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有冨政府参考人 二つの事案がございます。
まず最初でございますが、平成八年の最高裁の事案でございます。
まず、
内容でございますが、これは平成五年でございますが、裁判所が、ある債権者の申し立てに基づきまして、その債務者が受け取り
予定の死亡保険金、これの差し押さえ命令を
内容とする特別送達
郵便物を生命保険会社に差し出しをいたしました。これに対しまして、
郵便局職員がこの会社の営業所に配達に行ったわけでありますが、そこの営業所の従業員から受領を拒否されましたので、そのものを裁判所に還付いたしました。
それで、もう一度、その八日後でございますが、再度その
郵便物が差し出されまして、そのときには差し押さえ命令書は受領されました。ところが、その前日に、もう生命保険会社から保険金、これは一千万円でございましたが、債務者に支払われてしまったということで、債権者からは、いわば取り損ねたということで、国と生命保険会社に対しまして
損害賠償請求がされたというようなものでございます。
判決の
内容は、第一審、控訴審、上告審とも同じでございますが、原告の請求が棄却されて、国側が勝訴しております。
内容はどういうものであるかということでございますが、これは
郵便法第六十八条を引用されまして、国は、
書留郵便物の亡失、毀損、それから代金引きかえ
郵便物の引きかえ金の取り立て漏れ、小包
郵便物の亡失、毀損の場合にのみ賠償責任を負うこととされておる、したがって、本件はこれらの場合に該当しない、国に
損害賠償義務はないというようなことでございます。
これが一審の
判断でございますし、控訴審でも、この六十八条は、
郵便事業の特質と目的に照らせば十分必要性と合理性が認められる、したがって、憲法十七条に違反しない。最高裁でもこれらの
判断が是認されたというようなことでございます。
平成十三年の最高裁の事例でございますが、これは平成三年でございますが、ある銀行から原告あてに、キャッシュカードを
内容とする簡易
書留郵便物が差し出されました。これを持ちまして
郵便局職員が原告のお宅に配達に行ったわけでありますが、いらっしゃらなかった。それで、不在配達通知書を
郵便受け箱に入れて持ち帰ったということでございます。
ところが、翌日になりまして、原告と金銭トラブルがありました者複数人が共謀いたしまして、この不在配達通知書を
郵便受け箱から盗み出して、偽造した委任状で
郵便局の窓口で
郵便物の交付を受けて、そのキャッシュカードを手に入れて、それを使って預金を引き出したというようなことでございます。これは、犯人は後ほど、窃盗・詐欺罪で有罪を受けておりますが。
したがって、こういったことで不在配達通知書を盗まれて、偽造された委任状でお金が引き落とされたということに対しまして、国と銀行に対しまして賠償請求が出されたというようなものでございます。
判決の
内容でござますが、これは、一審、控訴審、上告審ともでございますが、原告の請求は棄却、国側勝訴という判決になっております。
その理由でございますが、先ほどは
郵便法の六十八条ということでございますが、今度は
郵便法の七十三条でございまして、
損害賠償の請求ができる者は、
郵便物の差出人またはその承諾を得た
受取人に限定している、本件については、
受取人である原告はその承諾を受けていない、したがって、国に賠償責任はない。これは、一審、控訴審、ともにそういう
判断でございます。
また、
郵便法の
損害賠償に関する規定は、公共の福祉に沿った合理的なものである、憲法にも違反しないということで、最高裁においてもこれらの
判断が是認された、こういうことでございます。