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千代崎参考人 千代崎と申します。
東京の
板橋区に住んでおります。ハウズィングケースワーカーと名乗って、
住宅のことについては何でも
相談に乗るという
住宅の
コンサルタント事務所を開いております。本日は、
国土交通委員会で
発言させていただくことを大変感謝しております。
昨年
マンション管理士の試験を受けて、ことし合格、登録をした
マンション管理士でございます。六月に参議院で、
参考人として
出席した
最初の
マンション管理士であるとすれば大変光栄に思いますというふうに述べました。続いて
衆議院でも同じような
発言の
機会があるということは、大変うれしく思っております。どうもありがとうございました。
私は、
マンションで実際の
業務で感じていることをお話しして、
法案審議の
参考になればと思います。
事務所を開いて十年間、ボランティアとの
中間のようなものもありますけれども、大体、
業務としてさまざまな
マンションからの
相談を受けております。主には、
建物の診断をして、
長期営繕計画をつくり、必要なら
工事企画を行い、
工事中は監理も行っております。その他、
マンションの
管理組合の
立ち上げや
規約の
整備、ペット問題、
管理会社への不満などさまざまな
相談に乗っております。また、
管理組合の顧問も
幾つかの
マンションではしています。そして、そういうことで、直接
マンション住民と接している実務を
仕事にしています。そういった
業務から見た本を出版しましたので、ごらんになっていただければ幸いです。
マンションは、
部位ごとに
修繕がかなりできます。
部位ごとに
修繕や改良ができれば、総体的にも長もちさせることができます。
長もちさせるということは、危険、不便、不衛生なことを我慢して使うということとは違います。安全で、安心で、快適に使えてこそ、長く使おうかな、こういう思いも出てくるものだと思います。狭小という問題以外は、ほとんど直接的に解決できると思っております。
今度の
区分所有法改正は、
マンションの
建替えの
円滑化に関する
法律と対をなして、
建てかえの
合意、
合意後の進展を図ろうというものだと思います。
耐用年数を含む客観的な
要件を
法律で入れないと、
建築後数年でも、五分の四以上の
決議で
建てかえが上げられれば、
反対者がいても
建てかえができることになります。一方で、三十年というふうに入れますと、あるいは四十年というふうに入れてもいいんですけれども、その十年前の築二十年ころからは手入れが少なくなると思います。大
規模修繕もままならなくなると思います。私は、どちらも矛盾しているのではないかなと思っております。
マンションの
寿命ということを
人間の場合で当てはめて考えてみますと、
人間の
寿命は、
遺伝子、
栄養状態、体の鍛錬、病原菌との接触、医療、介護、事故などさまざまな要因があり、決して
寿命が
最初から何年と決まっているものではありません。例えば、
寿命を八十歳と決めて、そこまでは生きていなければならない、あるいは、八十歳を過ぎたら生きてはいけないとはだれも言いません。
マンションもそれと同じだと思います。長くもつ
マンションもあるし、短期間で
建てかえが必要になる
マンションもあると思います。また、同じ
遺伝子でも、
維持管理への努力次第では長もちする
マンションが出てくるのは当然のことです。
どちらがよいのかということを考えることが問題だと思います。やはり、長く使うことがよい、こういう風潮を育てることが必要だと思います。そのためには、どんなことがあるだろうかと考えてみました。
終局の年限を決めるのではなく、例えば、二十五年を経た
マンションを使用しているのに対して、
維持管理への
助成を
制度化していただきたい。こういうのがよいと思います。
人間でいえば、年金のようなものです。長く使ってくれて御苦労さまということで、引き続き
維持管理をしましょう、
お願いしますという形で、
老朽化マンションへの援助と考えてもらってもよいと思います。
既存の
制度でいえば、
公庫の
マンション共用部リフォームローンを
全国のどこでももっと使いやすくということ、
東京都での
利子補給制度を、
公庫だけでなく、民間から借りた場合にも適用してほしい、足立区での
共用部工事への
助成、
板橋区や浦安市でのバリアフリーへの
助成制度、神戸市での
エレベーター設置助成制度など、
部位ごとへの
支援策も含めて、さらに充実した
制度を
全国で広げるために
法律化していただきたいと思います。
長く使うことと
建てかえということがどのぐらいの比重を持って御論議されているかどうかということは、私にはよくわかりません。ただ、今
国会に向けて十一月に出された
衆議院調査局国土交通調査室の
建物の
区分所有に関する
法律及び
マンションの
建替え等に関する
法律の一部を
改正する
法律案という冊子を見ますと、何となくわかる気がします。
これがそうですけれども、二十五ページから始まる「3 本
法律案の
論点等」という中で、二十七ページには「(4)
建替え実施への
支援等」という項目があり、
幾つかの論議すべきことが割と具体的に挙げられております。
同じく二十七ページには「6
建物の
長寿命化に関する
検討」がありますが、いわば抽象的であります。そもそも、順番すら違うのではないかなと思っています。
以下、
法案にできるだけ沿って、強く考えていることを
中心としてお話しいたします。
全体的には、
区分所有法は
住民の方が直接見ることが多いので、そのときに解説が必要でないような
表現にしていただきたい。
例えば、「
共用部分の
変更」というところでは、もともと今でも大
規模修繕は
共用部分の
変更ではない、したがって過半数で進めてもよいという解釈で
工事を行っている
マンションは数多くあります。今回の
法案でも、まだわかりにくい
表現になっています。大
規模修繕は
共用部分の
変更に入るのか入らないのかというそのものがわかりにくいので、もっと適切な
表現にしてほしいと思います。
「
規約の
適正化」というところでは、
規約の不公平は、もともと、
管理システムの
設計ということが、将来を見越し、
責任を持ってやられていないことが原因だと思います。
規約設定はその中でどうしていくかということです。
建築の
設計をだれがしたということと同じで、
規約の
設定はだれがしたのか、公序良俗に反する
規約設定をだれがしたのかをわかるようにして、
規約設定をした人の
責任も問えるようにしていただきたい、こういうふうに思っております。
具体的に言えば、
標準管理規約どおりにすると
管理費や
積立金の
負担が大きく変わってしまう例もあり、是正は並大抵ではありません。しかし、
規約というものは
立場が変わっても不公平と感じないようなものでないと困ると言うと、ほとんどの方にはわかっていただけます。本来はどうあるべきなのかという方向の
共通認識には立ってもらえます。裁判まで行かなくても公平、不公平を判断する機関を設置することはできないかなというふうに思います。
「
建替え決議」については、今回、条件は緩和していますが、
阪神大震災で被害のあった芦屋の二百十四戸の
マンションで、十五戸に対して
強制執行まで
現実に行われたという矛盾をさらに拡大しないかという
不安感があります。通常の
建てかえは時間を長くとることが可能ですので、慎重過ぎるほど慎重でもいいと思います。
建てかえ
要件を判定する
建築も含めた判断の組織を設置していただきたい、こういうふうに思っております。
最後に、
長生きマンションへの
積極的検討をということを考えております。
四十年ほど前の「ローズマリーの赤ちゃん」の
撮影場所は、ニューヨークのダコタハウスという
マンションでした。いかにも古ぼけた
マンションという
設定で、ロケの現場となりました。後にジョン・レノンが住んで、
ニクソン大統領が入りたいと言って断られたことでも話題になりました。この
マンションは築百年以上ですが、人気は高いです。中がそのままなわけはありませんが、改装しながら使っているわけです。
日本では、残念ながら、百年以上を経た
マンションはありません。
こういった
マンションをつくるのは、新しくつくる
マンションをそうするということではなく、今ある
マンションで長く住むことがよいという、長もちをさせる工夫を十分した後でこそ、
建てかえへの
支援策が生きてくるのではないかなと思っております。
最近思っていることを
スローガン風に言うと、次のとおりです。どんな
マンションでも五十年、さらに頑張って百年は使いましょう、元気です三十年
マンションというキャンペーンを張ったらいいのではないか。
仕事では、
長生きマンションへのプログラムを一緒にデザインしましょう、こういうふうに言っております。
以上で私の
意見といたします。どうもありがとうございました。(
拍手)