○小山
参考人 私は、
JAM副
書記長の小山でございます。
JAMといっても一体何なんだというふうにお思いになる方がいらっしゃるかと思いますけれども、
JAMは機械金属産業の分野の産業別労働組合でございまして、組合員数が約四十三万人、単組数が約二千単組で構成をしている
組織であります。比較的中小
企業の分野で多く
組織をしておりますが、最近有名なのはノーベル賞をとられた島津製作所、田中耕一さんは
JAMの組合員であったわけであります。そういう
意味で
JAMをお見知りおきいただければというふうに思います。
私たちの
組織の中でも、今、倒産が大変急増しております。法的整理による倒産の
件数は、一昨年は五件だったのですが、昨年は十五件でありました。そしてことしは、一月からきょうまでに既に二十四件発生をしております。この二十四件の内訳を見ますと、民事再生が十二件、
会社更生が一件、そして
破産が十件、特別清算が一件というふうになっておりまして、民事再生が多いというのが特徴とともに、もう
一つは、中小の
破産が最近になってここ数カ月の間に急増をしているというのが実態であります。
そこで、ここの倒産で起こっている最大の問題は二つございます。
第一は、雇用の問題であります。
企業の清算型の
法律であります
破産法あるいは特別清算の場合などは、そこで働いていた労働者は全員解雇になっております。また、
企業再建型の民事再生や、また
会社更生法におきましても、雇用が確保できないというケースが多くなってきております。
二つ目は、労働
債権、退職金の問題であります。
退職を余儀なくされた場合に退職金が確保できない、つまり、約束された退職金を手にすることができないまま職場を去らざるを得ないという問題であります。
このような現実の中で、労働者の雇用と
権利の確保のために取り組んでいる労働組合の立場から、ここでは
会社更生法改正案につきまして私の意見を述べさせていただくわけであります。
民事再生法が
施行されて以降、本来
会社更生法を使うべき大
企業でも民事再生を使っていまして、
会社更生手続を申し立てる事例が極端に少ないというのが今日の実態であります。
私は、現行の
会社更生法は、
裁判所が
管財人を選任し、厳格に
手続が行われるので、我々労働組合の立場から見ますと、
会社更生法というのは大変安心感が持てるなという実感を持っております。今回の
会社更生法の
改正によって
更生手続が迅速化され、
更生法がより活用されるようになるということになるなれば、それは評価をしたいというふうに思います。しかし、
会社更生法が持っていたよさ、つまり、
管財人のもとで厳格な
手続がなされ、労働者が安心感を持って
企業の
再建に邁進するというよさを捨て去るようなことになってしまってはならないというふうに思っております。
そこで、
会社更生法を初めとする法的整理の中で、今現実に起こっている問題点について申し上げたいというふうに思います。
一つは、
営業譲渡の問題であります。
最近の倒産処理の特徴として、
営業譲渡が非常に多く使われております。民事再生
手続ではもちろんですけれども、
会社更生手続の中でも既に
営業譲渡は多く使われて、実際に行われているわけであります。
問題は、
営業譲渡に伴って、そこで働く労働者の雇用が継続されないという事例が多い、そして、労働者の
権利が脅かされているということであります。
最近の事例では、民事再生の
事件なんですけれども、
営業譲渡契約に雇用は引き継がないことを明示していたり、対象
事業の労働者の半分しか雇用しないと限定して
営業譲渡契約を結んでいたりする事例が大半であります。また、譲渡先への雇用の継続に当たっては、譲渡先による面接などによって譲渡先
企業が労働者を選別をするというやり方が多くなっているわけであります。そして、譲渡元
企業は清算をされる。譲渡先へ行けなかった労働者は解雇されるということが起こっているということであります。
結局、労働者の雇用や労働条件は譲渡先
企業の裁量にゆだねられ、労働者には譲渡先
企業へ転籍しないということを選ぶ
権利しかないわけであります。これは民法の六百二十五条の規定による唯一の
営業譲渡をめぐっての
権利だろうというふうに思います。また、譲渡先
企業が、譲渡元
企業の労働組合からの団交申し入れが仮にあったとしたら、団交に応じる義務があるのかどうか、このことは明確にはなっておりません。私はあると思いますが、必ずしも、学説なり含めて、そうは明確にはなっておりません。
営業譲渡について、
会社分割と同様に、労働契約承継を義務づけるべきだと私は
考えております。また、
営業譲渡に当たっては、譲渡される
事業の労働組合もしくは労働者代表と譲渡元
企業、そして譲渡先
企業、三者が協議をして、合意の上で、
営業譲渡とそれに伴う労働契約の承継について
決定しなければならないというような
法律での義務づけというのが今求められているんではないかというふうに思います。
さて、この
会社更生法の
改正案では、
民事再生法と同じように、
更生計画によらず
裁判所の許可で
営業譲渡ができるとし、その場合、
裁判所は労働組合等の意見を聞かなければならないとあります。
営業譲渡に関する労働者の
権利が明確でない今の実態の中で、
裁判所が労働組合等の意見を聞く、つまり意見を聞きおくというだけで、結局、形式的な
手続だけに終わってしまうのではないかという懸念があります。ぜひ、そうした点については中身のある明確なものを規定していただきたいというふうに思うわけであります。
二つ目の問題点、これは労働
債権の問題であります。
最近の倒産事例で、退職を余儀なくされた場合に、退職金など労働
債権が一〇〇%確保できるというケースはごくまれであります。六〇%しか確保できなかったり、あるいは四〇%しか確保できないという極めて厳しい実態にあるわけであります。適格退職年金制度などで
企業外に保全をしている退職金原資が、実は、もう既に希望退職募集などをそれ以前にやって使い果たしているというようなのが今倒産する
企業の実態であります。ですから、外部での保全が十分でないまま倒産を迎えるというのが多くの実態であるということであります。そして、わずかばかりの売掛金などが国税当局や社会保険事務所に先に押さえられてしまって、とれるものがなくなっている。とにかく、税金や社会保険料の
債権が労働
債権に優先しているということが大問題であるというふうに思います。早く是正されることをお願いしたいというふうに思います。
三つ目は、裁判管轄の問題についてであります。
改正法では、東京地裁と大阪地裁に
全国どこからでも申し立てができるというふうになっております。しかし、遠隔地の従業員や小零細
企業の
債権者は、文書の閲覧や
裁判所に上申するなどの場合、わざわざ東京や大阪まで出向かなければならないことになります。それでは金銭的に余裕がない
債権者や労働者には大きな負担になるわけでありまして、同等な
権利が行使できなくなると
心配をされるわけであります。
また、
会社更生では、労働組合と
管財人との日常的な協議や団体交渉が多くなるわけでありますが、遠隔地の
裁判所の管轄で本当に十分監督が行き届き、また
管財人ができるだけ多く職場にいていただくようなことができるのかどうなのか、ぜひそうした実務的な配慮が明確にされるようにお願いをしたいというふうに思います。
最後に、四つ目の問題として、社内預金などの預かり金の問題について申し上げたいと思います。
現行法では、使用人からの預かり金は全額を共益
債権にするとなっております。
改正法案では大きく限定をするということになっておりまして、この
改正によって、私は労働者にとっては大きな不利益が生じるのではないかと
心配をしております。
なぜならば、現に倒産したある
企業で、社内預金で八百万を預金をしていて、生涯の蓄財としていた労働者の方がいた、また、子供の大学進学資金として三百万を預金をしていて、それを当てにしていた、そういう労働者がたくさんいる例がございました。こうした場合に、共益
債権となる
範囲が限定をされると、これら労働者とその家族の
生活に多大な影響をもたらすことになるわけであります。そもそも、労働
債権と預かり金とでは全く性格が異なるものであります。社内預金など預かり金は、労働者が既に賃金として支払いを受け、労働者が所有する金銭であり、それを一時的に
会社に預けているものであります。
しかし、確かに、社内預金が数百万に及ぶということは、今日の社会情勢から見ても、私も決して適切なことだとは思いません。とすれば、むしろ労働基準法などの
法律において社内預金の
最高額を限定するなどの規制をすべきではないでしょうか。
もう
一つ、社内預金等預かり金の問題で問題がございます。それは、社内預金と社内預金以外の預かり金と合算をされて共益
債権の
範囲が限定されるということになりますと、ここでまた大きな不利益が起こってくるんではないかということを
心配するわけであります。社内預金以外の預かり金として
考えられるものは、例えば共済会のお金であります。
ある例でありますけれども、共済会で何億円かの資金を持っていまして、実はその資金で組合員の
生活保障の融資をしていた。それが
会社が倒産したことによってストップをしてしまって、その融資すら本当に必要なときできなかったというような例もございます。
こうした共済会のお金だとかあるいは旅行の積み立てだとか、もう
一つ、これも預かり金に入るのかどうか、天引きした労働組合の組合費、あるいは天引きをした一般の生命保険だとか自動車保険の保険料、これが
会社の中にまだ残っていて、そのまま労働組合やあるいは保険屋さんに渡っていないという場合、こうしたお金も社内預金と合算をされて限定されてしまうのかどうか、ちょっとその辺が疑問でございますので、ぜひ解明をしていただきたいというふうに思います。
最後に、私は、この
法律の中で、私は
法律の専門家じゃないものですから、率直に申し上げたいんですが、日本の
法律というのは何でいまだに使用人という言葉を使っているのかなというのが、一般の労働者の立場からいうと大変不可解でありますし、また何となく不快感を覚えるんですけれども、専門家の方はそうではないのかもしれませんが、それは私の感情でございます。
今、幾つかの問題点を、今のことはともかくとして、申し上げましたけれども、これらの問題点がぜひこの国会における審議を通じまして明らかに解明をされて、そして、たとえ倒産下にあっても労働者が安心をして
企業の
再建に向けて本当に一生懸命
仕事ができる、そういうような制度をぜひつくり上げていただくことをお願いし、期待し、私の意見陳述とさせていただきます。
どうもありがとうございました。(拍手)