運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

2002-11-25 第155回国会 参議院 行政監視委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十四年十一月二十五日(月曜日)    午後一時一分開会     ─────────────    委員異動  十一月十八日     辞任         補欠選任      藤原 正司君     浅尾慶一郎君      和田ひろ子君 ツルネン マルテイ君  十一月十九日     辞任         補欠選任      山本 香苗君     加藤 修一君  十一月二十日     辞任         補欠選任      清水 達雄君     椎名 一保君  十一月二十一日     辞任         補欠選任      小川 勝也君     羽田雄一郎君  十一月二十二日     辞任         補欠選任      岩本  司君     榛葉賀津也君      羽田雄一郎君     小川 勝也君      加藤 修一君     山本 香苗君      田名部匡省君     高橋紀世子君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         白浜 一良君     理 事                 北岡 秀二君                 佐藤 泰三君                 高嶋 良充君                 続  訓弘君                 渡辺 秀央君     委 員                 加納 時男君                 近藤  剛君                 椎名 一保君                 橋本 聖子君                 林  芳正君                 福島啓史郎君                 森下 博之君                 森元 恒雄君                 吉田 博美君                 若林 正俊君                 脇  雅史君                 浅尾慶一郎君                 池口 修次君                 小川 勝也君                 岡崎トミ子君                 榛葉賀津也君                 鈴木  寛君             ツルネン マルテイ君                 鶴岡  洋君                 山本 香苗君                 岩佐 恵美君                 西山登紀子君                 森 ゆうこ君    事務局側        常任委員会専門        員        白石 勝美君    参考人        財団法人地方自        治研究機構理事        長        石原 信雄君        慶應義塾大学法        学部教授        弁護士      小林  節君     ─────────────   本日の会議に付した案件行政監視行政評価及び行政に対する苦情に関  する調査  (公務員制度改革に関する件)     ─────────────
  2. 白浜一良

    委員長白浜一良君) ただいまから行政監視委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る十八日、藤原正司君及び和田ひろ子君が委員辞任され、その補欠として浅尾慶一郎君及びツルネンマルテイ君が選任されました。  また、去る二十日、清水達雄君が委員辞任され、その補欠として椎名一保君が選任されました。  また、去る二十二日、岩本司君及び田名部匡省君が委員辞任され、その補欠として榛葉賀津也君及び高橋紀世子君が選任されました。     ─────────────
  3. 白浜一良

    委員長白浜一良君) 行政監視行政評価及び行政に対する苦情に関する調査を議題といたします。  本日は、公務員制度改革について、財団法人地方自治研究機構理事長石原信雄参考人及び慶應義塾大学法学部教授弁護士小林節参考人から意見を聴取した後、質疑を行います。  この際、両参考人に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙のところ本委員会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。委員会代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。  両参考人から、公務員制度について忌憚のない意見を承り、今後の調査に生かしてまいりたいと存じますので、よろしくお願いいたします。  議事の進め方でございますが、石原参考人小林参考人の順にお一人二十分程度御意見をお述べいただきまして、その後、各委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。  なお、参考人委員とも御発言は着席のままで結構でございます。  それでは、まず石原参考人にお願いいたします。石原参考人
  4. 石原信雄

    参考人石原信雄君) 現在、政府において検討を進められております公務員制度改革につきまして私の意見を申し上げたいと思います。  まず、今回の制度改革全般について、すなわち昨年の十二月二十五日に閣議決定されました公務員制度改革大綱全般について意見を申し上げます。  今回の大綱は、既に実施に移されております中央省庁等改革実施に当たる公務員の活動といいましょうか制度運用といいましょうか、そういったものが真にこの改革のねらいを達成しやすいように、また最近における行政を取り巻く諸情勢の変化というものを念頭に置きながら、公務員制度を抜本的に改革しようという考え方に基づいていると承知しております。その意味で、今回の改革の基本的な立場あるいは考え方の大筋につきましては、私は賛成の意見でございます。  この大綱をこれから法案化する作業が展開されると思います。現にその方向に向けて政府部内あるいは関係者の間で論議が進められているようでありますが、今回の制度改革は、行政全体の運営を円滑にするためにも、またその運営に当たる公務員制度改革の理念、内容を十分理解して当たっていただくためにも、法案そのもの及びその下位規範、具体的には政令でありますとかあるいは人事院規則でありますとか、そういう形でその内容具体化されていくと思いますけれども、その際には、政府としては、関係方面、特に公務員制度について大きな責任を持っております人事院、それから直接制度改革の影響を受ける職員団体との間の意見調整を十分に行っていただきたいと思います。  既に政府としてはそれなり意見聴取その他の努力はしていると聞いておりますけれども、ただ、この大綱が決定するまでの過程において職員団体などではその意見が十分聞いてもらえなかったというような不満も耳にいたしますし、また人事制度について大きな責任を持っております人事院当局も必ずしもこの大綱決定過程意見が十分くみ上げてもらえなかったというような不満を耳にいたします。また、一部報道などでもそのような向き報道がなされております。  私は、公務員制度については、公務員自身がその改革内容について十分理解していただく、そしてそのことについて国民も十分承知するということが大変重要ではないかと思います。したがいまして、これから大綱法案化及びその下位規範具体化に当たりましては、関係者十分意見を交わし調整するということが必要である、でき上がった制度運営を円滑に行うためにもこの法案作成過程及び下位規範具体化過程関係者の意思の疎通が十分なされるということが必要であると、このように考えております。  次に、個別の問題について意見を申し上げます。  まず、今回の制度改革の中で非常に重要な位置を占めております能力等級制度導入についてであります。  職員職務遂行能力に応じて等級に格付けるところの能力等級制度を今回導入しようとされておるわけでありまして、これによって公務員の任用、給与、評価というものの基準として活用されるようでありますが、そのこと自身は時代の趨勢として私は必要だと思いますけれども、ただ、この内容職員一般にまた世間一般に現段階ではまだ十分理解されていないんではないかという気がいたします。もちろん政府関係者としてはその努力をしておられるようでありますけれども、私はなお一層その具体化に当たりまして周知徹底を図っていただきたい。  それから、実際に実行しようとする場合には、現行制度の場合でも職員評価、いわゆる勤務評定などの実施については必ずしもうまくいっていなかったという反省があります。したがいまして、新しい能力等級制度導入に当たりましては、現場混乱が生じないように十分な試行を行ってもらいたいと思います。  それから、特にこの制度導入に当たりましては、評価というものが決定的な重要性を持っております。すなわち、能力評価あるいは業績評価、これらにつきまして、その具体的な仕組みあるいは運用方法、これについてまだ必ずしも明らかにされておりません。一般国民としてはまだ十分知っておりませんので、これからその具体化がなされるんだと思いますけれども、その具体化に当たりましては、人事制度担当者あるいは評価を行う立場の者、評価を受ける立場の者、こういった者の意見も十分にくみ上げて制度設計をしていただきたいと思います。  特に私が申し上げたいのは、こういった評価仕組みにつきましては、余り、理論倒れというんでしょうか、非常に微に入り細をうがったような制度を作っても、実際の運用に当たってはその制度が使いこなせないという弊害が起こりがちであります。私は、新しい制度はどこの職場でもこれは関係者によって運用混乱が起こらないようにできるだけ簡素な仕組みにしていただきたいと、それから、評価者主観が全体に余り、主観によって弊害が起こらないような工夫をしていただきたいと、このように思うところであります。  それから、三番目といたしまして、採用試験制度の見直しについてであります。  私自身行政経験が長かったわけでありますけれども、新たに採用されてくる職員と接した上での感想なんですけれども、いずれも公務員試験、特にⅠ種試験を合格してくる諸君はそれなり学科はよくできる。与えた試験問題については的確な解答をしているという人が合格してくるわけでありますから当然なんですけれども、ただ、実務に就いたときに、どうも学科試験ばかりできて実際の行政現場において判断能力に欠ける、あるいは自分で物を考え企画するという企画能力が欠けるという職員が少なくないのであります。  そこで、試験問題の作成、あるいは採用試験の仕方については、是非総合判断力あるいは政策企画能力等が分かるような問題の作成、あるいは試験の仕方、採用の仕方に工夫をしていただきたいと思います。この点は言うは易くして行うは難しという面がありますけれども、ただ、せっかく競争に勝って採用された者が職場に配置された段階で十分その能力を発揮できない、使い物にならないという者が多々ありますので、そういう点を、そういう本人にとっても不幸なことでありますし、また行政にとってもこれはロスになりますから、その点の検討を是非お願いしたいと思います。  それから、私が在職中にも議論があった事柄なんですけれども、試験合格者を増やす問題について。  私は、人物評価というものによって、先ほど申し上げましたような不都合が起こらないようにするためにも、ある程度、採用定員に対してゆとりのある合格者数を確保していただくということが必要であろうと思います。  しかし、新聞報道等で拝見したんですけれども、今年度、人事院において採用定数を従来より増やして二・五倍にしたところが、必ずしも結果が思わしくないような記事を拝見いたしました。私は、なぜそういう思わしくない結果になったのか、そのことを十分検討していただきまして、定数を増やすことによるメリットとデメリットと十分比較考量してその扱いを決めていただきたいと思います。  私自身経験では、採用数を従来よりも増やした方がいいと考えておる人間でありますけれども、人事院がこの弊害について言及しておられるようでありますので、それは採用側に問題があったのかどうか、その辺を十分検討していただきたいと、その上で合格者数増加幅を決めていただければと思います。  それから最後に、再就職の問題、適正な再就職ルールの確立についてでございます。  この問題は、公務員にとって大変切実な問題であります。特に最近の長寿社会の下で、公務員にとっても、従来の勤務年数を終えた後の生活の問題その他、非常に切実な問題があります。そこで、私は、いわゆる天下り批判等にこたえるためにも、できれば職員在職中に再就職しやすいような、例えば一定の資格を取得するとか、あるいは特定の技能を身に付けるとか、知識を、特別の分野の知識を深くするとか、再就職がスムーズにいくように在職中から何がしかの配慮をしていただきたい。もちろん、公務員は本来の職務があります。職務に全力で携わらなきゃいけないんでありますけれども、同時に、もう退職年齢が近づいてまいりますと、やはり後のことが心配になります。そこで、在職中に再就職を展望して、再就職しやすいような資格能力を持たせるような配慮をしていただきたいと思います。  それから、今回の大綱の中で、その扱いについていろいろ御意見、御批判もあるようでありますけれども、営利企業への再就職について。  従来、人事院承認しておったわけですけれども、これを人事管理権者承認に係らしめようと、こういう方向のようでございます。この政府側考え方は、やはり行政責任を持つ各省大臣が再就職についても責任を持ってこれに当たる方が責任の所在が明確になるんだと、そして、その再就職承認に当たっては内閣全体として厳格な基準を作ることで対応するから問題はないという説明をされているように承知しております。  この問題について、第三者機関である人事院承認する方がいいのか、直接行政責任を持つ各省大臣にその責任を持たせることの方が責任関係が明確になるのかと、これは立場立場でいろいろ御意見があると思います。  私は、公務員制度調査会のときにこの問題についても随分議論いたしました。各省意見も聞きましたし、職員団体の皆さんからも意見を聞きました。そのときには、内閣全体でこの再就職の問題を扱うという方法一つ方向かという議論であったように承知しておりますが、今回、政府は直接の行政責任者である大臣に再就職問題についても責任を持たせることの方が責任関係がはっきりするというお立場のようであります。当然、それについては誤解を受けないようにしっかりした承認基準というものを作らなきゃならないと思いますし、そのように準備をされておると聞いておりますけれども、私は、やはりこれから実行段階国民一般などから批判が起こらないように、私はこの面については内閣官房が深く関与する必要があると考えております。  具体的にどういう関与の仕方がいいのか、これから具体化に当たって御議論いただきたいわけでありますけれども、世間一般にいろいろな心配をする向きがありますから、それをクリアできるように、これは政府全体、内閣全体の問題でもありますので、そこの点は十分詰めていただきたいと思います。  以上、今回の改革は非常に広範多岐にわたっておりますけれども、私が特に感じた点について意見を申し上げさせていただきます。  ありがとうございました。
  5. 白浜一良

    委員長白浜一良君) どうもありがとうございました。  次に、小林参考人にお願いいたします。
  6. 小林節

    参考人小林節君) 私の意見の詳細は、お手元のレジュメと、それから後で恐らく質疑の際にお尋ねいただけるであろうことに譲るとして、今ここでは全体に関する印象として一点に的を絞ってお話し申し上げます。  それは、この改革案下敷きになっている民主主義という言葉の使い方なんですけれども、ちょっとそれについて気に掛かることがございます。  この改革案が出てまいりました背景は、もう御存じのとおり、多発した不祥事をきっかけとして機能不全信用低下行政の実情が明らかになってきたわけでありますが、そこで、行政改革の一環として機動性ある行政組織をということで今回の御提案になっているわけであります。  この御提案骨筋は、要するに行政部公務員採用人事管理、再就職の言ってしまえば自由化、つまり各府省庁自立化。それと並行して、言わば内閣の目付のような位置にいる人事院機能の削減ということであると理解いたします。その理論的根拠民主主義でありまして、要は主権者国民の直接代表である最高機関国会から指名された総理大臣組織している内閣が、そして内閣メンバーである大臣政治責任を持って行政各部門のチームを指揮し、責任も取る、これは筋通っていますよね。  ただ、この民主主義使い方に私はちょっと異論がありまして、民主主義というのは多様な意味がございまして、それ自体は目的でも何でもなくて、要するに自由で豊かで平和な良き社会を作る一手段として民主主義があって、民主主義のファクターとしては、側面としては、多数決民主主義、これがその下敷きにある民主主義です。多数派がその手続を踏んで押さえ込むと。でも、背後に主権者国民がいるからいいんですけれども、ただ、それが歴史的に間違いを起こした経験もあるからこそ、その中に多数決民主主義でない立憲民主主義といってチェックス・アンド・バランシズ機能も一要素として入れているはずなんです。それはどうなったのかな。  それからもう一つは、民主主義というのはあくまでも知らしめて論じ合って納得ずくで決めていく。そういう意味で、私は問題があると今回は思うんです。事実、議員先生方とお話ししても、意外と議員先生方国民大衆が知らないうちに事が運んでいってしまったという事実。つまり、これは民主主義手続論でありますが、そういう点で瑕疵があるということは、これは、見落とすとこれは先例になりますから私はよろしくないと考えます。  それから、繰り返しますが、多数決民主主義でいきますと、力の横暴な間違いがあり得たからこそチェックス・アンド・バランシズで、つまり国家権力を三つに分けて、更に立法権力を二つに分けて、更に行政権力内閣独立行政委員会に分ける、こういう仕組みを我々は憲法を根拠に持っているはずなんです。その根幹にかかわる問題ではないか。  それからもう一つは、民主主義も先ほど手段と申し上げましたけれども、民主主義の一機能として多数が少数を不当に扱わないためにぎりぎりの予防線として人権があるはずなんです。そうすると、この過程で、当事者片方権力を増し、そしてそれは立法手段によって増す。そして、片方当事者人権が軽んじられている。これも、それこそ非民主的ではないかと私は思うわけであります。  これが理論的な難点でありますが、更に機能的問題として疑義を提示しておきたいですが、これはもう方々で言われていることでありますが、本来、国のあるじである主権者国民、その直接代表たる最高機関国会議員たち、そこから選ばれた総理組織している内閣行政官僚を手足のごとく用いて国政を遂行していく。つまり、国会で決定された国策を現場で執行していく、あるいはそのフィードバックとしての政策提案を受けていく。この過程で、大臣行政官僚関係、これはだれでも知っていることですが、大臣年間最低数十件、ただ、現実に問題になっている地方の部局の建設関係担当の人が地方建設業協会天下りというのは、今は包括承認、ああいうものが問題だというんで、それをもし全部大臣に上げた場合、大臣通常政治家としての業務、ここにも大臣経験者たくさんおられますけれども、通常業務の傍ら何百件の人事案件を実際処理できるはずはない。つまり、目標は尊いんですけれども、できないことを言っても仕方ないと私は思うんですね、機能的な問題。  そういう意味で、結局は、日ごろ仕事を支えて、大臣を支えてくれている幹部職員が、この問題は官房長でしょう、大臣、これなんですけれどもよろしくと言われて、さあ判こを押さないことができるか。私は無理だと思うんですね。本当に釈迦に説法で恐縮でございますが。  そういう意味で、つまり、主権者国民国会議員国会議員の中から出てきた内閣、そして担当省庁大臣内閣メンバーですけれども、それと、本来主権者の道具であるはずの行政官僚集団の間がぷつっと切れちゃうと思うんですね。それは、すなわち官僚集団の独り歩き、つまり使用人があるじ関係なく主客転倒で動き出す、これも問題だったんじゃないんでしょうか。それを解決するような方向性がないんではないかという心配を感じております。  ただ、せっかくお呼びいただきましたので、私なりに、じゃどうすればいいのかと今思っているところを申し上げます。  これは、やはり行政改革は当然のことながら政治改革とセットであったわけでありまして、過去十数年様々な努力をなすって、私もその関連で呼んでいただいたことがありますけれども、もう選挙制度改革から何から、それから政党改革からいろんなことをなすって、やはり政治の側が、何というか、利害調整型から政策選択形成型に変わりつつある、これは事実だと思うんです。そして、政治がそういう点で行政に対するイニシアチブを、持っているとは言いませんけれども、持とうと今していると思うんですね。これを強めていくことがまず肝要であると思います。  それからもう一つは、特にここが参議院行政監視委員会なんで私は思い入れが激しいんですけれども、かつてこれの前身の調査会のときにお呼びいただいて、日本国行政オンブズマン参議院に作るべきであると発言させていただいた記憶があるんですね。正に、意外と同じ国会議員でありながらいつ解散があるか分からない衆議院に比べて参議院は腰を据えたお仕事がはっきりできる、予定表が立つんですね。そういう意味で、しかも参議院というのは歴史的にも何というか、リコンシダー、再考の府でありまして、生臭い権力闘争の近くにはいるんですけれども、ちょっと待て、考えてみようという府であったはずなんです。  そういう意味では、私は、やはり現場の最先端にいて、必要と直面している、そして能力がある、行政官僚集団というのは大変有り難い存在ではありますけれども、それだけに面倒くさいというか煩わしいというか、そういうものを避けてさっさと先に行こうとする性格を本質的に持っておりますから、それはやはり民主主義のコストとして、煩わしいチェックス・アンド・バランシズを入れておかないと大きな被害が出て、主権者国民が後で困ったなということになりかねないと思うんです。  でありますから、政治全体における政策志向型の政治改革を前進させて、行政に対するイニシアチブを高めていただくことと、それから、とりわけ参議院行政監視機能を高めて、正に役人のお手盛り自己審査などさせずに、ここでチェックなさったらいい、一つの場として。  それから、やはり人事院機能不全がいろいろこれとの関連で言われておりますけれども、機能不全だから人事院をつぶすとか権限を奪うというのではなくて、足りない点があったら人事院に改めさせて、逆に言えば、それは人事院機能の強化であり、あるいは、持っている刀を抜かないというのであれば抜きなさいよと激励してあげるとか、そういう形で、何を言いたいかといいますと、基本的なチェックス・アンド・バランシズのこの分離構造が壊れることの方が将来的には危ないんではないかということであります。  そして最後に、要するに、役所機動力を高めるということは、これは役所にかかわらずどの組織だって、私は大学の教師としてたくさん優秀な学生を行政府省庁に輩出しておりますし、それから仕事柄いろいろ、公法学者ですから接触もございますが、人材はいると思うんですね。要は元気をどうやったら出させるか。むしろ、例えば硬直したキャリア制度とか、そういうものが組織全体の力を発揮させ得なくなっているか。  これも本当に釈迦に説法でございますが、つぶれ掛けた会社が社長が替わることで立ち直ったりする、実はチームは同じなんですね。つまり、死に掛けていた集団を生かしただけの話でありまして、そういう意味では、試験制度を変にいじくるよりも、むしろ今いる人材はある意味では私は良い集団を集めておられると思います。むしろそれを生かす工夫の方をお考えになった方がいいんではないか。もちろん御提案者もそういう趣旨なんでしょうけれども、それはさっき申し上げたような原理的な難点、機能的な難点があるということは是非是非申し上げておきたいと思います。  多少早いですが、これで終わらせていただきます。
  7. 白浜一良

    委員長白浜一良君) ありがとうございました。  以上で参考人意見陳述は終了いたしました。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  8. 森元恒雄

    ○森元恒雄君 自由民主党の森元恒雄でございます。  それでは、お二人の参考人の方々に数点お聞きしたいと思います。  まず、今意見をお述べいただきましたことに直接関係はないんですけれども、現在進められようとしているこの公務員制度改革関連して、連合等がILOに提訴をしておりました。その報告が先週議決されまして、日本政府に対して勧告がなされたところでございます。まだ中間段階ということではありますが、このことが今回のこの公務員制度改革に少なからぬ影響を及ぼす面があるんじゃないかなというふうに私なりに考えますが、この点について、お二人の参考人にまずお聞きをしたいと思います。
  9. 石原信雄

    参考人石原信雄君) 先般、ILOから勧告が発せられたという新聞報道を拝見しております。その内容についても新聞で承知したところでございますけれども、かなり日本政府にとっては厳しい内容ではないかと思います。  すなわち、現在、公務員につきましては労働基本権の制約が前提になっていろんな制度ができておるわけですけれども、その労働基本権の制約そのものを撤廃すべきだという内容、あるいは、それを継続するんであれば現行の公務員制度全般を改革すべきだと。要するに全部見直せというような内容になっているようでございまして、これは政府にとっては大変厳しい内容であると思います。  政府としては、公務員制度改革に当たっては、当然、我が国が加入しておりますILOの考え方は可能な限り尊重していくべきだと思います。しかし、加盟国それぞれが、それぞれの国の実情というものがありますので、勧告をそのまま無修正で受け入れるというのはなかなか難しい実情もあるんではないかと思います。私自身政府内部で仕事をした経験からいたしまして、これなかなか難しい問題が多数含まれていると思います。  そこで、私は、やはり政府におかれましては、この勧告の内容を十分検討されまして、我が国の置かれている現状との兼ね合いでどうするか、精力的に検討していただきたいと。これから公務員制度改革をやろうという時期でありますから、当然このことを念頭に置いて取り組んでいただきたいと思います。  ただ、私自身経験からいたしまして、例えば、労働基本権の制約を全部取り払うというようなことが我が国の行政現場において大変な混乱を起こす可能性もあるんではないかと危惧するわけでありまして、その点は、行政全体に責任を負う政府立場においてこの点については十分な検討が必要ではないかと、このように思っております。
  10. 小林節

    参考人小林節君) 勧告でありますから法的拘束力はないんですけれども、ただ、非常に権威のある機関からの勧告でありますし、要は説得力で物を言う機関だから勧告なわけで、私はこの内容は非常にもっともな話だと思います。やはり公務員といえども、己の人的能力を売って、それで生活している労働者であることに変わりはないわけでありますから、その人について、雇主である政府の側に権限が一方的に強まって、これまでの代償措置が外されかねない。これは、ILOがよく言ってくれたと私は感じております。  ただ、この部分につきまして、じゃ労働基本権の問題どうするのか、政府側から具体的な案が出ていないんですよね。ですから、それをもう少し詳細に出していただいた上で本格的な議論に入るべきで、そういう意味では、政府の側から先行きの手のうちを見せてもらえるアクセルにはなるし、また、特にこういう場で責任ある議論をしていただく警鐘にはなって、大変良かったと思っております。
  11. 森元恒雄

    ○森元恒雄君 小林参考人にお聞きしたいと思いますが、先ほどの民主主義との関連でのお話の中では、私のお聞きした理解では、やはり政治がもっと主導した形での国家体制というものを作っていくんであれば、もう少しリーダーシップを発揮する、またその中で参議院の役割を十全に果たしていくということが大事じゃないかと述べられたかと思いますが、その政治主導型と、人事院第三者機関として果たしている役割、これもむしろ強化すべきだというふうにおっしゃられたわけですけれども、これがどういうふうに相互に関連するようにお考えか、お聞かせいただきたいと思います。
  12. 小林節

    参考人小林節君) 確かに説明不足でございました。  憲法上も内閣行政公務員の雇主でありますから、そういう意味ではイニシアチブを取るんですが、したがって通常採用とか人事管理とか、ただ問題は、採用の場合はむしろ党派性があってはいけないという特殊性があり、つまり原則と例外の話なんですね。それから、特に天下りの問題などは、これまでそこからスキャンダルが起きているわけですから、これも要するにむき身の政治の、何というか真ん中の道に任せておけない例外的部分。となると、周辺的民主主義原理であるところのチェックス・アンド・バランシーズとか人権配慮とかという、そういうことでいくわけです。  ですから、原則雇主内閣、だから内閣イニシアチブでは、これはいいんです。ただ、例外的に、人事院が担ってきたようなところは正に本筋でいかない、例外にする意味のある部分であって、ならば、そこが足りないというんだったら人事院強化と、それこそ内閣に対しては国会が牽制をするわけですから国会の力を強化と、こういうトータルの理解でございます。
  13. 森元恒雄

    ○森元恒雄君 先ほど石原参考人は、大筋において今回の大綱は自分としては評価しておるというふうにおっしゃられたわけでございますが、今、我が国の公務員制度、何が問われているかということを考えますと、公務員が相次ぐ不祥事を起こしておるとか、あるいは関係業界との官業癒着体質があるとか、各省のセクショナリズムがなかなか打破できないとか、そういう点を言われておるわけですけれども、そういうことと照らして、果たして今回の大綱が十分にそれにこたえるような内容になっているというふうにお考えの上で大筋賛成だというふうにお述べになったのかどうか、その点、確認的にお伺いしたいと思います。
  14. 石原信雄

    参考人石原信雄君) 今回の改革大綱は非常に広範囲にわたっておりますので、個別的にはいろんな議論もあり得ると思うんですけれども、ただ、改革の基本認識、基本姿勢として、行政責任を負う内閣あるいは各省大臣人事管理の面でも責任体制をもっと強化するという考え方に基づいていると思います。その点について私は基本的に賛成だというふうに申し上げているわけであります。  それから、給与制度などについても、最近の我が国の民間における給与の実態なども踏まえて、とかく従来の制度がいわゆる年功序列型である、能率に対する配慮が足りないというような御批判があったわけでありまして、その点を踏まえての改革であると、このように承知しております。  そういう意味で、個別具体の問題についてはいろいろ御意見があろうかと思いますけれども、基本的な考え方、基本的な方向については私は賛成であるということを申し上げたところでございます。
  15. 森元恒雄

    ○森元恒雄君 今回の大綱につきましては、労働団体、職員団体等から、特に人事院機能を低下させるものである、縮小させる方向で物事が進められようとしていると。もしそうであるならば、労働基本権を回復するということが本来の方向じゃないかと。しかし、労働基本権の制約については現状を維持するというのが大綱の前提になっているわけでございますが、この点についてどういうふうにお考えになるのか、両参考人からお伺いをしたいと思います。
  16. 石原信雄

    参考人石原信雄君) 御案内のように、現在の国家公務員法の下では、給与とか勤務条件などについての下位規範はすべて人事院規則にゆだねられております。それに対して、今回の政府の決定した大綱では人事管理権者責任において対処すべき部分については政令で定めるという部分を想定しているわけでありますが、私は、下位規範をすべて人事院規則にゆだねるのでなければ公務員のいわゆる代償機能が損なわれるという考え方には賛成しかねるわけであります。  もちろん、具体の内容によってこれは判断すべきだと思うんですね。人事管理権者としてこれを、公務員行政を最も効率的に遂行し得るようないろいろな仕組み制度を作ろうとする考え方自身は私は容認されてしかるべきではないかと。ただ、具体の、現在人事院規則で定めている事柄について具体的に今後、政令その他、人事管理権者側の考え方内容を決めていくということについて、それは個々の案件ごとに、事柄ごとにやはり十分議論を詰めていって決めたらいいと。一律的に一切手を触れてはいけないとか、あるいはすべて政府責任だという、そういう考え方はいかがなものかと思います。  初めに申しましたように、今回の改革によって二十一世紀の公務員制度運用されていくことになるわけでありますから、私は、これについては当然職員団体もある程度理解を示すということについて努力する、提案者側、政府として、提案者としてその面の努力を一層する必要があると思いますけれども、私は、内容によって人事院規則が政令に変わっても、そのことが直ちに人事院の権限の縮小とか機能低下ということにはならない、内容いかんであると、このように思います。
  17. 小林節

    参考人小林節君) 石原先生はケース・バイ・ケースとおっしゃいました。  私、これ原理、基本構造の問題のような気がいたしまして、つまり構造的には職員団体内閣は言わば敵対関係で、テーブルを挟んで向かい合う関係なわけですから、その向かい合う当事者が自らルールを作る権限を持つということ自体がアンフェアであると私は思うんです。こういう構造、しかも政府権力を持っている側ですから、こういう構造、ちょっと事例は違いますけれども、のものだと正にそれこそ違憲審査に引っ掛かる可能性、アメリカとかカナダではあり得るなと私は率直に思いました。  それで、ちょっと別な話なんですけれども、公務員、つまり要するに、代償措置がなくなったら人権を回復して労使交渉させるかということなんですが、ただ、人権というのはある意味では人間が、国民が一人の私となって世間に向かって自己主張する立場なんです。ただ、公職に就くという言葉は、そういう意味では抽象的な国家というものを具体的に私の体に化体して表す、つまり権力を担う立場公務員である以上、権力を担う立場就職した人が私、私とその立場で言うのは、何か僕は原理的な矛盾があるような気がするんです。  ですから、やはり公務員労働者は労働基本権、本質的に持っていないとは言えませんけれども、行使を凍結した意思に自らの意思で就職したんだから、そして、だからといって人権ないわけではないですから、それは第三者機関が守ってくれるという、正に人事院強化説になるんですけれども、あるいは、人事院、だからいいじゃないですかということになるんですけれども、そういう立場に立たせていただいております。
  18. 森元恒雄

    ○森元恒雄君 具体的な中身で二、三お聞きしたいと思いますが、今回の大綱は、現在の硬直的なといいますか、年功序列型の人事管理システムをできるだけ能力・実績主義に改めていこうという方向であるわけですが、先ほど石原参考人の方からもお話ございましたが、この人物の力を評価するということが、これは人が人を評価するわけでございますから、なかなか理屈では物事が考えられても、実際の場面では難しいんじゃないかなと。  現在の公務員社会で、じゃ、評価が行われていないかというと、それはそれなりに行われておるわけでございますが、何か今までではできないような全く新しい画期的な手法というのがそう簡単に生み出されるとも思えないんですけれども、先ほどのお話では詰めた検討をすべきだということで具体的なお話はなかったわけでございますが、果たして本当にそういうすばらしい評価方法というのが見いだされるものかどうか、その辺、お考えをお聞きしたいと思います。
  19. 石原信雄

    参考人石原信雄君) 先ほども申し上げましたように、現在、政府検討していると伝えられる能力評価制度について、具体的に評価がどういう方法でなされるのか、内容は私も承知しておりません。  ただ、この公務員制度運用に当たりまして、個々の職員能力とか勤務成績とか、そういったものをどう評価するかというのは具体の話になると大変難しいことを私自身も感じております。私自身公務員生活長くやっておりましたけれども、現行制度の下で、例えば勤務評定という制度が今あるわけですけれども、正直言いまして必ずしもこれはうまくいっていない、実際に運用が必ずしも実態に合っていないという感じを持っております。  したがいまして、そういう現状を改めるんだという点については理解できるんですけれども、しからば、これから能力評価とか成績、業績評価、特に能力評価をどういう要素でどういう基準でしていくのか、その基準を拝見しないと意見の言いようがないんですけれども、ただ、これは森元委員が御指摘のように大変難しい問題だと思います。難しいがゆえに、ここがうまくいくかいかないかが今度の制度改革を成功させるかどうかのポイントにもなりかねないほど重要な問題だと思います。  そういう意味で、私は先ほども申し上げましたように、これは、実際に評価担当する立場の人たちが評価を受ける立場の人たち、あるいは人事制度担当している人事院始めその他の関係者とよく意見調整をして、要は余り難しい基準、頭が痛くなるような複雑な仕組みというのは避けてもらいたいと。評価担当者としてそう困難を来すようなことなく評価実施できるように、もちろん本人が公正な立場職員能力評価をするということが一番大事ですけれども、そういう気持ちさえ持っておれば、公正に適正に評価できるような基準を構築してもらうことが大切であると、このように感じております。
  20. 森元恒雄

    ○森元恒雄君 あらかじめいただいております小林参考人のレジュメの中に、内閣機能を強化して、例えば一括管理、政治任用とかあるいはキャリア制度の長所の再確認と短所を再確認した上で、新しい幹部の選抜・養成システムの構築というようなことが書かれておりますが、ちょっといま少し中身、内容が分かりにくいので、この点、まず御説明をいただければと思います。
  21. 小林節

    参考人小林節君) ちょっと内閣を出してきたのは、今見ております改革案では各省庁のセクショナリズムが助長してしまうと私危惧しますので、ならば次善の策として、本当に総合調整機能を持っている、しかも本来の雇い主は憲法上は各大臣ではなくて内閣ですから、そちらで一括管理をなさったらいかがと。となると、当然そこにそれを管理する専門の官僚集団が必要になってくる。それは、恐らくは人事院が半分で、あとは各省庁からというような混成部隊になって、まだこの案よりはましであるなという趣旨でありまして、それが一点。  それから、もう一つの側面は、やはりこの国が機動的に動けないのは、アメリカを引き合いに出せばいいというものでもないんですが、高いレベルでのブレーン集団としての官僚が日本に育たない。それが政治任用も一つですし、それからキャリア制度のいいところは、あれで最後まで一生保障されるというのはえらい迷惑でありまして、エリート養成の入口は作れます。  そういう意味で、本当の意味でのスーパーエリート官僚をつくって、それを内閣ないしは大臣の横に配するということを考えて、そして政治主導、内閣主導、各省庁群雄割拠じゃなくてという意味で書いたものでございます。
  22. 森元恒雄

    ○森元恒雄君 今のお話の中のそのスーパーエリート官僚をつくるということは、先生のお考えでは、それは政治任用する別のグループということでなくて、一般職の公務員が年次を積み、経験を積み、そういう集団になっていくというイメージでございますか。そこの関連はいかがでしょうか。
  23. 小林節

    参考人小林節君) 入口は幾つもあってもいいと思うんです。やはり日本の行政はある意味では歴史があってよくできておりますから、その意味では、正に入口、Ⅰ種の中から鍛えられてスーパーエリート官僚に上がっていく者も必要ですし、それから、やはり時代は激しく動いておりますから、横から逆に今使える人材を政治任用する。ある意味では両方それでお役人、できたら行きっ放しにしてほしいんですね。つまり、元の役所に戻るとなると、そのことを考えてちょっと判断が鈍ったりされても困りますので、それも、そういう意味ではもはや政治任用の世界に入っていっちゃうということを考えております。
  24. 森元恒雄

    ○森元恒雄君 再就職の点でお聞きしたいと思いますが、先ほど石原参考人の方から、今回のこの大綱の案についてはいろいろ批判があるようだと、自分としても内閣官房が深く関与していく方法を考えるべきじゃないかというお話がございましたが、今の政府の案では、内閣ができるだけ厳格で明確な基準を作るとか、あるいは報告を求めて調整を必要によってはするとか、あるいはその内容、実態を公表するというようなことが考えられておるわけですけれども、これ以上に深く関与する方法としてお考えのことがあればお述べいただければと思いますが。
  25. 石原信雄

    参考人石原信雄君) 内閣がかかわるということの必要性を私さっきも申し上げたんですが、ただ、現実に各省大臣責任を持って行うこの再就職承認について非常に明快で厳格な承認基準というものを内閣が決めるということ、それはそれが前提なんでありますけれども、その後は各人事権者が第一義的な責任でこれを承認するということが政府の原案、考え方になっているようであります。  それについて、私は、やっぱりそれが実際に実行に移されたときに恐らくそれについていろいろ批判的な意見が出てくる可能性があるんじゃないかと。そのときには、私は、これは内閣としては、それぞれの主務大臣に任せた問題、主務大臣の管轄の問題だということで主務大臣責任にしてしまうんじゃなくて、やはり内閣全体の問題でありますから、そういう問題が起これば、内閣としてもその是正といいましょうか、疑惑の解明というか、そういったことについてはあるいは行動を取るべきじゃないかと思うのであります。  しかし、私は、内閣が深くかかわるという意味は、内閣が全面的に再就職問題は内閣承認を行うという意味ではありません。それは実際、内閣の今の組織からいたしまして、これは各省職員の再就職について初めから内閣が全部チェックするというのはとても難しいと思うんであります。やはり現実的な対応としては、厳格、詳細な承認基準を定めて、それに基づいて人事管理権者である各省大臣承認を行うと。しかし、ケースによっていろいろ批判が出てくるというような問題があれば、そのときは内閣が個別具体にその是正、解明にかかわるべきだと、そういう意味で申し上げたわけであります。
  26. 森元恒雄

    ○森元恒雄君 天下り弊害をできるだけ少なくしていく、なくしていくというためには、その方法もさることながら、根本的にはやはり現在のような早期退職勧告の制度というものを改めていくことが本筋かなと私は思いますが、政府も既にそういう方向で物事を進めていっておるようでありますけれども、そうしますと、反面、職員、特に若手の人の士気に影響するんじゃないかとか、組織全体の活力をそぐんじゃないかとか、あるいは定数管理、人件費管理が難しくなるんじゃないかというような問題も言われるわけでございますが、この辺の公務員の定年制との関係をどういうふうに考えたらいいのか、御示唆いただける点があれば両参考人からお聞かせいただきたいと思います。
  27. 石原信雄

    参考人石原信雄君) 早期退職の慣行を改めるべきだということは私も全く同感であります。私自身経験からいたしましても、非常に有為の人材が五十歳過ぎて間もなく退職せざるを得ないという状況は、決して人材の活用という意味からいっても好ましいことではありません。そしてまた、その解決策としていわゆる天下りというものが行われてきたということも事実であります。  そこで、それを少しでも緩和するというか改善するために、早期退職の慣例を是正して在職期間を長くするということは一つの案ですが、ただ、実際に、どこの役所だって最近の行政改革で管理職のポストが減っております。また、これからも減るんだろうと思います。そういう中でこの早期退職を改めるといいましても、じゃ、現実に、現に勤務年数を長くした職員をどう扱うのかという、組織としてはそういう問題が付きまといます。  そこで、公務員制度調査会などでは、いわゆる管理職としていくグループと、それからそれぞれの専門分野を決めて管理職から外れていくという複線型の人事管理というものを考えるべきだということを議論されましたが、私はそういう方向もこれから具体化させる必要があると思うんです。そういうことで当面対応するべきだと思いますが、しかし、それにしてもやはり根本的な解決にはなりません。  ですから、やはり本人の能力を生かして再就職の道を選んでもらう人が出てくるということ、これはもうやむを得ざる状況だと思います。その際にいわゆる天下り批判というものを受けないように、本人の能力に合った職場というものを本人あるいは任命権者一緒になって探していくということが一層必要になってくるんではないかと考えております。
  28. 小林節

    参考人小林節君) 定年延長の件で士気が下がるのではないかという御指摘がありましたけれども、逆に士気が高まる部分もあると思うんですね。この役所はずっと私のことを使ってくれるんだと。  それで、特に行政の分野では経験が物を言うことがたくさんあると思いますので、むしろ、今、石原先生のお話にございましたけれども、そういう方は専門的なところを深めていただいて、私、大学人なんですが、再就職先として、業者とかいうところではなくて、大学教授になられたらいいと思うんです。私も、こうやってある意味での実務にかかわらせていただいて、本当に大学では知り得ない、学ぶことが多いですし、その経験行政経験者と共同講座を幾つか持たせていただいているんですけれども、大学の質が上がります、間違いなく。  そういうだれもが批判しない天下り先を開拓するとか、それで停滞して嫌だという元気の良過ぎる若い人は、若いうちは再就職できるんですから、そういう人が出ていけばいいんだと思うんですね。  それから、これははっきり申し上げますが、行財政改革って何か、国会のこともそうなんですけれども、主権者国民に言い訳のようにダウンサイジングをしてみせるというのは僕は愚かなことだと思うんです。逆に手一杯になって仕事がいい加減になっちゃうと思うんです。さっきも申し上げてはいないけれども、レジュメにありますが、正にチェックの院としての参議院なんかはちょっと足りないんじゃないかと私は思うんですよね。  そういうことも含めて、日本国元気が出れば、財政問題片付くと思うんですよ。つまり、きちんと働いていただければ。そういうふうに見ております。
  29. 森元恒雄

    ○森元恒雄君 終わります。
  30. 池口修次

    ○池口修次君 民主党・新緑風会の池口でございます。  石原先生、小林先生、両先生には、大変お忙しい中この委員会の場でお聞かせを願いまして、大変感謝を申し上げたいというふうに思っております。  私の方から何点かお聞きしたいと思いますけれども、多少ダブるところがありましたら御容赦願いたいというふうに思います。  一つは、今回の公務員制度改革の目的について確認をしたいというふうに思っております。  現在、日本が置かれている状況というのは、国と地方が膨大な、数百兆と言われる借金を抱えておりまして、また経済はデフレの状態でありまして、将来が全く見えないという閉塞状態に置かれているというふうに考えております。また、その一方で、官と民の置かれている状況というのが違いがあるんじゃないかというところが私ははっきりしてきたかなというふうに思っております。  民間でいえば、大変なリストラの進行の中で、賃金は上がらないというよりかむしろ下がるというのが常態化してきておりますし、それでとどまらないで、失業者が相当増えて三百五十万人にも上がるということですし、経営者の皆さんにおいても企業の存続が難しくなったということを理由に自殺をされる方も増えてきているという中で、毎年三万人を超えるという自殺者、必ずしもこれはそういう問題だけではないと思うんですけれども、そういう状態ということで、今、日本の状況というのは大変な状況に置かれているというふうに思っております。  ただ、一方で、じゃ官の世界というのが何が言われているかというふうに考えてみますと、先ほどからも議論が出ておりますように、天下りの横行なり幹部公務員の不祥事なり、また国民不在で省庁のセクショナリズムの中で税金の無駄遣い等が行われているというふうに言われております。  私は、やはりこのギャップを埋めなきゃいけないというふうに思いますし、このギャップを埋めるための公務員制度改革は非常に今必要性が高いというふうに思っております。ただ、大綱は別にしまして、現在、行政改革事務局で検討されている案を考えさせていただきますと、新聞等でもいろいろ賛否があると思うんですけれども、一つ意見として、官僚主導の行政の復権を目指すものではないかという声さえ出ております。  両参考人の先生については、今回の、具体的に現在行政改革事務局が進められている公務員制度改革についてどのようなことを目指してやられているというふうに考えているのか、お聞きをしたいというふうに思います。
  31. 石原信雄

    参考人石原信雄君) 私どもは、政府が現在進めようとしております改革内容については、昨年の十二月二十五日に閣議決定されました公務員制度改革大綱によって知るしかない。それの具体化を進めているんであろうと承知しております。  その公務員制度改革大綱の基本的な考え方は、今、委員御指摘のように、最近の我が国を取り巻く諸情勢の変化を踏まえて、現在、終戦後基本的な構造ができた公務員制度について、今の時代あるいはこれからの時代に合うように見直す必要があるという、そういう認識があると思うんです。それについては私も同じ認識であります。  それから、具体の改革内容について言いますと、公務員に生じた不祥事の問題でありますとか、あるいは天下り弊害でありますとか、あるいは縦割りの弊害でありますとか、こういった弊害をまずは行政改革、中央省庁改革等で是正する措置が講じられたわけでありますけれども、その制度を実質的に動かす公務員の活動の諸規範を定める公務員制度をその改革の理念に合うように改めようというものでありまして、その点については私は必要であり妥当じゃないかと思っております。  ただ、個々具体の改革事項については、いろんな、各般の意見がございますので、そういった意見にも十分意を用いて関係者のコンセンサスを得て改革具体化されることが必要だと。この制度が、改革された公務員制度が円滑に運用されていくためにもその改革内容を詰めるプロセスが大変重要ではないかと、このように思っております。
  32. 小林節

    参考人小林節君) 今計画されている改革の目的というか目指すものについて、様々に共通の場があるものですから担当している方たちと議論する機会も私ございまして、彼らの動機は、恐らく政治家イニシアチブの下にトップブレーンとして存分に働きたい。それは全体に官僚性善説なんですね。ただ、仕組みの問題である以上、どうも目的は、動機はよろしいが効果は正に官僚主導の行政の復活になってしまう。そこから先は、それでもいいじゃないかと思っているかどうかはあちらの胸のうちで分かりませんが、十分に要注意であると私は思います。
  33. 池口修次

    ○池口修次君 具体的な問題は後ほどお聞きをしたいと思いますけれども、もう一つ、今回の改革の進め方につきまして報道なりされている部分を見てみますと、今回の公務員制度改革についてはごく一部の人が密室の中で進められているんじゃないかという批判が特にマスコミを中心にされております。  やはり今回の公務員制度改革は、先ほど言いましたように、民と官の置かれている立場をできるだけ近づけて、不信感をなくすという意味で言いますと、やっぱり有権者なり有識者、さらには、やはりそこで直接働いている人に多大な影響を及ぼすわけですから、そういう人たちと広く意見交換をしながら国民的合意を得てやるべきだというふうに考えております。当然、事務局に聞けばやっているんだというふうにお答えになるんでしょうけれども、ただ意見を聞くだけということと意見を参考にしながらいろいろ議論をするというのとでは大分違いますので、この点について、やはりそれだけ批判が強まっているということは進め方に問題があるんじゃないかというふうに私は考えているわけですけれども、両先生については、現在の進め方についてどのようにお聞きをしているか、若しくは考えているのかという点を教えていただきたいと思います。
  34. 石原信雄

    参考人石原信雄君) 今回の改革は、もう大変広範多岐にわたる公務員制度の、正に抜本改革の名に値するような内容でありますから、当然この改革の原案作成に当たっては、公務員制度に深くかかわっております各機関、特に人事院でありますとか、それからこの制度改革の影響を一番直接的に受ける職員団体意見、これを十分くみ上げて進めるべきだと思います。  私は、具体的には、それぞれ改革を企画し立案している内閣関係者としては、関係者意見をくみ上げる努力をしていると思っておりますけれども、具体的にどういう段階でどの程度の意見調整がなされたのか、これは承知しておりません。ただ、マスコミの報道等を見ますと、どうも関係者との意見調整というのが必ずしも円滑にいっていないんじゃないかという報道がなされておりますので、その点については私は心配しております。やはり、これから更に法案化等の作業が進んでいくわけでありますから、私はこれからも、これからでもいいから関係者の間に不信感が残らないように十分な意見の調整をしてもらいたいと思っております。
  35. 小林節

    参考人小林節君) 私も、基本的には今の問題意識を共有しております。  私も、いろんな党派の先生方と勉強会などで知り合っておりますので、この問題知っていますかとお電話すると、えっ、そんなふうになっているのと。これは大変なことだと思うんですね。先ほど冒頭に申し上げましたように、民主主義の在り方にかかわる、実質的には憲法改正にも等しいような大改革が、つまり官僚と主権者国民との主客関係をどうするかという問題でありますから、そういうものを何か説明もせずにとっとこ進めている。  ただ、担当者に文句を言ってみましたら、いいことを言っていました。正に今までの日本の政治は、事前に水面下で根回しをして、それで国会は儀式の場にすぎない、それじゃなくて、根回しの済んでいないものをぽんと投げたんだと、だから本当にここで議論をしてもらえるんで、ある意味では政治改革になると。開き直りかもしれませんけれども。  ただ、そこで大事な点は、某与党議員の方が、だってここまで行っている以上もうしようがないという言い方をしたんですけれども、それはその方の勘違いではないかと。そこのところを、大変僣越な申しようでございますが、あえて御報告したくてしゃべらせていただきました。
  36. 池口修次

    ○池口修次君 今、小林先生が言われましたように、取りあえず、半生と言うとおかしいかもしれませんけれども、いろいろ意見はあるんでしょうけれども出して、これからいろいろ意見を聞いて変えていくということであればいいわけだというふうに思いますけれども、それであれば、じゃ国会の場に調査会、これも調査会かもしれませんけれども、一部行政改革のこれは委員会ですから、これだけではふさわしくないんじゃないかという発言もあったわけで、やっぱりそれなり委員会を設けてやるというふうなことがあれば、確かにそういうことを言えるかもしれませんけれども、必ずしも私はそういう意図で出しているんではないんじゃないかなというふうに実は思っております。  三点目にお聞きしたいわけですけれども、先ほどILOの話も出てきております。私は、今回の検討案というのは、人事院機能と労働基本権の問題でいえば、非常に、今まで人事院が決めてきた公務員の勤務条件について、その大部分を内閣で決めようとする検討案ではないかというふうに受け止めております。その一方で、労働基本権については、現状のままなのかどうかというのは分かんないよという小林先生の話がありましたけれども、ほぼ現状のままで行こうというふうに考えているというふうに私は受け止めております。  そうしますと、何を意味するかということにかんがえますと、ある意味、労使という言い方、私は組合出身なんでそういう言い方しますけれども、やっぱり使用者側の権限だけを一方的に強めるという改正案ではないかなというふうに思っております。  ILOが理事会で二十一日に出したものも、日本政府公務員の労働基本権の制約を維持するとの公表した考えを再考すべきであるということで、このILOの理事会の中では、やっぱり今の公務員制度改革というのは労働基本権を維持したまま行おうとしているということについて警笛を鳴らしているというふうに思っておるわけですけれども。  基本権を付与するかどうかということについては、先ほど石原先生は取ったら大変混乱をするんじゃないかというふうに懸念をしておりましたけれども、私はそんなに混乱をするというふうには思っていないわけですけれども、そこは横に置きまして、一つに、労働基本権はそのままにして、労働基本権の制約の引換えに人事院に付与された機能というのを内閣に移すということは、私は非常に問題があるというふうに思っているんですが、先ほどとダブるというふうには思いますけれども、再度、両先生のお話を、御意見をお聞きしたいというふうに思います。
  37. 石原信雄

    参考人石原信雄君) 労働基本権の制約を引き続き残すかどうかという、これは国政上の大変大きなテーマだと思いますし、最終的には国民代表である国会の場でお決めいただく事柄だと思います。  ただ、行政の現状などを見ますと、今の我が国の置かれた状況の下で労働基本権の制約を取り払うということがどうなんだろうかということを考えますと、私も長く行政の場におった人間ですから、少し心配症かもしれませんが、大変混乱が起こるんじゃないかという心配をしております。  例えば、さっき新聞で見たんですけれども、ロンドンで消防職員がストライキをしておって、そのためにいろんな問題が起こっている、あるいは波及してロンドンの地下鉄が止まりそうだというふうなのを見まして、やはりこの問題というのは社会に与える影響が極めて大きいんだなという感じを持っております。もちろん、それは労働者の側、職員の側からすれば別の見方があり得るんだと思いますけれども。  いずれにしても、この問題は、最終的には政府並びに国会の方でお決めになる問題ではありますけれども、現状では労働基本権そのものの制約を解除してしまうということは大変難しいんじゃないかと。  そして、その問題と、労働基本権の制約の代償措置としていろんな定めがあります。その中に、人事院が広範にわたって権限を持っている、これとの見合いで権限が与えられているという仕組みになっていることも承知しております。  ただ、今回、政府提案しております改革案、昨年十二月の閣議決定の大綱によって見ますと、行政改革の理念をよりよく実現するために公務員制度改革したい、その改革のねらいというのは、やはり人事管理権者がもっと責任を持って公務員の勤務にかかわっていくと、そういう考え方になっております。そのこともまた行政改革というのはある意味国民的な要請でありますから、その基本姿勢については、私は一定の理解を示したいと思っております。  ただ、具体的に、じゃ、人事管理権者が管理権者として公務員の勤務その他の状況について責任を持っていくという場合に、具体的にどういう事項をどのように変えていくか。現在、人事院の規則で定められているものを政令に変えるというのであれば、どの部分をどのように変えていくのかという、そういう個々具体の内容に基づいてこれは判断しないと、一律に現在のシステムを変えること自身が労働基本権の制約を継続する問題と矛盾するというか新たな問題を出すという、そういう考え方に私は立っておりません。やはり問題は、どのような改正、どのような改革がなされるのか、やはり個々具体の内容に即してこれは判断すべき問題であると思っております。
  38. 小林節

    参考人小林節君) 今、石原先生は、人事権者、内閣大臣責任という言葉を使われて、行革事務局もこの責任という言葉をよく使うんですけれども、これは責任ではなくて権限争議になっていると思うんですね。  つまり、先ほども申し上げましたけれども、労使というのはけんかの当事者です。片方が公権力を持って条件を作るというのは、そもそも構造としてはアンフェアなんですね。つまり、そういう意味では、これ、準備している方たちは憲法十五条の国民主権と七十三条の内閣の管轄事項を根拠に抑え込むことの正当性を言いますけれども、これは、労働者としては二十八条の人権が法の定める適正でない手続によって奪われるということですから、憲法三十一条ですけれども、憲法三十一条に違反する二十八条の人権の剥奪ということで、それが制度化されたら、これは立派に憲法訴訟の対象になると私は思うんです。  国会が法律で詳細に決めれるならいいんですけれども、決めれない、ルールってそういうもので、それをけんかの当事者内閣が決めるというのはそもそも、何というか原則違反であって、だからこそ例外事項として人事院だったんじゃないですか。これを壊す理由が見えないんですね。と同時に、壊したら憲法破壊に近いと思うんです。これはきつい言い方ですけれども、お気付きいただきたいと思います。
  39. 池口修次

    ○池口修次君 では、石原参考人にお伺いしたいんですけれども、石原参考人公務員制度調査会の副会長という立場で一九九九年の三月に基本答申をまとめられたというふうに聞いております。今、公務員制度調査会というのがどうなっているかというふうに確認しましたら、調査会自体は解散はしていないんですけれども、委員の任命がされていないんで、今年の三月で自然消滅をしているというふうに聞いております。  そういう中で、この公務員制度改革について現在は行革推進事務局というところが議論をしておるわけですけれども、この石原参考人の作られた基本答申と、この今の進められているものとの関係についてどう受け止められているのかということと、石原参考人は今回の方針の、基本的には納得、理解をするということですけれども、ただ、話を聞いていますけれども、一部、やっぱりもう少し慎重にやるべきじゃないかというような発言もされておりますが、やっぱり具体的な内容については若干問題があるというふうに受け止めてよろしいかのどうかという点を確認したいと思います。
  40. 石原信雄

    参考人石原信雄君) 私が会長代理を仰せ付かっておりました公務員制度調査会の答申と今回の閣議決定されました改革大綱との関係でございますが、その改革大綱の策定の過程について、私、詳細説明を受けておりませんし、参画もしておりませんので、内容によって判断いたしますと、公務員制度調査会の答申の中に盛り込まれた内容が一部具体化されているものもありますし、また、公務員制度調査会の答申とは若干違った内容として決まっているものもあります。  したがいまして、全体としての印象でございますけれども、今回の大綱は、公務員制度調査会の答申を具体化するものというよりも、公務員制度調査会の答申の内容も踏まえて、その後の状況の変化あるいは政府部内全体の意見などをしんしゃくして、言わば新たな立場内閣としてこの大綱を決められたんではないかと、このように理解しております。
  41. 池口修次

    ○池口修次君 そうしますと、公務員制度調査会の答申をどういうふうに反映されたかどうかということについても、この事務局の方からは何ら説明もないというふうに受け止めてよろしいんですか。
  42. 石原信雄

    参考人石原信雄君) 今回の公務員制度改革大綱の策定の過程で、公務員制度調査会の答申との関係でこの答申をこうしたとか、ここはこう変えたとかという、そういう具体の説明はございません。  私は、公務員制度調査会の答申は政府に対して提出したものでありますから、受け取った政府として全体としてこの制度改革に反映させたんじゃないか、取り上げられるものは取り上げたということではないかと理解しております。
  43. 池口修次

    ○池口修次君 では、最後の質問を小林参考人にお伺いしたいと思うんですけれども、一つはキャリア制度の問題でございます。  今回の検討案、改定の検討案では能力主義をうたっておりますが、一方でキャリア制度を残すということで考えているようでございます。  私は、能力主義でやるのであれば、キャリア制度というのは、ある意味、その人の身分というのを保障する制度だというふうに受け止めておりますから、一方でキャリア制度をある人のために残しながら、いや能力主義なんだというのは、やっぱり説明としては矛盾をするんではないかというふうに思っております。  ただ、なぜ残すかというところで私が類推するに、前回の調査会でこのキャリア制度の問題にもなったんですけれども、ある政府側の答弁では、民間と競合するような優秀な人材は国に入ってきてもらわなくては困るんだという発言が出ております。ここら辺がキャリア制度を残す本音なのかなという感じも私自身はしているんですけれども、小林参考人は、キャリア制度、長所短所いろいろあるんだというふうに言っておりますが、本当に能力主義をうたいながらキャリアシステムならキャリアシステムを確保するということが説明が付くのかどうかをお聞きしたいというふうに思います。
  44. 小林節

    参考人小林節君) 理論的には矛盾ですよね。ただ、さっきもちょっと気付いたんですけれども、キャリア制度でエリートの保障をしないと人が来ないような職場なら、やめた方がいいような気が私はするんですけれども。いい仕事だということが分かれば人は来ると思うんですよね。だって、銀行だって商社だっていわゆるキャリア制度ないですから、隠れキャリアは知りませんけれども。  そこで、私が今考えている、つまり納得していますのは、議論の経過は恐らく、やっぱり公務員というのは一番間口の広い会社に勤めるようなもので、国家というのは何でも屋さんですから、そういう意味では、百科事典型の基礎知識を持っていた方が素材として使いやすいんですね。だから、あの試験なんです。  それはそれでいいんですけれども、人間というのはそれぞれ、先生も私も自分の人生考えても、どこでピークが来るか。たまたま大学入試でピークが来た人と大学卒業時の国家試験でピークが来た人、いろいろいるじゃないですか。そういう意味で、あそこで固定してしまうのはやっぱり良くない。  そこで、恐らく今考えられているのは、入口はある程度今の形で行って、三十過ぎて職場で使ってみた後で垣根を取っ払って、つまり今の制度でいうと、極端な場合、ある意味では、いや、たまたま試験できた以外何も能力ないなという人が紛れ込んでいたとしましょう。そうすると、そのままある程度もう保障されちゃいますよね。それはやめて、そこから先は職場で使いながら処遇していくという、そんなようなこと。と同時に、スーパーエリートというのは、やはり逆に言えば、初めからもう特訓特訓、特訓特訓。そういう意味で私は、今、折衷説のようなレジュメをここに置かせていただいたわけであります。
  45. 池口修次

    ○池口修次君 どうもありがとうございました。
  46. 山本香苗

    山本香苗君 公明党の山本香苗と申します。  本日は、貴重な御意見を本当にありがとうございます。  いろいろと質問用意してきたんですが、もうお二方の質問ございましていろいろと論点出てきましたので、なるべく重ならないようにお伺いしたいと思うんですが、どうしてもお答えが欲しいというものに関しては重なるかもしれませんが、お答えいただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。  まず、基本的なところから、本当に基本的なところからお伺いしたいんですけれども、いろんな今、公務員の不祥事あります。新聞で見ていて、何でこれが起こるんやろうと思うことがあるんですが、この原因について両参考人先生方はどのようにお考えになっていらっしゃるのか、まずお伺いいたします。
  47. 石原信雄

    参考人石原信雄君) 私は、公務員の不祥事について、その状況あるいはその不祥事を起こした人物、いろいろ関心を持って見ておりますけれども、やはり基本的に、不祥事を起こしたということは、公務員自身の自覚が足りないということが一番大きな理由ではないかと思っております。  言うまでもありませんけれども、公務員を志望する者は、国民のために、全体の奉仕者として勤務するということを言わば覚悟して就職していただいているわけであります。その就職したときの気持ちというものを堅持しておれば、およそ不祥事というのは起こり得ないと思うんでありますけれども、勤務に慣れて気持ちが緩んできたというところから発生したということではないかと思います。  公務員の不祥事をなくすために、これまでもいろいろ制度的に改革すべきだということで、例えば公務員倫理法でありますとか、その他いろいろな改革がこれまでもなされております。それは私は、それなりの意義があり、必要性があってのことだと思いますけれども、ただ、公務員自身の自覚がなければ、どのように制度を変えてもこれを完全に防ぐことはできないと思っております。そういう意味では、私は、公務員の倫理教育というんでしょうか精神教育というんでしょうか、そういったものが極めて重要だと認識しております。
  48. 小林節

    参考人小林節君) 幾つか考えられますが、まずは前提として、だれでも、人間ですから何事にも誤差はある、したがって不祥事は完全にはなくならないと思うんですね。  ただ、起きているものを見てみますと、例えば入口での志の欠如。やはり、公務に就職するというのは特別な使命感があると思うんです。それに対して、公益にささげるじゃなくて、権力が欲しいとか動機が曲がって、そういう人が紛れ込んでしまった場合には、今度は特権意識になって間違っていく可能性があると思うんですね。あるいは、これは別の面でいくと、ケースによっては、組織からはぐれてしまって面白くないから、後はもう立場を利用して私利私欲の世界にと。  これは、いずれにしても人事管理の問題だと思うんですね。これは本当に人事管理の問題として更に検討していく必要があるとは思います。  以上です。
  49. 山本香苗

    山本香苗君 時間が限られているので、どんどん次に行かしていただきますが。    〔委員長退席、理事続訓弘君着席〕  公務員とか官僚といったときに、やっぱりイメージとして、悪いイメージ、天下りというイメージが一番強いというふうにお伺いしたわけなんですけれども、こうした天下りの実態というのが明らかになるにつれて、どんどんやっぱり庶民感覚、国民感覚とずれているなということを感じるわけなんでございますが、今回の大綱におきます天下り承認権限を人事院から各省大臣に移管することについて、本当に国民の信頼を、回復を取り戻すことができるというふうに、国民の皆様方に分かりやすく、かつ、説得力のある御説明を石原参考人の方からいただきたいと思います。
  50. 石原信雄

    参考人石原信雄君) 先ほども申し上げましたが、このいわゆる天下り規制の問題に関連いたしまして、天下り承認の権限を従来の第三者機関である人事院から直接の人事管理権者である主務大臣に移し替えたということについて、言わばお手盛りなんじゃないかというような批判がマスコミ等で伝えられていることを承知しております。  ただ、今回の政府改革考え方というのは、やはりそれぞれの行政分野について直接最終的な責任を負っておる主務大臣がその責任において承認をするということの方が責任関係がはっきりしていいじゃないかというのが政府考え方と承知しております。そして、そのためには、各省大臣責任を負うといいましてもやはり厳格な基準がなけりゃいけないというので、承認に当たっての基準を、内閣の方で統一した厳しい承認基準を作るんだと、このように説明されております。  私は、そういう何といいましょうか天下りをしようとする職員の任命権者というか人事管理権者である主務大臣が全責任を負うという形、これは一つ考え方だと思うのであります。もし問題が分かればその承認した大臣責任というものが問われるわけでありますから、そういう責任関係を明確にするという意味で今回の案は一つの案だと思います。  ただしかし、やっぱり世間はそうは見ていない。それぞれの行政担当する役所の最高責任者である大臣承認するということになると、どうしても甘くなるんじゃないかというふうに思われがちでありますから、だから、私は、そこが心配ないんだと、政府の説明では厳格な基準でもって、内閣が定める基準でもってチェックするから心配ないという説明をされているようでありますから、そこのところをやはり世間一般にもっともっと、なぜ心配ないのか、なぜ大丈夫なのかということをもっと懇切丁寧に説明する必要があるだろうと思います。  それから、私は、やはりどういう制度を作っても、その運用に当たるのは人間でありますから、やはり批判を受けるようなことが絶対起こらないという保証はありませんので、そういう場合には、私は、行政府全体の責任である内閣が最終的な責任を負うわけですから、内閣が個別具体にもチェックできるようにしておくということが必要ではないかと考えております。
  51. 山本香苗

    山本香苗君 天下りの温床となっているのが先ほど来御質問がありましたキャリアシステムであると言われておりますけれども、実際よく学校でできる人がいい大学へ入って、Ⅰ種試験に合格して中央省庁に入って、大体周りも同じような経歴で出てきた人がエスカレーター式に年次で上に上がっていって高級官僚になるといったシステムでありますけれども、この点、改めて今年多少多様な人材を入れようということで二倍から二・五倍増やされたということをお伺いしているんですが、先ほど、このレジュメの方にも小林先生の方がお書きになっていらっしゃるので小林先生にお伺いしたいんですが、この四倍に増やすということについての問題点を教えていただきたいと思います。
  52. 小林節

    参考人小林節君) 意外な切り口なんですが、私、大学の教師やっておりまして、教え子が受けますよね。過去たくさんいるんですけれども、あれ受けて受かっても採用されないとなると、制度の信用がなくなるというか受ける気がしなくなっちゃうんですよね。私の大学なんかはまだいい方でして、つまり最近たくさん輩出していますからつなぎ方分かっていますから。私が教えているほかの大学なんかでは、受かった後どうしたらいいかが分からなかったし、だれも指導しないうちに時を過ごしてしまったり、そういうことがありますので、そこからだけでもちょっと困ったなという気はするんです。  恐らく、そうなると全部が崩れていって、まずはもう──はい、簡潔に。入口でそういう疑問がある以上、もうここから先、ちょっと私は付き合い切れないなと思っております。    〔理事続訓弘君退席、委員長着席〕
  53. 山本香苗

    山本香苗君 その四倍増やすとか云々その前にもう疑問が持っていらっしゃるということなんですけれども、今回の採用の見直しにおきましては、Ⅰ種、Ⅱ種というのがまだ残ったままのお話なわけなんですね。多分先生のいらっしゃる大学からはⅠ種にもⅡ種にもたくさん受けられる方がいらっしゃると思うんですが、こうした間口でⅠ種、Ⅱ種という形で分ける、そのことについてはどういうふうにお考えですか。
  54. 小林節

    参考人小林節君) 教師としてはところどころに関門があった方がいいと思いまして、三十過ぎたら境界を取っ払うという条件付で段階段階に、余り受験勉強に一生追われてもいけないですけれども、またその段階によって審査の基準が違ってきますから、そういう意味で、入口でⅠ、Ⅱ種の今のを残しておいて、ただ将来取っ払うというくらいがいいのかなと私は思っております。
  55. 山本香苗

    山本香苗君 今Ⅰ種、Ⅱ種、初めに間口があっても、こういうのがあってもいいということなんですけれども、公務員試験には実は年齢制限があるんですね。今だったら国家Ⅰ種受ける人、昭和四十四年が一番トップになるわけなんですけれども、こうした年齢制限についてはどういうふうにお考えになられますか。あることがいいことか、悪いことか。
  56. 小林節

    参考人小林節君) 特別任用などの人たちは別として、基本的にはチームで上がっていく、世代ごとに人をそろえておくということは組織として健全なことだと思いますので、年齢制限はあってしかるべきと思っております。
  57. 山本香苗

    山本香苗君 もう一つ、今回の改革一つの柱が能力制度で、先ほど御質問ございました。この制度採用することというのは、一生懸命頑張っている公務員の方々、特に若い人にとって励みになると思います。  私も実は議員になる前に公務員でありまして、とにかく若いときというのはガッツがあるし体力があるからというのでもう徹底的にこき使われるわけなんですけれども、一か月間に二百時間超超過勤務というようなのがあったりとかしまして、立場を利用して何か悪いことしようなんて考える暇もないほど忙しいし、毎日午前様で終電までダッシュで走っていくと、そういった生活が毎日続いておりました。でも、一つ仕事をやり遂げるという充実感はありまして、本当にいい職場で働かせていただいたと思っているんですが、こうした努力評価されるような能力制度であればいいと思うんですけれども、他方、本当に評価する人たちの判断とか基準とかいうものがあいまいであるので、どう活用されるのかなというところが大変心配しております。  そこで、両先生に、この能力制度採用するに当たっての、先ほど石原先生の方からは意見調整が必要だと言われたんですけれども、意見調整というのもなかなか大変な行政業務をやっている中で難しいことだと思うんですけれども、注意しなくちゃいけない点、これからどういうふうな形で進めていったらいいかというところをお伺いしたいと思います。
  58. 石原信雄

    参考人石原信雄君) 先ほども申し上げましたように、今回の能力給、業績給というもので給与、昇進管理その他を行うというこの制度改革、やはりその中心、一番ポイントになるのは、その能力をどうやって、だれが、どういう手順で、どういう方法評価するかということに懸かっていると思うんですね。その評価の結果について、やはり評価をする側だけじゃなくて、評価を受ける側も全体として納得するというようなものでなければいけない。  そういう意味で、私は私自身が具体案を今持っているわけじゃないんですけれども、これからの公務員制度運用していく上で決定的な重要性を持つこの制度については、私は、評価を行う立場の人たちと評価を受ける立場の人たちと、それからこれまで公務員制度に深くかかわってまいりました人事院やその他の人たちの意見を十分くみ上げて制度を作ってもらいたい。そして、それからでき上がった制度は、繰り返すようでありますけれども、余り複雑、難解なものではいけないと。いろんな職場でこれを使うわけですから、できるだけシンプルなもので、かつ評価を行う人たちの恣意的な考え方が出ないようになるべくその制度設計をしてもらいたいという、そこが大事だと思っております。
  59. 小林節

    参考人小林節君) 正に戦後日本官僚の最高峰の石原先生にして能力という言葉の説明ができないんですね。この事実は大事。つまり、これはマジックワードでありまして、これは極端に言えば、有能と無能のレッテルをだれかが付けるんですね。これ言葉自体、私は使うべきではないと思います。ですから、能力給などということ自体が大変な間違った道に入り掛けているんではないかと思うんです。  民間企業で、御存じと思うけれども、よくできの悪い人を窓際に置いて肩たたきますよね。ただ、多くの場合、見ていると、窓際に置いて半年ほっておくとみんなでき悪くなっちゃうんですね。人間として腐っちゃうんです。  ということでありますから、能力という訳の分からない言葉で基準なしの世界に入っていこうとしているんだと思うんです。これは私は要注意だと思います。むしろ、今までの制度の方が、ある程度年次などで一応なセーフティーネットがあって、その中で働き具合を見て処遇していく、この方が組織を全体として壊さない、活性化を維持する良い点ではないかと思うんです。
  60. 山本香苗

    山本香苗君 確かに、できるできないとかいう形で判断していくのは非常に難しいことだと思うんですけれども、できないんだったらちょっとできるようにするためにも研修とかいうものがいろいろあるわけなんですね。  入省後、私もいろんな研修受けさせていただきましたけれども、こういう国民の全体の奉仕者としての公務員の在り方や、お役所意識というものを捨てて、セクショナリズムというものを乗り越えて、日本の国のことを、国民のことを思うような人材の育て方、研修の在り方、どういうふうにあったらいいのか、これについて両先生にお伺いします。
  61. 石原信雄

    参考人石原信雄君) 研修制度については、人事院政府側もそれぞれこれまでいろんなシステムでこれを実行しております。  私は、研修にとって大切なことは、もちろん行政については法令その他最小限度必要な知識を持ってもらわにゃいけない、それから世の中のいろんな情勢についても認識を持っておらなきゃいかぬという、そういう面もありますけれども、私はやっぱり一番大切なことは、公務員としての心構えというんでしょうか、全体の奉仕者としての公務員の信念というかそういう責任感というか、そういうものを徹底的に持ってもらうような場を是非考えてもらいたい。  従来の研修は、とかく技術面についてはいろいろ制度が整備されてきているんですけれども、一番ポイントになる精神面ということは余り重視されてこなかったんじゃないかという気がいたします。私自身がそういう時期、公務員生活を送ったものですから、そういう反省というかそういう気持ちがありますが、是非私は、今起こっておりますいろいろな公務員をめぐるトラブルの一番基本はやっぱり本人の自覚、責任感の欠如にありますので、その点は是非とも研修の中でそれにウエートを置いてもらいたいなと思っております。
  62. 小林節

    参考人小林節君) 私、最良の研修は、良き上役に出会うか、あるいは最悪の上役に出会うことだと思うんです。私も各種の公務員研修の講師をさせていただきましたけれども、それよりも今申し上げた点に尽きるので、となると、これは政治家先生方に申し上げておきたいんですけれども、やはり各省庁の幹部人事だと思うんですね。それは、よく考えたら政治の側が持っているはずなんです。そういう意味では、でき得る限り若い人たちに良き上役を与えてあげていただきたい、それが最良の研修だと思います。
  63. 山本香苗

    山本香苗君 最後にお伺いしたいんですが、いろいろ御質問させていただきました。現在進行している公務員制度改革というのがどうしてもすとんと落ちないところがありまして、というのはやっぱり国民の意識とちょっと懸け離れているんじゃないかなというところが感じてならないわけなんです。そのせいで国民の皆様方の関心も薄いのかなというところもあるわけなんですけれども、小林先生の方に、レジュメの方の三の七番、提案者側が主権者国民に対する十分な説明責任を果たしていないんじゃないかというふうに書かれていらっしゃいますけれども、このような国民感覚とのずれというものをどう正していくことが必要なのかということをお伺いして、終わらせていただきたいと思います。
  64. 小林節

    参考人小林節君) 正に今やっているようなことをやっていただくと。つまり、行政の手抜きを正に参議院行政監視委員会が公然化することによって国民に知らしめていただきたいと思います。
  65. 山本香苗

    山本香苗君 どうもありがとうございました。
  66. 岩佐恵美

    ○岩佐恵美君 本日は、参考人の皆さん、大変お忙しい中ありがとうございます。また、貴重な御意見、ありがとうございます。  私の質問もかなり前の方とダブるところがあると思いますけれども、その点は御容赦いただきたいと思います。  今国民公務員制度改革に求めているものが一体何なんだろうということを考えたときに、やっぱり大蔵省の不祥事だとか、あるいは最近ではもう外務省の不祥事だとか、そういう一体官僚システムの中で何でこんなことが起こるのか、自分たちの税金が無駄に使われていて、そして公務員が幾ら悪いことをしてもなかなか罰せられない、こういうことが横行しては困るというのが率直な気持ちだろうと思うんですね。  それで、まず石原参考人、お伺いしたいんですけれども、参考人は「官かくあるべし」という本の中で大蔵省の不祥事についていろいろと書いておられるわけですね。これは、先ほど言われた公務員の自覚が足りないということではなくて、背景的な分析を参考人としてされているように私は思いました。私はこれに賛成とかというのではないのですけれども、そういう見方もあるのかということで読ませていただいたのですけれども、例えば、昨日今日の新聞に出ておりますけれども、外務省の四億五千万円の裏金の問題、そして五千万円については私的流用をしていたというようなことが今大きな問題になっておりますけれども、こうした外務省の問題について、じゃ大蔵省の分析をされたと同じように何か背景的なお考えがあるのかどうかということについてまずお伺いをしたいと思います。
  67. 石原信雄

    参考人石原信雄君) 私は、公務員の不祥事が起こる一番の基本的な原因は、先ほど来申し上げておりますように公務員自身の自覚の欠如だと思っております。  ただ、そういう自覚の欠如した人物がそういう具体的に不祥事を起こすに至った経緯というものもしっかり調べておく必要があると。自覚のない人物が大きな権限を与えられて特定の部署に長く勤務するということになりますと不祥事を起こしがちであると、過去の経験からいたしましてもそういうことが言えると思うんです。  そこで、私は先ほど申し上げましたように、まず公務員自身、特に幹部公務員につきましては、公務員としての、全体の奉仕者としての倫理教育、倫理ですね、責任感というものをしっかり持っていただくための研修、これは採用の当初からそれをしっかりやっていただく、知識だけじゃなくてそういう心構えの研修をしっかりやっていただくということが基本ですが、その後、やはり特定の人物に権限を集中させる、そしてその人物が長く同じポストにとどまるというようなことになりますと不祥事を起こしやすくなる、そういうケースが多くなるということもまた事実であります。  そこで、それを防ぐためには人事管理の面で特定の人間を長く同一ポストに置かないように、特にお金を扱うあるいは大きな権限を扱うようなポストについてはなるべく一定の時間、期間を置いて交代させるというような配慮も必要だと思います。  それから、やはり権限について、特に行政執行権については、特定の人物が何でもできるようなことにするということは非常に危険であります。外務省の不祥事などもそういうところに問題があったようでありますから、やはり予算の執行とかあるいは許認可権の行使とかについては適当なチェック機能、権限配分というものが確保されなきゃならないと、このように思います。
  68. 岩佐恵美

    ○岩佐恵美君 私は、今回の改革で本当に、例えば幹部が長いこといるのがいけないから、だからそういうことにきちっと物を言っていけばいいんだということだけで、今度の改革で今の不祥事がなくなるのかどうかということを疑問に思っているし、むしろ逆だろうというふうに思っているわけですね。  この間、私、この委員会質疑でお話をしたのですけれども、今問題になっております公務員能力や業績の評価について各省大臣が行うということです。それは、先ほどから議論になっておりますように、個々の公務員について大臣が直接評価できることではないでしょう、結局人事担当幹部職員が決めることになるでしょうと。そうすると、省の方針をどれだけ貫いたかが評価基準になっていくわけですけれども、公務員を対象とした人事院のモニターアンケートの調査では、企画立案において各省職員が与党内の意見調整に走り回るなど、本来政治家がやるべき仕事をやらされているとか、許認可、補助金交付などの執行事務でも政治家への対応に多くの時間を費やされるとか、いろんな公務員本来の、それこそ全体の奉仕者として仕事をしなければいけない、憲法第十五条にあるような仕事をしようと思っていてもそれができないでいる。それが恐らく鈴木宗男氏の事件に現れている。あれは氷山の一角だろうというふうに思うんですけれども、それをなくそうという公務員制度改革が、実は今のようなこういう人の能力評価をしていくということになると、ますます悪い方向に行くのではないかという気がいたします。  その点について、小林参考人からお話を伺いたいと思います。
  69. 小林節

    参考人小林節君) 今、先生のお話を伺いながら、逆に頭の整理をさせていただきまして、おっしゃるとおりということでございます。  だとすると、確かに、議論をしているうちに忘れてしまっていたわけでありまして、この論点を。言われていたはずで、行政役人が与党内の根回しに走り回るのは本来憲政の邪道でありまして、だから政務官とか副大臣で、つまり政党と役所の接触はそこに限るという議論があったはずなんですね。もちろん、それから許認可介入、これはもう与党政治家の伝統的な何というかしら、利権というか集金システムになっていて、これはもう鈴木宗男事件が公然化してくれたわけで、これも接触禁止とかこういう話をする方が筋だと、やはりちょっと今、今日の議論に集中して忘れておりましたが、本当に大事な点だと思います。むしろありがとうございました。
  70. 岩佐恵美

    ○岩佐恵美君 ありがとうございました。  それで、もう一つ気になるのが天下りの問題なんですね。  これまで規制自体が公務員在職時に直接許認可にかかわっていないからよいとか、あるいは業界団体や特殊法人、公益法人への天下りは野放し、この間の委員会でもちょっと指摘をさせていただきましたけれども、そういう甘い事態が今の深刻な問題を引き起こしていると思うんですね。  この問題について、改革案では人事院の事前審査をなくして内閣が定める基準に基づいて各大臣天下り承認をする。実際には官僚の審査とならざるを得ないわけで、次の天下りを考える官僚による審査が厳しい審査が行われるということは到底期待できないと思うんですね。天下り公務員が出身官庁に働き掛けは禁止するんだというけれども、抜け道は幾らでもあって、これでは天下りを原則自由化するものと言わざるを得ないと思うんですね。  この間の議論でも、渡りについては、毎回毎回退職金もらっているのがけしからぬのであって、退職金を一括して払うということにするからいいんだということ、そういう説明がありました。だとすると、何だ、渡りをどんどんやりなさいということじゃないのと、そういう声がこの委員会の中でも出ましたけれども、私は、そういう点で高級官僚の天下りというのはやっぱり一定期間原則的に禁止をするということでやるべきだと思うんですけれども、その点、石原参考人小林参考人のお考えを伺いたいと思います。
  71. 石原信雄

    参考人石原信雄君) 天下り問題につきまして、お尋ねの点は、高級の公務員については退職後一定期間いわゆる天下りを禁止すべきだという御提案だと思います。この点については、その禁止期間をどのくらい設定するのかという問題もあると思いますが、私は公務員のどこから高級公務員と言うのか定義も問題だと思いますけれども、一般的に公務員が再就職することで世の誤解を受けるようなケースについては、これはなるべく避けた方がいいと。そのために再就職に当たって厳格な基準を設けるということは当然必要になってくると思います。  ただ、退職する公務員についても、やっぱりその持てる能力を生かしていくということもまた認められるべきでありまして、再就職を禁止する期間がどのくらいになるのかにもよりますけれども、長期にわたって再就職公務員なるがゆえに、いわゆる高級公務員であるがゆえにその道を閉ざすということについてはいかがなものかと思います。  もちろん、一般批判されているようなことが起こらないようないろんなチェックは当然なされるべきでありますけれども、厳しい審査基準承認基準というものを設けるということは前提といたしまして、とにかく相当長期にわたって再就職を禁止するということについては、私はいかがなものかと思います。
  72. 小林節

    参考人小林節君) 高級公務員であるから人材を生かすという意味での再就職の道を閉ざすのはいかがなものかという御議論でしたが、逆に言えば私は、高級公務員ならばこそ、定年延長もあることですから後はもう年金生活に入る、こういう選択肢も僕はあっていいと思うんですよね。なぜならば、能力を生かすと僕も今までそう思っていました。でも、見ていますと能力を生かすというよりも顔を生かしているだけなんですね。威張っていたほどの能力は特別ないと思うんです。つまり、我々並みの能力はあります。特に活用と言いたくなるほどの能力が本当にあるのか。また能力話に入っちゃいましたけれども。  そういう気がいたしまして、むしろ禁止というのも一つの選択肢で私はあると思います。なぜならば、それは高級公務員であったればこそ、権力がゆがむからなんですよ。これは職業選択の自由の侵害だ、人権問題だと騒がれたとしても、これは権力の構成を維持するという点で十分公益にかなっている人権制約だと思うんです。それに待遇もあるんですから、いい退職金と年金もらえるわけですから。  それから、先ほど先生が最初におっしゃった今の改革案では、天下り人事院の事前審査から担当省庁の言わば官房長による形式審査に変えていくという、これ立案者に聞いてみますと、やっぱり人事院の人々は現場の事情を分からないくせにと言う。でも、分からない人が形で審査するから審査になるんで、分かり過ぎた人が明日の我が身でさっきおっしゃったように審査しているんじゃ、これは審査にならないんですね。しかも審査という以上、それは裁量の余地が入りますから、必ず良くない方に転びかねないんですね。だから禁止でいいと思うんです。禁止だったら審査の必要ないですもの。  それから、それとの関連で──忘れました、済みません。
  73. 岩佐恵美

    ○岩佐恵美君 今のこの公務員制度改革で非常に大きな問題になっているのが労働基本権の問題です。それは、ILOの勧告でなお一層クローズアップをされてきているわけです。私どもの考え方では、元々公務員の労働基本権というのは新憲法の下で保障されていたわけですから、公務員の労働基本権の剥奪というのはこれは不当なものであるというふうに考えているわけですけれども、そういう状況の下で人事院が、人事院制度が作られて、そして先ほど小林参考人人事院制度の強化こそ必要であるというふうに言われましたけれども、そういうこともなく、逆に人事院制度が弱体化していくということであるわけです。  その点について、人事院総裁も質疑の中で、公務員労働者の、公務員の勤務条件は代替機関が適切に機能する仕組みが必要だ、それを変えるとなると難しい憲法上の議論が出てくるということをおっしゃっておられたわけですけれども、その点について石原参考人のお考えを端的に伺いたいと、改めて伺いたいと思います。
  74. 石原信雄

    参考人石原信雄君) 労働基本権の制約を今後も残していくということであるならば、その制約の代償機能というものに十分な配慮がなされるべきだということ、これは私も全く同じ意見でございます。そうして、その代償機能というものを具体的に保障するための組織として現在人事院があるわけでありまして、私は、その人事院重要性、役割の重要性については、いささかもこれは後退させるべきだという考え方ではございません。  ただ、個々具体の事項、法改正に伴ってそれを具体化するための法律、機関をどういう法形式で定めるかについては、やはり人事管理権者がより効率的に公務員が勤務しやすいような状況を作るために必要だと考えた場合に、一定の事項については政令で定めるという選択肢も私はあり得るんだろうと思うんです。これが、政令で定める事項が一つでもあればそれは人事院の権限の弱体化だという、決め付けるのはいささか疑問であります。  やはり私は、基本的に人事院重要性というのはこれからますます大切にせにゃいかぬと思っております。そして、具体的に公務員の勤務条件その他について、政府責任で決める分野とそれから第三者機関としての人事院責任を持っていく分野とおのずからあると思うんですが、やはりこれは、抽象論、一般論ではどこまで行っても平行線になってしまう。やはり個々具体のケースについて判断をしていくしかないんじゃないかと、このように私自身は考えております。
  75. 岩佐恵美

    ○岩佐恵美君 石原参考人は今度の改革人事院の必ずしも権限が縮小するとか弱体化することではないというふうに言っておられるように思うのですけれども、それは私は違うんじゃないかというふうに思っていますが、最後小林参考人に、先ほどの質問と併せてその辺の御見解を伺いたいと思います。
  76. 小林節

    参考人小林節君) 先ほど忘れたことを思い出しまして、よろしいですか。
  77. 岩佐恵美

    ○岩佐恵美君 どうぞ。
  78. 小林節

    参考人小林節君) 再就職天下り禁止を一定期間付けるという案が出ていますけれども、それは、同じ役所から同じ業界に一定期間を置いて順繰りに人が結局行っている以上、要するにお上と出入り業者がずっとつながっているんですね。ですから、それは一種のトリックではないかと思います。  それで、これはもう申し上げるのも何というかしら、しつこいほど、明らかに、今まで人事院が事前審査とかそれから内容、ルールを規則制定権で行使していたものを取り上げて、各省庁か内閣に移すという話で、これは人事院の弱体化以外の何物でもないと思います。
  79. 岩佐恵美

    ○岩佐恵美君 終わります。  ありがとうございました。
  80. 渡辺秀央

    ○渡辺秀央君 どうも御苦労さまでございます。  大分時間がたちましたんで、さぞお疲れだと思いますし、また同じ問題をなるべく避けて、あるいはまた切り口を変えて御質問をしてみたいとも思いますが、あと二十分でございますから、しばらくお付き合いのほど、お願いを申し上げたいと思います。  先ほど来の御意見を承り、かつまた同僚議員の質問にも若干私が質問しようと思っていた点も重複いたしますが、特に冒頭におっしゃったことについて御両人に御意見を承りたい。  その一つは、石原さんの方の、参考人意見の中に、基本的には賛成であるというふうにおっしゃっておられる。いろんな角度から本当はお話承りたいんですが、時間が制限ありますので、端的に承っていきますので、お話をいただきたいと思うんですが、御指導をいただきたいんですが、この中身について、幾つかいろいろ大分言いにくそうにおっしゃっている面もある。石原さん、特に今までのいろんな立場もあり、御自身調査会の会長代理もおやりになった点もあり、いろいろおもんぱかっておられるんだと思うんですが、端的に言って思い切って石原さんの意見を、経験あるいは見識の中から質問をしたいんですが、この改革、いわゆる行政改革推進委員会の、審議会の事務局が作ったこの案、基本的に賛成と反対の方とどっちが多いですか。それが一点。  個別、なかなか皆さんで意見をとおっしゃっているけれども、あとうところ、意見を、この事務局の案をごらんになった上で、私は総務委員会というところにも所属していまして、官僚制度に対して手を入れるわけですね。これは、先ほどもおっしゃっておられましたけれども、正に革命的なことだと思うんですよ。日本の政治は、もう司法、立法、行政、その行政の構成員のことについてやるわけですから、これは言っちゃ悪いけれども、相当な議論が積み重ねられ、掘り下げられていかないといかぬ。  しかし、人事の問題というのは百点満点はないということも事実だと思うんですね。時代の推移の中でいろんな環境が変わってくる。そういう中で、特に国家公務員という立場はその時代が要請することもあり得る、その責任と使命の中で。  あるいは、もう一つは、石原さん、議院内閣制と大統領制を考えたときに、我が国は議院内閣制なんです、政党政治による議院内閣制。私は、どうもこの改革案を見たときに、何かいたずらに大統領的なところが何か志向されている、模索されている。これ、ちょっと無理じゃないかなという感じがするんですね。私の意見は雑駁ですけれども若干申し上げて、御意見を承りたい。  小林参考人には、大変、先ほどのこのレジュメ以外の御発言を聞いておりまして、非常に参考になりました。特に、民主主義ということが非常に根本に言われているけれども、そのことに対する考え方が少し発想の段階で間違ってやしないかというとらえ方は、私、全く同感であります。  特に、内閣が、今多数をもって構成している内閣、政党政治による内閣が、今の段階で、後で幾つか、時間がまた、私、しゃべっておるとすぐ時間なくなっちゃう。やめますけれども、今の内閣の観点から、今の政党、連立政権の感性から、やられていることはないと私は信じますが、もしやられているとするならば、私は大変国家百年に憂いを残すことになる。それは、私は総務委員会でもそう申し上げたんです。  特に、小林参考人は、多数意見と同時に少数者の意見、我々はかつては政治学を学んで、私は特に矢部貞治という政治学博士を尊敬し、かつまた御指導いただいて、直接いただいた経験がありまして、矢部先生という人は、ケルゼンの多数・少数者理論というのをよく教えていただきました。  そういう観点からしますと、今のこの問題というのは非常に、ある意味においては議論は大いにやるべきであるが、しかしそうかといって余り時間を掛けてもいけないことでもある。ということは、現職の官僚諸君にも、例えばキャリアの人たちに対してのいわゆる後の天下りの再就職の問題もある、現職の人たちは非常に不安かも分かりませんね。あるいは、今度は改革案の中で、インプットのところで四倍だとかいやどうだとかというような話もある。そういうことを考えてみると、国家で一番大事な国家公務員、日本の行政をつかさどっている人たちに不安感とある意味においては焦燥感みたいなものが与えられている政治というのは、まともな政治だと私は思わない。  そういう意味で、この改革ということについてのスピーディーなことと、しかしおっしゃるように国民に定着させるべき議論が必要だということも大事だと思うんですが、およそ来年にはこれは結論として内閣法案を出してくる、今こう言われているんで、我々行政監視委員会委員長の下でこれを集中的に審議をして、また御意見も承って、委員同士のこの次にはお互いに意見も交換しながらということを考えながら、何らかの形でもし意見がまとまれば、これは与野党の問題でない、国家の問題ですからね、というふうに考えております。  そういう意味において、小林参考人の、およそのタイムスケジュールとして来年法案が出てくるというのは大体まともだとお思いでしょうか、その点についてちょっと御意見を承りたい。ちょっと前段長くなって恐縮ですが。
  81. 石原信雄

    参考人石原信雄君) 私に対する渡辺委員の御質問の一つは、今回の公務員制度改革大綱について基本的に私は賛成であると申し上げたわけですけれども、内容について賛成の部分と反対の部分とどちらが多いかというお尋ねでございますが、基本的な理念及び改革の個々の事項についてもちろん全部賛成ということじゃございません。反対、私も疑問を持っている点もありますが、全体としては賛成の部分が多いというふうに申し上げたいと思います。  ただ、初めに私の意見として申し上げましたが、今回の改革公務員制度改革としては非常に広範多岐にわたる内容を含んでおります。これからの公務員の勤務の在り方、生活の在り方にもかかわる内容を含んでおりますから、私は、この大綱法案化する場合には、人事行政について経験もあり権限も持っております人事院、それからこの改革の影響を直接受ける職員団体意見を十分くみ上げていただきたいと、意見調整をしていただきたいということを申し上げたわけでありますが、そういう前提に立ってどちらが多いかといえば賛成する事項が多いというふうに申し上げたいと思います。  それから、二番目のお尋ねで、現在我が国は議院内閣制を取っているわけでありますけれども、今回の公務員制度改革考え方が何となく大統領制を志向しているんではないかと。そこで、そういう傾向といいましょうか考え方についてどういう意見かというお尋ねであったかと思います。  私は、公務員として長い間勤務いたしました。そして、公務員生活の最後は官邸において内閣全体の仕事に携わらせていただきました。その全体を通じての感想を申し上げますと、我が国にとってこの行政のシステム、あるいは公務員制度と言ってもいいと思うんですけれども、非常に大きな問題、それはいわゆる縦割りの弊害だと思っております。これは、内閣におって縦割りの弊害のために随分頭を痛めたことがございます。  私は、我が国の民主主義制度をどう実現するかということとの関係で、内閣制度というのは非常に重要な意義を持っていると思うのでありますが、国民の信託を受けて誕生した内閣がその掲げた政策を実現させるためには、どうしても各省の協力が必要であります。そこでやはり時の政権、国民の信任を受けた時の政権が目指す政策の実現について各省がこれを全面的に協力するような、協力できるような仕組みを考えるということは非常に大切だと思うのであります。いわゆる官僚主導ということで、各省の官僚がそれぞれの省益を中心に考えて、国として政府として実現しなきゃならない課題が阻害されるというようなことがあってはならないと思います。そういう意味で、今回の公務員制度改革も、内閣責任を果たしやすいようにするという意味で私は改革方向評価しているわけであります。  もちろん、この国の憲法が定めております議院内閣制と矛盾するような、いわゆる大統領制というものを目指すことは許されないわけでありますけれども、しかし内閣が与えられた機能をよりよく実現するために各省庁をコントロールしていく体制というのは私は強化されるべきだと、このような基本認識を持っております。
  82. 小林節

    参考人小林節君) 今のこの状態でこの法案が来年予定どおりに出てくるとしたら、私はまともでないと思います。先生のお言葉をかりれば百年の憂いを残すことになると思います。  それこそ、なぜか内閣官房の一部の官僚とそれから一部族議員が相談して作ったやに言われておりますが、もしそうだとしたらこれは大変なことでありまして、そうやって出てきたものを国会がまるで下請仕事のように国会対策のスケジュールを組んで通すなどという情けないことはしていただきたくない。その案の下敷き政治責任、主導性というならば、それこそ特別委員会を作ってでもじっくり国会議論していただきたいとお願い申し上げます。
  83. 渡辺秀央

    ○渡辺秀央君 ありがとうございました。  ちょっと時間がもうなくなってしまいまして、石原さん、あなた、そこで大演説をやられちゃうと時間がなくなっちゃうので、申し訳ない、結論だけ言ってください、これから質問するのを。  公務員制度のこの今の案で、中立性、公正性の関係は全く阻害されないと思われますか、今言われていることで。それちょっと小林先生も意見を承りたい。一言で結構です。
  84. 石原信雄

    参考人石原信雄君) 私は、今回の改革案具体化に当たって、先ほど申しましたように、関係する方面の意見を十分調整することによって公正性、中立性は確保できると思っております。
  85. 小林節

    参考人小林節君) 今の案でいきますと、大臣が替わると何かそれによってかなり露骨に影響を受けますね、あるいは党派が替わると。これはある意味では極めて党派的になると思うんです。  もちろん責任取るからいいとおっしゃるんですけれども、実はその結果不祥事が起きた段階当事者はいないんですよね。ですから、実は責任責任と称して権限を持って、いざとなったら責任取らない仕組みだと思うんです。
  86. 渡辺秀央

    ○渡辺秀央君 石原さん、今までやってこられた中で、特に人事院に対してこれはまずかったという決定的な何かはございますか、ございましたら。
  87. 石原信雄

    参考人石原信雄君) 特に私自身経験でこれは絶対困るとか困ったとかということはございません。
  88. 渡辺秀央

    ○渡辺秀央君 私も大して長い経験でもないけれども、二十三年の間に、石原さんとは一緒ではなかったけれども、官邸にも一年間半あるいは大臣も一年以上やらせてもらったりして、大体この仕組みは私は分かっているつもりで御質問しているんですよ。  どうも公平、中立、公正なことになるとは考えられないんですね。それならば、なぜ今の人事院制度について補完すべきものは補完しないのか、むしろそっちの方が大事じゃないのかというふうに思うんです。  言うならば、アメリカの占領制度が残していった唯一の今の行政機関の典型的なものだというような考え方、あるいはまた、いわゆる国家公務員が議院内閣制による指導者、すなわち内閣を構成する政党、それの思うような動かし方ができないというようなことでのおもんぱかりであるとするならば、私は、先ほどから申し上げているように、非常に大きな禍根を残すだろうということなんです。  石原行革大臣がこういうことを言っているんですね。新たに再就職後の行為規制を設けて、違反行為に対しては罰則などの制裁措置の導入を図ることによって国民批判に耐えられるような制度設計を行っていきたいと言われているんです。こんな、できるわけがないですわね。  ですから、私は、人事院あるいはまたその役所の上司、国家公務員の、局長までは閣議で人事決定するんですよね、承認するんです。これが何で一体おかしなことになるのか。当然、各省大臣に局長以上の人事というのは、御存じのとおり、持ち回りではなくて人選に至るまで権限がある。だから、いまだかつてそんなに大きな問題があったことはない。あったことはあるとするならば、若干小泉総理が、具体的には言わないけれども、大臣のときに問題があった。自分の好きな人間をどこどこに置きたいというようなことはあった。あるいは、その昔、実力者大臣がそういうことを大昔に言ったこともあって混乱をさせたこともある。そんなものはもう本当にごくわずかな話だ。  極めて順調にこの人事院制度というのは来て、しかしあえて申し上げます、時間がなくなりましたから。エリートに対して、キャリアに対してのことは、これは少し研究の余地があるんではないか。私は両方にあると思うんです。その点についてちょっと見解をお聞きしたいんですが。  超エリート、今のキャリアの中から更に人選していく。先ほど三十歳以上というような話も若干ありました。これは私かつて、ついこの間の総務委員会でも申し上げたんですが、今日はここ行政監視委員会でせっかくの参考人のお二人から意見を聞きたいんですけれども、私は、むしろフランス方式があってもおかしくない、むしろそれを目指してⅡ種の人たちも挑戦するというぐらいのことでいいんじゃないかと思うんですね。  そういう意味で、キャリアの、ただし天下りについてのことは今までどおりの、私は、内閣でおやりになるといったって、石原さん御存じのとおり、あの内閣のスタッフで、内閣府で、そんな各省の人間の何十年やってきた後の足跡なんか分かりませんよ。それはできるもんじゃない。やっぱりそれは人事院がきちんと追跡調査をして、人事管理一つの参考資料というのを持っている中でこそ初めて公正、公明にやられていくというふうに思うんですね。  そういう点等を考えながら御意見を承って、終わりたいと思います。
  89. 石原信雄

    参考人石原信雄君) 私は基本的に、この国の行政組織あるいは公務員制度をこれから健全に運営していくために、人事院の持っている役割というのは決して弱くなることはない、重要性はこれからも、必要性は十分認識されるべきだと、人事院重要性はいささかも揺るがないと思っております。人事院第三者機関として一定の役割を果たす必要性は、私は十分認識しておるつもりであります。  それから、エリート職員扱いの問題ですけれども、私は、今のキャリア制度を廃止すべきだという意見もありますけれども、私は基本的にキャリア制度は必要であると思っております。ただし、今のままでいいとは思っておりません。  従来のキャリア制度の欠陥というのは、Ⅰ種試験を通った者は必ず課長までは行けるとか、必ず幹部になれるという、本人にも期待を持たせておりますし、そういう運用がなされておりますけれども、残念ながらキャリア試験を受かってきた職員の中にも幹部職員としての適格性がない人物がどうしても混じるわけです。それをそのまま置いておくということは、これは全体の奉仕者としての在り方としても問題だと思うんです。そこはやはり本人の適性によって厳しく選別していくべきだと。  そのために私は、まず、キャリアの採用後の教育の仕方あるいは処遇の仕方に改革を加えるべきじゃないかと思っております。最近は少しそういう視点での改革は行われているようですが。要するに、私は、キャリアというのは、将来それぞれの組織の最高責任者の地位に就くことを予定されている集団ですから、その諸君は、初めから管理者としての教育訓練をするよりも、やはり第一線の下積みの苦労を徹底的に経験させることが必要じゃないかと。そこが不足しているから変な特権意識を持ってしまうんじゃないかと思っております。  そういう意味で、キャリアとしてこれから幹部職員になるべく予定されている者は、初め、若いうちは徹底的に苦労させる、下積みの経験をさせるということが必要であるということと、それから、決してⅠ種の身分を保障するという制度ではありませんので、適格性を欠く者はどんどん外していくということが必要だと思います。  一方、Ⅱ種、Ⅲ種の人の中にも非常に優秀な人がおります。残念ながら試験制度の中でⅠ種に来れなかったけれども、Ⅱ種で入った人でも、職場に来てから管理者としての適格性がある人物が結構おります。そういう人は思い切ってⅠ種試験の合格者と同じ扱いをすると。今回、政府改革案の中でも二割とか三割とか、そういうⅡ種試験、Ⅲ種試験の中からも幹部になり得るような道を開く改革を考えているようですが、これは結構ですけれども、私は、もう二割、三割といわず、有能な人物はどんどん幹部に登用するという改革が必要ではないかと思っております。
  90. 小林節

    参考人小林節君) 人事院のこれまでの大きな間違いを先生が御存じないというのは私も全く同感で、今、唐突に人事院がまないたにのせられておりますから、批判する側が立証責任を負うべきであろうと思います。  それから、石原大臣の事後行為規制については、私、現場をよく知りませんので、先生のおっしゃるとおりのような気がいたします。  それから、エリート制度については、私としては、Ⅰ種というのはある意味で変な競争心のない割と素直な人が育つ面もあると思いますので、入口では残しておいて、ただそれで一生を決めるのはおかしな話で、三十五歳ぐらいで合流させて、もうそこから先はⅠ、Ⅱ、全く同じにして登用していくというようなことだと思います。
  91. 渡辺秀央

    ○渡辺秀央君 同僚議員に時間が超過したことをおわびしておきます。  ありがとうございました。
  92. 白浜一良

    委員長白浜一良君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  この際、両参考人に一言御礼申し上げます。  本日は、長時間にわたりまして貴重な御意見を拝聴させていただきました。誠にありがとうございました。  委員会代表いたしまして厚く御礼申し上げます。本当にありがとうございました。(拍手)  本日はこれにて散会いたします。    午後三時三十九分散会