら収益をもうけようと、こういう構造がなかなかこれまで日本のいろんな組織で出てこなかったと思います。  ですから、リスク内のパフォーマンスであればそれは認めてあげるということがない限り、日本はどんどんどんどん安全性だけを志向し、収益が志向できなくなると思います。それは政府だけのレベルではありませんで、すべての、私、日本社会にこれまで根付いてきたことだと思いますので、先生のおっしゃるように、いかにリスクを取ったか、それをきちんと評価してあげる制度というのは是非必要だと思います。
  24. 深尾光洋

    参考人深尾光洋君) 私も金融機関の経営者に対してインセンティブを付与するということは大賛成であります。しかし、やはり破綻した場合には辞めていただく。その場合には退職金出さないというのはむしろ当然ではないかなというふうに思っております。  しかし、これに対して、再生ができた金融機関、仮にいったん国有化されて、それがその後再生ができた経営者に対しては、退職金を単に、勤続年数といいますか、何年平穏にやったかということでボーナスを出すのではなくて、むしろ、いかに利益を上げて国の例えば保有株式の値段を上げたかということに応じて報酬を付けるということが必要なのであって、こういうところのインセンティブというのは非常に大事だというふうに考えております。
  25. 鬼追明夫

    参考人鬼追明夫君) 私も、我が国の文化の問題として、やっぱり成功したときにいわゆる成功報酬なるものをどう考えるのか、失敗をしたときにはその責任をどう取ってもらうのかということをもう一度考え直すような時期に来ているのではないだろうか。責任ばかりがいたずらに強調をされて、それじゃ成功したときにどうなんですかということになりますと、そちらの方の議論はほとんどないというのが現状であるかのように思いますので、多少そういった文化の曲がり角に来ているのかな、こういう感想を持っております。
  26. 田村耕太郎

    田村耕太郎君 ありがとうございました。
  27. 勝木健司

    ○勝木健司君 民主党の勝木でございます。  参考人のお三方の皆さん、御苦労さんでございます。  そうしたら、限られた時間でありますので質問をさせていただきたいと思いますが、ここ数年の日本経済は、デフレが新しい不良債権を生んで、そしてまたそれが更にデフレを加速するという悪循環に陥っている状況下にあるというふうに私は思います。  その中で、小泉政府竹中大臣ともに、まず不良債権処理を行うことがデフレ克服の手段であるとの姿勢を取っておるわけでありますけれども、私は、最初にデフレを克服して新規の不良債権の発生を止めてから不良債権処理を進めていくという手法もあるんじゃないかと思うわけでございますが、この不良債権問題の解決を先に行うことによって経済再生につなげていくという小泉政権の手法は、本当に今このデフレ経済下の中で適切なんだろうかどうかということについて、吉野参考人深尾参考人に御見解をお聞きしたいと思います。
  28. 吉野直行

    参考人吉野直行君) おっしゃいますように、不良債権処理だけではまた同じことになると思います。一九九九年に八兆円の公的資金注入されましたが、現在また不良債権が増えているということであります。私は、やはりその不良債権処理と同時に金融業のいかに収益を上げるかと。これが伴わない限りにはやはりまた同じ問題が起こると思います。  私の考えでは、やはりアジアがこれだけ成長し、そしてそこで収益率が上がるものがあるわけですから、日本金融機関は、アジアの支店などを閉めるというよりは、むしろリスクを考えながら外に出ていき、その部分でもうかる部分はもうけるということだと思います。  先日、イギリスのバンク・オブ・イングランドの方が日本に来られましたときに、あちらの方が日本不良債権はどうしてこう増えるんだというお話がございました。そのときに私のお答えは、やはり少し経済日本の中で縮まっていると。  つまり、景気が悪い日本の中で全額を運用しようという、これがやはり私は間違っていると思います。ですから、資金を集めるのは国内、そして、一部はもちろん日本企業に貸すわけですが、その残った部分海外で一番もうかるところで運用し、その収益日本に持ち帰ると。これによって、やはり不良債権対策金融業自身の収益が上がることによる活性化につながると思います。  以上です。
  29. 深尾光洋

    参考人深尾光洋君) 私も今の趣旨に全く同感でございまして、不良債権処理を先行させれば、また更に不良債権が多くなってしまうという悪循環に陥ると考えております。  その意味では、デフレ対策を先行させ、その後でといいますか、それをやりながら不良債権処理の方の準備を進めておいて、一気にやるという二段構えの政策が必要だというふうに考えております。
  30. 勝木健司

    ○勝木健司君 ありがとうございます。  今回のこの金融再生プログラムは、資産査定の厳格化を進めるなど、ハードランディングを志向したものだと言われておるわけでありますが、果たして主要行に対する影響はどのようなものになると考えられておるのか、また、このプログラムによって平成十六年度までに不良債権が終結すると考えられるのかどうか、また、果たして今回の対策で本当にデフレ経済から脱却できるものかどうかにつきまして、吉野参考人深尾参考人からそれぞれお聞きしたいと思います。  実現するとすれば、必要な条件があれば、先ほど深尾先生から一部あったわけでありますけれども、お述べいただきたいというふうに思います。それぞれお願いします。
  31. 吉野直行

    参考人吉野直行君) 私は、各金融機関のビジネスモデルの再構築ということが同時に必要だと思います。それがきちんと出された金融機関に関して公的資金注入するという条件付のやり方も一つはあると思います。  現在の日本経済は、やはりこれまでと違いまして大きな構造変化に来ております。これまでの日本金融機関のトップの多くの方は国内派でございます。その理由は、これまでの日本銀行収益国内から上げればよかったわけです。それは日本景気がずっと九〇年まで増えておりましたためです。どちらかといいますと、海外志向の方は盲腸と言っちゃ失礼なんですが、役員の端の方におられると、こういうようなことでありました。  しかし私は、ビジネスモデルの転換としては、やはりアジアという大きな市場日本が一番近くに持つ、そこから上げられる収益日本に持ち帰る、こういうような形でのビジネスモデルの転換が是非必要だと思いますので、それと同時に不良債権処理ができた金融機関は、私は大丈夫だというふうに思っております。
  32. 深尾光洋

    参考人深尾光洋君) 私は、大手行の大半はもう既に実質債務超過になっていると考えております。現在の自己資本、コアの自己資本、ティア1と言われておりますコア自己資本で見ますと、大手行の四つのグループのうち三つの自己資本の半分がこの繰延税金資産でございまして、これは実質的に価値のないものでございます。当面利益が上げられるとはとても思えないわけですから、価値がないものでございます。そうしますと、それだけでまず半分になってしまう。また、これは三月の数字でございますので、その三月時点では日経平均一万一千円でしたが、現在八千五百円を切っております。この二割以上の株価の下落による損失を考えに入れますと、もうもはや自己資本はない、大半の大手行は自己資本がない状況にあるというふうに考えております。  その意味で、しっかりした査定を行った上で繰延税金資産を除くということを仮にしっかりやりますと、大半の大手行は実質国有化状態になる、あるいは国営化状態にならざるを得ないというふうに考えております。  次に、デフレ対策ですけれども、現在出ているデフレ対策の発表当日に株価が値下がりし長期債の金利が低下するという状況は、デフレは絶対にこれでは止まらないとマーケットが判断したと。マーケットが判断したということは、金をもうけようと思って金を債券市場、株価市場に突っ込んでいる人たちが、この状況では絶対に株価は上がらないし金利も上がるような状態にはならないと判断したということになります。  そういう意味で、私は、デフレ対策としては全くの力不足であって、そのためには、私が冒頭に申し上げたような強力な政策を取らないともたないと。そういう意味で、現状で減税や財政支出をすることには反対であって、むしろ株式の買いオペ、REITの買いオペをやって、これによって物価を上げる、これができない場合は増税によって景気を刺激するという発想の転換が必要だと思います。
  33. 勝木健司

    ○勝木健司君 次に、金融界が猛反対をいたしました資本金の計算方法のルール変更でありますが、結局、今後更に検討するということになったわけでありますが、このルールを見直すという竹中大臣の方針について参考人はどのようにお考えになっておりますでしょうか。  この資産査定の厳格化などを進めると、自己資本比率の維持のため主要行が資産圧縮を図って、そして、中小企業などに対する貸し渋り、貸しはがしを招くことになるとの見方もあるわけでありますが、どのように考えられておるのか。  そしてまた、一方、繰延税金資産自己資本への算入制限をしている米国では日本に比べて無税償却の範囲が広いというふうに聞いておるわけでありますが、まず無税償却の範囲を広げるなど税制の見直しを行うことが先決じゃないか、そしてまた、繰延税金資産の算入制限のみを行うのは不適当との意見もあるわけでございますが、この繰延税金資産の見直しの問題については、吉野参考人深尾参考人、どのように考えられておるのか。  そしてまた、そもそも自己資本比率の問題は不良債権処理の問題の解決には直接的には関係ないんじゃないかという問題と、そういう主張をされる方もおられるわけでございますが、この自己資本比率を米国並みとすることについての有効性についての両先生の見解もお聞かせ願いたいというふうに思います。
  34. 吉野直行

    参考人吉野直行君) 私は、今おっしゃいましたように、税金の繰延べ以外に、やはり全体的な体系を見ないと私はいけないというふうに思っております。  それから、自己資本比率などに関しましては、やはりこれも今後政治的なリーダーシップを是非お願いしたいのは、こういう国際的な基準がアメリカあるいはイギリスを中心として先にできてしまうということがあると思います。これも一九九〇年代に、日本金融業をやはり少し弱くしたいと、こういうようなところも一部政治的にあったと思います。是非、そのいろいろな基準を決める場合には、日本のやはりリーダーシップも考えながら自己資本比率なりを決めるということは必要だと思います。  それから、自己資本比率に関しましては、八%ございませんと海外でのいろいろなビジネスができません。そういう意味では、やはりリスクを取りながら外に出ていくという意味では、大手行の八%の維持ということは必要だというふうに思っております。
  35. 深尾光洋

    参考人深尾光洋君) まず、会計ルールの見直しという議論に竹中大臣の方針がなってしまったこと、そのものがおかしいと考えております。  会計ルールと規制上の自己資本は全く別の判断であります。アメリカでも、会計ルール、財務会計の自己資本の測定の問題と規制上の自己資本自己資本比率規制上の自己資本というのは別問題であって、本来金融庁がやるべきことは規制上の自己資本の見直しをすればよいのであって、会計上の自己資本は会計士に任せておけばいいわけです。会計士がこれは資産として判断しても、監督上、預金者を保護する、あるいは金融システムの健全性の維持のために必要であるということであれば、当然それを見直すというのは当たり前のことだと思います。  問題は、その見直しを、大衆団交といいますか、昔の。銀行の頭取と金融大臣の間の相談という形を取ったわけですが、あれは言ってみれば、丸焼きにするクリスマスの七面鳥に向かって、これから丸焼きにしますよということを言って合意を求めるというのとほとんど同じでございまして、全く無駄なことであるというふうに思います。  そういう意味では、本来は規制について、もちろん大臣が替わっただけで規制ががらっと変わるということ自身は問題で、制度の安定性という点では問題でございますが、しっかり手続を踏んだ上で自己資本比率規制を強化して、それを適用するということがポイントであるというふうに思います。
  36. 勝木健司

    ○勝木健司君 それでは、このデフレ対策の中身についてでございますが、税制改革だとか証券・不動産市場活性化ですとか、また都市再生の促進、あるいは規制改革など、これまでも随分と言われてきたことの焼き直しが目立つように思います。目新しい施策は先ほどもありましたように産業再生機構の創設ぐらいでありますけれども、この創設自体はむしろ私は必要だというふうに思いますが、課題は、生かす企業と生かすことの困難な企業の選別をどうやって行うのか、あるいはその判断基準をどう設定するのか、債務とキャッシュフローの比率を線引きの基準にしたらどうかとか、いろんな意見が飛び交っておるわけでありますが、この産業再生機構についての御意見と、基準を含めた制度をどのようにしたらいいのかということ。また、不良債権を買い取る資金として十兆円程度の新たな資金が必要だとも言われておるわけでありますけれども、これにつきまして、吉野参考人深尾参考人からお考えをお聞かせ願いたい。  あわせて、鬼追参考人にお伺いいたしたいと思いますが、RCCにおいて企業再生機能の強化をすると今回もされておるわけであります。具体的にはどのように対応されていかれるつもりなのか。そしてまた、その一方で、政府主導の産業再生機構創設による企業再生がまたうたわれておるわけでありますので、この構想によりまして産業再生が円滑に行われるにはRCCの立場からどのような点が重要だと考えておられるのか、お伺いしたいと思います。
  37. 吉野直行

    参考人吉野直行君) 今最初にお話ししました、デフレ対策がこれまでずっと行われてきたんですけれども、それでなかなか日本がうまくいかないと。それに関してはちょっと大きな話を答えの一つとさせていただきますが、イギリス、アメリカもやはり景気が相当八〇年代、九〇年代悪かったことがございます。  じゃ、そこがなぜ再生したかということを調べてみますと、イギリスの場合には、よく八〇年代はイギリス病と言われたわけですが、その後やはり金融業で彼らのところは立ち直ったわけです。それから、アメリカは一九九〇年代に、やはり日本に負けるという形だったんですが、ここでは四つの改革が行われました。そこは人と物と金であります。一つは航空機産業の自由化、それから二番目がトラック産業の自由化、それから三番目が情報通信産業の自由化、それから四番目が金融業の競争促進と、こういう形で構造改革をやりながら人と物、アメリカの場合にはトラック産業で物が動き、それから航空機産業の自由化で人の流れがやすくなり、情報通信産業で情報の流れがやすくなり、それから金融サービス業でお金の流れがやすくなると、こういう形の構造改革をやったわけです。  私は、やっぱり日本が今必要なことは、少し長めのことを考えながらこういう構造改革をやっていくことが本当に必要ではないかと思います。それがなければ、これまでの過去の十年間と全く同じことになると思います。その意味では企業再生に関しましても同じことが言えまして、やはりその経営者がきちんとし、そこでやる気があるところにはお金が行くというメカニズムが是非必要だと思います。
  38. 深尾光洋

    参考人深尾光洋君) 私は、従来のデフレ対策はそもそも腰が入っていなかったといいますか、本気でデフレを止めようというだけのものが何も入っていなかったように考えております。  デフレというのはどうしてもミクロで見がちであって、個別の企業や個別の失業というのをどうするかという観点で見がちですが、これは対症療法にすぎません。本来、デフレを止めるというのはマクロの政策が必要であって、現在の需給ギャップの大きさを考えに入れて、それに見合うだけの強さの処方をしないと治らないということであります。  そういう意味では、九七年ごろであれば需給ギャップもほとんどありませんでしたので非常にやりやすかったわけですけれども、現状のように非常に症状を悪化させてしまったところでは厳しい政策を取らざるを得ない。ある意味では、現在は見掛けの症状を抑えるために大量に副作用の伴う薬を飲ませているようなものでして、ステロイドといったようなものを大量に使っているようなものであって、これは体力をどんどん悪化させている。つまり、財政赤字をどんどん積み上げることによって、将来、日本経済を立て直すときの困難さを拡大している。これによって見掛けの症状は抑えておりますが、実態は悪化し続けている。これによって手術を先延ばししているだけで、体力が落ちていくという状況かと思います。  私は、現状、やる場合には、産業再生機構のようなやり方では無理があると考えております。産業再生機構自身は、私は、本来裁判所と債権者に任せておけばいいわけでして、銀行自己資本が十分あれば、銀行は、貸出し先を破綻させるか継続させるかは自らの利害関係、つまり、いかに回収金額を大きくするかという一点で判断します。これで十分なわけであって、政府が入る必要は全くない。なぜこれができないかといいますと、本当の不良債権の損を表に出すと自己資本がないことが分かってしまう、自己資本がないことが分かってしまうとお取りつぶしになってしまって経営者は辞めなければいけない、そうすると退職慰労金ももらえない、だから先延ばしする、それだけのことでございます。そうしますと、銀行部門をしっかり再生して、つまり銀行に十分な自己資本がある状態にして、利益が出る状態に持ち込めば、政府による産業再生機構のような対策は必要でない。  また、基準の設定についても、当然これは破綻処理の場合、個別具体的にどこからいけるかということでありますので、単にキャッシュフローが、あるいは負債がどうのということで決まるものでは全くない。特に、小さい企業になればなるほど経営者の資質というのが重要になってきまして、これを見極めるということは、単に数字ではとてもできるものではないと考えております。  そうしますと、私は産業再生機構というのは、方向性として間違っているというふうに考えております。  以上です。
  39. 鬼追明夫

    参考人鬼追明夫君) 御質問が二つあったかのように思いますが、一つはRCCの再生機能をどう強化していくのかと、こういう御質問ではないかと思います。政府の二つの紙で、一方において産業再生機構の設置というものをおっしゃり、一方において金融再生プログラムでRCCの再生機能の強化ということをおっしゃっていらっしゃいます。  したがいまして、私といたしましては、先ほど申し上げましたように、政府は今の段階ではすみ分けをはっきりしておられるのかなと。つまり、破綻懸念先以下の不良債権について、私ども、なお再生可能性のあるものについてはしっかりと再生ビジネスに取り組みなさいと、こうおっしゃっているのかなと、こう思っております。したがいまして、これまでからも先ほど申し上げましたように取り組んでまいったことでありますが、なお一層私ども再生ビジネスを強化していかなきゃいけないと思っておりますが、一方において、これはモラルハザードを防がなきゃいけないという側面もございます。  したがいまして、やはり破綻懸念先以下の企業も、退場すべきは退場していただかなきゃいけない、再生させるべきは再生さしていかなきゃいけない。そこの目利きをどのようにしていくのか。単に定量的なことで判断できるだけのことではなくて、今も深尾先生おっしゃいましたけれども、企業は正に人なりでございますので、しかもしばしばその議論の中に、これまで余りないことですが、経営者の人というだけではなしに、そこの中間管理職あるいは一般社員の協力が得られるかどうか、そういったことも含めて、再生のやっぱり私どもは目利きをきちんとしていかなければならないと、かように存じております。  そういう意味で、同じような観点で、産業再生機構が成功されるかどうか。マニュアルを作るのは比較的簡単なことだと思いますが、その目利きが大事なので、その目利きをどうするかということをこれは衆知を集めて考えていかなきゃならぬのじゃないだろうかと、このように思っております。
  40. 勝木健司

    ○勝木健司君 最後に、日銀の量的緩和策によって、本年六月におけるマネタリーベースの伸び率が前年比二七・六%になっておりますけれども、マネーサプライはそれほど伸びておらない、三・四%の上昇にとどまっておるということで、余り量的緩和策については効果を発揮していないのが状況にあるんじゃないかと。そういう中で日銀は新たに銀行保有株の買取り策を打ち出しておるわけでありますけれども、中央銀行として取るべき手段であるかどうかについては議論の分かれるところでありますが、また一方で、日銀はインフレ目標の設定はかたくなに拒んでおるわけでございます。  そこで、今回の日銀の決定についての吉野深尾両先生のコメントと、そしてまた、インフレ目標設定については先ほど深尾先生述べておられますが、インフレ目標設定についても是非、そしてどれぐらいかということについても吉野深尾参考人に、もう時間が余りありませんので、簡単にお答え願いたいと思います。
  41. 吉野直行

    参考人吉野直行君) ただいま御指摘のように、日本銀行はお金を、印刷を二七%あるいは三〇%ぐらいやっております。ところが、マネーサプライという現金と預金を合わせたものは三、四%と。これは歴史的にずっと見ますと、日銀券の増加率とマネーサプライというのは、ほぼ、九〇年、九五年ぐらいまでは同じ比率で追っております。最近だけがここが大きく乖離してきたわけです。その大きな理由は、やはり預金が入ってきた銀行が貸出しをし、それがぐるぐる日本の社会を回る、これが、この機能が閉ざされてしまったことが、この日銀券の非常に大きな増加率とマネーサプライの低下と、この二つになっていると思います。  ですから、もうこれまでの今日の御議論でずっとそうなんですが、やはりいかに日本金融の貸出しをうまくさせるかということが正にこれをやることの一番の重要点だと思います。今やれることは、財政政策では非常に少ないので、日本銀行がマネタリーベースを増やすというやり方は一つあると思います。  それから次に、インフレ目標はどうかと申しますと、私は、インフレというのは金融政策だけが決めるものではないと思います。それは、これまで日本がいろいろな構造改革をずっとやってきた中で、大店法の改革などにより、あるいは中国から安いものが入る、こういうことがやはりインフレを下げてきた面もございます。ですから私は、インフレ目標設定とするよりは、やはり景気対策として金融政策を緩和するということには賛成ですが、数値目標に関しては私は反対であります。
  42. 深尾光洋

    参考人深尾光洋君) まず、日銀の株式買取りですけれども、私はこれには反対です。個別に相対で株を買い取るということになれば、一番売りにくい株から売られるのは明らかでございますので、これはまずいと。買う場合は、銘柄を指定せず、マクロでといいますか、東証株価指数に連動しているような投資信託とかいった形での広い株式を大量に買い入れるということの方がより望ましいと考えております。  次に、インフレ目標の設定ですけれども、私は、インフレ目標の設定には賛成です。インフレ目標としては、私は、消費者物価の上昇率を年率一・五%ぐらい、プラスマイナス一%ぐらいの範囲に設定するということが適当だろうと考えております。ただ、現状のように既にデフレ物価が一%以上も下がっているような状況で来年プラス一・五というのは無理でございますので、私は、三年ぐらい先を見込んで、三年ぐらいの期間に年平均で年率一・五、プラスマイナス一ぐらいのレンジのインフレターゲットを設定すべきであると考えております。本来、日本銀行というものは政府が作ったものであって、政府から銀行発行の特権を受けているものであります。そういう意味で、その政策の広い意味での目標を国会が与えるというのはむしろ当然なことであって、もしも日本銀行がその言うことを聞かなければ法改正というのはやむを得ないというふうに考えておりますが、本来、日本銀行が自ら設定すべき性格のものであるというふうに考えております。  次に、なぜマネタリーベース、日銀の当座預金をどんどん増やしてもマネーサプライが増えないか、あるいは景気が拡大しないかということですが、普通、マネタリーベースを増やせば名目金利が下がるわけです。金利が四%だったものが二%、一%になれば、それはお金を借りやすくなって、これによって住宅投資設備投資が拡大するという形で効果が出ます。しかし、いったん金利がゼロになってしまいますと、この金利を動かすということによる効果がなくなってしまいます。現状ではもうゼロ%になっておりますので、短期金利をこれ以上下げることはできません。また、貸出し金利の一・八%というのも、年間の貸倒れ率が一・五%近いということを考えれば今でも赤字でありますので、これ以上貸出し金利を下げることもできない。また、長期国債の方も、もう一%を切っているわけですから、これ以上金利は下がるとはとても思えません。仮に金利が上がれば長期国債を持っている人は大損するわけです。一%金利が上がれば一割近い損が出ますので、その将来金利上昇のリスクということを考えると、現状金利というのはもうこれ以上下げれない水準にあると考えております。  こうなりますと、日銀が国債を買っても、あるいは、短期の国債今ゼロ%ですが、短期国債を買って銀行券を発行しても、これには効果はありません。これについて、効果がほとんどないということについては日銀の言うとおりでありまして、短期国債を買っても、あるいは長期国債をこれ以上買っても効果はないと私は考えております。  効果があるとすれば、それは期待に与える効果であって、その期待に与える効果というのは、日銀総裁に期待を変えるだけの資質があるかどうかということに依存します。現在の日銀の幹部といいますか、総裁の実際のコミュニケーションのやり方ということを見ていますと、その期待を変える効果は全く期待できないので、効果はないというふうに考えております。  こうしますと、デフレを止めるための金融政策としては、株式や実物資産の大量買入れをやる。ただし、これをやってもデフレが必ず止まるとは私は言えないと思います。これをやれば株式不動産価格は一時的にリバウンドすると思いますが、それでも賃金、物価が下がり続ける可能性は否定できません。この場合には、やはり金融資産全体、政府が保証する金融資産に対する課税ということを本当に考える必要があるというふうに考えております。
  43. 勝木健司

    ○勝木健司君 ありがとうございました。
  44. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 参考人の皆様、御苦労さまでございます。  最初に鬼追参考人にお伺いしたいんですけれども、再生機構なるものが、今、谷垣担当大臣の下で作られようとしているわけですよね。個人的に谷垣さんといろいろ議論してみますと、なかなかその位置付けが難しそうでありまして、いろいろ苦心惨たんをしておられるようです。  私自身は、ここの前回の質疑で申し上げたんですけれども、RCCの機能に企業再生というものを今年の通常国会で付与させていただいたばかりで、ここの場でいろいろ議論をしたわけでありますけれども、大臣が替わったら途端にまた機構も変えるというのは、これは私は朝令暮改そのものであるといって批判を申し上げたんですけれども、しかしこれはできていくことになるでしょう。  その場合のRCCと新しい再生機構との役割分担というのを明確にしていきませんと、RCCのイメージというのがますます、何といいますか、殺し屋というと言い方は悪いですけれども、正に整理回収だということをより一層、国民の皆さんというか、企業社会にそういう印象を作ってしまうと思うんですね。今でも、言葉は悪いですけれども、RCC送りという言葉ありますよね。少年院送りとか刑務所送りとか、そういうニュアンスで言われるわけでありまして、何でうちの債権が別の、金融機関が破綻した場合ですけれども、別の引受手の金融機関に引き受けてもらえなくてRCCに回っちゃうんだという、そういう、何といいますか、認識というのがかなり一般的でありますね。ですから、そこに私は企業再生という機能を付与したということは、このRCCがワークしていく上ではいいことだなと実は思っていたわけです。  ですから、現実に現場のRCCの皆さんの処理状況というのをかいま見させていただくと、企業再生、つまり、引き受けた債権でも、蘇生できる企業、これはもうできるだけ蘇生させようという弾力的な運用というのを既にしておられるというふうに感じております。それの役割がもっと明確に法律上権限として、機能として付与されたということは、私は、重ねた言い方ですけれども、結構だなと思ってきたんですね。ところが、今度再生するやつは企業再生機構に行くんだよという話になると、RCCに引き取ってもらうやつはもう絶望的なやつなんだというふうな認識が強まってしまう可能性があると思うんですね。  ですから、私は御提案申し上げるのは、中小企業企業再生については、これはやっぱりRCCだという区分けをはっきりされて、まあ、企業再生機構の立場に立って、どういう場合がそういうケースになるかなと思いますと、やっぱり複数の銀行間の調整が取れないとか、債権者、債務者との関係が大きくて複雑過ぎて第三者による調停が必要だと、そういうケースが多分これから作られる再生機構の役割になっていくんじゃないか。それに対して、中小零細企業の場合には、そこで調整をしてもらうというのではなくて、やっぱりRCCできめ細かく個々の事業主の話を聞きながら調整していただくという方が私はいいと思うんですね。  ですから、境界線というものをはっきりさせて、RCCに送られたらもうこの企業の将来はないんだよという話じゃなくて、今でもRCCに送られると新規の銀行借入れができなくなるとか、そういう事実上の問題というのは大きく生じておりますけれども、ただ、RCCも企業再生を、しかも中小零細企業の分野に限ってはこっちが専門にやるんだと、垣根はちゃんと作られた方がいい、そういうふうに感じておりますけれども、鬼追社長の御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  45. 鬼追明夫

    参考人鬼追明夫君) 私も浜田議員のお考えと基本的には同趣旨のことを考えております。ただ、これまでの役割分担、私どもが入手し得る限りの資料で判断いたしますと、先ほども申し上げましたように、RCCは破綻懸念先以下のものについて処理をさせていただく、産業再生機構さんの方は、今の構想では、要管理先につきまして、しかも準メーン行以下の債権を言うならばオフバラ化するのに産業再生機構さんに集める、そしてメーン行と協力して当該債務者の企業再生を図っていくと、こういう構想のようであるように思います。これは、このとおりになりますかどうですか、今後の推移を注目しなければいけないわけですが、このような状況になりますと一応のすみ分けはできるのかなと、このように考えております。  一応、自己査定区分というものがあります以上、正常債権、要注意債権、その中の要管理債権、それに破綻懸念先あるいはそれ以下というような区分は、これは避け難いところだと思うわけでありますが、そういった破綻懸念先以下のものについて、私どもの方はなお再生可能性を言うならば求めていくということを考えていかなければいけないと思っております。  そもそも、我が国の倒産法体系と申しますのは、これはもう議員の皆様方御承知のとおりだと思いますが、例えば破産と民事再生の申立てとが同一債務者に関して競合しております場合には、まず民事再生から先議をするというのが裁判所でのルールになっております。  ということは、やはり倒産処理というのは再生ということをまず考えてみるんだということを物語っているんだろうというふうに私なりに解釈しているわけでございまして、私どもも、再生機能を付与されましてからは、機会あるたびに我が社の社員に対して、まず再生マインドを持ちなさい、債務者に接するときには再生マインドをまず持ちなさい、そして八方考え尽くしてどうにもこれはやっぱり再生は無理だよというのについては、これは残念ながら清算的な回収ということを図らざるを得ない。つまり、言うならば企業社会からは退場していただくということになるわけですが、そうでないものはやはり再生ということを考えなさい。ただ、そのときに、これも先ほど申し上げたことでございますが、モラルハザードをいかにして防止するのかというのも、これは私どもに課せられた付随的な任務であろうかと思っております。  私どもは、やはり強硬な回収策を取るよりは、債務者と言うならばにこやかに笑いながら回収協議をしていく方が、それは本当は楽です、精神的には。しかし、どうにもやっぱりいけないというものについては、やはりこれは清算型の回収という手段を取らざるを得ない。そのときには正に債務者の方と百八十度利害関係が違いますから、私どもの判断あるいは私どもの措置については、非常に厳しい批判というのは、これは私どもも覚悟しなきゃいけない。しかしながら、そのことがモラルハザード防止のためのやはり大きな一つの役割を果たすんだという、私ども、信念といいましょうか考え方を持っておりまして、いろいろな考え方を言うならば複合的に当該債務者からの債権回収ということに適用して、一件一件の案件について、言うならばもがき苦しみながら決定をしていっているというのが現状でございます。  議員がおっしゃいますように、役割分担を明確にしていただきたいというのは、私も冒頭に申し上げたとおり、そのとおりでございますので、今後とも、担当大臣始めその衝にあられる方々にはそのことをお願いし続けていきたいと、このように思っております。
  46. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 是非、谷垣大臣の方ともよく御調整をされて、私は、RCCが処理を任された案件の中にはたくさん再生可能なのがあると思うんですね。それを三年とか、金融機関が倒産した場合には五年になるんですか、そういうルールで、それは原則ですけれども、五年でそのかなりの借金を返せと言われたら、普通に回転している企業でもそれは無理になるわけで、それが事実上もう死刑宣告になっちゃうとすれば、本来存続していいはずの企業も、RCCに送られたというだけで一般の金融機関からの新規の貸出しも受けられないし、そして一定期間内にどうしても返済をしなきゃいけない。キャッシュフローだけで見ると、それは物理的に不可能だというケースが多々ありますので、是非私は、RCCは中小零細の分野では企業再生の役割をきちんと果たす。そういう意味では、RCC送りではなくて、言わば、引受銀行は引き受けられなかったけれどもRCCで安心して相談していけるということが認識として一般に浸透することが大変大事だと。  今は、ただでさえ日本企業社会というのは銀行中心にやってきて、その銀行さんが急変、急激に態度を変えちゃったものですから、一体どうしたらいいんだという迷いの中にもあるわけですから、ひとつ是非、重要な役割だと思いますので、参考人にはよろしくお願い申し上げたいと思います。  さて、次は吉野参考人にお伺いさせていただきますが、海外から日本に来る投資が極めて少ないと。この数字、御提示されましたけれども、実に深刻な数字だというふうに思いますね。なぜ日本がそういう意味海外投資を受け入れにくいのか、その辺りのことですね。私、特に人件費の問題が大きいと思いますし、特に機械産業、自動車産業の下請の下請の下請ぐらいの会社がもうほとんど根こそぎ、ある日、中国に部品工場ができたからということで仕事をなくしてしまう、そういう悲鳴がたくさんあるんですね。  だから、それは機械化、合理化努力とかそういうものだけでは補い切れない、やっぱり人件費の問題に行き着くわけで、私は特に中国の元のレートが問題であると思っておりまして、この委員会でも随分前に御指摘申し上げたんですけれども、かつてアメリカ日本に対して円を切り上げろということを迫ってきたあの迫力を、これはもう国のエゴでも何でもないので、やっぱり日本製造業がきちんと生き残っていくためには、元と円との関係、これを変える必要があるということを主張し続けておりますけれども、海外投資減少の原因と、それに対してどういう対応があり得るのか、簡単で結構ですから御意見を承りたいと思います。
  47. 吉野直行

    参考人吉野直行君) 今御指摘のように、元に関しましては、中国の人民銀行とか社会科学院の方もおっしゃっているんですが、元が非常に有利に固定されていると。これは日本の高度成長期の三百六十円と同じような状況であると思います。  それから、中国に随分出ていっているという面と、もう一つは、トヨタのような企業になりますと、アジア全体で、それぞれの地域でいい部品を調達し、製造はタイでやると、こういうようにもうアジアのネットワークの中で考えるようになってきております。ですから、日本がその中の一部を担うにすぎなくなっているわけです。ただ、その中で、じゃ、日本で担える部分はどこかといいますと、人件費の部分ではない、やはり非常に技術の高い部分、これはまだ日本で生産しております。  ですから、そういう意味では、人件費の面もあるんですが、じゃ、いかに日本に呼ぶかということですが、これはやはりこれまでの財、あるいはそういうものではなくて、例えば、日本はこれから高齢化社会がどんどん進んでいくわけです。恐らくそういうのに関してはスウェーデンなどではもっと進んだいろんな技術がありましょうし、そういう違った種類のものを日本のいろいろな自治体で誘致するということは私は可能だと思います。ですから、そういう意味では、ビジネスモデルを考え、あるいは日本社会の変化を考え、これまでの日本の中にないものを呼び込むということは幾らでもあるというふうに思います。  それから、やはりもう一つは、やっぱり日本の高い技術とそれからそのほかの諸外国のいろんな技術を組み合わせたものを日本に誘致する。これまでは自治体の方が海外に行って、それで宣伝をして、こちらに来てくださいということはほとんどなかったわけです。それに対しまして諸外国は非常にそういう努力をなさっております。  ですから、私は、是非そういう努力で日本にいろいろなビジネス機会を作る、それからやはり税制あるいは非居住者の、外国人の方が住みやすいいろいろな環境を各自治体が考えていただくというインフラの整備も必要だと思います。
  48. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 それはおっしゃるとおりなんですが、いずれも今日言ってあしたできる話ではないわけでありまして、アメリカが円切上げを迫ったときも、それだけですべての問題を解決しようということではなかったはずで、一種の時間稼ぎですよね。産業構造が変わっていくにはこれはかなりの時間が掛かるわけですから、その間つぶれるところは勝手につぶれろという話は、私は日本政治、行政の在り方としては正しくない。  だから、やはり通貨の問題について、交換レートを、もちろんアジア全体も含めてですけれども、特に元を中心とした交換レートの問題は、これは日本がきちっと言っていく必要がある。非常に声が弱いですよね。ですから、是非先生方もそういう御議論を活発化していただきたいなというふうに、そういう意味お願いを申し上げたいと思います。  それから、もう一問。いいことをおっしゃっているわけで、公共投資による社会資本整備が民間企業の誘致とかあるいはまた民間企業の活発な活動とかを誘発する程度が低いという御指摘で、つまりそれはどういう種類の公共事業をこれからやる必要があるのかということにもなるわけで、一般論としては私どももそういう議論をよくいたしますけれども、具体的にどんな公共投資をお考えになっているのか、一つ二つでも結構ですから教えてください。
  49. 吉野直行

    参考人吉野直行君) これはやはり地域によってもその答えは違ってくるんだと思います。先ほどの先生の御質問と同じように、どういう産業構造をそれぞれの地域で作っていこうかと、それに一番合うインフラというのはそれぞれ違うと思います。ただ、全体的に日本でいけば、やはり情報インフラ、これは今後とも是非必要なことでありますので、これは日本全国に言えることだと思います。  それから、もう一つ先生方にやはりお願いしたいのは、それぞれの地域でいろんな企業をこれから活発化させる場合に、本当にどういうインフラをその地域に持ってくることが一番重要かと。こういうのは絶対に一つの答えではありません。それから、例えば観光を誘致したいと、そういう地域であれば別のインフラがあると思います。そういう意味では、それぞれの地域の先生方がやっぱり地元密着の最も効率的なインフラを是非考えていただければというふうに思っております。
  50. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 最後に、深尾参考人にお伺いいたします。  需給ギャップが七%、約七%、三十五兆円弱と。非常に大きな需給ギャップが生じているんだと思いますね。それに対して、先生のお示しになった強力な対策というのは、これは一種の金融政策に限定をして言っておられるような気がするんですが、今の吉野参考人のお話にもありましたように、例えば公共投資であってもこれは非常に民間投資を誘発するとか、それと、一般的に言っても日本社会資本がもう十分整備し尽くされたというふうには私どもは思っていないわけでありまして、一般的にも公共投資による社会的インフラ整備というのはまだまだ必要な段階にあるという私は認識を持っておりますが。  この三十五兆円にも上る需給ギャップが、果たしてこのインフレターゲット政策、それからマイナス金利の実現による金融資産の中の投資先のシフトといいますか、そういうことで埋め切れるギャップなのか。私はやはり、何も三十五兆円の公共投資をしろという意味じゃありませんけれども、正に誘発効果を伴う公共投資、それで刺激策を、政府景気を良くするぞという決意表明とともに、それを裏付ける財政の出動も含めた対応がなければ三十五兆円のギャップは埋め切れないんじゃないか、そういうふうに思いますけれども、先生の御意見をお伺いしたいと思います。
  51. 深尾光洋

    参考人深尾光洋君) 私が申し上げておりますのは、株式の買いオペあるいはインフレターゲットというのは金融政策でございます。これに対して、政府が保証する金融資産への課税というのはむしろ税制でございまして、これは財務省がやる気になればできるというタイプのものでございます。ただ、当然国民の批判は非常に強いものになると私は考えておりますが、効果としては消費税の引上げに実は近いわけです。  消費税を引き上げますと、もちろん税収が上がってまいりますが、同時に、値段が上がりますのでみんなそれを買うということで先倒し効果が出ます。これを毎年例えば二%ずつ消費税を上げていけば、二%のデフレでも消費者物価は下がりませんので、デフレによる、値段が下がったところで買うという買い控えはなくなると。  ただ、消費税をどんどん上げる、フェルドシュタインが今年の一月、たしか三日の日経新聞の「経済教室」に書いていますが、私は相当無理があるなという感じがしております。といいますのは、消費税の引上げといいますのは、消費税の大量引上げとそれによる社会保険料なんかの減税というのを組み合わせるということになるかと思いますが、これをやりますと、所得のない人も消費はしますので、非常に逆進的なといいますか、低所得者に重い税金になってしまう。そういう意味では、所得税に比べて消費税の方はどうしても逆進的になると。これに対して資産課税の方は、宵越しのお金を持っていない人には一切掛かりませんので、要は所得のない人には余り掛からないと。  これに対して、リスクを取らないで預金を持っていると。郵貯、預金などを分散して持っているという人に残高で掛かってくる。また、この税率というのは、インフレのときには現金というのはインフレによって少しずつ目減りするわけです。二%ぐらいのインフレであれば二%ずつ目減りするわけで、これによって現金をみんな持とうというインセンティブを弱めて、株式不動産やという投資をさせてきたわけです。これがインフレからデフレになってしまったことによって、現金を持っているだけで二%ずつぐらい価値が上がっていってしまう。不動産に比べれば年率七%ぐらい価値が上がっていくと、こういう状況になっております。  こうしますと、現金を握っておけば実質的な価値が上昇して、しかもそれには非課税であると。税金も掛からない。こういう非常に有利な現金という投資対象ができてしまったために、株や不動産、あるいは耐久消費財というものを取らなくなってしまったというふうに思っております。  こうなりますと、どうやって動かすかということですが、一つはそれに対する課税。ここで、公共投資がどうかということですが、私は、今むしろ本当に拡大するんであれば、可住面積倍増計画か何かを立てて個人の住宅を大きく広くすると。これに対して強いインセンティブを与えるということは一つのやり方かなというふうに思っております。その意味での公共投資になるかどうか。私は、これはむしろ民間投資の促進策で、それに対する促進のインセンティブ効果ということで、ある程度のインフラ整備ということで公共投資をやるというのはあり得ると思いますが、こういったところ、それを達成するためにどうするか。  容積率とかいろいろ言われておりますが、一つは採光制限、採光規制は非常に非合理ですので、これも今見直しが行われていると思いますが、こういったものを変えるとか、あるいは私道の問題、狭いところへ行きますと、どうしても私道の権利関係で建て替えができない。こういったものの地道なところで整備をしながら、可住面積を拡大するために大きな不動産を造っておく。みんなで長く使えるような良質の住宅ストックを造っていくといった形での誘導は私はあり得るかなというふうに思っております。
  52. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 ありがとうございました。
  53. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 日本共産党の池田幹幸です。  どうもお三方、ありがとうございます。  まず、RCC、鬼追参考人に伺いたいと思うんですが、昨年来、RCCは企業再生、これを第三の柱として位置付けて、再生マインドということで取り組んでこられたわけなんですが、今度新しい制度が出ました。  産業再生政策ということで位置付けられているわけですけれども、この新たな政策の下では、私は、RCCは企業再生、とりわけ中小企業企業再生ということについては事実上放棄されることになってしまうんじゃないかなという危惧を持っています。  そういった点でちょっと伺いたいんですけれども、金融再生プログラムではRCCの「企業再生部門の強化」ということが明記されています。しかし、新たに産業再生機構というものが預金保険機構の下にRCCと横並びで設置されると、こうなるわけですね。産業再生機構そのものは、金融機関から、要管理先のうち産業再生委員会が生き返らせると、再生させると、再生可能だと判断した企業、その企業向け債権だけ、それを買い取るということになっていますね。さらに、この産業再生機構というのは融資やそれから債務保証ができると。先ほど深尾参考人がおっしゃった新たな政府金融機関が生まれるようなもので、そういうものができ上がりました。そういう手段を用いて企業再生に取り組むということになっています。  他方、RCCは、RCCが買い取る債権は、産業再生委員会再生不能と判断した企業のものとなるわけですね。おまけに、RCCは融資や債務保証、こういうのもやらない。そういうことが法律上できないことになっているわけですね。結局、企業再生部門は、RCCの企業再生部門ですが、これ有名無実化するということになるんじゃないかと。  先ほど、何かすみ分けというようなことを言っていますけれども、実体経済はそんなきれいなすみ分けなんかできるものなのかどうか、そのことを含めてちょっと御意見を聞かせてください。
  54. 鬼追明夫

    参考人鬼追明夫君) 議員御承知のとおり、不良債権にも幾つかのものがございまして、要管理先債権が、たしか私の記憶では十一兆台ということでございます。さらに、破綻懸念先以下もほぼ同額あるのではないかと。そして、破綻先というのは三兆ぐらいありましたでしょうか。合計二十六兆、大手行に限って申しますと。そういう数字になっております。  それで、先ほど来申し上げておりますように、今私どもが入手し得る限りの政府の構想では、要管理先債権について、産業再生機構に検討してもらうと。そして、そこから再生が不可能だと判断されたものは私どもの方の言うならば役割ということになるんですが、そうでないものは産業再生機構がおやりになる。しかし、これはメーン行と協力しておやりになりますから、準メーン行からオフバラするのに産業再生機構さんが言うならば活躍をされるというふうに思っております。  さらに、融資機能も付けられるということで、それはそれで必要でありましょうが、私どもはそれに対して、一応銀行免許はいただいておりますけれども、事実上融資機能はございません。ただ、私どもの方はそういうハンディキャップを克服するのに現在どうしておるかといいますと、私どもは、私どもが携わる再生ビジネスというのは正にネットワークビジネスだと思っております。したがいまして、私どもがコーディネートして、あるいはDIPファイナンスについていろんなファンドに言うならばつなぐとか、あるいは、現在、政策投資銀行さん、あるいは商工中金さん、あるいは中小企業金融公庫さん等々と、いろいろこういった破綻懸念先以下の再生ビジネスについてどう絡んでいただくのかということについて協議を重ねております。  何分にも、スタートいたしましてまだ、一年少々たっておりますが、なかなか緒に就くのはそんなに早くはできませんで、やっとそういうことについて協議が今重ねられることが、そういう状況になってまいりました。  したがって、私どもの再生ビジネスは今申し上げましたようにネットワークビジネスでありまして、私どもは、破綻懸念先以下の非常に再生条件には厳しい条件がそこにあるようでありますが、そういうものについて再生ビジネスを、いろんな業種の御協力を得ながら、何とか言うならば打開をしていこうかというようなビジネスになっていこうかと思いますので、そこのところは今後の産業再生機構の、具体的にどういうような形になりますかによりますけれども、きちんとそういったすみ分けといいましょうか、役割分担がきちんとされれば私どもの方はそれぞれに特徴を出してやっていくことができるのではあるまいかと、このように思っているわけでございます。  つまり、要管理債権といいますのも、あるいは破綻懸念先以下の債権といいますのも相当額あるわけでございますので、そういったものがすべて私どもの方に来るわけではございませんが、そのうちの一部ということになりましても相当なやっぱり再生案件がそこに見いだすことができるのではないかと、このように考えております。
  55. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 実態がどう動くかということをもう少し見ないといけないなという気がしているんですがね。  更にちょっと伺いたいんですが、再生させるということになるわけですけれども、この作業というのは大変な作業なんですよね。今も二千数百名で、のうち百数十名ですか、再生部門でですね、ということでやっておられて、まだまだ大変だろうなと思うんですが。そこで伺いたいんですけれども、再生の期間ですね、これが三年から五年で回収を終えるということで今なっております。そういうことでやってきたわけですけれども、実際に取り組んで、これ果たして十分な期間と言えるのかと。先ほど浜田委員の方からの質問にもあった問題だと思うんですけれども、その点で私、疑問に思っています。  また、今度の金融再生プログラムではこうなっているんですね。「回収・売却を加速する」となっているんです。ということは、今の現状から加速するということになると思うんですけれども、更にこう言っているんですね。「購入して短期間で回収できない案件については、原則として、売却する方向で早急に検討する。」ということになっています。これは現行の三年から五年の回収期間を短縮するというわけですから、そうなりますと、再生機能をやっぱりこれはもう大幅に弱めるということにならざるを得なくなるんじゃないかなというふうに思うんですが、その点どうですか。
  56. 鬼追明夫

    参考人鬼追明夫君) その点、今回の再生プログラムもやや文意定かならざるところがございまして、私ども、解釈にちょっと苦しむという部分もあることは率直に認めざるを得ないと思います。  申し上げたいのは、私どもが今課せられておる言うならば任務といいますのは、再生に注力しなさい、迅速にやりなさい、それから流動化市場の形成に寄与しなさい、それから国民負担の最小化を目指しなさい、具体的に言いますと二次ロスあるいは二次負担というものはこれは許しませんよと、こういう、主として四つのこういった任務を私どもは今背負っていると思います。そのそれぞれが必ずしも両立し難い部分もあることは事実でございます。したがいまして、私どもは、迅速なら迅速化だけに走る、あるいはまた再生なら再生だけに、何が何でも再生だと、債務者の実態を無視して再生だというわけにもまいらないわけでありまして、その辺は、先ほども申し上げましたけれども、一つ一つ案件をもうそれこそ矯めつ透かしつ見ながら、担当者あるいはその上司等々がいろいろ協議をしながら、何が、この案件について我々に与えられた任務を果たしていくのに何が最良の選択かということを考えながらやっているわけでございます。  そこで、先ほども申し上げましたけれども、金融機能再生法の改正の際に三年という期限が付与されましたけれども、しかしながら、これは努力目標だよと。債務者の状況とか経済の状態とか、そういういろいろなものによるのでそれは一概には言えないけれども、まあまあ三年ということをひとつ頭に置いてやりなさいよと、こういうような趣旨に改正をされたわけでございますので、私どもはそういうかなり緩やかなものとして受け止めております。  したがいまして、金融再生プログラムを今後具体化をしていくにつきまして、具体的に私どもにどのような御要請があるのか。先ほど申し上げましたように四つの、必ずしも全部同じ方向に向いていない、ベクトルが同一ではないようなそういう使命があるわけですから、それを、四つを矛盾なく、できる限りその矛盾を少なくするような解決策を今私どもは模索しておりますが、それについては私どももいろいろ意見を申し上げたいと、このように思っております。
  57. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 結局、三年から五年ということで縛られてやってきましたね。それを加速するということになると、当然助かるものも助からなくなるということになるだろうと思うので、今の鬼追参考人の判断では、そこにある程度弾力的にやっていくということのように聞こえたんですが、それはそれでいいだろうと思うんですね。  ともかく、今のやり方でも中小企業はばたばたつぶれているわけですね。ですから、かつてはRCC送りなんという言葉もあったわけですけれども、余りいい言葉じゃないですよね。しかし、やっぱりそういうふうなこと、RCCにやられるともう駄目だというような感覚が依然として強いわけですから、そうならないような形で、本当にこのRCCから再生機能を分離してなくしてしまうということでないんであれば、本当にここに言っているように再生機能を強めるというんであれば、本当にそういう中小企業自身を再生させていくという方向に弾力的にやってもらいたいなというふうに思います。  もう一点だけちょっと伺っておきたいんですが、これは六月か七月の当委員会で私、柳澤当時の金融担当大臣と話したんですが、信金、信組の破綻で多くの非常に優秀な人材が金融世界から切り離されたという状況になっています。このRCCの再生部門でこういった方々を大いに活用すべきじゃないかということをお話しして、柳澤大臣もそういうことでRCCの方にお願いしたいという答弁があったんですが、これお聞き及びと思いますけれども、RCCとしても中小企業再生に携わるという人材としてはもう最適だと思うんですね、こういった方々。是非そういった方々を活用する方策というのを積極的に取れないかと。  今でも雇っておられるということは知っていますけれども、しかし、一金融機関から一人か二人というふうな程度にとどまっていますし、それから回収業務中心になっています。私の伺いたいのは中小企業再生です。大体、大銀行出身の人たちは、中小企業の方々の経営者の資質を見て金を貸すとか、そんなことできないんです。そういうノウハウを持っているのは正に信用金庫、信用組合のこういった方々なので、そういった方々を活用するということを是非考えていただきたいと思うんですが、いかがですか。
  58. 鬼追明夫

    参考人鬼追明夫君) 私どもはいろんなところから人材を登用していかなきゃいけないと思っております。  ただ、出身の金融機関によってそれぞれ、例えば中小企業はできないとかということはないと思います。それぞれのやはり資質があり、それなりの努力を重ねられれば、私どもの再生ビジネスに十分力を皆さんともに発揮していただけるのではないだろうかと、このように思っております。今、議員のおっしゃいますことは、特に私どもも頭に置きまして考えてまいりたいと思っておりますが。
  59. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 吉野参考人深尾参考人に伺いたいんですが、大方伺いたいなと思っていることはもう既に大体聞かれて、マクロの話は大体終わったなという感じがしますので、少ししたいと思うんですけれども、それでもやはりなお伺っておきたいのは、お二人とも要するに、今の政府のやり方で、不良債権の早期最終処理ということでどんどこどんどこそればかりやっていくという今度の金融再生プログラム方向でやったんでは、これはもううまくいかぬと。  深尾参考人は、方向としては正しいけれども、もう今度の再生プログラムでは駄目だという形で言われたんだろうなと思うんですけれども、私も全くそうだと思うんです。今度の、十年来あるいはこの小泉内閣の一年だけ見ても、不良債権処理、やればやるほど不良債権増えたということになってまして、小泉内閣で約十七兆円の残高が増えちゃったんです。こういう、何でこんなに増えたんだということで、この間からの国会論議を見ますと、要するに特別検査、それでもって厳しい査定をして、その結果不良債権が増加したんだというような答弁だったんですけれども、実際は、景気が悪いと、景気が悪い中での中小企業の倒産がばたばた増える中で、結局不良債権が増えていくということになったんだと思うんです。  だから、政府不良債権処理策が新規の不良債権処理策をむしろ生んできたんだと、むしろそこに問題はあるんだと。政府の対策でやった一時的なものでは決してないんだというふうに私は思うんですけれども、改めてそこの点について両参考人の御意見を伺いたいと思うんです。
  60. 吉野直行

    参考人吉野直行君) 私は、やはり日本経済のマクロが良くない部分不良債権につながっているのは当然だと思います。ですから、今後、やはり不良債権対策と同時に、いかに金融業収益を上げるか、そのもうけがない限りは幾ら不良債権対策をしても限度があると思います。  その意味では、それぞれの、先ほど信用金庫、信用組合のお話がございましたが、これまで破綻した金融機関、四つぐらい原因があると思います。一つは、バブル期のああいう融資です。それから二番目は、最近起こっているのは、それぞれの地域がやはり景気が悪いと。ですから、例えばそこの地域の温泉に貸し、ホテルに貸し、お料理屋さんに貸しと、そうすると、そこ全体の景気が悪いものですからそれが破綻してしまうと。それから三番目は、貸出しがうまくいかないものですから有価証券投資に走りまして、そこが余り慣れていなくて失敗したと。それから最後は、やはり経営者の方の資質なり能力という、こういう四つぐらいが破綻の原因であります。  そういう意味では、信用組合や信用金庫に関しましては、少し幅の広い地域で、広域でビジネスをやっていくように少し拡大するというような方策も一つあるのではないかと思います。というのは、ある地域だけの限定といいますと、そこの経済が悪い場合にはどうしても不良債権が増えるというようなことになると思います。それから、大手行に関しましては、やはり海外でのビジネスのも含めた収益の改善ということが同時に必要だというふうに思います。  以上です。
  61. 深尾光洋

    参考人深尾光洋君) 私が金融再生プログラムは正しい方向だと申し上げたのは、金融システムに対する対策部分だけを取ってみればそれは正しい方向にあると、総合デフレ策としては全然駄目だと、そういうことであります。ですから、今金融再生をやるとなれば、結局、資産査定厳しくして資本の内容をしっかりチェックした上で自己資本を充実する、これと同時に、収益を上げるように努力させる、これしかないわけでして、方向としては正しい。ただこれは、これをやってもやってもデフレを放置したままではどうしようもないと。これが最大の問題だというふうに思っております。  また、中小企業につきましても、私は、現在よくバブルの残りが残っているんだという話がありますが、もちろんそれは一部あると思いますけれども、やはり新規の不良債権発生が圧倒的に大きいと思います。  私も、両親が岐阜に住んでおりますので、岐阜市の市街地の話をよく聞くんですけれども、四つあった百貨店が一つになる、三つは閉めたままになっている。また賃貸料も、九〇年代の初めに比べると三分の一ぐらいまで下がっている。三分の一まで下がると、さすがに新たに新店舗は参加してきますが、ビルを建てて賃貸料で回収していたところは当然返せなくなると、こういったことになるわけでして、地域そのものが相当傷んできていて、これに伴って、結局、岐阜のど真ん中の柳ケ瀬本通りといったところも二割ぐらいの店が閉まったままになっている。こういう状況ですと、やはり当然その鏡として金融機関のバランスシートは悪化してまいります。  そうしますと、不良債権処理という場合に、あるいは金融機関の整理といった場合に、例えば十ある金融機関一つ、二つが駄目だと。これは経営が悪いから処理すると。これはそのとおりですが、十ある金融機関の八つ、九つというのがもうやっていけない状態になっているというのは、むしろ経済の鏡といいますか、経済の悪化の鏡として金融が駄目になっているということであって、その鏡を壊してみたところで実体経済は良くならないという状況だというふうに考えております。
  62. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 先ほどの浜田委員の質問で理解したんですが、私も、最初伺ったときには、深尾委員のはもう金融政策一本やりかなというふうに伺ったんですが、そうじゃないということ、それはある程度理解しました。  ところで、不況下でデフレが進行しているというところが今問題なんですよね。景気対策、このことについて両先生も触れられたわけですが、吉野参考人公共投資の問題と、それから五番目の中小企業対策、こういった問題を総合して考えると、中小企業対策の中でも地域金融機関による借り手発掘というようなことが盛んに言われているわけですね。ところが、借り手発掘といっても、今の現状を見ますと、貸し渋り、貸しはがしがすごい。深尾参考人も、一%金利を上げるといったって、中小企業じゃそんなもの到底不可能だということですから、これ結局、貸しはがしにつながっていく現状ですよね。  そういった実態から考えたら、一体何をやれば公共投資中小企業対策、これは金融部門だけをやっておったんでは立ち直っていかないだろうと思うんですよ。むしろ産業政策としての中小企業への支援と、それから財政面での中小企業に対する直接的な支援、そういった形が今大事なんじゃないかと。  特に、九九%ぐらいが中小企業なんですから、そういったところの立ち上がりがなかったら、とてもじゃないけれども景気は良くなっていかないし、不良債権の新たな発生を防ぐことはできないんじゃないかと思うんですけれども、お二人の御意見を伺いたいと思います。
  63. 吉野直行

    参考人吉野直行君) それでは、私のレジュメの最後のところの、三枚目の(5)のところの中小企業に関してでございますが、一つは、政府のやれることは、やはり信用保証のようなやり方で民間金融機関中小企業に対する融資を促進すると。ただ、それが特別信用保証のように一〇〇%いたしますと、民間金融機関、悪いところは全部信用保証協会に持ってくると、こういうことになりますので、諸外国のやられていますように、部分信用保証制度、これは九〇%とか八五%保証するわけですが、こういう形での促進策というのは一つあると思います。  それからもう一つは、もうちょっと大きな新しいベンチャーなどに関しましてはファンドを作ると。そういう形でファンドの一部は、メザニン部分のようなところは政府があるいは一般会計からの形で支援すると、そういう形もあると思います。  それから三番目は、いろいろな貸出し債権の証券化が今、地方公共団体などから少しずつ進んでおります。ですから、債権市場をいろいろ整備することによって、国債の市場、それからいろいろな不良債権の証券化市場、それから中小企業の貸出し債権の証券化市場、こういうものをやはり日本で育成していくということが是非必要だと思います。
  64. 深尾光洋

    参考人深尾光洋君) 私は、いわゆる中小企業対策というのは、ある意味では症状の緩和にすぎないというふうに考えております。中小企業を本当に活性化するためには売上げを増やしてやる、そのために景気を良くするというのが最大の中小企業対策でありまして、これを本気でやる必要があると。  この場合に、普通であれば金利を引き下げる、あるいは財政を拡大するといったことができたわけですけれども、現在はもう金利がゼロになってしまい、また財政の方も結局三十兆を超すような赤字になっていると。こうなりますと、財政の方も伸び切った状態であって、政府の信用そのものが私は問われる状況になりつつあるというふうに見ております。  こうなりますと、これ以上財政を使うということにも無理がある。ある意味では、金融財政という飛車角落ちで経済政策を打たなきゃいけないという非常に厳しい状況にあるというふうに思います。そうしますと、これは従来の発想をそのまま続けるのではなくて、新たなことをやってみるということが必要かと思います。これを、従来型のことを漫然と続けているためにどんどん悪化しているのだと。  この場合、もちろんいろんな批判、あるいは副作用等があるかと思いますが、フェルドシュタインが言うような、消費税をどんどん引き上げて社会保険料を引き下げるというのも一つのやり方でありますし、マイナス金利を作ってみるというのも一つのやり方でありますし、あるいは円を切り下げてみる、ただし現状のようにアメリカ景気が悪化しているときは無理ですが、景気がいいタイミングを計って切り下げてみるというのも、これも一つのやり方であります。こういったことを全部やらないでおいて従来のことを繰り返しているので、いつまでたってもうまくいかないのだというふうに考えております。
  65. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 終わります。
  66. 平野達男

    ○平野達男君 国改連絡会(自由党)の平野達男です。  今日は、参考人の皆様方、どうもありがとうございます。  まず先に、吉野参考人深尾参考人にお伺いします。  金融再生プログラム、これから工程表を作ってやるんだというふうに言われていますが、もう実質は、もうこれでこの金融再生プログラムは実質動いているんじゃないかなというふうに私は思っています。  その理由はなぜかというと、金融庁が銀行自己資本は脆弱だということをはっきり宣言してしまいました。そして、税効果会計の見直しについては、これはやるかやらないかはまだはっきりしていませんが、やるということを検討するということでこれも言っています。そうしますと、銀行はもうそれをやるだろうという前提で既に動き出しているというふうに考えなくちゃならないと思います。つまり、リスクアセットの縮小、貸し渋りになりますね、それから貸しはがし、これはもう既に始まっているんじゃないかなと。それを見て企業は、おれのところもいずれ貸しはがしが来るんじゃないかなということで、自分の業務純益の中で仕事を回転させていくということで、新たな投資には踏み込まないという意味において、今回の金融再生プログラムは既に相当のデフレ圧力が働いているんじゃないかなというのが一つ。  それからさらに、これがもし実行に移されますと、いわゆる産業再生機構ができまして、今まで手を加えていなかった要管理債権に、これは先ほどの鬼追参考人から御紹介ございましたが、約十一兆あるわけですが、これに手を加えるということになりますと、すべてこれ企業再生するわけじゃなくて振り分けがされますから、今要管理先であるやつが実質の破綻懸念先に、若しくは破綻先に追い込まれる可能性もあって、これがまたとんでもないデフレ圧力になってくるということで、これはもう今回の金融再生プログラム、これをもうやる、あるいはやる以前から相当のデフレ圧力が、今まで以上の強力なデフレ圧力が来るなということをやっぱり覚悟しなくちゃならないし、今はそういう認識を持たなくちゃならぬと思います。  そこで、そのデフレをどうやって克服するかということについて、先ほど来、深尾参考人吉野参考人からいろいろお話がございましたけれども、これを私は、やっぱりそういった意味では短期的な即効性のある措置ということで、強力なデフレ圧力に耐えるという措置と、それと中長期的にデフレを克服するという、こういう二段構えでやる必要があるんじゃないかなというような感じがするんですが、まずそういった現状認識、それから短期的な対策、中長期的な対策と分ける必要性、もしそれがそうだということであれば、短期的な即効性のある対策というのは何があるんだろうかということについて両参考人に、吉野参考人の方からちょっとお聞かせ願いたいと思いますが。
  67. 吉野直行

    参考人吉野直行君) 今おっしゃいましたように、やはり中長期の政策と、それから短期の政策というのは分けなくちゃいけないと思います。日本の今までのこの十年間の失敗は、この中長期を今までずっとしてこなかった、短期のことばかりをやってきたということではないかと思います。その意味では、例えば社会資本なり公共投資を支出する場合にでも、それは短期のことなんですが、中長期を考えていかに民間設備投資をその地域に呼び込むか、これをやっぱりしっかり考えた短期の政策でないといけないというふうに思います。それがない限りは、この十年間と全く同じことがまた続いてしまうというふうに思います。  それからもう一つは、やはり短期的にはマネーサプライを増やすと。つまり、ハイパワードマネーですが、こちらを増やしていくということはあり得ると思います。ただ、税制とか、それから財政全体に関しては、これ以上財政赤字を増やすことは非常に危機な状況ですので、その範囲は限られていると思います。  それから、中長期的に関しましては、やはり金融業、それからサービス業を強くしていく、これが日本製造業がだんだん海外へ出ていく中では是非必要なことだと思います。それから、やはり製造業に関しましては、人材の育成、それから技術の開発という少し中長期的なことも大変必要なことだと思います。  この機会に少し中長期的なことでの人材のお話をさせていただきたいと思うんですけれども。  私なんか、十年、二十年ぐらいアジアをずっと回っておりました。そのときには日本は絶対アジアには負けないと、こういうふうに思ったことが二つございます。一つは、アジアは非常に暑いわけです。ですから、気候というのは日本から輸出できませんから、ああいう国には負けないだろうと。特に、どんなに働こうと思っても三時間。まあ十時間、二十時間働けるわけじゃありません。それから二番目は、アジアの国々にはやはりお金が余りありませんでしたので、教科書なんかは日本ほどいろんな教科書がありませんでした。そのために、日本の学生が少しぐらいぼやぼやしていても絶対負けないだろうと、こういうふうに思ったわけです。  ところが、最近見ていますと、冷房を全部使っちゃっているわけですね。そうすると、もう気候が輸出できちゃったわけです。特にマハティール首相なんかはがんがん冷房を使えと。これも、日本企業がマレーシアで初めて冷房を使って工場を造ったんです。そうしたら、その企業が非常に生産性を上げたと。これでみんながマレーシアでは冷房を使うことになりまして、彼らは日本人に追い付け追い越せというところですから、あり得ます。それから教科書に関しましても、最近インターネットというのがありますので、本を買わなくてもインターネットでいろんな文献が取れてしまうわけです。  ですから私は、中長期的には、やはり日本は人しかいないわけですから、いかに人材をうまく向上化させるかということは、中長期的には物すごく必要なことだと思います。ですから、おっしゃるように短期、中長期があると思いますが、私は、むしろ中長期を目指さないと、今のやり方ではなかなかいかないというふうに思います。
  68. 深尾光洋

    参考人深尾光洋君) まず、金融再生プログラムですけれども、じわじわ小出しに出しているとどんどん貸しはがしが強まってデフレ圧力になるというのは同感です。やるためにはやはり大掛かりにやる必要があって、今の自己資本は物すごく不足している、例えば必要額の三分の一しかないということをまずはっきり言った上で直ちに増資命令を出すと。これぐらいであると、貸出しの三分の二切るというのは不可能ですから、これは結局増資をせざるを得ない。ただ、今の赤字が続いている下では増資は絶対できませんので、増資命令を出してとにかく駆けずり回れと言えば政府に返ってきますから、政府が入れると。これで実質国有化ができます。  そうした上で経営者を、私は執行役員以上全部一回切った方がいいと思っておりますが、執行役員以上は全部退任を求めて、生きのいい部長クラス、四十代、五十代の生きのいい部長クラスを役員に上げると。ただし、同じ銀行で上げるのではなくてほかの銀行に移すと。ですから、UFJをみずほへ持っていって、みずほを三井住友に入れてということを、ぐるっと入れ替えると。彼らの年収はせいぜい千五百万か二千万ぐらいにしておいて、ただし、失敗したら退職金なしで直ちに二年後には首、成功すれば五億円上げますと言えば、死に物狂いに働くと思います。  これをやった上で、デフレを同時に止めるという強力な政策が必要です。デフレを止める短期的な方策としては、私は、月五兆円オーダーで株式及びREITを日本銀行が買い入れると。これは、インフレターゲットを設定して、それを達成するまで大量に株式とREITを買い入れるということです。これは株価をターゲットにするのではありません。株は上がると思いますけれども、株価をターゲットにするものではなくて、一般物価が上がるまで買い入れるということをやります。これをやりますと強力なデフレ対策になります。株価と資産価格は一時的に相当リバウンドすると思います。問題は、これをやって一般物価が本当に下げ止まればいいんですけれども、株価、不動産価格はリバウンドしても、賃金、物価下落を続ける可能性は否定できません。この可能性はあり得ます。こうなりますと、デフレの下ではやはり財政が破綻してまいります。  私は、現在の負債GDP比率は、大体グロスで一四〇%のGDP比率になっておりまして、これが年率一〇%ポイントぐらいずつ上昇しております。最後図表にかいておりますが、一〇%ポイントずつぐらい上昇しております。このまま行きますと、昨年度の名目成長率マイナス二・八でありまして、今年度の名目成長率もマイナス二ぐらいに行く可能性は私は十分あると。実質成長率でプラスになっても名目成長率でマイナスになる可能性は十分にある。これが続きますと財政はもたないわけでして、いかにプライマリーバランスを横ばいにしたとしても、財政赤字がどんどん積み上がって日本の国債の格下げは続いてまいります。  こうなってきますと、結局、銀行部門赤字を全部政府がかぶって、更に財投機関の赤字政府がかぶって赤字を出し続けるということをやりますと、やはりどこかで信用はなくなると思います。そうしますと、私は、円から外貨へのシフト、あるいは円から金へのシフトといった形での資本逃避が起こる可能性はあり得ると思っております。  デフレを続けて、そのうちに資本逃避が起これば確かにデフレから出られるわけですけれども、それはやはり財政破綻への道だと思っております。従来、デフレから脱出できた国というのは、過去の歴史を見ますと大体、戦争を始めるか、これは日本アメリカもですが、戦争を始めるか、あるいは財政が破綻して資本逃避になってインフレになるか、この二つでしかデフレから出られていないわけです。デフレというのはそれくらい厳しいものであって、その認識がないのでどんどん悪い方向に進んでいると。  これは相当先でしか起きないかもしれません。これは、国民が国に対する信用を維持する限りは、国内日本の場合は赤字を賄えておりますので、国債がどんどん積み上がってみんなが安心し切って国債をバックにした預金を持つという形で回りますけれども、これが、信用がどこかでなくなったときにはやはり切れるときがあって、そのときはやはり相当のインフレになる可能性があるというふうに思っております。
  69. 平野達男

    ○平野達男君 大分広範なお話、ありがとうございました。  いずれにせよ、今回の対策を取って、やっぱり私は短期的、中長期的なものはもちろん大事ですけれども、今の日本経済の中で、体力の中で、こういった再生プログラムをすぐ実行できる体力があるかどうかというのは非常に気になっていまして、先ほど私が言いましたように、相当のデフレ圧力が来るという前提で、これで支えますよといった明確な短期的な措置を何か併せてきちっと出す必要があるんじゃないかなというような認識を持っておりましたので、その観点から御質問させていただきました。  鬼追参考人にお伺いします。  今度、産業再生機構ができるようですけれども、一方で、RCCは破綻懸念先以下の債権を買い取って、その中から可能なものは八十七件ということだったんですが、今、企業再生で努力しておられるということだったと思います。破綻懸念先以下の債権ですから、その中から企業再生をするというのは、破綻懸念先債権でも、かつ金融機関が放したものですから、相当難しい作業だろうと思います。だから相当の、ですからノウハウを結集してやられているんだろうと思います。  他方、産業再生機構は要管理先ということで、比較的これは企業再生やりやすいんじゃないかなという。それを、わざわざ別機構を作って、どうもこれ聞くと、非メーンのものを買ってメーン銀行の意向を伺いながら何かやるような、ちょっと中途半端な感じがしないでもないんですが、それを別組織にするというよりは、私はむしろ、機能分化じゃなくて、機能分化をすることは間違っているんじゃないかと。むしろRCCと産業再生機構は一体化して、その中でRCCの今までの、まだ一年ですけれども、ノウハウ、それから産業機構が担うところの要管理先、これをセットでやることの方が私は非常に効率的ではないかなというふうな印象を持っています。  もちろん鬼追参考人は、これは国のやることですからなかなか御自身の考え方をここで述べるというのは難しいかもしれませんが、今の私のコメントに対して御感想をまず冒頭ちょっと聞かせていただきたいと思うんですが。
  70. 鬼追明夫

    参考人鬼追明夫君) 今、平野議員のおっしゃいました案も一つの考え方でありまして、こういうやり方というのは何がベストであって何が駄目だという答えはなかなか求めにくいと思うんです。やってみなければ分からないというところがございまして、ある程度そういう試行錯誤の中でより良い制度というものを求めていかなければいけないんだろうと、このように思っております。  したがいまして、今、産業再生機構について平野議員がお持ちの危惧がもしもスタートをして顕在化するとするならば、それは一つの、合体してやったらどうかというのも有力な御提案だと思いますので、その節はまた、そういうような御提案をいただきましたら、私の方もそれに備えて頑張りたいと思っておりますが。
  71. 平野達男

    ○平野達男君 それで、先ほどの御説明の中で、RCCが買い取った債権は今のところすべて破綻懸念先以下の債権であるということだったんですけれども、破綻懸念先がそのうちの六・一%で、残りの部分がそれ以下の更に悪いやつだったということなんですが、これは何となく分かったようで分からないようなところがあるんですが、なぜ破綻懸念先がこんなに少ないんでしょうか。
  72. 鬼追明夫

    参考人鬼追明夫君) なお詳しく申し上げますと、あらかじめ詳しく詳しくした資料を出しますと何が何だか分からなくなるものですから、そこまでは書いてございませんが、先ほどもちょっと触れましたけれども、金融機能再生法の改正前が非常に数字としては低いんですね、破綻懸念先の占める割合が低くなっておりまして、改正後はややそれが増えてきておると。  この六・一%というのは通じて六・一%ということでございますので、今後、私どもの買取り価格は正に時価、つまり他のコンペティターとも伍して競争に耐え得るだけの価格を出し得るということになりますと、金融機関さんの方も破綻懸念先のものを、しかも、破綻懸念先でもこれまた言うならばピンからキリまであろうかと思いますけれども、かなり再生に適したものも私どもの方に売却をされるということもあり得るのかな、このように思っております。  ただし、たくさん買える、あるいは価格をいい条件を提示することができるということは、それだけ限りなく二次ロスに近づくということでもございますので、その辺は青天井ではございません。私どもの方は、これなら十分回収ができる、あるいは再生を通じて回収ができる、また費用も出すことができるといったようなことを見込みながら、ぎりぎりのところで言うならば値段を入れていかなきゃならない。そういった面でも、大変、自分で申し上げるのもこれいかがかと思いますが、難しい仕事にだんだんなってきているなと、こう思っておりますが。
  73. 平野達男

    ○平野達男君 今回の金融再生プログラムの中で、RCCが「購入して短期間で回収できない案件については、原則として、売却する方向で早急に検討する。」という一項目がありまして、先ほどの鬼追参考人のお話を聞いていますと、三年、今それを目指してやっている、しかしやっぱり非常に大変な仕事だよと。全くそのとおりだと思います。「購入して短期間で回収できない案件については、」という、これは金融庁が出したペーパーなんですが、RCC側から見ればこの三年という期間はこれ絶対必要というふうに理解していいのか、あるいはもっと、実はもう三年という、もっと短いということが正直なところなのか、ちょっとその点をお伺いしたいと思うんですが。
  74. 鬼追明夫

    参考人鬼追明夫君) これは平野議員にも御理解いただきたいんですが、債権回収、再生分含めまして回収と申し上げますが、債権回収という業務は非常に個別性の強いものでございまして、三年はおろか一年、半年で回収できてしまうのもございます、率直に申し上げまして。三年はもうとてもじゃないけれども回収できない、五年も無理だ、十年掛かりますよというのもございます。だから、通じて大体おおむね回収できるのはどれぐらいかというところで私どもは見ているわけでございます。  そこで私どもは、短期に回収できないものは処分をするということでございますが、私ども大変、これは自慢を申し上げるようですけれども、日本のサービサーとしてはかなり力の強いサービサーではないかと思っております。何もそれは無理に回収をするという意味ではなくて、いろんな総合力を駆使して回収をすると。もちろん得意な分野もございますれば不得意な分野もございますから、何もすべてにわたって最強だというふうに申し上げるつもりはございませんが、一般的、平均的に言うならば、非常に強いサービサーだと思っております。  その我々が短期で回収できないものを、我々が回収するよりも、費用等も加味してより有利に処分できるケースがあれば処分いたします。これは、数ある中には、例えばAならAという債務者の債権を集めていらっしゃる、そういうサービサーとか投資銀行さんもございます。そうしますと、RCC保有のものを、我々が見て比較的いい条件で買ってくださるというようなところがありましたら、私どもは、あくまでもそれは国民負担の最小化ということを考えておりますから、その方が有利だと思えばもちろんこれは処分をするわけですが、なければ、八方手を尽くしてもなければ、これはやっぱり私どもが合理的な方法で回収をしていく、あるいは債務者にいろいろ協力を求めて納得を得て回収をしていくという道を取らざるを得ない。  つまり、いろんな方法は、やっぱり私は、先ほどの御質問でもございましたけれども、弾力的にといいましょうか、柔軟に選択をしながら進めていかざるを得ないと、このように思っております。
  75. 平野達男

    ○平野達男君 よく分かりました。  最後に短い質問、もう一問だけ鬼追参考人にお伺いしますが、RCCの今の体制の中で処理できる債権額というのはどれぐらいなんでしょうか。
  76. 鬼追明夫

    参考人鬼追明夫君) なかなか難しい御質問でございますが、いろいろ私どもに付けられております御注文が、厳しい注文が幾つも先ほど申し上げたようにございますものですから、大変難しいと思っておりますが、無論、陣容の拡大ということも含めて考えますと、御要望のある限りはこたえていけると思っておりますよ、はい。
  77. 平野達男

    ○平野達男君 はい、分かりました。
  78. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 三人の参考人の皆さん、本当に貴重な御意見をありがとうございました。  率直に御意見をお伺いをして、もっと聞きたいなと思った点は同僚委員がもうほとんど網羅をしてしまっておりまして、なかなか難しいんですけれども、企業の生き死にということを、本来なら経済市場原理の中でそれが決定をされていって、敗退をしていくものは敗退をし、更に発展をしていくものは発展をしていくというのが従来のあるべき姿だろうというふうに思うんですけれども、ここを、今、生かすのか、これはもう駄目なのかということの判断を一気に産業再生委員会あるいは産業再生の機関でやってしまうということは、経済の、生きていくというか、普通の順調な流れというものに対して行政側がさおを差すのではないかというふうに強く思うわけでございますけれども、お三方の参考人の皆さん方は、私はそう思うんですけれども、そのことに対して、それでは、判断基準というようなのが今これからは非常に重要な局面になっているというふうに言われていますけれども、生かすか、いや、撤退をさせるかというところの判断基準ですね、具体的にこういうもので、基準でやれば、私が懸念をするような経済の自然な流れというものに余りさおを差さないで整理が付けられるというようなことがあるのかどうかというところを、お三方の皆さんにお聞かせをいただきたいというふうに思いますが。
  79. 吉野直行

    参考人吉野直行君) 私は、データを使いながら自分で分析するのが研究の主体なんでございますが、最近CRDデータというのが集められております。これは、保証機構の方に持っていかれ破綻した中小企業のデータをここ三、四年全部集めてきております。  こういうデータがきちんと整備されますと、どういう原因でその企業が破綻してきたかということがある程度計量的に処理できるようになってきております。その部分と、あと定性的な部分ですね。これは経営者なり、そこの働いている従業員の皆さん。だから、こういう新しいCRDデータのようなものが、これもコンピューターの発達によって出てきているわけですけれども、こういうものが整備されますと、ある程度これまでの経験から判断ができてくると思います。それからあとは、もう一つは、定性的な方は、これはやはりいろいろな金融機関で働いた方々がこれまでの、過去の情報から御判断すると。  そういう意味では、やっぱり定性的、定量的を見ながらやっていくということだと思いますので、現状で既にCRDデータというのが積み重なっております。これが今後も積み重なることによって、大分どちらに行くかということは定量的には分かってくるんではないかと思います。
  80. 深尾光洋

    参考人深尾光洋君) 普通、企業、まあ個別企業の破綻処理をどういうふうにするか、倒産した企業をどうするか、そのうち再生できる部分をどうするか、あるいは清算してしまうかという判断基準というのは、普通は継続価値があるか否かということで決めます。  継続価値といいますのは、要は利息とか借金の返済全部除いて、本業の営業で利益が出ているか否か。本業だけを取って、一銭も利息も払わない状態で赤字が出ている、どうリストラしても赤字が出るということは、やっていればやるほどどんどん赤字がたまってきますから、これは清算しかない。これに対して、本業で利益が出せるという状態であれば、借金をカットするなりして細々とでも営業してもらった方が少しずつでも返してくれるわけですから、回収が増える。これが基本的な考え方であって、継続価値があれば生かす、継続価値がなければ処理するということになります。  しかし、その場合に、継続価値があるか否かというのは景気状況に依存します。景気が非常に悪ければ、もうちょっと景気が良ければ売上げが上がって利益が出せるんだけれども、景気がうんと悪いどん底で計算すると、どう見ても継続価値もない。こうなりますと、どんどん破綻処理が増えてまいります。これが一番の問題でありまして、景気が悪い、つまりデフレを放置したまま不良債権処理をしますと更に景気が悪くなる、その結果として継続価値があった企業でもなくなってしまう、そうすると破綻処理がどんどん増えてしまう、こういう問題があるわけです。  ですから、やはりまず景気を良くして、その上で、資産価格もある程度現状から上げてということが必要でありまして、デフレを止めればどういうことが起きるかといいますと、現在の株価や地価は将来のデフレを織り込んで決まっております。株価であれば、将来の売上げが減っていく、利益が減っていくというのを織り込んでこれだけ低い値段になっておりますし、地価も、将来の地代、賃貸料が徐々に減っていってしまうと、それを見込んだ値段で資産価格が決まってまいります。そうすると非常に低い水準になるわけでして、いまだに値段が下がり続けるという状況になります。  これを、デフレを止めるだけで、下がるのからゼロあるいは若干のプラスになるというふうにマーケットが見ますと、それだけで何割か資産価格はリバウンドするはずです。また、売上げが将来増えるという見込みになれば、継続価値の推定、想定においても高く見ることが可能になります。そうすると、再生できる企業が一杯増えてくるわけです。  こういうふうに考えますと、判断基準を個別に見れば、つまりこれは非常に単純な話で、継続価値があるか否かということを見るわけですが、経済政策の観点からいうと、デフレを放置したまま厳しく処理をしますと、それは切り過ぎということになってしまう。ここに問題があるわけでして、デフレをまず止めた上で、その上で処理をするというふうにすれば生かせるものが、デフレを放置したまま処理をするということによって生かせるものが生かせなくなってしまう、こういう問題が出てくると考えております。
  81. 鬼追明夫

    参考人鬼追明夫君) 企業再生の判定といいましょうか、可否に関する判定についての御質問だと思いますが、今の状態ではどういう運用になるのかちょっとはっきりしない部分がございまして、産業再生機構で準メーン行以下の債権を言うならば買い集める。メーン行がいるわけですから、企業再生についてやっぱり決定的な影響力を持つのはメーン行の意向だろうと思います。メーン行は長年当該企業と付き合っているわけですね。そして支援をしてきていると、こういう状況にありますから、その企業がどう判断しているかということが最も大きな判断材料になるはずでございます。  そこで、産業再生機構の方ではそういったメーン行の意見、方針等も参考にしながら、しかしそれが例えば先送りにしかすぎないというふうに判断される場合には、これはいけませんよということでもっとはっきりした果断な処置を取らなきゃいけないというふうに判断されるでしょうし、メーン行の判断が妥当であるということであるならば、それとやっぱりタイアップして処理を進めていかれることになるでありましょうし、その辺がどのように運用されていくかが今私にはちょっと見えておりませんので何とも申し上げようがないんですが、ただ、債権者がそういった当該債務者の企業再生に関与して判断をしていくという、その大筋は守られていくんだろうと、このように思っております。
  82. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 あともう一点、私が常日ごろ考えていることなんですけれども、経済成長、今後の日本経済成長ということについてお考えをお聞かせをいただきたいんですよ。  小泉総理は、構造改革なくして経済成長なしということで、構造改革こそがこの日本経済成長を進めていくかぎであるということを説かれて今政策を作っているんですけれども、私たち今、国民の暮らし、自分でも暮らしているわけですけれども、暮らしていく中で、欲しいものがあるのかなというふうに思ったときに、今すぐに直接的に購入をしたい、買いたいというような購買意欲をそそるようなものは余り見当たらないわけなんですよね。  そういう中で更に構造改革をするということは、そうした、さっき吉野参考人もおっしゃいましたように、生産産業からサービス産業への移行というようなことはよく分かるわけなんですね。でも、そうしたサービス産業へ移行していく、例えば教育のサービスであるとか、医療のサービスであるとか、介護のサービスであるとか、保育のサービスであるとかということは、それは十分に分かります。それは政治として十分にやっていかなければならないサービス産業の育成だというふうに思うわけですけれども、そのことで経済成長、今までのような経済成長というのが本当に見込めるのだろうか、また、必要なんだろうかというふうに思うんですね。  私はむしろ、経済成長を求めていくという、このことが今の日本状況だともう限界に来ていて、そのことを言い続けることは無理なんじゃないかというふうに思っておるんですね。それは、今までの、戦後から一貫して経済成長を続けてきていて、大変な国民は預貯金を持つ、千四百兆円も持つというような国になっていて豊かな国になっているはずなんですけれども、そうした豊かさというのが実態として今は感じられない。そうすると、そこを感じられるような産業に構造改革をしていくことは必要ですけれども、そのことと経済成長というのが本当にリンクしていくのだろうか。  私は、経済成長ではなく、豊かな国民の生活の質の向上というふうに思うのですけれども、小泉さんが言っている構造改革なくして経済成長はないと、経済成長を将来的にそれじゃ本当に見込める国なのか、それを求めていかなければならないのか。私は、国民の生活の質の豊かささえ向上していくことが求められる国であってほしいと思うのですけれども、御意見をそれぞれ聞かせていただきたいと思います。
  83. 吉野直行

    参考人吉野直行君) 今の御意見、非常にいい御意見だと思います。  一つエピソードを申し上げたいんですけれども、第二次世界大戦後すぐのときに、フィリピンという国は日本に次いで成長率が高かった国です。当時は中国人の方がフィリピンに出稼ぎに行っておられました。現在はどうかといいますと、フィリピン人の方が香港などに出稼ぎに行っているわけですね。全く逆転しちゃっているわけです。じゃ、その逆転はなぜ起こったかというと、それは経済成長率がフィリピンはその後ほとんどなく、それから香港などはどんどん成長していったと、こういうことにあります。  ですから、成長率がなくていいかどうかというと、これは極端な言い方ですけれども、日本人の我々の孫ぐらいは中国に出稼ぎに行かなくちゃいけないと、そういうようになるかもしれません。それは、成長率の差で、必ずこれまではあったというふうに思います。  おっしゃいますように、豊かな国というのは、これ、そうなんですけれども、じゃ一番最初に申したイギリス、アメリカは、あれだけイギリス病とか、あるいはアメリカも非常に生産性低いとよく八〇年代言われていたんですが、それが回復したのは、イギリスはやはり金融業で稼ぐと、こういうことをやったからであります。  私は、やはり日本がある程度成長率を保ちませんと、アジアの諸外国の成長率も高いですから、成長率の確保は必要だと思いますし、その中で、製造業としてはやっぱりいい製品を作っていく、それから金融業で稼ぐ。日本の場合には資源がありませんから、外から何らかの形でサービスを提供して稼ぐしかないんではないかというふうに思います。ですから、私はある程度の成長率は必要だと思います。  それから、豊かな国に関しましてはおっしゃるとおりだと思いますが、豊かな国にするためにもやはり所得がある程度確保できていないといけないというふうに思います。  そういたしますと、こういうゼロ金利のところで日本の千四百兆円という金融資産を運用しているんでは、我々の利子配当も少ないわけです。そこはやはり金融業の国際競争力で、より高い収益のあるところで金利を稼いでくれれば、我々だって利子所得をまた得ることができますし、それが豊かな生活にも結び付くというふうに思っております。
  84. 深尾光洋

    参考人深尾光洋君) まず、小泉政権の構造改革なくして成長なしという、ある意味ではスローガンと私は思っておりまして、ロジックではなくてスローガンだと思いますが、これの問題点というのは、やはり構造改革、一番初めに小泉構造改革が出たときに私が読んだのは、三点私は頭に入っているんですが、不良債権処理財政赤字の削減、それから政府金融機関あるいは財投機構の見直しという、この三つがポイントなわけです。  私は、この三つについては、デフレを放置しては絶対できないとずっと判断しておりまして、それを、デフレを放置してきたことによる問題、これはやはり小泉首相が、デフレは良いと、インフレが悪いんだからデフレはいいというふうに私は多分今年の初めぐらいまで思っておられたというところに最大の問題があるというふうに考えております。そういう意味では、デフレを止めないと構造改革ができないし、構造改革すれば成長できるわけです。つまり、効率の悪いものから効率のいいところに人を動かしていけば経済は良くなるわけです。  そういう意味で、私は、成長というのは、質の向上も当然成長でありまして、より良質の医療なり、より良質の介護サービスなりといったものが得られるようになれば、それは全部成長であると。北朝鮮で歯は削るのが悪いから全部総入れ歯になっちゃうというのが、日本であればちゃんとしっかり歯が維持できるというのは、これは相当値段が掛かるわけですが、それと同時にそれは質の向上になるわけで、これは成長によって初めてできる、これは技術が向上してサービスの質が良くなるということだろうと思います。  やはり、今の病院なんかを見ていましても、例えば入院した場合のそれこそ食事の在り方から病室の状況から、こういったものを考えて、決して理想的だと思っている人はまずいないと思います。そういう意味で、こういったところに競争原理を入れるということは非常に重要なことであって、それによって質を向上させれば、外国から日本に医療を受けに来るという人が来て、それは日本のサービスの輸出にできると。こういった点で、日本が向上させるべきものというのは一杯あるわけです。  逆に言えば、成長しなければ、先ほど吉野さんがおっしゃったように、日本の水準というのは徐々に相対的に落ちていくわけです。止まっているということは、むしろほかから比べれば落ちていく。同じものを作っていれば、ほかの国の製品の質が良くなりますので、同じだけのものは輸入できないわけです。輸入量が減っていくということは、消費できるものも減っていく。そういう意味では、ほかの国に負けない水準でどんどん製品を向上させていかなければむしろ生活水準は落ちていくということで、マイナス成長になっていくというふうに考えるべきだと思います。
  85. 鬼追明夫

    参考人鬼追明夫君) 私どもは、債権回収ですとかあるいは企業再生ビジネスをやっております立場から申しますと、やはり経済の成長ということは是非、絶対に必要だと思いますし、またデフレ経済ですと、常に私どもは二次ロスの危機におびえなきゃいけない、つまり買い取った価格の回収ができないということでございますので、やはり、率はともかくといたしまして、あるいは今参考人のおっしゃいますような質はもちろん考えていかなきゃいけないと思いますけれども、定性的にはやはり成長なりあるいはデフレ退治ということはしていただかなきゃ私どもがもう立つ瀬がないと、こういうことでございます。
  86. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 ありがとうございます。終わります。
  87. 柳田稔

    委員長柳田稔君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。  参考人の皆様には、長時間にわたり御出席を願い、貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。(拍手)  速記を止めてください。    〔速記中止〕
  88. 柳田稔

    委員長柳田稔君) 速記を起こしてください。     ─────────────
  89. 柳田稔

    委員長柳田稔君) 次に、銀行等株式等の保有の制限等に関する法律の一部を改正する法律案地域金融円滑化に関する法律案及び特定非営利活動の促進のための法人税法等の一部を改正する法律案、以上三案を一括して議題といたします。  まず、銀行等株式等の保有の制限等に関する法律の一部を改正する法律案について、発議者衆議院議員相沢英之君から趣旨説明を聴取いたします。相沢君。
  90. 相沢英之

    衆議院議員(相沢英之君) ただいま議題となりました銀行等株式等の保有の制限等に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、提案者を代表して、その提案の理由及び内容の概要を御説明申し上げます。  昨年の臨時国会において成立しました銀行等株式等の保有の制限等に関する法律において、銀行等に対して株式保有制限が導入されました。これに伴い銀行等は一定期間に相当程度株式を処分することになりますが、株式市場に不測の混乱をもたらさないよう、同法に基づき、セーフティーネットとして銀行等保有株式取得機構が設立されました。  ただし、銀行株式保有制限に適合するため、事業法人株を放出する場合には、株式持ち合い関係を背景として、事業法人も銀行株を放出することが一般的です。この際、現行制度の下では、銀行が放出する事業法人株については銀行等保有株式取得機構という受皿があるのに対し、事業法人が放出する銀行株については受皿が存在しない状態となっております。  この法律案は、このような不均衡を解消し、株式持ち合い解消の動きにも対応できるようにするため、銀行等保有株式取得機構が事業法人の保有する銀行株も買い取れるようにするものであります。  以下、この法律案の内容につきまして御説明申し上げます。  第一に、この法律の目的に、銀行等による株式の処分が銀行等銀行等以外の会社とが相互にその発行する株式を保有する関係を解消する場合における、当該会社による当該銀行等株式の処分の円滑を図ることを加えることとしております。  第二に、銀行等保有株式取得機構は、特別株式買取りを行った場合において、当該特別株式買取りの申込みをした会員からその申込みと同時に当該会員が発行する株式の購入の請求があったときは、当該会員が発行する株式を、一定の範囲内で、当該特別株式買取りに係る株式発行する会社から買い取ることができるものとすることとしております。  以上が、銀行等株式等の保有の制限等に関する法律の一部を改正する法律案の提案の理由及び内容の概要であります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  91. 柳田稔

    委員長柳田稔君) 次に、地域金融円滑化に関する法律案について、発議者櫻井充君から趣旨説明を聴取いたします。櫻井君。
  92. 櫻井充

    櫻井充君 ただいま議題となりました地域金融円滑化に関する法律案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。  平成不況と呼ばれる今、一刻も早くこの閉塞感を打ち破り、日本経済再生することが求められています。そのためには、民間企業数において九九%を占める中小企業活性化日本経済再生のためには不可欠なものです。  ところが、現実を見てみると、貸し渋りや貸しはがしに象徴されるように、中小企業に対する資金の効果的な供給、すなわち地域金融は著しく滞っています。大企業に対する貸出しは増加している一方、中小企業に対する貸出しは五年前と比較して四十兆円以上も減少していますし、融資の見返りに預金を迫られる、理由の説明もなく融資を拒否されるなど、貸手と借り手の力関係を悪用した不公正な取引慣行によって地域金融円滑化は妨げられています。  銀行法の第一条においては、銀行の公共性にかんがみ金融の円滑を図る旨述べられていますが、これによれば、あるべき地域金融というものは、地域社会において要請されている望ましい分野、すなわち中小企業者の事業活動に円滑に資金が供給されることと言えます。しかし、政府銀行ともに、経営の健全性ばかり重視し、不公正な融資行為を行っており、あるべき姿とはほど遠いと言わざるを得ません。  この法律案は、金融現状と本来あるべき姿とのギャップを埋めるため、銀行情報公開のルールを定め、新たに設置する地域金融円滑化評価委員会が、財務の健全性だけでなく、公共性の観点から銀行を評価し、利用者が必要な銀行を選択できるようにするものです。  これにより、企業再生を支援するなど、地域金融のために貢献している銀行の努力が評価される上、それを広く利用者が応援することができますし、銀行は利用者を意識した経営を行うようになることが期待できます。その結果、中小企業の事業活動に効果的に資金が提供され、地域経済が発展し、最終的に日本経済活性化することができると考えております。  次に、この法律案の概要について申し上げます。  第一に、地域金融に関する基本理念として、一、利用者の利便の増進が図られ、地域において社会的に要請されている望ましい分野に必要な資金が十分に供給される等地域金融円滑化が図られなければならないこと、二、中小企業者の事業活動の分野に効果的に資金が供給されるよう特に配慮されなければならないこと、三、各々の金融機関の特性及び実態を簡易に知ることができる環境が整備されるよう、金融機関に関する情報の開示が図られなければならないことを定めております。  第二に、地域金融円滑化に関する国、地方公共団体及び金融機関の責務について定めております。  第三に、地域金融円滑化に対する個々の銀行等の寄与の程度に関する評価を、内閣府の外局に設置する地域金融円滑化評価委員会が、個々の銀行から提出される報告書に基づいて毎年一回行うこととし、その結果を各銀行等に通知するとともに、国会、一般に報告及び公表することとしております。  第四に、金融機関の統廃合については、地域の円滑な金融に支障を生じさせることがあることにかんがみ、主務大臣が公聴会の開催等によって利用者の意見を聴く機会を設けるものとしております。  以上がこの法律案の提案理由及びその内容の概要であります。  全国の中小企業家の人たちが中心となって当法案の早期制定を目指す八十万を超える署名を集め、現時点で四百十六の地方議会でも同様の意見書を採択したことを見れば、この法律の早期制定を多くの国民が望んでいることは明らかです。また、昨今では、自殺者が年三万人を超え、そのうち経済的理由による人の数が年々増加しており、生きるか死ぬかの瀬戸際で苦しんでいる人の命を救うことが喫緊の課題となっています。  委員各位におかれましては、どうかこれらのことについて十分に御理解を賜り、慎重に御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。  以上です。
  93. 柳田稔

    委員長柳田稔君) 次に、特定非営利活動の促進のための法人税法等の一部を改正する法律案について、発議者峰崎直樹君から趣旨説明を聴取いたします。峰崎君。
  94. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 ただいま議題となりました民主党・新緑風会、日本共産党、国会改革連絡会(自由党・無所属の会)及び社会民主党・護憲連合の四会派が共同提出した特定非営利活動の促進のための法人税法等の一部を改正する法律案につき、提出者を代表して、その趣旨を説明します。  本法律案は、特定非営利活動法人、すなわちNPO法人の活動に対する税制面からの支援を更に充実したものへと改善するため、地方税に関する支援措置を定めた特定非営利活動の促進のための地方税法の一部を改正する法律案と併せて第百五十四国会において提出したものです。  以下、本法律案の内容につき、租税特別措置法による支援などを内容とする現行制度と比較して説明します。  第一に、既存の寄附金優遇税制のNPO法人等への適用要件についてです。  現行の租税特別措置法では、国税庁長官の認定するNPO法人に対し適用することとなっており、政省令に委任されているその認定の具体的要件は、例えば、いわゆるパブリックサポートテストの適用について、補助金を除外している点、事業による自立を困難にしようとしている点、活動等が一市区町村内に限定される団体は除外される点など、いたずらに厳しくなっております。実際に、現在までに認定を受けることができたNPO法人は数法人にとどまっており、これでは、市民の自由な公益的活動をサポートするという支援税制の本質に反するものと言わざるを得ません。  そこで、本法律案では、市民の公益的活動を支援するという立法趣旨を踏まえ、十分に緩和した要件を明確に法律に規定し、あわせて、認定機関を第三者機関である特定非営利活動等促進委員会としています。これにより、恣意的な運用が防がれ、また既存のNPO法人の六ないし七割が適用可能となります。  第二に、寄附金税制の対象となる寄附金について、現行のいわゆる一万円のすそ切りを廃止するとともに、NPO法人等に対するボランティア活動やホームステイなどの労務の提供等について、通常必要と認められる費用を寄附金控除の対象とすることとしています。  第三に、NPO支援のため、新たに各種の支援税制を定めることとしています。具体的には、収益事業から非収益事業へのいわゆるみなし寄附金制度の創設、法人税についての公益法人並みの軽減税率の適用、支払を受ける利子・配当や少額の事業収益の非課税などです。  以上がこの法律案の趣旨及び主な内容です。  現行法制では、地方税について何らの支援措置も講じられていないという点でも十分ではなく、私どもは、先ほど述べたとおり、別途、法案を提出しました。  二十一世紀はNPOの時代です。より多くのNPO法人が国税及び地方税の両面で支援を受け、市民の自発的な活動によって支えられた健全な社会を実現するため、本法律案の成立が是非とも必要です。  何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願いいたします。
  95. 柳田稔

    委員長柳田稔君) 以上で三案の趣旨説明の聴取は終わりました。  三案に対する質疑は後日に譲ることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後三時五十四分散会