○吉井英勝君 私は、
日本共産党を
代表し、ただいま
議題となりました
構造改革特別区域法案について、
小泉総理に
質問いたします。(
拍手)
初めに、今なぜ
構造改革特区なのかということについてお聞きします。
政府が
閣議決定した
構造改革特区推進のための基本
方針では、
全国的な
規制改革の
実施はさまざまな
事情により進展が遅い
分野があるのが
現状である、
構造改革特区の導入により
全国的な
構造改革へと波及して
我が国全体の
経済の
活性化を図るとしています。
特区で
規制緩和しようとしている
内容は、これまで
政府が
全国一律で
規制緩和を行おうとしてきたものとほとんど同じです。
総理に伺いますが、この
法案は、
政府の思うように進まない
規制緩和を進めるために、一点突破し、
全国に全面展開させる役割を持たせるということですか。
政府の
総合デフレ対策は、今後、
規制緩和を進める
分野として、福祉、
教育、
農業、医療を挙げています。これらの
分野の
規制緩和策の中心は、各
分野への利潤追求第一とする
株式会社の全面
参入です。
規制緩和を進める
政府の総合
規制改革会議の中間取りまとめでは、
規制緩和の対象を、生命・身体・健康、公序良俗、消費者保護等に関する
規制であるという
理由によって対象外とすべきではないことを強調し、強引に
国民の安全や健康を守る
規制緩和に切り込もうとしていますが、こんなことを許すことはできません。
医師会の
代表が、生命・身体・健康を犠牲にしても
経済活性化を図るという
考え方については、我々は容認できず断固反対していくと述べているのは当然であります。
総理、あなたは、
国民の生命・身体・健康を守るべき
規制に対しても
規制緩和を推し進めるのですか。
規制緩和については、我が党は、古い、実情に合わない
規制を廃止するのは当然、同時に、
国民の世論や取り組みで生み出した
規制のルールは守るべきであり、さらに、ヨーロッパなどに比べてもおくれている必要な
規制は強化を図るべきであると
考えています。
さて、この
法案の
目的は、
地域に
構造改革特区を
設定し、
教育や
農業、社会福祉などの
規制の
特例措置を適用させて、
地域の
活性化、
国民生活の
向上を図ることとしています。
しかし、
政府が言うように、
規制緩和を
推進することで、
経済を
活性化させ、
国民生活を
向上させることができるのでしょうか。それどころか、今、
国民生活や
地域経済の中では、
規制緩和万能主義の弊害があらわれているのではないでしょうか。
土地開発や大型プロジェクト建設を促進させた立地
規制や建築基準等の
規制緩和、廃止は、不動産投機をあおり、バブルを招きました。また、米国と大
企業の要求で進めてきた大店法の
規制緩和、廃止によって、
地域社会を支えてきた
地域商店街が次々と姿を消しました。さらに、必要な
規制のルールもないままに、外為法などの
規制緩和によって、大
企業は無秩序に海外進出し、国内産業を空洞化させました。労働法制では、職安法や労基法の
規制緩和で、失業者、不安定
雇用者を増大させ、最悪の
雇用情勢を招きました。
総理、
政府が進めてきた
規制緩和万能主義は、
国民の中に失業の増大、福祉切り捨て、貧富の格差の拡大をもたらしてきたのではありませんか。
構造改革特区法は、こうした
規制緩和万能主義をさらに進め、
国民生活と
地域経済に打撃を与えることになるのではありませんか。
第二に、
構造改革特区の仕組みと問題点について伺います。
構造改革特別区域は、
地方自治体が
計画を作成し、
総理大臣に
申請し、
認定を受けることになっています。特別区域内で事業を行う
企業等の
実施主体は、
地方自治体に
計画の提案ができるようになっています。
この特別区域の範囲ですが、県、市町村だけでなく、それ以外に、特定の
地域、あるいは事業を
実施する
企業の敷地だけを特別の区域にすることも可能なのですか。そうだとすれば、極めて特定
企業に偏重した仕組みではありませんか。
政府は、
特区の
申請は
地方の自主性で行うことを強調しています。しかし、十月十一日の
経済財政諮問
会議では、ある委員が、一回目の
地域分布を見て空白の多いところは国
会議員に直接指示をするなど各地で満遍なくやれということが発言され、これに対し、鴻池
大臣は、御指摘を十分勉強すると答えています。
これまでの提案
内容が、これまでから経団連などが要求してきた
内容と同じものが多いということを
考えると、見逃すことはできません。こうした発言をする人が
特区制度を
検討しているということ自体、驚きであります。
総理、
特区申請の
地方の自発性というのは建前で、裏では国
会議員に
地方を指示するようにさせるものなんですか。伺いたいと
思います。
次に、
構造改革特区と巨大プロジェクト
推進との関係です。
政府は、
特区について、従来型の
財政措置は講じないとしています。ところが、国土交通省の来年度
予算概算要求では、
構造改革特区を支える基盤整備のために必要となる連携事業を強力に
推進するということを目玉として
予算要求を出しています。つまり、
特区指定されたところの連携事業に
予算を重点的に配分するというものです。
総理、これでは
特区が従来型の巨大プロジェクト
推進と一体で進められるものではありませんか。
実際に、愛知県の三河港国際自動車
特区構想について見ると、自動車
企業が集積している三河港
地域で、各
企業の共同化により輸出入基盤整備を行い、流通機能を高めようというものです。この
特区構想が実際の
経済活性化に結びつくためには、大量の完成自動車や、部品の大量輸送にとって欠かせない、流通基盤の大
規模整備を行う必要があります。この整備のための
自治体の負担も重くなります。
特区が
自治体
財政をさらに危機に追い込むことになるのではありませんか。明確に答えていただきたいと
思います。(
拍手)
第三に、
政府が
構造改革特区法などによって強力に進めようとしている
規制緩和の
内容について、順次
質問いたします。
まず、
農業特区についてです。
地方自治体から
農業への
株式会社参入という
要望が出されているのは、高齢化、担い手不足などで耕作放棄に歯どめがかからず、
地域農業維持のために
特区に活路を見出そうと
考えているからであります。
しかし、農村
地域をここまで追い込んでしまったのは、牛肉、オレンジ、米などの農産物輸入の自由化と減反政策の押しつけであり、さらに、大商社などの開発輸入で
農業経営の基盤を破壊してきたからであります。それを正さずして、どうして農村
地域の
活性化が実現できるのでしょうか。
そもそも、
農地法第一条は、
農地はその耕作者みずからが所有することが最善であるという、耕作者主義を基本理念としています。
農地の権利を取得できるのは、みずからその農作業に常時従事する者に限定されているのです。この耕作者主義こそ、戦後の
農地改革の成果を引き継ぎ、耕作者の土地所有と権利保護を
目的とし、戦後
日本農業の
発展の土台となってきた大事な原則であります。
今回の
特例によって
株式会社に
農地の権利取得を容認することは、こうした
農地法の根本理念を否定するものではありませんか。しかも、耕作者主義は
農地転用
規制の土台となっており、耕作者主義の否定は、権利転用
規制の根拠を失わせることになります。これでは、
農地の一層の荒廃につながるのではありませんか。
総理の明確な
答弁を求めます。(
拍手)
また、現在、遊休地となっているのは、飛び地や耕作
条件が悪い場所がほとんどです。こうした
農地を、営利性を重視する
株式会社が借りるでしょうか。むしろ、一般農家とは比べものにならない資本力を持つ大
企業が
農業に
参入すれば、耕作
条件がよい
農地は大
企業に集中し、小
規模農家は優良な
農地から締め出されてしまうのではありませんか。
さらに、
株式会社の
農業参入によって、小
規模農家は、
株式会社との価格競争で一層の苦境に追い込まれます。例えば、
株式会社カゴメは、和歌山県で四十ヘクタールの土地を借り受け、アジア最大のトマト温室をつくる
計画を進めています。カゴメは、この
計画実現により、十カ月間連続収穫、年間六千トン生産、三十億円の売り上げを目指しています。
政府は、
日本の
農業を支えている小
規模農家を大
企業との弱肉強食の競争にほうり込もうというのでしょうか。
商業の
分野でも、大
規模店舗の新設、変更手続の一層の緩和が認められています。
政府は、大
規模小売店舗法を改悪、廃止し、多くの中小零細商店と
地域商店街に大打撃を与えてきました。今日の
地域経済の危機と
地域社会の崩壊の要因をつくり出しました。まさに、大型店
規制の改悪で
活性化したのは一部の大型店だけではありませんか。これ以上の
規制緩和は、ただでさえ深刻な
地域経済を一層深刻化させるのではありませんか。
教育の
分野では、幼稚園の空き教室がふえたことを
理由に、
学校教育法で定めている幼稚園入園年齢を満三歳から年度内に三歳になる年齢に緩和する
特例が認められています。
しかし、現行の
学校教育法で
教育年齢を満三歳としていることには、一定の科学的、医学的根拠があります。これに問題があるというのであれば、相応の科学的、医学的根拠を示すのが当たり前ではないでしょうか。空き部屋が生まれて営業上の困難があるからとの
理由で、なし崩しに入園年齢の例外を設けるのは、
教育とは何かという基本姿勢を欠いたものと言わざるを得ないのではありませんか。
福祉の
分野では、特別養護老人ホームへの
株式会社の
参入が認められています。
そもそも、従来、長い間、福祉や医療の
分野について、目先の利益を最優先する
株式会社の
参入が制限されてきた
理由はどこにあるのですか。福祉の増進と営利の追求とは根本的に矛盾するからではありませんか。
とりわけ、特別養護老人ホームについては、十年以上前から
株式会社の
参入を認めるべきだという主張があったにもかかわらず、厚生労働省や
与党も含めて、
株式会社参入を認めないという立場を一貫してとってきたではありませんか。
それは、老人福祉の
分野は、老後を安心して過ごすための長期で安定したサービスが何より大切であり、目先の利益を最優先する
株式会社の活動にはなじまないからにほかなりません。今になって特別養護老人ホームへの
株式会社の
参入を認める根拠は何ですか。明確な
答弁を求めます。(
拍手)
政府は、特別養護老人ホームへの
株式会社参入を認める
理由の一つとして、介護保険の世界では、在宅介護においては主体制限を行っておらず、ホームヘルプ事業等では
株式会社の
参入は自由であること、これを挙げています。
しかし、介護保険発足直後、コムスンという
株式会社が
全国展開しましたが、その後、採算が合わないことがわかると一気に撤退するという事態が起きたではありませんか。今回の特別養護老人ホームへの
株式会社参入によって同様の事態を引き起こすおそれはないのか、
総理の明確な
答弁を求めます。
今、
国民の
雇用や
中小企業の営業を守り、
日本経済を
地域から
再生させる上で必要なことは、
規制緩和万能主義でなく、大
企業の横暴から
国民生活を守る民主的ルールをつくることではありませんか。
最悪の
雇用状況を改善するには、労働基準法を改正し、長時間過密労働を改善し、不当な解雇を
規制する解雇
規制法の制定です。下請
中小企業も
地域経済も無視した、大
企業の海外移転と国内産業の空洞化の
規制です。これらは、ヨーロッパではEU理事会が採択した社会労働憲章に盛り込まれている
内容であり、国際的には当然の社会的ルールであります。
地域経済を守るためには、アメリカの
地域再投資法のように、
中小企業の資金需要にこたえる
地域金融活性化法案の実現であり、
不良債権処理の
加速で倒産、失業をふやして
デフレを
加速するという、この政策を転換することではありませんか。
私は、人間の尊厳を守る民主的ルールの確立に全力を挙げて取り組む決意を表明して、
質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣小泉純一郎君
登壇〕