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2002-10-31 第155回国会 参議院 財政金融委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十四年十月三十一日(木曜日)    午前九時開会     ─────────────    委員異動  十月三十日     辞任         補欠選任      勝木 健司君     池口 修次君  十月三十一日     辞任         補欠選任      櫻井  充君     若林 秀樹君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         柳田  稔君     理 事                 入澤  肇君                 尾辻 秀久君                 林  芳正君                 峰崎 直樹君                 浜田卓二郎君     委 員                 上杉 光弘君                 佐藤 泰三君                 清水 達雄君                 中島 啓雄君                 西田 吉宏君                 溝手 顕正君                 森山  裕君                 若林 正俊君                 池口 修次君                 大塚 耕平君                 櫻井  充君                 円 より子君                 若林 秀樹君                 山本  保君                 池田 幹幸君                 大門実紀史君                 平野 達男君                 大渕 絹子君                 椎名 素夫君    国務大臣        財務大臣     塩川正十郎君        国務大臣        (金融担当大臣) 竹中 平蔵君    副大臣        内閣府副大臣   伊藤 達也君        財務大臣    小林 興起君    事務局側        常任委員会専門        員        石田 祐幸君    政府参考人        財務省理財局長  寺澤 辰麿君    参考人        日本銀行総裁   速水  優君        日本たばこ産業        株式会社代表取        締役社長    筧  正三君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○政府参考人出席要求に関する件 ○参考人出席要求に関する件 ○財政及び金融等に関する調査  (不良債権発生原因と「金融再生プログラム  」の効果に関する件)  (銀行への公的資金投入可能性とその規模に  関する件)  (新たな産業再生機構の機能とRCCとの違い  に関する件)  (日本銀行による銀行保有株式買入れ考え方  に関する件)  (JT子会社の撤退が地域経済に与える影響に  関する件)  (不良債権処理加速策具体的内容に関する  件)  (更なるデフレ対応策策定の時期に関する件)     ─────────────
  2. 柳田稔

    委員長柳田稔君) ただいまから財政金融委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨三十日、勝木健司君が委員辞任され、その補欠として池口修次君が選任されました。     ─────────────
  3. 柳田稔

    委員長柳田稔君) 政府参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  財政及び金融等に関する調査のため、本日の委員会財務省理財局長寺澤辰麿君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 柳田稔

    委員長柳田稔君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  5. 柳田稔

    委員長柳田稔君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  財政及び金融等に関する調査のため、本日の委員会参考人として日本銀行総裁速水優君及び日本たばこ産業株式会社代表取締役社長筧正三君の出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 柳田稔

    委員長柳田稔君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  7. 柳田稔

    委員長柳田稔君) 財政及び金融等に関する調査を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言をお願いいたします。
  8. 入澤肇

    入澤肇君 それでは、トップを承りまして御質問申し上げます。  トップバッターの責任上、ゆうべ発表されましたデフレ対策総合対策ですね、これにつきまして竹中大臣から、ポイントと、当初竹中大臣が予定されておった案が新聞報道等によりますとかなり修正されるというふうなことが言われております。どの点が修正されて、どの点が竹中大臣意向どおりに決定されたのか、この点について端的に御説明願いたいと思います。
  9. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) 入澤委員の御指摘は、デフレ対策ではなくて金融再生の方ということでよろしゅうございますでしょうか。  当初案というものが出ておりますけれども、そういうことを前もって決めていたわけではございません。論点を整理した上で皆様方の幅広い意見を聴きながら私なりに最終的に取りまとめたものでございます。  その中で、私自身は、やはり問題をしっかりと提起してしっかりと解決に向かわせなければいけない六つポイントがあるというふうに思っておりました。  第一は、資産査定をきっちりと、それこそ新しいDCF等々を含めてしっかりと行うということ、これが第一点でございます。  第二の点は、銀行自己査定と、それと金融庁が行っている査定の間に残念ながら乖離がある、それをしっかりと埋めていただくようなシステムを作ること。場合によっては、もし是正ができないんだったら、これは是正措置も含めて対応する、これが第二点でございます。  第三点は、会計上はしっかりとしたルールにおいて認められている繰延税金資産が、市場からはしかし厳しい評価を得ている、この問題について、やはり問題を提起してどのように解決していったらよいかということを明確にする、これが三番目でございます。  四番目は、優先株から普通株にどういう場合に転換するのか、そういったガイドラインをしっかりと作るということ、これが第五番目でございます。  第六番目が早期是正措置、第五番目が早期是正措置早期警戒措置等、やはり監督のシステムをしっかりとさせるということでございます。これが第五番目。  第六番目が、これはなかなかできないだろうとは思っていたんですが、本来やはり私たちが目指すべきは企業再生でありますから、この企業再生のための、産業再生のための全く新しい仕組みが作れないだろうかと。その五つのことが重要であると、できればもう一つ、その産業再生のことを行いたいと考えておりました。  結果から見ますと、繰延税金資産に関しては、これはまあ後からいろいろ議論が出ると思いますが、非常に複雑に制度が絡まった問題で、今回はその問題点を提起して、それで引き続き速やかに検討していくということに相なりましたが、ほかのものに関しましては、当初これはやはりやらなければいけないということが、ほとんど少なくとも織り込まれたというふうに思っております。特に産業再生については、これは大変厳しいと思ったんでありますが、お隣の塩川大臣のリーダーシップによるところが大きいわけでありますが、これも実はできることになった。その意味では、あえて言えば六つのうちの、これは手前勝手な評価でございますが、五勝一引き分けということではなかったのかなというふうに思っております。  しかし、これはそのルール方針でございますから、これをいかに実際の政策にしていくかというところがポイントでありますから、勝った負けたの問題ではございませんで、しっかりとその基本方針の中に五つの問題については位置付けることができた、そのように私なりに理解をしております。
  10. 入澤肇

    入澤肇君 勝った負けたとかそういうことじゃなくて、私は、政策転換をする場合には、その前提条件充足が必要だと思っているんです。その充足なしに不良債権処理加速化するという、別の言葉で言えばハードランディングをするという政策を打ち出すことが果たして適切であるのかどうかということについて疑念を持っているわけであります。  例えば、需要対策についてきちんとした補正予算を組む、あるいは税制の改正につき前倒しでやる、そういうふうなことをやらない。要するに、デフレ対策について十分な対策を持った上で不良債権処理加速化を図るという、車の両輪を整備することが必要不可欠じゃないかと、この時点において。そういうふうに思っていますから、その前提条件なしに今のようなことをだらだらと決められても、これはなかなか有効に機能しないんじゃないかというふうに思っているわけであります。  そこで聞きますけれども、じゃ繰り延べされたところですね、繰延税金資産については時期を明示しないということが報道されているんですけれども、それでは、どのような条件充足されたときにこれは具体的に実施に移すのか。それから、この全体の文書は、二〇〇四年までに今八・四%ぐらいある不良債権を四%前後に半減するんだということが前提になっているようでありますけれども、この文書適用期間というのは一体どのぐらいの期間を考えているんでしょうか。その二点についてお答え願いたいと思います。
  11. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) 委員指摘金融不良債権処理加速に合わせて総合的な観点からの対応が必要だというのは、これはもう全く私もそのとおりだと思います。厳しい制約条件の中で、引き続きその点はしっかりと受け止めたいというふうに思っております。  二つの御質問のうちの第一の、繰延税金資産はどのような条件が整えばと。これは、実はそんなに、今の時点条件がこうこうということを、残念ですが申し上げるのは大変難しいというふうに思っております。これは、税制の問題、それと企業会計原則の問題、それとBIS基準、それぞれ異なる目的といいますか、ウエートの置き方の違う非常に大きな三つの制度が絡み合って今日のような問題が生じているわけでございます。一部の人からいえば、それは税金を全部を返してくれたらそれでいいじゃないか、これはなくなるじゃないかという人もいるでしょうし、いやいや、これは将来に対する収益性をどう見るかという問題だという方もいらっしゃるでしょうし、それだけ非常に広がりのある根深い問題でありますから、これはじっくりと関係者の間で議論をしようというのが今回の措置でありますので、これはしっかりと議論を進めていきたいと思っております。  それと、その二〇〇四年までの間での時間的な関係でございますけれども、昨日お示ししたものの資産評価に関するもの等々は、これはまず次の決算からしっかりと資産査定はやっていただくということが当然のことであろうかというふうに思います。その中で、その資産査定等々、それとガバナンスの強化を通じて平成十六年度までに今日の問題を終結させる、一つのメルクマールとしては不良債権比率を半分ぐらいにしたいというふうに考えているわけでございます。その中で、先ほどの話に戻りますが、繰延税金資産の問題については時間的な制約は特に設けておりません。できるだけ早く、しかし深い議論が必要でございますから、しっかりと検討していきたいというふうに思っております。
  12. 入澤肇

    入澤肇君 そうすると、その繰延税金資産適用については、時期は明らかでないけれども、先ほど御説明のあった引き当て強化等の五項目については直ちにこれを実行して、要するに不良資産の更なる洗い出しをやるという気構えでおられるわけですね。
  13. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) 資産査定につきましては、これは、査定はもちろん決算のときに確定するわけでありますが、次の決算にしっかりとそれが反映されるように、その準備はもうすぐにでも始めていただかなければいけませんが、これはしっかりとやはりやっていく必要があると思っております。
  14. 入澤肇

    入澤肇君 それじゃ、そういうことをやる場合には、当然のことながら銀行経営についていろいろと対応策も講じなくちゃいけないと思うんですね。そこら辺は後でまた聞きますけれども。  およそ政策転換をする場合には、私どもも行政をやるときに、小さな政策も大きな政策も、それぞれ前提充足させてやっているんです。一つは、従前政策について点検をします。これは十分に点検をした上で、果たしてどのような方向に持っていくべきかということ、従前政策の失敗の原因を十分に調べます。それから、新しい転換後の政策につきましても、可能な限り影響あるいは効果シミュレーションします。この二つを必ずやるんです。  今回の竹中大臣がお取りになっている不良債権加速対策につきましてお聞きしたいんですけれども、まず、従前柳澤大臣がやっていたころの金融政策のどこがおかしくて、どこをどう直さなくちゃいけないというふうに認識したのか、二つ目は、このハードランディング政策を遂行することによって、雇用とかあるいは産業構造の変化とかあるいは空洞化とかあるいは銀行経営とか、そういうことについてどの程度シミュレーションをやったのか、これについて少し詳しく御説明願いたいと思います。
  15. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) 政策をより強いものにする、政策強化を行ったというふうに認識をしておりますが、これまでの政策をどのように踏まえて判断をしているのかという第一の御質問でございますが、これまでの政策は、とりわけこの過去一年、一年半というのは、世界的な経済動向に非常に強力なプレッシャーが掛かる中で日本経済も非常に大きな影響を受けた、その中で危機を起こさせないようなしっかりとした金融管理の枠組みを作っていくというのが前大臣及びこれまでの金融庁の大変重要な責務であったというふうに思っております。これはどちらかというと守りの政策でありましょうから、大変地味ではありますが、私はやはり大変重要な政策としてしっかりとやってこられたというふうに思っております。  しかし、そういう中でも、やはり世界の及び日本市場からは、日本金融システムはまだ不安な面が大きいのではないかという非常に強い懸念が寄せられた、この懸念が寄せられてきたということは事実としてやはり受け止めなければいけないのだと思っております。  これから構造改革を加速していく中で、どんどんどんどん新しい企業に出てきていただきたい、悪くなった企業はどんどんしっかりと再生をしていっていただきたい、そういう構造改革に耐える金融システムを作る必要が出てきている、そういう段階に来たというのが、これが小泉総理が私に十六年度までにこの問題を終結させるようにというふうに命じた基本的な趣旨であったというふうに思います。  その意味では、例えば、一つ事例でございますけれども、資産銀行自己査定金融庁査定の間にやはりギャップがあって、それがやっぱり埋まっていなかった、そういうものはやはり埋めていただかなければいけない、そういうところはしっかり変えていかなければいけない。そういう点を、これは一つ事例でございますけれども、やはり強く政策強化していく必要があった、これが過去の評価を踏まえた今回の政策強化意味付けだと思っております。  それから二番目の、この影響といいますかでございますが、実は、先ほどから委員ハードランディングシナリオだという御指摘がございますが、恐らくハードランディングというのは、とにかくこの一つの問題だけ片付けばいい、あとはどうなってもいいというような、そういうニュアンスで使っておられる方が多いと思うんでありますが、もちろんそんなことは全く考えていないわけでございます。これは言葉の問題だと言われるかもしれませんが、私は是非グッドランディングをしたいというふうに思っております。  そのときの影響、これは大変重要な御指摘だと思います。しかしこれ、具体的にどのぐらい不良債権査定が今後出てくるか、そのときに世界経済動向がどうなっているかということ等々、非常に不確定な要因が大きい。しかし、不確定な要因が大きい中でも経済運営にそれなりの見通しは持っていかなければいけないというふうに思っております。  部分的に、この部分についてはこういうシミュレーションというか、影響というのはある程度把握もちろんしておりますけれども、より全体的に、今後、向こう五年ぐらいの経済運営にどのような形でこれが出てくるのか、そのときにいかなる経済の姿が描かれるのかということに関しましては、小泉内閣は例の「改革と展望」を示しておりまして、それを毎年ローリングするというふうにお約束しておりますので、そのローリングの期日があと一、二か月でやってまいりますので、その中で、可能な限りその影響等々を織り込んで一つシナリオを国民の皆様に見ていただけるようにしたいというふうに思っております。
  16. 入澤肇

    入澤肇君 民間では、竹中大臣の構想が新聞に報道されるや、いち早くいろんなシミュレーションをやっています。  例えば日本経済研究センター、この試算によりますと、不良債権引き当て不足繰延税金資産効果を実施する、その他の会計制度の変更の影響を除去した実質自己資本額というのは、全国銀行ベースで二〇〇〇年三月には約二十六兆円、これが二〇〇二年の三月末には約十一兆円に、半減以下になるというふうな計算をやっている。それから雇用の問題につきまして、第一生命総研によりますと、今のような前提を置きますと、二〇〇四年度までに四万四千社が倒産して四十五万人が失業する。それから、日本総研はもっとすごくて、失業者は三百三十二万人になるんじゃないかと。GDPの押し下げ効果、これは個人消費とか設備投資が減少して六・四%も押し下げる。第一生命は、GDPにつきましては二〇〇四年度までに六・七兆円減少するんじゃないか。それから、四大銀行グループ自己資本比率は平均六・五九%に低下する、一〇%に回復させるためには四大グループだけでも九十三兆円を超える貸し出し圧縮、要するに貸し渋りが実施されなきゃならない、こんなシミュレーションをいち早くやっているんですね。  シンクタンクを持っている公的な機関として、行政機関としては当然のことながら、これだけ大きな影響を与えるよということはひそかに持っていなくちゃいけない、ある程度我々にその数字が示されて初めて具体的な後の政策が出てくると思うんですけれども、いかがでしょうか。
  17. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) 一般論としてでありますが、こういうシミュレーションは、私はやはり大変慎重でなければいけないと思います。どういう形で資産査定されてくるのか、それが、その真実が分かるのは当事者と当局だけでございます。  今、民間シンクタンクでいろいろやっているのは、これは普通どういうふうにするかというと、今まで例えば分類されていたものが何割ぐらいの確率でこっちに来た、だから来年も何割こっちに来るだろうと。いわゆる移る、遷移する、遷移確率を掛け合わせていってどうなるだろうというシナリオを描くわけであります。  議論をあおるという目的からすればそういう議論はもちろんあるわけで、実はかなりの部分そういうものがございますし、特に今回の場合、私はこれはやや悪質ではないかと思うのは、銀行子会社であるシンクタンクがあおるような議論を私はしているのではないかということを懸念しております。これはこれでやはりしっかりとモラルを持ってやっていただきたい。委員指摘の、これはやはり逆に、当局である以上、そういった数字の扱いはやはり慎重でなければいけないと思っております。  これは内閣府の方で昨年、仮にこれだけの資産オフバランス化が行われたならば雇用市場にどのぐらいの影響が出るか、こういうのは出しております。こういうものを少し精緻化して、こうなりますというのではなくて一つの物事の考え方を示していくというのは、これは私は委員指摘のように大変重要なことだと思っておりますので、これは金融庁が、当局がやっぱりこういうことをすべきではないと思いますが、内閣府の方で、こういったリサーチとしての一つの見方の提示のようなものは今後進んでいくというふうに思っております。
  18. 入澤肇

    入澤肇君 ですから、私が言っているのは、私的な研究機関がこのようにいろんな前提を置いて、当局も知らないような前提を置いてこんな発表をしていると。不安をあおるわけですね。それに対して、やっぱり公的な機関あるいは政府はきちんとした反応を示さなくちゃいけない、そして空気を和らげなくちゃいけない。そういう意味で私は主張しているのでありまして、是非早期当局としての各種民間研究機関に対する反論をやっていただきたいというふうに思うわけであります。  もう一つ、じゃ違う視点から、私は、不良債権処理につきまして切り口を変えて御質問を申し上げたいと思います。  私は、不良債権査定基準強化するとかまた言っていますけれども、柳澤大臣が実施された特別検査、これは非常に効果があったと思うんです。その特別検査でもなお不足しているというふうに認識することが果たして妥当かどうかということについては疑問を持っているんです。  むしろ、特別検査の結果、相当な不良債権が上乗せされました。その上乗せされたのは、査定が悪かったからとかなんかよりも、やっぱり全体としての景気対策が不十分だったというふうなことを認識して対策を講じなくちゃいけない。その対策を講ずるときに、マクロ的な需給ギャップが何兆円あるから幾ら財政措置を講ずる、あるいは幾ら景気対策を取るというふうなことを言ってもなかなか分からない。もっと具体的に頭に入るように分析する方法があるんじゃないか。  例えば、今積み上がっている不良債権発生原因ですね、構成要素別数字を明らかにしてもらいたいんです。例えば、銀行保有株評価損によって不良債権がどのくらい増えているのか、あるいは増えたのか、それからトータルとして現にあるのか。更に言えば、土地担保価値が下がってきた。土地担保価値評価損あるいはそのほかの不動産物件評価損によってどのくらい不良債権が増えてきたのか、トータルとして幾らあるのか。更に言えば、貸出し先の企業の、物が売れない、要するに需給ギャップによって、需給ギャップの存在によってどのくらい不良債権が増えてきたのか、それからトータルとして積み上がっているのか。  こういうふうな切り口を変えた分析があっていいんじゃないかと思うんですが、もし数字がありましたら、銀行保有株評価損が今年の三月から今年の九月までに、数字によりますと三兆六千億とか四兆円という数字があるわけですね。四兆円も評価損があったら、これは直ちにBIS規制の八%に影響することはないかもしれないけれども、四兆円ということは、評価損があるということは自己資本がそれだけ毀損されるわけですから、十二・五倍、約五十兆円の貸し渋りが徐々に発生しているということが理論上言えるわけであります。  株式保有評価損幾らか、土地担保価値がどのくらい下がったのか、あるいは需給ギャップが今どのくらいあるのかということについて、当局としてどのような認識を持っているか教えていただきたいと思います。
  19. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) 委員指摘のように、まず特別検査につきましては、これは私もやはり柳澤大臣の貢献は大変大きかったというふうに思います。  先ほど申し上げましたように、私は検査はかなり正確になされてきているというふうに思います。むしろ重要なのは、金融庁検査自己査定の間に、銀行査定ギャップがあって、それが埋められていないというところにございますから、これは検査の問題というよりは、その以降の監督のやり方の問題であるというふうに思っているわけでございます。  そこで、一般論として申し上げれば、委員指摘のように、このような不良債権の増加が起きている原因は何なのかということを議論することは極めて重要であるというふうに私も認識いたします。  ただ、突き詰めていきますと、これまたやや難しい問題が出てまいりまして、需給ギャップというのはマクロでは測れるわけですけれども、この会社の需給ギャップというのは何なのかということになります。これだけ能力があるから作れるはずだというふうに会社は考えても、マーケットの方でこんなものはもう今は買わないよということになれば、これはもう需給ギャップとはやはり言えないわけで、これはやはりその企業の構造的なマーケティングの失敗とか競争力の弱さとかそういう問題がございますので、実はそのミクロの要因を突き詰めれば突き詰めるほどその要因分解というのが難しくて、そうすると、まあ理屈の上ではなかなかできない。土地の値段が下がって悪くなったといっても、地価がマクロ的に下がったのか、変な土地を持っていたから下がったのか、そういう問題に突き詰めれば行き着くのだと思います。  委員の御指摘を踏まえて引き続き努力はしたいと思いますが、そういう問題があるということを踏まえた上で一点だけ、十四年三月期における金融再生法開示債権の増減要因というのは、これは一応の分析はしております。  その中で、その判定基準を厳格化したからだというようなもの、それと、特別検査によって出てきたものだというようなものに加えて、債務者の業況が悪化したというものもございます。これもまあ、業況悪化がなぜかというのは難しいんでありますが、あとオフバランス化されているものとかありますので、なかなかこれとこれと一対一で対応させるのは難しいんでございますけれども、非常に大ざっぱな感触で言いますと、私はやはり、ちょっとこれは数字等必要でありましたらまた御説明、時間があればさせていただいてもよろしいかと思いますが、非常に大ざっぱなとらえ方としては、不良債権のこれに関する増加のうちの四分の一か三割ぐらいは業況が悪化したことによるもので、それ以外のものはやはり判定基準が厳しくなって出てきたのかなと。これは正確にそういう数字が出ているということではありませんが、幾つかの数字を判定して、総合的に判定してこの期については私自身は考えております。
  20. 入澤肇

    入澤肇君 じゃ、私から一つ提案型の質問をさしてもらいますけれども、株式の評価損がかなり不良債権を積み上げたと。ちょうど与党三党のデフレ対策委員会議論しているときに、日銀が並行して政策決定委員会を開いていました。私どもは、法律改正で自己資本の範囲内まで日本銀行は株式を保有することが認められたけれども、なかなかそれすら実行されていない。アメリカは、銀行本体では株式保有は禁じられている。ヨーロッパ各国もそう。ドイツは自己資本の六割ぐらいまでは認められている。こういう状況を踏まえて、株価の評価損が貸し渋りにつながらないように銀行の株式を早く引き離すような努力をすべきじゃないか。そのために、今できている株式取得機構法、これを大改正して、八%の手数料にこだわらないで、公的資金を入れて、銀行に入れるんではなくて株式取得機構に公的資金を入れて思い切ってやったらどうかという議論をしていましたら、議論が終わったら、五時のニュースで日銀が自ら、準公的資金ですよね、自ら買うということが発表された。我々の議論も無駄じゃなかったなという思いをしているんですけれども、まず株式取得機構法の改正をきちんとやって、日銀とタイアップして、株式の保有を制限する、所期の目的を果たすということを実施してもらいたいと思う。  土地評価損、これは土地の流動化です。税制に負うところも多いでしょうけれども、当然出てくるのは都市再生法の問題。都市再生法も、これ、二十八の地域が指定されたけれども、当初我々が都市再生プロジェクトチームで考えていたこととちょっと違うんです。面的な開発を中心に、特に住宅を中心に需要を起こせということをかなりやったんです。それが十分にできていない。これを是非やってもらいたい。  それから、需給ギャップ、これは私は予算委員会で与謝野馨さんが通産大臣のときに聞きました。業種ごとにどのくらい需給ギャップがあるかということも数字に出ています。これを参考にしてもらっていいんですけれども、最近得た数字によりますと、日本で大体八万工場あるんですね。そして、推計しますと百三十万台ぐらいの機械がある。自動車製造機械、部品機械、金型の製造機械ですね、こういうのがある。ところが、法定耐用年数十年を超えている機械が六割近くあるんですよ。これが実は空洞化原因にもなっている。新鋭の機械を入れているのは、入れて三年未満の新しい機械を入れたのはたった二五%です。こういうものを、機械の設備投資がやっぱり民間設備投資の中心になりますから、政策的に五年据置き、十年償還のような思い切った無利子資金を入れて、そして税制上の特例措置と合わせて資金を手当てして、新鋭機械を入れて生産性を上げるという努力を政策的にもドライブ掛けてやったらどうか。要するに、需給ギャップを埋めるためのそういうような政策手段も考えていいんではないかというふうに思っているわけです。  もう一つ言いますと、公共事業を中心にいろいろな政策体系を組もうとしていますけれども、予算のときに、張り付けのときに選択と集中でやるというふうな努力をやっていますけれども、相変わらず支払計画においてはばらまいているんです。いろんな期成同盟に私出席してますけれども、三十年してやっと調査区間が設けられたとか、四十六年も期成同盟の運動をやっているけれども、姿も形も見えないような公共事業の期成同盟もあります。この間あるところへ行きましたら、四・三キロぐらいの道を造るのに二十年以上掛かるというふうな計画がありました。要するに、選択と集中で支払計画をやらなければ絶対需要なんか喚起できない。公共事業はいつまでたっても効果ないなんというふうにレッテル張られちゃうわけですね。  そういう意味で、需要対策について、不良債権の内容を分析すると同時に、具体的に目に見える形で強化してもらいたい、その結果を補正予算とか税制改正に結び付けてもらいたいということを最後に申し上げておきます。  御意見があったら答弁願います。
  21. 小林興起

    ○副大臣(小林興起君) 今、入澤先生の方から大変貴重な御提言も賜りました。そういう方向に沿って、特に税制について今検討を進めておりますし、あるいは公共事業につきましても重点的に早期に人員を投入してやるという方向も進めているわけでございまして、先生の御意見賜りました方向に沿って政府としても頑張ってまいりたいと思っております。
  22. 入澤肇

    入澤肇君 終わります。
  23. 円より子

    ○円より子君 おはようございます。民主党・新緑風会の円より子でございます。  ただいま我が国の経済といいますのは緊急避難の対策を要する未曾有の事態にあると思いますが、これは国民生活、企業経営並びに国家の財政運営が全面にわたって体質の転換を要する一大正念場にあることの端的な表れでもあると思います。政策のタイミングを失すれば、失業の増大、連鎖的倒産、景気の底割れは避け難く、消費の低迷、輸入停滞、また資産デフレの悪循環が進行する中で、多くの経営者が自信を失うほどの事態となっております。しかし、この厳しい現実とその持つ意味を民、政ともに正しく直視し、正確な実態認識の下に英知を集め努力を傾注するならば、この危機は必ずや管理し得るし、新しい日本の未来にもつながるものと信じております。このために、政治はその責任にこたえ、速やかにかつ総合的に対策を展開する必要があると思います。  実は、今私が申し上げました言葉は十年前に、私、実は日本新党から国会議員になった者でございますけれども、なったときに細川さんが総理になられまして、そしてその九三年の暮れに金融危機が起きている。そして、公的資金注入が必要ではないかということでこの文章と、もちろんもっと、これは触りのところ、初めのところでございまして、その後、公的資金の投入も必要だということを官邸に持っていったときの文章でございます。  ところがそのとき、財務省ではなく大蔵省でございましたが、銀行局長は、全くそんな金融危機は発生しておりません、だれがそんなオオカミ少年のようなことを言っているのかという、そういうお話であったわけです。私は何もそれは、だれが悪いとかそういうことを言っているわけではないんですが、当時の状況と今の状況と、まあいろんな対策は打ってこられた、でも全く解決はしていないで同じだと。今私がこれを、これは実は十年前の文章ですと言わなくても今そのままの状態なんですね。  その細川政権ができます九三年の前の年、九二年の八月十一日に株が一万五千円を割りました。もう皆さんよく御存じだと思います。そのとき、軽井沢で静養していらした宮澤総理が、一日株式市場を閉鎖した方がいいんだろうかと、そういうこともおっしゃったということを聞いておりますし、またそのときにも公的資金の投入のことが考えられたということを聞いております。  それから実に十年という歳月が流れ、本当に銀行不良債権問題が片付いていないこと、もちろん、先ほどの話にもあったかと思いますが、かなり、九十兆もの処理がなされてもまだまだ新規に発生しているという状況で、これが金融問題として大きなガンになっているわけです。その上に資産デフレが進行しておりまして、もうちまたは失業者があふれ、年間自殺者は三万人を連続して超えるような状況でございます。  私たちは、憲法十三条でうたわれていることを何ももう一度再確認しなくても、政治家というのは人々の命と財産と幸福の追求権をしっかりと守る、それが責務だと思います。今からいろいろ必死で解決しようということも、とにかく企業にもうけさせるとか、ただ銀行を救うとかということではなくて、人々が安心して暮らしていけるようにすること、せっかく若い人たちが高校を出ても大学を出ても就職もできない、将来の設計も自分たちでできない、また、多くの中高年の男性たちが、会社の社員やまた倒産の後片付けをするために命を絶って生命保険でそれをあがなうというようなことのないように、私たちはしっかりと対策を打っていかなければいけないときだと思います。  そうした状況の中で、今日、日銀総裁、速水さんにもおいでいただいておりますが、まず日銀にお伺いしたいと思います。  皆様のお手元にお配りしたこの資料は日銀から昨日いただいたものでございますけれども、この上の表ですね、この表を見ますと、本当に日銀は必死で量的緩和等をなさり、マネタリーベースは、この上の薄い方の細い線ですが、急激に二〇〇一年度上昇しておりまして、ところがマネーサプライの方はもう九〇年代のころ上がったきりずっと下がり続けて、幾らマネタリーベースが多くなっても資金の循環をしていないということがもう歴然とこの表に表れております。  予算委員会財政金融委員会速水総裁、何度も、去年、その前辺りから御答弁の中で、もうじゃぶじゃぶという言葉を使われて、金融緩和はしているんだ、量は出しているんだとおっしゃっておりますが、また昨日政策変更をなさり追加の金融緩和をなさったと聞いておりますが、その内容と、また直近に、各国からは余り好評ではないけれども、本当に今の日本のこの危機をお感じになって政府に何とかしろという思いもあったからなんでしょうが、銀行保有株を買い取るということもなさいました。  そうしたことや昨日の委員会でお決めになった追加金融緩和等、その内容と、そしてそれが本当に、今この表のマネタリーベースがこんなに多いのにマネーサプライは全く伸びていないというここの部分、これの改善が図れるのかどうか、その見通し等をお聞かせいただきたいと思います。
  24. 速水優

    参考人速水優君) 昨日決定しました措置ポイントを御説明いたします。  三つございまして、一つは当座預金の目標をこれまでの十兆から十五兆円と、実際には十五兆すれすれのところをずっと続けてきているわけですけれども、これから上げまして十五兆から二十兆円程度までということに引き上げました。これは、今の一は量的緩和を更に広めて銀行の手元の資金を潤沢にするということでございます。  二つ目は、そういう資金を更に供給するために長期国債の買入れを月一兆円から一兆二千億円に二千億増額いたしました。これで買いオペがまた増えていくと思います。  三つ目が、これは、買入れ対象としております手形の期間、これ銀行の手形ですけれども、これを六か月以内から一年以内、今現在、銀行からはちょっと三十兆近い手形が入っておりますけれども、それを一年にいたしますから、もう少し金が出ると思います。  こういった措置は、一つは景気の先行きをめぐって不確実性が強まってきたと。その原因は、海外の要因もありますし、国内でいろいろなことが起こったことは御承知のとおりでございますし、株価の方も不安定な地合いが続いていることは御承知のとおりでございます。また、短期金融市場の最近の動きを見ておりますと、少し金利の上昇ぎみといいますか、特に中期のターム物の金利が上がってきたりしております。そういうようなこと、不安定な動きが少し見られるようになってきたといったようなことにかんがみまして、昨日行われました日本銀行政策決定会合において、以上、さっきの三つのことを決めたわけでございます。  今回の措置は、金融市場の円滑な機能の維持と安定性の確保に万全を期すことによって金融面から景気回復を支援していく効果をもっと確実なものにすることをねらったものでございます。日本銀行は、経済を持続的な成長軌道に復帰させて物価が下落基調から脱却できる状況を実現するために、今後とも中央銀行として最大限の努力を続けてまいりたいという方針でございます。
  25. 円より子

    ○円より子君 私は、とにかく銀行に資金がたまっているだけで全く市中に循環していないということがもうずっと長い間一番の問題だと思っておりますが、皆さんもそうだと思うんです。  そこの部分をどうしていくかというときに、今、大変中小企業の方々が特に困っていらっしゃいまして、今回不良債権の加速処理ということは、必要な条件だと思いますけれども、この加速策によって更に信用収縮や資産圧縮、こうしたことが起きるのではないかと懸念なさっている方々もいる。しかし、もう既にそれは起きていることで、この数年間本当に自転車操業といいますか、日本というのはメーンバンクがあって、そしてそれぞれの企業が、例えば一億借りた、それによって仕事をして入ってくるお金は半年後とか一年後というときに、また、ちゃんと返すけれども、またその銀行が、メーンバンクが貸してくれる、そういう中で、銀行の方がBIS規制によっての八%とかそういった自己資本比率を必死で確保しなきゃいけない。そして、それをまた金融庁査定していくという中で、どうも、何度も私も委員会で申し上げておりますけれども、今までのお得意様であった、また金融界、銀行がやるべき仕事である企業の方を向かないで、自分の銀行自己資本比率を必死で守るために、また金融庁からいろいろ言われたときのことのためにといいますか、金融庁の方に顔を向けてばかりで、どちらかといいますと、そういうときに金融界の方は、銀行は、先ほど一億返したらまた貸すという形が、じゃ今度は五千万になり三千万になりという形の、いわゆる融資の貸し渋りだけではなくて貸しはがし、そういったことがもうずっと出てきていたわけですね。  そうした中で、でも社員に給料を払わなきゃいけない、またいろいろ運転資金が要るという中で、じゃどこで借りるかというと、貸金業者の方、金利の高いのが分かっていてもそちらに借りる。幾ら今までどおり一生懸命働き、またそれ以上に、自分たちが担保に入れていたお金を、家を売ったり、また親類縁者から借金をしたりとかしながらでももう間に合わなくなってくるという、そういう状況の中で、本来は先ほど言いましたように政府の失政とか様々なことがあるんですが、もう一番身近にあるまず銀行憎し、そしてその査定を厳しくする、マニュアルどおりにやろうとする金融庁憎しみたいな状況になって、世の中の人たちは今銀行金融庁に対する恨みつらみ、怨念が大変たまっているという、そういう状況に私はなっていると思いますが、実は、中小企業にどんどん貸せと言われても、不良債権処理と両方は無理だというのは金融界の本音であり、それもまたむべなるかなとも思います。  そうした中で、金融庁は十月の十八日にUFJ、あさひの両銀行に対して、中小企業向けの融資額が計画に達していないということで業務改善命令をお出しになりました。これはどういう理由からだったんでしょうか。
  26. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) UFJホールディングスとあさひ銀行に対する行政処分の件でありますが、既に御承知のように、早期健全化法に基づくいわゆる資本増強行は毎年度中小企業向けの貸出し等の増加計画を策定していると。その増加計画がちゃんと履行されているかということを確保するために、資本増強行が自ら作成した計画を銀行自身が履行しようとしていない、そういう意思をちゃんと持っていないのではないかというような場合には業務改善命令を発動するということにしています。  この二行でございますけれども、貸出し増加に向けた取組状況等の報告徴求を行ったわけでありますが、それを精査したところ、具体的にUFJについては中小企業向けに限定した貸出し目標を設定していなかった、あさひについては十三年度下期において中小企業向け貸出し目標の設定を行っていなかったと。したがって、目標達成に向けた実効性ある施策が十分に講じられたとはこれはとても認め難いということから、自ら的確に履行しようとしていないと認められたということで業務改善の命令を出したということでございます。この命令は十月十八日に両社に対して発出されております。
  27. 円より子

    ○円より子君 そのような業務改善命令をお出しになることも大事ですし、また中小企業への貸出し融資をどんどん増やしていただくことは大変重要なことなんですが、先ほど申しましたように、銀行としては、経営基盤の弱い中小企業に貸してまたそれが不良債権になっていく、貸倒れに陥るリスクが大きいということであれば、当然やはり経営の安定した大企業の方に貸出ししたい、そういうふうな形に、傾向になるのはやむを得ないんじゃないかと。そうすると、根本のところを直さない限りなかなか改善命令を出すだけでは難しいかなという気がするんですけれども。  まず、全国の銀行が貸出し残高が増えているのか、それから中小企業への貸出しはどうなのか、その辺のことを少し時系列的に教えていただければと思いますが。
  28. 速水優

    参考人速水優君) 金融機関の貸出しにつきましては、企業規模の大小にかかわらずここのところ一つ特徴的なことは、やはり二極分化というのですか、大げさかもしれませんが、優良企業に対しては貸出しはかなり増えている反面、信用力の低い企業に対しては貸出しの姿勢が慎重化していると。それでも全体として銀行の貸出しは前年に比べて四%の減少になっているというのが現状でございますが、御質問の大企業向けと中小企業向けとの違いはどうなのかということになりますと、やはり中小企業向けの貸出しの動きは大企業向けに比べますと落ち込み幅はかなり大きくなっております。  ちょっと数字を申し上げますが、昨年、二〇〇一年の六月で、大企業向けは、これ国内銀行全部、全国銀行プラス外銀の在日支店ですが、昨年の六月は百一兆で、これ前年比マイナス三%であったのが、今年の六月には九十九兆円と減ってはいますけれども前年比マイナス二・四%。それに対して中小企業向けの方は、昨年の六月が二百二十一兆円でマイナス五・七%でありましたが、今年の六月は二百三兆円で、前年比マイナス八・二と。貸出しの減少が、銀行の貸出しの減少が多いのは、やはり中小企業向けの貸出しが減っているということが数字の上でもはっきり出ております。  こういった動きの背景には、過剰債務の解消に伴って企業自身の資金需要が減ってきているということもあると思いますし、金融機関が健全化を進める過程での経営努力で、資金の借り手、貸手双方にとってある程度やむを得ない面がありまして、必ずしも貸し渋りといった表現が適当とは言えないようなこともあると思うんです。  ただ、今後、不良債権処理が加速されることを踏まえますと、日本銀行としましても、企業金融動向につきましては、これまで以上によくよく注視、ウオッチしていきたいというふうに考えております。
  29. 円より子

    ○円より子君 また一方、銀行の方々で公然と、中小企業や零細企業にリスクを取りながら融資するよりも貸金業者に融資した方がよほどもうかるというふうにおっしゃる方たちもいらっしゃるということで、銀行が、確かにリスクはあるとしても、また慎重にならざるを得ないということがあったとしても、企業に貸さずに、日本というのは、中小企業が本当に今まで戦後の瓦れきと化した日本を必死で物づくりや様々なことをしながら支えてきたわけです。  ちょっと話がそれますけれども、最近、本当に暗いニュースが多い中で、島津製作所の田中さんがノーベル賞をお取りになったことは本当にうれしいニュースだったと思います。特に、日本ではどうも、私も女性の一人として反省すべきだと思いますけれども、余り風采の上がらない、そういうことを言うと田中さんに申し訳ないかもしれない、格好いい人に対する評価という、見栄えだけで見てしまうところが今の女性たちにはあります。でもああいう、もしかしたらふだんの生活では余り気が利かないかもしれないけれども、本当に一生懸命こつこつ仕事に打ち込まれる。そして、何よりあの方がすばらしいのは、自分というものをしっかり御存じなんですね。自己認識ができている方だと私は思うんです。  つまり、今の日本人というのは、女性も男性もやはり周りの評価等を気にしまして、格好よくありたい、収入を多くしたい、昇進したい、高い地位にありたい、そういうことで、ついつい妻も隣の夫の方がボーナス高いわよなんというふうなことを言って、子供に対しても夫に対しても比較してしまう、そういうことがありますけれども。彼は自分というものをしっかり知っているから、わざわざ昇進試験とか昇級試験とかそういうことを受けるよりも、自分の研究一筋で生きたい。そういう人は、私、昔、日本にはたくさんいたと思うんですね、自己認識、自分の分を知るという。今もきっと私たちの周りにはそういう人がたくさんいて、そういう人が必死で働きながらこの日本を支えてきたと思うんですね。  そういう人の、例えば一人、また二、三人、十人、二十人という人を抱えて頑張っている零細企業、中小企業に対して融資をせず、貸金業者の方がもうかるからということでそっちへもし銀行が貸しているとしたら、これは本当にこの国のことを考えているんだろうかと言われてもやむを得ないと、そう思うんですが。  貸金業者にしても、もちろん仕事をなさっているわけですから、そちらに融資するなということは言えないことですけれども、一体、全銀行の貸出し残高のうち、貸金業者にはどのくらい貸しているのか。その実態と、また貸金業者が貸した金利がどうなっているのか。その借りた方たちの状況がどうなのか。そういったことというのはどこかでお調べになっているんでしょうか。
  30. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) 貸出し残高、金利等々のお尋ねでございますけれども、貸出金につきましては、全国銀行、地方銀行等々のベースでとらえることはできます。ただしこれは、貸金業者とおっしゃいましたけれども、いわゆる非預金信用機関ということになりますので概念は異なってくると思います。数字をたくさん申し上げてもなんでございますので全国銀行数字だけ申し上げますけれども、平成二年、これは二月の数字でありますが、十二兆二千七百三十七億円という数字になっております。  金利につきましては、そういう計数はございません。
  31. 円より子

    ○円より子君 日銀、何かございますでしょうか、補足で。
  32. 速水優

    参考人速水優君) 銀行の貸金業者への貸出しのことを聞いておられるんだと思いますけれども、日本銀行が調べたところでは、国内銀行の業種別貸出し残高の統計の中で本年六月末で、国内銀行のいわゆるノンバンク、ノンバンクというのは武富士とか、ああいうところのノンバンク向けの貸出しは、前年同期比でマイナス〇・八三%です。  それからもう一つ、ノンバンクと違って事業者金融業者という、事業者金融業者、リースとかそれから商工ファンドのようなそういうところ、中小企業向け等に金を貸しているところですが、そういうところに貸しております事業者金融業者向けと消費者金融業者向けをこれは合算した計数でありまして、どっちが幾らというのはちょっと分かりかねるんです。いずれにしても、残高は全体で二十五兆円ぐらいですから、全貸出しの五%ぐらいのものだと思っております。
  33. 円より子

    ○円より子君 次にお聞きしますのは国債についてなんですが、国内銀行での国債保有残高というのは直近でどのくらいになっておりますでしょうか。それから、国債保有残高というのは時系列で伸びているんでしょうか。
  34. 速水優

    参考人速水優君) 銀行の国債買入れにつきましては、国債の保有残高が二〇〇〇年末で六十八・五兆円、それから二〇〇一年末で六十六・九兆円、二〇〇二年の八月末で八十一・四兆円と、かなりの勢いで増えてきております。  金融機関資産内容の中で、国債保有が増えている一方で貸出しが減少しているというのは、少し銀行の本来持っている信用仲介機能というものが働かないで、むしろ国債の方が間違いもないし、預金が入ってくる、余った分を国債投資に回すという動きがあるんじゃないかというふうに想像されます。  こうした貸出し減少の原因としましては、景気回復へのはっきりした動きが見られないという状況の中で企業の過剰債務圧縮の動きが続いております。その結果、資金需要自体が低迷しているということはまず申さなければならないと思います。それとまた、金融機関がこの不良債権問題への取組を強める中で、信用力の低い、リスクの多い企業に対しては貸出し姿勢を慎重化させているという面があることも影響していると思います。  今後、日本銀行の思い切った金融緩和の効果が貸出しの増加につながっていくためには、一つ不良債権処理などを通じて金融仲介機能の強化が進んでいくことが望ましいと。これは銀行本来の仕事でございますから、そうやって企業設備投資の資金とかあるいは家計の新しい消費、増えていく消費に貸出しが伸びていくといったようなことが望まれる。そうやって民間の需要が増え出せば経済は伸びていくんだと思います。  そのためには、構造改革その他、規制の撤廃とかあるいは税制の改善、そういった面からの税制の新しい措置といったようなものが望まれるというふうに思います。企業や家計の前向きの活動を引き出すようなことを是非この機会に政府を始めとして動き始める、効果を出し始めることを期待しているのが現状でございます。
  35. 円より子

    ○円より子君 本当、おっしゃるとおり、銀行本来の機能であります信用仲介機能を何とか回復していきたい、そして企業や家計の前向きの活動を促進していきたいと思いますけれども、そこで、今、総裁もおっしゃったように、不良債権処理のことに移りたいと思うんですが、もしあれでしたら、総裁はどうぞお引き取りくださっても結構でございます。ありがとうございました。  それでは、不良債権処理の方に問題を移したいと思いますけれども、まず、今も申し上げましたように、銀行本来の仕事をするためにもこの処理が必要なんだろうと思うんですが、今までに処理された金額、そしてこれ、先ほど同僚議員の入澤先生からも新規の増えている不良債権原因は何かというようなことをおっしゃっていましたが、一体どの程度今処理され、そしてどのくらい増えているという、その辺の概算を教えていただけますか。
  36. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) 主要行の破綻懸念先以下債権ということで数字を申し上げさせていただきます。  平成十四年三月期でこれは十五・四兆円でございます。これは十二年九月期に残高十二・七兆円でありましたものが、これがいわゆる処理が進んだということと、一方で新規の発生が十三年三月期、十九年九月期、出てきたことによりまして今申し上げましたような残高になっております。  十四年三月期について申し上げますと、十二年九月期十二・七兆円あったものの残高は四・七兆円になっておりますが、その後新たに発生してきたものが加わって十五・四になっている。十四年三月期一期に関しましては、新規発生は六・九兆円というふうになっております。
  37. 円より子

    ○円より子君 昨日遅く最終報告を出され、この不良債権処理についてのいろいろな手続等も入っておりましたけれども、まず公的資金の注入についてお聞きしたいんですけれども、今のような不良債権が新規に出てきているという状況の中で、公的資金額というのはどのくらい注入すればいいというふうに考えていらっしゃいますか。
  38. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) 公的資金は、注入するかどうかも含めて、その場合、その金額等々、これは容易に見積もれるものでもございませんし、そもそもこれは政策の向く、目指すところでもない、一つの結果として出てくることでありますので、今の時点でどのくらいのことを予測しているかということについては、具体的にもちろん数字を想定しているわけでもございませんし、数字を挙げることについては差し控えさせていただきます。
  39. 円より子

    ○円より子君 公的資金が投入されるということになりますと、これは今までも随分投入されておりますが、国民の負担になると私は思うんですね。そうしますと、やはり今いろいろな政策を総動員して今のデフレ不況やまた金融不安というものを取り除いていくというようなことに対しては、国民が納得してくれていなければ、つまり国民が、こういう状況だから、じゃこういうこともやむを得ないね、しばらく小泉総理のおっしゃる痛みということがあってもしようがないねという、そのコンセンサスがなければ私はいけないと思います。  そうしたときに、公的資金の投入もあり得るというようなことをずっとおっしゃってきて、また竹中さんは今のような御答弁も何度もおっしゃっておりますけれども、やはりこのくらいは必要なんですよと言うことは私は必要ではないか、それは国民に対する責任ではないかと思うんですね。  竹中さんがお答えにならないということであれば、私の方で少しどのくらいの資金が必要なのかということをお話しさせていただきたい。それも、エコノミストの方たちやいろんな専門家の方たちのお話ではなかなか分かりにくいので、私が自分なりに分かる、国民の分かりやすい言葉で言いたいと思うんですが、資料を配っていただけますでしょうか。    〔資料配付〕
  40. 円より子

    ○円より子君 皆様にお配りする表を見ながら、およそこのぐらいは必要なのではないかということをお話しさせていただきたいと思っております。  今、不良債権がどのくらいあるかというお話の中で、破綻懸念先以下というので十五・四兆円とおっしゃいました。まず、この表は皆さんのお手元に行きましたでしょうか。これは日銀がお出しになっている資料等から作成したもので、都長信十三行の二〇〇一年度末、先ほどおっしゃった二〇〇一年三月の十五・四兆円ということがこの左に書いてございますけれども、その資料から作ったものでございますけれども、その一覧表で、この場合、今やはり早急に、十年ずっと不良債権抱え続けてきて、また新規に出ているわけですから、これを早急に処理しなければいけないといったときの損失のシミュレーションなんですね。ここの新生銀行とあおぞら銀行、国有化されたものは除いています。縦軸が債務者区分、横軸が自己査定とリスク管理債権、金融再生法に基づいた開示債権となっておりまして、単位は兆円です。  そして、まず左の区分の一番上の破綻先・実質破綻先と、それから二番目の破綻懸念先、こういうここのところ以下ですね、破綻懸念先以下を一括処理するとどうなるかということなんですが、これは右側の自己査定の中の時価と処分可能額の差額というのが第Ⅲ分類として入っております。そこの破綻懸念先の十二・二兆円のうち、この第Ⅲ分類が二・三兆円、これが損失になります。また、上、破綻先・実質破綻先、一番目の枠組みですが、ここの三・二兆円のうちの第Ⅱ分類、つまりこれは担保を取っているものなんですけれども、処分可能額となっている第Ⅱ分類のところの二・四兆円とそして破綻懸念先の四・六兆円の計七兆円も、不動産担保を取っているものであってもたたき売りされて回収額が小さくなるということは、これが火を見るより明らかではないかということで、七兆円の半分ほどを損失とすると三・五兆円になる。  実際にこれはもう、今永田町だけにいらっしゃる方は分からないかもしれませんけれども、もう銀行不良債権加速されるぞというそのもっと前から、本人にも言わずに大銀行が担保物件だった家などを競売に掛けてしまっているという、そういった事例がたくさん私の周りにもございます。まだそれは、手続上そんなことをしてはいけないわけですから、何とか、気の強い人はそんなことをやってどうするのかと言えますけれども、そのままあきらめてしまう人たちもいたりで、大変なことがちまたでは起きているようなそんな状況ですから、ここの第Ⅱ分類だって半分が損失になり得ることは十分あるわけです。  さて次は、要注意先、三番目ですね、左側の縦枠の。この要注意先のものが四十五・八兆円ありますけれども、その中の要管理債権というのが一番右端の金融再生法に基づいた開示債権の中に要管理債権として十一・三兆円ございます。これはもう正に玉石混交で、利払いが滞っているものなど、本当にその要注意先の中でも大変グレーが濃い部分で、株式市場の参加者は、今回査定がもし厳しくなると、厳しくするとおっしゃっていますので、厳しくなりますとぐっとグレードが下がりまして、濃いグレーというよりは黒になってしまうのではないかと見ている人もいまして、現状は担保、保証と引当金によりましてまあ五〇%程度はカバーされているんですけれども、さらに二五%の引当金を積んで七五%ぐらいカバーしなければならないのではないかということで、この要管理債権の十一・三兆円の引当金が二五%積み上げるということで二・八兆円の追加というふうに考えております。  次に、今の要管理債権の十一・三兆円を除いた、四十五・八兆円という要注意先ですが、そうすると、除くと三十四・五兆円になるわけですね、この一番右下の部分です。これにも、今現状の引き当て率というのは大体三%から五%ぐらいなんですが、一〇%ぐらい引き当て率を強化しなければならないというふうに思っております。そうしますと、三十四・五兆円掛ける一〇%で、これが三・五兆円。  ということで、ずっと先ほどから申しましたように、二・三兆円に三・五兆円、そして二・八兆円、今の三・五兆円をプラスしますと十二・一。つまり、いろいろな予測をなさる方がいるかと思いますが、ぎりぎりこのくらいの、十二兆円規模の公的資金の注入が必要だと私は思いますが、竹中大臣いかがでしょうか。
  41. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) この表、数字はちょっと事前に見ておりませんでしたので、今拝見させていただきまして円委員の御説明をいただきました。  これ、四つの要因に分けて数字を積み上げているというふうに思いますが、このベースとしている個々の分類の債権残高というのは、これは公表されている非常に正確な数字であるというふうに思います。  ただ、これ、引当金の増加が生じると見込むわけですけれども、その分が何らかの補てんが必要になるというふうにお考えになるわけですけれども、まず、例えば一つの例ですけれども、これ破綻懸念先が一〇〇%全損になるということを前提に置かれるわけですよね。要管理債権がこれは全部いわゆる破綻懸念先以下に下方遷移するということを前提に置いておられるわけですね。資産価値は半分に下落するということを置いておられるし、要注意先の引き当て強化に対しても一つの、一種のアプリオリなというか前提を置いておられると。いろいろとお考えになっておられるというふうに思いますが、前提を幾つか積み重ねていくとこれは誤差が物すごく出てきますし、前提の置き方としては、例えば全損になるとか、これは解釈でありますけれども、やはり極端な前提が置かれているなというふうにも思います。  例えば、不動産担保の評価についても、これはアンケート調査を我々も行っておるんですけれども、むしろ実際の売却額は直前における評価額よりも高いという数字が実は出ておりますし、加えて、この中に入っていない株価等の変動、基本的な銀行の収益力と、これはもうよく御存じの上でこういう数字をお出しになっているんだとは思いますが、そういう意味では、やはり考慮すべき問題は非常にたくさんあるのではないかというふうに思います。  ただ、申し上げましたように、この基になっている計数そのものは公表された数字一つ前提を置いておやりになったものだというふうに理解をしております。
  42. 円より子

    ○円より子君 それでは次に、公的資金を注入する目的不良債権処理についてお伺いしたいんですけれども、この注入の目的というのは、自己資本の毀損分を埋めることによって金融仲介機能の維持、これは信用収縮を防ぐものと思われますけれども、不良債権処理の促進や産業再生に私は直接結び付かないのではないかと思うんですが、公的資金を注入した場合に、これを不良債権処理の促進、産業の再生に結び付けるスキームとしてどのようなことを考えていらっしゃるか。  九九年三月の公的資金注入時にも同様の議論がなされました。当時は、単に引当金を積み増すだけでは企業の過剰債務問題の解決にはならないと、いかに金融機関に債権放棄を進めさせるかといった方向に向かってしまいましたが、今回はどのような処理を促進させるおつもりなんでしょうか。
  43. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) もとより公的資金の注入を目的としているわけではありませんし、厳密に想定しているわけでもございませんですが、万が一にもそういうことが生じた場合には、しっかりとこれを管理して、金融から経済の底割れを起こさないようにトータルで仕組みを作っていかなければいけないという問題意識を強く持っております。  ちょっと委員の御質問が、それを不良債権償却に結び付けるスキームは何かというお尋ねであったと思うんですが、これは基本的には、資本が充実されて、それによって円滑な金融機能、信用創造機能が作られるというのが何といってもこれが基本なのだと思います。そうする中で財務基盤が強くなることによって、それによって不良債権処理を加速するという、これはやはりそういうメカニズムは働くと思います。  同時に、これはコーポレートガバナンスがしっかりと機能して、収益力を高めてこの不良な資産オフバランス化するという、そういう言わばより良い銀行経営企業経営に向けたインセンティブが働くようにするというのが、これはやはりこれで大変重要なポイントであろうかと思います。  公的資金を注入する場合の経営責任の明確化を含めて、さらには、そうした場合にはしっかりと検査官の活用をしながら、その経営が効率的に働くようにするという仕組みを昨日の報告の中にも幾つか埋めております。そういうことを総合的にやはり機能させるということなのではないかと思っております。
  44. 円より子

    ○円より子君 公的資金注入ありきではないと何度もおっしゃっておりますが、結局、査定を厳しくして、そうすると、ふたを開けてみなければ分からないとも以前おっしゃっていたように思うんですが、自己資本比率ということにまた銀行が必死で不良債権がないような形に持っていき、そして貸し渋りや貸しはがし、そういう言葉で言うのがいいのかどうか分かりませんが、起きてきた場合に困るのは企業やそういったところですけれども、もしそういったことが大っぴらに頻繁に起こるということになりますと、銀行に対して何か処分のようなものはあるんでしょうか。
  45. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) 銀行が極端な資産圧縮をした場合にどのようにするかということだと思いますが、これは、例えば今、先ほども少し話題になりましたが、業務改善計画をもって中小企業等々に対して一定の貸出しを約束しているところについては、これは業務改善を通じて処分をするというのが一つ考えられることでありましょうし、現にそういうことはやっております。  むしろ、その資産圧縮がいわゆる経済全体で見て非常に危機的な状況にその程度が起こっているということになりますれば、これはそういうことを止めるための預保法百二条に基づく措置等々も、これは非常に極端に信用が総崩れするような状況にもしもなれば、それはそういう手段も使わなければいけないわけであります。  しかし、日本銀行は、それなりのきちっと資産査定をやっていって、コーポレートガバナンスを発揮してそれなりの収益力を持っていくならば、そんな極端なことが起こるということは考えておりませんし、むしろ、いわゆる危機だ危機だというふうにマーケットからあおられる前に、しっかりと今この時期に不良債権資産査定をきっちりと行ってガバナンスを強化していく、そういったことを積み重ねていくことが大変必要であるというふうに思っております。
  46. 円より子

    ○円より子君 柳澤さんから竹中さんに金融担当大臣が代わられましたのは、それまで金融庁金融は危機ではないという認識の下でおやりになっていた、それを政策変更なさったからだと私は思っているんですが、それでも公的資金の注入はないという、結果としてはあるかもしれないけれどもと。注入のときには危機の認定というのが必要だと、今の現行法では、思うんですけれども、この危機認定というのの基準があいまいです。この点をどのようにお考えなのでしょうか。また、新法を制定するおつもりはあるのでしょうか。
  47. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) 御指摘のように、現行法では、預金保険法百二条によって、「我が国又は当該金融機関が業務を行つている地域の信用秩序の維持に極めて重大な支障が生ずるおそれがあると認めるときは、」云々というふうになっております。これはもういろんな場で議論がされてきたことでありますけれども、その危機というものをどのように認定するか。言うまでもありませんけれども、金融危機の態様には様々な局面があるというふうに考えられますから、それを具体的に類型化して何か定義付けるということは、かえって私は問題が生じるのであろうというふうに思います。これは正に当局の実態判断ということにさせていただくしかないのではないかと思っております。いずれにしても、そういった意味での判断は、これは当局としてしっかりとやらなければいけないと思います。  御質問のもう一つの点につきましては、昨日の金融再生プランの中に、万が一にも今こういう議論をしております主要行についてそういうことが起きた場合は、現行法の枠組みでしっかりと対応をして、金融面から絶対に底割れを防がないと、というふうにしておりますが、果たしてそれだけで十分であろうかという問題意識を踏まえまして、新しい法的枠組みが必要かどうかを検討するというふうにその中には書き込んでおります。しっかりとこういった枠組みの必要性について検討して、必要であるならばしかるべく措置を取っていく必要があると思っております。
  48. 円より子

    ○円より子君 定義付けが問題が生じるからとおっしゃっておりますけれども、例えば信用収縮や資産圧縮、貸し渋りや貸しはがしのようなものが私はかなり起きているとは思うんですけれども、実態とどうも認識と食い違っているようなところもありますけれども、実態は相当頻出していると思っていますが、今以上にもしその不良債権処理の加速によってそうしたものが頻出すれば、これもその預金保険法百二条による公的資金注入の条件になるのか。金融危機対応会議というんですか、これの開催要件になるんでしょうか。
  49. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) 先ほども申し上げましたように、ここはしっかりと実態を判断しなければいけないという問題であろうかと思います。  危機というのはいろんな意味で使われるようでありますけれども、事態が言わばアンコントローラブルな状況になるというようなのが一般には想定されていると思うわけであります。そういった点も含めて、そこは、その信用の収縮というのも一つの重要なこれは要件でございますから、しっかりと判断、当局としてはしなければいけないと思っております。
  50. 円より子

    ○円より子君 それでは、昨日見せていただいた最終案では大分違ってきたかというか、すぐにはなさらないみたいなところがございますけれども、転換期限が来ております優先株を普通株転換する方向ということがございますが、これは国による経営コントロールを強めるのが目的なんでしょうか。その場合に、既存の株主への影響というものはどのようにお考えでしょうか。
  51. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) この報告書で書いておりますように、政府が保有している銀行の優先株の普通株への転換については、期限の到来、経営の大幅な悪化など、諸条件に該当する場合には転換するという方向でガイドラインを可及的速やかに整備するというふうにしております。  これはまず、新聞等々では国有化というような言葉がよく使われますけれども、もちろんそういうことを目的にしているわけではありません。これは、やはり民間金融機関民間の英知と活力に基づいてしっかりとやっていただかないと、この五百兆経済という大きな日本経済はとてももたないわけでありまして、そこは、そういう一般に新聞等々で言われているような国有化というようなことは当局としてもちろん考えているわけではございません。  その上で、しかしこれはやはり、先ほどから御指摘があったように、公的な資金を使ってこれはお金を入れているわけですから、そこはやはりガバナンスをしっかりと発揮していただかなければいけない。そういうときのために、いざというときのためにしっかりとしたルールを作っておくというのが今回の趣旨であります。  その場合に、それは既存の株主にどういう影響が起きるかということでございますけれども、これは別に国だからどうこうということではないと思います。通常、優先株が普通株に変わった場合には、ダイリューションといいますか、そういった意味での影響は起こるわけでございますから、そうした通常の場合と同様であるというふうに考えればよろしいのではないかと思います。
  52. 円より子

    ○円より子君 既存の株主というのは生命保険会社等が多いと思いますが、そういうところに対しての影響をどのように考えられるか、少しきちんと詰めておかないといけないのではないかと思うんですが、いかがですか。
  53. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) これは、個別の行政の判断を何か一つ行った場合に何が起こるかという御指摘でございますから、今の時点から何かを想定して議論を細かく詰めるというのは、これは正にケース・バイ・ケースでございましょうから、少し難しいのではないかというふうに思います。  ただ、御指摘のような点も踏まえて、これはやはり金融当局としてはしっかりと判断をしなければいけない問題であるというふうに思います。
  54. 円より子

    ○円より子君 先ほどから国有化を目的にはしていないというお言葉でございますけれども、もう既に普通株への転換ということの期限が来ているものもあって、もしこれが実施されますと、普通株の持ち株比率、国の持ち株比率ですね、これは平均で二五%、一部の銀行は五〇%を超えるところもありまして、これは国有化を目的にしていなくても事実上国有化されることになってしまうのではないかということがあると思うんですが、三菱東京フィナンシャル・グループなどは既にもう公的資金を返済なさってはいますけれども、ここの発行した優先株のほとんどは普通株転換できる期限が一、二年後になっていて、今転換できる優先株は少ない。また、その議決権が多いと株主総会での発言力が大きくなって、国の経営への関与というのは大きくなると思うんですが。  昨日の報告と、これまで中間報告で出されて、それが流れておりますものと大分ギャップがあるのかもしれませんが、かなり内閣が改造された後の状況というのは、竹中さんのツー・ビッグ・ツー・フェイルのあの問題だけではありませんが、そういう言葉だけではなくて、いろいろに株式市場に対しても、また銀行にも企業にもいろんな影響を与えてきたと思います。ここではしっかりと、今度の竹中案と言われるような案が、もちろんこれはほかの方々も一体になってお作りになったものだと思いますけれども、これがきちんと機能していくためには、先ほどから申しましたように、国民に見えるような形にしていただきたいと思っているんですね。  それで、まず、国有化の問題はまた後に置きまして、RCCと、今度産業再生機構というものができるそうですが、この役割の違いというものについて質問させていただきたいんですが、この産業再生機構を創設して産業・企業再生を図るということなんですが、なぜ政府が出資する二つの組織が必要なのか。コスト、つまり人員の採用とか組織運営費用というのは財政支出になりますからコストが二倍かさむだけではないかと思うんですが、その財源と、また新たな予算措置が必要なのかどうか、お聞かせください。
  55. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) 円委員指摘の、その問題の大きさにかんがみ、国民に見える形ではっきりとしっかりと説明責任を果たせという点は大変しっかりと受け止めさせていただいて、努力をしたいと思っております。  それで、大変今回の全体のプランの中で大きなウエートを今後占めてくると思われます産業再生機構の話でございます、仮称でございますけれども。これは、繰り返しますように、不良債権処理というのは、基本的には産業の再生と一体でなければいけない。これまで実は、御指摘のようにRCC、整理回収機構においてそういう機能が、比較的最近でありますけれども、しっかりとさせるという動きが出てまいりました。現実問題としまして、RCCには今三つの機能があるのではないかなと思っています。回収と売却と再生ということです。これはどれももちろん重要でございます。しかし、やはり前向きに我々が目指すべきは、これは再生であると。  御指摘の点は、再生は大いに結構だと、しっかりやれと、しかしそれを組織としてどのようにするかというポイントではなかったかと思います。今回、これは塩川大臣を中心に閣僚の間でもいろいろ議論をさせていただいて、RCCというのはやはり整理回収機構、回収から出発していると。組織ができてしまうと、一つのカルチャーのようなものも、風土のようなものも定着しますし、現実には弁護士の方が活躍されて回収は回収でしっかりとおやりになっているわけでございますけれども、やっぱり再生というのは、これは弁護士の仕事の面もありますけれども、やはりもっと前向きのビジネスプランをどのように作れるかという非常にビビッドな、ビジネスカルチャーみたいなものが求められるのではないだろうか。であるならば、やはりそれは、これは一種の戦略的な統合と戦略的な分社化みたいな議論経営のフィールドでもなされますけれども、やはりこれは再生に特化した、今までとは違う風土を持てるようなしっかりとした機構を作る方が良いのではないだろうか。かつこれに、日本経済民間の積極的な参加を、これ人的にも、問題も含めて参加してもらう必要がありますので、そこはやはり別の組織に作る方が戦略的に良いのではないかという結論に達したわけでございます。  しかし、それをどのような組織体に作るかということについては、これはしっかりと制度設計をしなければいけない問題でありますし、またその人的な布陣をどうするかということも、これはもう戦略上大変重要な問題でございますし、各省庁挙げて、具体的にはやはりヘッドクオーターは内閣官房や内閣府に作らなければいけないと思いますけれども、しっかりと制度設計をしていこうということに今なっている段階でございます。
  56. 円より子

    ○円より子君 塩川財務大臣にちょっと今の件でお伺いしたいと思いますが、今、竹中さんもおっしゃったように、塩川財務大臣を中心にこの産業再生機構を作るということをお決めになったというふうなことも聞いておりますけれども、財務省は今赤字債券を発行したり、大変財源がない中で、先ほど私が質問したところをちょっと竹中さんがお答えいただけなかったので、コストも二倍かさむのに、こういう二つも組織が必要なのか、財源はどうなさるんでしょうか。
  57. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) この構想は、実は私だけではなしに、内閣の中で、竹中大臣なんかのところでも検討されてきたことなんですけれども、要するに、今不良資産の整理ができないところの一つのネックは、不良債権がどこへ持っていって処理をしたらいいのかという問題があります。これを直接RCCへ持っていきましたら、RCCは要するに、先ほど竹中大臣の言うように、解体して処理をしてしまうというところが中心でございますから、せっかく生かせるところも一緒に処理してしまうことになるから、その段階までに不良債権銀行から受け取ってそれをどうさばくかと。  一つは、引当金が十分に引き当てされておるものはそのまま簿価で引き取って処分してもいいだろうし、あるいはRCCへ出してもいいだろうし、あるいはまた、その中でこの部分だけ切り離して、先ほどお話がありましたように分社的な機構を作って、そこで優秀な資材というものを生かした、人材もあるし会社の技術もあるだろう、これを生かしてもいいじゃないかと。そういうことをさばいて整理する機構が一つ必要だと。それが再生委員会という、要するに仮称になっておるわけでございますが、そこへ行くと。  そうしますと、再生ということになりますと、やっぱりほっておいたら再生できませんので、それを支援する機関が必要だと。応援する部隊、機関ですね。それは、ずっと終戦直後でしたら復興金融公庫というのがございまして、そこがそれを支援したわけなんです。しかし、現在そんなのございませんが、その伝統を引いておりますのに日本政策投資銀行というのがございますが、そこなんかがその支援対策の中心になったらどうだろうと。そのほかいろんな中小公庫やとかいろいろございますから、そういうようなものも当然動員する必要もあると思いますが。  そうして、生かせるところは全部生かしたら、雇用対策なりあるいは新しい設備投資も起こってきますから、これで日本経済界全体に活性化が出てくるだろうと。今まで破綻債権は、もう要するに生かすことは余り考えていなかったところに行き詰まりがあった。生かすことも考えれば、銀行の方も金融機関の方もさばきやすいということがあります。そしてまた、その行き先がそれをさばいてくれてきちっと整理をしてくれるならば、引当金も十分して、そして簿価で放していくということも可能になってくるんじゃないかと、そういうことを考えたんですが。  これは、うまいこといくかどうかは、これはちょっとなかなか、そのさばく人が、さばく人がなかなか難しいんですよね。これはちょっとそういういろいろありますけれども。しかし、そういう一つのアクションを持たないと前へ進まないやないかと。これが今度の決定になったわけです。
  58. 円より子

    ○円より子君 これは新聞記事からのあれですが、今おっしゃったとおり、さばく人という、ここが重要だと。そのことで企業の生き死にを判断する閻魔大王が必要だなと塩川さんがおっしゃったというふうなことが書いてございますが、確かにそれは大事ですし、今までのRCCでは、竹中さんもおっしゃったとおり、回収、売却、再生というところの、その再生部分がRCCでうまくいくかなという懸念が随分言われておりましたから、再生部分の機能というのを充実させることが絶対に必要だと、それは思います。でも、そうしますと、財源は日本政策投資銀行など政府金融機関がするということで、予算措置は別に財務省としては必要ないのかどうか。  それから、どうも、じゃ売却、回収専門の方がRCCで、再生はこの新たにできる産業再生機構なのか、その辺の役割分担が二つある場合によく分からないと。RCCだけでは難しいということでお作りになった。こういうことがこれから、前向きの再生のところが必要だと、またさばく人も必要だとおっしゃっていますが、役割分担がどうなるのか、ちょっと今まだはっきり私には分からないんですね。  それで例えば、RCCはこれまでに健全行からの債権買取りを進めていますが、この分はどうするのかといったことや、また──まあ、そこまでにしましょうか。  まず、その両者の役割に差があるのかどうか、そこをしっかり明確にしていただきたいと思います。予算措置のことも。
  59. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) もちろん、おっしゃるとおり十分に注意してやっていかなけりゃいかぬと。非常にそこが難しいところでございますが、十分な配慮を持ってやっていきたい。
  60. 円より子

    ○円より子君 ということは、まだ、新たには作るけれども、どういう役割分担でさせるかということはこれから詰めるということなんですね。
  61. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) それは、最初申しましたように、再生可能な資産を生かすということ、あるいは再生可能な、分社をして企業として再生させていくという方法もあるだろう、いろいろ方法あります。  こういうことを、私は一つのイメージ持っておりますのは、かつて、円さんは御存じだと思うが、早川さんておられましたですね、再生屋の優秀な方、本当に公正なさばきをされた。ああいう方に掛かって随分と企業再生したことありますね。昭和五十一年、二年、三年ごろだったと思うんですね。ちょうど佐世保ドックやとか、いや、函館ドックやとか、それから何かセメント会社とかいろいろのございましたですね。石油ショックの後やりましたね。ああいう経験を経てきておりますので、ああいうさばきをしてくれる人があれば、これは非常に有効に働くんだがなと思うております。
  62. 円より子

    ○円より子君 そうしますと、RCCは今までどおりのところで、できる限り、同じことだけれども再生部分を強調した新機構の方に力を入れてやってもらうという、そういうふうなことなんですね。両方が機能をうまく進めていけばいいですけれども、同じような形にならないよう祈りますけれども。  民間銀行自身も、行内に外部コンサルティングとの協力もしながら企業再建のチームを作っておりますよね。この銀行内部で行うのと比べてどのようなメリットがあるんでしょうか。
  63. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) 再建を行うに当たって、直接銀行がいわゆる債権債務関係を持っているということ、これが非常に一体化してやる場合には良い面もありますけれども、非常に難しいプロジェクト等々でその採算性を客観的に判断するという場合には恐らく独立した専門家の機関がよいだろうと。そういうところでお互いに多分補完し合っていかなければいけないということなんではないでしょうか。
  64. 円より子

    ○円より子君 そうしますと、先ほど申しましたように、RCCは破綻企業の回収、そして産業再生機構再生の司令塔になると、追加融資とか再生計画の監視とかですね。そういうふうになるならば、今おっしゃったように早川さんとかそういった様々な、何というんでしょうね、再生させる企業と破綻させる企業の選別がきちんとできるような人が必要になるんですが、人というよりも、これは再生委員会のような形でそういったものを創設をなさるんですか。
  65. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) どういうふうに答えたらいいのか、私もまだちょっとしっかりした答えができないと思うんですけれども、要するに、銀行がその不良債権をどこかへ委託してそこで整理をする、要するにバランスをオフする必要がありますわね、受けてくれるところがなければならぬ。もう完全に破綻した資産はそのままRCCへ送ってもいいでしょうけれども、企業全体としてこれを整理する場合はどこかでさばいてもらわにゃいかぬと。それが再生委員会ということなんです。  ですから、RCCとは別の機能を持ったというか、別の機構として作られるものであって、その再生委員会の中から、これはもう破綻資産だからということでRCCへ送られるものもあれば、あるいはまた、それは再生、新しく生き返っていくための資産とするということ、いろいろあると思っております。  ただ、この再生するときの資金をどこがどう負担するのかと──それはもうええんやな、それはいいですね。
  66. 円より子

    ○円より子君 先ほどから、その両者の振り分けがすごく難しいと思うんですよね、決定が。で、お一人の名前挙げられましたけれども、例えば民間企業経営者とかOBの場合は、出身企業と振り分け対象企業に取引関係がある場合がありますから不適切だと思うんですね。経営コンサルティングの会社等も同様だと思います。  そうすると、学者や公認会計士等の専門職がもちろん加わる必要があるでしょうけれども、企業経営のプロではありませんし、海外から呼んでくるのかとか、結構このさばき、大変だとおっしゃいますけれども、それはだれでも分かることで、そこに人を得なければ物事というのは進まないわけですよね。どこからお呼びになって、どういう人を想定なさっているんですか。
  67. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) 私らでなかなか難しいところで、これは内閣の総力を挙げて人選をしなきゃやっぱりいけないと思うんです。といいますのは、各省ともやっぱりその人だったらいいなという人を見いだすのが非常に難しいと思うんです。  けれども、一つ条件として考えられることは、やっぱり私は、実業界のことを非常によく知っている人、企業の運営ということに対して成功して、そしてまた企業経営を実際自分が苦労して担当してきた人、こういう人のできればOBがいいわけですね。そして同時に、やっぱり法律的な知識というものを相当持っていなければこれはなかなか、商法、民法、いろんなもの難しいと思うんです。そういう知識を持っておるような人、そういう人を選択するというのはなかなか難しい。  国会議員であるとか政治家、政治家であるとかあるいは銀行の出身、あるいは、役所の出身もちょっとこれは具合悪いな、これは。と思うんですが、そういうようなので、やっぱり実業界で苦労をした人、そういう人を人選したいと、こう思うておるんですが、なかなかそれに該当したような、難しいです。正にこの人選が成功するかしないかのかぎだと思うておるんです。  そして、それは私は多くしたら駄目だと、少人数でやったらいいんではないかと。早川さんがやっておられたとき三人でしたですね。だから、そんな程度で私はいいんじゃないかなと思うたりもするんですけれども、これは内閣全体で相談しなけりゃ決められるものじゃございません。
  68. 円より子

    ○円より子君 しっかりと実務ができる、ビジネスの分かる方がやはり必要なのかなというふうに思っておりますが、余り突っ込んでもあれですが、やはり先ほど申しましたように、人がいなければ、もうこういうものは何でもそうですが、この産業再生機構に限らず、物事を進めるときに本当、いろんな両論ありますよね。そのときに、どちらであれ、だれが本当に人の信頼を得て進めていくかという、人なんですよね。是非そこできちんとしないと、絵にかいたもちになると思います。  さて、もう一つ企業の再建計画の成否を判断する一つ基準としまして、私的整理ガイドラインというのがもう昨年九月に策定されておりますけれども、今度、産業再生適用の認定基準、またこれも経済産業省より出されているわけです。  これらとの新たにもし認定基準を作った場合の整合性等はどうなるんでしょうか。
  69. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) これは、私的整理のガイドラインと今回御議論が出てきました早期事業再生ガイドラインというのは、これはガイドラインとは付いておりますけれども、もう根本的に性格の違うものになろうかと思います。  私的整理の方は、正に手続をしっかりと決めて、それにのっとって手続をやってくださいよというガイドラインでありますけれども、早期事業再生ガイドラインは、正に公的なセクターが一つの指針としてこれは産業全体のバランスを考えながらその方向を示すものでありますので、具体的にこれをどのようなものにしていけるかということは、これは政策上は大変難しい問題でありますので、今、経済産業省、国土交通省等々ともいろいろと御相談を始めているところであります。
  70. 円より子

    ○円より子君 この私的整理ガイドラインですが、これは利用者が大変少ないという。その背景に中小企業にとってガイドラインの求める基準が厳し過ぎるという指摘がございますが、中小企業向けの別途指針はお作りになるんでしょうか。  そして、こうした厳し過ぎるというときに、ただ、企業再生基準というのは大企業とはやっぱり違って、中小企業の場合は個別対応に結局はならざるを得ないのではないかと思うんですが、こうした中小企業、個別対応が本来は必要な中小企業も含めて、国が企業の再建計画の是非を問うということは可能なんでしょうか。
  71. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) 再生という作業そのものが非常に膨大なプロセスを経る作業になるんだと思います。であるからこそ、内閣官房のようなところにヘッドクオーターを作って、今何をやらなきゃいけないかということをしっかりと整理しようというふうに決めた段階なわけです。  御指摘の私的整理に関するガイドラインというのは、これは全銀協の事務局にある研究会によって十三年九月に発表されたものだというふうに聞いております。今、この研究会では更にそういったものの見直しを行っている。これは、銀行の方でやっていただくことは当然あるわけでありますし、企業の方でやっていただくことはあるわけですし、そういうこと全体を俯瞰するヘッドクオーターのようなものを内閣を挙げて作っていく必要があると思っています。
  72. 円より子

    ○円より子君 先ほども中小企業への融資残高とか融資のあれを聞きましたけれども、一応銀行貸出しの六割以上が中小企業向けですし、不良債権にも多くの中小企業が含まれております。そうした現状を考えますと、すべてを銀行から切り離してRCCや産業再生機構にゆだねるという、いわゆる新旧勘定分離論というのは無理があるかなと思うんですが、いかがでしょうか。
  73. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) その新旧勘定という言葉がいろんな形でちょっと使われているように思うんですが、今の御指摘は、銀行から融資を受けている中小企業の良い部分と悪い部分を分けるか、これはしかし銀行の正に経営の判断で、その企業をどのように認定しているかという問題なのではないかと思います。  これはもう銀行の判断で、これはしっかりとこのままでやっていこうと思ったらそういう必要はないわけでありますから、非常に債権そのものが不良化して、これを再生ができるかどうか、回収できるかどうかという段階で御指摘のような問題が大きな判断として出てくるのだと思いますが、その判断の中で、先ほどお話ありましたように再生委員会再生の機構等々を今作っていこうというふうに考えているわけです。
  74. 円より子

    ○円より子君 先ほど塩川大臣が簿価とかなんとか、買取り価格のこともちらっとおっしゃっていたように思うんですけれども、銀行不良債権をRCCやまたこの新しい産業再生機構に対して売却するときには、難しいということで、銀行自身がするのか、それとも、させるということであれば、破綻懸念先だけじゃなくて要管理や要注意先債権も含むその部分を売却させるということになるんでしょうか。どういう形になるのか、その買取り価格をもう一度教えていただけませんでしょうか。
  75. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) 私は、この不良債権処理が進むか進まぬかの一番のキーポイントは、要するに金融機関が、それぞれの管理ランクがございますね、破綻先だとか注意とか。破綻ランクに応じた貸倒引当金を正確にきちっと積んでいるかどうかだと思うんです。ある程度きちっとそれをやっておれば、簿価であれ時価であれ、相当近いところになっておるはずなんですから、ですから整理はしやすいと思っておるんです。  そうしますと、そこまできちっとやったら、銀行はこれは一回再生機構に相談して、再生委員会で判断してもらおうということにもなるだろうし、あるいはまた銀行自身でその融資企業に相談して、これだけは切り離してこれだけは処分したらどうやという相談をして、生かす方法を銀行自身でやっていけるだろうと思うんですが、いずれにしても、銀行がぐじゅぐじゅぐじゅぐじゅ充当額引当金を十分していないところ、そこに問題がある。これを今回のいわゆる加速政策不良債権処理加速策でここを重点にきちっとやっていくということ、その上においていろんな自己資本の問題だとかいろんなものが発生してくるけれども、原点は、不良債権に対する引当金がどこまで積まれておるか、これにあると思っております。
  76. 円より子

    ○円より子君 今おっしゃった件も含めて、企業再生というものをきちんと支援していくためには、機構ができただけではなくて、税制面での支援などきちんとした協力をしていかなければいけないと思うんですが、もう財務大臣がかなり企業再生に積極的でいらっしゃいますし、この機構にもあれですから、受皿体制といいますか、受皿があってもなおかつサポートする仕組みがなければ、実際の事業分割や債務処理というのは進展しません。塩漬けになるリスクが多いと思います。  その税制面での協力等はどのようにお考えなんでしょうか。
  77. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) 税制面で、譲渡していく場合のその場合の税制の面もございますし、それからあるいは分社をしていく場合の譲渡の関係、会社分社もある。いろいろございますけれども、できるだけ実態に即した税の運用をしたいと思っておりまして、税制と、それから問題は、一番私は心配いたしますのは、税制でいろいろな決めてあることが、税の執行機関ですね、国税庁、執行機関が解釈が違っておった場合は非常にもう残念だと思って、そこらはきちっとした体制をもって臨んでいきたいと思っております。
  78. 円より子

    ○円より子君 さて、国有化ありきではないとおっしゃっていて、少しその辺の国有化についての御答弁余りなさりたくないみたいな気もするんですが、そうではないですか。  あおぞら銀行と新生銀行が国有化され、そして今民間銀行になっておりますが、国有化後の、どういうふうに本当にそれが、銀行がきちんと健全になっていって、何も一時国有化にならなければ一番望ましいんですけれども、もし加速策銀行の一時国有化になっていくとしたら、その後のビジョンというのが余り見えないものですから、ちょっと国民にきちんとこの辺のことを明らかにしたいと思うんですね。  そこで、一九八八年の十月に一時国有化されて二〇〇〇年三月に民間銀行として再スタートした新生銀行を例に取りまして、その現状について簡単に見ていきたいと思います。  御存じのように、旧日本長期信用銀行が二〇〇〇年三月に、アメリカのリップルウッド・ホールディングスを中心に欧米の金融機関等の出資を受けて組織化されたニュー・LTCB・パートナーズへ一括譲渡されて、そして民間銀行として再スタートしたわけで、これが二〇〇〇年六月に新生銀行という、名前を変更したわけですね。この今新生銀行不良債権の状況はどうなっておりますでしょうか。
  79. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) 新生銀行、十四年三月期の数字を申し上げます。  総資産が八兆三千六百六十六億円でございますが、不良債権、いわゆるリスク管理債権は一兆四百四十一億円あります。不良債権比率で見ますと二〇・八%ということになります。
  80. 円より子

    ○円より子君 主要行の平均の不良債権比率幾らでしょう。
  81. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) 先ほどと同じリスク管理債権のベースでございますけれども、九・二%です。
  82. 円より子

    ○円より子君 なぜ新生銀行はこんなに高いのかということがありますけれども、新生銀行は開業当時から三年以内の上場ということを目標にしております。そのせいで、この二〇・八%、主要行平均が九・二%ですから二倍以上あるわけですね。ですから、とてもこんなことでは上場できないということで不良債権処理を今急いでおりまして、比率を上場までの間に三%か又は五%ぐらいにしたいという方針を出しております。  さてここで、瑕疵担保条項に基づく譲渡解除権の行使期限といいますのが来年二月末に迫っている、そういうことに触れなければいけないと思うんですが、この条項によって新生銀行は、自らが抱える不良債権がこの条項の譲渡解除権の条件を満たして行使できれば、預金保険機構に実質簿価で買い戻してもらうことができるわけですよね。この瑕疵担保条項というのは、つまり新生銀行には全然損失がないということになるわけで。  ところが、今のように、貸出金残高が五兆百二十一億七千四百万ですか、ちょっと時期によって差があるかもしれませんが、大体今この程度の貸出金残高に対して、リスク管理債権が今、竹中さんがおっしゃったように、一兆四百四十一億ですか、ということがあると。不良債権比率二〇・八%ということは、これをそのまま抱えて来年の二月を過ぎますと、それ以降の不良債権処理に伴って発生する損失というのは丸々新生銀行の自己負担になるわけですよね。当然、そういう損失が出ないように必死で今新生銀行はこの譲渡解除権の行使を加速させているというのが現状で、ちょっと企業名は申し上げませんが、かなり全国津々浦々のあれを必死で加速させてやっているという状況にございまして、こういう状況の中で、これまでに新生銀行が瑕疵担保条項に基づいて債権譲渡を解除した額と、預金保険機構から受け取った額を教えてください。
  83. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) 新生銀行、あおぞら銀行からの解除権の行使に対して預保が同意した件数、債権額等でございますけれども、預金保険機構が瑕疵担保条項に基づいて新生、あおぞら両行から買い取った債権は、八月末現在の数字、新生銀行については二百四件で七千九百九十五億円です。債権額が今申し上げた七千九百九十五億円、支払額が五千百八十六億円です。あおぞら銀行については四十九件、債権額が千四百五十七億円、支払額は千六十八億円。両行を合計しますと、これ二百五十三件で、債権額九千四百五十二億円、支払額六千二百五十四億円ということになっております。
  84. 円より子

    ○円より子君 このほかに、新生銀行が譲渡解除を請求しているのに預金保険機構が拒否しているものがかなりの額あると聞いております。何千億という単位なんですね。これは、まだ破綻していない経営不振企業向けの債権の評価が両者で分かれるわけです。預金保険機構の方は当然、安易な解除請求の承認をしますと国民負担の増大につながりますから当然拒否しているという、そういう状況になるんですが、これ、最終的に来年の二月までにもしこれが請求どおりになればまた国民負担につながる問題なんですが、既にこの両行に対してはたしか公的資金がもう六兆六千億出ていると思います。そういう状況の中でまた預金保険機構が支払をしていくということになりますと、大変最終的に国民負担につながると思いますが、あとどの程度この二月末までに新生銀行の預金保険機構が支払う額というのはあるんでしょうか。
  85. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) いわゆる旧長銀の譲渡資産のうち、長銀の譲渡契約書に定める瑕疵担保条項に基づいては、瑕疵がある及び二割減価の要件が満たされたものについては、新生銀行から解除権が行使される可能性はあると思います。  しかし、今後どのような資産がどの程度出てくるか、そのうちこの新生銀行がどの程度の債権について譲渡権を行使するかという点については、これは銀行から見ると経営戦略上の問題でもありまして、現時点ではまあ私としてはちょっと予測のしようがないというのが現状でございます。
  86. 円より子

    ○円より子君 与信について、この新生銀行の、お伺いしたいんですが、今、新生銀行は二〇〇二年三期の税引き後の当初利益は六百七億円で、前年比三三・五%の減益というふうに聞いておりますが、ただ、前年度に、同行譲渡時の契約に定められた、先ほど言いました預金保険機構への株式売却に伴う五百億円を超える売却益が前年度あったせいで減益になっていますが、これを除きますと、大幅な増益だった以上に、経営健全化計画の年度目標、これ三百七十八億なんですが、これを六〇・七%も上回っているんですね。  こういう状況の中で、与信費用が一体どうなっているのかということをお聞きしたいんですが。
  87. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) 不良債権処理損失額ということで、二十八億円であります。
  88. 円より子

    ○円より子君 これは、主要行の与信費用と比べますとパーセントでどういう状況になりますか。高いものなのか、低いものなのか。
  89. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) ちょっと正確に数字が集計できないのでありますが、十四年三月期、主要行の合計、ざっとでありますけれども、七兆円ぐらいであります。
  90. 円より子

    ○円より子君 時間が迫ってきましたのでこちらから申し上げますと、金額ではなくて、主要行平均の与信費用の比率は二・七一%なんです。新生銀行はと申しますと、〇・〇五%なんです。これはどういうふうに解釈すればよろしいんでしょう。
  91. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) これは、新生銀行は御承知のように一度国有化されて、言わば、何といいますか、ある状況でセツルメントが終わった段階の後で出発、正に新しく生まれている状況でありますから、これまでの不良債権問題と戦ってきた主要行とでは、これは当然初期条件が、言わば初期条件が違ったような状況になっているということなのだと思います。
  92. 円より子

    ○円より子君 私は、大変大幅な増益だったにもかかわらずこんなに与信比率が低いということは、銀行としてまだ信用仲介機能がきちんと役割を果たしていないということだと思うんですよね。  そうしますと、何が言いたいかと申しますと、不良債権処理を進めてもし公的資金を投入したり、それから普通株への転換等で一時国有化した後、その後、今はもうハゲタカファンドにしても外資にしても買うようなところはないとも言われてはおりますが、でもその後の民間になったときに本来の機能を果たせないんだったら、せっかくいい部分再生したからといって、本当の国民のためになっているかという、そういうことを言いたいわけで、是非そういうことにならないようにしなければいけない、これが一つの教訓ではないかと思いますし、もう一つは、また何かあったときに瑕疵担保条項というのをお付けになるのかどうか、そのことについてお聞きしたいと思います。
  93. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) 新生銀行の設立、その株式の譲渡においては、限られた時間の中でいろいろ議論がなされてこういう結果になったというふうに聞いております。資産の内容を洗い出して金額を確定するというのは大変難しいことであって、その意味では一種の条件を付けた取引になったというふうに理解をしております。したがって、今後そういう問題が出てくるかどうか、これはいろんな資産の状況、時間の制約、いろんな形で考えていただかなければいけない問題であろうかというふうに思います。  いずれにしても、いろんな問題は現実に起こり得るわけでありますので、いろんな可能性を考えて適宜適切に対応していかなければいけないと思います。
  94. 円より子

    ○円より子君 もう時間が余りありませんが、不良債権処理についてはこのぐらいにいたしまして、大事なまたデフレ対策について少しお話をしたいと思うんですけれども、当然、例えば時系列で、もしかしたらデフレ対策、そして不良債権処理財政規律、そういう感じかなというぐらいには思っているんですが、どちらが先かということ、いろいろ意見が分かれるかと思いますが、このデフレ対策等についてなんですが、実は、小泉さん、改革改革とおっしゃって、国民のためにどうなるのかというところで見ますと、国民の資産といいますか国富、株式の時価総額だけでも小泉内閣になってから百三十兆以上が失われているという、こういう状況ですね。もちろん、戦後からずっと、株と土地の総額で実に日本人の資産は千三百兆も失われているという計算もございますし、私も予算委員会で表を使って、いかに地価が下落し、そして株価が下落し、時価総額も土地資産も失われたかということを皆様にお見せしたこともございます。  私たちがなぜこうしていろいろな、政府と日銀と国民もみんな一体となってこの経済を何とかしなきゃいけないかというのは、やはり命と財産を守ることに尽きると思うんですね。マーケットの論理よりも命の論理の方が大事なんじゃないかと思うところがございますが、まず塩川大臣にお聞きしたいんですが、資産デフレ、これを食い止めるにはどうするか。難しい問題でありますが、それから就労支援がやはり必要だと思います。もう中小企業対策等は先ほども少しお話ししましたので、この二つに絞ってちょっと御意見をお伺いしたいと思います。
  95. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) 資産デフレを食い止めるということは、これは一番大事なのは、やっぱり私は物価の安定ですね。消費者物価がどんどん下がっていっておるというこの状態を早急に、少なくともプラス・マイナス零の線に戻さなきゃいけない、これが根本の対策だと思っております。  それと同時に、並行してやっぱり内需の、今、輸出はおかげで伸びておりますけれども、内需をもう少し活発に増やしていく必要があると思っておりまして、この内需のいわゆる増加という、拡大ということになればすぐに補正予算ということに結び付いてくるんですけれども、そういう考え方や発想ではなくて、やっぱり経済界全体が内需を振興する方向をやっぱりしてもらいたい。  私は、その一つは、海外へ流出していく設備投資をできるだけ国内でやってもらえぬだろうかと。最近また非常に激しくなってまいりましたので、これを是非ひとつ産業界の協力もお願いしたいと思う。  それから、もう一つは規制緩和、これを積極的にやっていきたいと思っておりまして、現在、各自治体が中心となって経済特区の申請が出ております。これに対しまして、小泉総理から大号令が出まして、もう何でもいいから規制外せとこう言っておりまして、大分規制も緩めてまいりました。けれども、それをどうして実行するかという、市町村が実行するかという段階でございまして、そのための財政的な処置ということも必要になってくるだろうと思っておりまして、それは総務省などと十分に相談して進めていきたいと思っております。  そういうことを総合的にやることによってデフレ対策に有効な結果が出てくると思っております。
  96. 円より子

    ○円より子君 就労支援についてもお伺いしたいと思っておりますが、それこそ今のような大変なときというのは、財政も限られておりますから、すべてにばらまくことはもちろんできないと思いますね。IT、ITと随分騒がれまして、確かに、テレワーク社会の実現ということは、分権にもつながりますし、私は大変重要だと思っておりますが、なかなか人の発想というのが変わらなくて、そのITの予算を付けても箱物を造ってしまっているとか、そういうことが多いんですね。私は、今はもう本当に米百俵の精神というのをきちんと生かしていただいて、最初に小泉さんがおっしゃったように。どうもおっしゃったこととなさっていることが違うような気がしてならないと。そうならないように、きちんと人に対する投資というものをやはりしていくべきだと思うんです。もちろん、教育もそうですし。  そうすると、例えば、戦後すぐのときも、男の人たちはもう本当、腑抜けになったような感じになっていたときに、子供を抱えたお母さんが本当に頑張って仕事をしてきたというところがありますけれども、今、マネー敗戦とかいろいろ言われている、外見にはなかなか豊かに見えても大変な状況の中に、女性たちへの就労支援ということも是非考えていただきたいと思っているんですが。  塩川大臣はこの前に、JT法の改正がありましたときに、様々な役所のたばこ売店ですか、たばこを売っているお店に母子家庭のお母さんたちを優先的に就業させているという話を初めて聞かれて、ああ、それはいいことだねとおっしゃっていたのを財金委員会で聞いておりますけれども、終戦後すぐですとああいう仕事もよかったんですが、今これからはやはり新しい仕事を、子育てをしながら働いている女性たちにも、在宅ででもやってもらえるとか。  それから、実は仕事を探しているときには保育園には入れない。そうすると、例えば離婚したり夫に死別したりなんていう人は子供を抱えながら仕事探しもできないし、そして、今のような不況ですと、子供がいるというだけで、資格があり能力があってもなかなか再就職できないというような現状の中で、やはり母親の生活と精神が安定しませんと、これからの将来を担う子供たちへも大変な影響があります。  ですから、例えば離別母子家庭ですと、今、生活保護基準以下で暮らしている人が半分もいるんです。ところが、みんな自活したい、生活保護を受けるような身にはなりたくないということで必死で、基準以下の収入しかないのに頑張って働こうとしているし、働いております。でも仕事がなくて、平日以外に夜中も、そして土日も働いているような状況で、子供たちへの影響が計り知れない。是非、今のような不況の大変なときだからこそ、そういうところに重点的に就労支援をしていくとか、そういったことも考えていいのではないか。  先ほどから言いますが、箱物よりはそういうものに、また箱物にしても、例えば都市部の電柱を全部地下に埋めるとか、住宅事情、住宅環境をよくするとか、そういうものに是非デフレ対策の支援をしていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。
  97. 小林興起

    ○副大臣(小林興起君) 御承知のとおり、政府内閣として男女共同参画型社会ということについてどんどん構想も進めておりますし、その中に、ちょうど日本は少子高齢化、すなわち労働力が不足するような形になっていく中に一層女性の方々に職場進出をしていただかなければ経済はもたないという状況にもなってきているわけでありまして、おっしゃったとおり女性が、しかしさればといって女性が働きやすい環境を作っていくことが必要でありますから、そういうところに重点的な予算を付けるような形で多くの女性に職場に進出していただいて、結果として少子化対策にも対応できるという形を作っていくことが経済の発展のために必要だと、そんなふうに考えております。
  98. 円より子

    ○円より子君 こういうときですから、小さい子供を抱えるお母さんたちに元気を与えていく、そういう人たちに本当に就労保障していく、ただ支援というんじゃない、本当に保障をしていく、そういうことが多分私は今、しばらくの間この厳しい状況というのは急には変わらない、そういう中でずっと、日本人って目標が見えて右肩上がりのときはすごく勤勉で頑張るんですが、見えないときにじっと我慢しながらって、なかなか日本人だけじゃなくて人は難しいですが、そういうときにこそ、子供を抱えて頑張っている人たちにきちんとした支援をすることが突破口になって日本の元気が出てくる、元気な社会を再生できると私は思っておりますので、是非とも、不良債権処理にしても何にしても、日本経団連の奥田さんでしたか、鬼手仏心という言葉をおっしゃっておりました。メスを振るうときにはやはり、そうした人々を助けるという、そういう気持ちがなければ物事は進みません。是非ともそういうことを肝に銘じて果敢に断行していっていただきたいと思っております。  今日はありがとうございました。
  99. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 質問通告を申し上げた順番は金融、それから財政ということでしたけれども、先に速水総裁と、それから塩川大臣にお伺いをしたいと思います。  デフレ対策ですか、昨夜決定されたのは。今日マーケットがどう反応するか大変興味深いわけですけれども、どうも今のところ百円ぐらい下がっている、日経二二五は百円ぐらい下がっているようでありまして、必ずしもデフレ対策と受け止められていないという気がするんですね。私もそう思うんですよ。デフレ促進策とまでは、与党の枠の中での質問ですからあえて申し上げませんけれども、どうも日銀が果敢な割には、そのほかの政策というのはむしろデフレを当面は促進をしかねないというふうに私は感じております。  そこで、先に日銀総裁にお伺いいたしますが、より一層の金融緩和策、何でも大いにおやりになっていただきたいというふうに思います。流動性のわなとか、ゼロ金利の下ではそういう金融政策が非常に効かなくなっている、そういう見方も有力にあるわけですから、直接的な効果がどれだけあるか私も疑問を持っておりますけれども、しかし何でもやろうというその心意気は私は大いに評価していいと思っております。  その関連でお伺いいたしますけれども、日銀が今までの、タブーと言うほどでもないでしょうけれども、考え方を百八十度変えて株を直接購入なさるという決断をされているようであります。まだ実績がないということでありますが、一点だけ、その日銀が直接買おうという決意をなすった経過と、もうちょっと安全策を考えれば、せっかく前国会で株式買取機構なるものを、いろいろ意見はありましたけれども作ったわけですから、そこが政府保証債でも発行させて、あるいは日銀が特別融資でもなすってそこで買うという間接的な形を取れば、日銀の中立性とかいう余分な議論に至らないで済むんじゃないかと私なんかは御決意を聞いた瞬間にそう思ったんですけれども、そのことも含めて、なぜ日銀が直接買うという決意をされたか、ちょっと御所見を伺いたいと思います。
  100. 速水優

    参考人速水優君) 私どもが銀行保有株を買おうということを決断しましたのは、やはり銀行の最近の株保有というのが、ティア1をはるかに上回る株保有を持っているわけですね。三月決算でも七、八兆、あるいはちょっと十兆近いティア1を上回る株を持っている。それはかつては、銀行の株保有というのは、持ち合い制度で戦後の日本経済を支えてきた面があったと思うんですね、非常に強かったと思うんですけれども。  しかし、今それだけ株を持っておりますと、決算時の時価評価に変わってきましたし、それからその株自体が、御承知のように日本だけの上がり下がりでなくて海外の要因で株が世界的に動く、かなり大きく動いていると。日本も随分、アメリカを始めとして欧州、アジア、いずれも相当の下がり方をしているわけですね。  株が下がってくれば、従来含み益で、決算時にその含み益を使って不良貸出しの償却などはやってこれたわけです。ところが、昨年の九月以降ずっと、時価評価になり、含み損が出てきているんですね。含み損が出てくると、それが自己資本を圧迫するわけですね。その損を吐き出さなきゃなりませんから、決算時に。そうでなくても、下がることが心配されている自己資本というのが昨年の九月あたりから下がってきているんです。今後も更に株が下がれば、これはもっと下がるんですね。  ですから、ティア1を上回って持っている株、今大手十一行はみんなそうです。全部で三月で十兆近かった。今は恐らく、株が下がっていますから、今年の九月末現在まだ数字出ておりませんけれども、六、七兆ぐらいはティア1を上回って持っていると思うんです。そういう株は、やっぱり今後も株が下がるごとにおどおどしなければならないし、おどおどしてくれば、今我々が願っている銀行の信用仲介機能というのは、危ないところへは貸さないだろうし、それからなるたけ貸出しは慎重にやって、むしろ国債でも買っておこうかというようなふうになっていってしまっているんですね。  それを前向きに、銀行本来の貸出し機能、ここのところずっと三、四%前年比貸出しは減っているんです。あれだけ金が出ているのに、先ほど円先生もおっしゃって、私どもの方で前年比二〇%ぐらいのマネタリーベースで金を出して、それがマネーサプライになって三%から四%ぐらいの増加です。それは預金プラスCDですね。それを貸出しにするのはずっと三%から四%の前年比マイナスなんですね。これではやっぱり設備投資の方の企業の需要が満たされているのか。確かに問題は、需要が弱いということはあると思うんです。  ですけれども、その弱い需要をむしろ守り立てていかなきゃならない貸出しがマイナスになっているということは、これはやっぱりほうっておけないという感じがいたしますし、銀行自身も海外、内外からの信認がそういったことを背景にして厚くないということがあるわけで、そこでやっぱり私どもが一つの道を付けて、ティア1を上回って株を持っているところにはここ一年で、二兆円ぐらいの限度を考えておりますけれども、時価で買いますよと。買った株は私どもがしばらく五年ぐらいは持って、それから先、必要に応じて売っていくと。今ここで銀行に売れといっても損が出るだけで、ますます損が増えると同時に、株が下がっていくんですね。それを私どもが今時価で買いますよということを決めたわけで、御認可も得まして、今週中ぐらいには指定の信託銀行が決まると思います。その信託銀行と話合いを付けて、年内には買入れが始まるというふうに思っております。
  101. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 御答弁がちょっと長いものですから少し急いで申し上げますが、私は、結論としては日銀総裁の決断というのは私は評価をしているんです。  中立の中央銀行が株を買うのはどうかという議論はたくさんありますけれども、今おっしゃった点は当然そうだと思いますし、更に踏み込んで考えて私は、その株価というものに振り回される経済というものをやっぱりまともに見据えて日銀が行動されるということが、先例がなくても私はこれから必要だというふうに思っているものですから、あえて今日そういう質問を申し上げたんですね。  釈迦に説法ではありますけれども、実物経済で関連で動いているお金が四十兆弱と言われております。四十兆ドル弱ですね。それに対して、いわゆる投機的な行動も含めて世界を動き回っている資金量というのは三百兆ドルと言われている。この三百兆ドルに実は世界が振り回されている、世界経済が振り回されているという実態があります。  あのアジアの通貨危機は記憶に新しいところですけれども、我々が今苦しんでいるバブルの後始末、バブルの発生そのものがある意味ではマネーゲームの所産でもあるというふうに思いますし、現在銀行が直面している問題というのは、後で申し上げますけれども、御質問申し上げますけれども、むしろその不良債権からくる問題よりも、株式保有からくる問題である、あるいは債券保有からくる問題である。ですから、今銀行が二十兆とも三十兆とも言われている巨額の株式保有をしていなければ、また株価というものが必ずしも実体経済を反映しないで動き回らなければ、その銀行経営の不安というのはそれほど語られなくても今済むはずだと思うわけです。  ですから私は、もちろん銀行保有株に着目されて総裁が決断されたことではありますけれども、その経済の基本的な部分にかかわる言わば基本財みたいなものですね、為替がそうです。為替は、日銀は管理されている。世界的に不十分であっても管理体制ができ上がっております。しかし株は野放しです。それからもう一つ土地も野放しであります。ですから私は、そういう基本財についてやはり、経済全体を野放しにするのならば別でありますけれども、管理しようというふうにお考えであれば、やはりこの価格について中央銀行が何らかの対応をしていくということは、私はむしろもっと踏み込んでいってもいいんではないか、そういうふうにも考えておりますので、今回の決断を評価をさせていただくということを申し上げたいと思うわけであります。これは御答弁要りません。  それから、今のデフレは二面ありますね。正に株価の下落、土地の下落、まあ資産デフレであります。それともう一つは、やはり生産財におけるデフレ、これは需要と供給の関係で決まるわけですから、私はやはりこのデフレ対策、これはもう景気対策と裏腹でありますけれども、総需要政策というのはどうしてもこの生産財のデフレという部分が大きくあるんですから、資産デフレだけではないわけでありますから、どうしても考えていかなければならない。それは構造改革だけで済む話ではないというふうに思いますので、塩川大臣に、今後の補正も含めて、三十兆という枠にとらわれないお考えに頭を切り替えていただきたいということを申し上げて、御答弁をちょうだいしたいと思います。
  102. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) 私たちは、何でも最初に三十兆円ありきという、そういう考えで予算を編成し財政の運営をしておるというものではございませんで、これは総理も言っていますように一つの、財政の秩序をきちっと守るための一つの要するに支柱として考えておることでございまして、しかしながら、よく財政の運営の実態を見ますと、相当やはりまだ財政改革、いわゆる、私たち四つの改革を今言っておる中で歳出改革ということをあえて言っておりますが、これはまだまだやっていく必要があると思っております。その場合の精神的なといいましょうか、根拠になるものがやっぱり国債の発行を極力抑えると、何も三十兆じゃいいと言っていませんが、極力抑えるということがやっぱり基本になってくると思っております。  けれども、経済は時々刻々動いていくことでございますし、どういう事態が起こってくるかも分からぬ。私も、今度の不良債権処理を加速することによって、大きい変動が起こってくるようなことも思っております。また、起こってこなけりゃいかぬわけで、そうした場合、新しい方向に再生への力が付いてきた場合は、やっぱりそんなときに思い切ったことをやらないかぬし、また、危険な状態になればセーフティーネットの面においてもやっていかなきゃならぬと思って、それは思っております。けれども、今、それじゃこの今の時点でどういうふうな金額をどうするのかという答えはちょっと申し上げにくいということでございますので、御了承いただきたい。
  103. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 私は、前回の質疑のときに日本の税構造が縮こまり過ぎていると。これを幾ら景気対策経済を正常な軌道に乗せても、この財政収支のアンバランスというのは解消できないと。これはもう、税構造を変えなきゃいけない。消費税を含めて、所得税を含めて、そういうことをここで正確に申し上げたつもりなんです。  しかし、政策は同時に打てません。やはり私は、今、解散から解散まで衆議院の任期四年というのをフルに使った四年計画の実行をせよということを提案しておりますけれども、やはり景気をというか経済を軌道に乗せて、そしてきちんと税構造の改革に着手する、そういう段階的、計画的、そして一定の期間を切った改革ということをお考えになっていただきたいと思うわけでありまして、その前提に、今この非常事態ですから、三十兆枠に余りこだわる意味はないということを、そして総需要政策というのは決して否定されてはいないわけですから、これは必要だということをあえて申し上げておきます。答弁は要りません。  それから、竹中大臣に幾つかお伺いをしたいと思います。時間があとわずかしかありませんから、早口で御答弁の方もよろしくお願いいたします。  私は、先ほど申し上げましたように、不良債権処理問題というのは既に新しい段階に入っていると思っております。つまり、預金保険法百二条に書きましたシステミックリスクですか、ちょっと難しいんですけれども、つまり、信用不安が起きる、取付けが起きる、そういう信用不安に対応して大至急あらゆる手段を講じて不良債権処理するという段階では既になくて、私の言葉で言えば、それはもう皆さんもおっしゃっていると思いますけれども、正に日本産業構造の改編を誘導するための不良債権処理というのが中心になってきているというふうに私は認識をしておりますけれども、竹中大臣の御認識を聞かせていただきたい。
  104. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) 委員正に御指摘くださいましたように、単に危機が起こるか起こらないか、危機を起こさないかということではなくて、日本経済が二十一世紀に向けてより強固な基盤を作っていく段階で、金融システムというのはそれを支えるものでなければいけない、より強固な金融システムを作っていかなければならない、そういう認識を持っておりますし、逆に、そういった意味でのシステミックリスクは今起きていないわけでありますから、今そういうことを進めることが大変大きなチャンスであるというふうに思っております。
  105. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 私は逆の結論を申し上げたかったんですけれども。  つまり、システミックリスクに対応する緊急対策としての不良債権処理の段階を既に終わっているとすれば、やたらに不良債権処理を急いでいるような印象を与えることは副作用が大き過ぎるという点が第一点であります。  それから、これは竹中大臣が振り付けられたかどうか分かりませんけれども、小泉総理がわざわざアメリカに対して日本不良債権処理を急ぎますと言ってこられるというのは、私はなぜかと。世界に対して日本の信用機構はまだ不安を抱えているんですということを宣言するようなものでありますから、それがマーケットを通じて逆襲をしてきます。だからいつまでたっても信用機構は安定していないという認識に外も内もなる、そのことが更に事態を悪化させているというふうに考えるわけですけれども、重ねて答弁をお願いいたします。
  106. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) 不良債権をやはりきちっと処理していかないと新しい経済を支える金融システムはやっぱり私はできないのだと思うんです。その意味ではこの政策は是非とも進めなければいけないと思うんですが、御指摘の副作用が大きくならないような手当てというのは、これはどうしても絶対に必要でありまして、そこにはやはり万全な配慮をしたい。新規参入の導入とか、そういうことをこの新しい政策の中にはかなりしっかりと織り込むつもりでございます。  あと、アメリカとの関係でありますけれども、これは、小泉総理がブッシュ大統領とお話しになったときの趣旨は、私なりに解釈するに、日本金融システムは決して危機ではない、しかし同時に全く健康体であるというふうには残念だけれども認識できないのではないだろうか、そのことを十分に認識した上で直すべきところは直していきますよと。  そういうメッセージを私たちも正確に伝えてまいりたいと思います。
  107. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 まず、政府が我が国の信用機構はまだ不安でありますと、よってペイオフ解禁もできませんというようなスタンスでおられる限り、これは信用は戻りませんよ。ですから、そこのところは、何を主眼にして不良債権処理していくのか、何で急ぐのか、そこは明確にした方がいい。むしろ、産業構造を変えていくと、そのためには非採算性の、生産性の低い分野からは資金はもう回収しなければいけない、そういうことをおっしゃればいいんですよ、明確に。  ですから、今回のいろんな仕組みは、後で批判も申し上げますけれども、どうもそういう眼目でできているような気がいたしますから、これはシステミックリスクとの混同が起きないように説明をきちんとされていく方がよろしいというふうに思っております。  それから、そういう段階に不良債権処理が入ったのであれば、これは今日銀が打ち出しておられるように、何というんですか、ゆっくりやれとあえては言いませんけれども、ちゃんと、粘り強く、これは日銀は何とかおっしゃっていましたね、粘り強く、息長く、そして総合的にやれということを日銀の不良債権処理方針は言っておりますけれども、むしろそういう段階だと思いますよ。  それともう一つは、公的資金の使い方。これは、緊急事態で責任を問いながら公的資金を使う段階から、むしろ産業構造をいい方向に誘導する、そのために、政官というんじゃなくて官民というんですか、一体になってやるんだと。そのために銀行不良債権処理する、償却をする、自己資本が足らなくなる、それは本来一般のマーケットで調達すればいいわけですけれども、その調達が不十分である、できない、だとすれば、それは公的資金で株を買ってあげますよというような、そういう新しい仕組み。これは預金保険法の百二条の思想から私は出てこないと思うんですよ。ですから、そこは新しい立法なりで対応して、公的資金の使い方を変えるんだと、したがって責任は必ずしも問わなくていい、そういう話をくっ付けていかないと。  更に言えば、評価方法で税効果会計の変更の議論が大分出ました。財務大臣は無税償却をお認めになる腹だろうというふうに私は推測をしておりますけれども、先ほどの御答弁は国税庁がしっかりすれば今でもできるんだというふうに聞こえましたが、いずれにせよ、要するに金融機関が積極的に不良債権処理していく、処理をして、そして公的資金が入ってきたら罰せられるということではなくて、官民一体でこういう産業構造を作ろう、そのために不良債権処理を急ごうというそのスタンスに政府全体、政策全体が変わっていく、それが私は大事だというふうに思っておりますので、その点を申し上げたいと思います。  次に、今度は質問ですけれども、先ほど円委員質問の中で、産業再生機構というものをお作りになるということが分かりました。これ、何で作るんですか、こんなもの。  前の国会で我々はRCCを改組する法案を通しましたよ。私は反対だったんですよ。そんなものでRCCが企業再生なんかできますかという質問をしたら、できますとおっしゃった。そして、かなりどういう機構改編や予算をお使いになったか知らないけれども、それスタートさせたばかりじゃないですか。今度は何ですか、また別のものを作られる。どうもその意図がよく分かりませんが、御説明いただきたいと思います。
  108. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) これは私らが直接の所管じゃございませんけれども、内閣の中で経済関係の閣僚が相談しました一つのいきさつとして申し上げますと、RCCは、要するに不良債権、破綻資産ですね、これをうまく市中に流していく、いわゆる処理をしていくということに重点を置いた機構であるし、そういう機能を持っておる、そういうふうな再生の方に重点を置いたものとは取りにくい、そういうことから見て、再生を含めた、いわゆる企業診断をやっていく機構というものは別途に必要なのではないかという認識をしまして、こういう機構を作ろうとしたんです。
  109. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 大臣が替われば法律が変わるというのはこれは朝令暮改のたぐいでありますから、その辺りはやはり一国が権威に懸けてやることですから、しっかりやっていただきたいと思うんです。  私が言いたいのはそういうことじゃないんです。RCCを改組して企業再生をやるというのも、それは私は無駄な作業だよということをこの委員会では申し上げました。同じ考えで、政策投資銀行を持ってこようが何銀行を持ってこようが同じですよ。企業再生銀行以上にうまくやるところが役所にあると思ったら、それは錯覚ですよ。私はそう思う。やっぱりもっと、私も銀行の姿勢を批判してきましたし、あるいは金融危機のときに無理やりにでも公的資金を入れろということを言ってきました。あの段階でもっと一気呵成にやるべきことはあったという反省はあります。でも、ここまで来たらやっぱり銀行をしっかりさせるのが一番早道ですよ。妙な役所を作ったって、企業再生がそんな簡単にできるはずがない、私はそう思いますよ。だって、護送船団行政で失敗したんでしょう。つまり、役所の過剰介入が銀行を駄目にした。競争力を失い、そして自己責任の原則を喪失をした。だから、バブルが大きくなって、そしてつぶれ過ぎて今日の事態になっているわけですよ。その反省から大蔵省はなくされちゃったじゃないですか。金融庁が大蔵省以上の護送船団行政を今やろうとしているわけですよ。  ですから、私はさっき不良債権処理は新しい段階に入ったはずだと申し上げた。緊急事態であれば、これは挙げてやらなきゃいけませんよ。手足も縛らなきゃいけない、牢屋にも入れなきゃいけない。だけど、その事態はもうパスしたと言わなきゃいけませんよ。そうしなければいつまでも健全化できない、銀行の競争力なんか付かないんですから。じゃ、それを未来永劫、半官半民の特殊法人がやれるというんですか。であるならば、ほかの特殊法人は何でうまくやってないんですか。それを今なくそうとしているわけでしょう。私は、全くおかしいと思うんです。  ですから、今やるべきことは、銀行にもっと責任を負わせる、銀行を信頼する、そして公的資金が必要ならば罰則を付けないで、処罰を付けないで公的資金を使わせる。官民挙げて信用の回復を図って、官民挙げて非能率な企業を徐々に放逐していけばいいじゃないですか。だって今まで、戦後ずっと銀行中心に日本企業社会は成立してきたんです。今でもそうですよ。地方都市はみんな銀行中心に企業社会ができているんですよ。その銀行が途端に変わっちゃった。どこに行けばいいんですか、企業は。もう銀行金融庁の方しか見てませんよ。あした金融検査官が来るからということで、締め付けを貸付先の企業にやるんです。直接マーケットなんて育ってないじゃないですか。日本のナスダックは撤退したんでしょう。だから、企業は行く場所ないんですよ。  銀行中心に日本企業展開をしてきた。間接金融偏重を直そうというのであれば、時間を掛けて直していかなきゃいけない。代替案がないのに片っ方だけいじめ尽くしたら、日本企業社会は崩壊しますよ。私は、そういうことを政治が考えなきゃいけない。だから理屈はいろいろあるのは分かっております。でも、今急いじゃ駄目ですよ。  アメリカに対して日本の信用機関はしっかりしていますと言うべきですよ。余計なお世話なんですから、不良債権率が少し多いかどうかなんて。中国なんて二五%、私が聞いてきたのは二五%、実際には四〇%か五〇%の不良債権率でしょう。それがいいとは言いませんよ。それぞれの国の歴史があり、経過があり、そしてでき上がっている現実があるんですから、それに対応した処理の仕方というのを本当に考えていかないと、困るのは政治が困るんじゃない、行政が困るんじゃない、国民が困るんですよ。  そういう観点から私は、この企業再生なる方法を、こんなの紙に書いても役に立たないということをあえて申し上げたい。与党の立場ですからこれ以上は言いませんけれども、やっぱり我々責任あるんです、今、日本は変わり目なんですから。  私の質問に対する御感想を伺って、質問を終わります。
  110. 小林興起

    ○副大臣(小林興起君) 浜田先生、こう考えていただけないですかね、この産業再生機構。  メーンバンクがあって、そして面倒を見ているというときは一行だけですから割合この国も銀行企業と話し合って再生の道を探ることが割合できやすい。しかしこの国は、何行か、三行とか五行とか、あるいはメーンバンクがよく分からないという形でかかわっておりますと、御承知のとおり、あちらこちらの顔を立てながら、結局リーダーシップが発揮できずに、そのうち会社が駄目になってきて、結局、会社更生法で、破産管財人、第三者の法的な話でもって債権放棄を渋々やるとか決断ができる。そういうふうに行ってしまう前に、法的整理に入る前にみんなで話し合うテーブルがあって、そこで、どうだ、ここは債権放棄して、ここはこう株に転換したり、もっとお金を融資しようかとかいう話合いをするためのリーダーシップを発揮するセクション、それとして産業再生機構、シンボル的なものを設けて、ここにばんばん集めて、関係者を集めて皆さんの意見で決めていく、そのイニシアチブをここに取らせるということで私は進むんじゃないかと思うんですが。
  111. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 いや、もう聞かないつもりだったんですけれども、私に対する質問だと受け止めてもう一言申します。  あなたの考えているのはいいですよ。じゃ、そういう範囲にしましょうよ。それはせいぜいRCCにやってもらえばいいんですよ。ただ、竹中大臣が考えているのは違うんですよ。そうでしょう、竹中さん。国家ぐるみの産業構造改革をやろうと思っているわけでしょう。そのことも含めて、先ほどの私の質問にもお答えをいただきたいと思います。
  112. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) 大変重要な問題を提起してくださっていると思います。  私自身も、基本的には、官が民を抱え込むのではなくて、官から独立した民が自由に自助自立で正しくやっていく姿を作らなければいけない、これはもう間違いないことであるというふうに思っております。ただ、そのプロセスで、例えば今さっき副大臣がおっしゃいましたように、一種のいろんな関係者がまるで囚人のジレンマのようにお互いににらみ合っているというような状況をやはり解きほぐしていかなければいけない、そのような仕組みをどのように作るかという点で知恵を出したいということでございます。
  113. 柳田稔

    委員長柳田稔君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後三時三十分まで休憩いたします。    午前十一時五十七分休憩      ─────・─────    午後三時三十分開会
  114. 柳田稔

    委員長柳田稔君) ただいまから財政金融委員会を再開いたします。  委員異動について御報告いたします。  本日、櫻井充君が委員辞任され、その補欠として若林秀樹君が選任されました。     ─────────────
  115. 柳田稔

    委員長柳田稔君) 休憩前に引き続き、財政及び金融等に関する調査を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  116. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 日本共産党の池田幹幸です。  最初に、財務大臣に伺いたいと思うんですが、今、産業空洞化の問題というのが非常に大きな問題になってきております。今朝も入澤委員質問の中で少しそういった話も出ておりましたけれども、経済産業省の白書でも非常にこの問題が重視されてきております。  そこで、工場の撤退、海外移転に伴う工場の撤退ということが起こりますと、労働者の失業の問題、それから下請中小企業の倒産の問題、こういったことを通じて地域経済が非常に衰退してまいります。こういった状況が起こるということで、海外進出する企業の中にも、地域経済ということを一応念頭に入れた計画というものを立てる企業もあるんですけれども、しかし、多く、ほとんどはそういったことにはお構いなしに、もうともかく長年そこで操業してきた地域からあっさりと撤退していく、あとの下請や労働者雇用の問題は全くお構いなしといったやり方というのが横行しているわけですね。  それで、そういった、何といいますか、自分の利益最優先、企業は利益を求めるものだとはいえ、企業利益最優先で、地域経済に対する社会的責任といいますか、そういった問題を投げ捨てた行為というのが横行しているわけで非常に問題なんですけれども、私、今日言いたいのは、財務省が大株主になっている企業でこういった問題が起こっているということなんです。  JT、元の専売公社ですけれども、JTたばこ会社が言わば民間会社顔負けの社会的責任を放棄するといった行為が起こっておりますので、そのことをちょっと紹介し、財務大臣の善処を求めたいなというふうに思っている次第です。  具体的な問題は、四国にJTと住友電装の合弁会社、四国ジェイティエス電装株式会社というのがあるんです。これが来年三月に解散するということを決めました。七月四日にそのことが記者発表されました。そういうことなんですけれども、発表したのは、四国ジェイティエス株式会社は関係なくて、親会社のJTと住友電装が記者会見をして発表したんですね。その四国ジェイティエスの社長も、自分のところの会社が解散になるというのはその数日前、六月の二十六日に知ったというんですね。親会社から通告された、JTと住友電装から通告されたわけです。JTとそれから住友電装、親会社の二つは、徳島県に七月一日に解散しますということを通告すると。これが存在します池田町、高校野球で有名になりましたあの池田町ですけれども、池田町へは、記者会見発表七月四日のその前日、七月三日に通告するということなんです。これはもう地方自治体にしたら寝耳に水なんですね。  そういうことですから、すぐさま、解散してくれるな、事業を存続してくれという要求に動くわけですが、この四国ジェイティエスという会社は一九七〇年に設立されているんです。何をやっているかといいますと、自動車のワイヤハーネス、電装、電気回りですね、そういった部品を作っているんです。何でJTがそんなものを作っているかと思われると思うんですけれども、JTは一九九〇年に池田町からたばこ製造工場を撤退したんです。百年にわたってずっとそこでたばこを製造してきたわけですけれども、喫煙者が減ったということもあって撤退したと。撤退したそのときに、地域経済というものも考え、雇用というものも考えて、そのときには、何か引っ張ってこよう、企業を、ということで住友電装と合弁会社を作ってやったということですね。そのときには一定の社会的責任を果たしたということは言えるだろうというふうに思うんですけれども、ところが今回は違うんですね。今さっき言ったようなやり方です。  今この四国ジェイティエスというのは、JTが五一%、住友電装が四九%株を保有している、そういう会社なんですけれども、撤退の理由が、これはもう非常にはっきりしておりまして、自動車メーカーから大変なコスト引下げ要求が来ている、非常に厳しいというんですね。そういうことから、何とかコストを引き下げる、そのためにはもう日本で作っておったんじゃ駄目だということで海外でやりますと。海外に二百億円、二〇〇三年度投資しまして、二百億円投資です。そこでこのワイヤハーネスを作って逆輸入する、そうすると日本企業からの納入はもう極端に減る、恐らくこの四国ジェイティエスは来年度には、もうそういうことで二〇〇三年度には債務超過になっていくんじゃないか、今はかつかつ黒字なんだけれども、そういう状態にあるというんですね。だから今もう撤退しましょうということなんです。  結局、こういうふうに言っていますね。自動車メーカーの海外進出を背景とする競争激化の下、国際競争に勝ち抜くために住友電装は海外生産の拡大を推進し、同時に、縮小する国内生産については生産体制の再構築を行うこととしております、といって解散と、こういう話なんですね。  そのことについてるる、ちょっとこの問題をどう考えるべきかということを財務大臣に伺っていきたいんですが、今お話ししたことについて、今日はJTの方から来ていただいているようなので、私が話したこと、おおむねそのとおりだということだけまず御確認願いたいと思うんです。内容を話していただくと時間が掛かりますので、確認だけでお願いしたいと思います。
  117. 筧正三

    参考人(筧正三君) お答えいたします。  事実関係はおおむねそのとおりだと思いますけれども、二点ほどちょっと申し上げたいと思います。  いきなり四国ジェイティエスに両親会社が指示をしてということではなくて、当然のことながら、四国ジェイティエス電装の経営陣を巻き込んで生き残る道を模索してまいりましたが、なかなかいい案が見付からず、大変コストダウン等の要請が大きゅうございまして、事業の継続が困難であるということの中で決めてまいりました。  もう一点、雇用につきましては、大変重要な問題であるということでいろいろ施策を前回同様、十年前同様模索をしましたのですけれども、昨今の経済情勢の中で大変いい事業が見付けられなかったということで、苦渋の決断としてそのようにさせていただきましたということでございます。  以上、お答え申し上げました。
  118. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 いろいろ言いたいこともおありでしょうけれども、おおむねそういうことだということで御了解いただいて質問したいと思うんですけれども、この四国ジェイティエスというのは、従業員二百四十人ということですから、そういう点ではそんな大きな会社ではないんですけれども、しかし、この池田町というところで見ますと大変なんです。  どう大変かといいますと、二〇〇〇年度のこの四国ジェイティエスの売上げが二十四億二千二百万円なんですが、池田町の製造業出荷額、これが百二十九億七千万円なんです。だから約二割近いんです。だから、これが一気にぽんとなくなる、それももう来年三月でなくなっちゃいますということになると、この地域産業、打撃を受けるというよりも、ほぼ破壊ですね。破壊的な影響を与えるんです。  今、雇用のことについても研究しましたとおっしゃったけれども、残念ながらそれは何もやっていません。だって、それは、七月四日通告した後、存続してくれという要求があり、労働組合も存続してくれというふうに要求する、新しい労働組合も誕生してそういう要求が出てくるという中で若干の検討はなさったかもしれないけれども、事前にはそういうことはなかった。このことは一九〇〇年のJTの撤退のやり方とは全く違うということを申し上げておきたいなと思うんですね。  そこで、自治体に対しても一方的通告、労働組合に対しても当然一方的通告ですけれども、こういうやり方を取って、地域経済への影響についても何の考慮もせず撤退するというやり方、このやり方は、とてもじゃないけれども今の世の中許されるべきことじゃないと思うんですけれども、まず塩川財務大臣の御感想を伺いたいんです。
  119. 小林興起

    ○副大臣(小林興起君) 今お話を伺いまして、いわゆる日本全国で見られる産業の空洞化日本でやっていけないために外国に出ていこうというような流れにあるお話で、我々としても聞いておりまして胸痛むところでございますが、ただ、それじゃ政府が、財務省が何かこの問題について具体的にできるかといいますと、御承知のとおり、JTの経営については、専売制度改革時の国会の附帯決議もございますとおり、経営の自主性について、経営についてはもう国がああだこうだと言わないと、自主性に配慮するということがむしろ大事だということをこの附帯決議でも決められまして、それを基本的な考え方としてずっとやってきておりますので、こういう決定について、今直ちに財務省がどうだこうだと、その経営判断をしたことについて物申す立場になかなかないということを御理解をいただきたいと思うのでございます。
  120. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 株六六・七%持っているけれども所有と経営は別なんだというお考えなんでしょうけれども、しかしそれはちょっと、僕はそういう形でやっていったらまずいと思いますね。国民にとってみればこれはもう政府企業なんですね、としか見ていないわけで、そういったところで民間企業の中でもえげつないようなやり方が通用しているとすれば、これは問題だと思います。  今、日本経団連もつい最近、企業行動憲章というのを改正されましたけれども、そこでも明確にこれうたっているんですね。企業は単に公正な競争を通じて利潤を追求するという経済主体ではなく、広く社会にとって有用でなければならないとうたいまして、非常に細かく言っていますよ。  その手引書というのがありまして、御存じと思いますけれどもね、それなかなかいいことを言っているところもあります。なかなかのことだなと思うのは、地域社会とのコミュニケーションということを明確にうたっていまして、企業が立地し、その従業員、顧客が生活する地域社会との関係企業にとって最も重要な関係一つであり、企業の存立基盤であると。正に存立基盤なんですね。だから、そういう物の考え方でやって、企業は地域社会との関係を考慮して、自らの活動とその活動の在り方を見直していくことが求められるというふうに言っています。正にそういうことが今求められている時代なんですね。  だから、所有とあれは別だと、経営が分離しているので別だという形で、国民から見たらどう見たって政府企業のところが、もう民間企業顔負けのとんでもない社会的責任を放棄したやり方をやっているということは、これ問題だと。当然のことながら、何らかの行動を取るべきだろうというふうに私は思います。ともかく、企業自ら決めた行動憲章にも反するやり方だと思うんですね。だから何としても、少なくとも今企業のやり方は、一方的に通告して、存続要望来ても、私たちの立場は説明しますが存続の話はしませんという立場なんですよ。  そうではなしに、やっぱりこのような憲章に基づけば、三月に解散すると決めたことについては一応凍結してでも、地域経済というものも一応考慮に入れた計画を練り直すということぐらいやらなければ、もう一切何も応じないというのでは、これは駄目だと思いますがね。  再度、大臣の考えを伺いたいと思うんですが、どうですかね。
  121. 小林興起

    ○副大臣(小林興起君) 先ほど申し上げましたとおり、財務省にはこの問題についての監督権限等がないということでございまして、直接的に企業に対してああせいこうせいと言う立場にはございませんけれども、一政治家としては、先生のおっしゃること非常に深く理解できるものがございまして、もちろん、JTに対して、更に地域の経済のために、また今までお世話になってきたところに対して、何か撤退をするということについても心があるなというようなことができないかどうかということについては、重大な関心を持ってお話をしてみたいとは思っております。
  122. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 そういう形で県や町とよく話し合うようにJTの方に話していただきたいというふうに要望しておきたいと思います。  それでは、総合デフレ対策といいますか、金融再生プログラム等について伺いたいと思います。  昨日、案が、プログラムが発表されたわけですけれども、この総合対策の第一の柱が不良債権処理加速策になっているわけです。政府自身も不良債権処理の加速を行えばデフレ圧力が高まるというふうに言ってきたわけですね。つまり、これ自身はデフレ対策だと、デフレ促進策だということになるわけですが、それと合わせての雇用対策あるいはセーフティーネット等々出したんだとおっしゃると思いますけれども、しかし、結局、デフレ促進策、総合対策の第一の柱がデフレ促進策になっているというのは一体どういうことかという感を私は非常に強くします。  不良債権の早期最終処理という問題については、私たち共産党は最初からこれにはずっと反対してきました。こんなことをやったんでは、中小企業はつぶれ、失業が増えて景気が悪くなると。そしてまた新たな不良債権が増えるんだから、こういったことはやめるべきだと。要するに、個人消費の落ち込み、内需不足ということを特徴としているこういった不況の下では、こんなやり方はやめるべきだということをずっと主張してきました。  この一年間の動きはそのことをやっぱり証明したと思うんですね。全国銀行レベルで見ますと、十兆円の不良債権処理やったと、しかしその間に十兆円不良債権残高は増えてしまったということですから、そのことを証明しているというふうに思うんです。その間に倒産も増えたし、失業も増大いたしました。  この中で、今度の対策では雇用・中小企業対策という形でこうやって打ち出されているわけですけれども、じゃ、そういうことの必要性を認めるんであれば、失業が増えない、中小企業が倒産が増えないということを、そういった失業を増やさない、倒産を増やさない対策をまず取るべきじゃないか。  デフレ促進策をまずやって、言ってみればばっさりけさ懸けに切って、ばんそうこうを準備すると、だからいいじゃないかというやり方ですよね。ばっさり切らなけりゃいいんですよ、という対策をまず考えるべきじゃないかと思いますが、竹中大臣、まず感想を伺いたいと思います。
  123. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) 不良債権の償却を加速して金融システムをより強固にしていくと、この政策目標がそもそも一体どういうところに根差しているかという点に関連しているかと思います。  委員のお話の中で、不良債権処理は、加速はデフレ促進策であるというお話がございました。がしかし、なぜ不良債権処理を加速させるかといいますと、不良債権があることによって金融仲介機能が滞っていてマネーが増えないという非常に大きな問題がある。マネーが増えるようにすることによって経済を良くするというのがやはりそのデフレ対策の最大のねらいであろうかというふうに思います。  同時に、不良債権というのは、残念だけれども効率の低いところに資本が投下されて滞っているということでありますから、そういうところから、より効率性が高い、活力を生み出すところにお金を持っていけるようにすると。そうすることによって経済が活性化していくわけで、これはやはりなさなければならないことだと思います。  ただ、短期的にはその移動というのが、人の移動、お金の移動、そういうのがなかなかすぐには生じない可能性もありますから、したがって、短期的にはデフレ圧力が高まるということは、これは懸念されるわけです。それに対応するためには、やはりセーフティーネット、中小企業対策等々、しっかりと打っていかなければいけないということではないかと思います。  現状、やはり不良債権の問題、金融システムが弱くなっていることによって日本経済の様々な問題が生じているというふうに強く認識しておりますので、であるがゆえに金融システム改革、歳出の改革、歳入の改革、規制の改革、この四本柱をしっかりと進めていく。そうすることによって経済を活性化させていきたいというのが小泉構造改革の基本的なシナリオというふうに御理解いただきたいと思います。
  124. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 今度の総合対策の中で書いてあることを大体今言われたわけですが、短期的にはデフレ圧力高まるということをおっしゃいました。そうすると、今度の対策を見ますと、平成十六年度には主要行の不良債権比率を現状の半分程度に低下させるというふうに書いてあります。これがいわゆる不良債権処理加速策ですね。加速策はこれですね。そうすると、金融庁の方に伺いますと、数字で見ますと、この半分にするというのはどういうことになるかといいますと、大体資産総額が、総与信と言ってもいいと思いますが三百十八兆、それから不良債権が、これが二十六・八兆ですから大体今八・四%だということですね。八・四%の半分、四・二%程度に持っていくということがねらいだと、こういうことになるんですね。  じゃ、それをどうやってやるんだということなんですが、今いろいろとおっしゃいました。おっしゃいましたが、結局これをやることによってどの程度日本経済影響が出るのか、雇用、失業にどの程度影響が出るんだということは、じゃどういうふうに試算をし今度のセーフティーネット等々を準備したのか。これは午前中、入澤委員質問に対してシミュレーション問題が出ましたが、結局は、いろいろ言われたけれども、内閣府の方でやるのかやらないのか分からないような答弁でした。  これはマクロではあるけれども、長期の問題ではなしに正に短期のデフレ圧力に対する対策なんですから、この程度の影響が出るのに対してこういう対策を立てたんだ、この対策によって雇用はこの程度確保できるんだということの数字を、一定の数字を試算を持ってやられたと思うんですね。なしでやられたんでしょうか、持ってやられたんでしょうか。持ってやられたのならその数字を明らかにしてください。
  125. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) まず、この不良債権処理の加速によってどういうことが起こるかということ、これにつきましては、今朝ほどもお答え申し上げましたけれども、これがどのようなスピードで出てくるんだろうかということと、一方でオフバランス化によって、不良債権と言われるものがオフバランス化される中でそれがどのように企業再生に結び付いていくかということによって当然のことながら影響は全く違ってくるわけです。  そういう状況の中で、できるだけ再生のメカニズムを強くしようという仕掛けを含めながら今この問題に立ち向かおうとしているわけで、何とぞ御理解いただきたいのは、まず技術的に考えて、いろんな方法、計量的な方法を駆使しても、これを正確にシミュレーションしてその影響力を測るというのは、これは容易なことではないということであります。  これについて今朝ほど申し上げましたのは、例えば、ある条件の下でオフバランス化が進んだらこういうことになりますと、これは実は内閣府では既に昨年そういう数字は出ております。そういうことは、結局その再生のメカニズムがどのくらいになってくるのか、そのときのビジネスの状況がどうなってくるのか、株価がどうなってくるのかということを見ながらやはりきめ細かく判断していくというのが行政にできる精一杯のことであり、また行政がやるべきことであるというふうに思います。  対策との関係ですけれども、今回そこに挙げておりますのは、これまで議論してきました四つの構造改革をより早く、より大きく分かりやすく示すということでありますから、言わば今回、今の時点でやるべき当面の対応策、厳しい財政状況の中で、それでも何とかそれをやりくりしてこういうことができるのではないだろうかという当面の対応策をその中に書かせていただいております。したがって、前半でお聞きになった二年半先までにこういうふうにした場合にどういう影響が出るのかというのとは、政策対応関係が少し違っているという点もございます。  いずれにしましても、今当面考えられるその対応策を、セーフティーネット、中小企業等、この中には政策金融機関の積極的な活用等々もございますし、セーフティーネット融資保証等々もございます。こういうものをしっかり活用して、きめ細かく行政としては対応をしていきたいという意味でございます。
  126. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 どうも結局は、どうなるのかなという試算もなく、それに対する対策の方も、この程度でいいんじゃないかというふうなものとしか受け止められませんよね。  小泉内閣のやり方というのは全く、今度の総合対策見ても、私、ああまたかという感を強くしたんですけれども、午前中も出ておった銀行保有株の買取り問題にしましても、買取機構を作ったと、作ってまだやっとこさっとこ立ち上がったところで、今度は日銀が株を買い取るというふうなことをやると。そういうことをやりますね。これはもう総括も反省もなしにそういったことをやっているわけですよ。一体どの程度の実績かというふうなこともやらずにやっている。  今度のRCCの問題もそうですね。RCCで不良債権を買い取って再生を援助しますということをやった。我々はあんなものやったって駄目だと反対しました。しかし、できるんだといって作られた。しかし今度は、それがまだ全然立ち上がってもいないうちに今度はまた産業再生機構でしょう。  本当に総括も反省もなくて次々と変な対策を屋上屋重ねていくということで、これじゃ国民から見て全く信用できないということと同時に、今の話を聞きましても、民間シンクタンクでいろいろ試算しているという話が午前中ありました。それに対しては竹中大臣は、いやいや、それは銀行子会社が勝手に試算してはやし立てているんだと、こういうことでした。そこまで言われるんだったら、何で自分たちでそれだけのきちんとした試算出さないんですか。はやし立てていると言いながら自分たちで何も出さなければ、結局、逆に言えば、そういったことをむしろ援助していることになりますよ、政府の側は。そういうことすら言えると思うんですね。今の答弁については私は全く受け入れるわけにはいきません。  さらに、ちょっと時間ありませんから急ぎますけれども、今の銀行の貸し渋り、貸しはがしというのは大変ひどいんですね。  この不良債権早期最終処理をやりますとどうなるかということで、銀行経営者と竹中大臣との間のやり取りがいろいろ報道されていました。そこではこういう報道がありましたですね。銀行はこれまで、我々、貸し渋りの問題どんどんここでもやったけれども、貸し渋りはないと言ってきたんです。と言っていましたよね。ところがやっぱり、今度は竹中案が出されると、竹中案を実施すれば貸し渋りが起きると言っているんですね。とんでもない御都合主義というか、正に笑止千万としか言いようがないわけですが、こんな銀行、これは一体どういうふうにあなたは受け止めているのかと。貸し渋りというのはもう厳然としてあるということをきちっと指摘をし、糾弾をするというぐらいの姿勢をそこで当然示すべきだったんじゃないかなと思うんですけれども、あなたはどうされたんですか。
  127. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) その場のやり取りでどうしたかという御質問かと思いますが、これはいわゆる懇談という形で行ったものでありまして、何か新聞かなんかでお読みになったのだと思いますけれども、別にこれは議事録を取って議論したというようなものでもございませんので、懇談の場で何があったかということについては、ちょっとこういう場での御答弁は控えさせていただきます。
  128. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 貸し渋り、貸しはがしというのは非常に激しくなっています。これまでもあったし、今もまた激しくなってきているんですね。そのことは、おととい、衆議院の財務金融委員会で我が党の吉井英勝議員がその具体的事例を挙げて質問しております。  そのときにきちんとしたお答えがなかったんですが、具体的な答えは。もう明確に適正金利への引上げに応じなければ取引解消も辞さないということを明記して、これでもってやれという説明ルールだとか、いろいろなマニュアルがずっとできているんですよ。ともかく、現実の問題としても、中小企業に対して既往貸付けについての金利引上げを求められると。嫌だと言ったら、もうこれ以上金貸さないよとやられるわけですから、それでもって貸しはがしがやられちゃうということが現実に起きております。  そういったことが起きているにもかかわらず、あのときの竹中大臣の答弁というのは、それについて、個々の問題について、そういったものをきちんと調査するという答弁はなかったんです。私は、吉井議員が三井住友であるとか、みずほであるとかUFJであるとか、具体的に名前を挙げてマニュアルまで紹介したんです。当然、金融庁としてはそれを取り寄せて、こんな形の、こういう形の貸し渋り、貸しはがしは駄目だという指導をすべきだと思うんですよ。取り寄せるぐらいのことはやられましたか。
  129. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) そういったことに対するモニタリングはルールを決めてきちっとやっていかなければいけないというふうに思っております。そのために、貸し渋り、貸しはがしのホットラインというものを既に開設しておりますし、それを今後活用して、場合によってはそれを検査などに活用するということもこれはしっかりと是非やっていきたいと思います。  御指摘のそのマニュアル等々の話は、これは個別の企業の内部の指針、内部の文書の話であると思いますので、それに対して行政がという立場にはないと思っております。  ただ、問題なのは、委員指摘のように、優越的地位の濫用の問題、これはやはり大きな問題であろうかと思います。ただ、これについては独禁法の所管の問題、公正取引委員会の問題でありまして、公正取引委員会ではそうした問題に対する質問、相談、申告の窓口等々が制度としてこれは設けられているというふうに聞いております。こうした枠組みの中で行政としてはしっかりと対応していきたいと思います。
  130. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 どうも答弁聞いていると、何か血が通っていないなという気がするんですね。何か制度の問題、枠組みの問題、確かにそれはあります。それでもって解決できておればいいですよ、そうじゃないでしょう。そういう枠組みがあるけれども現実にこういう問題が起きていると。個別問題に対応しないと言っている間にどんどんどんどん貸し渋り、貸しはがしはこういう形で進められているし、マニュアルまで作ってやられていっているんですよ。それをどう考えるかという問題を私は聞いているんですよね。そんなことを言うておったら、本当にいつまでたったってこれはこの問題は解決できないですよ。枠組みだけで解決できる問題じゃないということをひとつ申し上げておきたいというふうに思うんですね。  それで、私は、今の話聞くと、どうもこの新聞もまゆつばかなと思ったのは、金融相は銀行側の抵抗にいら立ちを起こして激高したという記事があるんです。要するに、大臣不良債権問題を終結させることが政治的に重要だと言ったのに対して銀行代表は、七行の代表が不良債権はいつの時代でも発生する、終結はあり得ない、政治と経済を混同しないでいただきたいと反論したということに対して、あなたは小泉政権の政策に反対するんですか、それならそうと言ってほしい、総理に伝えますというふうに激高したというふうに書かれているんですね。  私たちは、この不良債権の早期最終処理政策、反対です。しかし、その問題関連して、あるいは関連しなくてもいいんですけれども、金融機関としての責任を果たさない、少なくとも仲介機能であるとかあるいは信用創造機能であるとか、そういったことができていない、やるべきことをやっていないということに対してあなたが非常な憤りを覚えておるというんであれば、そのことについては私は同感ですよ。だとしても、あなたのやり方というのは本当に余りに稚拙なやり方だなというふうに私は思います。というのは、何ですかこれ、総理に伝えますというのは。まるで子供が先生に言い付けるよといったような感じのやつでしょう。こんなんだったらあなたは小泉さんの使い走りかと、逆にあなた低く見られちゃいますよ。こんなんじゃとてもけんかにならぬなということになります。  また、本当に追及するつもりだったら、あなた自身の立場でやるべきことはやるべきですよ。今言ったようなことをやらないからばかにされるんですよ。そうでしょう。具体的に権限生かした形を当然やるべきです。  やっていることもいい加減だというふうに私は思うんですけれども、さっき出た貸し渋り・貸しはがしホットライン、あれ何にも、ホットラインといっているけれども、ホットラインというのは二者の間の緊急連絡をやって問題解決しようというやつです。ところが、あなたの作っているホットラインというのは、メールとファクスで送ってください、それで返事はしませんと言うんです。政策に生かします、こう言うんですよ。そんなのね、貸し渋りやられておって頭にきて何とかしてくれといってきてホットラインに電話したら、電話じゃない、連絡したら何にも応答がない、これじゃホットラインじゃないですよ。こんなホットラインだということ自身、そういう名前を付けること自身が、これもいい加減だというよりも、いい加減通り越して私は羊頭狗肉だと言いたいですね。そんな性格のものじゃないですか、これ。  貸し渋り、貸しはがしの対策というのは、個別の問題にも踏み込まない限り短期の問題の解決というのはあり得ないですよ。これは大いに反省すべきだと思うんですが、どうですか。答弁変わりませんか。
  131. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) まず、懇談したことで、単に風評で伝えられているようなことに基づいて子供の使いだというふうに言われても私も困りますので、これはそういう単に懇談をしたということであるというふうに是非御理解いただいた上で、御質問の件に関しては、これは個別の問題に関しては、先ほども申し上げましたように優越的地位の問題に関しては窓口があるわけでございます。その窓口をやはり活用していただきたい。同時に、これはホットラインとして監督当局であるこちらにもきちっと通知をしていただいたらいい。公正取引委員会金融庁というのは、その問題によっては当然のことながら協議をすることになるわけでありますから、そういった意味で、私は窓は開かれているというふうに思うんです。  これは積極的に、是非これは活用していただきたいし、そうしたことは私たち自身はこういう問題をなくしたいと思ってそういう制度を作っているわけでありますから、これは行政としては真摯に、また前向きに積極的に是非これは今のシステムを使って対応したいというふうに思います。
  132. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 我々が具体的にこういう問題が生じているんだということを持ち出してやっている。あなたも例えばやるべきことをやっていると言いたいんでしょう。午前中もUFJとあさひに業務改善命令出したというようなことも言っていました。しかし、それ出して、まだ計画を出させるだけでしょう。どういうやり方で、こんな変なマニュアルを作るんじゃなしに、きちんとしたマニュアルでやりなさい、本当に借りる側の人の立場に立った、そういった貸付けやりなさいというようなことはないでしょう、ここには。枠組みがありますから苦情があったらそっち行ってください。だから、私が血が通っていないというのはそういうことを言っているんですよ。  今こうやって具体的にこういう形でマニュアルまで作って貸し渋り、貸しはがしがやられているんだから、これ調べて、こういうやり方はまずいよと言うことがなぜできないんだと。それが決して行政の出過ぎたことでも何でもないですよ。それこそが、今この非常に危機的な状況にある中でやるべきこととして求められているんだということを申し上げておきたいと思います。  時間が参りましたのでやめますけれども、私は今日、日銀総裁に、竹中大臣が春から言っているアコード問題でちょっと伺いたいと思っておったんですけれども、済みません、時間なくなりました、お許しください。  終わります。
  133. 平野達男

    ○平野達男君 国会改革連絡会(自由党)の平野達男です。金融担当大臣竹中大臣に初めて質問させていただきます。  かつて、不良債権問題については柳澤大臣が最前線に立って戦って集中攻撃を浴びていると、竹中大臣は敵の弾が届かないところに立っていろいろなことをしゃべっているというふうにやゆをいたしましたけれども、今回金融担当大臣になりまして、その集中砲火の真っただ中に立たれました。そういった意味で素直におめでとうございますというふうに言えない感じもします。  そこで、今回の総合デフレ対策を構築する出発点は、アメリカ発、総理大臣不良債権処理を加速するでありました。ところが、小泉総理大臣は一言も不良債権処理を加速するというのはどういうことかというのを説明しませんし、対策を立てる段階でも竹中大臣基本方針に従ってやりますという、竹中大臣基本方針竹中大臣基本方針ということで通してきました。こういうのを世間では丸投げというふうに言います。  こういった、金融担当大臣になられまして、何でも総理大臣から任されるということに対して、これ任されて意気軒高に感じたか、あるいは総理大臣、ちょっと余りにも無責任じゃないかというふうに感じられたか、まず冒頭にちょっと御感想をお伺いしておきたいと思います。
  134. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) 委員、丸投げとおっしゃいましたけれども、これは当然、私は担当大臣でありますから、担当大臣としてしっかり案を作って、総理に御相談をして、総理がよしそれで行けというふうに言ってくださって、かつ閣議等々で、これは重要な問題であって金融庁だけの問題ではない、内閣全体でしっかりこれをやっていくんだというふうに更にリーダーシップを発揮されて、私はそういった意味で丸投げなどという表現は全く当たらないというふうに思っております。  この間、作業そのものは大変しんどい作業でございましたけれども、総理からは常に適切な御指導と非常に強い励ましをいただきまして、改めて総理の強いリーダーシップを私自身は感じた次第でございます。
  135. 平野達男

    ○平野達男君 それでは、以下は、不良債権処理の加速ということの意味について、一点に絞ってちょっと質問をさせていただきたいと思います。これは、小泉総理もずっと言ってきましたし、塩川財務大臣竹中大臣不良債権処理の加速と言ってきました。  この不良債権処理の加速といったときに、その言葉が出てきたときに、私を含め世の中の多くの人がどう取ったかといいますと、今までの不良債権処理というのは、銀行は隠していたと、その隠していたものを全部暴いて、その不良債権処理を加速する、その処理をするんだというふうに多分、恐らく多くの人が取ったと思います。  私は、この不良債権処理というのは二つの側面がありまして、まずきちっとした査定をする。査定をした後の、特に破綻懸念先以下についてはこれはしっかりとオフバランス化するという、量的な処理を見るとそういった二つだというふうにまずとらえたんですが、まずその一点目の、竹中大臣の意識として、今までの銀行査定というのは非常にこれは不十分であったと。これは今までの衆議院の財政金融委員会なんかでもいろいろ御質問があったようですが、ここでもう一度ちょっと確認をしておきたいと思います。不十分であったのかどうか。  今までこれ、四十三・二兆円というのが全国銀行金融再生法開示債権残高と出ておりましたけれども、この数字以上にはるかにいわゆる不良債権はあるんだというふうに意識しておられるのかどうか、それをちょっと確認したいと思います。
  136. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) 査定というのは、銀行が行っている自己査定と、それと金融庁が、これは特別検査も含めてでありますけれども、行っている金融庁査定というのが当然のことながらございます。私は、前大臣の下で行われた特別検査等々が非常に有効に機能しまして、この金融庁査定そのものは非常に優れたものになってきているというふうに思っています。  しかしこれ、自己査定金融庁査定の間には差があると。こういったことの格差については日本銀行も形を少し変えた形で報告といいますか公表をしているわけでありますけれども、私はその意味では、金融庁査定はしっかりしているんだけれども、自己査定をやはりこの金融庁査定に近づけていただかなければいけないというふうに思っております。査定をしっかりとするというのは主としてそういうことをイメージしております。さらには、幾つかの技術的な問題も考えていかなければいけないと思います。
  137. 平野達男

    ○平野達男君 それでは、今までの査定の中でどれだけの、金融庁査定銀行自己査定の中にはどれだけの差があったんでしょうか。
  138. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) 昨日発表しました金融再生プログラムの中で、こうした問題、金融庁査定自己査定の格差の問題につきましては、ルールを決めて集計数値で公表するということを明記しております。  これ結局、どのような形で集計して、いつの時点で公表できるかということを今事務的に詰めさせておりますので、こういったことの数値の公表を通して銀行側にしっかりと現実を認識してもらって、銀行自己査定をより正確なものにしていくようにしていただきたい、こういう行政を進めていきたいというふうに思っているところでございます。
  139. 平野達男

    ○平野達男君 現段階ではその数値は公表できないということですか。
  140. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) 公表する準備をしているということであります。
  141. 平野達男

    ○平野達男君 じゃ、そうすると、今回のもともとの不良債権処理を加速するといったときに、例えば、先ほど言いましたように、四十三・二兆円の要するに金融再生法開示債権残高というのは公表されています。これと金融庁との査定の間に実は乖離があるんだと。その乖離を縮めることが要するに不良債権処理の加速をするんだというふうに取ったんですけれども、その数字については公表できないということでしょうか。
  142. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) 申し上げたいのは、自己査定の、彼らが行っている自己査定金融庁の間にずれがあるということです。
  143. 平野達男

    ○平野達男君 ですから、私が、今回の中で、加速といったときに、不良債権は何十兆あります、だけれども実際にはこれ以上の不良債権があるんですと、この不良債権を要するにきちっと処理することが加速なのですかというのを聞きたかったわけです。  ところが、今の大臣のお話の中では、金融庁は、自己査定金融庁査定の中で格差があります、その額についてはこれから、今、公表しますという、そういう位置付けですよね。額すら把握していない、公表できないということですよね、今の段階では。
  144. 伊藤達也

    ○副大臣(伊藤達也君) 委員が御指摘されているその不良債権の定義がどういう定義をされているかということによって額が大きく変わってくるんだというふうに思います。  私どもが不良債権としている定義、その金額は、検査によってこれは明らかになっておりますし、また、そこに至るまでに自己査定検査の結果の中でもし乖離があれば、それを縮めていくという作業をしていかなければいけないということを私どもは申し上げているわけであります。
  145. 平野達男

    ○平野達男君 ここはまた非常に重要な点だと思います。不良債権処理の加速と言っていますからね。  加速と言っているのは、一つは私は、後でもう一つ言いますけれども、一つは、量が今まで、今までの量よりもたくさんあるんだということをはっきり念頭に置いてやっているかということなんですよ。そういうことなのかどうかということをはっきり言ってもらいたいんです。そういう意識で不良債権処理という加速を小泉総理大臣が一番最初に言ったのかどうかと、これを確認したいんです。
  146. 伊藤達也

    ○副大臣(伊藤達也君) この不良債権の問題は、ある意味で過剰債務の問題でありまして、過剰債務というのはこれは企業の問題でございます。この過剰債務の問題をどのような形で、今回、企業再生金融再生を一体的にやっていくということを私どもは目標にしているわけでありますから、この過剰債務をある意味では新しい形に置き換えて、そして再構築をしていくと、そうした方策を私どもとしては実現をしていきたいというふうに考えております。
  147. 平野達男

    ○平野達男君 時間がないのでまじめに答えていただきたい。そういう教科書的な答弁じゃないですよ。量的な問題として今既に数字が、例えば主要行で破綻懸念先で十五・四兆とか、金融再生法開示の残高で四十三・二兆という数字が出ているわけです。どの数字をとらまえて、どこかの数字をきちっととらまえて、実はこの数字上に不良債権があるというふうに判断したんですかというのを聞いておるんです。
  148. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) 先ほど申し上げましたように、資産査定を十分にやると。現状ではかなり十分な査定がなされてきているわけでありますが、これで十分であるというふうにも認識しておりません。  ですから、今回、そのプログラムに書いておりますように、一部の要管理先の大口債権については新しい手法も導入して、それをしっかりと把握しようということを考えているわけです。  その結果どのようになるかということは、これはそういった査定をしてみてしっかりと判断をしたいということであります。
  149. 平野達男

    ○平野達男君 じゃ、資産査定基準は変えるんですか。
  150. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) 資産査定基準というのは、これはマニュアルという意味でおっしゃっているんでしょうか。これは、企業会計上の問題、さらにはこれから新しく取り入れてしようとしているその手法の問題等々を含めて事務的に検討を始めたところであります。
  151. 平野達男

    ○平野達男君 そうすると、そのマニュアルを変えれば基準が変わりますから、これは当然不良債権の量は変わってきます。そういうことを念頭に置いているということですか。
  152. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) 先ほども申し上げましたように、これは正確な資産査定を行いたいということでありますから、その結果、今までと、どっちに行くかはともかくとして、数字が変わることはこれはあり得る。いずれにしても、正確な査定をしたいということを申し上げているわけです。
  153. 平野達男

    ○平野達男君 今、私の質問は、金融検査マニュアルの資産査定基準を変えるのかということで、変えることも検討するのかということで質問したんですが、それ、イエスかノーかだけお答えください。
  154. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) そういうことが必要かどうかも含めて、査定をしっかりと得るために何をやるべきかということの検討を始めたということであります。
  155. 平野達男

    ○平野達男君 これはもう大変なお話だと思います。金融検査マニュアルを変えるなんというのは、これは本当にもう銀行なんかで激震が走ると思いますよ。そういうことも検討するということを念頭に置いているということは。  まず、これは分かりました。  それから次にもう一つ、ちょっと時間がないので次の質問に入らせていただきますけれども、不良債権処理の加速というもう一つの側面は、破綻懸念先を今、五割、八割、十割でやっています。古いやつは二年でやるということで、古いやつは今はもうありませんから、原則はもう新規の不良債権しか、新しいのしかないわけですね。  五割、八割、十割、変えますか。
  156. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) 私たちが目標としておりますのは、二年半、平成十六年度までにはこの不良債権比率を今の半分にするということであります。その過程でそれをどのように実現していけるかということを、正にこの目標に向かって今具体的なアクションを考えるわけでありますけれども、例えば資産査定をしっかりとすることによって何が起こるかといいますと、いわゆるマーケットでの時価と簿価が非常に接近してくるということを通して、これは当局が何か言う以前にオフバランス化がかなり加速されるということは当然期待されるわけでありますから、その様子を見ながら、やはり現実に目標を達成するためにはどのようにしていったらいいかということを私は判断すべきであるというふうに思います。
  157. 平野達男

    ○平野達男君 今のお話を総合しますと、随分前に小泉総理不良債権処理を加速すると言ったんですね。そうすると、いまだにその加速の方法すら決まっていないということですね。  つまり、一つは、量的な問題として、金融マニュアルの検査資産査定基準を変えればこれは当然量が変わってきますから、これもこれから検討しますと。五割、八割、十割につきましても、今のお話を聞きますと、変えるかどうかという明確な答弁はなかったんですが、これもこれから検討しますと、こういうことですか。
  158. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) 私たちが目指していますのは、しっかりとした資産査定を行って、その上でコーポレートガバナンスを十分に活用して、その中でビジネスが主体的にそういったむしろ収益行動の中で不良な資産処理していく、そういうメカニズムを作るということを目指しているわけです。  ですから、新しい金融行政の枠組みとして、資産査定自己資本、そしてガバナンス、これを具体的な一つの基本的な方針として、昨日、基本的なプログラムとして決めたということです。  今、委員がお尋ねになっているのは、その中で具体的にどのようなオペレーションの、政策オペレーションが出てきて、これをやっていくのかというお尋ねに近いというふうに思います。これについては、であるからこそ、それをどのようにやっていくべきか。金融行政というのは非常に精緻な実務の積み重ねであるというふうに認識しておりますので、そのプログラムの一番最後に、そのために実務の積み上げとして何があるべきかということについての具体的な工程表を十一月を目途に作成するというふうに記述しているわけです。
  159. 平野達男

    ○平野達男君 もう一回冒頭の質問に戻りますけれども、結局、不良債権処理の加速ということについては、もう一回だけ確認させてください。量的なものについては、大きくなるか小さくなるか分かりませんけれども、その考え方査定考え方を変えて、これからきっちりと不良債権処理を、不良債権の額を確定していきますと。そして、その中で破綻懸念先というのは当然出てまいります。それについては、今まで五割、八割、十割というルールでやっていました。もちろん、産業再生とかなんとかこれは別問題ですよ、これは処理の仕方の問題ですから。今スピードの話をしています。五割、八割、十割ということについても、これから変えるかどうかも検討していきますと、こういう御理解でよろしいですね。
  160. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) 委員指摘の前半の部分で、査定をしっかりするということ、これは御指摘のとおりであろうかと思います。査定をしっかりすることによって、させることによって、簿価と時価が接近することによって、これは非常に強く銀行自身の力でオフバランス化をさせるというメカニズムが働くであろうというふうに思っております。  そのメカニズムが働くということを前提に、私たちは不良債権比率を下げたいというふうに思っているわけでありますが、そのときの一種の中間目標としてどういうような基準を設定すべきかどうかということは、これは現状を見ながら行政として適切に判断していく問題だと思います。
  161. 平野達男

    ○平野達男君 何か、いまだに私はよく分かりませんね、今の答弁聞いても。  結局、不良債権処理の加速って何ですか。もう原点に立ち返ります。何をもって不良債権処理が加速されたと言えるんですか。
  162. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) 不良債権処理の加速というのは、昨日のプログラムで明快に示させていただいたつもりであります。資産査定をしっかりと行って、それによって不良な部分がどのぐらいあるかということを正確に把握する。銀行自身にも把握していただく。かつ、それを速やかにオフバランス化させていくようなメカニズムを組み込んでいく。同時にしかし、オフバランス化のときに企業再生のメカニズムがきちっと組み込まれているようにしていく。そういうことを総合的に一つの枠組みとして示すということがこの一か月の仕事でありましたし、それをどのように行政にしていくかというのが次の段階の仕事だということであります。
  163. 平野達男

    ○平野達男君 よく分かりました。  少なくとも、前段の話を聞いている限りは今までのやり方と全く同じですよね。柳澤大臣が答弁したことと何にも変わっていません。資産査定を厳格にやりますと、それに乗ってやった額についてはきちっとオフバランスしますと。柳澤大臣の答弁とどこが違いますか。何にも変わっていませんよ。  それから次に、産業再生につきましては午前中いろいろありましたけれども、今回のあれを分離することについては、私は個人的には大賛成です。今までの不良債権処理というのは両輪というふうに、不良債権処理産業再生というのは両輪だと言ってきて、私は常に不良債権の車だけ大きくて産業再生の車が小さいじゃないかというふうに言い続けてきまして、今回どうやらこちらの産業再生の車も大きくしようという意図を感じられましたから、私は基本的には大賛成で、むしろ午前中のようなあんな説明ではなくて、もっと明快にお金を、多少国費を投入してもいいからぐらいのことを言ってもいいんじゃないかと私は思いましたが、そうやれという意味じゃないですよ、RCCのときにいろいろ議論しましたので。  それは別として、産業再生を、オフバランス化をやるときの手段ですよね。不良債権処理の加速というのはそうじゃないでしょう。それは、オフバランスで破綻懸念先というふうに資産査定をされて、五割、八割、十割という今までのルールありましたけれども、さあ、これを清算方式にしましょうか、産業再生にしましょうか、産業再生が不十分だったからそれを強化しますよというのは、破綻懸念先の処理の要するに改善なんですよね、これは私のタームで言わせれば。だから依然として、不良債権処理の加速って小泉さんが言ったその言葉が依然として私説明されていないと思います。  今回出てきたのは、そういった産業再生、それから引当金の充実。引当金の充実も、査定した後にこれ危ないから引当金をやりましょうというのは、これは不良債権の加速じゃなくて、不良債権処理するときに銀行がおっかないから、危ないから、要するにきっちり引当金をやりましょうと、こういう話ですよね。  それから、突然出てきました繰延税金効果、これなんかも不良債権処理の加速と一切関係ないでしょう。不良債権の要するに加速するときに、銀行そのものの自己資本がこれはどうも危ないと。危ないから要するに繰延税金効果を見直すと言っているわけで、これも要するに不良債権処理の加速とは全く無縁ですよ、これは。  だから、根本に戻ります。不良債権処理の加速って何でしょうか。明確に説明してください。
  164. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) 委員の御指摘委員が何をおっしゃりたいかということが非常によく分かってきた気がいたします。  まず最初、査定をしっかりとしてオフバランス化を進める、それは柳澤大臣が言っていたことと同じではないかと。これは、まさしく政策転換ではないということをおっしゃってくれたのだと私は感じました。資産をしっかりと査定して、かつオフバランス化をしっかりやる、だから政策変更ではなくて政策強化だという私たちの主張を非常に正しく理解してくださっているのだというふうに感じました。  その上で、不良債権処理の加速というのを、不良債権の非常に局所的なと言うとおかしいですが、バランスシート上からのオフバランス化を加速というのではなくて、私たちのとらえ方は金融システムの安定化、強化ということを目指しているわけです。私たちが行おうとしているのは金融システムの安定化、強化です。だから、自己資本の問題についてもガバナンスの問題についても出てくる。不良債権処理の加速というのはその中の一つの重要な部分として位置付けられているということであります。
  165. 柳田稔

    委員長柳田稔君) 時間が来ておりますので、簡潔に。
  166. 平野達男

    ○平野達男君 要は、言葉を巧みに変えているんですよね。要するに、竹中大臣が言いたいのは不良債権の加速じゃないんですよ。銀行経営銀行の健全化なんですよ。こんなことを言っていて、不良債権処理の加速と言って、世の中びっくりしちゃったんですよ、これ。これを企業がどういうふうにとらえたかというのは分かるでしょう、竹中大臣。だけれども、それを一言も説明しないでここまで来た。出てきた内容を見たら、これは銀行自己資本の方は危ないから、これしっかりやりましょうと、それからセーフティーネットをしっかり構築しましょうと。  だから、これ、五勝一引き分けどころじゃないですよ。不良債権処理ということからいったら独り相撲だったんですよ。独り相撲だけじゃない、周りに被害与えますから、全く自爆ですよ、これ。ということを申し上げて、時間になりましたので質問を終わらせてもらいます。
  167. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 竹中大臣にお尋ねをいたしますけれども、竹中大臣はモルガン・スタンレー証券のロバート・フェルドマンさんという方を御存じでいらっしゃいますか。
  168. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) ロバート・フェルドマン氏はよく存じ上げております。私が二十数年前に初めてアメリカの大学に留学したときにお目に掛かって以来、そんなに頻繁ではありませんが、時々意見交換をする専門家であります。
  169. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 最近、アメリカのテーラー財務次官と御一緒に御面談をなされたことはございますか。
  170. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) テーラー次官がいらっしゃったときに、非常に短い時間、ごあいさつをしたことがあったと記憶しております。
  171. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 そのときにフェルドマンさんが竹中さんに、今のこの対策を作るに当たって、抵抗する議員やあるいは銀行関係者に対して指南をしたということを堂々と講演会の場所で述べているという、銀行経営者たちの講演の場所で竹中さんに指南をしたと、こういう形で堂々と講演をされていて、それを聞いた人たちが、非常にやっぱり、この来日したテーラー・アメリカ財務次官とかフェルドマン氏辺りは竹中応援のためのドリームチームだと、竹中金融相はやっぱりアメリカの代理人だったということを報道しているわけですね、大々的に。  私は、小泉さんがアメリカに行って不良債権処理策を加速させるということを言わざるを得なかった背景とここがリンクするので、そういうことなんだなというふうに私自身も納得しちゃったんですけれども、そういうことに対して竹中さんは御反論があったらどうぞお願いします。
  172. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) マスコミにはいろんなものが流れておりますが、そういうことで納得していただかないように是非お願いを申し上げます。  まず、フェルドマン氏が何かおっしゃったということのようでありますが、私はフェルドマン氏にはここ数か月間会っておりません。フェルドマン氏に会っておりません。テーラー氏にはごあいさつをいたしました。それで、ごあいさつして、ちょっと話して指南ということも、これはあり得ないと思います。  また、もう一つ小泉総理がアメリカに行かれてブッシュ大統領云々でありますが、私は、テーラー氏にお目に掛かったのはたしか先週ぐらいかなと、せいぜい十日ぐらい前かなと思っておりますので、小泉総理が訪米されたのは、これは一か月以上前ですか、一か月半前ですから、時間的にも全く符合いたしませんし、これはちょっと私から見ると何のことやらよく分かりません。
  173. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 そうだとすると、こうした公の場所でフェルドマンさんが竹中さんにそういうことを直々に教えてきたと、そうなんですよ、そういうふうに言っているとすれば、やっぱりこれはちょっとおかしいということも言わなきゃいけないでしょうし、しかし私自身は、これまで破綻をした企業がアメリカに、ヘッジファンドや何かに買い取られていくという結末を見ていくときに、必ずしもこの指摘、アメリカ側が、日本の今の現状の中で不良債権が多量に出てくる、そこをアメリカ側が買い取っていこうという方向というかな、そういうのを持ったとしても不思議ではないなというふうに思うわけでございまして、アメリカ経済の立て直しは日本企業不良債権を買い取るところからというようなことになっていくのではないかという心配があって言わせていただいているわけなんですけれども。  それでは、昨年の四月の六日に緊急経済対策と銘打ちまして、経済対策閣僚会議の中でこの不良債権オフバランス化というのが非常に技術論として明快に打ち出されていますよね。破綻懸念先以下の債権に区分されるに至った債権について、原則として三営業年度以内にオフバランス化につながる措置を講ずる。既に、破綻懸念先以下の債権に区分されているものについては、原則として二営業年度以内にオフバランス化につながる措置を講ずると。この措置で粛々と不良債権処理が実施をされてきているというふうに思うんですけれども、これでは足りないから今回出したということになりますか。その加速化部分なんですけれども、どうして転換をする必要があったのかということなんです。
  174. 伊藤達也

    ○副大臣(伊藤達也君) 今御指摘ありましたところについて、銀行も御努力をされてしっかり対応が進んでいるわけでありますし、また、残念ながら、そういう対応をしながら新規の発生も起きているわけであります。  そして、先ほどから当委員会でも産業の再生が極めて重要だというお話がございます。債権が劣化する前に早期の段階で本格的な産業再生企業再生につなげていく、そういう方策も非常に重要だという視点の中で私どもは今回の再生プログラムを出させていただいております。そうした目標を持ちながら、先ほどから大臣が答弁をさせていただいているように、平成十六年度末までに不良債権の比率を今の半分程度まで落として、そして、この問題の終局を実現をしていきたいというふうに考えているところです。
  175. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 竹中原案に対して総理は積極的にやれという方向付けをなされていったというふうに、ついこの間、二十五、六日までの報道はそういうことになっていたわけですけれども、急遽、今日の報道を見ますと、与党と相談しながらまとめてくれ、竹中原案に首相が引導を渡したと、こうなっていて、大幅に後退をせざるを得なかった事情が書いてありまして、竹中さんもさぞかし無念だったんじゃないかなという思いをしながらこの記事を読ませていただいたわけですけれども、麻生さんやら青木参議院幹事長さんやらが、更迭とか解散は駄目だというような方向の中で、妥協策を探って今日の報告書になった、プログラム報告書になったというようなことで、あと銀行の首脳は貸し渋りやむなしというようなことで見出しが書いてありますけれども、銀行の首脳、トップとの会談も様々な形で報道がなされていますけれども、その銀行トップとの会談の中で、竹中さんが譲らざるを得ないと決断をしたのはなぜですか。そこの理由を説明していただきたいと思います。
  176. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) 今の御質問は、何か竹中原案なるものがあって、そこから妥協したというような一つシナリオに基づいているようにお聞きいたしましたが、正確な経緯を申し上げますと、まず私たちは、これは非常に技術的な問題の積み上げでありますので、しっかりと論点を整理をいたしました。その論点の整理を踏まえながら、総理にこの論点にはこういう問題がありますということを報告しながら、おおむねこういうような方向で模索したい、より議論を詰めていきたいというふうに申し上げました。総理からは、その基本方針でよい、その論点の整理という基本的な考え方にのっとって、これは各方面と、与党とも相談して、また銀行業界の意見も聞いてしっかりと取りまとめるようにというふうに御指摘がありました。私は、総理の御指摘は大変正しかったと思いますし、それに基づいて私なりに、これは各大臣とも調整をしながら取りまとめに至ったということでございます。  銀行の方々ともちろんその過程で、これは三度ほど皆さんにも集まっていただいて御意見を聞きましたが、やはりこのままで不良債権の問題を放置しては駄目だということに関しては、銀行の首脳の方々は当然共通の認識を示してくださいましたし、それに関して、特に産業再生の在り方等々については非常に建設的な意見も下さいましたし、これは基本的には規制・監督の当局銀行の業界でありますから、立場は違いながらも、究極的な落としどころについては私はおおむね良いポイントが探れたのではないかなと。与党の方々とも様々に御意見を伺いながら結論に導いたということでございます。
  177. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 そうすると、おおむね九十点ぐらいに点数は付けられるということでございますか。
  178. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) 財務大臣は百点と言えというふうに言っておられますけれども、これは自己査定が甘いといけませんですけれども、これは当初一か月に大きな基本方針を示すという意味では非常に満足のいくものであったというふうに思っておりますし、関係皆様にも大変感謝をしております。
  179. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 大臣は満足がいくものというふうにおっしゃいますけれども、不良債権処理を加速させればさせるほど、やはりデフレ対策をもう少し充実をしていかなければならないというふうに思うんですね。  そうすると、この今回の報告書がデフレ対策の第一弾だとすると、第二弾目のデフレ政策というのはやっぱりデフレ対策脱却の政策というのが求められてくるんだろうと思いますけれども、その第二弾の打ち出す時期はいつごろになりますか。
  180. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) 第一弾、第二弾というようなものがあるわけではございません。既に政策のメニューとしては、第二骨太のとき以来、非常に広範に行き渡った政策のメニューが示されていると思います。重要なのは、ここまで議論されてきた四つの改革のメニューを、より大きく、より早く、より分かりやすく実行していくことであるというふうに考えているわけです。そうした観点から今回の総合策も取りまとめられています。  今後重要になるのは、来年度の予算編成に向けて、経済との関係、さらには様々な財政資金のニーズを見ながら、これをミクロの政策ニーズとマクロの環境とを整合させるような形でしっかりとした来年度に向けた予算編成をしていく、そうした中できめ細かな見方をしていくということが重要になってくると思います。
  181. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 必要であれば補正予算も組むというようなことも伝え聞きおいているわけですが、そういうことが言われていながら今まだそういう御答弁しかできないということになりますと、大変、先の見通しについて、不透明ではありますけれども、もう少し、やっぱり政治というのは二、三か月ぐらいの先は見通してやらなければ対応はできないんじゃありませんか。銀行側だってそうした見通しの中で、あるいは企業側だって見通しの中で自らどう立ち直っていくかということを探っていくわけですから、それは明快なやっぱり指針というか方向付けをしていくべきだというふうに思います。  竹中大臣に、不良債権とデフレの関係、その因果関係について基本的なスタンス、どう認識されているのかというところをお聞かせをいただきたいと思います。何回も聞いているように思うんですけれども、改めてお願いいたします。
  182. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) デフレと不良債権というのはもちろん相互にかかわっているわけです。デフレが進むことによって不良債権が新たに発生するという可能性、これはもう御説明の必要がないと思います。  問題は、じゃ、不良債権がデフレにどのようにかかわっているかということ。デフレというのは物の値段が下がることでありますけれども、これにはやはり三つの要因があると思います。一つはやはり需要側の要因、需要が弱いという可能性はあります。二番目が供給側の要因、海外から安い物が入ってくるとか、パソコンが技術革新で安くなるという供給側の要因があります。三つ目が、マネタリーなといいますか、金融的な要因。先ほどから、マネーがなかなか増えないというふうに申し上げておりますけれども、このマネーが増えない大きな理由として、これは日銀総裁が特に強調されたいことだと思いますが、日銀がベースマネーを三〇%、二五%増やしても、マネーサプライは三%しか増えない。信用乗数はこの十年間半分に低下した。そこはやはり信用の、要するに金融仲介機能が不良債権等々の問題で著しく低下している。  したがって、デフレを克服するためには、デフレの要因は多様ではありますけれども、やはりこの不良債権問題をきちっとして、マネーがきちっと回るような形に持っていく必要があるというふうに考えているわけです。
  183. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 不良債権処理デフレ対策かというその議論が随分と闘わされてきたわけですけれども、財務省の財務総合研究所の当時次長でありました原田さんの論文によりますと、不良債権が一%減少しても卸売物価は〇・〇〇三%しか上昇しないのに比べて、卸売物価が一%上昇すると不良債権は二一・一%も減少するという、これは緻密な分析結果で論文を著しているわけですけれども、実際には計算どおりいかないことが多いのかもしれませんけれども、デフレからの脱却は不良債権処理だけではなく、不良債権処理をやったとしてもデフレから脱却できる状況ではないのではないかというふうに思うのですね。  この原田論文と竹中さんが続けようとしている不良債権処理こそデフレ脱却だというこのところの違いをお認めになった上で、この原田論文について竹中さんはどんなふうにお考えになりますか。
  184. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) 恐らく御指摘の原田論文というのは日経新聞の「経済教室」ではないかと思いますが、これは短いスペースでそのポイントだけ書いておりますので少し誤解があるといけませんが、原田次長は私どもの今スタッフでございましてよく議論をいたしますが、原田氏の主張と私の主張はほとんど変わりません。基本的には、原田氏も不良債権処理は重要だということを極めて強調しておられると思います。  問題は、今申し上げたポイント一つだけ違うところがあるとすれば、やっぱりマネーを増やさなければいけない、マネーが増えるようにしなければいけないと。これはもう、だから全く同じなんです。一点だけ違いますのは、じゃ、マネーを増やすために、私は、不良債権処理を進めなければいけないし、日銀にも頑張って金融緩和をしていただきたい。私の理解しているところ、原田氏の主張は、特に日銀の役割が重要であると。その点、実はこれは総裁にも御意見を賜ればよろしいかと思いますが、その差だけであります。要するにマネーを回すようにしなければいけない。それは両方必要なんだけれども、どちらから先に手を付けるかというような微妙な違いがある程度だというふうに思っております。
  185. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 それは大変よかったです。原田さんの御意見も竹中さんのチームでちゃんと取り入れられているということですので、ちゃんと取り入れて実行していただきたいと思います。  日銀総裁に来ていただきました。デフレから脱却をしていくためにはやっぱり物価の反転上昇を起こさなければならないというふうに思います。そこで、不良債権処理だけでは駄目だということで、日銀も今度大幅な金融緩和策を出していただいたのは見せていただいておりますけれども、もう一段インフレターゲットという言葉について、日銀総裁は、デフレ下において実施をされたことがないということをもって、日本においてもまだインフレターゲットを設定をする意思はないというふうなお考えをずっと述べてこられてはおりますけれども、今回のこの緊急的な金融システムとか対策を出すに当たって、やはり日銀総裁としてもう一段、市場に明るさといいますか、力といいますか、そういうものを投げ掛けていくために、インフレターゲットというような言葉を使ってでも物価を上昇させていく意気込みというのを示していくべきではないかというふうに思うのですけれども、お聞きをしたいと思います。
  186. 速水優

    参考人速水優君) 私は、今まで申してまいりましたとおり、インフレターゲティングというのは今ここで設けても意味がないというふうに思います。インフレターゲティングを設けるというのは、金融政策の透明性を高めるというねらいだと思うんですが、枠組みだと思うんですけれども、これを達成する手段とかメカニズムがないときに、裏付けがなくてこれを言ってみても仕方がないと思います。現在の金利はゼロに達しておりますし、さらに様々な構造問題が金融緩和の効果制約しております。そういった中でインフレターゲティングを採用するとなりますと、政策の信頼とか市場への悪影響など、むしろ弊害の方が多くなってしまうおそれがあります。民間の需要が増えて初めて成長が起こり、物価が上がっていくということが順序だと思います。需要が高まらないままで長期金利が上昇するようなことが起これば、これは国債を大量に持っている銀行などは、これ値下がりがして大変なことになると思います。そういった悪影響を及ぼすリスクがあることを私どもは懸念しております。  日本銀行は、既に量的緩和をしたときに、インフレ率が安定的にゼロ以上となるまで現在の思い切った金融緩和の枠組みを続けるという宣言をしております。デフレ脱却への強い決意を表明したつもりでございます。この点においては政府のお考えとも同じ方向ではないかというふうに思っております。
  187. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 そうなんですけれども、さっき竹中大臣が金をどう回していくかということが肝心なんだというふうにおっしゃっているんですね。一千四百兆円と言われる国民の預貯金をどう有効利用をして預貯金にも金利が払えるような状況を作っていくか、そしてそのお金を原資にしながら、どう社会資本とかあるいはソフト面の政策とかを充実させていくかというようなことが今最も求められるんじゃないかというふうに思っておりまして、今回国債の買い切りも二千億円増額をしてくださいましたけれども、もっと積極的にそのターゲティングを、物価上昇率をゼロにするとか一%にするとかといってその金額を、国債を買う金額をもう少し増やして財源を作っていくということも私はこの際必要なんじゃないかというふうに思っております。  その財源について、どこへじゃ投資をするのかということになった場合に、従来の公共事業に投資をするということも、今までやってきて成功しなかったわけですよね。ですので、私はエネルギーの政策転換ということに大きく踏み出していただきたいということをこれはもう何度も申し上げてきているんですけれども、各家庭で使う電力は自分のうちの発電で間に合わせるというような発想が出てきたとき、過去において車などだれも持てると思わなかった時代があったわけですけれども、今や一人に一台という時代になっています。今、全部の日本の家屋に発電用の太陽光発電あるいは風力発電、水力発電、どんな方法でもいいと思いますけれども、自然エネルギーで電力発電の施設を造る場合に、国が大幅に援助するというような政策が大胆に打ち出されていってお金が使われていく、そして私たちの生活も安定して、そして安全な電力エネルギーを持つことができるというようなことにつながっていくのではないかと思って、こういうことに大いに使っていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  188. 小林興起

    ○副大臣(小林興起君) おっしゃるとおり、構造改革ということを小泉総理が言っておられますけれども、それは例えば財政についても、支出をただ抑制するということだけではなくて、その中身を変えていくという中に、従来型の公共事業から、おっしゃったような非常にニーズの高い、今の例えば太陽光発電について補助金が出ておりますけれども、そういうところに更にお金をつぎ込んでいく、非常にまた経済効果もある、国民のニーズもあるというような、そういう中の支出構造を変えていくことも私は非常に大きな構造改革だと思っておりますし、そういうことによって新しい仕事が出て、先ほどからずっとデフレ論が行われておりますけれども、やはり新しく、潜在的にあるような需要が本当はあるわけで、それを出してやって、そこにお金が流れるようにすれば経済活動が活発になるわけですから、もうそういう形で、最初に政府が補助金を出しても、やがてそういう産業が大きく育っていって日本経済が自律的に成長していくというような、そういう形に持っていくのが本当の今の総合的な経済対策だろうというふうに思っております。
  189. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 ありがとうございました。
  190. 柳田稔

    委員長柳田稔君) 本日の調査はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時五十一分散会