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国務大臣(
坂口力君) 少しお時間をいただいて説明をさせていただきたいというふうに思いますが、私、この職に就かせていただいて、そして今日までの
雇用政策をずっと見てきたわけでございますが、
厚生労働省として取り組んでおります
雇用政策というのは誠にきめ細かなものでございまして、もう種類でいきますと五十種類も六十種類もあるわけで、これ以上具体的に、これ以上きめ細かなものはできないというほどいろいろのものがあるわけでございます。
それはそれでかなりの大きな力になっているというふうには思っておりますけれども、それは
失業者が二百万なり二百五十万までぐらいなときの話でございまして、三百数十万になってくる、あるいはこれが更に増えるというような可能性がありましたときには、そうした今までの
厚生労働省の中でやっております失業
対策だけでは、これはなかなか私は乗り切れないのではないかというふうに危惧をいたしております一人でございます。
そうした意味で、個々の皆さん方に具体的に御相談に乗らせてもらうためにキャリアカウンセラーを増やしますとか、あるいはまた地域のお
考えをいろいろとお聞きをして、地域からの
雇用対策、
雇用政策というものをやはり取り入れていかなければならないというので、そういうことも今やらせていただいているわけでございます。
地域でやるというのも、これで大体一年間やってきたわけでございますが、中には、大阪や東京辺りでやっておりますように、企業を卒業になったあるいはリストラになった皆さん方の中で非常に有能な皆さん方を雇入れをして、そして中小企業のその
人たちを新しい方向としてどういうふうにしていったらいいかというようなことに、その
人たちにやっていただくというようなことで、大変、中小企業の販売網を拡大しましたり、中小企業が抱えております技術を更に世に出すことに貢献をしたりというようないい面も出てはまいっておりますけれども、総体的にいきますと、やはり地域にいろいろの知恵を絞ってもらってといいましても、十分な知恵は出てきていないというふうに思っている次第でございます。
さて、それじゃそれをどうしていったら今後の
雇用対策を立て直していくことができるかということをずっと
考え続けております。過去二十年ぐらいさかのぼりまして、二十年ぐらいさかのぼったその間のこの
GDPの対前年
GDPの
伸び率と、そして
雇用の関係を見てみますと、対前年
GDPが一%とか二%増えたぐらいでは
雇用は過去にもそんなに増えていないわけであります。そういたしますと、これから先の
経済というのはそう五%も六%も増えるわけではありませんから、一%なり二%の低成長でいかざるを得ない。そうすると、その低成長の中で
雇用がどれだけ増えるかといえば、なかなかそれは増え難いという現状があります。
したがって、ここを乗り越えていきますためにはどうするか。十年も二十年も先になってまいりますと、労働力人口が減ってまいりますから、それはある程度そのことは影響するだろうというふうに思いますけれども、この数年のことを
考えてみましたときに、あるいはこの十年ぐらいのことを
考えてみましたときに、もう少しやはり国全体としての
対策が必要ではないかというふうに思っております。
少し、記者会見でも一部だけを申し上げたわけでありますが、企業がリストラをいたしますとその株価が一遍に上がるといったようなことがございまして、リストラをする企業が優秀な企業であるという、何となくそういう風潮と申しますか、そうしたものがかなりあることも事実でございまして、経営者の
立場からするならば、それはリストラも必要なときもあるのでございましょう。そして、やはり世界の企業の中で、国際化しました企業の中で打ち勝っていくためには、合併もしなきゃならないということもあるんでしょう。だけれども、ただそれだけで、そういう
考え方だけで一体
日本の
雇用が守られるかといえば、私は、そこは少し違うのではないか、やはりもう少し、企業としてはそういう
立場を取らなければならなかったとしても、国全体としてやはり
雇用というものをもう少し大切にしていくという
考え方があっていいのではないだろうかということで
雇用重視型社会という言い方をさせていただいたわけであります。
先ほども
宮崎先生から
GDPの
配分の
お話出ました。確かに
日本の
GDPを見ますと、
ドイツや
フランスに比べますと二倍か二倍半ぐらいあるわけですね。これは人口の違いもございますし、いろいろの違いございますから一概には言えませんけれども、
GDPだけで
比較をすると
日本の
GDP高いわけですね。しかし、いわゆる労働力人口、労働時間割りの
GDPというものを見ますと、これは
ドイツ、
フランスに
比較をいたしまして
日本はその八〇%ぐらいなんですね。国全体で
GDPを見ますと、これは二倍もある。しかし、労働時間割りの
GDPは八〇%程度にとどまっている。
先ほど
宮崎先生の
お話にもございましたとおり、もう少し
社会保障を充実させるべきではないかという
お話もございました。これから少子化
対策もやっていかなきゃならないわけでございます。そういたしますと、
ドイツ、
フランスなどは全体の
GDPは
日本ほどではないけれども、しかし労働者は十分にその
保険料も出し、あるいは
税金も出しということをやっておみえになって
日本よりも高い
雇用保険なら
雇用保険の
状況でありますとか全体の維持をやっておみえになる、
社会保障の維持をやっておみえになる。どこがどう違うのであろうかと、先日来そこに着目をしているわけでございます。
これから先、少子化
対策を
日本がやっていく、そして女性の皆さん方が働いていただくと同時に子育てもしていただけるようにするような社会を作り上げていくということになりますと、私は
日本の
GDPの
配分のその問題にやはり目を向けることなしにしてでき得ないのではないかというふうに思っております。
したがいまして、時間当たりの
GDPだけのことを私は決して申しませんけれども、そうしたところにも目を向けて、やはりその
GDPの
配分の問題にもう少し目を向けていくということがなければ、この
雇用問題につきましても、あるいはまた全体の問題についても解決をしていかない。その辺のところにもう少し目を向けさせるやはり国としての施策というものが全体として必要になってくるのではないかというふうに思っております。
そうした意味で、何が一体できるのかということを
考えているわけでございまして、そのやり方にもいろいろあるだろうと思うんです。そういう企業の中でも
雇用というものを非常に重視をしていただいているようなところに対して何か優遇策、手を差し伸べることが国としてできるのかどうか、あるいは予算の編成におきましても、
雇用特別枠のような形でできないのかといったようなことを、これはもう
厚生労働省の範囲の中ではなくて、全体としてそういうことができないのかということを先日も少し申し上げた部分もあるし、今日初めて申し上げるところもあるわけですが、言ったわけであります。早速、財務省の方からは、そんな気持ちは更々ないという言葉が返ってきておりますけれども。
いや、そんな小さなことではなくて、もう少し大局的な
立場でやはり今
考えるときに来ているのではないかということを私は率直に訴えたいわけでございまして、もう少しその点のところをまとまったものを作り上げて総理にも提出をしたい、そういうふうに
考えている次第でございます。