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参考人(
兒玉明君) 本日は、
障害者の
自立と
社会参加に関する件の
参考人としてお呼びいただきまして、ありがとうございます。
先生方は既に御承知ではございましょうが、我が国にはどのくらいの
障害者がいるんでございましょうか。身体
障害者が三百十八万人、
知的障害者が四十一万人、精神
障害者が二百万人、その中では、手帳を持っておるのが十九万人おるわけでございます。
本日、
当事者団体として私どもの団体をお呼びいただきまして、本当に感謝しております。
障害者の
自立と
社会参加ということは本当に一番大事な問題でございまして、私ども協会は全国五十九の都道府県に所在しておりまして、中でも全
日本ろうあ連盟、また
日本盲人会連合も私どもの協会の中に、三つの
障害別の団体として入っております。そのような中で、このような提言ができたりお願いすることができますことは、本当に喜びでございます。
私どもがいつも思っておりますことにつきましては、
レジュメにも書いてございますが、我が国の
障害者の沿革とか
当事者の視点からこの問題を論じるということになりますとまた時間が長く掛かりますので、まず、課題と提言につきまして、二、三
お話を申し上げたいと存じます。
前述のとおり、
障害のある人々の施策につきましては、
障害者基本法を始めといたしまして
法整備が行われてきたところでございますが、真の
共生社会を実現するという上におきまして、今後、特に重点を置くべき課題として私どもは
考えておるんでございます。
まず第一に、教育の
分野でございます。
共に生きるために不可欠なことは
相互理解でございます。
障害とは何か、
障害者とはどんな人々でどんな問題を抱えているのかといった、
障害についての基礎的な知識の習得は、一般教育の場面で学齢期から適切な教育が行われるべきでございます。現在のところ、こうした取組をカリキュラムの中に組み込んでいる公立学校は皆無でございます。
社会の中には、
障害のある人も共に生きて
社会を支え合っているという事実を知る機会もなく、成人してから実際に
障害のある人と対しましてどう接していいかというように戸惑ってしまう人が少なくないのでございます。
相互理解を進めるには、
相互に理解し合い、助け合う関係をまず
最初に
構築することが大切ではないかと思っております。
第二に、
バリアフリーに関する課題について述べさせていただきたいと思います。
現在、全国各地で進められております建築物などのいわゆる物理的なバリアに対する
バリアフリー化については、ハートビル法、交通
バリアフリー法などの制定によりまして
バリアフリー化を進めまして、
障害者の
自立と
社会参加を推進するための
条件が、
条件整備が整ってきております。
この物理的なバリアの除去に関する今後の課題といたしまして、まず現在、既存の駅舎や学校、共同住宅など、
バリアフリー化することが努力義務となっている
施設に関し、いかに完全義務化を進めていくかということをまず主張したいと存じております。
障害者の一般教育への
参加の
必要性につきましては前段のとおりでございますが、我が国の
障害のある人々の一般教育、一般
社会への
参加を阻んでいる大きな
要因の一つに、学校
施設、校舎や体育
施設などの物理的なバリアの問題が極めて大きいことは改めて強く要望したいと思っております。
物理的な
バリアフリー化の最終的なゴールは、すべての建築物、住宅も含めまして利用
施設における一〇〇%のバリアの解消でございます。その実現までには最低二十年又は三十年以上掛かるかもしれませんが、引き続き国を挙げた粘り強い取組をお願いしたいと存じております。
また、住宅に関して申し上げますれば、
障害のある人々が
地域の中で安心して暮らすための住宅
政策、例えば
障害者グループホームの
整備や公営住宅への単独入居
条件の緩和など、大きな
生活面へのバリアのフリー化施策の一つとして
考えていただきたいと思っております。
第三の問題として申し上げたいのは、雇用・
就労の問題についてお願いしたいと存じます。
未曾有の経済不況によりまして、
障害の種別を問わず多くの
障害者が働く機会を失っておるのは現実の問題でございます。
障害者の
自立と
社会参加を
考えるとき、雇用・
就労の問題は最も重要で避けては通れないテーマの一つでございます。働く場の確保は、
障害のあるなしにかかわらず、単に
生活を支えていくだけではなく、
障害者本人の生きがいを生み出していくのでございます。
人間として不可欠なことでございます。多くの民間企業では、経営環境の悪化によるリストラを敢行しており、真っ先にその対象となるのは
障害者でございます。
障害を理由に解雇される結果、
社会の片隅に取り残され、目標を失い、ひっそりと
生活している
障害のある人々は本当に数多くいるものと私ども協会では推察しております。
昨今は、
障害者の雇用・
就労を
支援するジョブコーチ
制度も実施されており、また省庁再編により、これまで別々でございました厚生行政と労働行政が厚生労働省で一体的に行われるようになったため、今後、国レベルでも福祉の視点と労働の視点を兼ね備えた施策が
展開されることが期待されております。
次に、
障害者の雇用・
就労の問題を語る際、特に強調したいのは、
地域社会の中で長年にわたり
障害者の
自立と
社会参加を
支援してきました無認可の
障害者小規模作業所、以下、小規模作業所と呼ばさしていただきますが、全国に三千以上もある
施設の
存在の大きさの再確認と、国として
支援をしていただく
必要性があると存じております。身体
障害者関係だけでも、年間百か所を超える小規模作業所が続々と新設されております。
小規模作業所について、そのあれを申し上げますと、働く意欲はあっても働く機会に恵まれない
障害者が
地域の中で働く場を保障し、共同作業を通じながら
社会での
人間関係を
構築し、豊かな
社会生活を送ることのできる非常に貴重な環境でございます。無認可のこうした小規模作業所に対しましては、現在国の指導により
社会福祉法人化が進められております。しかし、
社会福祉法人格を取得するためには、資産要件は一千百万円と非常にハードルが高いのでございます。
問題は、
社会福祉法人化を進める引換えに、これまでの小規模作業所に対し国庫補助金として一か所当たり百十万円年間支給されております。これを、数年以内に全面打切りとなる
可能性が強くなっておりますので、何とか、小規模作業所の多くが資金的に
社会福祉法人格を取得するのが困難な零細
障害者の作業所でございますので、不況で行き場を失いました
障害者も多く受け入れてきました小規模作業所に対しまして、更にこの廃止という追い打ちを掛けるようなことも懸念されております。
私ども
日本身体障害者団体連合会を始め関係
障害者NGOにおきましては、どうかこの小規模作業所に対します国庫補助
制度の存続を強く要請しておるところでございますので、
先生方のお力も是非おかりしたいと思っております。
第四の課題でございます。
障害のある人々の
権利・人権保障について提言いたしたいと存じます。
まず、現在、人権擁護法案の審議が行われておるところでございますが、
日本の
障害者NGOでは昨年より同法案につきまして各協会へ集まりまして検討を重ねてまいりました。同法案につきましては、いわゆるマスコミの報道規制に関する点ばかりがクローズアップされてきておりますが、法案の内容や趣旨などが
障害者団体の会員にも十分に浸透していない感がございまして、また、法案に対する要望や賛否につきましても
障害者団体間で一致した見解を見いだすことができておらないのが
現状でございます。
そうした現在の状況を断った上で指摘したいのは、人権擁護法案は果たして
障害のある人々が日ごろ受けております周囲の
差別、また偏見から生まれる
人権侵害についてきちんとカバーできるのかというような基本的な疑問でございます。
この
法律による仲裁の対象となる
差別の範囲に
障害という、
障害者を位置付けるということは評価に値しますが、新たに中央に設置される人権
委員会の
委員五名という体制で、多種多様な
障害者の
人権侵害のケースを処理できるのかということが懸念されるところでございます。どうか
障害のある人々の
権利・人権保障に関する
法整備の在り方につきましては、
障害者NGO間におきましての議論だけに終始するのではなく、政官とも情報交換を緊密に行いまして、
障害者に対する
差別や偏見を制限、禁止する国内法制定の賛否に関しまして、早い段階から国レベルでの検討を始めていただきたい。また、
障害のある人も安心して
生活できる
共生社会の礎となる
制度が作れるよう、是非是非準備を急いでいただきたいと思っております。
また、私どもが
考えております
障害者施策、
制度の企画、立法につきましては、是非これを実現することによりまして、本日のテーマでございます
共生社会の実現と
障害者の
自立と
社会参加というこの新しい姿に対しまして、私どもはいろいろな
意味におきまして
共生社会を
構築していくには人と人との
相互理解、信頼関係の
構築ということが不可欠でございます。
是非とも本日おいでいただきました
先生方にもなお一層の御協力、またこの懇談会には私どもが、済みません、ちょっと飛ばしてしまいました。
私ども、将来的には
障害者NGOと政治、行政の連携と一層の
相互協力体制の
整備が必要になっていくんではないかと思っております。
現在、国では向こう十年間の
障害者施策の指針を決めるため、新しい
障害者基本計画に関する懇談会、京極
先生を座長といたしまして開催してまいりました。十一月二十九日には私も
委員で
参加しております最終の懇談会を開催いたしました。この懇談会には、実際に
障害者NGOの代表の多数
当事者が
出席して
意見を陳述する機会があったものでございますが、どうか
計画を策定するための
参考であるという程度にとどめられないよう、しっかりとその基礎としてそれを受け入れていただくよう
先生方の御努力もいただきたいと存じております。
以上で私の
参考人としての
意見を申し上げます。